(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷却部の冷却面と前記熱電モジュールの低温面との間に配置される弾力性のある伝熱シートを備えている請求項1〜4のいずれかに記載の熱電モジュール発電評価装置。
前記加熱板本体の内部に配置されるカートリッジヒーター及び温度センサーを備えており、前記カートリッジヒーター及び前記温度センサーは、前記加熱板本体の厚み方向に対して、前記熱電モジュール側に偏らせて設置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の熱電モジュール発電評価装置。
前記熱電モジュールの周囲を覆うと共に、前記冷却部の前記冷却面を被覆する断熱部材を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の熱電モジュール発電評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1は、本発明の一実施形態にかかる熱電モジュール発電評価装置1を示す概略構成側面図である。この
図1に示すように、熱電モジュール発電評価装置1は、熱電モジュール試料100を上下方向に挟持するようにして配置される加熱部2及び冷却部3を備えている。また、熱電モジュール試料100の性能評価を行う計測部及び制御演算部5を備えている。
【0020】
加熱部2は、冷却部3との間で挟まれる熱電モジュール試料100の高温面を加熱する手段であり、熱電モジュール試料100の高温面を例えば1000℃程度まで昇温可能な加熱板21を備えている。この加熱板21は、
図2に示すように、加熱板本体22と、その内部に収容される複数のカートリッジヒーター23とを備えている。
図2(a)は、加熱板21の平面図を示しており、
図2(b)は、
図2(a)のA方向から見た側面図を示し、
図2(c)は、
図2(a)のB方向から見た側面図を示している。加熱板本体22の下面側が熱電モジュール試料100を加熱する加熱面として機能し、この加熱面は、熱電モジュール試料100の高温面側に当接可能な面であり、平滑に形成されている。この加熱板21の加熱面の寸法は、熱電モジュール試料100の高温面の寸法以上の寸法を有するように設定する。加熱面の形状としては、種々採用することができるが、例えば、50〜200mm×50〜200mmの正方形或いは長方形として構成することが好ましい。加熱板21は、一つの側面に一箇所あるいは複数箇所の直径5.5〜30mm程度の孔24を開けて、当該孔24内にカートリッジヒーター23を差し込むことができる厚さがあれば良く、一般的に10〜20mm程度の厚みを有していればよい。
【0021】
加熱板本体22内に収容されるカートリッジヒーター23は、その直径が、加熱板本体22に形成される孔24の内周面と密着する寸法に構成され、例えば、直径が5〜30mm程度、長さが30〜200mm程度に設定される。
【0022】
本出願の評価装置においては、高温空気中での加熱を可能にするため、加熱板21の素材は耐熱、耐酸化性に優れていることが必要である。さらに加熱面と熱電モジュール試料100の良好な熱接触は、発電性能の再現性や長期試験における安定性において重要であり、加熱面内での温度の均一性を確保することが好ましい。つまり、加熱板21の素材は、高温での低い熱膨張係数と高い熱伝導率を有することか好ましく、更に、酸化によって熱伝導率が大きく変化せず、熱や酸化によって変形や割れ等の損傷が発生しにくい耐酸化性材料であることが好ましい。このような素材としては、例えば、ステンレスやニッケル基超合金、セラミックスを用いることができる。
【0023】
加熱面の温度ムラは、熱電モジュール試料100を接触させない無負荷時での最大の温度差が、加熱板21と中心を同じくし、加熱板21の各辺の80%の長さを有する領域内で50℃以下、同じく50%以下の領域内で20℃以下となることが好ましい。これにより、熱電モジュール試料100を加熱した場合、そのモジュールの高温面内における温度の最大差を加熱板21と中心を同じくし、加熱板21の各辺の80%の長さを有する領域内で30℃以下にすることができ、50%以下の領域内で10℃以下にできる。これを実現するためには、高温時の熱膨張による加熱面の反り・膨らみなどの変形や、カートリッジヒーター23の本数や配置間隔を適宜調整すればよい。加熱面の変形をおさえるためには、高温源(加熱板本体22)の素材として、できるだけ熱膨張率の低い材料を用いればよい。本発明に係る加熱板本体22のサイズでは、1000℃以下の温度において15×10
-6 /k以下の熱膨張率を有する材料を用いれば、加熱面の変形を防ぐことができる。さらに、温度不均一を防ぐためには素材の熱伝導率が高い方が好ましく10w/mk以上であれば面内の温度不均一を小さくすることができる。具体的に金属材料がステンレスの場合ならば、SUS403、SUS405、SUS430、ニッケル基超合金の場合ならば、インコネル600、インコロイ800、セラミックスの場合ならば炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等を用いることができる。カートリッジヒーター23用の孔24を加工すること、急速加熱や冷却による破損などを考慮すれば、セラミックスよりもステンレスやニッケル基超合金といった金属の方が好ましい。
【0024】
また、加熱板21は、熱電モジュール試料100に熱エネルギーを入力する部材であり、その熱出力も重要である。加熱板21からの熱出力はカートリッジヒーター23の出力と本数で決まる。加熱板21の熱出力は、熱電モジュール試料100に温度差を付け、計測可能な発電量を出力できる程度であれば良いが、一般的にはカートリッジヒーター23の一本当たりの熱出力が50〜700W程度のものを使用すればよい。またカートリッジヒーター23間の間隔は、等間隔であることが好ましく、ヒーター出力と加熱板21の素材にもよるが10〜30mm程度の間隔であれば良い。
【0025】
加熱板21の温度計測は、熱電対や測温抵抗センサー等の温度センサーを用いればよく、高温であることを考慮すればKタイプ、あるいはRタイプ熱電対が好ましく、1000℃までの耐久性を考慮すればRタイプ熱電対がもっとも好ましい。また加熱面の温度ムラを計測するため、
図2(a)に示すように、複数個の温度センサー25を加熱板本体22の内部に取り付けると良い。そのとき温度ムラを極力小さくするため、温度センサー用の孔26の直径はできるだけ細い方が良く、また、その長さは加熱板21の様々な箇所を測定できる長さに設定すればよい。また、少なくとも一個の温度センサー25を加熱板21のヒーターの温度制御器と接続し、温度調整用に用いることが好ましい、より好ましくは、各々のカートリッジヒーター23を個別に制御できるように、複数個の温度センサー25を配置し、それぞれを温度制御器と接続する。
【0026】
また、カートリッジヒーター23、温度センサー25共に熱電モジュール試料100に近い方が該熱電モジュール試料100の高温面を高温まで加熱でき、また、正確な温度計測を行うことができるため、加熱板21(加熱板本体22)の厚さ方向に対して、熱電モジュール試料100側にカートリッジヒーター23および温度センサー25を偏らせて設置することが好ましい。
【0027】
また、加熱部2におけるカートリッジヒーター23は、ヒーター制御部27に接続されており、この制御部27のプログラムにより、カートリッジヒーター23へ通電する電力を自動調整し、温度、昇降温速度、保持時間が制御されている。また、PID制御によりヒーター温度の過昇温などが抑制されるように構成されている。
【0028】
冷却部3は、加熱部2との間で挟まれる熱電モジュール試料100の低温面を冷却する手段であり、
図3(a)の平面図や、
図3(b)の側面図に示すように形態を有している。この冷却部3は、金属製の冷却板31を備えている。この冷却板31の内部には、
