(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の表現や用語の定義は、特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
式(m1)で表される構成単位を単位(m1)と記す。他の式で表される単位もこれに準じて記す。
式(m1)で表されるモノマーをモノマー(m1)と記す。他の式で表される化合物もこれに準じて記す。
式(1i)で表される基を基(1i)と記す。他の式で表される基もこれに準じて記す。
「単位」とは、モノマーがラジカル重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって、該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「含フッ素化合物」とは、炭素原子に結合するフッ素原子を有する化合物を意味する。
「含ヨウ素化合物」とは、炭素原子に結合するヨウ素原子を有する化合物を意味する。
「含水素化合物」とは、炭素原子に結合する水素原子を有する化合物を意味する。
「ペルフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置き換わった基を意味する。「ペルフルオロアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子のすべてがフッ素原子に置き換わった基を意味する。
「ポリフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子に置き換わった基を意味する。「ポリフルオロアルキレン基」とは、アルキレン基の水素原子の一部がフッ素原子に置き換わった基を意味する。
「脱ヨウ素処理」とは、化合物中のC−I結合をC−H結合に変換する処理を意味する。
「連鎖移動剤」とは、ヨウ素原子を引き抜かれて生成したラジカルに水素原子を提供する化合物を意味する。
【0010】
(含ヨウ素化合物)
本発明において脱ヨウ素処理される被処理体は、基(1i)または基(2i)を有する含ヨウ素化合物である。すなわち、含ヨウ素化合物は、本発明において被処理化合物であるが、被処理化合物は、フッ素を含んでいるので含フッ素化合物ともいえる。
−CFRf−I 式(1i)
【0012】
式(1i)中、Rfはフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を示す。
ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。
Rfとしては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはペンタフルオロエチル基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がより好ましく、フッ素原子がさらに好ましい。
【0013】
式(2i)中、Rf’を含む環は5員環又は6員環であり、Rf’は直鎖または分岐構造を有する、エーテル結合性酸素原子を有していても良いペルフルオロアルキレン基を示す。Rf’を含む環は5員環であるものが好ましい。Rf’は分岐構造を有するものが好ましく、エーテル結合性酸素原子を含むものがより好ましい。
R
aおよびR
bは、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基、または炭素数1〜5のペルフルオロアルコキシ基を示す。R
aおよびR
bは、少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましく、両方がフッ素原子であることがより好ましい。
ペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0014】
本発明における含ヨウ素化合物は、低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。
含ヨウ素化合物が低分子化合物である場合、該低分子化合物としては、下記式(4)で表される化合物、または、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
Q
1−CFRf−I 式(4)
Q
2−(CFRf−I)
2 式(5)
式(4)中、Rfはフッ素原子またはペルフルオロアルキル基であり、Q
1はフッ素原子またはエーテル結合性酸素原子を有していてもよいポリフルオロアルキル基を示す。式(5)中、Rfはそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基であり、Q
2はエーテル結合性酸素原子を有してもよいポリフルオロアルキレン基を示す。
Rfの好ましい態様は、式(1i)において説明したとおりである。
【0015】
Q
1がエーテル結合性酸素原子を有するポリフルオロアルキル基である場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ポリフルオロアルキル基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、基(1i)と結合する側の末端に存在していてもよい。ポリフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。ポリフルオロアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。該ポリフルオロアルキル基は、ペルフルオロアルキル基が好ましい。
【0016】
Q
2がエーテル結合性酸素原子を有するポリフルオロアルキレン基である場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ポリフルオロアルキレン基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、基(1i)と結合する側の末端に存在していてもよい。ポリフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。ポリフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。該ポリフルオロアルキレン基は、ペルフルオロアルキレン基が好ましい。
【0017】
含ヨウ素化合物が高分子化合物である場合、該高分子化合物としては、モノマーのラジカル重合反応で得られるポリマーが挙げられる。少なくとも1以上のC−I結合を有し、炭素原子に結合した水素原子のすべてがフッ素原子に置き換わったポリマーが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合が増えるほど、脱ヨウ素処理後のポリマーの耐熱性、耐光性、化学的安定性、低屈折率、低誘電率、撥水撥油性等の特性が良好になる。ポリマーとしては、分岐分子鎖を有する分岐ポリマーであってもよく、非晶質の分岐ポリマーであってもよい。
