【文献】
UEDA et al.,Synthesis of Aromatic Poly(ether ketones),Macromolecules,1987年,Vol.20,pp.2675-2678
【文献】
UEDA et al.,Synthesis of polyketones by direct polycondensation of dicarboxylic acids with diaryl compounds using phosphorus pentoxide/methanesulfonic acid as condensing agent and solvent,Makromol. Chem., Rapid Commun.,1985年,Vol.5,pp.833-836
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(ii)の反応工程が、前記一般式(3−2)で表されるモノマーと、イソフタロイルクロリド及びテレフタロイルクロリドとを、ルイス酸触媒の存在下で反応させることにより、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を得て、前記ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させる反応工程である、請求項3に記載のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂))
本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、下記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基を有する。
【0025】
本発明者らは、高温での溶融状態においても、溶融粘度の安定性に優れる、PAEK樹脂について研究した。その結果、以下のことがわかった。
PAEK樹脂は、高温での溶融状態が長時間つづくと、末端構造のフェニル基と主鎖構造のケトン基が反応して、架橋が進む。
特に、ポリマー重合の際の反応触媒であるナトリウム、カリウム、アルミニウム等の金属成分や、メタンスルホン酸等の強酸成分が残留する場合、それらが触媒作用をもたらして、架橋反応が顕著に進み、最終的にゲル化を引き起こす場合がある。
そこで、高温下におけるPAEK樹脂のゲル化を防止するため、PAEK樹脂についてさらに研究をすすめた。
その結果、PAEK樹脂の末端構造のフェニル基に、下記一般式(a)で表される置換基R’が付いている場合、R’の種類によって架橋反応のおこりやすさが変わることがわかった。
【0027】
R’がメチル基(CH
3)、メトキシ基(CH
3O)のような電子供与性基の場合、芳香環の電子密度があがり、反応活性が高まって架橋反応がおこりやすかった。
R’がフッ素や塩素のようなハロゲンの場合、芳香環はある程度不活性化されるが、架橋反応を防ぐには不十分であった。
【0028】
一方、R’が上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基、特にメタンスルホニル基(CH
3SO
2)のような電子求引性基の場合、芳香環が不活性化されて、架橋反応は生じなくなった。
【0029】
本発明者らは、メタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基を有するPAEK樹脂が、高温での溶融状態においても、樹脂内における架橋等の反応を抑制することができ、溶融粘度の安定性に優れた樹脂になることを確認した。
【0030】
上記一般式(1)中のRは、炭素数1〜4のアルキル基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、炭素数1、2、又は4のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素数1のアルキル基がさらに好ましい。
【0031】
上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基は、末端のベンゼン環の反応を抑制する観点から、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の末端部位に結合していることが好ましい。つまり、本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、下記一般式(1A)で表される末端構造を有していることが好ましい。
【0033】
本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、下記一般式(2)で表される主鎖構造を有していると好ましい。
【0037】
上記一般式(4−1)中、mは、0又は1であることがより好ましい。
【0038】
本発明のPAEK樹脂は、PAEK樹脂の一部がアルキルスルホニル化されたものとなっている。これにより、本発明のPAEK樹脂は、高温での溶融状態においても、樹脂内における架橋等の反応を抑制することができ、溶融粘度の安定性に優れた樹脂となる。
より好ましい本発明のPAEK樹脂の態様としては、上述したように、アルキルスルホニル基がPAEK樹脂の末端部位に結合している樹脂が挙げられる。
【0039】
本発明のPAEK樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度が、0.3mmol/kg以上であれば、末端のベンゼン環にアルキルスルホニル基を結合させることができ、末端のベンゼン環の反応を有効に防止することができる。また、溶融粘度の安定性により優れた樹脂とするという観点からは、該濃度が、0.5mmol/kg以上であると好ましい。したがって、本発明のPAEK樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度は、0.3mmol/kg以上であると好ましく、0.5mmol/kg以上であるとより好ましく、0.8mmol/kgであるとさらに好ましく、1mmol/kgであると特に好ましい。