図3(a)の平面図において点線で示すような、冷却水が通過可能な流路32が形成されている。また、流路32の入口側端部には入水管33が接続されており、流路32の出口側端部には出水管34が接続されている。これら入水管33及び出水管34には、配管35,36を介してチラーなどの冷却水循環装置37が接続されており、冷却板31内において、例えば、5〜20リットル/分程度の流量で、10〜30℃程度の水が循環されるように構成されている。冷却板31の冷却能力は、熱抵抗値 で0.05℃/W程度以下が好ましく、0.03℃/W程度以下がより好ましい。なお、循環する冷却水の流量は、フローメーター等の流量計によって制御、計測されるように構成されている。また、冷却板31の入水管33及び出水管34には、温度センサー38,39が挿入されて配置される。この温度センサー38,39は、入出水管(入水管33及び出水管34)内の冷却水流を妨げないものならば特に限定されず、例えば、外形が5〜20mm程度の入出水管に導入管を設け、そこへ挿入配置される直径が1〜2mm程度の熱電対、測温抵抗センサー等を用いることができる。例としては、Kタイプ熱電対あるいは白金測温抵抗体を挙げることができる。なお、入出水管の配置は冷却板31の同一側面でも異なる側面でも良く、熱電モジュールや加熱板21等との配置や冷却の障害にならなければ冷却面あるいはその反対面にあっても良い。
【0029】
また、
図3に示す冷却板31の上面が、熱電モジュール試料100を冷却する冷却面として機能し、この冷却面は、熱電モジュール試料100の低温面側に当接可能な面であり、平滑となるように構成されている、この冷却面の寸法は、測定する熱電モジュール試料100の低温面の寸法以上の寸法を有するように設定する。また、加熱板21からの伝熱による高温から、冷却板31側に配置される周辺部材を保護するため、冷却板31の各辺が加熱板21の加熱面の各辺よりも長い寸法となるように構成すること(冷却板31の面積を加熱板21の面積よりも大きく構成すること)が好ましい。また、冷却板31の厚さについては、特に限定しないが10〜80mm程度に設定することができる。
【0030】
また、熱電モジュール発電評価装置1は、熱電モジュール試料100に接続される電力取り出し線(リード線4)を備えている。該リード線4は、熱電モジュール試料100の両端子(電極102によって直列に接続されて構成されるp−n熱電素子群の両端(両電極端))にそれぞれ接続される配線である。このリード線4は、加熱面からの放熱により高温となり、また、発生する電流値によってはリード線4の電気抵抗による発熱が起こる。リード線4の温度上昇は、リード線4の電気抵抗の変動や熱の流入による熱電モジュール内の温度不均一化などを引き起こし、正確な測定の妨げとなる。そこで、例えば、
図4(a)に示すように、冷却板31表面に密着させて冷却するように構成する。このとき、リード線4の表面を伝熱を妨げないようにポリイミド(カプトン(登録商標))テープなど薄いフィルムで電気絶縁することが好ましい。これによりリード線4の保護と正確な測定が可能となる。さらに、リード線4において生じた電気抵抗による発熱も冷却水に取り込むことができるため、より正確な発電効率を測定できる。なお、熱電モジュール試料100から導かれるリード線4は、
図4(a)に示すように、低温面側から導かれるように構成されていてもよく、或いは、
図4(b)に示すように、高温面側から導かれるように構成されていてもよいが、極力長い距離に亘ってリード線4が冷却面に接触するよう屈曲させて設置する。特に、リード線4が、高温面側から導かれている場合には熱電素子との接触に注意して屈曲させる。
【0031】
ここで、上述の加熱部2と冷却部3とはどのように配置しても良いが、熱電モジュールの固定などを考慮すれば、
図1や
図4に示すように、それらを上下に配置する方が簡便な装置構造となり、計測も容易となるので好ましい。また、加熱部2と冷却部3とのどちらを上部に配置しても良いが、加熱された空気の対流による冷却面の加熱、水漏れなどの問題を考慮すれば、加熱部2を上部に配置すると共に、冷却部3を下部に配置し、熱電モジュール試料100を加熱部2及び冷却部3で上下方向から挟持するように構成することが好ましい。
【0032】
計測部は、複数の温度センサーを備えている。具体的には、加熱板21の温度計測に用いられる上記の温度センサー25(熱電対や測温抵抗センサー等)、及び、冷却板31の入出水口の水温計測に用いられる上記温度センサー38,39を備えている。また、熱電モジュール試料100の高温面、低温面、及び側面の温度を計測する温度センサーを備えている。温度計測用のセンサーの計測方式は特定しないが、計測精度、利便性の観点から熱電対か測温抵抗センサーを用いれば良い。また本発明の特徴である高温空気中での測定を実現するためには、作動条件で耐久性の高い温度センサーを用いれば良く、加熱板21や熱電モジュール試料100の高温面を計測する場合は白金−白金・ロジウム合金を用いたRタイプ熱電対、冷却板31や水温の計測にはアルメル−クロメルを用いたKタイプ熱電対や白金測温抵抗体を使用することが好ましい。
【0033】
また、計測部は、加熱板21、熱電モジュール試料100の高温面および低温面、さらに冷却水の温度計測用センサーからの電気信号を温度換算する計測器を備えている。また、計測部は、熱電モジュール試料100に外部負荷抵抗をかけるための定電流直流電源或いは電子負荷装置を備えており、更に、熱電モジュール試料100が発生する電圧を計測できる直流電圧計を備えている。計測方法は直流四端子法で行えばよく、電流が流れる外部負荷抵抗用の電線と電圧計測用の電線が、熱電モジュール試料100に接続されるリード線4の端部に接続される。
【0034】
制御演算部5は、計測した温度、電圧、電流、外部負荷抵抗等の数値を取り込み、計算処理、保存する機能を有する手段であり、例えば、一般的なパーソナルコンピュータを用いることが出来る。また、一定時間間隔で自動計測が可能などプログラムにより計測制御を行うことが出来るように構成することが好ましい。この制御演算部5においては、下記式1や式2に基づいて、電圧や発電出力を自動で算出できるように構成されている。
【0035】
電圧 (V) =電流 (A) x 抵抗 (Ω) (式1)
発電出力 (W) = 電流 (A) x 電圧 (V) (式2)
【0036】
また、制御演算部5においては、外部負荷抵抗を連続的に走査して異なる外部負荷抵抗値での発電出力を計測し、熱電モジュール試料100の発電出力の極大値を計算できるように構成されている。この場合、計測した電流値と電圧値から(式2)により発電出力値を計算し、
図5に示すように、電流値を横軸、発電出力値を縦軸にプロットし、その頂点を二次関数近似により計算し、熱電モジュール試料100が発生する最大出力値を得るように構成されている。また、熱電モジュール試料100に外部負荷抵抗をかけない時の電圧(開放電圧)と内部抵抗値に関して、
図6に示すように、計測した電流値と電圧値をそれぞれ横軸と縦軸にプロットし、その直線近似により、切片である開放電圧と傾きの絶対値である内部抵抗値を計算するように構成されている。なお、最大出力値(発電出力の極大値)は開放電圧値と内部抵抗値からも原理的に計算できる。つまり熱電モジュール試料100の最大出力は外部負荷抵抗値とモジュールの内部負荷値が一致した時に得られるので、下記式3により、熱電モジュール試料100の最大出力を自動計算できるように構成してもよい。
【0037】
最大出力 (W) = (開放電圧)
2 / (4×内部抵抗値) (式3)
【0038】
また、制御演算部5においては、熱電モジュール試料100の発電効率を算出できるように構成されている、発電効率は、下記式4により自動計算できるように構成されている。
【0039】
発電効率(%)= 発電出力 (W) / (発電出力 (W)+ 冷却水へ流入した熱量 (W))×100 (式4)
ここで、冷却水へ流入した熱量 (W)は、下記式5により算出される。
【0040】
冷却水へ流入した熱量(W)=(出水口における水温(℃)−入水口における水温(℃))×循環水量(cm
3/分)×温度補正した水の密度(g/cm
3) ×水の比熱(1.0 cal/g・℃) ×単位換算(1.94×10
-6 W/分) (式5)
【0041】
また、本発明に係る熱電モジュール発電評価装置1は、
図1に示すように、加熱部2と冷却部3との間で熱電モジュール試料100を加圧する加重部6を備えている。熱電モジュール試料100の高温面及び低温面と加熱板21及び冷却板31の接触の度合いは、熱入・出力、温度制御の点で非常に重要であることから、計測中の加重は精密且つ一定に保つことが好ましい。熱電モジュール試料100への加圧(加重)を行う加重部6の具体的構成としては、
図7に示すようなコンプレッサーを用いた空圧式あるいは油圧式、
図8に示すような梃子の原理を使ったレバー式プレスによりレバーに重り61をつり下げて加重する方式や、
図9や
図10に示すようなねじとバネを用いた方式等を採用できる。また、計測時は熱膨張などにより加重値が変動するため、ロードセルなど加重センサーにより常に加重を計測し、加重値を一定に保つ機構を備える方が好ましい。加重方向に関しては、上下あるいは左右両方からの加重でも、どちらか一方からの加重でも良いが、熱電モジュール試料100の設置と装置構造を簡便にするためには、上下方向に加重をかけるように加重部6を構成する方が好ましく、より簡便には下部を固定し、上部から加重をかける方が好ましい。