【0018】
非晶質の分岐ポリマーとしては、ヨウ素原子を有するモノマー(m1)に基づく単位(m1)と、脂肪族環構造を有するモノマー(m2)および環化重合によって脂肪族環構造を形成し得るモノマー(m2’)のいずれか一方または両方に基づく単位(m2)とを含むポリマーが挙げられる。
【0019】
分岐ポリマーの分岐点は、単位(m1)からヨウ素原子を除いた単位からなる。分岐ポリマーの形成の途中で、重合反応系内のラジカルによりヨウ素原子が引き抜かれた単位(m1)は、モノマー成分の重合の開始点となり、モノマー成分の重合後に形成されたポリマーの分岐点となっている。
【0020】
分岐ポリマーにおける基(1i)は、単位(m1)中の(重合中に引き抜かれずに残存している)ヨウ素原子により構成される場合もある。また、分岐ポリマーにおける基(1i)は、単位(m2)にヨウ素原子が結合した部分、すなわちヨウ素原子が結合しているポリマー末端部としても存在する。該ポリマー末端部に存在するヨウ素原子は、ポリマーの形成の途中で、単位(m1)から離脱したヨウ素原子、または、重合反応系内のヨウ素を有するモノマー(m1)からヨウ素原子が移動してきたものである。
【0021】
モノマー(m1):
モノマー(m1)は、ヨウ素原子を有するモノマーである。
モノマー(m1)としては、生成するポリマー中のフッ素原子の割合を大きくするため、炭素原子に結合する水素原子の一部がヨウ素原子に置き換わり、残りの水素原子がすべてフッ素原子に置き換わったモノマーが好ましい。
【0022】
モノマー(m1)としては、下記のモノマーが挙げられる。
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−I、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−I、
CF
2=CFO(CF
2)
2−I、CF
2=CFO(CF
2)
3−I、
CF
2=CFO(CF
2)
4−I、CF
2=CFO(CF
2)
5−I、
CF
2=CFO(CF
2)
6−I、CF
2=CFO(CF
2)
8−I、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)−I、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)−I、
CF
2=CFO(CF
2)
3OCF
2CF
2−I、
CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2CF
2−I、
CF
2=CFOCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−I、
CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2−I、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CH
2−I、
CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2CH
2CH
2−I、
CH
2=CHCF
2CF
2−I、CH
2=CHCF
2CF
2CF
2CF
2−I、
CH
2=CFCF
2CF
2−I、CH
2=CFCF
2CF
2CF
2CF
2−I、
CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)−I、
CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)−I、
CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)−I
これらの中でも、基(1i)を含有するモノマーが、生成ポリマーの安定化が容易なので好ましい。ペルフルオロモノマーがより好ましい。
【0023】
モノマー(m2):
モノマー(m2)は、脂肪族環構造を有するモノマーである。
脂肪族環構造は、エーテル結合性酸素原子を1個または2個有してもよく、炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい環状の有機基である。
モノマー(m2)としては、生成するポリマー中のフッ素原子の割合を大きくするため、ペルフルオロモノマーが好ましい。
モノマー(m2)における重合反応性の炭素−炭素二重結合は、脂肪族環構造を構成する隣接する2個の炭素原子から構成されてもよく、脂肪族環構造を構成する1個の炭素原子とこれに隣接する脂肪族環構造外に存在する1個の炭素原子から構成されてもよい。
【0024】
モノマー(m2)としては、たとえば、モノマー(m20)またはモノマー(m22)が挙げられ、モノマー(m20)が好ましい。モノマー(m20)とモノマー(m1)を共重合することで、末端に基(2i)を有する分岐ポリマーが得られる。モノマー(m20)はモノマー(m21)であることがさらに好ましい。
【0027】
式(m20)中、Rf’、R
a、R
bは、式(2i)と同様である。
式(m21)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基である。
R
13およびR
14は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基、または炭素数1〜5のペルフルオロアルコキシ基である。R
13およびR
14は、重合反応性が高い点から、少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましく、両方がフッ素原子であることがより好ましい。
ペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0028】
式(m22)中、R
21〜R
26は、それぞれ独立に、エーテル結合性酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基またはフッ素原子である。1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキル基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子と結合する側の末端に存在していてもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
R
25およびR
