(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、デジタル表示式のダイヤルゲージ100の外観斜視図である。
ダイヤルゲージ100は、スピンドル120の変位を表示部130にデジタル表示する。
【0014】
ダイヤルゲージ100は、本体ケース110と、スピンドル120と、表示部130と、入力手段(116、140)と、制御回路部160と、を備える。
【0015】
本体ケース110は、短円筒状のケース体である。
本体ケース110の側面にステム112が突設され、このステム112がスピンドル120の軸受けとなっている。
スピンドル120は、先端に測定子121を有し、本体ケース110を貫くように軸方向に進退可能に支持されている。本体ケース110の内部にはスピンドル120の変位を検出するエンコーダが内蔵されている。
【0016】
表示部130は、本体ケース110の正面側端面のほぼ中央領域に配置されている。表示部130は、例えば液晶表示パネルであって、セグメント方式で情報を表示する。
なお、表示部130として、ドットマトリックス方式の液晶表示パネルや有機ELパネル、あるいは、電子ペーパーを採用してもよい。
【0017】
図2に、表示部130の表示例を示す。
表示部130には、数値表示部132と、アナログスケール表示部134と、がある。
数値表示部132には、例えば7セグメント方式で数値が示される。
ここに示される数値の意味は、そのとき選択されているモードによって異なる。例えば、測定モードであれば、数値表示部132の数値はもちろん測定値そのものである。例えば、公差設定モードやプリセットモードのとき、数値表示部132の数値は、ユーザが入力手段(116、140)で入力しようとしている公差やスタート値を示す。この点は後述する。
【0018】
アナログスケール表示部134には、円弧状の目盛135と、その目盛135上をスライド移動するように表示制御されるいくつかのマーク136、137、138と、が表示される。
図2の例では、円弧状の目盛135の上に3つのマークがある。
一番右側のマーク136は上限値である最大公差を示すマーク136である。
一番左側のマーク137は下限値である最小公差を示すマーク137である。そして、先端が尖った少し長い針状の指針マーク138は、アナログ表示式の指針を模したものであり、測定値に応じて移動する。
【0019】
次に、入力手段について説明する。
入力手段としては、複数のボタン116と、回転操作入力部140と、が設けられている。
複数のボタン116は、本体ケース110の正面側端面において表示部130の下に配置されている。
これらのボタン116には、例えば、モードの切り替え指示や、数値の取込み指示などの機能が割り当てられている。
【0020】
回転操作入力部140について説明する。
回転操作入力部140は、回転リング141と、回転リング141の回転を検出するセンサ(151、152)と、を有する。
回転リング141は、本体ケース110の側面に配置され、回転可能に設けられている。
【0021】
図3、
図4を参照して、回転操作入力部140の構造を説明する。
図3は、
図1中のIII−III線断面図である。
回転リング141の外側面には滑り止めの凹凸142があり、また、回転リング141の内側面には歯車の歯143が切られており、すなわち、回転リング141はいわゆる内歯車である。
本体ケース110の外側面には円筒形の側面を一周するように凹溝条113が設けられ、この凹溝条113に回転リング141が回転可能にはめられている。
【0022】
センサ(151、152)は本体ケース110の内側面に取り付けられ、本体ケース110に穿設された孔114を通して回転リング141の回転を検出する。
センサ(151、152)としてはフォトセンサを使用し、回転リング141の歯車に向けて光を発射し、その反射光を受光して受光信号S1、S2を出力する。
回転リング141の正方向(例えば右回り)の回転と負方向(例えば左回り)の回転とを区別できるように、2つのセンサ(151、152)が設けられている。
一方を第1センサ151とし、他方を第2センサ152とする。
【0023】
図4(A)は
図3中のIVA−IVA線断面図であり、
図4(B)は
図3中のIVB−IVB線断面図である。
図4(A)(B)に示すように、第1センサ151と第2センサ152とでは、回転リング141の内歯車の周期(ピッチ)に対して4分の1波長分だけ位置が互いにずれている。このような位置の組み合わせにより、第1センサ151と第2センサ152からの受光信号により回転リング141の回転方向が特定される。
なお、第1センサ151と第2センサ152とのずれは1/4波長に限らず、1/3波長でも1/8波長でもよく、例えばリサージュにプロットするときにずれ量に応じた処理をすればよい。
