(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被エッチング材料を有する試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置において、
反応層形成工程と脱離工程によりエッチングされた前記被エッチング材料をモニタして得られた干渉スペクトルの中で前記反応層形成工程に増加し前記脱離工程に減少する波長の信号を前記反応層形成工程時に求め、前記求められた信号とモニタされた前記信号との差分に基づいて除去工程を実施する制御を行う制御部をさらに備え、
前記反応層形成工程は、前記被エッチング材料表面にガスを吸着させて反応層を形成する工程であり、
前記脱離工程は、前記反応層形成工程後、前記反応層を脱離させる工程であり、
前記除去工程は、前記被エッチング材料の上方に配置されたマスクに堆積した堆積膜または前記反応層を除去する工程であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の機能素子製品の微細化により、高アスペクト比化と同時にデバイスを構成するゲート絶縁膜および層間膜等の薄膜化が進んでいる。また、半導体素子の微細化と共に、Fin-FET等の三次元デバイスの開発が加速されている。
【0003】
これに伴って、三次元デバイスのエッチング工程では、溝パターンのアスペクト比が大きく、開口寸法は、小さいパターンのエッチングが必要となっている。また、マスクやゲート絶縁膜、エッチストッパ等の被エッチング膜の厚さは薄くなっており、高選択なエッチングが要求されている。また、デバイスの三次元化により、ウエハ表面から異なる深さの層に形成されたパターンを同時にエッチングしたり、開口寸法が深さによって変わるパターンをエッチングしたりするような複雑な形状をエッチングする工程が増加している。
【0004】
これらのパターンのエッチングにおいて、Si、SiO
2等の酸化膜及びSi
3N
4等の窒化膜をエッチングするプラズマエッチングでは、被エッチング材料に対して高選択的にエッチングし、かつ微細なホールや溝をエッチングするためにフルオロカーボンガスやハイドロフルオロカーボンガス等の堆積性の高いガスを使用してエッチングする技術が知られている。しかし、例えば、高アスペクト比のホールをエッチングする際には、エッチングの進行に伴ってホールの入口部が反応生成物で塞がってしまい、エッチングが進行しなくなる問題が発生していた。
【0005】
また、上述のフルオロカーボンガスやハイドロフルオロカーボンガス等の堆積性の高いガスを使用してエッチングする技術以外の被エッチング材料を精度良く加工する技術として特許文献1には、プラズマエッチングチャンバの中にエッチング可能な基板を設置する段階と、基板の表面上に生成層を形成する段階と、プラズマ源をパルス駆動することによって生成層の一部を除去する段階と、その後、生成層を形成する段階と生成層の一部を除去する段階とを繰り返してエッチングされた基板を形成する段階を有する高速の原子層エッチング(ALET)方法が開示されている。
【0006】
また、上述の問題に対しては、処理チャンバの内部に収容された基板に形成された被処理膜をエッチングするエッチング処理を実行することによって、前記被処理膜にホールを形成する第1の工程と、前記エッチング処理を実行することによって形成された前記ホールの入口部に付着した反応生成物を除去する除去工程と、前記除去工程によって反応生成物が除去された前記ホールの側壁部に堆積物を堆積させる堆積工程と、前記堆積工程によって堆積物が側壁部に堆積された前記ホールを、前記エッチング処理を進行させることによって伸延(深エッチング)する伸延(深エッチング)工程とを複数回繰り返し実行する第2の工程とを含むことを特徴とするプラズマエッチング方法が特許文献2に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、近年の三次元デバイスでのパターンの複雑化と微細化とともに微細パターン、且つ、複雑な形状を持つパターン上において、堆積膜厚の精密な制御が必要となっている。例えば、三次元構造においては、