一方、本発明のPAEK樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度が、2000mmol/kg以下であれば、該一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基が、PAEK樹脂の末端部分に多く結合されたり、あるいは末端部分以外の主鎖構造に多く結合されることにより、成形材料としての力学物性を担保する分子量や分子の均一性がなくなるという問題を有効に防止することができる。また、溶融粘度が低すぎることにより成形強度が低くなることを防止する観点からは、該濃度が、1200mmol/kg以下であると好ましい。したがって、本発明のPAEK樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度は、2000mmol/kg以下であると好ましく、1200mmol/kg以下であるとより好ましく、800mmol/kg以下であるとさらに好ましい。
以上より、本発明のPAEK樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度は、0.3〜2000mmol/kgであると好ましく、0.5〜1200mmol/kgであるとより好ましく、0.8〜800mmol/kgであるとさらに好ましく、1〜800mmol/kgであると特に好ましい。
樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度をコントロールすることで、樹脂の溶融状態での安定性を改良でき、成形加工性を向上させることができる。
【0040】
本発明のPAEK樹脂は、耐熱性や成形加工性の観点から、以下の物性を示すものであることが好ましい。
本発明のPAEK樹脂のガラス転移点(Tg)は、例えば、120〜170℃を示すものであることが好ましく、130〜160℃を示すものであることがより好ましい。
また、本発明のPAEK樹脂の結晶融点(Tm)は、例えば、260〜400℃を示すものであることが好ましく、270〜390℃を示すものであることがより好ましい。
また、下記実施例で記載するように、耐熱性の指標の一つである5%重量減少温度(Td5)が、本発明のPAEK樹脂においては、例えば、500〜560℃を示すものであることが好ましく、530〜550℃を示すものであることがより好ましく、540〜550℃を示すものであることがさらに好ましい。
【0041】
また、下記実施例で記載するように、成形物の強度の指標の一つである溶融粘度が、本発明のPAEK樹脂においては、例えば、10〜2000Pa・sを示すものであることが好ましく、100〜1500Pa・sを示すものであることがより好ましく、150〜1000Pa・sを示すものであることがさらに好ましい。
【0042】
さらにまた、下記実施例で記載するように、溶融粘度の安定性の指標の一つである増粘比が、本発明のPAEK樹脂においては、例えば、2以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.1以下であることがさらに好ましい。増粘比が、2以下であれば、成形加工性の優れた実用上有効な樹脂とすることができる。
【0043】
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂に上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基が結合した、本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法について、以下詳しく説明する。
【0044】
(ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂)の製造方法)
本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記(i)又は(ii)に示す反応工程を含む製造方法により、本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造することができる。
本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法の第1の実施態様としては、(i)下記一般式(3−2)及び下記一般式(4−2)で表されるモノマーを、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させる反応工程を含むポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法が挙げられる。
また、本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法の第2の実施態様としては、(ii)アルキルスルホニル基を有さないポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させる反応工程を含むポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法が挙げられる。
【0047】
上記(ii)のアルキルスルホニル基を有さないポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、通常用いられるポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法が挙げられるが、例えば、芳香族求核置換反応によりポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する方法や、ルイス酸触媒を用いてポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する方法等が挙げられる。
上記(ii)の製造方法のより好ましい実施態様として、例えば、(ii−1)ルイス酸触媒下で、上記一般式(3−2)で表されるモノマーを反応させてポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を得て、該ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させる反応工程を含むポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法が挙げられる。