【0042】
また、本発明に係る熱電モジュール発電評価装置1においては、加熱板21からの放熱によって熱電モジュール試料100外側の冷却板31に熱が直接流入することを抑制するために、
図11に示すように、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31表面(冷却部3の冷却面)を被覆する断熱部材7を備えるように構成することが好ましい。薄い熱電モジュール試料100を計測する場合、加熱面と冷却面が近い距離で対向することになり、これにより熱電モジュール試料100を通過しない熱エネルギーによっても冷却水が加熱され、発電効率の計測精度が低くなるおそれがある。また厚い熱電モジュールの計測時には熱電材料の側面からの熱放散が起こり、やはり発電効率の計測精度が悪化するおそれがある。熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31表面を被覆する断熱部材7は、このような計測精度が低下することを効果的に抑制することができる。断熱部材7としては、例えば、ガラスウールや多孔質セラミックス断熱材を採用することができる。また、冷却板31の反対面(熱電モジュール試料100が配置される側とは反対側の面;
図11においては冷却板31の下面)に、当該面の全域を被覆する断熱材を配置することが好ましい。このような構成により、冷却板31の反対面における熱の放散、流入を防ぐことができ、冷却板31に流入する熱量が、熱電モジュールを通過した分とリード線4からの熱量になり、正確な発電効率の計算が可能となる。
【0043】
また、本発明に係る熱電モジュール発電評価装置1は、
図1に示すように、安全囲81、非常停止ボタン82、警報表示灯83を備えている。安全囲81は、計測時に、高温の加熱板21との接触や、熱電モジュール試料100への衝撃などを防ぐために設けられるものであり、加熱板21、熱電モジュール試料100、冷却板31を外部から観察できるようにパンチングメタルあるいは耐熱性金網により構成することが好ましい。なお、安全囲81の少なくとも一つの側面には、モジュール試料100の取り替えのための扉が設けられており、計測中にこの扉が開いた場合には、加熱部2におけるヒーターへの通電や加重部6の作動を停止し、計測を緊急停止することができるように構成することが好ましい。また安全囲81の中には温度センサーを少なくとも一個入れ、囲い内の温度を管理し、設定以上の温度になった場合には、加熱部2におけるヒーターへの通電や加重を止め、計測を緊急停止することができるように構成してもよい
【0044】
非常停止ボタン82及び警報表示灯83は、制御演算部5に接続され、該制御演算部5と連動した作動を行う。非常停止ボタン82は、何らかのトラブルにより計測を直ちに止める場合に用いられるものであり、該ボタンの押下により、加熱部2におけるヒーターへの通電と加重部6の作動を停止できるように設定されている。また、警報表示灯83は、予め設定した加熱条件や計測などが何らかのトラブルによりプログラム通りに作動しなかった場合などに、計測者にその旨を知らせるために作動するものであり、通常作動時は緑ランプ、計測停止時は黄ランプ、異常発生時には赤ランプが点灯するように構成されている。
【0045】
本発明に係る熱電モジュール発電評価装置1においては、上述のように、熱電モジュール試料100の高温面の寸法以上の寸法を有し、かつ、高温面に接して配置される加熱面を有する加熱部2と、熱電モジュール試料100の低温面の寸法以上の寸法を有し、かつ、低温面に接して配置される冷却面を有する冷却部3とを備え、更に、熱電モジュール試料100に接続される電力取りだし線(リード線4)の少なくとも一部が、冷却部3の冷却面に密着するように設置されているため、発電効率を精度良く評価できる。特に、熱電モジュール試料100に接続される電力取りだし線(リード線4)の少なくとも一部が、冷却部3の冷却板31の冷却面に密着するように設置されているため、リード線4において生じた電気抵抗による発熱に係る熱量を冷却面を介して冷却水に取り込むことができ、また、加熱部2の加熱面からの放熱によってリード線4に供給された熱量も冷却面を介して冷却水に取り込むことができ、より正確な発電効率等を測定することができる。
【0046】
また、リード線4の形状、寸法は特に限定しないが、例えば、板状、帯状、丸柱状、撚り線状等種々の形状のものを採用することができる。リード線4の断面積が大きい方が、電気抵抗が小さくなり、発電出力の損失を小さくできるが、断面積が大きいとリード線4を介して高温側からの熱が放出されやすくなり、リード線4がモジュールの高温側にある場合は熱電変換に関与しない熱が熱源から直接冷却水に流入し、変換効率の計測精度を悪くしてしまう。これを防ぐため、例えば、幅が0.1cm〜3cm、厚さが0.005cm〜0.2cm程度のシート状のリード線4を採用することが好ましく、より好ましくは幅0.5cm〜1cm、厚さ0.005cm〜0.1cm程度のシート状のリード線4を採用することが好ましい。このような、所定の幅を有し厚みの薄いシート状のリード線4(帯状のリード線4)を採用し、当該形状のリード線4の少なくとも一部を冷却板31の冷却面に密着するように設置することにより、リード線4と冷却面との接触面積が増大し、リード線4に溜まる熱量を効果的に冷却面を介して冷却水側に移動させることが出来るため、極めて精度よく発電効率等を測定することが可能となる。
【0047】
また、冷却板31の冷却面の面積を加熱板21の加熱面の面積よりも大きく構成することが好ましい。このような構成によれば、加熱板21からの伝熱による高温から冷却板31側に配置される周辺部材を保護することができると共に、加熱板21から放熱される熱量を効果的に受け取ることができ、より一層正確な発電効率等を測定することが可能となる。
【0048】
また、本発明に係る熱電モジュール発電評価装置1においては、
図12の要部拡大概略構成側面図に示すように、冷却部3の冷却面と熱電モジュール試料100の低温面との間に配置される弾力性のある伝熱シート9を備えているように構成してもよい。このような弾力性のある伝熱シート9を冷却面と熱電モジュール試料100の低温面との間に配置する場合、伝熱シート9と水冷面との間に測温センサーを挿入しても、大きな隙間ができることがないため、低温面の素子の温度をより精度よく計測することが可能となり、より一層精度よく熱電モジュール試料100の発電効率等を測定することが可能となる。なお、弾力性のある伝熱シート9は、更に電気絶縁性を備えることが好ましい。当該伝熱シート9が電気絶縁性を有する場合には、熱電モジュール試料100における低温側基板101を省略して熱電モジュール試料100を構成することができ、モジュール試料の構成上の簡略化を図ることが可能となる。ここで、弾力性のある伝熱シート9としては、例えば、シリコーン系ゴムやアクリル系ゴムからなるシート材を利用することができる。
【0049】
ここで、本発明に係る熱電モジュール発電評価装置1により性能評価される熱電モジュール試料100は、
図1、
図13、
図14において示されるように、板状の形状を有していることが好ましい(
図14においては、特に厚み(高さ)方向寸法を拡大して表示している)。なお、
図13は、熱電モジュール試料100の平面図であり、
図14の(a)〜(d)は、
図13のC方向、D方向、E方向、F方向のそれぞれからから見た側面図を示している。この熱電モジュール試料100は、
図13及び
図14に示すように、電気絶縁性の低温側基板101、複数のp型熱電素子及び複数のn型熱電素子を備えている。各p型熱電素子及び各n型熱電素子は、電極102を介して、p型・n型・p型・n型・・・というように、互いに直列に接続されて構成されている。また、電極102の一部は、低温側基板101と、一対のp−n型熱電素子対との間に介在して配置され、電極102の他の一部は、一対のp−n型熱電素子対の上面側に配置されている。
【0050】
また、熱電モジュール試料100に用いられる熱電材料、電極材料、基板などの構成部材も計測温度で熔融、蒸発、粉砕など起こらず形状を保つ物であれば、特に限定されない。また、p型熱電素子、n型熱電素子の形状も特に限定されないが、製造の容易さから、