【0024】
次に、
図5は、制御回路部160の機能ブロック図である。
カウンタ161は、第1センサ151および第2センサ152からの受光信号S1、S2に基づいて回転リング141の歯143がどちらに何ピッチ動いたかをカウントする。例えば、受光信号S1と受光信号S2とを直交座標にプロットしてリサージュの回転回数および回転方向を得れば、回転リング141の歯143の動きと方向がわかる。カウンタ161は、回転リング141が正方向(右回り)の回転をしていればカウントアップし、回転リング141が逆方向(左回り)の回転をしていればカウントダウンするとする。
【0025】
カウンタ161からのカウント値は時々刻々と換算部170に送られる。
換算部170は、変化量算出部171と、変化率算出部172と、数値演算部173と、を有する。変化量算出部171は、カウンタ161からのカウント値の変化量を算出する。
例えば、所定時間ごと(例えば1秒ごと)にカウント値の差を算出する。前回(1秒前)のカウント値がC0で、現時点(1秒後)のカウント値がC1であれば、カウント値の差D1は「C1−C0」である。
【0026】
変化率算出部172は、カウント値の変化の速さを算出する。
ここでは、カウント値の変化率の大きさがほしい。
一秒ごとのカウント値の差Dは変化量算出部171で時々刻々算出されるので、その絶対値|D|を変化率の大きさVとすればよい。
【0027】
数値演算部173は、カウント値の差D1とカウント値の変化率の大きさVとに基づいて、換算値Nを求める。例えば次式のように換算値Nを求める。
N=k×h(V)×D
kは、選択されているモード(公差設定モードやプリセットモード)や単位(mmやinch)に応じて決定される係数である。
h(V)は、Vの大きさに対して正の相関をもつ関数とし、Vが大きくなればh(V)は大きくなり、Vが小さくなればh(V)は小さくなるように関数hを定めておく。
h(V)の範囲(値域)としては、例えば、0.1から100まで単調増加するようにしてもよい。
【0028】
ユーザが同じ量(同じ角度分)回転リング141を回転操作するとしても、回転リング141をゆっくり回転させれば換算値Nの変化は小さいものになり、回転リング141を速く回転させれば換算値Nの変化は大きなものになり、回転リング141を極めて素早く回転させれば換算値Nの変化は非常に大きなものになる。したがって、ユーザは回転リング141を回転操作し、回転量、回転の向き、および、回転の速さを用いて、所望の指令(数値)を簡便に素早く入力することができる。
【0029】
このようにユーザが回転リング141で入力した指令は、上記の処理で換算値Nに換算され、制御部180に出力される。
制御部180において、中央処理部181は前記換算値Nをレジスタ182の数値に加算(あるいは減算)し、選択されているモードに応じて演算結果を表示制御部185に送る。すると、表示制御部185による表示制御によって表示部130に表示が反映される。
【0030】
回転操作入力部140を使用した入力例をいくつか紹介する。
(公差設定その1)
例えば、マスターワークが既にあって、製品の許容誤差がそのマスターワークに対してプラスマイナス0.3mmというような場合、プラスマイナス0.3mmの公差をダイヤルゲージ100に設定しておくとよい。デジタル式のダイヤルゲージ100なので、測定対象物の測定値が設定公差を外れていた場合に色や音でユーザに知らせるようにすることは簡単である。
【0031】
ユーザは、スイッチを押して公差設定モードを選択した状態で、"0.3"という数値をダイヤルゲージ100に入力する。
"0.3"は小さな数値である。
このとき、ユーザは、回転リング141をゆっくりと回転させる。すると、h(V)が小さな値になるので換算値Nも小さな値になる。
このように回転リング141をゆっくり回すという極自然な操作だけで"0.3"のように小さな数値を簡単に入力することができる。このように入力された数値(例えば0.3)は数値表示部132にも表示されるし、数値の大きさに応じてアナログスケール表示部134のマーク136、137が移動する。表示が狙った数値(0.3)になったら、ボタン116(ホールドスイッチや取り込みスイッチと称してもよい)を押して、数値(0.3)を公差としてメモリ183に記憶させる。
【0032】
(公差設定その2)
例えば、マスターワークは無いが、設計図面上の指示で製品の許容範囲が49.7mm〜50.3mmのように指示されている場合、49.7mm〜50.3mmという公差をダイヤルゲージ100に設定する。
"49.7"や"50.3"は"0.3"に比べると大きな値である。
このとき、ユーザの操作は同じように回転リング141を回転させるだけであるが、大きな数値を入力するので素早く回転させる。すると、h(V)が大きな値になるので換算値Nも大きな値になる。このように回転リング141を素早く回すという極自然な操作だけで"49.7"や"50.3"のように大きな数値を簡単に入力することができる。