【0048】
本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法は、芳香族求電子置換型溶液重縮合反応であるので、温和な重合条件で反応させることができる。
【0049】
上記一般式(3−2)で表されるモノマーとしては、ジフェニルエーテル(n=0)、1、4−ジフェノキシベンゼン(n=1)、4,4’−オキシビス(フェノキシベンゼン)(n=2)が挙げられる。
【0050】
上記一般式(4−2)で表されるモノマーとしては、テレフタル酸(m=0)、4、4’−オキシビス安息香酸(m=1)、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン(m=2)、4,4’−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル(m=3)が挙げられる。
【0051】
本発明のPAEK樹脂の製造方法においては、本発明のPAEK樹脂の効果を維持する範囲で、上記一般式(3−2)で表されるエーテル基を有する芳香族モノマーや、上記一般式(4−2)で表されるカルボン酸モノマー以外にも、他のエーテル基を有する芳香族モノマーや他のカルボン酸モノマー等のその他のモノマーを併用することができる。その他のモノマーとしては、例えば、イソフタル酸、5−メチルイソフタル酸、2−メチルイソフタル酸、4−メチルイソフタル酸、5−エチルイソフタル酸、2−エチルイソフタル酸、4−エチルイソフタル酸、5−プロピルイソフタル酸、2−プロピルイソフタル酸、4−プロピルイソフタル酸、5−ブチルイソフタル酸、2−ブチルイソフタル酸、4−ブチルイソフタル酸、ジフェン酸、2、2’−ビフェニルジカルボン酸、6,6’−ジメチルビフェニル−2,2’−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0052】
有機スルホン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。中でも、脂肪族スルホン酸が好ましい。より具体的には、有機スルホン酸として、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(トシル酸)等が挙げられる。
【0053】
有機スルホン酸の添加量と、五酸化二リンの添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、質量比で、100:25〜100:1の範囲であることが好ましく、100:20〜100:2の範囲であることがより好ましく、100:15〜100:5の範囲であることがさらに好ましい。
【0054】
上記第1の実施態様の製造方法について、以下詳しく説明する。
上記第1の実施態様の製造方法において、上記一般式(3−2)で表されるモノマーの添加量と、上記一般式(4−2)で表されるモノマーの添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、以下の割合であることが好ましい。尚、反応成分中、エーテル基を有する芳香族モノマーが、上記一般式(3−2)のモノマー以外の他のエーテル基を有する芳香族モノマーも含む場合には、下記割合は、上記一般式(3−2)のモノマーを含む芳香族モノマー全体の合計量を基準としている。また、反応成分中、カルボン酸モノマーが、上記一般式(4−2)のモノマー以外の他のカルボン酸モノマーも含む場合には、下記割合は、上記一般式(4−2)のモノマーを含むカルボン酸モノマー全体の合計量を基準としている。つまり、エーテル基を有する芳香族モノマー(上記一般式(3−2)のモノマーを含む)/カルボン酸モノマー(上記一般式(4−2)のモノマーを含む)は、モル比で、0.8〜1.2が好ましく、0.9〜1.1がより好ましく、1.0〜1.1がさらに好ましい。
芳香族モノマー/カルボン酸モノマーが0.8以上であれば、カルボン酸モノマーの割合が高くなることにより生じる問題、つまりポリマー末端構造にカルボキシ基が存在し、そのカルボキシ基により成形加工時に脱炭酸反応が起こりガスが発生し、成形物にボイドが生じるという問題を有効に防止することができる。一方、芳香族モノマー/カルボン酸モノマーが1.2以下であれば、実用上十分な分子量のPAEK樹脂を得ることができる。
【0055】
上記一般式(3−2)で表されるモノマー及び上記一般式(4−2)で表されるモノマーの合計の添加量と、有機スルホン酸及び五酸化二リンの合計の添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、質量比で、1:100〜40:100の範囲であることが好ましく、2:100〜30:100の範囲であることがより好ましく、5:100〜20:100の範囲であることがさらに好ましい。
【0056】
有機スルホン酸及び五酸化二リンの各成分量やこれらの割合、上記一般式(3−2)で表されるモノマー及び上記一般式(4−2)で表されるモノマーの各モノマー量やこれらの割合、上記一般式(3−2)で表されるモノマー及び上記一般式(4−2)で表されるモノマーの合計の添加量と有機スルホン酸及び五酸化二リンの合計の添加量との割合、あるいはポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する際の反応条件(反応温度、反応時間等)などは、特に制限はないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂中のアルキルスルホニル基の濃度が好ましい範囲になるよう、適宜条件を設定するとよい。
【0057】
例えば、上記一般式(3−2)で表されるモノマー及び上記一般式(4−2)で表されるモノマーの合計の添加量に比べ、有機スルホン酸及び五酸化二リンの合計の添加量の割合を高くしたり、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物下でPAEK樹脂を製造する際の反応温度及び反応時間を十分確保することで、PAEK樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度を好ましい範囲に調整することができる。
【0058】