図15に示すように、四角柱や円柱形とすることが好ましい。また、熱電素子の断面寸法も特に限定されないが、断面積が大きく、熱電素子数が少なくなると、発生する電流値が大きくなることに起因して、リード線4での発熱が大きくなり、電圧値も低くなるため計測精度が低くなるおそれがある。そのため、一般的には、断面の一辺が1mm〜10mm程度の四角柱か、直径が1mm〜10mm程度の円柱を用いることが好ましい。また、p型熱電素子の断面形状とn型熱電素子の断面形状とが異なるように構成してもよく、また、p型熱電素子及びn型熱電素子の断面寸法が異なるように構成してもよい。また、p型或いはn型の熱電素子の高さHも特に限定されないが、熱電モジュール試料100の内部抵抗、耐久性、温度差のつけやすさ、さらに発電効率の精度を減少させる原因となる熱電材料側面からの放熱を防ぐ点から、1〜30mm程度が好ましく、1〜7mm程度がより好ましい。なお、p型とn型熱電素子の高さHは異なっても良いが、加熱板21や冷却板31との良好な熱接触を考慮すれば、全ての素子が同じ長さを有することが好ましい。
【0051】
また、熱電モジュール試料100を構成する熱電素子数、さらに一つのp−n対を構成する素子数も限定されない。例えば、
図13〜
図14に示す構成においては、p−n熱電素子対の一対を構成する素子数がp型、n型共に一個である場合が示されているが、例えば、
図16に示すように、p−n熱電素子対の一対を構成する素子数がp型、n型共に二個となるように構成してもよく、或いは、
図17に示すように、p型素子あるいはn型素子のどちらか一方の熱電素子のみで熱電モジュール試料100を構成してもよい。なお、
図16(a)〜(c)及び
図17(a)〜(c)のそれぞれは、
図14のC方向、D方向、E方向から見た側面図に対応する。
【0052】
また、
図13及び
図14の構成においては、熱電素子同士を導電性の電極102を用いて接続しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、
図18に示すように、p型熱電素子とn型熱電素子とを直接接合するように構成してもよい。
図18(a)は、熱電モジュール試料100の平面図を示しており、
図18(b)〜(d)は、
図18(a)のC方向、D方向、E方向から見たそれぞれの側面図を示している。接合を形成する場合、はんだや導電性ペーストなどを用いることができるが、高温空気中で耐久性の高いモジュールを作製するためには酸化や融解が発生するおそれのあるはんだよりも銀や白金、金など貴金属を用いた導電性ペーストを用いる方が好ましい。素子間の間隔も素子同士が接触して電気ショートを起こさなければ良いが、広すぎると熱電モジュール内の素子数が少なくなり、高い出力が得られない。そのため、素子間の間隔は0.1〜5mm程度が良く、より好ましくは0.1〜1mm程度である。
【0053】
また、
図13及び
図14の構成においては、熱電モジュール試料100の低温面側に電気絶縁性の低温側基板101を設け、高温面側に基板を設けないように構成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、
図19(a)に示すように、低温側基板101に加えて、熱電モジュール試料100の高温面側に電気絶縁性の高温側基板103を配置するように構成してもよい。また、
図19(b)に示すように、低温側基板101を省略して熱電モジュール試料100を構成してもよい。ここで、
図19(a)(b)は、
図13におけるD方向から見た側面図に対応する。低温側基板101及び高温側基板103の両方、或いは、いずれか一方を設けないように熱電モジュール試料100を構成し、電極102の一部が露出するような場合であって、後述の加熱部2が有する加熱板21の加熱面や冷却部3が有する冷却板31の冷却面が電気伝導性を有する場合には、熱電素子間のショートを防ぐため、上記加熱面や冷却面と熱電モジュール試料100との間に電気絶縁性の物質を挟めばよい。この場合、熱伝導が低いと熱電モジュール試料100に温度差を付けることが困難となるため、挿入物はできるだけ熱伝導率が高く、厚さが薄い方が好ましい。例えば、加熱面と熱電モジュール試料100との間には、薄いアルミナや窒化ケイ素などのセラミック板を配設することができ、また、冷却面と熱電モジュール試料100との間には、市販の熱伝導性グリースやポリイミド(カプトン(登録商標))テープを配設することができる。
【0054】
また、熱電モジュール試料100の形態として、
図14等に示す熱電モジュール試料100を複数枚重ねたカスケードモジュールを採用することも可能であるが、その場合、全熱電モジュールの厚さの和が50mm以下になることが好ましく、5〜20mm程度がより好ましい。また、熱電モジュール試料100の高温面の外縁は基板(低温側基板101、高温側基板103)の有無に関わらず、その一辺の長さは後述の加熱板21の一辺の長さの80%以下、より好ましくは50%以下に設定することが好ましい。このように設定することにより、加熱板21の熱量の多くを熱電モジュール試料100に入力できるため、発電出力も高くなり、熱電モジュール試料100が発電できる限界値に近い発電出力を得ることができる。また、基板が無い場合もまた高温面および低温面の変形による熱接触面積の低減の影響を小さくできる。
【0055】
本発明の発明者は、上記熱電モジュール発電評価装置1に係る実施例を複数作成し、種々の熱電モジュール試料100について、その性能評価試験を行ったのでこれらについて以下説明する。
【0056】
まず、発明者が作成した実施例1〜3に係る熱電モジュール発電評価装置1について説明する。
【実施例1】
【0057】
実施例1に係る熱電モジュール発電評価装置における加熱部2、冷却部3、加重部6、計測部の構成は以下の通りである。
[加熱部2]
65mm×50mm角、厚さ25mmのインコネル600製の加熱板本体22の側面の3カ所に、該加熱板本体22の外側から4.5mm、外周間の間隔を10mm、さらに熱電モジュール試料100と接する加熱面側から6mmとなるように直径12mmの孔24を開けカートリッジヒーター23を装填して加熱板21を構成した(
図20)。この時、カートリッジヒーター23の先端が加熱板21の外縁から40mmの深さに届くように配置する。反対側の側面には直径が2mmの孔26を加熱板本体22の外側から20.5mm、外周間の間隔が20mm、さらに熱電モジュール試料100と接する加熱面側から11mmとなるように2カ所孔を開け、Rタイプ熱電対(温度センサー25)を装填した。この配置にすると熱電対は二本のカートリッジヒーター23と等間隔に位置することになる。また熱電対の先端は加熱板21の外縁から25mmの深さに届くように配置する。二本の熱電対の一本をヒーターの温度制御器と接続し、ヒーター温度の制御に用いた。カートリッジヒーター23としては、常用800℃、最高温度1000℃まで使用できるものを採用した。加熱板21の発熱量は2本のカートリッジヒーター23で出力は最大1kWである。
【0058】
熱電モジュール試料100と接触させず無負荷状態で加熱板21を900℃の設定で加熱したときの、加熱面の温度分布を表1に示す。計測にはサーモビューアーを用い、表1に表示した測定地点を
図21に示す。計測地点がカートリッジヒーター23に近い方が高い温度になる傾向が見られた。加熱板21と中心を同じくし、加熱板21の各辺の80%の長さを有する領域内(地点(1)、(7)、(15)、(21)で囲まれた領域)での最大の温度差は49℃であった。一方、加熱板21の各辺の50%の長さを有する領域内(地点(22)、(23)、(24)、(25)で囲まれた領域)では16℃が最大の温度差となった。なお、設定温度と実測値の差は、加熱面を空気中にむき出しにして計測を行ったために発生したものである。
【0059】
【表1】
【0060】
[冷却部3]
冷却部3は80mm×80mm角、厚さ20mmで、内部に水管(流路32)を有する、熱抵抗が0.03℃/W以下の銅製の冷却板31により構成した(
図22)。チラーは最大冷却能力が1.4kWで、最大流量は14リットルである。設定温度は30℃以下である。
【0061】
[加重部6]
てこの原理を用いたレバープレス式により加重部6を構成した(
図8)。この加重部6は、最高で5kgのおもりをレバーにつり下げ、加熱部2上部からモジュール試料に均等に加重をかけるように構成している。加重は1kg刻みで設定可能に構成している。加重値は測定中もロードセルにより確認し、手動でおもりをレバーにつり下げ一定値を保つようにしている。なお、加熱部2と冷却部3の配置は、加熱部2が上部にあり、下部にある冷却部3を固定し、上部から加重をかけるように構成している。
