特許第6820166号(P6820166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820166
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】発泡性固形状洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/54 20060101AFI20210114BHJP
   C11D 7/14 20060101ALI20210114BHJP
   C11D 17/00 20060101ALI20210114BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20210114BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20210114BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C11D7/54
   C11D7/14
   C11D17/00
   C11D3/08
   C11D3/395
   B08B3/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-145748(P2016-145748)
(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公開番号】特開2018-16676(P2018-16676A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】工藤 洋造
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智和
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−506394(JP,A)
【文献】 特公昭46−035274(JP,B1)
【文献】 特開平11−158016(JP,A)
【文献】 特開平01−242505(JP,A)
【文献】 特開2002−105498(JP,A)
【文献】 特表平02−501489(JP,A)
【文献】 特公昭46−043230(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
A61K 8/00
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸化合物と酸とを含む発泡剤、酸素系漂白剤及び塩素系漂白剤からなる群より選択される漂白剤、並びに0.5〜10重量%のケイ酸マグネシウムを含有し、錠剤状であることを特徴とする、発泡性固形状洗浄剤。
【請求項2】
漂白剤の含有量が4〜22重量%である、請求項1に記載の発泡性固形状洗浄剤。
【請求項3】
漂白剤が、酸素系漂白剤である、請求項1又は2に記載の発泡性固形状洗浄剤。
【請求項4】
更に、界面活性剤を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の発泡性固形状洗浄剤。
【請求項5】
義歯の洗浄に使用される、請求項1〜のいずれかに記載の発泡性固形状洗浄剤。
【請求項6】
炭酸化合物と酸とを含む発泡剤、酸素系漂白剤及び塩素系漂白剤からなる群より選択される漂白剤、並びに0.5〜10重量%のケイ酸マグネシウムを含有し、錠剤状である発泡性固形物の、洗浄剤としての使用。
【請求項7】
炭酸化合物と酸とを含む発泡剤、酸素系漂白剤及び塩素系漂白剤からなる群より選択される漂白剤、並びに0.5〜10重量%のケイ酸マグネシウムを含有し、錠剤状である発泡性固形状洗浄剤を用いて、洗浄対象物を洗浄する、洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性固形状洗浄剤に関する。より具体的には、本発明は、効率的に製造でき、しかも高い硬度を備える発泡性固形状洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡剤を配合した発泡性洗浄剤は、界面活性剤による化学的洗浄力と発泡作用による物理的洗浄力との相互作用によって優れた洗浄作用を発揮できるため、義歯、メガネ、排水管、シンク、洗濯槽、トイレ、浴槽、ステンレスボトル等の洗浄に広く使用されている。また、発泡性洗浄剤は、錠剤、顆粒剤等の様々な固形状形態に製剤化して提供されているが、これらの形態の中でも、錠剤は、取扱いが容易であり、消費者に広く受け入れられている。
【0003】
一般に、発泡性洗浄剤には、その使用目的、備えさせるべき洗浄作用等に応じて、漂白剤、界面活性剤、殺菌剤、香料、消臭剤等の成分が配合されている。また、発泡性洗浄剤には、発泡性を担保するために、比較的多量の発泡剤を配合する必要があるため、発泡性洗浄剤では、発泡剤の割合が高いという組成上の特徴がある。
