特許第6819964号(P6819964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 出光興産株式会社の特許一覧

特許6819964化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
<>
  • 特許6819964-化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器 図000048
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819964
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/61 20060101AFI20210114BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20210114BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210114BHJP
   C07C 211/54 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C07C211/61CSP
   C09K11/06 690
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   C07C211/54
【請求項の数】13
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2017-533068(P2017-533068)
(86)(22)【出願日】2016年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2016072563
(87)【国際公開番号】WO2017022729
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-152962(P2015-152962)
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 朋希
(72)【発明者】
【氏名】八巻 太郎
(72)【発明者】
【氏名】河村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕勝
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−215281(JP,A)
【文献】 特開2002−249765(JP,A)
【文献】 特開2004−047443(JP,A)
【文献】 特開2001−192652(JP,A)
【文献】 特開2004−231547(JP,A)
【文献】 特開2016−040824(JP,A)
【文献】 特開2017−010968(JP,A)
【文献】 特表2014−517524(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0040133(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0100031(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0087755(KR,A)
【文献】 特開2016−136582(JP,A)
【文献】 特開2016−136581(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0052136(KR,A)
【文献】 国際公開第2017/022730(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/61
C07C 211/54
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式中、
〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基又は環形成炭素数6〜18のアリール基を表す。
aは0又は1の整数であり、bは0又は1の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは0又は1の整数であり、eは0又は1の整数であり、fは0又は1の整数であり、(R、(R、(R、(R、(R及び(Rは、それぞれ、R、R、R、R、R又はRが存在しないことを意味し、R〜Rから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成することはなく、R〜Rから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成することはない。
〜Lは、それぞれ独立に、単結合、又は下記式(ii)及び(iii)のいずれかで表されるアリーレン基であり、
【化2】

(式中、各Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基であって該アラルキル基が有するアリール基の環形成炭素数が6〜18であるアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基を表し、qはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、Lが式(ii)又は(iii)で表される場合、*と**の一方は式(1)中のArとの結合を表し、他方は式(1)中の窒素原子との結合を表し、Lが式(ii)又は(iii)で表される場合、*と**の一方は式(1)中のフェナントレン構造との結合を表し、他方は式(1)中の窒素原子との結合を表し、Lが式(ii)又は(iii)で表される場合、*と**の一方は式(1)中のフェナントレン構造との結合を表し、他方は式(1)中の窒素原子との結合を表す。)
及びLの少なくともいずれかは単結合ではなく、
Arは、下記式(a)〜(d)、(g)及び(h)のいずれか1つで表される。
【化3】

【化4】

(式(a)〜(d)、(g)及び(h)において、
各Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基であって該アラルキル基が有するアリール基の環形成炭素数が6〜18であるアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、シアノ基、又はニトロ基を表す。
pはそれぞれ独立に0〜5の整数、qはそれぞれ独立に0〜4の整数、rはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。(R)はRが存在しないことを意味する。
式(g)において、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、又はシアノ基を表す。
前記式(a)〜(d)及び(h)において、隣接する2つのRが互いに結合して芳香族炭化水素環を形成してもよく、
前記式(g)において、R、R及びRから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して芳香族炭化水素環を形成してもよい。
*は、前記式(1)中のLとの結合を表す。)
前記「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基であって該アラルキル基が有するアリール基の環形成炭素数が6〜18であるアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基;炭素数1〜20のハロアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である。)
【請求項2】
前記式(a)〜(d)及び(h)において、隣接する2つのRが互いに結合することはなく、
前記式(g)において、R、R及びRから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合することはない請求項に記載の化合物。
【請求項3】
Arが、下記式(b−1)〜(b−3)、(c−1)〜(c−3)、(d−1)〜(d−3)、(g−1)〜(g−3)、及び(h−1)のいずれか1つで表される請求項1又は2に記載の化合物。
【化5】

【化6】

〔式(b−1)〜(b−3)、(c−1)〜(c−3)、(d−1)〜(d−3)、(g−1)〜(g−3)、及び(h−1)において、
各Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基であって該アラルキル基が有するアリール基の環形成炭素数が6〜18であるアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、シアノ基、又はニトロ基を表し、
pはそれぞれ独立に0〜5の整数、qはそれぞれ独立に0〜4の整数、rはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。
*は、前記式(1)中のLとの結合を表す。
(R)はRが存在しないことを意味する。
ただし、当該各式において、隣接する2つのRが互いに結合して、環構造を形成することはない。〕
【請求項4】
が単結合である請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項6】
陰極、陽極、及び該陰極と該陽極の間に配置された有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該有機薄膜層が1又は複数の層を含み、該有機薄膜層が発光層を含み、該有機薄膜層の少なくとも1層が請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
陽極と発光層の間に正孔輸送層を含み、該正孔輸送層が前記化合物を含む請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
陽極と発光層の間に電子阻止層を含み、該電子阻止層が前記化合物を含む請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
陽極と発光層の間に励起子阻止層を含み、該励起子阻止層が前記化合物を含む請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
陽極と発光層の間に2以上の層を含む陽極側有機薄膜層を含み、該陽極側有機薄膜層の少なくとも1層が前記化合物を含む請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記2以上の層を含む陽極側有機薄膜層が2以上の正孔輸送層を含み、陽極に最も近接する正孔輸送層が前記化合物を含む請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記2以上の層を含む陽極側有機薄膜層が2以上の正孔輸送層を含み、発光層に最も近接する正孔輸送層が前記化合物を含む請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