【0062】
[計測部]
温度計測は加熱板21で2箇所、熱電モジュール試料100の高温面及び低温面でそれぞれ1箇所、さらに冷却水温度で2箇所を計測する。温度センサーは、加熱板21、モジュール高温面にはRタイプ熱電対、モジュール低温面にはKタイプ熱電対を使用した。冷却水温度の計測は白金測温抵抗体を使用する。加熱板21の計測用熱電対は加熱板21の側面に設けた孔に熱電対を挿入する。モジュール試料の高温面の計測用熱電対は、高温面にモジュール試料の基板がある場合は、その素子側の面にRタイプ熱電対を、銀ペーストを用い接着する。モジュール試料の基板が無い場合は、加熱板21との間に厚さが0.8mmのアルミナ板を挿入し、その素子側に銀ペーストを用いRタイプ熱電対を接着した。
【0063】
また、電子負荷装置として、最大5Aの電流を通電できる定電流直流電源を用い、電圧計として最大10Vまで測定できる直流電圧計を用いた。また温度計測も各々の温度センターに対応したデジタル温度計測器を用いた。
【実施例2】
【0064】
実施例2に係る熱電モジュール発電評価装置における加熱部2、冷却部3、加重部6、計測部の構成は以下の通りである。
【0065】
[加熱部2]
140mm×140mm角、厚さ25mmのインコネル600製の加熱板本体22の側面の5カ所に、加熱板21の外側から14mm、外周間の間隔を13mm、さらに熱電モジュールと接する加熱面側から6mmとなるように直径12mmの孔24を開けカートリッジヒーター23を装填して加熱板21を構成した。(
図23)。この時、カートリッジヒーター23の先端が加熱板21の外縁から135mmの深さに届くように配置する。反対側の側面には直径が2mmの孔26を加熱板本体22の外側から31.5mm、外周間の間隔が23mm、さらに熱電モジュール試料100と接する加熱面側から11mmとなるように4カ所孔26を開け、Rタイプ熱電対(温度センサー25)を装填した。この配置にするとそれぞれの熱電対は二本のカートリッジヒーター23と等間隔に位置することになる。また熱電対の先端は加熱板21の外縁から70mmの深さに届くように配置する。中央に近い二本の熱電対の一本をヒーターの温度制御器と接続し、ヒーター温度の制御に用いる。カートリッジヒーター23としては、常用800℃、最高温度1000℃まで使用できるものを採用した。加熱板21の発熱量は5本のカートリッジヒーター23で出力は最大2.5kWである。
【0066】
熱電モジュール試料100と接触させず無負荷状態で加熱板21を800℃の設定で加熱したときの、加熱面の温度分布を表2に示す。計測にはサーモビューアーを用い、表2に表示した測定地点を
図24に示す。計測地点がカートリッジヒーター23に近い方が高い温度になる傾向が見られた。加熱板21と中心を同じくし、加熱板21の各辺の80%の長さを有する領域内(地点(1)、(7)、(15)、(21)で囲まれた領域)での最大の温度差は48℃であった。一方、加熱板21の各辺の50%の長さを有する領域内(地点(22)、(23)、(24)、(25)で囲まれた領域)では20℃が最大の温度差となった。なお、設定温度と実測値の差は、加熱面を空気中にむき出しにして計測を行ったために発生したものである。
【0067】
【表2】
【0068】
[冷却部3]
冷却部3は140mm×140mm角、厚さ20mmで、内部に水管(流路32)を有する、熱抵抗が0.005℃/W以下の銅製の冷却板31により構成した(
図25)。チラーは最大冷却能力が1.4kWで、最大流量は14リットルである。設定温度は30℃以下である。
【0069】
[加重部6]
てこの原理を用いたレバー式プレスによりにより加重部6を構成した(
図8)。この加重部6は、最高で10kgのおもりをレバーにつり下げ、加熱部2上部からモジュール試料に均等に加重をかけるように構成している。加重は1kg刻みで設定可能に構成している。加重値は測定中もロードセルにより確認し、手動でおもりをレバーにつり下げ一定値を保つにしている。なお、加熱部2と冷却部3の配置は、加熱部2が上部にあり、下部にある冷却部3を固定し、上部から加重をかけるように構成している。
【0070】
[計測部]
温度計測は加熱板21で4箇所、熱電モジュール試料100の高温面及び低温面でそれぞれ2箇所、さらに冷却水温度で2箇所を計測している。温度センサーは加熱板21、モジュール高温面にはRタイプ熱電対、モジュール低温面はKタイプ熱電対を使用した。冷却水温度の計測は白金測温抵抗体を使用する。加熱板21の計測用熱電対は加熱板21の側面に設けた孔に熱電対を挿入する。モジュール試料の高温面の計測用熱電対は、高温面にモジュール試料の基板がある場合は、その素子側の面にRタイプ熱電対を、銀ペーストを用い接着する。モジュール試料の基板が無い場合は、加熱板21との間に厚さが0.8mmのアルミナ板を挿入し、その素子側に銀ペーストを用いRタイプ熱電対を接着する。
【0071】
また、電子負荷装置として、最大10Aの電流を通電できる定電流直流電源を用い、電圧計として最大10Vまで測定できる直流電圧計を用いた。また温度計測も各々の温度センターに対応したデジタル温度計測器を用いた。
【実施例3】
【0072】
実施例3に係る熱電モジュール発電評価装置における加熱部2、冷却部3、加重部6、計測部の構成は以下の通りである。
【0073】
[加熱部2]
160mm×150mm角、厚さ30mmのインコネル600製の加熱板本体22の側面の6カ所に、加熱板21の外側から11.5mm、外周間の間隔を15mm、さらに熱電モジュール試料100と接する加熱面側から7mmとなるように直径12mmの孔24を開けカートリッジヒーター23を装填して加熱板21を構成した(
図26)。この時、カートリッジヒーター23の先端が加熱板21の外縁から155mmの深さに届くように配置する。反対側の側面には直径が2mmの孔26を加熱板本体22の外側から25mm、外周間の間隔が27.5mm、さらに熱電モジュール試料100と接する加熱面側から12mmとなるように5カ所孔を開け、Rタイプ熱電対(温度センサー25)を装填した。この配置にするとそれぞれの熱電対は二本のカートリッジヒーター23と等間隔に位置することになる。また熱電対の先端は加熱板21の外縁から80mmの深さに届くように配置する。5本の内、中央の熱電対をヒーターの温度制御器と接続し、ヒーター温度の制御に用いる。カートリッジヒーター23としては、常用800℃、最高温度1000℃まで使用できるものを採用した。加熱板21の発熱量は5本のカートリッジヒーター23で出力は最大3kWである。
【0074】
熱電モジュール試料100と接触させず無負荷状態で加熱板21を600℃の設定で加熱したときの、加熱面の温度分布を表3に示す。計測にはサーモビューアーを用い、表3に表示した測定地点を
図27に示す。計測地点がカートリッジヒーター23に近い方が高い温度になる傾向が見られた。加熱板21と中心を同じくし、加熱板21の各辺の80%の長さを有する領域内(地点(1)、(7)、(15)、(21)で囲まれた領域)での最大の温度差は19℃であった。一方、加熱板21の各辺の50%の長さを有する領域内(地点(22)、(23)、(24)、(25)で囲まれた領域)でも19℃が最大の温度差となった。なお、設定温度と実測値の差は、加熱面を空気中にむき出しにして計測を行ったために発生したものである。
【0075】
【表3】
【0076】
[冷却部3]
冷却部3は300mm×300mm角、厚さ50mmで、内部に水管(流路32)を有する、熱抵抗が0.0015℃/W以下の銅製の冷却板31により構成した(
図28)。チラーは最大冷却能力が3kWで、最大流量は27リットルである。設定温度は30℃以下である。
【0077】
[加重部6]
空圧式コンプレッサータイプにより加重部6を構成した(
図7)。この加重部6は、最高で200kgまで加熱部2上部からモジュール試料に均等に加重をかけることができる。加重は1kg刻みで設定可能である。加重値は測定中もロードセルにより確認し、自動で設定の加重になるよう調整できるように構成されている。なお、加熱部2と冷却部3の配置は、加熱部2が上部にあり、下部にある冷却部3を固定し、上部から加重をかけるように構成している。
【0078】
[計測部]