【0004】
一方、錠剤や顆粒等の発泡性固形状洗浄剤では、包装時や輸送時に割れ・欠け等が生じるのを抑制するために、高い硬度を備えていることが求められる。また、錠剤状や顆粒状の発泡性固形状洗浄剤では、生産性を高めるために、打錠や造粒に供する原料混合物に流動性があること(即ち、打錠や造粒等の成型をし易い特性を備えていること)も重要である。しかしながら、発泡性固形状洗浄剤では、前述するように、発泡剤の割合が多いという組成上の特徴があるため、錠剤や顆粒等の固形状に製剤化する場合には、成型後の固形物(錠剤や顆粒)に十分な硬度を備えさせ難いという欠点がある。
【0005】
従来、発泡性固形状洗浄剤の製造技術については、種々報告されている。例えば、特許文献1には、実質的に水分を含まないか或いは50℃以下で結晶水を遊離しない有機酸と、ポリエチレングリコールとを、60〜100℃で加熱溶融混合後、所定条件で撹拌しながら冷却、粉末化し、これに重炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウムを添加して打錠成型することにより、安定化剤、結合剤、離型剤等の量を減らしつつ、良好な生産性で錠剤状の発泡性洗浄剤が得られることが報告されている。しかしながら、特許文献1は、発泡性固形状洗浄剤に十分な硬度を備えさせるための製剤化技術を開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−89616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、効率的に製造でき、しかも高い硬度を備える発泡性固形状洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、発泡性固形状洗浄剤に高い硬度を備えさせるべく、種々の結合剤を配合して発泡性固形状洗浄剤の硬度を測定したところ、硬度を向上させることはできても、成型工程に供する原料混合物の流動性が低下して製造効率が低下するため、結合剤として従来使用されている成分では、前記課題を解決することはできなかった。
【0009】
そこで、本発明者は、更に鋭意検討を行ったところ、従来、結合剤としては使用されていない漂白剤とケイ酸マグネシウムを組み合わせて配合すると、成型工程に供する原料混合物の流動性に優れ、打錠や造粒等の成型を容易に行い得ることに加え、得られる発泡性固形状洗浄剤に高い硬度を備えさせ得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 漂白剤、及びケイ酸マグネシウムを含有することを特徴とする、発泡性固形状洗浄剤。
項2. ケイ酸マグネシウムの含有量が0.5〜10重量%である、項1に記載の発泡性固形状洗浄剤。
項3. 漂白剤の含有量が4〜22重量%である、項1又は2に記載の発泡性固形状洗浄剤。
項4. 漂白剤が、酸素系漂白剤である、項1〜3のいずれかに記載の発泡性固形状洗浄剤。
項5. 錠剤状又は顆粒状である、項1〜4のいずれかに記載の発泡性固形状洗浄剤。
項6. 更に、界面活性剤を含有する、項1〜5のいずれかに記載の発泡性固形状洗浄剤。
項7. 義歯の洗浄に使用される、項1〜6のいずれかに記載の発泡性固形状洗浄剤。
項8. 漂白剤、及びケイ酸マグネシウムを含有する発泡性固形物の、洗浄剤としての使用。
項9. 漂白剤、及びケイ酸マグネシウムを含有する発泡性固形状洗浄剤を用いて、洗浄対象物を洗浄する、洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発泡性固形状洗浄剤は、打錠や造粒等の成型工程前の原料混合物の流動性に優れており、効率的に成型工程を行うことができるので、高い生産性を実現することができる。更に、本発明の発泡性固形状洗浄剤は、高い硬度を備えることができるので、包装時、輸送時、使用時(携帯時)等に割れ・欠け等が生じるのを抑制することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発泡性固形状洗浄剤は、漂白剤、及びケイ酸マグネシウムを含有することを特徴とする。以下、本発明の発泡性固形状洗浄剤について詳述する。
【0013】
[発泡剤]
本発明の発泡性固形状洗浄剤は、水と共存した際の発泡性を備えさせるために発泡剤が含まれる。発泡剤は吸湿性を有しているため、従来技術では、発泡性固形状洗浄剤の硬度を不十分にしたりする一因になっていたが、本発明の発泡性固形状洗浄剤では、打錠や造粒等の成型工程前の原料混合物の流動性に優れ、錠剤の硬度の向上を図ることが可能になっている。
【0014】
