(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリリン酸アンモニウムのX線回析測定において、回析角2θ=15.5±0.2°のピーク強度値を、回析角2θ=14.6±0.2°のピーク強度値で除した値が、1.4以上である、請求項1に記載の粘着テープ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0009】
《粘着テープ》
本実施形態の粘着テープは、基材と、当該基材の片面または両面に設けられた粘着剤層とを備え、換言すれば、片面に粘着性を有する片面粘着テープ、または、両面に粘着性を有する両面粘着テープである。
【0010】
本実施形態の粘着テープは、薄肉化した粘着テープであるところ、具体的には、片面粘着テープである場合(粘着剤層が基材の片面に設けられた場合)には粘着テープの厚さが30μm以下であり、両面粘着テープである場合(粘着層が基材の両面に設けられた場合)には粘着テープの厚さが50μm以下である。なお、本実施形態においては、片面粘着テープである場合には粘着テープの厚さを25μm以下としてもよく、また20μm以下としてもよい。また、両面粘着テープである場合には粘着テープの厚さを45μm以下としてもよく、30μm以下としてもよい。
なお、粘着テープの厚さは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
本実施形態の粘着テープは、上記のように薄肉化した場合であっても、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性以上の難燃性を有する。したがって、薄肉化した粘着テープにおいて、難燃性として十分に優れたレベルにすることができる。なお、本実施形態の粘着テープにおいて所定の難燃性を満たすには、後述に詳説するが、難燃剤として、リン酸エステルアミドを用いる方法、芳香族縮合型リン酸エステルを用いる方法、赤燐メラミンシアヌレートを用いる方法、赤燐を用いる方法、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム等のポリリン酸誘導体を用いる方法が挙げられる。
なお、粘着テープの難燃性の測定は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0012】
本実施形態の粘着テープは、後述の実施例に記載の方法により測定した両面テープの粘着力が4.0N以上、片面テープの粘着力が2.0N以上であることが好ましい。
【0013】
−基材−
本実施形態において、粘着テープの基材は、特に限定されなく例えば、樹脂フィルム、不織布、紙、金属箔、織布、ゴムシート、発泡シート、これらの積層体(特に、樹脂フィルムを含む積層体)等が挙げられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。不織布としては、天然繊維(セルロース系繊維)の不織布;ポリプロピレン樹脂繊維、ポリエチレン樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維等の合成樹脂繊維の不織布等が挙げられる。金属箔としては、銅箔、ステンレス箔、アルミニウム箔等が挙げられる。紙としては、和紙、クラフト紙等が挙げられる。
これらの基材には、不燃性、自己消火性等の処理を施したものも用いることができる。
【0014】
基材としては、製造コストの観点から、天然繊維の不織布、合成樹脂繊維の不織布、ポリエステルフィルムであることが好ましい。また、より好適に難燃性を付与する観点からは、ポリフェニレンサルファイドフィルム、またはポリイミドフィルムを用いることができる。
また、両面テープに用いる基材の厚さとしては、粘着テープを薄肉化する観点から40μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましく20μm以下である。
また、片面テープに用いる基材の厚さとしては、粘着テープを薄肉化する観点から25μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましく15μm以下である。
【0015】
−粘着剤層−
本実施形態において、粘着剤層は、厚さが20μm以下であり、粘着剤層を構成する粘着剤が粘着成分とともに所定の難燃剤を含有する。このような厚さの粘着剤層の場合、従来の粘着テープでは粘着性と難燃性の両立が困難であったが、本実施形態の粘着テープでは両立することができる。また、粘着剤層は、粘着テープを薄肉化する観点から20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましく11μm以下である。
【0016】
−−粘着成分−−