26は、重合反応性が高い点から、少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましく、両方がフッ素原子であることがより好ましい。
【0029】
モノマー(m21)としては、たとえば、モノマー(m21−1)〜(m21−7)が挙げられる。
【0031】
モノマー(m22)としては、たとえば、モノマー(m22−1)またはモノマー(m22−2)が挙げられる。合成が容易である点から、モノマー(m22−1)がより好ましい。
【0033】
モノマー(m2’):
モノマー(m2’)は、環化重合によって脂肪族環構造を形成し得るモノマーである。
脂肪族環構造は、エーテル結合性酸素原子を1個または2個有してもよく、炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい環状の有機基である。
モノマー(m2’)としては、耐久性の点から、ペルフルオロモノマーが好ましく、たとえば、モノマー(m24)が挙げられる。
【0034】
CF(R
41)=C(R
43)−O−CF(R
46)−CF(R
45)−C(R
44)=CF(R
42) ・・・(m24)。
R
41〜R
46は、それぞれ独立に、エーテル結合性酸素原子を有してもよい1価のペルフルオロ有機基またはフッ素原子である。1価のペルフルオロ有機基としては、ペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキル基の炭素−炭素結合間に挿入されていてもよく、炭素原子と結合する側の末端に存在していてもよい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
R
41〜R
44は、重合反応性が高い点から、フッ素原子であることがより好ましい。
【0035】
モノマー(m24)としては、たとえば、モノマー(m24−1)〜(m24−3)が挙げられ、モノマーの合成のしやすさから、モノマー(m24−1)が好ましい。
CF
2=CF−O−CF
2−CF
2−CF=CF
2 ・・・(m24−1)、
CF
2=CF−O−CF
2−CF(CF
3)−CF=CF
2 ・・・(m24−2)、
CF
2=CF−O−CF(CF
3)−CF
2−CF=CF
2 ・・・(m24−3)。
【0036】
また、他の分岐ポリマーとしては、ヨウ素原子を有するモノマー(m1)に基づく単位(m1)と、脂肪族環構造を有するモノマー(m2)および環化重合によって脂肪族環構造を形成し得るモノマー(m2’)のいずれか一方または両方に基づく単位(m2)とを含むセグメント(A)からなる分岐分子鎖の末端に、後述するイオン性基の前駆体基を有するモノマー(m3)に基づく単位(m3)を有するセグメント(B)からなる線状の分子鎖の1つ以上が結合した分岐型多元セグメント化コポリマーが挙げられる。セグメント(A)、セグメント(B)はモノマー(m1)、モノマー(m2)、モノマー(m2’)およびモノマー(m3)以外のモノマー(m4)に基づく単位(m4)を含んでもよい。
なお、「イオン性基」とは、H
+、一価の金属カチオン、アンモニウムイオン等を有する基である。モノマー(m1)、モノマー(m2)、モノマー(m2’)およびモノマー(m4)は、イオン性基またはその前駆体基を有しない。
【0037】
分岐型多元セグメント化コポリマーのセグメント(B)の末端には、ヨウ素原子が結合した基(1i)または基(2i)が存在する。セグメント(A)に含まれていた基(1i)または基(2i)の一部が残存していても良い。
【0038】
分岐型多元セグメント化コポリマーは、イオン性基の前駆体基(加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によってイオン性基に変換できる基、例えば−SO
2F基)をイオン性基(スルホン酸基(−SO
3−H
+基))に変換したあと、電解質材料として燃料電池等に使用され得るが、基(1i)または基(2i)がポリマー中に残存していると、燃料電池の性能に影響を及ぼすことがある。
【0039】
分岐型多元セグメント化コポリマーにおけるモノマー(m1)、モノマー(m2)については、上述したのと同様である。
【0040】
モノマー(m3):
モノマー(m3)は、イオン性基の前駆体基を有するモノマーである。該モノマー(m3)としては、電解質材料、特には燃料電池用電解質材料としての耐久性の点から、ペルフルオロモノマーが好ましい。
モノマー(m3)としては、1つの前駆体基を有するモノマー(m3−1)、2つの前駆体基を有するモノマー(m3−2)等が挙げられる。
【0041】
モノマー(m3−1):
モノマー(m3−1)としては、分岐ポリマーの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、モノマー(m31)が好ましい。
CF
2=CF(CF
2)
pOCF
2−CFY
1−Q
3−SO
2F ・・・(m31)。
【0042】
Q
3は、単結合、またはエーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。
Q
3のペルフルオロアルキレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、CFY
1側の末端に存在していてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。 ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。
【0043】
Y
1は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基である。 Y
1としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
pは、0または1である。
【0044】
モノマー(m31)としては、ポリマーの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、モノマー(m31−1)〜(m31−4)が好ましい。
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−SO
2F ・・・(m31−1)、
CF
2=CFOCF
2CF
2−SO
2F ・・・(m31−2)、
CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CF
2−SO
2F ・・・(m31−3)、
CF
2=CFCF
2OCF
2CF
2−SO
2F ・・・(m31−4)。
【0045】
モノマー(m3−2):
モノマー(m3−2)としては、下記モノマー(m32)が好ましい。
【0047】
qは、0または1である。