図10(a)に示すようにウエハ1上に形成された被エッチング材料からなる層2をマスク3を用いてエッチングする際にマスク3がエッチングされないように厚い堆積膜4を形成した場合、エッチングが進展するに従ってマスク3の開口部が反応生成物によって塞がれて所望のパターンに加工できないという問題が発生している。
【0009】
また、
図10(b)及び
図10(c)に示すように第1のマスク5と第2のマスク6が異なる深さに形成された構造において、第2のマスク6を用いて第2のエッチング領域8エッチングする際に第1のマスク5と第2のマスク6がエッチングされないように第1のマスク5上と第2のマスク6上に厚い堆積膜4を形成した場合、エッチングが進展するに従って第2のマスク6の開口部が反応生成物によって塞がれてしまうという問題が発生している。
【0010】
また、
図10(b)及び
図10(c)に示すように第1のマスク5と第2のマスク6が異なる深さに形成された構造において、第1のマスク5と第2のマスク6を用いて第2のエッチング領域8をエッチングする際に第1のマスクの開口部の過剰な反応層と第2のマスク開口部の過剰な堆積膜4によって第2のエッチング領域の被エッチング表面にイオンが照射されず、所望の形状が得られなかったり、エッチングが停止したりするという問題があった。
【0011】
これらの問題に対して特許文献1に開示された方法を用いて
図10(a)に示すような構造の微細パターンのエッチングを行うと、被エッチング材料上では、吸着と脱離が繰り返されてエッチングが進行するが、マスク等上では、比較的厚い反応層が形成される。さらに開口部には反応生成物が再付着することによって開口部が狭くなり、パターン底へのイオンの侵入が阻害されて所望の形状に加工できなかったり、開口部が塞がって、エッチングが停止したりする場合がある。また、
図10(b)のように第1のマスク5と第2のマスク6が異なる深さの箇所に形成されている構造または、第1のマスクと第2のマスク材料が異なる構造を特許文献1に開示された方法を用いてエッチングした場合、段差が生じた部分に過剰な堆積膜が形成されたり、第1のマスクと第2のマスク上の反応層の厚さが異なったり、開口部の堆積膜厚が非対称であったりするため、加工形状が左右非対称となったりして所望の形状が得られない。
【0012】
さらに
図10(c)のように第1のマスク5と第2のマスク6が異なる深さの箇所に形成されている構造または、第1のマスクと第2のマスク材料が異なる構造を特許文献1に開示された方法を用いてエッチングした場合、開口部に過剰な反応層が形成されることによって、被エッチング材料上に照射されるイオンの一部が遮蔽されるため、被エッチング材料上に吸着した反応層が脱離工程で脱離されなくなり、被エッチング材料上に不均一に反応層が残存する場合があった。その結果、被エッチング材料を精度良くエッチングすることができなくなり、所望の形状を実現できない。
【0013】
また、特許文献2に開示された方法のようにホール開口部の反応生成物を除去し、側壁保護膜を形成する工程を繰り返した場合、反応生成物を除去する度にマスク材料が少しずつ削れてしまい、所望の加工形状が得られない。また、側壁保護膜を形成する工程で、左右の側壁の深さやマスク材料が異なった場合には、側壁保護膜が均一に形成されず、所望の形状に加工できない。さらに、左右対称のパターンを加工する場合であったとしても、微細パターンの加工では、開口部の堆積膜に付着した微量の反応生成物によって開口部が狭くなり、所望のパターン形状にエッチングできなかったり、開口部が塞がってエッチングが停止する場合があった。
【0014】
例えば、開口部の幅が50nmレベル以下のパターンの加工の場合、堆積膜厚は20nmレベル以下で制御する必要がある。しかし、特許文献2に開示されている方法では、堆積膜厚のデポレートは10 nm/secと速く、堆積膜厚を20nm以下のレベルで精密に制御することは困難である。また、このことにより、特許文献1に開示されたエッチング方法に特許文献2に開示されたエッチング方法を適用しても
図10(a)、(b)及び(c)の構造に対する特許文献1に開示されたエッチングの問題点は改善できない。
【0015】
以上のことから本発明の目的は、パターン上の過剰なデポ膜厚を制御するプラズマエッチングにおいて、高精度なエッチングを行うエッチング方法及びプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、被エッチング材料の表面にガスを吸着させて反応層を形成する反応層形成工程と、前記反応層形成工程後、前記反応層を脱離させる脱離工程と、
