(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属粒子が、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属粒子を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合用銅ペースト。
第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接合用銅ペースト、及び第二の部材がこの順に積層されている積層体を用意し、前記接合用銅ペーストを、前記第一の部材の自重、又は前記第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える、接合体の製造方法。
第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接合用銅ペースト、及び第二の部材がこの順に積層されている積層体を用意し、前記接合用銅ペーストを、前記第一の部材の自重、又は前記第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備え、
前記第一の部材及び前記第二の部材の少なくとも一方が半導体素子である、半導体装置の製造方法。
前記第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方が、前記焼結体と接する面に、銅、ニッケル、銀、金及びパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項7に記載の接合体。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
<接合用銅ペースト>
本実施形態の接合用銅ペーストは、金属粒子と、分散媒と、を含む接合用銅ペーストであって、金属粒子がサブマイクロ銅粒子及びフレーク状マイクロ銅粒子を含む。
【0028】
(金属粒子)
本実施形態に係る金属粒子としては、サブマイクロ銅粒子、フレーク状マイクロ銅粒子、これら以外の銅粒子、その他の金属粒子等が挙げられる。
【0029】
(サブマイクロ銅粒子)
サブマイクロ銅粒子としては、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を含むものが挙げられ、例えば、体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を用いることができる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.12μm以上であれば、サブマイクロ銅粒子の合成コストの抑制、良好な分散性、表面処理剤の使用量の抑制といった効果が得られやすくなる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.8μm以下であれば、サブマイクロ銅粒子の焼結性が優れるという効果が得られやすくなる。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.15μm以上0.8μm以下であってもよく、0.15μm以上0.6μm以下であってもよく、0.2μm以上0.5μm以下であってもよく、0.3μm以上0.45μm以下であってもよい。
【0030】
なお、本願明細書において体積平均粒径とは、50%体積平均粒径を意味する。銅粒子の体積平均粒径を求める場合、原料となる銅粒子、又は接合用銅ペーストから揮発成分を除去した乾燥銅粒子を、分散剤を用いて分散媒に分散させたものを光散乱法粒度分布測定装置(例えば、島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD−7500nano,株式会社島津製作所製))で測定する方法等により求めることができる。光散乱法粒度分布測定装置を用いる場合、分散媒としては、ヘキサン、トルエン、α−テルピネオール等を用いることができる。
【0031】
サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を10質量%以上含むことができる。接合用銅ペーストの焼結性の観点から、サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を20質量%以上含むことができ、30質量%以上含むことができ、100質量%含むことができる。サブマイクロ銅粒子における粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有割合が20質量%以上であると、銅粒子の分散性がより向上し、粘度の上昇、ペースト濃度の低下をより抑制することができる。
【0032】
銅粒子の粒径は、下記方法により求めることができる。銅粒子の粒径は、例えば、SEM像から算出することができる。銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。このSEM像の銅粒子に外接する四角形を画像処理ソフトにより作図し、その一辺をその粒子の粒径とする。
【0033】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、20質量%以上90質量%以下であってもよく、30質量%以上85質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0034】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びフレーク状マイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、20質量%以上90質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が20質量%以上であれば、フレーク状マイクロ銅粒子の間を充分に充填することができ、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が90質量%以下であれば、接合用銅ペーストを焼結した時の体積収縮を充分に抑制できるため、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びフレーク状マイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、30質量%以上85質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。
【0035】
サブマイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。サブマイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、サブマイクロ銅粒子の形状は、球状、略球状、フレーク状であってもよく、燃焼性、分散性、フレーク状マイクロ粒子との混合性等の観点から、球状又は略球状であってもよい。本明細書において、「フレーク状」とは、板状、鱗片状等の平板状の形状を包含する。
【0036】
サブマイクロ銅粒子は、分散性、充填性、及びフレーク状マイクロ粒子との混合性の観点から、アスペクト比が5以下であってもよく、3以下であってもよい。本明細書において、「アスペクト比」とは、粒子の長辺/厚みを示す。粒子の長辺及び厚みの測定は、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。
【0037】
サブマイクロ銅粒子は、特定の表面処理剤で処理されていてもよい。特定の表面処理剤としては、例えば、炭素数8〜16の有機酸が挙げられる。炭素数8〜16の有機酸としては、例えば、カプリル酸、メチルヘプタン酸、エチルヘキサン酸、プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、メチルオクタン酸、エチルヘプタン酸、プロピルヘキサン酸、カプリン酸、メチルノナン酸、エチルオクタン酸、プロピルヘプタン酸、ブチルヘキサン酸、ウンデカン酸、メチルデカン酸、エチルノナン酸、プロピルオクタン酸、ブチルヘプタン酸、ラウリン酸、メチルウンデカン酸、エチルデカン酸、プロピルノナン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルヘプタン酸、トリデカン酸、メチルドデカン酸、エチルウンデカン酸、プロピルデカン酸、ブチルノナン酸、ペンチルオクタン酸、ミリスチン酸、メチルトリデカン酸、エチルドデカン酸、プロピルウンデカン酸、ブチルデカン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルオクタン酸、ペンタデカン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、パルミチン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、エチルシクロヘキサンカルボン酸、プロピルシクロヘキサンカルボン酸、ブチルシクロヘキサンカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンカルボン酸、オクチルシクロヘキサンカルボン酸、ノニルシクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、メチルノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、サビエン酸等の不飽和脂肪酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o−フェノキシ安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、ペンチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘプチル安息香酸、オクチル安息香酸、ノニル安息香酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。このような有機酸と上記サブマイクロ銅粒子とを組み合わせることで、サブマイクロ銅粒子の分散性と焼結時における有機酸の脱離性とを両立できる傾向にある。
【0038】
表面処理剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の表面に一分子層〜三分子層付着する量であってもよい。この量は、サブマイクロ銅粒子の表面に付着した分子層数(n)、サブマイクロ銅粒子の比表面積(A
p)(単位m
2/g)と、表面処理剤の分子量(M
s)(単位g/mol)と、表面処理剤の最小被覆面積(S
S)(単位m
2/個)と、アボガドロ数(N
A)(6.02×10
23個)から算出できる。具体的には、表面処理剤の処理量は、表面処理剤の処理量(質量%)={(n・A
p・M
s)/(S
S・N
A+n・A
p・M
s)}×100%の式に従って算出される。
【0039】
サブマイクロ銅粒子の比表面積は、乾燥させたサブマイクロ銅粒子をBET比表面積測定法で測定することで算出できる。表面処理剤の最小被覆面積は、表面処理剤が直鎖飽和脂肪酸の場合、2.05×10
−19m