Q
21は、エーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。Q
22は、単結合、またはエーテル結合性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。
Q
21、Q
22のペルフルオロアルキレン基がエーテル結合性酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、CY
2側の末端に存在していてもよい。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。
Q
21およびQ
22の少なくとも一方は、CY
2側の末端にエーテル結合性酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
Y
2は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基である。Y
2は、フッ素原子、またはエーテル結合性酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜6の直鎖のペルフルオロアルキル基が好ましい。
【0048】
モノマー(m32)としては、ポリマーの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、モノマー(m32−1)〜(m32−3)が好ましく、モノマー(m32−1)が好ましい。
【0050】
上述した非晶質の分岐ポリマーや分岐型多元セグメント化コポリマーは、モノマー(m4)に基づく単位を含んでいてもよい。
モノマー(m4):
モノマー(m4)は、モノマー(m1)、モノマー(m2)、モノマー(m2’)およびモノマー(m3)以外の他のモノマーである。
【0051】
モノマー(m4)としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、ペルフルオロα−オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等)、(ペルフルオロアルキル)エチレン類((ペルフルオロブチル)エチレン等)、(ペルフルオロアルキル)プロペン類(3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等)等が挙げられる。モノマー(m4)としては、耐久性の点から、ペルフルオロモノマーが好ましく、TFEがより好ましい。
【0052】
上述した非晶質の分岐ポリマーや分岐型多元セグメント化コポリマーは、公知の通常のラジカル重合法を用いて製造される。
【0053】
(有機過酸化物)
本発明において、含ヨウ素化合物は、有機過酸化物を用いて処理される。基(1i)または基(2i)を有する含ヨウ素化合物を無機酸化物やアゾ化合物を用いて処理しても、含ヨウ素化合物のC−I結合をC−H結合に効率的に変換させることは困難である。
【0054】
有機過酸化物としては、ジアルキルペルオキサイド、ペルオキシケタール、ジアシルペルオキサイド、ジアルキルペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシモノカーボネート、ビス(フルオロアシル)ペルオキシド、ビス(クロロフルオロアシル)ペルオキシド、ペルオキシエステル等が挙げられる。
【0055】
これらの有機過酸化物としては、たとえばジ−t−ブチルペルオキサイド、ペルフルオロジ−t−ブチルペルオキサイドt−ブチルクミルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイドなどのジアルキルペルオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのペルオキシケタール;イソブチリルペルオキサイド、アセチルペルオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、ベンゾイルペルオキサイド、(Z(CF
2)
pCOO)
2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)等の含フッ素ジアシルペルオキサイド、ペルフルオロプロピルジアシルペルオキサイド、などのジアシルペルオキサイド;ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジ−メトキシブチルペルオキシジカーボネートなどのジアルキルペルオキシジカーボネート;クミルペルオキシネオデカネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカネート、t−ヘキシルペルオキシネオデカネート、t−アミルペルオキシネオデカネート、t−ブチルペルオキシネオデカネート、t−ブチルペルオキシネオオクタネ−ト、t−ブチルペルオキシネオヘキサネート、t−ブチルペルオキシピバレ−ト、t−ブチル−2−エチルヘキサネート、t−ブチルペルオキシソブチレート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテートなどのペルオキシエステル;t−ブチルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシアリルモノカーボネートなどのペルオキシモノカーボネートなどがあげられる。
【0056】
有機過酸化物の10時間半減期温度は10℃〜150℃であることが好ましく、15℃〜120℃がより好ましく、20℃〜80℃がさらに好ましい。該半減期温度が前記範囲内であれば、容易に反応速度を制御できるという利点がある。なお、本明細書において、10時間半減期温度とは、ベンゼン中0.1モル/リットルの濃度で10時間後に有機過酸化物濃度が半分となる温度であり、熱的特性を表わす指標の1つである。
【0057】
本発明において、有機過酸化物は、反応温度の制御のしやすさの理由から、ジイソプロピルペルオキシジカーボネートやt−ブチルペルオキシピバレ−トなどが好ましい。
【0058】
有機過酸化物の全モル数は、含ヨウ素化合物中のヨウ素原子の全モル数に対して、0.0005〜5倍であることが好ましい。0.0005倍以上であると反応の転化率が低すぎず実用的である。5倍以下であると、必要以上に有機過酸化物を添加することなく、安全上好ましく、0.005〜2倍がより好ましく、0.01〜1倍がさらに好ましく、0.02〜0.5倍が特に好ましい。また、有機過酸化物の反応液中の濃度は、反応を安全に行うために、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