請求項12のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は陽極、陰極、及び陽極と陰極に挟まれた1以上の層を含む有機薄膜層から構成されている。両電極間に電圧が印加されると、陰極側から電子、陽極側から正孔が発光領域に注入され、注入された電子と正孔は発光領域において再結合して励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際に光を放出する。従って、電子又は正孔を効率よく発光領域に輸送し、電子と正孔との再結合を容易にする化合物の開発は高効率有機EL素子を得る上で重要である。
【0003】
特許文献1は、3−フェナントリル基が直接又はリンカーを介して中心窒素原子に結合した三級アミン化合物、例えば、化合物1−1、4−2及び4−3、を記載している。これらの化合物は有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、その他の層に使用できることが記載されており、実施例では電子阻止層(EBL)に用いられている。
特許文献2は、1個の2−フェナントリル基がリンカーを介して中心窒素原子に結合した三級アミン化合物、例えば、化学式1−3の化合物及び化学式1−4の化合物、を記載している。これらの化合物は有機発光素子の正孔注入、正孔輸送、電子注入、電子輸送、発光物質の役割を果たすことができると記載されている。実施例では、化学式1−3の化合物は、正孔輸送及び電子遮断層に用いられている。
しかしながら、有機EL素子の性能をさらに改善することができる新規材料の開発が依然として望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2015/0155491号
【特許文献2】特表2014−511352号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、高性能な有機EL素子及びそのような有機EL素子を実現することができる新規材料を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)で表される化合物を用いることにより、高性能な有機EL素子が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、一態様において、本発明は式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と称することもある)を提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、
1〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
aは0〜3の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは0〜4の整数であり、dは0〜4の整数であり、eは0〜2の整数であり、fは0〜3の整数であり、(R、(R、(R、(R、(R及び(Rは、それぞれ、R1、R2、R、R、R又はRが存在しないことを意味し、R〜Rから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成することはなく、R〜Rから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成することはない。
〜Lは、それぞれ独立に、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基を表す。
Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を表す。
前記「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18のアリール基を有する炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基;炭素数1〜20のハロアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である。)
【0010】
他の態様において、本発明は化合物(1)を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供する。
【0011】
さらに他の態様において、本発明は陰極、陽極、及び該陰極と該陽極の間に配置された有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該有機薄膜層は1又は複数の層を含み、該有機薄膜層は発光層を含み、該有機薄膜層の少なくとも1層が化合物(1)を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0012】
さらに他の態様において、本発明は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0013】
前記化合物(1)を用いて作製した有機EL素子は、性能を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様に係る有機EL素子の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。
【0016】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX〜YYのZZ基」という表現における「原子数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表すものであり、置換されている場合の置換基の原子数は含めない。
【0017】
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換のZZ基」とは、ZZ基の水素原子が置換基で置換されていないことを意味する。
【0018】
本明細書において、「水素原子」とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0019】
本明細書において、「環形成炭素数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数に含めない。
【0020】
本明細書において、「環形成原子数」とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環は環形成原子数は6であり、キナゾリン環は環形成原子数が10であり、フラン環の環形成原子数は5である。ピリジン環やキナゾリン環の環形成炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子は、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロビフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
【0021】
本発明において、ひとつの基に関して記載した例示、その好ましい例示などは、他の基に関して記載した例示、その好ましい例示などのいずれとも任意に組み合わせることができる。また、ひとつの基に関して記載した例示、その好ましい例示などから任意に選択した基は、他の基に関して記載した例示、その好ましい例示などから任意に選択した基と組み合わせることができる。
原子数、炭素数、その他の態様についても、同様に任意に組み合わせることができる。また、前記の基、原子数、炭素数、その他の態様相互の組合せについても同様である。
【0022】
本発明の一態様に係る化合物は式(1)で表される。
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、
1〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
aは0〜3の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは0〜4の整数であり、dは0〜4の整数であり、eは0〜2の整数であり、fは0〜3の整数であり、(R、(R、(R、(R、(R及び(Rは、それぞれ、R1、R2、R、R、R又はRが存在しないことを意味し、R〜Rから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成することはなく、R〜Rから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成することはない。
〜Lは、それぞれ独立に、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基を表す。
Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基を表す。
前記「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18のアリール基を有する炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基;炭素数1〜20のハロアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である。)
式(1)で表される化合物によると、外部量子効率が高く、寿命が長く、従って高性能な有機EL素子を得ることが可能である。
【0025】
1〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基;環形成炭素数3〜50、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜6、さらに好ましくは5又は6のシクロアルキル基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のハロアルキル基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルコキシ基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のハロアルコキシ基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜12、より好ましくは6のアリール基;環形成炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12のアリールオキシ基;ハロゲン原子;又はシアノ基を表す。
好ましくは、R1〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜12、より好ましくは6のアリール基;環形成炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12のアリールオキシ基;又はシアノ基を表す。
より好ましくは、R1〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜12、より好ましくは6のアリール基を表す。
【0026】