温度計測は加熱板21で5箇所、熱電モジュールの高温面及び低温面でそれぞれ5箇所、さらに冷却水温度で2箇所の15箇所を計測している。温度センサーは加熱板21、モジュール高温面にはRタイプ熱電対、モジュール低温面はKタイプ熱電対を使用した。冷却水温度の計測は白金測温抵抗体を使用する。加熱板21の計測用熱電対は加熱板21の側面に設けた孔に熱電対を挿入する。モジュールの高温面の計測用熱電対は、高温面にモジュールの基板がある場合は、その素子側の面にRタイプ熱電対を、銀ペーストを用い接着する。モジュールの基板が無い場合は、加熱板21との間に厚さが0.8mmのアルミナ板を挿入し、その素子側に銀ペーストを用いRタイプ熱電対を接着する。
【0079】
また、電子負荷装置として、最大10Aの電流を通電できる定電流直流電源を用い、電圧計として最大20Vまで測定できる直流電圧計を用いた。また温度計測も各々の温度センターに対応したデジタル温度計測器を用いた。
【0080】
次に、上記実施例1〜3に係る熱電モジュール発電評価装置によって行った試験例1〜33について説明する。なお、試験例1〜7は、実施例1に係る熱電モジュール発電評価装置により行った。また、試験例8〜30は、実施例2に係る熱電モジュール発電評価装置により、試験例31〜33は、実施例3に係る熱電モジュール発電評価装置により行った。
【0081】
なお、試験例1〜17、26,27,31,33に係る熱電モジュール試料は、下記[文献1]〜[文献3]に基づいて作製される酸化物系材料を用いた熱電モジュールである。
[文献1] R. Funahashi, and S. Urata, K. Mizuno, T. Kouuchi, and M. Mikami, Ca2.7Bi0.3Co4O9/La0.9Bi0.1NiO3 thermoelectrics devices with high output power density, Applied Physics Letters, Vol. 85 No. 6, pp.1036-1038 (2004)
[文献2] R. Funahashi, M. Mikami, T. Mihara, S. Urata, and N. Ando, A portable thermoelectric-power-generating module of Composed of oxide devices, Journal of Applied Physics, Vol. 99 No. 6, pp. 066117-066119 (2006)
[文献3] S. Urata, R. Funahashi, T. Mihara, A. Kosuga, S. Sodeoka, T. Tanaka, Power generation of a p-type Ca3Co4O9/n-type CaMnO3 module, International Journal of Applied Ceramic Technology, Vol. 4, No. 6, pp. 535-540 (2007)
【0082】
また、試験例18〜25、28〜30、32に係る熱電モジュール試料は、下記文献4及び文献5に基づいて作製されるシリサイド系材料を用いた熱電モジュールである。
[文献4] R. Funahashi, Y. Matsumura, H. Tanaka, T. Takeuchi, W. Norimatsu,E. Combe, R. O. Suzuki, Y. Wang, C. Wan, S. Katsuyama, M. Kusunoki,and K. Koumoto, Thermoelectric Properties of n-type Mn3-xCrxSi4Al2 in Air, Journal of Applied Physics, 112, 073713 (2012)
[文献5] R. Funahashi, Y. Matsumura, T. Barbier, T. Takeuchi, R. O. Suzuki,S. Katsuyama, A. Yamamoto, H. Takazawa, E. Combe, Durability of silicide-based thermoelectric modules at high temperatures in air, Journal of Electronic Materials, Vol. 44, Issue 8, pp 2946-2952 (2015)
【0083】
<試験例1〜5>
試験例1において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型Ca
2.7Bi
0.3Co
4O
9とn型Ca
0.9Yb
0.1MnO
3で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は8対で、一対の素子数はp、n型どちらも1個ずつである。基板は無く、熱電モジュール試料100の高温面の辺の長さは15.5mm×15.5で、厚さが5.2mmである。リード線4は幅3.5mm、厚さ0.1mm、長さ30mmの銀シートであり、モジュール試料の低温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュール試料100の低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュール試料100の高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。加熱板温度を200〜900℃の範囲で100℃ごとに設定し、3kgの重りをハンドルレバーにつり下げ加重した。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環した。加熱板21の温度が設定値になった後、外部負荷抵抗を走査し、電流値と電圧値を計測し、それらの数値を用い、上記の式3により熱電モジュール試料100の最大出力を計算した。さらにこの最大出力と式5で計算した冷却水へ流入した熱量から、式4を用い発電効率を計算した。この試験例1において性能評価した熱電モジュール試料100の詳細を表4に示すと共に、加熱板21の各温度に対する発電出力(W)及び発電効率(%)に関する結果を表5に示す。なお、表5において「-」で示す個所は、加熱板21の各温度に対する発電出力(W)及び発電効率(%)が未計測であることを表している。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
また、試験例2〜5は、試験例1とは異なる熱電モジュール試料100に対する性能評価を、上記試験例1と同一条件にて行った。試験例2〜5において性能評価した熱電モジュール試料100に関する詳細を上記表4に併せて示すと共に、加熱板21の各温度に対する発電出力(W)及び発電効率(%)に関する結果を上記表5に併せて示す。
【0087】
<試験例6>
試験例6において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型Ca
2.7Bi
0.3Co
4O
9とn型Ca
0.9Yb
0.1MnO
3で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は14対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として32mm×34mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは27.5mm×31.5mmで、熱電モジュールの厚さは7mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュール試料の高温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュール試料100の低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。3kgの重りをハンドルレバーにつり下げ上部にある加熱板21により加重をかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環させながら、加熱板温度を室温から3時間で900℃に上昇させ、外部負荷抵抗を走査させ最大出力を計測した。計測後、加熱板21の加熱を止め、3時間放置した。これにより加熱板温度は100℃以下となった。その後、再び加熱を開始し、3時間で900℃まで上昇させ、熱電モジュールの最大出力を計測した。この試験を合計で6回繰り返し、モジュールのサイクル試験を行った。
【0088】
<試験例7>
試験例7において性能評価される熱電モジュール試料100は、その素子がp型Ca
2.7Bi
0.3Co
4O
9とn型Ca
0.9Yb
0.1MnO