従来(例えば、特許文献1)は、ラジカル開始剤によって炭素−ヨウ素結合が開裂されると考えられていたので、有機過酸化物で含ヨウ素化合物のC−I結合をC−H結合に効率的に変換するためには、過酸化物が大量に必要と考えられていた。イソペンタン、トルエンなどを存在させると、水素原子が引き抜かれて安定化されると考えられていたが、有機過酸化物と組み合わせた実験例はなく、これらの炭化水素化合物を添加する場合に必要な有機過酸化物の量についても知見がなかった。本発明の比較例の実験では、トルエンを添加してもC−I結合はC−H結合に効率的に変換されることはなかった。本発明者は、後述する特定の炭化水素構造を有する化合物を用いると、有機過酸化物の量が従来よりも少ない量であっても効率的に反応が進行することを見出した。含ヨウ素化合物のヨウ素原子のモル数よりもかなり少ないモル数の有機過酸化物でも反応は効率的に進行する。このような条件で反応が効率的に進行するということはこれまでに知られておらず、示唆もなかった。従来は有機過酸化物から生成したラジカルが含ヨウ素化合物からヨウ素原子を引き抜くと考えられていたので、ヨウ素原子のモル数よりも少ないモル数の有機過酸化物でC−I結合をC−H結合に変換する反応が試みられたことはなかった。含ヨウ素化合物からヨウ素原子が引き抜かれて生成したラジカルが、前記特定の炭化水素構造を有する化合物から水素原子を引き抜き、それによって生成したラジカルによって、含ヨウ素化合物からヨウ素原子が引き抜かれるという反応が繰り返されることで、効率的にC−I結合がC−H結合に変換されると考えられる。
【0060】
(含水素化合物)
本発明において、含ヨウ素化合物は、−CHR
1−CHR
2−CHR
3−で表される基(R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基)を有する含水素化合物を連鎖移動剤として用いて処理される。基(1i)または基(2i)を有する含ヨウ素化合物をメタノールやトルエン等を連鎖移動剤として用いて処理しても、含ヨウ素化合物のC−I結合をC−H結合に効率的に変換させることは困難である。
【0061】
上記含水素化合物は、鎖式飽和炭化水素(アルカン)、又は環式飽和炭化水素(シクロアルカン)が好ましく用いられるが、エーテル結合や他の官能基を有する化合物であっても良い。また、上記含水素化合物は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルカンまたはシクロアルカンが取り扱いが容易で反応活性が高く、副反応を起こしにくいので好ましい。
【0062】
上記アルカンとしては、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、等が挙げられる。なかでも、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、またはn−ヘプタンが好ましい。
上記シクロアルカンとしては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン等が挙げられる。なかでも、シクロペンタンまたはシクロヘキサンが好ましい。
【0063】
含水素化合物の全モル数は、含ヨウ素化合物中の全ヨウ素原子の全モル数に対して、2〜500倍であることが好ましい。含水素化合物の量が2倍以上であると水素引き抜き反応が起こりやすく反応収率が向上する。また含水素化合物の量が500倍以下であるとフッ素含有の含ヨウ素化合物の溶解性がよく、あるいは含ヨウ素化合物の濃度が薄くなりすぎることがない。なかでも、5〜300倍がより好ましく、10〜100倍がさらに好ましい。
【0064】
(含フッ素溶媒)
本発明においては、含ヨウ素化合物は、含フッ素溶媒に溶解または分散させて処理されることが好ましい。
【0065】
含フッ素溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルが挙げられる。
ペルフルオロカーボンとしては、n−ペルフルオロヘキサン、n−ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロベンゼン等が挙げられる。
【0066】
ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
【0067】
ハイドロフルオロカーボンとしては、1,1,2,2−テトラフルオロシクロブタン、CF
3CF
2CH
2CH
3、CF
3CHF(CF
2)
3F、CF
3(CF
2)
4H、CF
3CF
2CHF(CF
2)
2F、CF
3(CHF)
2(CF
2)
2F、CHF
2CHF(CF
2)
3F、CF
3(CF
2)
5H、CF
3CH(CF
3)(CF
2)
3F、CF
3CF(CF
3)CHF(CF
2)
2F、CF
3CF(CF
3)(CHF)
2CF
3、CF
3CH(CF
3)CHF(CF
2)
2F、CF
3(CF
2)
3(CH
2)
2H等が挙げられる。
【0068】
ハイドロフルオロエーテルとしては、CF
3CH
2O(CF
2)
2H、CHF
2CF
2CH
2O(CF
2)
2H、CH
3O(CF
2)
4H、CH
3OCF
2CF(CF
3)
2、CF
3CHFCF
2OCF
3等が挙げられる。
【0069】
これらの中で反応基質であるフッ素含有の含ヨウ素化合物と添加する含水素化合物の両方に相溶性のある溶媒が好ましく、例えば、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンが好ましい。
【0070】
(処理条件)
含フッ素溶媒の溶液中、含ヨウ素化合物の濃度は、反応液に対して、0.1〜50質量%であることが好ましい。生産性の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、反応開始時の急激な発熱を防止する観点から50質量%以下が好ましい。1〜30質量%がより好ましい。
含フッ素溶媒の溶液中、含水素化合物の濃度は、反応液に対して、0.1〜30質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であると、適度な反応速度を確保できる。含ヨウ素化合物が含水素化合物と自由に混合可能な場合は、含水素化合物を溶媒を兼ねて用いることも可能であるが、フッ素含有の含ヨウ素化合物との相溶性を確保するという観点から30質量%以下が好ましい。1〜20質量%であることがより好ましい。
【0071】
本発明において、含ヨウ素化合物の脱ヨウ素処理では、有機過酸化物の分解温度やより効率的な処理のために加熱処理するのが好ましい。この際の加熱処理温度としては、有機過酸化物の10時間半減期温度をT℃とするとき、T℃からT+80℃の間が好ましく、T+10℃からT+50℃の間がさらに好ましく、操作上の観点から、50℃〜150℃で加熱処理されることが好ましい。また、加熱時間は、1〜24時間が好ましい。急激な有機過酸化物の分解を伴う反応は危険なので、1時間以上をかけて反応を行うのが好ましい。また、生産性の観点から、加熱時間は24時間以内であることが好ましい。