本実施形態の粘着剤の粘着成分は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着成分、ウレタン系粘着成分、合成ゴム系粘着成分、天然ゴム系粘着成分、シリコーン系粘着成分などが挙げられる。本実施形態においては、比較的強い粘着力が得やすいことからアクリル系粘着成分が好ましい。
【0017】
アクリル系粘着成分としては、特に限定されないが例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を単量体単位として含む少なくとも1種のアクリル系重合体を含む。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えばアルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、例としては、特に限定されないが、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソノリル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とはアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを意味する。
【0018】
アクリル系重合体には、アクリル酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、カルボキシル基あるいは水酸基などを有する単量体を共重合することができる。これによりこれら単量体由来の構成単位がアクリル系重合体中で架橋点となり、粘着成分の硬さを調整し目的の粘着力を発現させることができる。
【0019】
アクリル系重合体には、特に限定されないが例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン等を共重合させて、例えばアクリル系重合体の凝集力を調整することができる。
【0020】
アクリル系重合体は、特に限定されなくラジカル重合方法、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などを用いて重合することができる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤などを用いることができる。
【0021】
アクリル系重合体には、架橋し得る架橋剤を含有して架橋させることができる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、脂肪族系ジイソシアネート、芳香族系ジイソシアネートあるいは芳香族系トリイソシアネートのようなポリイソシアネート系化合物などが挙げられる。更に、架橋反応が遅いものに対しては有機金属化合物等からなる架橋促進剤を添加することができる。アクリル系重合体を架橋することにより、凝集力を向上させることができる。
【0022】
−−難燃剤−−
本実施形態において、粘着剤に含有させる難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、アンチモン化合物、窒素化合物、ホウ素化合物、金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩等が挙げられる。
また、リン系難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、赤燐、赤燐メラミンシアヌレート等の赤燐誘導体、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム等のポリリン酸誘導体、リン酸エステルアミド、芳香族縮合型リン酸エステル等のリン酸誘導体が挙げられる。
難燃剤は、単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
ここで、本実施形態では、上述のように、薄肉化した粘着テープがUL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性以上の難燃性を有することから、それをより好適に満たすために、難燃剤としてはリン系難燃剤を含むことが好ましい。より好ましくはリン系難燃剤としてポリリン酸誘導体を含み、さらに好ましくはポリリン酸誘導体としてポリリン酸アンモニウムを含むことである。
【0024】
難燃剤の含有量は、特に限定されなく、その種類によって変わり得るが例えば、粘着成分100質量部に対して30〜500質量部が好ましく、より好ましくは35〜400であり、さらに好ましくは40〜300質量部である。当該含有量を30質量部以上にすることにより、所定の難燃性を満たしやすくなり、一方、当該含有量を500質量部以下にすることにより、好適な粘着力を有する粘着テープを得ることができる。