3で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが3.5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は10対で、一対の素子数はp型が2個、n型が1個である。高温面側に基板として32mm×36mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板を除いた熱電モジュール試料100の寸法は30mm×30mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの高温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュール試料100の高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。3kgの重りをハンドルレバーにつり下げ上部にある加熱板21により加重をかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環させながら、加熱板温度を室温から3時間で1000℃に上昇させ、外部負荷抵抗を走査させ最大出力を計測した。計測後、加熱板21の加熱を止め、4時間放置した。これにより加熱板温度は100℃以下となった。その後、再び加熱を開始し、3時間で1000℃まで上昇させ、熱電モジュール試料100の最大出力を計測した。この温度サイクルを合計で53回繰り返し、20回目までは毎回、さらに3〜5回の温度サイクル後に計測を行った。
【0089】
上記試験例6及び7の熱電モジュール試料100の詳細を表6に、サイクル試験結果を表7に示す。なお、表7において「-」で示す個所については、サイクル試験を行っていない。
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
<試験例8〜25>
試験例8において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型Ca
2.7Bi
0.3Co
4O
9とn型Ca
0.9Yb
0.1MnO
3で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は34対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として45 mm x 60 mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは15.5mm×15.5mmで、熱電モジュールの厚さは6mmである。リード線4は幅3.5mm、厚さ0.1mm、長さ30mmの銀シートであり、モジュールの低温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。加熱板温度を200〜900℃の範囲で100℃ごとに設定し、5kgの重りをハンドルレバーにつり下げ加重した。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環した。加熱板21の温度が設定値になった後、外部負荷抵抗を走査して熱電モジュールの最大出力を計測した。さらにこの最大出力を用い発電効率も計測した。
【0093】
また、試験例9〜25は、試験例8とは異なる熱電モジュール試料100に対する性能評価を、上記試験例8と同一の条件で行った。なお、一部の試験例においては、加熱板21設定温度の上限及び下限を試験例8と異なるようにして試験を行った。試験例8〜25において性能評価した熱電モジュール試料100に関する詳細を表8に示す。また、加熱板21の各温度に対する発電出力(W)及び発電効率(%)に関する結果を表9に示す。なお、表9において「-」で示す個所は、加熱板21の各温度に対する発電出力(W)及び発電効率(%)が未計測であることを表している。
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】
<試験例26及び27>
試験例26において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型Ca
2.7Bi
0.3Co
4O
9とn型Ca
0.9Yb
0.1MnO
3で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は34対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として32mm×34mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは43.5mm×47.5mmで、熱電モジュールの厚さは6mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの高温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。5kgの重りをハンドルレバーにつり下げ上部にある加熱板21により加重をかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環させながら、加熱板温度を室温から3時間で900℃に上昇させ、外部負荷抵抗を走査させ最大出力を計測した。計測後、加熱板21の加熱を止め、3時間放置した。これにより加熱板温度は100℃以下となった。その後、再び加熱を開始し、3時間で900℃まで上昇させ、熱電モジュールの最大出力を計測した。この試験を合計で5回繰り返し、モジュールのサイクル試験を行った。
【0097】
試験例27は、上記試験例26に係る熱電モジュール試料100と同一構成のものを別途準備し、当該試料を試験例26における条件と同一条件にて行ったものである。表10に試験例26及び27の熱電モジュールの詳細を示す。また、表11にこれらのサイクル試験結果を示す。この二つの熱電モジュールは全く同一組成、同一形状を有するが、劣化現象に違いが見られた。これは、劣化の原因が異なるためであり、試験例26では電極部分に剥離があること、試験例27ではn型素子のひび割れであることがわかった。
【0098】
【表10】
【0099】
【表11】
【0100】
<試験例28>
試験例28において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型MnSi
1.7とn型Mn
3Si
4Al
2で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが7.5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は7対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として30mm×20mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは27.5mm×15.5mmで、熱電モジュールの厚さは8.5mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの高温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。3kgの重りをハンドルレバーにつり下げ上部にある加熱板21により加重をかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環させながら、加熱板温度を室温から2時間で500℃に上昇させ、外部負荷抵抗を走査させ最大出力と発電効率計測した。計測後も加熱板温度を500℃に保ったまま24時間毎に43日間に亘って最大出力と発電効率を計測した。表12に試験例28の熱電モジュールの詳細を示し、表13に試験例28の長期連続加熱試験結果を示す。
【0101】
【表12】
【0102】
【表13】
【0103】
<試験例29>
試験例29において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型MnSi
1.7とn型Mn
2.7Cr
0.3Si
4Al