2/1分子である。それ以外の表面処理剤の場合には、例えば、分子モデルからの計算、又は「化学と教育」(上江田捷博、稲福純夫、森巌、40(2),1992,p114−117)に記載の方法で測定できる。表面処理剤の定量方法の一例を示す。表面処理剤は、接合用銅ペーストから分散媒を除去した乾燥粉の熱脱離ガス・ガスクロマトグラフ質量分析計により同定でき、これにより表面処理剤の炭素数及び分子量を決定できる。表面処理剤の炭素分割合は、炭素分分析により分析できる。炭素分分析法としては、例えば、高周波誘導加熱炉燃焼/赤外線吸収法が挙げられる。同定された表面処理剤の炭素数、分子量及び炭素分割合から上記式により表面処理剤量を算出できる。
【0040】
表面処理剤の上記処理量は、0.07質量%以上2.1質量%以下であってもよく、0.10質量%以上1.6質量%以下であってもよく、0.2質量%以上1.1質量%以下であってもよい。
【0041】
上記サブマイクロ銅粒子は良好な焼結性を有するため、銅ナノ粒子を主に用いた接合材にみられる高価な合成コスト、良好でない分散性、焼結後の体積収縮の低下等の課題を低減することができる。
【0042】
本実施形態に係るサブマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているサブマイクロ銅粒子としては、例えば、CH−0200(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.36μm)、HT−14(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.41μm)、CT−500(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.72μm)、Tn−Cu100(太陽日酸株式会社製、体積平均粒径0.12μm)が挙げられる。
【0043】
(フレーク状マイクロ銅粒子)
フレーク状マイクロ銅粒子としては、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上の銅粒子を含むものが挙げられ、例えば、平均最大径が1μ以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上の銅粒子を用いることができる。フレーク状マイクロ銅粒子の平均最大径及びアスペクト比が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を充分に低減でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、フレーク状マイクロ銅粒子の平均最大径は、1μm以上10μm以下であってもよく、3μm以上10μm以下であってもよい。フレーク状マイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径の測定は、例えば、粒子のSEM像から求めることができ、後述するフレーク状マイクロ銅粒子の長径X及び長径の平均値Xavとして求められる。
【0044】
フレーク状マイクロ銅粒子は、最大径が1μm以上20μm以下の銅粒子を50質量%以上含むことができる。接合体内での配向、補強効果、接合ペーストの充填性の観点から、フレーク状マイクロ銅粒子は、最大径が1μm以上20μm以下の銅粒子を70質量%以上含むことができ、80質量%以上含むことができ、100質量%含むことができる。接合不良を抑制する観点から、フレーク状マイクロ銅粒子は、例えば、最大径が20μmを超える粒子等の接合厚みを超えるサイズの粒子を含まないことが好ましい。
【0045】
フレーク状マイクロ銅粒子は、アスペクト比が4以上であってもよく、6以上であってもよい。アスペクト比が上記範囲内であれば、接合用銅ペースト内のフレーク状マイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向することにより、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0046】
フレーク状マイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、1質量%以上90質量%以下であってもよく、10質量%以上70質量%以下であってもよく、20質量%以上50質量%以下であってもよい。フレーク状マイクロ銅粒子の含有量が、上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0047】
サブマイクロ銅粒子の含有量及びフレーク状マイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、80質量%以上であってもよい。サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を充分に低減でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量及びフレーク状マイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0048】
本実施形態に係るフレーク状マイクロ銅粒子の形状は、長径(最大径)X、中径Y(幅)、短径(厚さ)Tというパラメータで規定することもできる。長径Xは、フレーク状マイクロ銅粒子の三次元形状において、フレーク状マイクロ銅粒子に外接する平行二平面のうち、この平行二平面間の距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離である。中径Yは、長径Xを与える平行二平面に直行し、且つ、フレーク状マイクロ銅粒子に外接する平行二平面のうち、この平行二平面間の距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離である。短径Tは、長径Xを与える平行二平面及び中径Yを与える平行二平面に直行し、且つ、フレーク状マイクロ銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間の距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離である。
【0049】
長径の平均値Xavは、1μm以上20.0μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよく、3μm以上10μm以下であってもよい。Xavが上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体において、接合用銅ペーストの焼結体は適切な厚みで形成しやすい。
【0050】
短径の平均値Tavに対する長径の平均値Xavの比(アスペクト比)であるXav/Tavは、4.0以上であってもよく、6.0以上であってもよく、10.0以上であってもよい。Xav/Tavが上記範囲内であれば、接合用銅ペースト内のフレーク状マイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向しやすくなり、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性を向上させやすくなる。
【0051】
中径の平均値Yavに対する長径の平均値Xavの比であるXav/Yavは、2.0以下であってもよく、1.7以下であってもよく、1・5以下であってもよい。Xav/Yavが上記範囲内であれば、フレーク状マイクロ銅粒子の形状がある程度の面積を有するフレーク状の粒子となり、接合用銅ペースト内のフレーク状マイクロ銅粒子が接合面に対して略平行に配向しやすくなり、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性を向上させやすくなる。Xav/Yavが2.0を超える場合、フレーク状マイクロ銅粒子の形状が細長い線状に近づくことを意味する。
【0052】
短径の平均値Tavに対する中径の平均値Yavの比であるYav/Tavは、2.5以上であってもよく、4.0以上であってもよく、8.0以上であってもよい。Yav/Tavが上記範囲内であれば、接合用銅ペースト内のフレーク状マイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向しやすくなり、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性を向上させやすくなる。
【0053】
フレーク状マイクロ銅粒子の長径X及び中径YをSEM像から算出する方法を例示する。フレーク状マイクロ銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。
図1は、フレーク状マイクロ銅粒子の一例であるMA−C025(三井金属鉱業株式会社製)を示すSEM像である。このSEM像のフレーク状マイクロ銅粒子9に外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の長辺をその粒子の長径X、長方形の短辺をその粒子の中径Yとする。複数のSEM像を用いて、この測定を50個以上のフレーク状マイクロ銅粒子に対して行い、長径の平均値Xav及び中径の平均値Yavを算出する。
【0054】
フレーク状マイクロ銅粒子の短径TをSEM像から算出する方法を例示する。フレーク状マイクロ銅粒子を含む銅ペーストを銅基板上に印刷し、シリコンチップをマウントする。これをホットプレート等により、空気中、100℃、30分の条件で乾燥処理することで、銅板及びシリコンチップが乾燥した接合用銅ペーストによって弱く接着した接合物を調製する。接合物をエポキシ注形樹脂により硬化し、硬化サンプルを研磨紙により削り、接合物の中央付近の断面を出す。この断面をアルゴンイオンによりクロスセクションポリッシャ(CP)加工を行い、SEM用サンプルとする。SEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。
図6は、後述する実施例6の接合用銅ペーストをチップと基板の間に挟み、100℃、30分の乾燥処理を行った際の接合用銅ペーストの乾燥膜のSEM像である。SEM像のフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状に対し、外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の短辺をその粒子の短径Tとする。複数のSEM像を用いて、この測定を50個以上のフレーク状マイクロ銅粒子に対して行い、短径の平均値Tavを算出する。
【0055】
画像処理ソフトとしては、特に限定されるものではなく、例えば、Microsoft PowerPoint(Microsoft社製)、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いることができる。
【0056】
フレーク状マイクロ銅粒子において、表面処理剤の処理の有無は特に限定されるものではない。分散安定性及び耐酸化性の観点から、フレーク状マイクロ銅粒子は表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤は、接合時に除去されるものであってもよい。このような表面処理剤としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o−フェノキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコール等の脂肪族アルコール;p−フェニルフェノール等の芳香族アルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミン;ステアロニトリル、デカニトリル等の脂肪族ニトリル;アルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオリゴマー等の高分子処理剤などが挙げられる。表面処理剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