例えば、上記第1の実施態様の製造方法において、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物下で、上記一般式(3−2)で表されるモノマー及び上記一般式(4−2)で表されるモノマーを反応させる際の条件を、50〜120℃で1〜120時間反応させることにより、PAEK樹脂にアルキルスルホニル基を導入することが可能である。
また、例えば、上記第1の実施態様の製造方法において、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物下で、上記一般式(3−2)で表されるモノマー及び上記一般式(4−2)で表されるモノマーを反応させる際、反応温度及び/又は反応時間の条件を変えて、反応工程を2段階に分けてPAEK樹脂を製造してもよい。
具体的には、上記第1の実施態様の製造方法のより好ましい実施態様として、以下の(i−1)で示される製造方法と、(i−2)で示される製造方法を挙げることができる。
【0059】
(i−1)有機スルホン酸と五酸化二リンとの混合物の存在下で、上記一般式(3−2)で表されるモノマーと上記一般式(4−2)で表されるモノマーを添加し、50℃〜70℃の温度条件で30〜100時間反応させることにより本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する方法。
(i−2)有機スルホン酸と五酸化二リンとの混合物の存在下で、上記一般式(3−2)で表されるモノマーと上記一般式(4−2)で表されるモノマーを添加し、50〜70℃の温度条件で1〜30時間反応させ(1段階目の反応工程)、次に70〜120℃の温度条件で1〜10時間反応させる(2段階目の反応工程)ことにより本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する方法。
【0060】
上記(i−1)と(i−2)の製造方法によると、上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基のPAEK樹脂に対する導入量を好ましい範囲にすることができる。
特に上記(i−2)の製造方法は、アルキルスルホニル基のPAEK樹脂に対する導入率を制御しやすく、低コストでPAEK樹脂を製造できるため、好ましい。
【0061】
次に、上記第2の実施態様の製造方法について、以下詳しく説明する。
上述したように、本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法の第2の実施態様としては、(ii)アルキルスルホニル基を有さないポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させる反応工程を含むポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法が挙げられる。
上記アルキルスルホニル基を有さないポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、上述したように、通常のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法を使用することができるが、中でも好ましくは、ルイス酸触媒を用いてポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する方法が挙げられる。
上記(ii)の製造方法のより好ましい実施態様として、上述したように、例えば、(ii−1)ルイス酸触媒下で、上記一般式(3−2)で表されるモノマーを反応させてポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を得て、該ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させる反応工程を含むポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法が挙げられる。
【0062】
上記(ii−1)の実施態様において、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)は、例えば、上記一般式(3−2)で表されるモノマーと、イソフタロイルクロリド及びテレフタロイルクロリドとを、ルイス酸触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。
上記(ii−1)の製造方法のさらに好ましい実施態様として、(ii−2)上記一般式(3−2)で表されるモノマーと、イソフタロイルクロリド及びテレフタロイルクロリドとを、ルイス酸触媒の存在下で反応させることによりポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を得て、該ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(B)を有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させる反応工程を含むポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法が挙げられる。
ここで、ルイス酸触媒としては、例えば、無水塩化アルミニウム等が挙げられる。
また、例えば、溶剤として1、2−ジクロロベンゼンを用いて、1、2−ジクロロベンゼンと、イソフタロイルクロリドと、テレフタロイルクロリドと、上記一般式(3−2)で表されるモノマーとを、ルイス酸触媒の存在下で反応させることによりPAEK樹脂(B)を得てもよい。
【0063】
上記(ii−2)の実施態様において、上記一般式(3−2)で表されるモノマーと、イソフタロイルクロリドと、テレフタロイルクロリドとの混合割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、モル比で、100:10:90〜100:50:50であることが好ましい。
【0064】
1、2−ジクロロベンゼンの溶剤を用いる場合、1、2−ジクロロベンゼンの添加量と、上記一般式(3−2)で表されるモノマー、イソフタロイルクロリド、及びテレフタロイルクロリドの合計の添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、質量比で、100:1〜100:20の範囲であることが好ましい。