さらに、難燃剤としてポリリン酸誘導体を用いる場合、ポリリン酸誘導体の含有量は、粘着成分100質量部に対して40〜300質量部が好ましく、より好ましくは45〜2250質量部であり、さらに好ましくは50〜200質量部である。当該含有量を40質量部以上にすることにより、所定の難燃性を満たしやすくなり、一方、当該含有量を300質量部以下にすることにより、好適な粘着力を有する粘着テープを得ることができる。
さらにまた、難燃剤としてポリリン酸アンモニウムを用いる場合、ポリリン酸アンモニウムの含有量は、粘着成分100質量部に対して65〜250質量部が好ましく、より好ましくは75〜200質量部であり、さらに好ましくは80〜150質量部である。当該含有量を65質量部以上にすることにより、所定の難燃性を満たしやすくなり、一方、当該含有量250質量部以下にすることにより、好適な粘着力を有する粘着テープを得ることができる。
【0025】
ここで、難燃剤がポリリン酸アンモニウムを含有する場合には、ポリリン酸アンモニウムのX線回析測定において、回析角2θ=15.5±0.2°のピーク強度値を、回析角2θ=14.6±0.2°のピーク強度値で除した値(以下、ピーク強度比とも称す)が、1.4以上であることが好ましい。
ポリリン酸アンモニウムは、その結晶状態によってI型、II型が存在し、II型のポリリン酸アンモニウムの方が難燃性向上に効果的である。そして、ポリリン酸アンモニウムの回析角2θ=15.5±0.2°に現れるピークは、II型のポリリン酸アンモニウムに特徴的に観察されるピークであり、また、回析角2θ=14.6±0.2°のピークは、I型、II型のポリリン酸アンモニウムに特徴的に観察されるピークである。すなわち、上記のようにピーク強度比を規定することにより、ポリリン酸アンモニウム中のII型の含有量を規定することができるとともに、ポリリン酸アンモニウム中に許容される、難燃性への寄与が比較的低いI型のポリリン酸アンモニウムの含有量を規定している。したがって、ピーク強度比を上記の関係にすることにより、ポリリン酸アンモニウム中に存在するII型のポリリン酸アンモニウムの含有量を高めることができるので、粘着剤層を薄肉化した粘着テープであっても難燃性をより確保することができる。
また、本実施形態では、同様な観点からは、回析角2θ=15.5±0.2°のピーク強度値を、回析角2θ=14.6±0.2°のピーク強度値で除した値が、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上であり、さらに好ましくは2.0以上である。
なお、本実施形態では、回析角2θ=15.5±0.2°のピーク強度値を、回析角2θ=14.6±0.2°のピーク強度値で除した値は、上記の観点から大きければ大きい程好ましくその上限値は特に限定されない。
なお、X線回析測定における所定の回析角2θのピーク強度値の測定は、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
【0026】
なおポリリン酸アンモニウムとしては、上記の粒子径、X線回析測定における回析角の所定の比を満たせば特に限定されなく例えば、リン酸の重合度が500〜2000であるものや、その表面がメラミン/ホルムアルデヒド樹脂等で被覆された易流動性、水難溶性の粉末状で用いることができる。
【0027】
ここで、難燃剤についての、累積粒度分布の小径側から累積95%に相当する粒子の粒子径D95は、20.0μm以下であり、好ましくは19.0μm以下であり、より好ましくは15.0μm以下である。粒子径D95を20.0μm以下とすることにより、粒子径が比較的大きい粒子が少なくなるので、難燃剤が粘着成分と相溶せず固体として粘着剤層に存在しても、比較的大きい粒子によるスペーサー効果を抑制し、粘着剤層を薄膜化した粘着テープであっても粘着性を確保することができる。
なお、難燃剤が複数の種類の難燃剤を含有する場合には、複数の種類の難燃剤がそれぞれ、粒子径D95の所定の範囲を満たすものとする。
【0028】
なお、累積粒度分布の小径側から累積し所定の割合に相当する粒子の粒子径(D95など)の測定は、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
【0029】
また本実施形態において、粒子径20μm以上の難燃剤の粒子は、さらに粘着性を確保する観点から、難燃性粘着剤の不揮発成分中に1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは含まれないことである。
【0030】