前記炭素数1〜20アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)、ノニル基(異性体を含む)、デシル基(異性体を含む)、ウンデシル基(異性体を含む)、及びドデシル基(異性体を含む)が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、及びペンチル基(異性体を含む)が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、及びt−ブチル基がより好ましく、メチル基及びt−ブチル基がさらに好ましく、メチル基がよりさらに好ましい。
【0027】
前記環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基が挙げられる。
【0028】
前記炭素数1〜20のハロアルキル基としては、例えば、上記の炭素数1〜20のアルキル基の少なくとも1個、好ましくは1〜7の個水素原子、又は全ての水素原子をフッ素原子で置換して得られる基が挙げられ、ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、トリフルオロメチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0029】
前記炭素数1〜20のアルコキシ基は−OR11で表され、R11は上記の炭素数1〜20のアルキル基を表す。該アルコキシ基としては、t−ブトキシ基、プロポキシ基(異性体を含む)、エトキシ基、メトキシ基が好ましくエトキシ基、メトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0030】
前記炭素数1〜20のハロアルコキシ基は−OR12で表され、R12は上記の炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表す。該フルオロアルコキシ基としては、ヘプタフルオロプロポキシ基(異性体を含む)、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基が好ましく、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基がより好ましく、トリフルオロメトキシ基がさらに好ましい。
【0031】
前記環形成炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニリル基、例えば、2−、3−又は4−ビフェニリル基、及びターフェニリル基、例えば、2−p−ターフェニリル基、4−p−ターフェニリル基、2’−m−ターフェニリル基、及び5’−m−ターフェニリル基が好ましく、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニリル基、例えば、2−、3−又は4−ビフェニリル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0032】
前記環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基は−OR13で表され、R13は環炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12のアリール基を表す。
該アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ビフェニレニル基、ナフチル基、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、トリフェニレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、ペンタセニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、s−インダセニル基、as−インダセニル基、フルオランテニル基、及びペリレニル基が挙げられ、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、及びナフチル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、及びナフチル基がより好ましく、フェニル基であることがさらに好ましい。
【0033】
前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子であり、フッ素原子が好ましい。
【0034】
aは0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。bは0〜2の整数、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。cは0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。dは0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。eは0〜2の整数、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。fは0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。一つの好ましい態様としては、a〜fのすべてが0である。
a〜fのそれぞれが0である場合、すなわち、(R、(R、(R、(R、(R及び(Rは、それぞれ、R1、R2、R、R、R又はRが存在しないこと、すなわち、R1、R2、R、R、R又はRで置換されていないことを意味する。
a、b、c、d、e、又はfが2以上の整数を表す場合、2〜3個のR1、2個のR2、及び2〜4個のR、2〜4個のR、2個のR、及び2〜3個のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R1〜Rから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成することはない。
【0035】
Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50、好ましくは6〜25、より好ましくは6〜24、さらに好ましくは6〜18のアリール基を表す。
【0036】
Arが表す置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基において、該アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ビフェニレニル基、ナフチル基、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、ベンゾフェナントリル基、トリフェニレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、ペンタセニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、s−インダセニル基、as−インダセニル基、フルオランテニル基、及びペリレニル基が挙げられる。
これらアリール基のうち、好ましくは、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、及びフルオランテニル基である。
これらアリール基のうち、より好ましくは、ビフェニル基、ターフェニル基、2−フェナントリル基、及びフルオレニル基である。
【0037】
〜Lは、それぞれ独立に、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12のアリーレン基を表し、さらに好ましくは単結合又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜12のアリーレン基を表し、よりさらに好ましくは単結合又はフェニレン基を表す。
【0038】
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基において、該アリーレン基は、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ビフェニレニル基、ナフチル基、アセナフチレニル基、アントリル基、ベンゾアントリル基、アセアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ベンゾフェナントリル基、フェナレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、9,9’−スピロビフルオレニル基、ペンタセニル基、ピセニル基、ペンタフェニル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、s−インダセニル基、as−インダセニル基、フルオランテニル基、及びペリレニル基から1個の水素原子を除いて得られる2価の基からなる群より選ばれる。
【0039】
式(1)において、「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基は、炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基;環形成炭素数3〜50、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜6、さらに好ましくは5又は6のシクロアルキル基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜12、より好ましくは6〜10、さらに好ましくは6のアリール基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜12、より好ましくは6〜10、さらに好ましくは6のアリール基を有する炭素数7〜30のアラルキル基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルコキシ基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜12、より好ましくは6〜10、さらに好ましくは6のアリールオキシ基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4のハロアルキル基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のハロアルコキシ基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基及び環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜12、より好ましくは6〜10、さらに好ましくは6のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基;ハロゲン原子;シアノ基;及びニトロ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である。
【0040】
任意の置換基として選択され得る炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、及びハロゲン原子の詳細は、R1〜Rに関して記載したとおりである。