【0072】
(含フッ素化合物)
本発明の製法によって、含ヨウ素化合物よりもヨウ素原子含有量の低減された含フッ素化合物が得られる。含フッ素化合物は、式(1h)で表される基または式(2h)で表される基を有していてよい。
−CFRf−H 式(1h)
【0074】
式(1h)中、Rfは、式(1i)において述べたのと同様である。
式(2h)中、Rf’、R
a、R
bは、式(2i)において述べたのと同様である。
【0075】
脱ヨウ素処理により、含ヨウ素化合物における基(1i)が基(1h)に変換され、含ヨウ素化合物における基(2i)が基(2h)に変換され得る。
【0076】
本発明の製造方法において、脱ヨウ素処理により、得られる含フッ素化合物のヨウ素原子含有量を、処理前の含ヨウ素化合物のヨウ素原子含有量の10%以下とすることができる。すなわち、脱ヨウ素処理の前後で、反応に処せられたすべてのC−I結合を形成するヨウ素原子の90%以上を除去することができる。含ヨウ素化合物がポリマーである場合、ポリマー中のヨウ素原子含有量を元の値の10%以下に容易に低減できる。例えば、ヨウ素原子含有量が1質量%であるポリマーであれば、ヨウ素原子含有量が0.1質量%以下に低減されたポリマーを得ることができる。本発明により、得られる含フッ素化合物のヨウ素原子含有量を、含ヨウ素化合物のヨウ素原子含有量のより好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下とすることができる。
【実施例】
【0077】
以下の例において、例1〜8、10、12〜15、21〜26、30が実施例であり、例9、11、27〜29が比較例である。
【0078】
(含ヨウ素化合物)
PHVE−I:CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−I
(モノマー(m1))
8IVE: CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−I ・・・(m1−1)
(モノマー(m2))
PDD:
【化10】
【0079】
(モノマー(m2’))
BVE:CF
2=CF−O−CF
2−CF
2−CF=CF
2 ・・・(m24−1)
(モノマー(m3))
PSVE:
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−SO
2F ・・・(m31−1)
BSVE−2E:
【化11】
【0080】
(モノマー(m4))
TFE:CF
2=CF
2 ・・・(m4−1)
(有機過酸化物)
IPP:ジイソプロピルペルオキシジカーボネート
PBPV:t−ブチルペルオキシピバレ−ト
(溶媒)
HFC−52−13p:CF
3(CF
2)
5H、
HCFC−141b:CH
3CCl
2F、
HCFC−225cb:CClF
2CF
2CHClF、
HCFC−225:CClF
2CF
2CHClFとCF
3CF
2CHCl
2の混合物。
【0081】
[8IVE(m1−1)の合成]
8IVE(m1−1)は、Huaxue Xuebao、第47巻、第7号、1989年、pp.720−723に記載された方法と同様にして、合成した。
【0082】
[分岐ポリマー(1)の合成例]
8IVE(m1−1)に基づく単位とBVE(m24−1)に基づく単位を有する分岐ポリマー(1)を以下のようにして合成した。
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、8IVEの3.67g(7.5mmol)を仕込んだ。IPPの1.546g(7.5mmol)を約15gのHFC−52−13pに溶解した液およびBVEの18.77g(67.5mmol)を加え、最後にHFC−52−13pを加えた。添加したHFC−52−13pの全量は44.01gであった。液体窒素を用いて、凍結脱気を2回繰り返して約0℃まで戻した後、窒素ガスを0.3MPaGまで導入した。オートクレーブをウォーターバスにセットし、内温を45℃に保持しつつ、4時間撹拌した。次いで、10分かけて55℃に昇温して1時間撹拌した。さらに、10分かけて65℃に昇温して1時間撹拌した後、5分かけて70℃に昇温して1時間撹拌した。その後、オートクレーブを氷水に浸けて、20℃以下まで冷却して反応を停止した。
反応液をオートクレーブからビーカーに移し替え、約110gのHFC−52−13pを添加した。n−ヘキサンを約110g加えて撹拌し、一晩放置した。ビーカーの内容物をナスフラスコに移してエバポレーターで溶媒を留去し、次いで、60℃で約200時間真空乾燥して、20.65gの固形分(分岐ポリマー(1))を得た。GPCで測定したポリメチルメタクリレート換算の質量平均分子量は、8,700であった。
【0083】
分岐ポリマー(1)をペルフルオロベンゼンに溶解して
19F−NMR(ペルフルオロベンゼンのケミカルシフトを−162.7ppmに設定、以下同様)を測定したところ、ヨウ素原子に結合したBVE単位の末端の数と、ヨウ素原子が解離していない8IVE単位に基づく-OCF
2CF
2−I基の数の比率は、−44〜−54ppmのピークと−62ppm付近のピークの比率から29:71であることが分かり、このポリマーが分岐分子鎖を含有することが確認された。元素分析により求めたヨウ素原子含有量は3.4質量%であり、この値から、8IVE(m1−1)に由来する単位とBVE(m24−1)に由来する単位のモル比(8IVE/BVE)は1/12と計算された。
【0084】
[分岐型多元セグメント化コポリマー(2)の合成例]
8IVE(m1−1)に基づく単位とPDD(m21−1)に基づく単位を有するセグメントと、TFE(m4−1)に基づく単位とBSVE−2E(m32−1)に基づく単位を有するセグメントとを含有する分岐型多元セグメント化コポリマー(2)を以下のようにして合成した。
【0085】
内容積230mLのハステロイ製オートクレーブに、8IVEの5.72g(11.7mmol)を仕込んだ。IPPの0.241g(1.17mmol)を5gのHCFC−225cbに溶解した液およびPDDの25.63g(105.0mmol)を加え、最後にHCFC−225cbを加えた。添加したHCFC−225cbの全量は118.42gであった。液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返して約0℃まで戻した後、窒素ガスを0.3MPaG(Gはゲージ圧力を表す。以下同様)まで導入した。オートクレーブをウォーターバスにセットし、内温を45℃に保持しつつ、8時間撹拌した。撹拌後、オートクレーブを氷水に浸けて、20℃以下まで冷却して反応を停止した。