表面処理剤の処理量は、粒子表面に一分子層以上の量であってもよい。このような表面処理剤の処理量は、フレーク状マイクロ銅粒子の比表面積、表面処理剤の分子量、及び表面処理剤の最小被覆面積により変化する。表面処理剤の処理量は、通常0.001質量%以上である。フレーク状マイクロ銅粒子の比表面積、表面処理剤の分子量、及び表面処理剤の最小被覆面積については、上述した方法により算出することができる。
【0058】
上記サブマイクロ銅粒子のみから接合用銅ペーストを調製する場合、分散媒の乾燥に伴う体積収縮及び焼結収縮が大きいため、接合用銅ペーストの焼結時に被着面より剥離しやすくなり、半導体素子等の接合においては充分なダイシェア強度及び接続信頼性が得られにくい。サブマイクロ銅粒子とフレーク状マイクロ銅粒子とを併用することで、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮が抑制され、接合体は充分な接合強度を有することができる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示すという効果が得られる。
【0059】
本実施形態の接合用銅ペーストにおいて、金属粒子に含まれる、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量は、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子全量を基準として、50質量%以下が好ましく、30質量%以下とすることがより好ましい。最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量を制限することにより、接合用銅ペースト内のフレーク状マイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向しやすくなり、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮をより有効に抑制することができる。これにより、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性を向上させやすくなる。このような効果が更に得られやすくなる点で、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量は、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子全量を基準として、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0060】
本実施形態に係るフレーク状マイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているフレーク状マイクロ銅粒子としては、例えば、MA−C025(三井金属鉱業株式会社製、平均最大径4.1μm)、3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積最大径7.3μm)、1110F(三井金属鉱業株式会社製、平均最大径5.8μm)、2L3(福田金属箔粉工業株式会社製、平均最大径9μm)が挙げられる。
【0061】
本実施形態の接合用銅ペーストにおいては、配合するマイクロ銅粒子として、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子を含み、且つ、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量が、上記フレーク状マイクロ銅粒子全量を基準として、50質量%以下、好ましくは30質量%以下であるマイクロ銅粒子を用いることができる。市販されているフレーク状マイクロ銅粒子を用いる場合、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子を含み、且つ、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量が、上記フレーク状マイクロ銅粒子全量を基準として、50質量%以下、好ましくは30質量%以下であるものを選定してもよい。
【0062】
(銅粒子以外のその他の金属粒子)
金属粒子としては、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子以外のその他の金属粒子を含んでいてもよく、例えば、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金等の粒子を含んでいてもよい。その他の金属粒子は、体積平均粒径が0.01μm以上10μm以下であってもよく、0.01μm以上5μm以下であってもよく、0.05μm以上3μm以下であってもよい。その他の金属粒子を含んでいる場合、その含有量は、充分な接合性を得るという観点から、金属粒子の全質量を基準として、20質量%未満であってもよく、10質量%以下であってもよい。その他の金属粒子は、含まれなくてもよい。その他の金属粒子の形状は、特に限定されるものではない。
【0063】
銅粒子以外の金属粒子を含むことで、複数種の金属が固溶又は分散した焼結体を得ることができるため、焼結体の降伏応力、疲労強度等の機械的な特性が改善され、接続信頼性が向上しやすい。また、複数種の金属粒子を添加することで、接合用銅ペーストの焼結体は、特定の被着体に対して充分な接合強度を有することができる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性が向上しやすい。
【0064】
(分散媒)
分散媒は特に限定されるものではなく、揮発性のものであってもよい。揮発性の分散媒としては、例えば、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α−テルピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)等の一価及び多価アルコール類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド;シクロヘキサノン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;炭素数1〜18のアルキル基を有するメルカプタン類;炭素数5〜7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類が挙げられる。炭素数1〜18のアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、i−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、i−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン及びドデシルメルカプタンが挙げられる。炭素数5〜7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン及びシクロヘプチルメルカプタンが挙げられる。
【0065】
分散媒の含有量は、金属粒子の全質量を100質量部として、5〜50質量部であってもよい。分散媒の含有量が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストをより適切な粘度に調整でき、また、銅粒子の焼結を阻害しにくい。
【0066】
(添加剤)
接合用銅ペーストには、必要に応じて、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤などを適宜添加してもよい。
【0067】
本実施形態の接合用銅ペーストの一態様としては、上記金属粒子が、体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下、好ましくは0.15μm以上0.8μm以下であるサブマイクロ銅粒子と、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子とを含み、且つ、金属粒子に含まれる、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量が、上記フレーク状マイクロ銅粒子全量を基準として、50質量%以下、好ましくは30質量%以下である接合用銅ペーストが挙げられる。
【0068】
上記接合用銅ペーストとしては、
(1)体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下、好ましくは0.15μm以上0.8μm以下であるサブマイクロ銅粒子と、
(2)平均最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子を含み、且つ、平均最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量が、フレーク状マイクロ銅粒子全量を基準として、50質量%以下、好ましくは30質量%以下であるマイクロ銅粒子と、
を配合してなるものが挙げられる。
【0069】
また、本実施形態の接合用銅ペーストの別の態様としては、金属粒子と、分散媒と、を含み、金属粒子が、最大径が0.12μm以上0.8μm以下、好ましくは0.15μm以上0.8μm以下であるサブマイクロ銅粒子と、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子とを含み、且つ、金属粒子に含まれる、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量が、フレーク状マイクロ銅粒子全量を基準として、50質量%以下、好ましくは30質量%以下である接合用銅ペーストが挙げられる。粒子の最大径は、原料となる銅粒子、又は接合用銅ペーストから揮発成分を除去した乾燥銅粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する方法により求められる。本実施形態におけるサブマイクロ銅粒子及びフレーク状マイクロ銅粒子の含有量は、上述した範囲と同様とすることができる。
【0070】
(接合用銅ペーストの調製)
接合用銅ペーストは、上述のサブマイクロ銅粒子、フレーク状マイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を分散媒に混合して調製することができる。各成分の混合後に、撹拌処理を行ってもよい。接合用銅ペーストは、分級操作により分散液の最大粒径を調整してもよい。このとき、分散液の最大粒径は20μm以下とすることができ、10μm以下とすることもできる。
【0071】
接合用銅ペーストは、サブマイクロ銅粒子、表面処理剤、分散媒をあらかじめ混合して、分散処理を行ってサブマイクロ銅粒子の分散液を調製し、更にフレーク状マイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を混合して調製してもよい。このような手順とすることで、サブマイクロ銅粒子の分散性が向上してフレーク状マイクロ銅粒子との混合性が良くなり、接合用銅ペーストの性能がより向上する。サブマイクロ銅粒子の分散液を分級操作によって凝集物を除去してもよい。
【0072】