ここで、難燃剤が所定の粒子径を満たすには、難燃剤の粒子を、粉砕、分級することにより得ることができる。具体的には、粉砕する方法としては、特に限定されないが、ビーズミル、ボールミル、アトライター、遊星ミル、振動ミル等のメディア式分散/粉砕機、臼型摩砕機、および、ジェットミルに代表されるノンメディア型分散/粉砕機を用いることができる。粉砕方式としては、湿式、乾式いずれも用いることができるが、粉砕後の易分散性や、粉砕物の回収、ハンドリングの良さから、湿式粉砕が好ましい。メディア式分散機/粉砕機を用いる際のメディアの材質は特に限定しないが、スチール、ガラス、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素等を用いることができる。
また、分級する方法としては、特に限定されなく例えば、重力、遠心力、慣性力等を利用した分級方法や篩を用いた分級方法が挙げられる。また、分級点を精密に制御する観点から、乾式分級を行う場合は、強制渦式分級機(エアロファインクラシファイア、日清エンジニアリング社製;ミクロンセパレーター、ホソカワミクロン社製;ターボプレックス、ホソカワミクロン社製;等)もしくはコアンダ効果を利用した慣性力場分級機(エルボジェットミル、日鉄鉱業社製;クリフィス、ホソカワミクロン社製)を用いることができる。
【0031】
なお、難燃剤がポリリン酸アンモニウムを含有する場合において、ポリリン酸アンモニウムを湿式粉砕、分級することができるが、湿式粉砕する場合には、過剰破砕によるII型ポリリン酸アンモニウムの減少を抑制しつつ、効率的に微粒化をする観点から、用いるメディアの径は、好ましくはφ5mm以下、より好ましくはφ3mm以下、さらに好ましくはφ1mm以下である。また、分級を行うことがより好ましい。上述のように、ポリリン酸アンモニウムはII型であることが好ましいところ、通常入手可能なII型のポリリン酸アンモニウムはその粒子中に比較的大きな粒子が存在する。このようなポリリン酸アンモニウムについて粒子径D95が所定の範囲となるように例えば通常の条件で粉砕すると、II型のポリリン酸アンモニウム中にI型のポリリン酸アンモニウムが生じる。したがって、上記なような条件で湿式粉砕したり、分級することにより、ポリリン酸アンモニウムが所定の粒子径、X線回析測定におけるピーク強度比を所定の範囲に好適に満たすことができる。
【0032】
本実施形態に用いる難燃剤は、金属水酸化物を含有することができる。これにより、難燃性をより向上させることができる。
金属水酸化物の含有量は、上記粘着成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは50質量部以上であり、さらに好ましくは60質量部以上である。当該含有量を0.1質量部以上とすることにより、さらに難燃性を向上させることができる。
なお、当該含有量は、難燃性を向上させる観点からは、特に上限はないが、粘着成分に対して、当該含有量が過度に増大すると、粘着テープとした際の粘着剤層の表面に当該粒子が露出して接着力が低下する虞が生じるので、300質量部以下であることが好ましく、より好ましくは200質量部以下であり、さらに好ましく150質量部以下であり、特に好ましくは100質量部である。
【0033】
金属水酸化物としては、特に限定されなく例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。この中でも、比較的低温で水分を分離し、それにより高い難燃性を発揮することができるので、水酸化アルミニウムが好ましい。
なお、金属水酸化物は、1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0034】
なお、金属水酸化物は、粘着成分中での分散性を向上させるためにカップリング処理、ステアリン酸処理等の表面処理を行ってもよい。また、金属水酸化物の形状は、球状、針状、フレーク状等が挙げられる。
【0035】
−−脂肪族多価アルコール−−
本実施形態では、粘着剤が、脂肪族多価アルコールを含有することができる。これにより、難燃剤による難燃効果を増幅させ、粘着剤の難燃性も向上させることができる。
脂肪族多価アルコールの含有量は、上記粘着成分100質量部に対して、5.0質量部以上が好ましく、より好ましくは10.0質量部以上であり、さらに好ましくは15.0質量部以上である。当該含有量を5.0質量部以上とすることにより、さらに難燃性を向上させることができる。
なお、当該含有量は、難燃性を向上させる観点から特に上限はない。脂肪族多価アルコールは、リン系難燃剤と共存することで難燃性の向上が図られるが、過剰分は可燃成分となる虞が生じるので、難燃剤100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましく30質量部以下である。
【0036】