【0041】
任意の置換基として選択され得る環形成炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニリル基、例えば、2−、3−又は4−ビフェニリル基、及びターフェニリル基、例えば、2−p−ターフェニリル基、4−p−ターフェニリル基、2’−m−ターフェニリル基、及び5’−m−ターフェニリル基が挙げられる。
【0042】
任意の置換基として選択され得る環形成炭素数6〜18のアリール基を有する炭素数7〜30のアラルキル基において、該環形成炭素数6〜18のアリール基は上記した通りである。
【0043】
任意の置換基として選択され得る環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基が有するアリール基は上記した通りである。
【0044】
任意の置換基として選択され得る炭素数1〜20のハロアルキル基において、該ハロアルキル基は、R1〜Rに関して上記した炭素数1〜20のアルキル基の少なくとも1個、好ましくは1〜7個の水素原子、又は全ての水素原子をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子からなる群から選ばれるハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換して得られる基であり、ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリフルオロメチル基が好ましく、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0045】
任意の置換基として選択され得る炭素数1〜20のハロアルコキシ基は−OR14で表され、R14は上記の炭素数1〜20のハロアルキル基、好ましくは炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表す。該ハロアルコキシ基としては、ヘプタフルオロプロポキシ基(異性体を含む)、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、又はトリフルオロメトキシ基が好ましく、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、又はトリフルオロメトキシ基がより好ましく、トリフルオロメトキシ基が更に好ましい。
【0046】
任意の置換基として選択され得る炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基において、該アルキル基及び該アリール基は上記したとおりである。その具体例として、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基が挙げられる。
【0047】
本発明の好ましい態様において、Arは、下記式(a)〜(m)のいずれかで表される。
【0048】
【化3】
【0049】
式(a)〜(m)において、*は、前記式(1)中のL又はL2との結合を表す。
【0050】
式(a)〜(m)において、各Rは、それぞれ独立に、式(1)の「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基に関して上記した置換基から選ばれる。
好ましくは、各Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、環形成炭素数6〜18のアリール基を有する炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜18のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる置換基を有するモノ置換、ジ置換又はトリ置換シリル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基から選ばれる。
より好ましくは、各Rは、それぞれ独立に、無置換の炭素数1〜20のアルキル基、無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる1種である。さらに好ましくは、各Rは、それぞれ独立に、無置換の環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれる1種であり、よりさらに好ましくはフェニル基である。
【0051】
式(a)〜(m)において、pはそれぞれ独立に0〜5の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0を表す。qはそれぞれ独立に0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0を表す。rはそれぞれ独立に0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0を表す。sは0〜2の整数、好ましくは0又は1、より好ましくは0を表す。tは0又は1、好ましくは0を表す。
【0052】
p、q、r又はsが2以上の整数を表す場合、2〜5個、2〜4個、2〜3個、又は2個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
本発明の一態様において、式(a)〜(f)及び(h)〜(m)において、隣接する2つのRが互いに結合して環構造を形成してもよく、式(g)において、R、R及びRから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成してもよい。環構造としては、ベンゼン環などの芳香族炭化水素環、及び窒素原子、酸素原子、硫黄原子などの環形成ヘテロ原子を有する芳香族複素環が好ましい。
本発明の他の態様において、式(a)〜(f)及び(h)〜(m)において、隣接する2つのRは互いに結合していなくてもよい。また、本発明の他の態様において、式(g)において、R、R及びRから選ばれる隣接する2つの基が互いに結合して環構造を形成しなくてもよい。
【0053】
p〜tのいずれかが0である場合、(R)はRが存在しないこと、すなわち、Rで置換されていないことを意味する。本発明の一態様において、式(a)〜(m)で表される基は、1又は2個のRを有することが好ましく、1個のRを有することがより好ましい。本発明の他の態様において、式(a)〜(m)で表される基はRで置換されていないこと、すなわち、p〜tのすべてが0であることが好ましい。
【0054】
式(g)において、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜10、より好ましくは6のアリール基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のハロアルキル基好ましくはフルオロアルキル基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルコキシ基;炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のハロアルコキシ基好ましくはフルオロアルコキシ基;環形成炭素数6〜18、好ましくは6〜10、より好ましくは6のアリールオキシ基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
及びRが表す各基の詳細は、式(1)の「置換もしくは無置換」というときの任意の置換基に関して上記した各基と同様である。
好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜18のアリール基から選ばれ、より好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる。
【0055】
式(b)は、好ましくは、Rで置換されていてもよく置換されてなくてもよい2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基又は4−ビフェニリル基を表す。
【0056】
式(c)は、好ましくは、それぞれRで置換されていてもよく置換されてなくてもよい、2−、3−又は4−p−ターフェニリル基、2−、3−又は4−m−ターフェニリル基、又は2−、3−又は4−o−ターフェニリル基を表す。
【0057】
式(d)は、好ましくは、それぞれRで置換されていてもよく置換されてなくてもよい、2’-p−ターフェニリル基、2’-、4’−、又は5’−m−ターフェニリル基、又は4’−o−ターフェニリル基を表す。
【0058】
式(e)は、好ましくは、それぞれRで置換されていてもよく置換されてなくてもよい、1−ナフチル基又は2−ナフチル基を表す。
【0059】
式(f)は、好ましくは2−フェナントリル基、3−フェナントリル基又は4−フェナントリル基を表し、より好ましくは2−フェナントリル基又は4−フェナントリル基を表し、さらに好ましくは2−フェナントリル基を表し、それぞれRで置換されていてもよく置換されていなくてもよい。Rで置換される場合のRは、R〜Rに関して記載したとおりである。
【0060】
式(g)において、R及びRは共にメチル基またはフェニル基であること、又は、R及びRの一方がメチル基、他方がフェニル基であることが好ましい。式(g)で表される基は、フルオレン環の1〜4位、好ましくは2位又は4位で式(1)のL又はL2と結合する。
【0061】
式(h)は好ましくは、Rで置換されていてもよく置換されてなくてもよい、4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル基を表す。
【0062】
式(i)で表される基は、フルオレン環の1〜4位、好ましくは2位又は4位で式(1)のL又はL2と結合する。
【0063】
式(j)で表される基は、フルオランテン環の2位又は3位で式(1)のL又はL2と結合するのが好ましい。
【0064】
式(k)で表される基は、フルオランテン環の7位又は8位で式(1)のL又はL2と結合するのが好ましい。
【0065】
式(1)で表される基は、トリフェニレン環の2位で式(1)のL又はL2と結合するのが好ましい。
【0066】
式(1)で表される化合物のより好ましい態様において、Arは、それぞれ独立に、下記式(b−1)、(b−2)、(b−3)、(c−1)、(c−2)、(c−3)、(d−1)、(d−2)、(d−3)、(e−1)、(e−2)、(f−1)、(f−2)、(f−3)、(f−4)、(g−1)、(g−2)、(g−3)、(h−1)、(i−1)、(i−2)、(j−1)、(j−2)、(k−1)、(k−2)、(l−1)、又は(m)で表される。
なお、これらの式中、R、p、q、r、s、t及び*は前記と同様である。また、これらの式において、隣接する2つのRが互いに結合して環構造を形成することはない。
【0067】
【化4】
【0068】
【化5】
【0069】
本発明の一態様において、L〜Lのそれぞれが単結合であってもよいし、L〜Lのそれぞれが置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜12のアリーレン基であってもよい。
【0070】