本発明で使用される発泡剤の種類については、無毒性で生理学上許容されるものであれば特に制限はされず、洗浄剤で通常使用されるもの(即ち、水中で二酸化炭素を発生できるもの)を広く用いることができる。
【0015】
発泡剤として、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、及び炭酸水素塩と炭酸塩の複塩の少なくとも1種(以下、炭酸化合物と表記することもある)と、酸との組み合わせが例示される。炭酸塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸水素塩としては、特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩が挙げられる。炭酸塩と炭酸水素塩の複塩としては、特に制限されないが、例えば、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの炭酸化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、酸としては、特に制限されないが、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸等の有機酸;リン酸、スルファミン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
発泡剤を構成する炭酸化合物として、好ましくは炭酸水素のアルカリ金属塩、更に好ましくは炭酸水素ナトリウムが挙げられる。また、発泡剤を構成する酸として、好ましくは有機酸が挙げられる。
【0017】
発泡剤において、炭酸化合物と酸の比率については、水中で両者が反応して二酸化炭素を発生できることを限度として特に制限されないが、例えば、炭酸化合物100重量部当たり、酸が通常50〜100重量部、好ましくは50〜90重量部、更に好ましくは50〜85重量部が挙げられる。
【0018】
本発明の発泡性固形状洗浄剤における発泡剤の含有量(炭酸化合物と酸の合計量)については、付与すべき発泡作用の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば40〜95重量%、好ましくは50〜80重量%、更に好ましくは50〜75重量%が挙げられる。
【0019】
[漂白剤]
本発明の発泡性固形状洗浄剤には、漂白剤が含まれる。発泡性固形状洗浄剤では、漂白剤と共に、後述するケイ酸マグネシウムを含有することによって、成型工程に供する原料混合物に優れた流動性を備えさせつつ、発泡性固形状洗浄剤に高い硬度を具備させることが可能になる。
【0020】
本発明で使用される漂白剤の種類については、無毒性で生理学上許容されるものであれば特に制限はされず、洗浄剤で通常使用されるものを広く用いることができるが、例えば、酸素系漂白剤、塩素系漂白剤、還元系漂白剤等が挙げられる。
【0021】
酸素系漂白剤としては、例えば、過硫酸水素塩、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、テトラアセチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0022】
過硫酸水素塩としては、具体的には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;バリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;これらの水和物等が挙げられる。
【0023】
なお、過硫酸水素塩は、硫酸水素塩や硫酸塩との複塩でもよい。複塩である場合、例えば、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム及び硫酸カリウムの複塩であることが特に好ましい。過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム及び硫酸カリウムの複塩の市販品としては、例えば、デュポン社製のオキソーン(Oxone)等が挙げられる。
【0024】
過硫酸塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;これらの水和物等が挙げられる。
【0025】
過炭酸塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;これらの水和物等が挙げられる。
【0026】
過ホウ酸としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;これらの水和物等が挙げられる。
【0027】
これらの酸素系漂白剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
塩素系漂白剤としては、例えば、次亜塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩等が挙げられる。