ゼリー状の生成物をオートクレーブからビーカーに移し替え、HCFC−225cbを添加した。全量は214gであった。マグネチックスターラで5分間撹拌した後、n−ヘキサンの261gを加えてポリマーを凝集し、引き続き30分撹拌した。減圧ろ過を行って、得られたポリマーをn−ヘキサンで洗浄した。ポリマーをビーカーに戻してHCFC−225cbを加え、全量を214gとして、5分間撹拌した。n−ヘキサンの261gを加えてポリマーを凝集し、30分間撹拌した。減圧ろ過を行って、n−ヘキサンで洗浄した後、再び、同様にしてHCFC−225cbを加えて撹拌し、n−ヘキサンで凝集し、ろ過を行い、n−ヘキサンで洗浄した。その後、60℃の真空乾燥器で恒量になるまで乾燥し、白色粉体のポリマー(2’)の23.75gを得た。
【0086】
ポリマー(2’)について、元素分析でヨウ素原子の含有量を調べたところ、2.8質量%であった。この値からポリマー(2’)における8IVE(m1−1)に由来する単位とPDD(m21−1)に由来する単位のモル比(8IVE/PDD)は1/17(5.6/94.4)と計算された。GPCで求めたポリメチルメタクリレート換算のポリマー(2’)の質量平均分子量は、18,700であった。ポリマー(2’)をペルフルオロベンゼンに溶解して
19F−NMRを測定したところ、ヨウ素原子が結合したPDDに由来する単位が存在することがわかり、ポリマー(2’)が分岐分子鎖を含有することが確認された。ヨウ素原子が結合したPDDに由来する単位とヨウ素原子が解離していない8IVEに由来する単位の比率は、
19F−NMR(溶媒:ペルフルオロベンゼン)の−42〜−47ppmのピークと−62ppm付近のピークの比率より46:54であることがわかった。
【0087】
内容積230mLのハステロイ製オートクレーブに、ポリマー(2’)の6.99g、およびBSVE−2Eの260.32gを仕込み、閉蓋した後、気相部を窒素で置換した。40℃に昇温して12時間撹拌し、ポリマー(2’)を溶解させた。室温まで冷却した後、HFC−52−13pの1.73gに溶解させたIPPの18.3mgを加え、液体窒素を用いて、凍結脱気を2回繰り返した。昇温しながらTFEを連続的に導入し、温度を40℃、圧力を0.50MPaGで一定に保持した。温度が40℃で安定化した10分後にTFEの消費が始まった。定圧におけるTFE供給量が2.37gに達した4.3時間後に、オートクレーブを10℃まで冷却した。オートクレーブ内のTFEをパージして反応を停止した。
生成物をHCFC−225の15gで希釈した後、HCFC−141bの200gを加え、ポリマーを析出させて、ろ過した。ポリマーは、再度HCFC−225の150gに溶解させ、n−ヘキサンの50g、およびHCFC−141bの140gを加えて析出させ、ろ過した。溶解・析出の操作を同じ溶媒量を用いて再度実施した。次いで、ポリマーを80℃で一晩減圧乾燥し、TFE(m4−1)に由来する単位およびBSVE−2E(m32−1)に由来する単位からなるセグメント(B)の前駆体と、PDD(m21−1)に由来する単位および8IVE(m1−1)に由来する単位からなるセグメント(A)とからなる分岐型多元セグメント化コポリマーであるコポリマー(2)の13.3gを得た。
【0088】
コポリマー(2)の
19F−NMR(溶媒:ペルフルオロベンゼン)から求めたセグメント(B)の単位のモル比は、TFE/BSVE−2E=78.9/21.1であり、該セグメントのイオン交換容量は、2.00ミリ当量/g乾燥樹脂と計算された。滴定法で求めたコポリマー(2)のイオン交換容量は、1.22ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
測定したGPCチャートのピークは一つで、コポリマー(2)のポリメチルメタクリレート換算の質量平均分子量は、101,000であった。
【0089】
[分岐ポリマー(3)の合成例]
上記ポリマー(2’)の合成と同様の操作により8IVEとPDDの共重合を行い、ヨウ素含有量2.2質量%で、8IVEとPDDのモル比が1:22の分岐分子鎖を含有するポリマー(3)を得た。GPCで求めたポリメチルメタクリレート換算のポリマー(3)の質量平均分子量は、18,900であった。
【0090】
[分岐型多元セグメント化コポリマー(4)の合成例]
分岐型多元セグメント化コポリマー(2)の合成と同様の操作によって、8IVEとPDDの共重合体からなるセグメント(単位のモル比は、8IVE/PDD=5.0/95.0)と、TFEとBSVE−2Eの共重合体からなるセグメント(単位のモル比は、TFE/BSVE−2E=79.1/20.9)を有する分岐ポリマーを合成した。イオン交換容量は1.42ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0091】
[例1]
内容積34mLのハステロイ製オートクレーブに、PHVE−I、ラジカル発生源としての有機過酸化物であるIPP(ジイソプロピルペルオキシジカーボネート)、含水素化合物としてのn−ヘキサン、溶媒としてのHCFC−225cb(1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン)を加えた。液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返して約0℃まで戻し、窒素ガスを0.3MPaGまで導入した後、70℃で7時間加熱処理した。
【0092】
上記仕込みにおいて、仕込み液の全量は18gであり、PHVE−Iの濃度を5質量%とした。有機過酸化物(IPP)の全モル数のPHVE−I中のヨウ素原子の全モル数に対する割合を2とした。含水素化合物(ヘキサン)の濃度を10質量%とした。このとき、含水素化合物(ヘキサン)の全モル数のPHVE−I中のヨウ素原子の全モル数に対する割合は13.4であった。
得られたCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−H(以下、「PHVE−H」という。)の収率は96.8%であった。
【0093】
[例2〜11]
下記の条件を表1に示すものに変更した以外は、例1と同様にして、加熱処理した。得られたPHVE−Hの収率を表1に示す。
・PHVE−IのHCFC−225cb溶液中の濃度。
・ラジカル発生源(有機過酸化物)の種類、ラジカル発生源の全モル数のPHVE−I中のヨウ素原子の全モル数に対する割合。
・連鎖移動剤の種類、連鎖移動剤の全モル数のPHVE−I中のヨウ素原子の全モル数、連鎖移動剤のHCFC−225cb溶液中の濃度。
なお、例8では反応温度を60℃とし、例11では反応温度を75℃とした。