前記置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50アリーレン基は下記式(ii)又は(iii)で表されることが好ましい。
【0071】
【化6】
【0072】
上記式中、Rとqは式(a)〜(m)に関して定義したとおりである。
が式(ii)又は(iii)で表される場合、*と**の一方は式(1)中のArとの結合を表し、他方は式(1)中の窒素原子との結合を表し、
が式(ii)又は(iii)で表される場合、*と**の一方は式(1)中の2−フェナントリル基との結合を表し、他方は式(1)中の窒素原子との結合を表し、
が式(ii)又は(iii)で表される場合、*と**の一方は式(1)中の2−フェナントリル基との結合を表し、他方は式(1)中の窒素原子との結合を表す。
【0073】
式(ii)及び(iii)は好ましくは下記式で表される。
【0074】
【化7】
【0075】
上記式中、R、q、*、及び**は前記したとおりである。
【0076】
は単結合であってもよい。Lは単結合であってもよい。また、L及びLが共に単結合であってもよい。さらに、L〜Lのすべてが単結合であってもよい。
【0077】
化合物(1)の具体例を以下に示すが、以下の化合物に限定されるものではない。
【0078】
【化8】
【0079】
【化9】
【0080】
【化10】
【0081】
【化11】
【0082】
【化12】
【0083】
【化13】
【0084】
【化14】
【0085】
【化15】
【0086】
【化16】
【0087】
【化17】
【0088】
【化18】
【0089】
【化19】
【0090】
【化20】
【0091】
【化21】
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】

【0094】
【化24】
【0095】
有機EL素子用材料
本発明の一態様である有機EL素子用材料は、前記式(1)で表される化合物(化合物(1))を含む。
なお、以下の説明において、化合物(1)に関する記載は、化合物(1)、及び当該化学式(1)に包含される下位概念の前記各化合物に置き換えて読むことができる。
本発明の一態様である有機EL素子用材料における化合物(1)の含有量は、特に制限されず、例えば、1質量%以上(100質量%を含む)であればよく、10質量%以上(100質量%を含む)であることが好ましく、50質量%以上(100質量%を含む)であることがより好ましく、80質量%以上(100質量%を含む)であることがさらに好ましく、90質量%以上(100質量%を含む)であることが特に好ましい。
本発明の有機EL素子用材料は、有機EL素子製造用の材料として有用であり、例えば、蛍光発光ユニットの発光層におけるホスト材料及びドーパント材料や、燐光発光ユニットの発光層におけるホスト材料として用いることができる。また、蛍光発光ユニット及び燐光発光ユニットのいずれにおいても、陽極と発光層との間に設けられる正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層等の陽極側有機薄膜層、及び陰極と発光層との間に設けられる電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層等の陰極側有機薄膜層の材料としても有用である。前記陽極側有機薄膜層は2以上の層を含む多層であってもよく、該2以上の層は正孔輸送層であってもよい。本発明の有機EL素子用材料は、該2以上の正孔輸送層のいずれの層に含まれていてもよい。すなわち、本発明の有機EL素子用材料は、発光層に最も近接する正孔輸送層、陽極に最も近接する正孔輸送層、及び中間に位置する正孔輸送層のいずれに用いてもよい。
【0096】
有機EL素子
次に、本発明の一態様の有機EL素子について説明する。
有機EL素子は、陰極と陽極の間に1以上の層を含む有機薄膜層を有する。この有機薄膜層は、1又は複数の層を含み、かつこの有機薄膜層は発光層を含み、有機薄膜層の少なくとも一層が化合物(1)を含む。
前記化合物(1)が含まれる有機薄膜層の例としては、陽極と発光層との間に設けられる陽極側有機薄膜層(正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、励起子阻止層等)、発光層、スペース層、阻止層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、蛍光発光ユニットの発光層におけるホスト材料やドーパント材料、正孔注入層材料、正孔輸送層材料として用いることができる。また、燐光発光ユニットの発光層におけるホスト材料、正孔注入層材料、正孔輸送層材料として用いることができる。前記陽極側有機薄膜層が2以上の正孔輸送層を含む場合、前記化合物(1)はいずれの正孔輸送層に含まれていてもよい。すなわち、前記化合物(1)は、発光層に最も近接する正孔輸送層、陽極に最も近接する正孔輸送層、及び中間に位置する正孔輸送層のいずれに含まれていてもよい。
【0097】
本発明の一態様に係る有機EL素子は、蛍光又は燐光発光型の単色発光素子であっても、蛍光/燐光ハイブリッド型の白色発光素子であってもよいし、単独の発光ユニットを有するシンプル型であっても、複数の発光ユニットを有するタンデム型であってもよい。ここで、「発光ユニット」とは、1以上の層を含む有機薄膜層を含み、そのうちの少なくとも一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光する最小単位をいう。
【0098】
例えば、シンプル型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(1)陽極/発光ユニット/陰極
また、上記発光ユニットは、燐光発光層や蛍光発光層を複数有する積層型であってもよく、その場合、各発光層の間に、燐光発光層で生成された励起子が蛍光発光層に拡散することを防ぐ目的で、スペース層を有していてもよい。シンプル型発光ユニットの代表的な層構成を以下に示す。括弧内の層は任意である。
(au)(正孔注入層/)正孔輸送層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(bu)(正孔注入層/)正孔輸送層/燐光発光層(/電子輸送層)
(cu)(正孔注入層/)正孔輸送層/第一蛍光発光層/第二蛍光発光層(/電子輸送層)
(du)(正孔注入層/)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層(/電子輸送層)
(eu)(正孔注入層/)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(fu)(正孔注入層/)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(gu)(正孔注入層/)正孔輸送層/第一燐光発光層/スペース層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(hu)(正孔注入層/)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/第一蛍光発光層/第二蛍光発光層(/電子輸送層)
(iu)(正孔注入層/)正孔輸送層/電子阻止層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(ju)(正孔注入層/)正孔輸送層/電子阻止層/燐光発光層(/電子輸送層)
(ku)(正孔注入層/)正孔輸送層/励起子阻止層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(lu)(正孔注入層/)正孔輸送層/励起子阻止層/燐光発光層(/電子輸送層)
(mu)(正孔注入層/)第一正孔輸送層/第二正孔輸送層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(nu)(正孔注入層/)第一正孔輸送層/第二正孔輸送層/燐光発光層(/電子輸送層)
(ou)(正孔注入層/)正孔輸送層/蛍光発光層/正孔阻止層(/電子輸送層)
(pu)(正孔注入層/)正孔輸送層/蛍光発光層/トリプレット阻止層(/電子輸送層)
【0099】
上記各燐光又は蛍光発光層は、それぞれ互いに異なる発光色を示すものとすることができる。具体的には、上記積層発光ユニット(fu)において、(正孔注入層/)正孔輸送層/第一燐光発光層(赤色発光)/第二燐光発光層(緑色発光)/スペース層/蛍光発光層(青色発光)/電子輸送層といった層構成等が挙げられる。
なお、各発光層と正孔輸送層あるいはスペース層との間には、適宜、電子障壁層を設けてもよい。また、各発光層と電子輸送層との間には、適宜、正孔障壁層を設けてもよい。電子障壁層や正孔障壁層を設けることで、電子又は正孔を発光層内に閉じ込めて、発光層における電荷の再結合確率を高め、発光効率を向上させることができる。
【0100】
タンデム型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(2)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極
ここで、上記第一発光ユニット及び第二発光ユニットとしては、例えば、それぞれ独立に上述の発光ユニットから選択することができる。
上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、第一発光ユニットに電子を、第二発光ユニットに正孔を供給する、公知の材料構成を用いることができる。
【0101】
図1に、前記有機EL素子の一例の概略構成を示す。有機EL素子1は、基板2、陽極3、陰極4、及び該陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット10とを有する。発光ユニット10は、少なくとも一つの発光層5を有する。発光層5と陽極3との間に正孔注入・輸送層6(陽極側有機薄膜層)等、発光層5と陰極4との間に電子注入・輸送層7(陰極側有機薄膜層)等を形成してもよい。また、発光層5の陽極3側に電子障壁層(図示せず)を、発光層5の陰極4側に正孔障壁層(図示せず)を、それぞれ設けてもよい。これにより、電子や正孔を発光層5に閉じ込めて、発光層5における励起子の生成確率をさらに高めることができる。
【0102】
なお、本発明において、蛍光ドーパント(蛍光発光材料)と組み合わされたホストを蛍光ホストと称し、燐光ドーパントと組み合わされたホストを燐光ホストと称する。蛍光ホストと燐光ホストは分子構造のみにより区分されるものではない。すなわち、燐光ホストとは、燐光ドーパントを含有する燐光発光層を形成する材料を意味し、蛍光発光層を形成する材料として利用できないことを意味しているわけではない。蛍光ホストについても同様である。
【0103】
基板
基板は、有機EL素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックなどの板を用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニルからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0104】