【0065】
PAEK樹脂(B)の添加量と、有機スルホン酸及び五酸化二リンの合計の添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、質量比で、25:100〜1:100の範囲であることが好ましい。
【0066】
上記一般式(3−2)で表されるモノマーと、イソフタロイルクロリドと、テレフタロイルクロリドとを、ルイス酸触媒の存在下で反応させる際の反応条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、上記一般式(3−2)で表されるモノマーと、イソフタロイルクロリドと、テレフタロイルクロリドとを、窒素雰囲気下、例えば、−10〜0℃に冷却してから、ルイス酸触媒を添加し、均一に溶解したら徐々に昇温し、20〜40℃の温度で1〜100時間反応させることで、PAEK樹脂(B)を製造することができる。
【0067】
有機スルホン酸及び五酸化二リンの各成分量やこれらの割合、PAEK樹脂(B)の添加量、PAEK樹脂(B)と有機スルホン酸及び五酸化二リンとの割合、あるいはPAEK樹脂(B)を有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物下で反応させる際の反応条件(反応温度、反応時間等)などは、特に制限はないが、PAEK樹脂中のアルキルスルホニル基の濃度が好ましい範囲になるよう、適宜条件を設定するとよい。
【0068】
例えば、PAEK樹脂(B)の添加量に比べ、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物の添加量の割合を高くしたり、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物下でPAEK樹脂(B)を反応させる際の反応温度及び反応時間を十分確保することで、PAEK樹脂中の上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基の濃度を好ましい範囲に調整することができる。
【0069】
例えば、上記(ii−2)の実施態様の製造方法において、有機スルホン酸及び五酸化二リンの混合物下で、上記一般式(3−2)で表されるモノマーから得られたPAEK樹脂(B)を反応させる際の条件を、70〜120℃で1〜10時間反応させることにより、PAEK樹脂にアルキルスルホニル基を導入することが可能である。
具体的には、上記(ii−2)の実施態様の製造方法のより好ましい実施態様として、以下の(ii−3)で示される製造方法を挙げることができる。
【0070】
(ii−3)上記一般式(3−2)で表されるモノマーと、1、2−ジクロロベンゼンと、イソフタロイルクロリドと、テレフタロイルクロリドとを、無水塩化アルミニウム等のルイス酸触媒の存在下で反応させることによってPAEK樹脂(B)を得た上で、有機スルホン酸と五酸化二リンとの混合物の存在下で、得られたPAEK樹脂(B)を、70〜120℃の温度条件で1〜10時間反応させることにより本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する方法。
【0071】
上記(ii−3)の製造方法によると、上記一般式(1)で表されるアルキルスルホニル基のPAEK樹脂に対する導入量を好ましい範囲にすることができる。
【0072】
(ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂)を含有する樹脂組成物)
本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は他の配合物と合わせて樹脂組成物を作製することができる。
他の配合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
フィラーの形状としては、特に限定はなく、例えば、粒子状、板状、繊維状等のフィラーが挙げられる。
【0073】
本発明のPAEK樹脂を含有する樹脂組成物は、フィラーとしては繊維状フィラーを含有することがより好ましい。
繊維状フィラーとしては、例えば、無機繊維と有機繊維が挙げられる。
無機繊維としては、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩等の鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維等を挙げることができる。
【0074】
有機繊維としては、例えば、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維のほか、セルロース、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維が挙げられる。
【0075】
繊維状フィラーの中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。また、上記繊維状フィラーは、一種類で用いてもよく、又は複数種を併用してもよい。
【0076】
繊維の形態としては、繊維の集合体であっても、繊維が連続していても、不連続状であっても、織布状であっても、不織布状であっても構わない。また、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。また、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であっても構わない。
【0077】
本発明のPAEK樹脂とフィラーとの複合化方法としては、特に限定はなく、公知慣用の方法を用いることができる。例えば、PAEK樹脂とフィラーとを、混練、塗布、含浸、注入、圧着等の方法で複合化させることができる。
【0078】
また、本発明のPAEK樹脂を含有する樹脂組成物は、使用用途に応じて溶剤を配合しても構わない。
溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤の種類や適正な使用量は用途によって適宜選択することができる。
【0079】