脂肪族多価アルコールとしては、特に限定されなく例えば、脂肪族多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール等が挙げられる。この中でも、水への耐ブリード性が高く、難燃剤、特にリン系難燃剤と共に効率的なチャー形成を行うことができるので、ジペンタエリスリトールが好ましい。なお、脂肪族多価アルコールは、1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0037】
−−ロジン系化合物と脂肪族多価アルコールとのエステル体−−
本実施形態では、粘着剤が、ロジン系化合物と脂肪族多価アルコールとのエステル体を含有することができる。れにより、粘着性をより付与することができるとともに、ポリリン酸アンモニウムによる難燃効果、ひいては粘着剤の難燃性も向上させることができる。
ロジン系化合物と脂肪族多価アルコールとのエステル体の含有量は、上記粘着成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは10.0質量部以上であり、さらに好ましくは20.0質量部以上である。当該含有量を0.1質量部以上とすることにより、さらに難燃性を向上させることができる。
なお、当該含有量は、難燃性を向上させる観点から特に上限はないが、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは70.0質量部以下であり、さらに好ましく50.0質量部以下である。
【0038】
ロジン系化合物と脂肪族多価アルコールとのエステル体のロジン系化合物としては、ロジンモノマー、不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンおよび部分不均化ロジンが挙げられる。また、脂肪族多価アルコールとしては、上述の脂肪族多価アルコールが挙げられ、その中でもジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が好ましく、より好ましくはペンタエリスリトールである。なお、ロジン系化合物、脂肪族多価アルコールは、1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0039】
−−その他の成分−−
本実施形態では、粘着剤が、メラミンシアヌレート等のメラミン誘導体を粘着性能を損なわない範囲で含有することができ、それにより難燃性をさらに向上させ、或いは難燃剤の含有量を減少させることもできる。
また、必要とする難燃性を減少させない範囲で粘着付与樹脂を含有させて非極性被着体への粘着力向上等を図ることもできる。これら樹脂には、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。形状としては、常温で固体、粘稠な液体のものが使用でき、化合物種類は単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
−−粘着剤の製造方法−−
粘着剤は、特に限定されなく例えば、粘着成分中に所定の難燃剤、さらには任意に成分を添加し、高速分散機で撹拌分散することにより製造することができる。
【0041】
−粘着テープの製造方法−
本実施形態の粘着テープは、特に限定されなく例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、片面に粘着剤層が形成された粘着テープは、剥離フィルムの表面に粘着剤を塗布し乾燥等することによって粘着剤層を形成する。ついで、当該粘着剤層の表面に対し、基材を貼り合わせることで、製造することができる。また、両面に粘着剤層が形成された粘着テープは、片面に第1の粘着剤層が形成された粘着テープに続けて、剥離フィルムの表面に対し、粘着剤を塗布し乾燥等することによって第2の粘着剤層を形成し、第2の粘着剤層の表面に、第1の粘着剤層を貼り合わせた基材を貼り合わせることで、製造することができる。
【0042】
本実施形態の粘着テープには、粘着剤層の保護のため剥離フィルムが積層されていてもよい。剥離フィルムとしては、特に限定されないが例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルフィルムなどの合成樹脂フィルム、紙、不織布、布、発泡シートや金属箔、およびこれらのラミネート体などの基材の少なくとも片面または両面に、粘着剤からの剥離性を高めるためのシリコーン系処理、長鎖アルキル系処理、フッ素系処理などの剥離処理が施されたものを使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0044】
まず、実施例・比較例において用いた測定方法、評価方法について説明する。
(1)難燃剤の累積粒度分布