陽極
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステンおよび酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または前記金属の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0105】
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜10質量%の酸化亜鉛を加えたターゲットを、酸化タングステンおよび酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5質量%、酸化亜鉛を0.1〜1質量%含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0106】
陽極に接して形成される正孔注入層は、陽極の仕事関数に関係なく正孔注入が容易である材料を用いて形成されるため、電極材料として一般的に使用される材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、元素周期表の第1族または第2族に属する元素)を用いることができる。
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0107】
正孔注入層
正孔注入層は、正孔注入性の高い材料(正孔注入性材料)を含む層である。前記化合物(1)を単独又は下記の材料と組み合わせて正孔注入層に用いてもよい。
【0108】
正孔注入性材料としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
【0109】
低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等も正孔注入層材料として挙げられる。
【0110】
高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0111】
さらに、下記式(K)で表されるヘキサアザトリフェニレン(HAT)化合物などの受容性化合物(アクセプター材料)を化合物(1)と組み合わせて用いることも好ましい。
【0112】
【化25】
【0113】
(上記式中、R21〜R26は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立にシアノ基、−CONH、カルボキシル基、又は−COOR27(R27は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を表す)を表す。また、R21及びR22、R23及びR24、並びにR25及びR26において、隣接する2つの基が互いに結合して−CO−O−CO−で示される基を形成してもよい。)
27としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0114】
正孔輸送層
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い材料(正孔輸送性材料)を含む層である。前記化合物(1)を単独又は下記の化合物と組み合わせて正孔輸送層に用いてもよい。
【0115】
正孔輸送性材料としては、例えば、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)が挙げられる。上記化合物は、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する。
【0116】
正孔輸送層には、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)等のカルバゾール誘導体や、2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)等のアントラセン誘導体を用いてもよい。ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
但し、電子輸送性よりも正孔輸送性の方が高い化合物であれば、上記以外の化合物を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い化合物を含む層は、単層でもよく、上記化合物を含む2以上の層からなる積層でもよい。例えば、正孔輸送層は第1正孔輸送層(陽極側)と第2正孔輸送層(陰極側)の2層構造にしてもよい。この場合、前記化合物(1)は第1正孔輸送層と第2正孔輸送層のいずれに含まれていてもよい。本発明の一態様においては、前記化合物(1)が第1正孔輸送層に含まれるのが好ましく、他の態様においては、前記化合物(1)が第2正孔輸送層に含まれるのが好ましい。
【0117】
発光層のドーパント材料
発光層は、発光性の高い材料(ドーパント材料)を含む層であり、種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光発光材料や燐光発光材料をドーパント材料として用いることができる。蛍光発光材料は一重項励起状態から発光する化合物であり、燐光発光材料は三重項励起状態から発光する化合物である。
【0118】
発光層に用いることができる青色系の蛍光発光材料として、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。
【0119】
発光層に用いることができる緑色系の蛍光発光材料として、芳香族アミン誘導体等を使用できる。具体的には、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。
【0120】
発光層に用いることができる赤色系の蛍光発光材料として、テトラセン誘導体、ジアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0121】
発光層に用いることができる青色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体が使用できる。具体的には、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。
【0122】
発光層に用いることができる緑色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体等が使用できる。トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))などが挙げられる。
【0123】
発光層に用いることができる赤色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、白金錯体、テルビウム錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体が使用できる。具体的には、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナート)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。
【0124】
また、トリス(アセチルアセトナート)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光発光材料として用いることができる。
【0125】
発光層のホスト材料
発光層としては、上述したドーパント材料を他の材料(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、本発明の化合物(1)、その他各種のものを用いることができ、ドーパント材料よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高占有軌道準位(HOMO準位)が低い材料を用いることが好ましい。
【0126】
ホスト材料としては、例えば
(1h)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、又は亜鉛錯体等の金属錯体、
(2h)オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、又はフェナントロリン誘導体等の複素環化合物、
(3h)カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、又はクリセン誘導体等の縮合芳香族化合物、
(4h)トリアリールアミン誘導体又は縮合多環芳香族アミン誘導体等の芳香族アミン化合物、
を使用することができる。
【0127】
例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体;
2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物;
9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物;及び
N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ホスト材料は1種用いてもよく、複数種用いてもよい。
【0128】
電子輸送層
電子輸送層は電子輸送性の高い材料(電子輸送性材料)を含む層である。電子輸送層には、例えば、
(1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、
(2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、
(3)高分子化合物を使用することができる。
【0129】
金属錯体としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)が挙げられる。
【0130】
複素芳香族化合物としては、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(ptert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)が挙げられる。
【0131】
高分子化合物としては、例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)が挙げられる。
【0132】
上記材料は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い材料であれば、上記以外の材料を電子輸送層に用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記材料からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0133】
電子注入層
電子注入層は、電子注入性の高い材料を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiO)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する材料にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極からの電子注入をより効率良く行うことができる。
あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、有機化合物が電子供与体から電子を受け取るため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、受け取った電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層を構成する材料(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す材料であればよい。具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0134】
陰極
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
なお、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0135】
絶縁層
有機EL素子は、超薄膜に電界を印加するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層からなる絶縁層を挿入してもよい。
絶縁層に用いられる材料としては、例えば、酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。なお、これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0136】
スペース層
上記スペース層とは、例えば、蛍光発光層と燐光発光層とを積層する場合に、燐光発光層で生成する励起子を蛍光発光層に拡散させない、あるいは、キャリアバランスを調整する目的で、蛍光発光層と燐光発光層との間に設けられる層である。また、スペース層は、複数の燐光発光層の間に設けることもできる。
スペース層は発光層間に設けられるため、電子輸送性と正孔輸送性を兼ね備える材料であることが好ましい。また、隣接する燐光発光層内の三重項エネルギーの拡散を防ぐため、三重項エネルギーが2.6eV以上であることが好ましい。スペース層に用いられる材料としては、上述の正孔輸送層に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0137】
阻止層
発光層に隣接する部分に、電子阻止層、正孔阻止層、トリプレット阻止層(励起子阻止層)などの阻止層を設けてもいい。電子阻止層とは発光層から正孔輸送層へ電子が漏れることを防ぐ層であり、正孔阻止層とは発光層から電子輸送層へ正孔が漏れることを防ぐ層である。トリプレット阻止層は発光層で生成した励起子が周辺の層へ拡散することを防止し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。本発明の化合物(1)は、電子阻止層の材料としても適しており、また、トリプレット阻止層の材料としても適している。
【0138】
前記有機EL素子の各層は従来公知の蒸着法、塗布法等により形成することができる。例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)などの蒸着法、あるいは、層を形成する化合物の溶液を用いた、ディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0139】
各層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い駆動電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常5nm〜10μmであり、10nm〜0.2μmがより好ましい。
【0140】
前記有機EL素子は、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の表示装置、及び、照明、車両用灯具の発光装置等の電子機器に使用できる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例を用いて本発明の態様をさらに詳細に説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【0142】
合成例1(化合物H1の合成)
【0143】
【化26】
【0144】
アルゴン雰囲気下、化合物B1(2.09g、10.0mmol)、国際公開広報WO2009/116628に記載の方法で合成した化合物A1(6.69g、20.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(195mg、0.200mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(328mg、0.800mmol)、t−ブトキシナトリウム(3.84g、40.0mmol)、無水キシレン(100mL)を順次加えて7時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H1(3.65g,収率65%)を得た。
【0145】
化合物H1について、LC−MS(Liquid Chromatography−Mass Spectrometry)の分析結果を以下に示す。
LC−MS:calcd for C43H31N=561、
found m/z=561(M+,100)
【0146】
中間体合成例1 化合物B2の合成
【0147】
【化27】
【0148】
(1−1)中間体B2−1の合成
アルゴン雰囲気下、1,3,5−トリブロモベンゼン1000g(3.18mol)、フェニルボロン酸775g(6.35mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)147g(128mmol)、炭酸ナトリウム2021g(19.1mol)、水17LおよびDME17Lの混合物を77℃で16時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、水を加えトルエンで抽出し、トルエン層を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体B2−1 342g(収率35%)を得た。
【0149】
(1−2)中間体B2−2の合成
アルゴン雰囲気下、中間体B2−1 342g(1.11mol)をテトラヒドロフラン4.25Lに溶解し、−68℃に冷却した。1.59M n−ブチルリチウムヘキサン溶液850mLを加え、−68℃にて1時間攪拌した。反応液にホウ酸トリイソプロピル624g(3.32mol)を加え、室温にて16時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出し、トルエン層を減圧濃縮した。得られた残渣を再結晶で精製し、中間体B2−2 177g(収率58%)を得た。
【0150】
(1−3)化合物B2の合成
アルゴン雰囲気下、中間体B2−2 177g(0.65mol)、4−ブロモアニリン117g(0.68mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)14.9g(12.9mmol)、炭酸ナトリウム205g(1.93mol)、水950mL、トルエン1800mLおよびエタノール600mLの混合物を75℃で16時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、有機層を水で洗い、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物B2 104g(収率51%)を得た。
【0151】
合成例2(化合物H2の合成)
【0152】
【化28】
【0153】
アルゴン雰囲気下、化合物B2(3.21g、10.0mmol)、国際公開広報WO2009/116628に記載の方法で合成した化合物A1(6.69g、20.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(195mg、0.200mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(328mg、0.800mmol)、t−ブトキシナトリウム(3.84g、40.0mmol)、無水キシレン(100mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H2(5.39g,収率80%)を得た。
【0154】
化合物H2について、LC−MS(Liquid Chromatography−Mass Spectrometry)の分析結果を以下に示す。
LC−MS:calcd for C52H35N=673、
found m/z=673(M+,100)
【0155】
中間体合成例2(化合物A2の合成)
【0156】
【化29】
【0157】
アルゴン雰囲気下、国際公開広報WO2009/116628に記載の方法で合成したフェナントレン−2−ボロン酸11.1g(50mmol)、1−クロロ−4−ヨードベンゼン11.9g(50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)1.16g(1mmol)、トルエン200mL、2M炭酸ナトリウム水溶液100mLを順次加えて、8時間加熱還流した。室温まで冷却後、反応溶液をトルエンで抽出した。水層を除去し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別後、有機層を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物A2 12.9g(収率89%)を得た。
【0158】
合成例3(化合物H3の合成)
【0159】
【化30】
【0160】
アルゴン雰囲気下、化合物B3(3.33g、10.0mmol)、化合物A2(5.96g、20.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(195mg、0.200mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(328mg、0.800mmol)、t−ブトキシナトリウム(3.84g、40.0mmol)、無水キシレン(100mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H3(6.45g,収率77%)を得た。
【0161】
化合物H3について、LC−MS(Liquid Chromatography−Mass Spectrometry)の分析結果を以下に示す。
LC−MS:calcd for C65H43N=837、
found m/z=837(M+,100)
【0162】
中間体合成例3(化合物A3の合成)
【0163】
【化31】
【0164】
中間体合成例2において、1−クロロ−4−ヨードベンゼンのかわりに1−クロロ−3−ヨードベンゼンを使うほかは同様に合成を行い、化合物A3を得た。
【0165】
合成例4(化合物H4の合成)
【0166】
【化32】
【0167】