【0033】
仮に、"0.3"を入力するときと同じステップで表示の数値が増えていくと、"49.7"に達するのに多大な操作が必要である。
ボタン116だけで数値を入力させる従来機では、入力する"桁"を選択させておくものもあるが、入力桁を移動しながら"4"、"9"、"7"、"5"、"0"、"3"を総て入力するのは大変である。
この点、本実施形態では、公差設定その1もその2も同じような操作で簡単なのであり、多機能のデジタル式のダイヤルゲージ100がさらに使い易くなる。
【0034】
(プリセット)
数値設定の例をもう一つ紹介する。
ダイヤルゲージ100の測定範囲は例えば12.5mmのように比較的短いものが多いが、測定値の表示(あるいは測定値の取得)としては実際の製品のサイズ通りに50.2mmなどと表示されるのが便利である。
この場合、実際の測定を開始する前にスタート値を"50"に設定(プリセット)しておく。やり方は前述と全く同じであり、回転リング141を素早く回転させて"50"の表示になったら、ボタン116を押して、数値(50)をプリセット値としてメモリ183に記憶させる。
【0035】
従来機では例えば"50"といった数値を入力するのは手間であるが、本実施形態ではプリセット操作も簡単なのであり、多機能のデジタル式のダイヤルゲージ100がさらに使い易くなる。
【0036】
ここまでの例は、数値の入力であったが、さらには表示画面上の項目の選択に回転リング141を使用するようにしてもよい。
例えば、ダイヤルゲージ100の使用前の事前準備として、演算式の設定というのがある。
例えば、Ax+By+1/Cのような(補正)演算式のパラメータA、B、Cの値を設定入力するような場合がある。
このとき、表示画面に演算式(Ax+By+1/C)を表示させた状態で回転リング141を回転させたときにカーソルがA→B→Cのように移動すると選択入力の手間が削減されるであろう。
【0037】
(変形例1)
上記実施形態では回転リング141は本体ケース110の円筒形の外側面を一周するように設けられていたが、変形例としては、回転リング141をもっと小さくしてもよい。回転リング141の一部が本体ケース110の外に出ていてユーザが回転操作できるようになっていれば、回転リング141の一部が本体ケース110の内部に収容されていてもよいのである。
【0038】
回転リング141の配設位置は本体ケース110の側面に限らず、例えば、
図6に例示するように、回転リング145を本体ケース110の正面に配置するようにしてもよい。
【0039】
(変形例2)
これまでの説明では入力手段として回転操作入力部140(回転リング141)を例示したが、操作量、操作の向き、および、操作の速さで入力指示できるなら入力手段は回転操作入力部140(回転リング141)に限定されない。
例えば、
図7に例示するように、入力手段としてタッチパネル190を採用し、タッチパネル190で操作量、操作の向き、および、操作の速さを検出できるようにしてもよい。
上記に説明した回転リング141の代わりになればいいので、上下の長さはある程度必要かもしれないが、幅は狭くてもよいだろう。
例えば、アスペクト比で3から5といった細長にしてもよいだろう。
アスペクト比をもっと大きくして、アスペクト比が5以上であってもよい。
このようなタッチパネル190を
図7に例示するように本体ケース110の側面に配置してもよい。
【0040】
あるいは、円環状のタッチパネルを用意し、本体ケース110の側面を環囲するようにタッチパネルを設けるようにしてもよい。つまり、第1実施形態の回転リング141を円環状のタッチパネルで置き換えるようにしてもよい。
またあるいは、変形例1(
図6)に例示した回転リング145に代えてタッチパネルを採用してもよいし、円環状のタッチパネルが表示部130を囲むように設けられていてもよい。
【0041】
あるいは、表示部130にタッチパネルを組み込むようにしてもよい。
【0042】
回転リング141に比べ、タッチパネル190の方がメカ的な要素が少なくなるので防水性を高くし易いという利点がある。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態や変形例の説明において、入力手段は操作の方向を識別できるセンサを備えているとしたが、操作方向を識別しないセンサであってもよい。例えば、第1実施形態においてセンサを1つにしてもよい。
センサが操作の方向を識別しない場合、ユーザが所定の切り替えボタンでカウントアップかカウントダウンかを選択できるようにしておけばよい。
【0044】
ダイヤルゲージを例に説明したが、ノギスやマイクロメータに回転操作入力部やタッチパネルを設けてもよい。