難燃剤の累積粒度分布はレーザー回折式粒子径分布測定装置(Sympatec_GmbH製、HELOS)と乾式気流式分散器(Sympatec_GmbH製、RODOS・VIBRI)とを組み合わせた測定ユニットを用いて測定した。
分散器パラメーター
・分散圧:3bar、引圧93mbar、送り:15%
測定パラメーター
・密度:1.00g/cm
3、形状係数:1.0
【0045】
(2)粘着剤層の厚さ
得られた粘着テープを液体窒素中に1分間浸漬した後、ピンセットを用いて液体窒素中で折り曲げて割り、割断面観察用の切片を作製した。切片をデシケータ内で常温に戻した後、割断面に対して電子線が垂直に入射するように試料台に固定し、電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、Miniscope(登録商標) TM3030Plus)を用いて、割断面の観察を行った。観察視野内の粘着剤層表面(剥離フィルムに接する面)の任意の点から垂直方向に、基材表面までの距離を10箇所計測し、その算術平均値を、粘着剤層の厚さとした。
両面テープの場合は、テープの両面に対して上記粘着剤層の厚さを求め、より小さい値を粘着剤層の厚さとした。
【0046】
(3)粘着テープの厚さ
得られた粘着テープ(剥離フィルムを有する状態)の厚さを定圧厚さ計(テスター産業株式会社)を用いて無作為に10箇所測定した。次いで、当該測定した厚さから剥離フィルムの厚みを差し引き、算術平均して得られた値を粘着テープの厚さとした。
【0047】
(4)UL94VTM燃焼試験
UL規格(UL94「機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験方法」)に記載のVTM試験に準じた燃焼試験により判定を行った。片面テープは、粘着面を外側にした場合と、内側にした場合の両条件で燃焼試験を行い、低い方の難燃性判定結果をテープの難燃性とした。
【0048】
(5)180°ピール接着力(両面テープ)
粘着テープについて、一方の粘着面を、ポリエステルフィルム25μmを用いてバッキングし、その大きさを20mm×100mmとしてテープサンプルを得た。当該テープサンプルの他方の粘着面にステンレス板を載せ、2kgローラーを用いて1往復加圧貼付し、ついで、常温で一時間放置した。その後、剥離速度300mm/minで180°方向に引き剥がし、その際の接着力(N)を測定した。
【0049】
(6)180°ピール接着力(片面テープ)
大きさを25mm×100mmのテープサンプルの粘着面にステンレス板を載せ、2kgローラーを用いて1往復加圧貼付し、ついで、常温で一時間放置した。その後、剥離速度300mm/minで180°方向に引き剥がし、その際の接着力(N)を測定した。
【0050】
(7)ポリリン酸アンモニウムのX線回析測定
得られた粘着難燃テープの粘着剤層を上にしてガラス板上に固定し、粘着剤層表面の任意の3箇所の広角X線回折チャートを、X線回折装置SmartLab(リガク製)を用いて測定した。各箇所で測定して得られたチャートについて、回析角2θ=15.5±0.2°のピーク強度値を、回析角2θ=14.6±0.2°のピーク強度値で除した値を得、それを算術平均した値をX線回析ピーク強度比とした。
測定条件:2θ/θ法 2θ=1〜70deg.
step=0.02deg.
speed=20deg./min.
解析ソフト:PDXL
【0051】
続いて、実施例・比較例で用いた各成分について説明する。
(1)粘着成分
粘着成分として、次の方法で得たアクリル酸エステル共重合体を用いた。
冷却管、撹拌機、温度計、摘下漏斗を備えた反応容器に2−エチルヘキシルアクリレート50部、n−ブチルアクリレート46部、アクリル酸3.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5部、および、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部、を酢酸エチル100部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合させた。得られたアクリル酸エステル共重合体溶液は、固形分50%、重量平均分子量40万であった。
【0052】
(2)難燃剤
・(APP−1)
D95が23.1μm、D50が8.8μmである、ポリリン酸アンモニウム(CBC社製、TERRAJU_C−30)を用いた。
【0053】
・(APP−2)
ポリリン酸アンモニウム(APP−1)を、エルボジェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、EJ−15)を用いて、吹き込み圧0.5MPaで、粗粒除去率10%、微粒除去率0%となるよう分級エッジ位置を設定し、分級処理して得られたポリリン酸アンモニウムである。D95が19.2μm、D50が8.2μmであった。