【0029】
次亜塩素酸塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0030】
ジクロロイソシアヌル酸塩としては、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0031】
これらの塩素系漂白剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
還元系漂白剤としては、具体的には、二酸化チオ尿素、ハイドロサルファイト等が挙げられる。これらの還元系漂白剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
これらの漂白剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
これらの漂白剤の中でも、より一層効果的に、打錠前の原料混合物の流動性及び錠剤の硬度を向上させるという観点から、好ましくは酸素系漂白剤、更に好ましくは過硫酸のアルカリ金属塩、過硫酸水素のアルカリ金属塩、過ホウ酸のアルカリ金属塩、及びテトラアセチルエチレンジアミンが挙げられる。とりわけ、漂白剤として、少なくとも過ホウ酸塩又は過硫酸水素塩の一方を含んでいることが望ましく、特に、過硫酸水素塩単独、過ホウ酸塩単独、或は過硫酸水素塩、過ホウ酸塩及びテトラアセチルエチレンジアミンの組み合わせが望ましい。
【0035】
漂白剤として、過硫酸水素塩、過ホウ酸塩、及びテトラアセチルエチレンジアミンを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、過硫酸水素塩100重量部当たり、過ホウ酸塩が10〜230重量部、好ましくは30〜150重量部、更に好ましくは50〜100重量部;テトラアセチルエチレンジアミンが4〜80重量部、好ましくは10〜60重量部、更に好ましくは15〜30重量部が挙げられる。
【0036】
本発明の発泡性固形状洗浄剤における漂白剤の含有量については、特に制限されないが、例えば4〜22重量%、好ましくは4〜18重量%、更に好ましくは4〜15重量%が挙げられる。
【0037】
[ケイ酸マグネシウム]
本発明の発泡性固形状洗浄剤には、ケイ酸マグネシウムが含まれる。本発明の発泡性固形状洗浄剤において、ケイ酸マグネシウムは、漂白剤と共存することにより、打錠前の原料混合物の流動性を向上させ、発泡性固形状洗浄剤の硬度を高める役割を果たす。
【0038】
本発明で使用されるケイ酸マグネシウムのかさ密度については、特に制限されず、軽質又は重質のいずれであってもよい。より一層効果的に、打錠前の原料混合物の流動性及び錠剤の硬度を向上させるという観点から、好ましくは軽質タイプのケイ酸マグネシウムが挙げられる。ここで、軽質タイプのケイ酸マグネシウムとは、ゆるめかさ密度が0.35g/ml未満であるものを指す。ここで、「ゆるめかさ密度」は、実施例の欄に記載する測定方法に従って測定される値である。
【0039】
また、本発明で使用されるケイ酸マグネシウムは、無水物又は水和物のいずれであってもよい。
【0040】
本発明の発泡性固形状洗浄剤におけるケイ酸マグネシウムの含有量については、例えば0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%が挙げられる。
【0041】
また、本発明の発泡性固形状洗浄剤における漂白剤とケイ酸マグネシウムとの比率については、前述する各成分の含有量に応じて定まるが、より一層効果的に、打錠前の原料混合物の流動性及び錠剤の硬度を向上させるという観点から、漂白剤100重量部当たり、ケイ酸マグネシウムが2〜250重量部、好ましくは2.5〜200重量部、更に好ましくは3〜130重量部が挙げられる。
【0042】
[界面活性剤]
本発明の発泡性固形状洗浄剤は、洗浄力を高めるために界面活性剤を含んでいることが好ましい。
【0043】
本発明の発泡性固形状洗浄剤に配合される界面活性剤の種類については、洗浄剤の成分として使用可能なものであることを限度として特に制限されず、カチオン性、アニオン性、非イオン性及び両性界面活性剤のいずれを使用してもよい。