撹拌処理は、撹拌機を用いて行うことができる。撹拌機としては、例えば、自転公転型攪拌装置、ライカイ機、二軸混練機、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、薄層せん断分散機が挙げられる。
【0073】
分級操作は、例えば、ろ過、自然沈降、遠心分離を用いて行うことができる。ろ過用のフィルタとしては、例えば、金属メッシュ、メタルフィルター、ナイロンメッシュが挙げられる。
【0074】
分散処理としては、例えば、薄層せん断分散機、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、ハイシアミキサー、狭ギャップ三本ロールミル、湿式超微粒化装置、超音速式ジェットミル、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0075】
接合用銅ペーストは、成型する場合には各々の印刷・塗布手法に適した粘度に調整してもよい。接合用銅ペーストの粘度としては、例えば、25℃におけるCasson粘度が0.05Pa・s以上2.0Pa・s以下であってもよく、0.06Pa・s以上1.0Pa・s以下であってもよい。
【0076】
本実施形態の接合用銅ペーストは、部材上に又は部材間に、塗布等の方法により設けたときに、フレーク状マイクロ銅粒子が部材との界面(ペースト層と部材との界面)に対し、略平行に配向しやすい。このとき、フレーク状マイクロ銅粒子が界面に対してどれほど水平であるかを、配向秩序度Sによって表すことができる。配向秩序度Sは式(1)により算出することができる。
S=1/2×(3<cos
2θ>−1)・・・(1)
式中、θは界面とフレーク状マイクロ銅粒子との成す角度を示し、<cos
2θ>は複数のcos
2θの値の平均値を示す。
配向秩序度Sは、0.88以上1.00以下であることができる。配向秩序度Sがこのような範囲内であれば、接合用銅ペースト内のフレーク状マイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向する。そのため、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性を向上させやすくなる。
【0077】
配向秩序度Sは、例えば、接合用銅ペーストの乾燥体のSEM像から求めることができる。以下に、配向秩序度SをSEM像から算出する方法を例示する。接合用銅ペーストを銅基板上に印刷し、シリコンチップをマウントする。これをホットプレート等により、空気中、100℃、30分の条件で焼結処理することで、銅板及びシリコンチップが乾燥した接合用銅ペーストによって弱く接着した接着物を調製する。この接着物をエポキシ注形樹脂で接着物全体が埋まるように注ぎ、硬化する。注形した接着物の観察したい断面付近で切断し、研磨で断面を削り、CP加工を行い、サンプルとする。サンプルの断面をSEM装置により5000倍で観察する。得られた断面画像に対し、角度測定機能を有する画像処理ソフトを用いてフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状の長径が界面と成す角度を測定する。無作為に選んだ50個以上のフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状でθを測定し、式(1)に代入することで配向秩序度Sを算出することができる。画像処理ソフトとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いることができる。配向秩序度Sは0から1の値をとり、完全配向状態で1、完全ランダム状態で0である。
【0078】
本実施形態の接合用銅ペーストによれば、上述のサブマイクロ銅粒子と、上述のフレーク状マイクロ銅粒子とを併用し、特定のマイクロ銅粒子の含有量を制限することで、良好な焼結性を得ることができ、更に、焼結時の体積収縮を抑制することができる。そのため、本実施形態の接合用銅ペーストは、過度の加圧をすることなく、部材との接合力を確保することができ、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体は充分な接合強度を有することができる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す。すなわち、本実施形態の接合用銅ペーストは、無加圧接合用の接合材として用いてもよい。また、本実施形態の接合用銅ペーストによれば、比較的安価な銅粒子を用いることで、製造コストを抑えることができ、大量生産をすることができる。特に、本実施形態の接合用銅ペーストは、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子によって上述した効果を得ることができることから、高価な銅ナノ粒子を主成分とする接合材に比べて、より安価で且つ安定的に供給できるという利点を有する。これにより、例えば、半導体装置等の接合体を製造する場合に生産安定性を一層高めることが可能となる。
【0079】
<接合体及び半導体装置>
以下、図面を参照しながら好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
【0080】
図2は、本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。本実施形態の接合体100は、第一の部材2と、第二の部材3と、第一の部材と第二の部材とを接合する上記接合用銅ペーストの焼結体1と、を備える。
【0081】
第一の部材2及び第二の部材3としては、例えば、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS−FET、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子、リードフレーム、金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC)、LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基材、銅リボン及び金属フレーム等の金属配線、金属ブロック等のブロック体、端子等の給電用部材、放熱板、水冷板などが挙げられる。
【0082】
第一の部材2及び第二の部材3は、接合用銅ペーストの焼結体と接する面4a及び4bに金属を含んでいてもよい。金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、鉛、錫、コバルト等が挙げられる。金属は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、焼結体と接する面は、上記金属を含む合金であってもよい。合金に用いられる金属としては、上記金属の他に、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、チタン、クロム、鉄、モリブデン等が挙げられる。焼結体と接する面に金属を含む部材としては、例えば、各種金属メッキを有する部材、ワイヤ、金属メッキを有するチップ、ヒートスプレッダ、金属板が貼り付けられたセラミックス基板、各種金属メッキを有するリードフレーム又は各種金属からなるリードフレーム、銅板、銅箔が挙げられる。また、第二の部材3が半導体素子である場合、第一の部材2は、金属フレーム等の金属配線、金属ブロック等の熱伝導性及び導電性を有するブロック体などであってもよい。
【0083】
接合体のダイシェア強度は、第一の部材及び第二の部材を充分に接合するという観点から、10MPa以上であってもよく、15MPa以上であってもよく、20MPa以上であってもよく、30MPa以上であってもよい。ダイシェア強度は、万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)等を用いて測定することができる。
【0084】
接合用銅ペーストの焼結体の熱伝導率は、放熱性及び高温化での接続信頼性という観点から、100W/(m・K)以上であってもよく、120W/(m・K)以上であってもよく、150W/(m・K)以上であってもよい。熱伝導率は、接合用銅ペーストの焼結体の熱拡散率、比熱容量、及び密度から、算出することができる。
【0085】
接合体における、フレーク状マイクロ銅粒子の配向秩序度Sは、0.88以上1.00以下とすることができる。接合体における配向秩序度Sは、乾燥した接合用銅ペーストによって弱く接着した接着物に代えて、接合体を分析対象とし、上述した方法で算出することができる。
【0086】
以下、本実施形態の接合用銅ペーストを用いた接合体の製造方法について説明する。
【0087】
本実施形態の接合用銅ペーストを用いた接合体の製造方法は、第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、上記接合用銅ペースト、及び第二の部材がこの順に積層された積層体を用意し、接合用銅ペーストを、第一の部材の自重、又は第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える。
【0088】
上記積層体は、例えば、第二の部材の必要な部分に本実施形態の接合用銅ペーストを設け、次いで接合用銅ペースト上に第一の部材を配置することにより用意することができる。
【0089】
本実施形態の接合用銅ペーストを、第二の部材の必要な部分に設ける方法としては、接合用銅ペーストを堆積させられる方法であればよい。このような方法としては、例えば、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、ジェットプリンティング法、ディスペンサー、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、バーコート、アプリケータ、粒子堆積法、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装等を用いることができる。接合用銅ペーストの厚みは、1μm以上1000μm以下であってもよく、10μm以上500μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下であってもよく、10μm以上3000μm以下であってもよく、15μm以上500μm以下であってもよく、20μm以上300μm以下であってもよく、5μm以上500μm以下であってもよく、10μm以上250μm以下であってもよく、15μm以上150μm以下であってもよい。
【0090】
第二の部材上に設けられた接合用銅ペーストは、焼結時の流動及びボイドの発生を抑制する観点から、適宜乾燥させてもよい。乾燥時のガス雰囲気は大気中であってもよく、窒素、希ガス等の無酸素雰囲気中であってもよく、水素、ギ酸等の還元雰囲気中であってもよい。乾燥方法は、常温放置による乾燥であってもよく、加熱乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよい。加熱乾燥又は減圧乾燥には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、熱板プレス装置等を用いることができる。乾燥の温度及び時間は、使用した分散媒の種類及び量に合わせて適宜調整してもよい。乾燥の温度及び時間としては、例えば、50℃以上180℃以下で1分以上120分間以下乾燥させてもよい。
【0091】
接合用銅ペースト上に第一の部材を配置する方法としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具が挙げられる。
【0092】