また、本発明のPAEK樹脂を含有する樹脂組成物は、本発明のPAEK樹脂以外の各種樹脂、反応性化合物、触媒、重合開始剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等を配合してもよい。
【0080】
(ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂)を含む成形体)
本発明のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、耐熱性に優れ高いガラス転移温度(Tg)を有するとともに、高い結晶性を保持したまま結晶融点(Tm)を制御することが可能で、良好な成形加工性を有する。そのため、ニートレジンとしての使用や、ガラス繊維、炭素繊維、フッ素樹脂等のコンパウンドとしての使用が可能である。そして、本発明のPAEK樹脂を成形することで、ロッド、ボード、フィルム、フィラメント等の一次加工品や、各種射出加工品、各種切削加工品、ギア、軸受、コンポジット、インプラント、3D成形品等の二次加工品を製造することができ、これらの本発明のPAEK樹脂を成形してなる成形品は、自動車、航空機、電気電子、医療用部材等の利用が可能である。
特に本発明のPAEK樹脂は、390℃以上の高温下においても、フェニル基と主鎖構造のケトン基の架橋等の反応を抑止し、樹脂のゲル化を防止でき、溶融安定性に優れているため、良好な成形体を得ることができる。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
(ガラス転移点(Tg(℃))及び結晶融点(Tm(℃)))
パーキンエルマー製DSC装置 Pyris Diamondを用いて、50mL/minの窒素流下、20℃/minの昇温条件で40〜400℃まで測定を行い、ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)を求めた。
【0083】
(5%重量減少温度(Td5(℃)))
リガク製TG−DTA装置 TG−8120を用いて、20mL/minの窒素流下、20℃/minの昇温速度で測定を行い、5%重量減少温度を測定した。
【0084】
(溶融粘度(Pa・s))
島津製作所製フローテスター装置 CFT−500Cを用いて、溶融温度を融点の40℃上に設定し、荷重:1.96×10
6 Pa、L/D=10/1にて、6分間保持した後に溶融粘度(Pa・s)を測定した。
【0085】
(増粘比)
島津製作所製フローテスター装置 CFT−500Cを用いて、溶融温度を融点の40℃上に設定し、荷重:1.96×10
6 Pa、L/D=10/1にて、6分間保持した後と、30分間保持した後に溶融粘度(Pa・s)を測定し、次式で増粘比を算出した。
増粘比 = V30/V6
ここで、V30は30分間保持した後に測定した溶融粘度、V6は6分間保持した後に測定した溶融粘度を示す。
【0086】
(アルキルスルホニル基濃度)
樹脂0.25部を硝酸5容量部と混合しマイクロウェーブを照射して分解し、イオン交換水で25部に定容した。化学分析用硫酸イオン標準液に樹脂分解時と同程度の硝酸を添加し、0ppm,50ppm,100ppm,500ppm、1000ppm,3000ppmの6種類の濃度の検量線作製用試料を調製した。これをパーキンエルマー製ICP−OES装置 Optima8300を用いて測定を実施し、検量線を作成した。その後、前記の樹脂分解物からなる試料溶液の測定を実施し、硫黄原子濃度からアルキルスルホニル基濃度を算出した。
【0087】
(末端構造分析)
日本電子製NMR装置 JNM−ECZ400Sを用いて、重溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムの当重量混合液、試料濃度:60mg/ml、積算回数:16回、で
1H−NMRを測定した。
【0088】
(実施例1)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。更に100℃に昇温して、同温度で2時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例1のポリマーを得た。
【0089】
得られたポリマーの
1H−NMR測定を実施したところ、下記末端構造にメタンスルホニル基が結合されていることが確認できた。(δ=3.27、s、3H)。
【0090】
【化17】
【0091】
また、実施例1に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表1に示した。
【0092】
(実施例2)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、ジフェニルエーテル40.2gと4,4’−オキシビス安息香酸59.8gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。更に100℃に昇温して、同温度で2時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例2のポリマーを得た。
【0093】
また、実施例2に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表1に示した。
【0094】
(実施例3)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン43.3gと1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン56.7gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。更に100℃に昇温して、同温度で2時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例3のポリマーを得た。
【0095】
また、実施例3に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表1に示した。
【0096】
(実施例4)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例4のポリマーを得た。
【0097】