【0044】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキル(C6〜C20)トリメチルアンモニウム塩,ジアルキル(C6〜C20)ジメチルアンモニウム塩、及びアルキル(C6〜C20)ジメチルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、アルキル(C6〜C20)アミン塩、アルキル(C6〜C20)アミンエチレンオキサイド付加物、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、平均炭素数10〜16のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、平均10〜20の炭素原子を1分子中に有するアルケニルスルホン酸塩、平均炭素数10〜20のアルキル基を有する直鎖アルキルスルホ酢酸塩、平均10〜20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、平均10〜20の炭素原子を1分子中に有するアルカンスルホン酸塩等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
非イオン性界面活性剤としては、具体的には、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型界面活性剤、並びにグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル及びアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型界面活性剤等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
両性界面活性剤としては、具体的には、平均炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキルアミノプロピオン酸塩(例えばラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム)等のアミノ酸型界面活性剤、平均炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキルジメチルベタイン(ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン等)、ラウリルヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
前記各種の界面活性剤において、塩の形態としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、及び塩酸塩等の酸付加塩等が挙げられる。
【0049】
これらの界面活性剤の中でも、好ましくはアニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
本発明の発泡性固形状洗浄剤において界面活性剤を含有させる場合、その含有量については、使用する界面活性剤の種類、備えさせるべき洗浄力等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%が挙げられる。
【0051】
[その他の成分]
本発明の発泡性固形状洗浄剤には、前述する成分に加えて、洗浄力の増強、崩壊性の付与、成型性の付与等を目的として、必要に応じて、他の添加剤が含まれていてもよい。
【0052】
本発明の発泡性固形状洗浄剤に配合可能な他の添加剤としては、防錆剤、キレート剤、pH調整剤、酵素、着色料、香料、発泡安定化剤、保存剤、抗菌・殺菌剤、防腐剤、滑沢剤、結合剤、滑沢剤、増量剤、賦形剤、崩壊剤等が挙げられる。
【0053】
[剤型・物性]
本発明の発泡性固形状洗浄剤の剤型については、固形状であることを限度として特に制限されないが、例えば、錠剤状、顆粒状が挙げられる。とりわけ、錠剤状の発泡性固形状洗浄剤は、包装時、輸送時、使用時(携帯時)等に割れ・欠け等が生じ易く、高い硬度を有していることが望まれる剤型であることを踏まえると、本発明の発泡性固形状洗浄剤の剤型の好適な例として、錠剤状が挙げられる。
【0054】
本発明の発泡性固形状洗浄剤を錠剤状にする場合、その形状や大きさについては、洗浄対象物に応じて適宜設定すればよい。例えば、本発明の発泡性固形状洗浄剤が錠剤状の義歯洗浄剤である場合には、1錠当たりの重量として、例えば1〜4g、好ましくは2〜3gが挙げられる。
【0055】
本発明の発泡性固形状洗浄剤は、硬度が高く、包装時や輸送時に割れ・欠け等が生じるのを抑制できる特性を備えている。本発明の発泡性固形状洗浄剤が錠剤状の場合であれば、その硬度としては、具体的には、50N以上、好ましくは55〜80N、更に好ましくは60〜80Nが挙げられる。発明において、義歯洗浄剤の硬度の測定方法の具体的条件については、実施例の欄に示す通りである。
【0056】
[洗浄対象・使用方法]
本発明の発泡性固形状洗浄剤の洗浄対象については、特に制限されないが、例えば、義歯、メガネ、排水管、シンク、洗濯槽、浴槽、トイレ、ステンレスボトル等が挙げられる。これらの洗浄対象の中でも、好ましくは義歯である。
【0057】