2で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが7.5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は7対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として30mm×20mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは27.5mm×15.5mmで、熱電モジュールの厚さは8.5mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの高温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。3 kgの重りをハンドルレバーにつり下げ上部にある加熱板21により加重をかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環させながら、加熱板温度を室温から2時間で500℃に上昇させ、定電流直流電源により1Aの発電電流が一定に保たれるよう外部負荷抵抗を制御し、熱電モジュール試料100が発生する電圧を直流四端子法に計測した。この電圧値と電流値から発電出力を計算した。計測後も加熱板温度を500℃に保ったまま50時間毎に750時間に亘って1A発生時の発電出力を計測した。表14に試験例29の熱電モジュールの詳細を示し、表15に試験例29の長期定電流連続試験結果を示す。
【0104】
【表14】
【0105】
【表15】
【0106】
<試験例30>
試験例30において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型MnSi
1.7とn型Mn
2.7Cr
0.3Si
4Al
2で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが7.5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は7対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として30mm×20mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは27.5mm×15.5mmで、熱電モジュールの厚さは8.5mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの高温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。3 kgの重りをハンドルレバーにつり下げ上部にある加熱板21により加重をかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に5リットル/分の水量で循環させながら、加熱板温度を室温から2時間で500℃に上昇させ、定電流直流電源により1Vの発電電圧が一定に保たれるよう外部負荷抵抗を制御し、熱電モジュールが発生する電流を直流四端子法に計測した。この電圧値と電流値から発電出力を計算した。計測後も加熱板温度を500℃に保ったまま50時間毎に900時間に亘って1V発生時の発電出力を計測した。表16に試験例30の熱電モジュール試料100の詳細を示し、表17に試験例30の長期定電圧連続試験結果を示す。
【0107】
【表16】
【0108】
【表17】
【0109】
<試験例31>
試験例31において性能評価した熱電モジュール試料100は、その熱電モジュールの素子がp型Ca
2.7Bi
0.3Co
4O
9とn型Ca
0.9Yb
0.1MnO
3で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は64対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として64.5mm×64.5mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは63.5mm×63.5mmで、熱電モジュールの厚さは6mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの低温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。加熱板温度を200〜900℃の範囲で100℃ごとに設定し、空圧式コンプレッサーで20kgの加重を上部からかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に8リットル/分の水量で循環する。加熱板21の温度が設定値になった後、外部負荷抵抗を走査して熱電モジュールの最大出力を計測した。さらにこの最大出力を用い発電効率も計測した。
【0110】
<試験例32>
試験例32において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型MnSi
1.7とn型Mn
2.7Cr
0.3Si
4Al
2で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが7.5mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は14対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として30mm×35mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは27.5mm×31.5mmで、熱電モジュールの厚さは8.5mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの高温面側にある。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。加熱板温度を100〜600℃の範囲で100℃ごとに設定し、空圧式コンプレッサーで10 kgの加重上部からかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に8リットル/分の水量で循環する。加熱板21の温度が設定値になった後、外部負荷抵抗を走査して熱電モジュールの最高出力を計測した。さらにこの最大出力を用い発電効率も計測した。
【0111】
表18に試験例31及び32の熱電モジュール試料100の詳細を示す。また、表19に計測結果を示す。
【0112】
【表18】
【0113】
【表19】
【0114】
<試験例33>
試験例33において性能評価した熱電モジュール試料100は、その素子がp型Ca
2.7Bi
0.3Co
4O
9とn型CaMn
0.98Mo
0.02O
3で、素子の断面寸法は3.5mm×3.5mm、長さが7mmで、銀ペーストを用い、銀電極と接合されている。素子の対数は64対で、一対の素子数はp、n型どちらも2個ずつである。高温面側に基板として64.5mm×64.5mm、厚さ0.8mmのアルミナを用いる。基板の無い低温面の辺の長さは63.5mm×63.5mmで、熱電モジュールの厚さは8mmである。リード線4は幅5mm、厚さ0.1mm、長さ7.5mmの銀シートであり、モジュールの高温面側の電極端に接続されている。電気絶縁のため、厚さ0.07mmのポリイミド(カプトン(登録商標))テープをリード線4に巻き、更に、冷却板31にポリイミド(カプトン(登録商標))テープで密着させた。また熱電モジュールの低温面と冷却板31の間に厚さ0.5mmの放熱ゲルシート(弾力性のある伝熱シート9;商品名:ラムダゲル)を挿入し、熱伝導と電気絶縁を確保すると同時に、冷却板31と放熱ゲルシート間に低温面計測用Kタイプ熱電対を挿入した。さらに、熱電モジュールの高温面の寸法と同じ寸法でくりぬいたグラスウール断熱材(断熱部材7)を数枚重ね、熱電モジュール試料100の周囲を覆うと共に、冷却板31全体を被覆し、加熱板21からの放熱による加熱を防いだ。空圧式コンプレッサーで10kgの加重上部からかけた。20℃に設定した冷却水温度を冷却板31に8リットル/分の水量で循環させながら、加熱板温度を室温から2時間で500℃に上昇させ、定電流直流電源により1Aの発電電流が一定に保たれるよう外部負荷抵抗を制御し、熱電モジュールが発生する電圧を直流四端子法に計測した。この電圧値と電流値から発電出力を計算した。計測後も加熱板温度を500℃に保ったまま50時間毎に750時間に亘って1A発生時の発電出力を計測した。表20に試験例33の熱電モジュール試料100の詳細を示す。また、表21に試験例33の長期定電流連続試験結果を示す。
【0115】
【表20】
【0116】
【表21】
【0117】
上記のように、本発明に係る熱電モジュール発電評価装置によれば、高温、空気中といった実用化条件での熱電モジュールの出力、発電効率、サイクル特性、長期耐久性など様々な評価事項の性能評価を行うことができることが確認できる。