積層体を加熱処理することで、接合用銅ペーストの焼結を行うことができる。加熱処理には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
【0093】
焼結時のガス雰囲気は、焼結体、第一の部材及び第二の部材の酸化抑制の観点から、無酸素雰囲気であってもよい。焼結時のガス雰囲気は、接合用銅ペーストの銅粒子の表面酸化物を除去するという観点から、還元雰囲気であってもよい。無酸素雰囲気としては、例えば、窒素、希ガス等の無酸素ガスの導入、又は真空下が挙げられる。還元雰囲気としては、例えば、純水素ガス中、フォーミングガスに代表される水素及び窒素の混合ガス中、ギ酸ガスを含む窒素中、水素及び希ガスの混合ガス中、ギ酸ガスを含む希ガス中等が挙げられる。
【0094】
加熱処理時の到達最高温度は、第一の部材及び第二の部材への熱ダメージの低減及び歩留まりを向上させるという観点から、250℃以上450℃以下であってもよく、250℃以上400℃以下であってもよく、250℃以上350℃以下であってもよい。到達最高温度が、200℃以上であれば、到達最高温度保持時間が60分以下において焼結が充分に進行する傾向にある。
【0095】
到達最高温度保持時間は、分散媒を全て揮発させ、また、歩留まりを向上させるという観点から、1分以上60分以下であってもよく、1分以上40分未満であってもよく、1分以上30分未満であってもよい。
【0096】
本実施形態の接合用銅ペーストを用いることにより、積層体を焼結する際、無加圧での接合を行う場合であっても、接合体は充分な接合強度を有することができる。すなわち、接合用銅ペーストに積層した第一の部材による自重のみ、又は第一の部材の自重に加え、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の圧力を受けた状態で、充分な接合強度を得ることができる。焼結時に受ける圧力が上記範囲内であれば、特別な加圧装置が不要なため歩留まりを損なうこと無く、ボイドの低減、ダイシェア強度及び接続信頼性をより一層向上させることができる。接合用銅ペーストが0.01MPa以下の圧力を受ける方法としては、例えば、第一の部材上に重りを載せる方法等が挙げられる。
【0097】
上記接合体において、第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方は、半導体素子であってもよい。半導体素子としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等からなるパワーモジュール、発信機、増幅器、LEDモジュール等が挙げられる。このような場合、上記接合体は半導体装置となる。得られる半導体装置は充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。
【0098】
図3は、本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図3に示す半導体装置110は、リードフレーム5a上に、本実施形態に係る接合用銅ペーストの焼結体1を介して接続された半導体素子8と、これらをモールドするモールドレジン7とからなる。半導体素子8は、ワイヤ6を介してリードフレーム5bに接続されている。
【0099】
本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等からなるパワーモジュール、発信機、増幅器、高輝度LEDモジュール、センサー等が挙げられる。
【0100】
上記半導体装置は、上述した接合体の製造方法と同様にして製造することができる。すなわち、半導体装置の製造方法は、第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方に半導体素子を用い、第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、上記接合用銅ペースト、及び第二の部材がこの順に積層された積層体を用意し、接合用銅ペーストを、第一の部材の自重、又は第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える。例えば、リードフレーム5a上に接合用銅ペーストを設け、半導体素子8を配置して加熱する工程が挙げられる。得られる半導体装置は、無加圧での接合を行った場合であっても、充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。本実施形態の半導体装置は、充分な接合力を有し、熱伝導率及び融点が高い銅の焼結体を備えることにより、充分なダイシェア強度を有し、接続信頼性に優れるとともに、パワーサイクル耐性にも優れたものになり得る。
【0101】
上記の方法は、第二の部材が半導体素子である場合、第一の部材として金属配線又はブロック体等を半導体素子に接合するときの半導体素子へのダメージを低減することができる。半導体素子上に金属配線又はブロック体等の部材を接合した半導体装置について、以下に説明する。
【0102】
係る半導体装置の一実施形態としては、第一の電極と、第一の電極と電気的に接続されている半導体素子と、金属配線を介して半導体素子と電気的に接続されている第二の電極と、を備え、半導体素子と金属配線との間、及び、金属配線と第二の電極との間に、上記接合用銅ペーストの焼結体を有するものが挙げられる。
【0103】
図4は、上記の半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図4に示される半導体装置200は、第一の電極22及び第二の電極24を有する絶縁基板21と、第一の電極22上に上記接合用銅ペーストの焼結体1によって接合された半導体素子23と、半導体素子23と第二の電極24とを電気的に接続する金属配線25とを備える。金属配線25と半導体素子23、及び金属配線25と第二の電極24はそれぞれ接合用銅ペーストの焼結体1によって接合されている。また、半導体素子23は、ワイヤ27を介して第三の電極26に接続されている。半導体装置200は、絶縁基板21の上記電極等が搭載されている面とは反対側に、銅板28を備えている。半導体装置200は、上記構造体が絶縁体29で封止されている。半導体装置200は、第一の電極22上に半導体素子23を1個有しているが、2個以上有していてもよい。この場合、複数ある半導体素子23はそれぞれ接合用銅ペーストの焼結体1によって金属配線25と接合することができる。
【0104】
図5は、半導体装置の別の例を示す模式断面図である。
図5に示される半導体装置210は、半導体素子23と金属配線25との間にブロック体30が設けられており、半導体素子23とブロック体30、及びブロック体30と金属配線25がそれぞれ接合用銅ペーストの焼結体1によって接合されていること以外は、
図4に示される半導体装置200と同様の構成を有する。なお、ブロック体30の位置は適宜変更でき、例えば、第一の電極22と半導体素子23との間に設けられていてもよい。
【0105】
図6は、半導体装置の別の例を示す模式断面図である。
図6に示される半導体装置220は、第一の電極22上に、半導体素子23及びブロック体30並びにこれらを接合する接合用銅ペーストの焼結体1が更に設けられていること以外は、
図5に示される半導体装置210と同様の構成を有する。半導体装置220は、第一の電極22上に半導体素子を2個有しているが、3個以上有していてもよい。この場合も、3個以上ある半導体素子23はそれぞれブロック体30を介して接合用銅ペーストの焼結体1によって金属配線25と接合することができる。なお、ブロック体30の位置は適宜変更でき、例えば、第一の電極22と半導体素子23との間に設けられていてもよい。
【0106】
絶縁基板21としては、例えば、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素等のセラミックス、高熱伝導粒子/樹脂コンポジット、ポリイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂などが挙げられる。
【0107】
第一の電極22、第二の電極24及び第三の電極26を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、鉛、錫、コバルト等が挙げられる。これらの金属は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、電極は、接合用銅ペーストの焼結体1と接する面に上記金属を含む合金を有していてもよい。合金に用いられる金属としては、上記金属の他に、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、チタン、クロム、鉄、モリブデン等が挙げられる。
【0108】
金属配線としては、帯状、板状、立方体状、円筒状、L字状、コ字状、へ字状等の形状を有する金属フレームなどが挙げられる。金属配線の材質としては、例えば、銀、銅、鉄、アルミニウム、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、或いはこれらの合金が挙げられる。これら、金属配線表面には、耐酸化及び接着性のために、めっき、スパッタ等でニッケル、銅、金、銀などがコーティングされていてもよい。また、金属配線は、幅が1μm〜30μmであってもよく、厚みが20μm〜5mmであってもよい。
【0109】
ブロック体としては、熱伝導性及び導電性に優れるものが好ましく、例えば、銀、銅、鉄、アルミニウム、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、或いはこれらの合金を用いることができる。ブロック体表面には、耐酸化及び接着性のために、めっき、スパッタ等でニッケル、銅、金、銀などがコーティングされていてもよい。半導体素子上にブロック体を設けることで、放熱性が更に向上する。ブロック体の数は適宜変更することができる。
【0110】
絶縁体29としては、例えば、シリコーンゲル、ポリマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
【0111】
図4〜6に示される半導体装置は、大容量で高信頼性を要求されるパワーモジュールに用いることができる。
【0112】
図4〜6に示される半導体装置は、例えば、第一の電極及び第二の電極を備える絶縁基板を用意し、第一の電極上に接合用銅ペースト、半導体素子、必要に応じて更に接合用銅ペースト、ブロック体、接合用銅ペーストを、第一の電極側からこの順に設け、第二の電極上に接合用銅ペーストを設け、半導体素子又はブロック体上の接合用銅ペースト及び第二の電極上の接合用銅ペースト上に、これらの接合用銅ペーストを架橋するように金属配線を配置する工程と、接合用銅ペーストを、各部材の自重又は各部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程とを備える方法により製造することができる。
【0113】
このような製造方法によれば、無加圧で半導体装置を製造することができるため、ブリッジ部を有する金属配線を変形することなく接合できることに加え、半導体素子上に半導体素子よりも面積の小さい部材を接合する場合であっても半導体素子に対するダメージをより軽減することができる。
【0114】
図7は、半導体装置の更に別の例を示す模式断面図である。