アルゴン雰囲気下、化合物B1(2.09g、10.0mmol)、化合物A3(5.96g、20.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(195mg、0.200mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(328mg、0.800mmol)、t−ブトキシナトリウム(3.84g、40.0mmol)、無水キシレン(100mL)を順次加えて7時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H4(3.93g,収率55%)を得た。
【0168】
化合物H4について、LC−MS(Liquid Chromatography−Mass Spectrometry)の分析結果を以下に示す。
LC−MS:calcd for C55H39N=713、
found m/z=713(M+,100)
【0169】
合成例5(化合物H5の合成)
【0170】
【化33】
【0171】
アルゴン雰囲気下、化合物B4(2.45g、10.0mmol)、化合物A4(5.42g、20.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(195mg、0.200mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(328mg、0.800mmol)、t−ブトキシナトリウム(3.84g、40.0mmol)、無水キシレン(100mL)を順次加えて6時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、不溶物を濾過して除き、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物H5(3.00g,収率48%)を得た。
【0172】
化合物H5について、LC−MS(Liquid Chromatography−Mass Spectrometry)の分析結果を以下に示す。
LC−MS:calcd for C48H35N=625、
found m/z=625(M+,100)
【0173】
合成例6(化合物H6の合成)
【0174】
【化34】
【0175】
(6−1)フェナントレン−2−アミンの合成
アルゴン雰囲気下、2−ブロモフェナントレン17.5g(68.0mmol)、ビス[トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン]パラジウム97mg(014mmol)、(R)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン75mg(014mmol)、硫酸アンモニウム13.5g(102mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド29.4g(306mmol)およびジオキサン340mLの混合物を5時間加熱還流した。反応液を室温に冷却後、水を加え、酢酸エチルで抽出を行い、有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機層を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、フェナントレン−2−アミン9.53g(収率69%)を得た。
【0176】
(6−2)化合物A5の合成
アルゴン雰囲気下、フェナントレン−2−アミン9.03g(46.7mmol)、2−ブロモフェナントレン12.0g(46.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.85g(0.93mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン テトラフルオロボレート1.09g(3.74mmol),ナトリウム−t−ブトキシド6.29g(65.4mmol)およびトルエン250mLの混合物を7.5時間加熱還流した。反応液を室温に冷却後、減圧濃縮を行い、メタノールを加え、生成した固体を濾取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物A5 12.1g(収率70%)を得た。
【0177】
(6−3)化合物H6の合成
アルゴン雰囲気下、化合物A5 2.70g(7.3mmol)、4−ヨードビフェニル2.05g(7.31mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物0.16g(0.15mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン テトラフルオロボレート017g(0.58mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド1.40g(14.6mmol)およびトルエン37mLの混合物を3.5時間加熱還流した。反応液を室温に冷却し、反応液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶にて生成し、化合物H6 2.11g(収率40%)を得た。
化合物H6について、FD−MS分析により構造を同定した。
FD−MS:calcd for C50H33NO=521、
found m/z=521
【0178】
合成例7(化合物H7の合成)
【0179】
【化35】
【0180】
合成例6の工程(6−3)において、4−ヨードビフェニルの代わりに2−ブロモビフェニルを用いるほかは同様に合成を行い、化合物H7を得た。
化合物H7について、FD−MS分析により構造を同定した。
FD−MS:calcd for C50H33NO=521、
found m/z=521
【0181】
合成例8(化合物H8の合成)
【0182】
【化36】
【0183】
合成例2において化合物B2の代わりに化合物B4を用いたほかは合成例2と同様に合成を行い、化合物H8を得た。
化合物H8について、FD−MS分析により構造を同定した。
FD−MS:calcd for C50H33NO=597、
found m/z=597
【0184】
合成例9(化合物H9の合成)
【0185】
【化37】
【0186】
(9−1)化合物A6の合成
アルゴン雰囲気下、2−ブロモフェナントレン10.0g(38.9mmol)、ビスピナコラートジボロン9.8g(38.9mmol)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II) ジクロロメタン付加物0.953g(1.17mmol)、炭酸カリウム7.63g(78mmol)、ジオキサン200mLの混合物を、105℃で終夜攪拌した。ビスピナコラートジボロン2.02g(7.95mmol)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II) ジクロロメタン付加物0.953g(1.17mmol)を加え、105℃で3時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物A6 10.4g(収率88%)を得た。
【0187】
(9−2)化合物H9の合成
アルゴン雰囲気下、N−(4−ビフェニリル)−N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アミン5g(10.43mmol)、化合物A6 7.95g(26.1mmol)、DME50ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)482mg(0.417mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液15.6ml(31.3mmol)の混合物を終夜加熱還流した。反応液を室温に冷却し、精製した固体を濾取し乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶にて精製を行い、化合物H9 2.44g(収率35%)を得た。
化合物H9について、FD−MS分析により構造を同定した。
FD−MS:calcd for C50H33NO=673、
found m/z=673
【0188】
実施例1
(有機EL素子の製造)
25mm×75mm×厚さ1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行った。ITO透明電極の厚さは130nmとした。
洗浄後のITO透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まずITO透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして下記化合物(HI−1)を蒸着して膜厚5nmのHI−1膜を成膜し、正孔注入層を形成した。
次に、この正孔注入層上に、第1正孔輸送材料として下記化合物HT−1を蒸着して膜厚80nmのHT−1膜を成膜し、第1正孔輸送層を形成した。
次に、この第1正孔輸送層上に、前述の化合物H1を蒸着して膜厚10nmのHT−2膜を成膜し、第2正孔輸送層を形成した。
次に、この第2正孔輸送層上に、化合物BH−1(ホスト材料)と化合物BD−1(ドーパント材料)を共蒸着し、膜厚25nmの共蒸着膜を成膜した。BD−1の濃度は4.0質量%であった。この共蒸着膜は発光層として機能する。
次に、この発光層の上に、下記化合物ET−1を蒸着して膜厚10nmのET−1膜を成膜し、第1電子輸送層を形成した。
次に、この第1電子輸送層の上に、下記化合物ET−2を蒸着して膜厚15nmのET−2膜を成膜し、第2電子輸送層を形成した。
次に、この第2電子輸送層上に、LiFを蒸着して膜厚1nmのLiF膜を成膜し、電子注入性電極(陰極)を形成した。
そして、このLiF膜上に金属Alを蒸着して膜厚80nmの金属Al膜を成膜し、金属Al陰極を形成した。
【0189】
(有機EL素子の評価)
製造した有機EL素子について、電流密度が10mA/cmとなるように電圧を印加し、外部量子効率を測定した。また、電流密度50mA/cmにおいて駆動した際に、発光輝度が初期輝度の80%となるまでの時間(輝度80%寿命)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0190】
実施例2〜7及び比較例1
実施例1において、化合物H1を用いる代わりに表1に記載の第2正孔輸送層材料を用いて第2正孔輸送層を形成したこと以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0191】
【0192】
【0193】
【表1】
【0194】
上記化合物を用いることにより、外部量子効率が高く、輝度80%寿命が長い有機EL素子を得ることができた。
また、実施例3及び7は、化合物H3及びH9が、式(1)のL及びLに相当する位置に環形成炭素数6〜50のアリーレン基(フェニレン基)が存在するため、輝度80%寿命が長かった。アリーレン基を入れることにより、化合物の耐久性が改善したと考えられる。
【符号の説明】
【0195】
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 陰極
5 発光層
6 陽極側有機薄膜層
7 陰極側有機薄膜層
10 発光ユニット
図1