本発明の発泡性固形状洗浄剤の使用方法は、従来の発泡性固形状洗浄剤の場合と同様である。例えば、義歯やメガネを洗浄対象にする場合であれば、本発明の発泡性固形状洗浄剤を添加した水に、洗浄対象を浸漬させればよい。また、排水管、シンク、洗濯槽、浴槽、トイレ、ステンレスボトル等を洗浄対象にする場合であれば、当該洗浄対象に対して本発明の発泡性固形状洗浄剤を入れ、当該洗浄対象に対して流水又は貯水すればよい。
【0058】
[製造方法]
本発明の発泡性固形状洗浄剤は、公知の方法に従って行えばよい。例えば、発泡剤、漂白剤、ケイ酸マグネシウム、及び必要に応じて添加される他の成分を混合した原料混合物を、打錠や造粒等の成型工程に供することによって、本発明の発泡性固形状洗浄剤を製造することができる。
【0059】
本発明の発泡性固形状洗浄剤では、成型工程に供する原料混合物の流動性が良好で、打錠や造粒し易いため、効率的に高い硬度の錠剤や顆粒を製造することができる。
【0060】
成型工程に供する原料混合物の流動性を示す物性の一例として、安息角が45°以下、好ましくは30〜45°が挙げられる。安息角は、試料を注入法により自然落下させた状態で形成される粉体層の山の角度を指しており、小さい程、流動性が高いことを指す物性値である。
【0061】
また、成型工程に供する原料混合物の流動性を示す物性の他の例として、具体的には、圧縮度が25%以下、好ましくは10〜20%、更に好ましくは10〜15%が挙げられる。圧縮度は、ゆるめかさ密度と固めかさ密度の比[100×(固めかさ密度‐ゆるめかさ密度)/固めかさ密度]であり、小さい程、流動性が高いことを指す物性値である。
【0062】
なお、前記安息角及び圧縮度は、成型工程に供する前の原料混合物について、目開き850μmにて篩過した後に粉体特性評価装置(パウダテスタ)を用いて測定される値であり、その具体的条件については、実施例の欄に示す通りである。
【0063】
本発明の発泡性固形状洗浄剤を錠剤状にする場合、打錠成型の方法については、特に制限されないが、例えば、単発錠剤機、ロータリー式錠剤機、高速回転式錠剤機等の装置を用いて行うことができる。また、打錠成型する際の打圧については、錠剤成型が可能である限り、特に制限されないが、通常4〜10t程度、好ましくは5〜9t程度、更に好ましくは6〜8t程度に設定すればよい。
【0064】
本発明の発泡性固形状洗浄剤を顆粒状にする場合、造粒の方法については、特に制限されないが、例えば、押し出し造粒、湿式造粒、乾式造粒、流動層造粒等のいずれの方法で行ってもよい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
なお、以下の実施例、比較例、及び処方例で使用した主な成分の商品名、組成、入手元等は、以下の通りである。
硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、及び過硫酸水素カリウム混合物:商品名「オキソーン」(デュポン株式会社社製);硫酸カリウム32重量%、硫酸水素カリウム23重量%、過硫酸水素カリウム43重量%、及び炭酸マグネシウム2重量%含有。
ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及びNaClの混合物:商品名「LATHANOL LAL POWDER」(Stepan社製)
アルケニルスルホン酸塩及び水酸基含有アルキルスルホン酸塩の混合物:商品名「ASCO 90」(Aekyung Specialty Chemicals製)を使用した。
【0067】
試験例1
1.発泡性固形状洗浄剤(錠剤状の義歯洗浄剤)の製造
表1に示す組成の発泡性固形状洗浄剤(義歯洗浄剤)を製造した。具体的には、先ず、炭酸ナトリウム(一部)と、炭酸ナトリウム及びケイ酸化合物(ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム)以外の原料を秤量し、秤量した原料をレディゲミキサー(型番:M20、メーカー:マツボー)にて攪拌混合した。次いで、混合した原料をチャック袋に小分けし、所定量のケイ酸化合物及び炭酸ナトリウム(2重量%に相当する量)を添加して混合し、目開き850μmにて篩過し、原料混合物を得た。得られた、原料混合物を直径25mmの金型を用いて6.5tで打錠成型することにより、1個当たり2.65gの発泡性固形状洗浄剤(錠剤状の義歯洗浄剤)を製造した。
【0068】
2.錠剤の硬度の評価
発泡性固形状洗浄剤3錠の硬度を硬度計(錠剤硬度計6D:DR.SCHLEUNIGER PHARMATRON社製)にて測定し、平均値を算出した。比較例1の発泡性固形状洗浄剤の硬度を100として、各発泡性固形状洗浄剤の硬度の相対値を算出し、下記判定基準に従って錠剤の硬度を分類した。
下記判定基準で分類した。
<硬度の判定基準>
◎:硬度の相対値が130以上
○:硬度の相対値が115以上130未満
△:硬度の相対値が100以上115未満
×:硬度の相対値が100未満