図7に示される半導体装置300は、第一の電極22と、第一の電極22上に接合用銅ペーストの焼結体1によって接合された半導体素子23と、半導体素子23と第二の電極24とを電気的に接続する金属配線25とを備える。金属配線25と半導体素子23、及び金属配線25と第二の電極24はそれぞれ接合用銅ペーストの焼結体1によって接合されている。また、半導体素子23は、ワイヤ27を介して第三の電極26に接続されている。半導体装置300は、上記構造体が封止材31で封止されている。半導体装置300は、第一の電極22上に半導体素子23を1個有しているが、2個以上有していてもよい。この場合、複数ある半導体素子23はそれぞれ接合用銅ペーストの焼結体1によって金属配線25と接合することができる。
【0115】
図8は、半導体装置の別の例を示す模式断面図である。
図8に示す半導体装置310は、半導体素子23と金属配線25との間にブロック体30が設けられており、半導体素子23とブロック体30、及びブロック体30と金属配線25がそれぞれ接合用銅ペーストの焼結体1によって接合されていること以外は、
図7に示される半導体装置300と同様の構成を有する。なお、ブロック体30の位置は適宜変更でき、例えば、第一の電極22と半導体素子23との間に設けられていてもよい。
【0116】
図9は、半導体装置の別の例を示す模式断面図である。
図9に示される半導体装置320は、第一の電極22上に、半導体素子23及びブロック体30並びにこれらを接合する接合用銅ペーストの焼結体1が更に設けられていること以外は、
図8に示される半導体装置310と同様の構成を有する。半導体装置320は、第一の電極22上に半導体素子を2個有しているが、3個以上有していてもよい。この場合も、3個以上ある半導体素子23はそれぞれブロック体30を介して接合用銅ペーストの焼結体1によって金属配線25と接合することができる。なお、ブロック体30の位置は適宜変更でき、例えば、第一の電極22と半導体素子23との間に設けられていてもよい。
【0117】
図7〜9に示される第一の電極22及び第二の電極24は、リードフレーム、銅板、銅・モリブデン焼結体等であってもよい。
【0118】
封止材31としては、例えば、耐熱性固形封止材、高熱伝導コンポジット等が挙げられる。
【0119】
接合用銅ペーストの焼結体1は、半導体装置200〜220で説明したものと同様にすることができる。
【0120】
図7〜9に示す実施形態の半導体装置は、第一の電極及び第二の電極としてリードフレーム等を採用することで、小型化したパワーモジュールに用いることができる。このような半導体装置は、上述した半導体装置の製造方法と同様にして製造することができる。
【0121】
更に、半導体素子上にブロック体を接合した構造を有する半導体装置の別の実施形態について説明する。
【0122】
上記の半導体装置としては、第一の熱伝導部材と、第二の熱伝導部材と、第一の熱伝導部材及び第二の熱伝導部材の間に配置される半導体素子と、を備え、第一の熱伝導部材と半導体素子との間、及び、半導体素子と第二の熱伝導部材との間のうちの少なくとも一方の間に上記接合用銅ペーストの焼結体を有するものが挙げられる。
【0123】
図10は、本実施形態の一例を示す模式断面図である。
図10に示す半導体装置400は、第一の熱伝導部材32と、第一の熱伝導部材32上に接合用銅ペーストの焼結体1を介して接合された半導体素子23と、半導体素子23上に接合用銅ペーストの焼結体1を介して接合されたブロック体30と、ブロック体30上に接合用銅ペーストの焼結体1を介して接合された第二の熱伝導部材33と、を備える。半導体素子23は、ワイヤ35を介して電極34に接続されている。半導体装置400は、第一の熱伝導部材32と第二の熱伝導部材の間が封止材31で封止されている。半導体装置400は、半導体素子を2個有しているが、1個又は3個以上有していてもよく、ブロック体の数も適宜変更することができる。なお、ブロック体30の位置は適宜変更でき、例えば、第一の電極22と半導体素子23との間に設けられていてもよい。
【0124】
熱伝導部材は、半導体素子23から発生した熱を外部へ放出する機能、及び半導体素子を外部と電気的に接続するための電極としての機能を併せ持つものである。このような熱伝導部材には、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金が用いられる。
【0125】
図10に示す半導体装置は、半導体素子の両面側に熱伝導部材を備えることで、放熱性に優れる両面冷却構造を有することができる。このような半導体装置は、第一の熱伝導部材上に接合用銅ペースト、半導体素子、接合用銅ペースト、ブロック体、接合用銅ペースト、第二の熱伝導部材を、第一の熱伝導部材側からこの順に積層した積層体を用意し、接合用銅ペーストを、各部材の自重又は各部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える方法により、製造することができる。なお、上記積層体は、上記とは逆の順に積層されたものであってもよい。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0127】
<測定条件>
各実施例及び比較例における各特性の測定は、以下の方法により行った。
(1)フレーク状マイクロ銅粒子の長径(最大径)及び中径の算出、並びに長径の平均値及び中径の平均値の算出
フレーク状マイクロ銅粒子を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとした。このSEM用サンプルをSEM装置(Philips社製 ESEM XL30、又は、日本電子株式会社製 NeoScope JCM−5000)により、印加電圧10kVで観察した。得られた2000倍のSEM像をMicrosoft PowerPoint(Microsoft社製)で読み込んだ(読み込み時、画像サイズは高さ17.07cm×幅22.75cmであった)。画像下部のスケールバー(本例では10μmを示すスケール)の端から端に対し、直線を引き、その直線の長さを記録した(本例では3.7cm)。続いて、フレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状に外接するように長方形を描画した。あるフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状に対して、1.81cm×1.37cmの長方形を描画した。ここで、長方形の長辺(この例では1.81cm)をフレーク状マイクロ銅粒子の長径X、長方形の短辺(この例では1.37cm)をフレーク状マイクロ銅粒子の中径Yとした。10μmのスケールバーが3.7cmの直線という比率から、次のように長径Xと中径Yを算出した。
長径X=1.81cm×10μm/3.7cm=4.89μm
中径Y=1.37cm×10μm/3.7cm=3.70μm
この操作を画面上のフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状に対し、重複無く繰り返した。ただし、画面端からはみ出て像が切断されているフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状は選択しなかった。50個以上のフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状を測定し、測長結果の平均を計算した。この結果、フレーク状マイクロ銅粒子の長径の平均値Xav及び中径の平均値Yavを得た。
【0128】
(2)接合用銅ペーストの断面モルフォロジー観察
銅板(19×25×3mm
3)上に厚さ70μmのステンレス板に3×3mm正方形の開口を3行3列有するメタルマスクを載せ、メタルスキージを用いてステンシル印刷により接合用銅ペーストを塗布した。塗布した接合用銅ペースト上に、チタン、ニッケルがこの順で形成され、3×3mm
2の被着面がニッケルであるシリコンチップ(チップ厚:600μm)を載せ、ピンセットで軽く押さえた。これをホットプレート(アズワン株式会社製、EC HOTPLATE EC−1200N)にセットし、空気中、100℃、30分の条件で乾燥処理した。これにより、銅板及びシリコンチップが乾燥した接合用銅ペーストによって弱く接着した接着物を得た。この接着物をカップ内にサンプルクリップ(Samplklip I、Buehler社製)で固定し、周囲にエポキシ注形樹脂(エポマウント、リファインテック株式会社製)を接着物全体が埋まるまで流し込み、真空デシケータ内に静置して1分間減圧して脱泡した。その後、脱泡した接着物を室温で10時間静置し、エポキシ注形樹脂を硬化し、サンプルを調製した。リファインソーエクセル(リファインテック株式会社製)を用いて、サンプルをシリコンチップ近傍で切断した。耐水研磨紙(カーボマックペーパー、リファインテック株式会社製)をつけた研磨装置(Refine Polisher HV、リファインテック株式会社製)で、サンプルを接着物の中央付近まで削り断面を出した。研磨したサンプルは、余分なエポキシ注形樹脂を削り落とし、イオンミリング装置で加工できるサイズにした。イオンミリング装置(IM4000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)をCP加工モードで用い、アルゴンガス流量0.07〜0.1cm
3/min、処理時間120分の条件で、サイズ加工したサンプルを断面加工してSEM用サンプルとした。このSEM用サンプルをSEM装置(日本電子株式会社製、NeoScope JCM−5000)により、印加電圧10kVで観察した。
【0129】
(3)フレーク状マイクロ銅粒子の短径の算出
「(2)接合用銅ペーストの断面モルフォロジー観察」で得られた5000倍のSEM像をMicrosoft PowerPoint(Microsoft社製)で読み込んだ(読み込み時、画像サイズは高さ9.9cm×幅11.74cmであった)。画像下部のスケールバー(本例では5μmを示すスケール)の端から端に対し、直線を引き、その直線の長さを記録した(本例では2.5cm)。続いて、フレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状に外接するように長方形を描画した。あるフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状に対して、1.79cm×0.36cmの長方形を描画した。ここで、長方形の長辺(この例では1.79cm)はフレーク状マイクロ銅粒子の長径X又は中径Yに相当する。長方形の短辺(この例では0.36cm)をフレーク状マイクロ銅粒子の短径Tとした。5μmのスケールバーが2.5cmの直線という比率から、次のように短径Tを算出した。
短径T=0.36cm×5μm/2.5cm=0.72μm
この操作を画面上のフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状に対し、重複無く繰り返した。ただし、画面端からはみ出て像が切断されているフレーク状マイクロ銅粒子は選択しなかった。50個以上のフレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状を測定し、測長結果の平均を計算した。この結果、フレーク状マイクロ銅粒子の短径の平均値Tavを得た。この短径の平均値Tavと、「(1)フレーク状マイクロ銅粒子の長径及び中径の算出」より得られた長径の平均値Xavと、中径の平均値Yavとを用いて、フレーク状マイクロ銅粒子における長径/中径(Xav/Yav)、長径/短径(Xav/Tav)、中径/短径(Yav/Tav)の比をそれぞれ算出した。
【0130】
(4)接合用銅ペーストの配向秩序度の算出