前記被エッチング材料の上方に配置されたマスクに堆積した堆積膜または前記反応層を除去する除去工程とを有し、前記反応層形成工程と前記脱離工程により前記被エッチング材料をエッチングし、前記除去工程は、光学的手法により
前記堆積膜の厚さまたは前記反応層の厚さをモニタし、前記モニタされた
前記堆積膜の厚さまたは前記反応層の厚さが所定量より厚くなった場合に行われることを特徴とするエッチング方法である。
【0017】
また、本発明は、被エッチング材料を有する試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置において、反応層形成工程と脱離工程によりエッチングされた前記被エッチング材料をモニタして得られた干渉スペクトルの中で前記反応層形成工程に増加し前記脱離工程に減少する波長の信号を前記反応層形成工程時に求め、前記求められた信号とモニタされた前記信号との差分に基づいて除去工程を実施する制御を行う制御部をさらに備え、前記反応層形成工程は、前記被エッチング材料表面にガスを吸着させて反応層を形成する工程であり、前記脱離工程は、前記反応層形成工程後、前記反応層を脱離させる工程であり、前記除去工程は、
前記被エッチング材料の上方に配置されたマスクに堆積した堆積膜または前記反応層を除去する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、パターン上の過剰なデポ膜厚を制御するプラズマエッチングにおいて、高精度なエッチングを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面を用いて詳細に説明する。尚、実施形態を説明するための全ての図において、同一の構成または同一の部材は同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
最初に本発明に係るプラズマ処理装置について説明する。
図1は、本発明に係るエッチング方法を実施するためのプラズマエッチング装置の構成の一例を示す。また、
図2は、
図1に示すプラズマエッチング装置においてプラズマエッチングを行う場合のエッチングシーケンスの一例を示す図である。
【0022】
図1に示すようにエッチング装置20は、処理室21内に配置された試料台であるウエハステージ22とガスボンベやバルブからなるガス供給手段23を備え、ガス制御部37は、反応層形成用ガス24、反応生成物脱離用ガス25及び過剰反応層除去用ガス26がそれぞれの処理ステップで処理室21に供給されるように制御する。処理室21へ供給されたガスと高周波制御部39に制御された高周波電源27により供給された高周波電力によって処理室21内にプラズマが生成される。また、処理室21内の圧力は、排気系制御部38に制御され処理室21に接続された可変コンダクタンスバルブ28と真空ポンプ29により、所望の流量の処理ガスを流した状態で、一定に保つことができる。
【0023】
また、エッチング装置20は、制御部36を備え、制御部36は、ガス制御部37と排気系制御部38と高周波制御部39とバイアス制御部40と記憶部51とを具備する。また、制御部36は、
図5に示すエッチングのフローに係る制御を行う。例えば、制御部36は、
図2に示すようなエッチングシーケンスを行う。さらに制御部36は、膜厚測定装置31と光源32と分光器33と算出部34とデータベース35を制御する。
【0024】
次にエッチング装置20におけるプラズマエッチングの流れを説明する。
【0025】
図2に示すように最初に反応層形成工程が開始すると、反応層形成用ガス24が所定の流量で処理室21に供給される。供給された反応層形成ガス24は、高周波電力によってプラズマ化され、ラジカル、イオン等が生成される。プラズマにより生成されたラジカルやイオンは、ウエハ1の表面に到達し、反応層9を形成する。また、反応性ガスのプラズマを生成することなく、反応層形成用ガス24をそのまま被エッチング材料2に吸着させることもできる。
【0026】