また、実施例4に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表1に示した。
【0098】
(実施例5)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、60℃に昇温し、同温度で60時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例5のポリマーを得た。
【0099】
また、実施例5に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表1に示した。
【0100】
(実施例6)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。更に80℃に昇温して、同温度で2時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例6のポリマーを得た。
【0101】
また、実施例6に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表2に示した。
【0102】
(実施例7)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、60℃に昇温し、同温度で10時間反応させた。更に100℃に昇温して、同温度で4時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例7のポリマーを得た。
【0103】
また、実施例7に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表2に示した。
【0104】
(実施例8)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。更に120℃に昇温して、同温度で2時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例8のポリマーを得た。
【0105】
また、実施例8に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表2に示した。
【0106】
(実施例9)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、100℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例9のポリマーを得た。
【0107】
また、実施例9に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表2に示した。
【0108】
(実施例10)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、1、4−ジフェノキシベンゼン50.9gと4,4’−オキシビス安息香酸49.1gを添加し、120℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例10のポリマーを得た。
【0109】
また、実施例10に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表2に示した。
【0110】
(実施例11)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、1、2−ジクロロベンゼン864gとイソフタロイルクロリド5.4gとテレフタロイルクロリド21.6gとジフェニルエーテル23.0gを仕込み、窒素雰囲気下で−5℃まで冷却した。その後、無水塩化アルミニウム86gを添加して均一になったら、2時間かけて30℃に昇温し、同温度で50時間反応させた。反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
更に析出したポリマーをメタノールで2回洗浄した。次にイオン交換水で2回洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、ポリマーを得た。
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸327gと五酸化二リン33gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、上記の得られたポリマー40gを添加し、100℃に昇温し、同温度で5時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例11のポリマーを得た。
【0111】
また、実施例11に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表3に示した。
【0112】
(実施例12)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、1、2−ジクロロベンゼン864gとイソフタロイルクロリド4.3gとテレフタロイルクロリド17.3gと1、4−ジフェノキシベンゼン28.4gを仕込み、窒素雰囲気下で−5℃まで冷却した。その後、無水塩化アルミニウム86gを添加して均一になったら、2時間かけて30℃に昇温し、同温度で50時間反応させた。反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
更に析出したポリマーをメタノールで2回洗浄した。次にイオン交換水で2回洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、ポリマーを得た。
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸327gと五酸化二リン33gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、上記の得られたポリマー40gを添加し、100℃に昇温し、同温度で5時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例12のポリマーを得た。
【0113】