××:打錠障害が生じ、硬度の測定ができなかった。
【0069】
3.原料混合物の流動性の測定
打錠成型する前の原料混合物の流動性を評価するために、粉体特性評価装置(パウダテスタ、型番:PT-X、ホソカワミクロン製)を行いて、安息角及び圧縮度の測定を行った。具体的な測定条件は、以下に示す通りである。
【0070】
(安息角の測定条件)
原料混合物を振動で目開き850μmの篩に通しながら、受け皿から粉が落ちる程度に落下させた。次いで、受け皿の上に形成された原料混合物の山について、CCDカメラにて画像を投影し、底面と斜面の角度(安息角)を計測した。
【0071】
(圧縮度の測定条件)
原料混合物を振動で目開き850μmの篩を通しながら、100mLの容器に対して、粉が落ちる程度に充填させた後、100mLの容器からあふれた状態になっている余分な原料混合物をすり切って重量を計測し、この状態の密度をゆるめかさ密度(g/mL)として算出した。次に、円筒を原料混合物が充填されている100mLの容器の上に連結し、連結容器にした。その後、更に原料混合物を振動で目開き850μmの篩を通しながら、連結容器から粉が落ちる程度に充填させた後、180回のタッピングを行った。連結容器から連結した円筒を取り外し、100mLの容器からあふれた状態になっている余分な原料混合物をすり切って重量を計測し、この状態の密度をかためかさ密度(g/mL)として算出した。求められたゆるめかさ密度とかためかさ密度の値から、下記算出式に従って、圧縮度を算出した。
【0072】
【数1】
【0073】
測定された安息角及び圧縮度の値から、下記判定基準に従って原料混合物の流動性を分類した。
<流動性の判定基準>
◎:安息角が45°以下、且つ圧縮度が15%以下
○:安息角が45°以下、且つ圧縮度が15%超20%以下
△:安息角が45°以下、且つ圧縮度が20%超25%以下
×:安息角が45°超、且つ圧縮度が25%超
【0074】
4.結果
得られた結果を表1に示す。漂白剤とケイ酸マグネシウムを含む実施例1〜4では、錠剤の硬度及び原料混合物の流動性の双方とも優れていた。特に、実施例1〜4では、発泡剤の総量が60重量%以上という極めて高含有量であるにもかかわらず、優れた硬度と原料混合物の流動性を備えることができていたことは、特筆すべき効果といえる。一方、ケイ酸マグネシウムの代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウム又はケイ酸アルミニウムを含む比較例2〜5では、優れた硬度と原料混合物の流動性の双方点で満足できるものはなかった。なお、実施例1の発泡性固形状洗浄剤の硬度は55N以上であり、また実施例2〜4の発泡性固形状洗浄剤の硬度は60N以上であり、包装や流通に耐えうる十分な硬度を有していた。
【0075】
【表1】
【0076】
試験例2
1.発泡性固形状洗浄剤(錠剤状の義歯洗浄剤)の製造
表2に示す組成の発泡性固形状洗浄剤(錠剤状の義歯洗浄剤)を製造した。具体的には、先ず、クエン酸、リンゴ酸、炭酸水素ナトリウム、漂白剤、ポリエチレングリコール、香料、及び二酸化ケイ素を秤量した後、レディゲミキサー(型番:M20、メーカー:マツボー)にて攪拌混合した。次いで、混合した原料をチャック袋に小分けし、その他の原料を所定量添加した後混合して、目開き850μmにて篩過し、原料混合物を得た。得られた、原料混合物を直径25mmの金型を用いて6.5tで打錠成型することにより、1個当たり2.65gの発泡性固形状洗浄剤(錠剤状の義歯洗浄剤)を製造した。
【0077】
2.錠剤の硬度の評価
発泡性固形状洗浄剤3錠の硬度を硬度計(錠剤硬度計6D:DR.SCHLEUNIGER PHARMATRON社製)にて測定し、平均値を算出した。比較例6の発泡性固形状洗浄剤の硬度を100として、各発泡性固形状洗浄剤の硬度の相対値を算出し、試験例1の場合と同様の方法で、発泡性固形状洗浄剤の硬度を分類した。
【0078】
3.原料混合物の流動性の測定
試験例1の場合と同様の方法で、安息角及び圧縮度の測定を行い、原料混合物の流動性を分類した。
【0079】
4.結果
得られた結果を表2に示す。この結果からも、漂白剤とケイ酸マグネシウムを含む実施例5〜8では、発泡性固形状洗浄剤の硬度及び原料混合物の流動性の双方とも優れていることが確認された。
【0080】
【表2】
【0081】
製造例
表3に示す組成の発泡性固形状洗浄剤(錠剤状の義歯洗浄剤)を製造した。具体的には、表3に示す各成分を所定量秤量して混合し、目開き850μmにて篩過し、原料混合物を得た。次いで、原料混合物を打錠成型することにより、1個当たり2.65gの発泡性固形状洗浄剤(錠剤状の義歯洗浄剤)を製造した。得られた発泡性固形状洗浄剤は、いずれも高い硬度を有しており、その製造に使用した原料混合物の流動性も良好であった。
【0082】
【表3】