「(2)接合用銅ペーストの断面モルフォロジー観察」で得られた5000倍のSEM像をImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)で読み込んだ。SEM像としては、基板又はシリコンチップと接合用銅ペーストとの界面が写っているものを用いた。[T]キーを押してROI Managerウインドウを表示し、Show Allのチェックボックスにチェックを入れた。メインウインドウからStraight Lineを選択した。画像上のフレーク状マイクロ銅粒子の断面の端から端までをクリック→ドラッグでラインを引き、[T]キーを押してROI Managerウインドウに登録した。この操作を画面上のフレーク状マイクロ銅粒に由来する形状に対し、重複無く繰り返した。ただし、画面端からはみ出て像が切断されているフレーク状マイクロ銅粒に由来する形状は選択しなかった。次に、ROI Managerウインドウ内のMeasureボタンを押した。計測された角度がResultsウインドウに表示されるので、[File]→[Save As]でファイルにセーブした。基板又はシリコンチップと接合用銅ペーストとの界面が画像に対し水平からずれている場合には、同様にしてその角度を計測した。セーブされた結果のファイルをMicrosoft Excelで読み込んだ。基板又はシリコンチップと接合用銅ペーストとの界面が画像に対し水平からずれている場合には、測定された各角度データから接合界面の角度を減算した。各角度データθに対しcos
2θを求め、その平均値<cos
2θ>を算出し、S=1/2×(3<cos
2θ>−1)に代入して配向秩序度Sを算出した。
【0131】
(5)ダイシェア強度の測定
銅板(19×25×3mm
3)上に厚さ70μmのステンレス板に3×3mm正方形の開口を3行3列有するメタルマスクを載せ、メタルスキージを用いてステンシル印刷により接合用銅ペーストを塗布した。塗布した接合用銅ペースト上に、チタン、ニッケルがこの順で形成され、3×3mm
2の被着面がニッケルであるシリコンチップ(チップ厚:600μm)を載せ、ピンセットで軽く押さえた。これをチューブ炉(株式会社エイブイシー製)にセットし、アルゴンガスを1L/minで流して空気をアルゴンガスに置換した。その後、水素ガスを300mL/minで流しながら昇温10分、350℃、10分の条件で焼結処理して銅板とシリコンチップを銅焼結体で接合した接合体を得た。その後、アルゴンガスを0.3L/minに換えて冷却し、50℃以下で接合体を空気中に取り出した。
接合体の接着強度は、ダイシェア強度により評価した。1kNのロードセルを装着した万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)を用い、測定スピード500μm/s、測定高さ100μmでシリコンチップを水平方向に押し、接合体のダイシェア強度を測定した。8個の接合体の測定した値の平均値をダイシェア強度とした。
【0132】
(6)焼結体の密度
厚さ1mmのテフロン(登録商標)板に15×15mm
2の開口を設けた。ガラス板上にこのテフロン(登録商標)板を置き、開口部に接合用銅ペーストを充填し、メタルスキージで開口から溢れた銅ペーストを除去した。テフロン(登録商標)板をはずし、チューブ炉にセットし、アルゴンガスを0.3L/minで流しながら、150℃に加熱して1時間保持して分散媒を除去した。そのまま、ガスを水素ガス300mL/minに換え、350℃に昇温して60分焼結処理して、焼結体を得た。その後、アルゴンガスを0.3L/minに換えて冷却し、50℃以下で焼結体を空気中に取り出した。板状の焼結体をガラス板から剥離し、紙やすり(800番)で研磨して10×10mm
2のサイズで表面が平坦な板状サンプルを得た。板状サンプルの縦、横、厚みの寸法を測定し、板状サンプルの重量を測定した。これらの値から板状サンプルの密度を算出した。
【0133】
(7)接合体の断面モルフォロジー観察
「(5)ダイシェア強度の測定」に記載の方法で接合体を製造した。製造した接合体をカップ内にサンプルクリップ(Samplklip I、Buehler社製)で固定し、周囲にエポキシ注形樹脂(エポマウント、リファインテック株式会社製)を接合体全体が埋まるまで流し込み、真空デシケータ内に静置して1分間減圧して脱泡した。その後、室温で10時間静置し、エポキシ注形樹脂を硬化し、サンプルを調製した。リファインソーエクセル(リファインテック株式会社製)を用いて、サンプルをシリコンチップ近傍で切断した。耐水研磨紙(カーボマックペーパー、リファインテック株式会社製)をつけた研磨装置(Refine Polisher HV、リファインテック株式会社製)で接合体の中央付近まで削り断面を出した。研磨したサンプルは、余分なエポキシ注形樹脂を削り落とし、イオンミリング装置で加工できるサイズにした。イオンミリング装置(IM4000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)をCP加工モードで用い、アルゴンガス流量0.07〜0.1cm3/min、処理時間120分の条件で、サイズ加工したサンプルを断面加工してSEM用サンプルとした。このSEM用サンプルをSEM装置(日本電子株式会社製、NeoScope JCM−5000)により、銅焼結体断面を印加電圧10kVで観察した。
【0134】
(8)焼結体の配向秩序度の算出
「(7)接合体の断面モルフォロジー観察」で得られた5000倍のSEM像をImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)で読み込んだ。SEM像としては、基板又はシリコンチップと接合用銅ペーストの界面が写っているものを用いた。「(4)接合用銅ペーストの配向秩序度の算出」と同様の手順で、接合体の配向秩序度Sを算出した。
【0135】
(9)熱伝導率
「(6)焼結体の密度」で作製した板状サンプルを用い、熱拡散率をレーザーフラッシュ法(LFA467、ネッチ社製)で測定した。この熱拡散率と、示差走査熱量測定装置(DSC8500、パーキンエルマー社製)で得られた比熱容量と、「(6)焼結体の密度」で求めた密度との積により、25℃における焼結体の熱伝導率[W/(m・K)]を算出した。
【0136】
(10)温度サイクル接続信頼性試験
「(5)ダイシェア強度の測定」と同様にして、銅板(19×25×3mm
3)と3×3mm
2の被着面がニッケルであるシリコンチップ(チップ厚:600μm)とを銅焼結体で接合した接合体を得た。接合体上にシリコーン樹脂(SE1880、東レ・ダウコーニング株式会社製)をシリコンチップが覆われるようにスポイトでコートし、減圧デシケータ内で3分脱泡した。脱泡後、70℃にした温風循環オーブン内に30分、150℃にした温風循環オーブン内に60分保持することで硬化し、温度サイクル用試験片を得た。この温度サイクル用試験片を温度サイクル試験機(TSA−72SE−W、エスペック株式会社製)にセットし、低温側:−40℃、高温側:200℃、各ステップ:15分、除霜サイクル:自動、サイクル数:300サイクルの条件で温度サイクル接続信頼性試験を実施した。超音波探傷装置(インサイト Insight−300)を用い、温度サイクル接続信頼性試験前後の銅焼結体及び被着体界面の接合状態のSAT像を得て、剥離の有無を調べた。接合部の20面積%以上が剥離した場合を不良(×)とした。
【0137】
(実施例1)
分散媒としてα−テルピネオール(和光純薬工業株式会社製)0.5g及びイソボルニルシクロヘキサノール(MTPH、日本テルペン化学株式会社製)0.5gと、サブマイクロ銅粒子としてHT−14(三井金属鉱業株式会社製)7gとをポリ瓶に混合し、超音波ホモジナイザー(US−600、日本精機株式会社製)により19.6kHz、600W、1分処理し分散液を得た。この分散液に、フレーク状マイクロ銅粒子としてMA−C025(三井金属鉱業株式会社製)3gを添加し、スパチュラで乾燥粉がなくなるまでかき混ぜた。ポリ瓶を密栓し、自転公転型攪拌装置(Planetry Vacuum Mixer ARV−310、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで2分間撹拌し、減圧下、2000rpmで2分間撹拌して接合用銅ペースト1を得た。この接合用銅ペースト1を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0138】
なお、上記で用いたサブマイクロ銅粒子及びフレーク状マイクロ銅粒子における、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子の含有量、及び最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量は、50個以上の粒子について、測定して得られた粒子径分布から換算した。この換算値に基づき、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子全量を基準とした、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有割合を算出した。
【0139】
(実施例2)
フレーク状マイクロ銅粒子として3L3(福田金属箔粉工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト2を得た。接合用銅ペースト2を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0140】
(実施例3)
フレーク状マイクロ銅粒子として1110F(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト3を得た。接合用銅ペースト3を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0141】
(実施例4)
サブマイクロ銅粒子としてTN−Cu100(太陽日酸株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト4を得た。接合用銅ペースト4を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0142】
(実施例5)
サブマイクロ銅粒子としてCH−0200(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト5を得た。接合用銅ペースト5を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0143】
(実施例6)
銅粒子としてCT−500(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト6を得た。接合用銅ペースト6を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0144】
(実施例7)
添加剤として銀粒子LM1(トクセン工業株式会製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト7を得た。接合用銅ペースト7を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0145】
(実施例8)
添加剤としてニッケル粒子Ni−HWQ(福田金属箔粉工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト8を得た。接合用銅ペースト8を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0146】