また、実施例12に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表3に示した。
【0114】
(実施例13)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、1、2−ジクロロベンゼン864gとイソフタロイルクロリド4.3gとテレフタロイルクロリド17.3gと1、4−ジフェノキシベンゼン28.4gを仕込み、窒素雰囲気下で−5℃まで冷却した。その後、無水塩化アルミニウム86gを添加して均一になったら、2時間かけて30℃に昇温し、同温度で50時間反応させた。反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
更に析出したポリマーをメタノールで2回洗浄した。次にイオン交換水で2回洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、ポリマーを得た。
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、エタンスルホン酸327gと五酸化二リン33gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、上記の得られたポリマー40gを添加し、100℃に昇温し、同温度で5時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、実施例13のポリマーを得た。
【0115】
得られたポリマーの
1H−NMR測定を実施したところ、下記末端構造にエタンスルホニル基が結合されていることが確認された。(δ=3.17、m、2H、δ=1.42、m、3H)。
【0116】
【化18】
【0117】
また、実施例13に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表3に示した。
【0118】
(比較例1)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、1、2−ジクロロベンゼン864gとイソフタロイルクロリド5.4gとテレフタロイルクロリド21.6gとジフェニルエーテル23.0gを仕込み、窒素雰囲気下で−5℃まで冷却した。その後、無水塩化アルミニウム86gを添加して均一になったら、2時間かけて30℃に昇温し、同温度で、50時間反応させた。反応溶液を強撹拌下にメタノール中に注ぎ込み、反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、比較例1のポリマーを得た
【0119】
また、比較例1に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表4に示した。
【0120】
(比較例2)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、メトキシベンゼン1.66g、1,4−ジフェノキシベンゼン50.3gと4,4’−オキシビス安息香酸49.5gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、比較例2のポリマーを得た。
【0121】
得られたポリマーの
1H−NMR測定を実施したところ、下記末端構造にメトキシ基が結合されていることが確認された。(δ=3.74、s、3H)。
【0122】
【化19】
【0123】
また、比較例2に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表4に示した。
【0124】
(比較例3)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、メチルベンゼン1.41g、1,4−ジフェノキシベンゼン50.3gと4,4’−オキシビス安息香酸49.5gを添加し、60℃に昇温し、同温度で20時間反応させた。その後、室温まで冷却し、次に反応溶液を強撹拌しているところに、メタノールを少量ずつ添加して、微粒子状のポリマーを析出させた。そして、析出したポリマーを濾過した。
濾過残渣をソックスレー抽出装置にかけ、熱メタノールを還流して40時間抽出洗浄した。更に熱水を還流して40時間抽出洗浄した。その後、固液分離し、濾過した洗浄ケーキを真空下の180℃で10時間乾燥させることにより、比較例3のポリマーを得た。
【0125】
得られたポリマーの
1H−NMR測定を実施したところ、下記末端構造にメチル基が結合されていることが確認された。(δ=2.34、s、3H)。
【0126】
【化20】
【0127】
また、比較例3に係るPAEK樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶融点(Tm)、5%重量減少温度(Td5)、溶融粘度及び増粘比を測定し、結果を表4に示した。
【0128】
尚、下記表1〜3において、各実施例におけるPAEK樹脂の末端部位に結合しているアルキルスルホニル基の種類を記載する。また、下記表4において、各比較例におけるPAEK樹脂の末端部位に結合している基の種類を記載する。
下記表1〜4において、各実施例、及び各比較例におけるPAEK樹脂中のアルキルスルホニル基の濃度(mmol/kg)の測定結果を記載する。
下記表1〜4において、各実施例、及び各比較例におけるPAEK樹脂の主鎖構造について、上記一般式(2)で表した時の、上記一般式(3−1)中のnの値と上記一般式(4−1)中のmの値を記載する。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
実施例1〜13のPAEK樹脂は、融点の40℃上における高温下での溶融粘度の6分後と30分後の比である増粘比を2以下、より好ましくは1.2以下にすることができる。
つまり、比較例においては、融点の40℃上における高温下での溶融樹脂を30分保持した際の溶融粘度が6分後に比べて2.5倍〜3.4倍と大きく上昇する。それに対して、実施例では、30分後の溶融粘度は6分後に比べて殆ど上昇せず、高くても1.8倍と低く、本発明のPAEK樹脂は、溶融粘度の安定性に優れていることがわかった。
このように、本発明のPAEK樹脂は、高温での溶融状態においても、溶融粘度の安定性に優れた樹脂となるため、良好な成形加工性を有する。