【0054】
・(APP−3)
ポリリン酸アンモニウム(APP−1)を、エルボジェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、EJ−15)を用いて、吹き込み圧0.5MPaで、粗粒除去率30%、微粒除去率0%となるよう分級エッジ位置を設定し、分級処理して得られたポリリン酸アンモニウムである。D95が14.4μm、D50が7.4μmであった
【0055】
・(APP−4)
ポリリン酸アンモニウム(APP−1)を、エルボジェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、EJ−15)を用いて、吹き込み圧0.5MPaで、粗粒除去率90%、微粒除去率0%となるよう分級エッジ位置を設定し、分級処理して得られたポリリン酸アンモニウムである。D95が7.7μm、D50が3.2μmであった
【0056】
・ポリリン酸メラミン・メラム・メレム
D95が12.3μm、D50が5.0μmである、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム(日立化成工業株式会社製、PHOSMEL−200)を用いた。
【0057】
・水酸化アルミニウム
D95が7.1μm、D50が3.0μmである、水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、BE033)を用いた。
【0058】
(3)脂肪族多価アルコール
脂肪族多価アルコールとしてジペンタエリスリトール(Perstorp社製、Charmer DP40)を用いた。
【0059】
(4)粘着付与樹脂
(E−1)
重合ロジンペンタエリスリトールエステル(ハリマ化成株式会社製、ハリタックPCJ)を用いた。
・(E−2)
水添ロジンメチルエステル(丸善油化商事株式会社製、M−HDR)を用いた。
【0060】
(5)基材
・(S−1)
厚さ16μm、6g/m
2のレーヨン繊維の不織布(パピリア日本製紙株式会社製、DT−6)を用いた。
・(S−2)
厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、カプトン50H)を用いた。
【0061】
(6)硬化剤
・エポキシ系架橋剤(綜研化学株式会社製、E−2XM、固形分2%)
【0062】
(7)希釈溶剤
・酢酸エチル(昭和電工株式会社製)を用いた。
【0063】
続いて、実施例・比較例の製造方法について説明する。
(実施例1〜5、比較例1、2)
粘着成分の固形分100質量部に対し、表1に示す組成で、難燃剤、ジペンタエリスリトール、重合ロジンペンタエリスリトールエステル、水添ロジンメチルエステル、エポキシ系架橋剤を添加し、均一なるまで十分に撹拌して難燃性粘着剤を得た。
次に、得られた難燃性粘着剤に酢酸エチルを添加して固形分30%になるように調製した後、表1の塗布厚に設定したアプリケーターを用いて、ポリエステル剥離フィルム上に塗布し、85℃で3分加熱乾燥して難燃性粘着剤層を得た。このようにして得られた難燃性粘着剤層を、基材S−1の両面に卓上ラミネーター(テスター産業株式会社製)を用いて、送り速度2.0m/s、圧力0.25MPaで貼り合せ、次いで、40℃48時間エ
ージングすることで、両面に粘着剤層を有する粘着テープを得た。
得られた粘着テープを上記の方法で評価した結果を表1に示す。
なお、比較例1の粘着テープは、1層目の粘着剤層に対して基材が貼り付かなかったため、粘着性が低いと判断した。また、比較例2について、粘着テープを用いたUL94VTM燃焼試験を行ったところ、試験片が着火によって全て燃え、UL94VTMのランク外となった。
【0064】
(実施例6、比較例3)
粘着成分の固形分100質量部に対し、表1に示す組成で、難燃剤、ジペンタエリスリトール、重合ロジンペンタエリスリトールエステル、水添ロジンメチルエステル、エポキシ系架橋剤を添加し、均一なるまで十分に撹拌して難燃性粘着剤を得た。
次に、得られた難燃性粘着剤に酢酸エチルを添加して固形分30%になるように調製した後、表1の塗布厚になるよう設定したアプリケーターを用いて、ポリエステル剥離フィルム上に塗布し、85℃で3分加熱乾燥して難燃性粘着剤層を得た。このようにして得られた難燃性粘着剤層を、基材S−2の片面に卓上ラミネーター(テスター産業株式会社製)を用いて、送り速度2.0m/s、圧力0.25MPaで貼り合せ、次いで、40℃4
8時間エージングすることで、片面に粘着剤層を有する粘着テープを得た。
得られた粘着テープを上記の方法で評価した結果を表1に示す。なお比較例3の粘着テープは、粘着剤層に対して基材が貼り付かなかったため、粘着性が低いと判断した。
【0065】
【表1】