【0094】
【表1】
【0095】
[例12]
例3において、PHVE−Iの代わりにCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)−Iを用いた以外は同じ条件で反応を行った。得られた生成物はCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)−Hで、収率は98.1%であった。
【0096】
[例13]
内容積110mLのステンレス製オートクレーブに分岐ポリマー(1)の1.35gをHCFC−225cbに溶解させた溶液に、有機過酸化物としてのIPPと含水素化合物としてのn−ヘキサンを加えた。液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返して約0℃まで戻した後、窒素ガスを0.3MPaGまで導入し、70℃で7時間撹拌した。
上記反応において、分岐ポリマー(1)のHCFC−225cbに対する濃度を2質量%とした。有機過酸化物(IPP)の全モル数の分岐ポリマー(1)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合を2とした。含水素化合物(n−ヘキサン)の全仕込み重量に対する濃度を1質量%とした。このとき、含水素化合物の全モル数の分岐ポリマー(1)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合は22であった。
反応生成物についてペルフルオロベンゼン溶媒を用いて
19F−NMR測定をしたところ、−CF
2−I結合に基づくピークは消滅し、
1H−NMRを測定したところ、6.0ppmに−CF
2−HのH原子のピーク(三重線)が観測された。
ていた。
【0097】
[例14]
例13において、有機過酸化物(IPP)の全モル数の分岐ポリマー(1)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合を0.5とした以外は同様にして、分岐ポリマー(1)の処理を行った。
反応生成物についてペルフルオロベンゼン溶媒を用いて
19F−NMR測定をしたところ、−CF
2−I結合に基づくピークは消滅し、
1H−NMRを測定したところ、6.0ppmに−CF
2−HのH原子のピーク(三重線)が観測された。
【0098】
[例15]
例13において、被処理体を分岐ポリマー(1)から分岐ポリマー(3)に変更した。また、分岐ポリマー(3)のHCFC−225cbに対する濃度を1.5質量%とした。有機過酸化物(IPP)の全モル数の分岐ポリマー(3)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合を0.5とした。含水素化合物(n−ヘキサン)の全仕込み重量に対する濃度を1質量%とした。このとき、含水素化合物の全モル数の分岐ポリマー(1)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合は45であった。その他の条件は例13と同様にして処理を行った。
反応生成物についてペルフルオロベンゼン溶媒を用いて
19F−NMR測定をしたところ、ヨウ素原子と同じ炭素原子に結合したフッ素原子による−42〜−47ppmのピークと−62ppm付近のピークは消滅していた。
1H−NMRを測定したところ、6.0ppmに−CF
2−HのH原子による三重線が観測され、6.6ppmに下図の構造に基づくH原子による二重線が観測された。
【0099】
【化12】
【0100】
[例21]
分岐型多元セグメント化コポリマー(2)について元素分析によりヨウ素原子含有量を測定したところ、0.9質量%であった。
内容積34mLのハステロイ製オートクレーブにコポリマー(2)の0.45gをHCFC−225cbに濃度3質量%で溶解させた溶液に、有機過酸化物としてのIPPと含水素化合物としてのn−ヘキサンと追加のHCFC−225cbを加えた。液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返して約0℃まで戻した後、窒素ガスを0.3MPaGまで導入し、70℃で7時間加熱処理した。
上記反応において、コポリマー(2)の全仕込み量に対する濃度を2質量%とした。有機過酸化物の全モル数のコポリマー(2)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合を16.4とした。含水素化合物(n−ヘキサン)の全仕込み量に対する濃度を1質量%とした。含水素化合物の全モル数のコポリマー(2)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合は82であった。
加熱処理後のポリマーの残存ヨウ素原子含有量を元素分析で測定したところ、0.02%であった。
【0101】
[例22〜29]
下記の条件を表2に示すものに変更した以外は、例21と同様にして、加熱処理した。加熱処理後のポリマーの収率を表2に示す。
・コポリマー(2)の全仕込み液中の濃度。
・有機過酸化物の全モル数のコポリマー(2)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合。
・連鎖移動剤の種類、連鎖移動剤の全モル数のコポリマー(2)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合。
なお、例28では、反応条件を60℃で5時間加熱後、70℃で3時間加熱とした。
【0102】
【表2】
【0103】
[例30]
分岐型多元セグメント化コポリマー(4)について元素分析によりヨウ素原子含有量を測定したところ、0.49質量%であった。
このポリマーをHCFC−225cb溶媒に溶解し、例21と同様にして70℃で7時間反応を行った。ただし、上記反応において、コポリマー(4)の全仕込み量に対する濃度を2質量%とした。有機過酸化物(IPP)の全モル数のコポリマー(4)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合を5.4とした。含水素化合物(n−ヘキサン)の全仕込み量に対する濃度を1質量%とした。含水素化合物の全モル数のコポリマー(4)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合は150であった。
反応後室温に戻した後、IPPのHCFC−225cb溶液(濃度3質量%)を添加した。このIPPの全モル数の最初に仕込んだコポリマー(4)中のヨウ素原子の全モル数に対する割合は5.5であった。再び同様の操作を行い、70℃で7時間反応を実施した。得られたポリマーについて元素分析を行ったところ、ヨウ素原子は検出されなかった(0.01質量%未満)。