(実施例9)
最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子として、球状銅粒子1300Y(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト9を得た。接合用銅ペースト9を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0147】
(比較例1)
フレーク状マイクロ銅粒子を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト10を得た。接合用銅ペースト10を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0148】
(比較例2)
フレーク状マイクロ銅粒子の代わりに球状銅粒子1300Y(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト11を得た。接合用銅ペースト11を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0149】
(比較例3)
フレーク状マイクロ銅粒子の代わりに球状銅粒子1100Y(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト12を得た。接合用銅ペースト12を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0150】
(比較例4)
フレーク状マイクロ銅粒子の代わりに球状銅粒子1050Y(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト13を得た。接合用銅ペースト13を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0151】
(比較例5)
フレーク状マイクロ銅粒子の代わりに球状銅粒子1020Y(三井金属鉱業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、接合用銅ペースト14を得た。接合用銅ペースト14を用いて、各種の測定及び分析を行った。
【0152】
実施例及び比較例の組成及び試験結果を表1〜3に示す。
【0153】
実施例及び比較例で用いた銅粒子の形状は以下の通りである。
(サブマイクロ銅粒子)
HT−14:50%体積平均粒径0.36μm、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有量100質量%
TN−Cu100:50%体積平均粒径0.12μm、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有量90質量%
CH−0200:50%体積平均粒径0.36μm、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有量100質量%
CT−500:50%体積平均粒径0.72μm、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有量80質量%
上記サブマイクロ銅粒子において、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子の含有量、及び最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量は、いずれも0質量%であった。
(フレーク状マイクロ銅粒子)
MA−C025:平均最大径4.1μm、アスペクト比7.9、最大径が1μm以上20μm以下の銅粒子の含有量100質量%
3L3:平均最大径7.3μm、アスペクト比26、最大径が1μm以上20μm以下の銅粒子の含有量100質量%
1110F:平均最大径5.8μm、アスペクト比20、最大径が1μm以上20μm以下の銅粒子の含有量100質量%
上記フレーク状マイクロ銅粒子において、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上のフレーク状マイクロ銅粒子の含有量は100質量%であり、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が2未満のマイクロ銅粒子の含有量は0質量%であった。
(マイクロ銅粒子)
1300Y:平均最大径3.3μm、アスペクト比1
【0154】
なお、上記の体積平均粒径は下記の方法で求めた。
(50%体積平均粒径)
島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD−7500nano、株式会社島津製作所製)と付属のソフトウェア(WingSALDII−7500− for Japanese V3.、株式会社島津製作所製)を用いて、以下の(1)〜(5)に従って50%体積平均粒径を測定した。
(1)ソフトウェアの設定
測定装置付属のパソコンでWingSALDII−7500− for Japanese V3.1を起動し,マニュアルを押し装置の初期化を行った。初期化が終わった後に、保存ファイル名を指定し「次へ」をクリックし、測定条件及び粒子径分布計算条件を以下のように設定し、「次へ」をクリックした。
(測定条件)
・回折/散乱光の検出
平均回数(測定回数:1):128、測定回数:1、測定間隔(秒):2
・測定吸光範囲
最大値:0.2、最小値:0
・ブランク領域/測定領域
ブランク測定許容変動最大値:150、測定最適範囲(MAX):45000、測定最適範囲(MIN):15000
(粒子径分布計算条件)
屈折率の選択:参照試料/順金属/半導体等(固体値)
サンプルの物質:4 Copper(銅)
屈折率の選択:1.18−2.21、「側方/後方センサを評価する」にチェックを入れた
(2)ブランク測定
島津ナノ粒子径分布測定装置SALD−7500nano用回分セル(SALD−BC75、株式会社島津製作所製)をSALD−7500nanoに取り付けて測定を行った。SALD−BC75に付属のロート付き回分セル(部品番号S347−61030−41、株式会社島津製作所製、以下「回分セル」という。)内にα−テルピネオール(和光純薬工業株式会社製)を回分セルの2つの標線の間に収まるようにスポイトで滴下した。WingSALDII−7500− for Japanese V3.の画面上から「診断」、「調整」を選択し、位置センサー出力が装置許容範囲内であることを確認した。「キャンセル」をクリックし元の画面に戻り、ブランク測定を選択し測定を行った。
(3)測定溶液の調製
SALD−BC75に付属の回分セルホルダ(部品番号S347−62301、株式会社島津製作所製)のかくはんレバー上に測定したい接合用銅ペーストを2mg載せ、ロート付き回分セルにセットした。次に、WingSALDII−7500− for Japanese V3.の画面上から「スターラ」を選択し、15分間撹拌を行った。
(4)測定
撹拌後、WingSALDII−7500− for Japanese V3.の画面上から「測定」を選択し測定を行った。(1)〜(4)の操作を4回繰り返し、4回測定した。
(5)統計
WingSALDII−7500− for Japanese V3.を起動し、「開く」をクリックし、測定したファイルを選択し、WingSALDII−7500− for Japanese V3.の画面上に測定データを表示した。「重ね描き」をクリックし、画面下段に50.000%径を表示し、4回の平均値を50%体積平均粒径とした。
【0155】
【表1】
【0156】
【表2】
【0157】
【表3】
【0158】
表1〜3から、「(5)ダイシェア強度の測定」に記載されているとおり、実施例の接合用銅ペーストを用いた接合体は、接合体の製造時に、特別な加圧をすることなくチップの自重による圧力のみで、良好なダイシェア強度、熱伝導率及び接続信頼性を有することが分かる。一方、フレーク状マイクロ銅粒子を含まない比較例の接合用銅ペーストを用いた接合体は、接合体の製造時に加圧をしない場合、チップ及び基板を充分に接合できなかった。
【0159】
(断面モルフォロジー観察)
図11〜13は、実施例1、4及び6の接合用銅ペーストをチップ12と基板との間に挟み、100℃、30分の熱処理を行い調製した接合用銅ペーストの乾燥膜のSEM像である。接合用銅ペースト中で、フレーク状マイクロ銅粒子10の隙間を非フレーク状銅粒子11(サブマイクロ銅粒子)が埋める構造をとっている。これらの接合用銅ペーストは、特定の平均最大径及びアスペクト比を有することで、基板上に印刷塗布する際のせん断力、又は、チップ12をマウントした際の微小な圧力によって、フレーク状マイクロ銅粒子10がチップ12又は基板との界面に対して略平行となるように配向しやすい。
【0160】
図15〜18は、実施例1、2、4及び6の接合用銅ペーストをチップ12と基板15の間に挟み、350℃、25分の焼結処理を行い調製した接合体のSEM像である。これらの図から、焼結後においても、焼結前の接合用銅ペーストの状態を反映していることが分かる。すなわち、フレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状13の隙間を非フレーク状銅粒子に由来する形状14が埋める構造をとっており、フレーク状マイクロ銅粒子に由来する形状13は、チップ12又は基板15の接合面に対して、略平行に配向している。本発明の接合用銅ペーストを用いて調製された接合体は、上記のような配向構造が密に詰った補強効果により、非フレーク状の銅粒子(例えば球状の銅粒子)のみを含む接合銅ペーストから形成した焼結体よりも、接続信頼性の高い銅焼結体を有することができる。
【0161】
図14は、比較例4の接合用銅ペーストをチップと基板の間に挟み、100℃、30分の熱処理を行い調製した接合用銅ペーストの乾燥膜のSEM像である。比較例4の接合用銅ペーストは非フレーク状銅粒子11のみを含む接合用銅ペーストである。
図19及び20は、比較例3及び4の接合用銅ペーストをチップ12と基板15の間に挟み、350℃、25分の焼結処理を行い調製した接合体のSEM像である。非フレーク状銅粒子のみを用いて調製した接合用銅ペーストは、非フレーク状銅粒子同士が点接触に近い形で焼結すること、被着面に対して接着面積を充分に確保できないこと等のため、充分な接合が確保できず、また接合後の接続信頼性試験の結果にも優れない。
【0162】
以上の結果から、本発明に係る接合用銅ペーストによって形成された焼結体を接合層として有する電子デバイスでは、接合された部材間の熱膨張率差で生じた熱応力が接合層にかかった場合でも、高い接続信頼性を維持できると考えられる。これは、熱応力で接合用銅ペーストの焼結体に生じる亀裂の伝播をフレーク状マイクロ銅粒子に由来する配向構造が阻害するため接続信頼性が高まったと考えられる。また、この焼結体は金属結合で繋がった金属銅で構成されていることから、100W/(m・K)以上の高い熱伝導率が発現し、発熱の大きな電子デバイスの実装において速やかな放熱が可能である。また、本発明に係る接合用銅ペーストによれば、無加圧であっても金属結合で強固に接合されるため、被着面の材質が銅、ニッケル、銀、金に対し、接合強度を表すダイシェア強度を20MPa以上とすることができる。このように、本発明に係る接合用銅ペーストは、パワーデバイス、ロジック、アンプ等の発熱の大きな電子デバイスの接合に非常に有効な性質を有している。そのため、本発明に係る接合用銅ペーストを適用した場合には、より高い投入電力が許容でき、高い動作温度で動作させることが可能となる。