次に脱離工程が開始すると、脱離用ガス25が所定の流量で処理室21に供給される。供給された脱離用ガス25は高周波電力によってプラズマ化され、プラズマにより生成されたイオンやラジカルがウエハ1表面に照射される。このとき、反応層9と被エッチング材料2を反応させて生じた反応生成物12をプラズマから照射されるイオン11によって脱離させる場合、バイアス制御部40により制御されたバイアス電源30から供給されるバイアス電圧をウエハステージ22に印加することによりイオンエネルギーを制御することができる。
【0027】
また、ウエハに照射されるイオン11のエネルギーの中で最大のイオンエネルギーは、ウエハバイアス電圧と概ね等しいことが知られている。従って、ウエハバイアス電圧を調整することによってイオンエネルギーの最大値を制御することができる。さらにウエハステージ22には加熱冷却機構を備えることも可能であり、ウエハステージ22を加熱して反応生成物12を熱脱離させることも可能である。あるいは、ウエハ1上部からランプ等で加熱することによって反応生成物12を熱脱離させることも可能である。
【0028】
上記の反応層形成工程と脱離工程を繰り返して被エッチングパターンをエッチングすると、被エッチングパターンの一部に過剰な反応層9が形成される場合がある。過剰な反応層9が形成された場合、反応層除去工程が実施される。反応層除去工程が開始すると、反応層除去用ガス26が所定の流量で処理室に供給され、供給された反応層除去用ガス26は高周波電力によってプラズマ化され、ラジカルとイオン等が生成される。反応層除去用ガス26は、反応層形成工程で形成された反応層9と脱離工程で生成された反応生成物12とを除去可能なガスであり、反応層除去用ガス26には、マスクとの反応性が低いガスを用いる。
【0029】
反応層除去工程のウエハバイアス電圧は、過剰な反応層9の膜厚T及び被エッチングパターン内での過剰反応層の形成箇所に基づいて以下のようにして求められる。ここで、過剰な反応層9が形成されたことを検知し、反応層除去工程の条件を決定してエッチングを実施する方法の一例を示す。
【0030】
最初に過剰な反応層9が形成されたことを検知するために被エッチングパターン上の反応層9の膜厚を測定する。反応層9の膜厚は、
図1に示すように光源32からの光をウエハ1に照射し、ウエハ1で反射された干渉光を分光器33で測定して測定する。被エッチングパターンのエッチング深さは、例えば、特開2003−083720号公報に開示されているように特定波長の強度の変化を分光器にて検出し、終点判定器にて終点検出した際の膜厚を算出することができる。反応層の膜厚を測定する場合は、反応層の膜厚9の変化を示す特定波長の強度の変化分を分光器33にて検出し、反応層9の膜厚を算出部34で算出することができる。
【0031】
反応層形成工程と脱離工程をサイクルで実施すると、膜厚測定装置31が備える分光器33において、例えば、
図3(a)に示すような干渉スペクトル41が測定される。測定された干渉スペクトルの中で反応層の情報を含む特定の波長の信号強度の時間変化を
図3(b)に示す。特定波長の信号強度は、反応層形成工程で特定波長の信号強度が増加し、脱離工程で特定波長の信号強度が低下する傾向を示す。
【0032】
反応層形成工程において、許容値内の膜厚の反応層が形成されている場合の参照用信号強度の変化42を予め取得してデータベース35に保存し、保存された参照用信号強度の変化42と測定された信号強度43の差分Idが所定の範囲を超える場合について、過剰な反応層9が形成されていると判定できる。または、過剰な反応層9が形成された場合、被エッチングパターンのエッチングが進行しないことでも間接的に判定できる。尚、反応層9の膜厚を測定するための特定の波長として反応層の情報を含むいくつかの波長を用いることにより、被エッチングパターン内に形成された反応層の膜厚の分布を測定することもできる。
【0033】
また、反応層の膜厚の測定は、全ステップのエッチング中に実施しても良いし、反応層形成工程と脱離工程の間、脱離工程と反応層除去工程の間、反応層除去工程と反応層形成工程の間で実施しても良い。また、膜厚を測定する際の光源としては
図1に示したような外部光源を用いても良いし、プラズマ光を用いることも可能である。さらに膜厚を測定する他の実施例として
図4に示すようにウエハ上部に設置されたIR光源61から、被エッチングパターンにIR光を照射し、IR光の吸収スペクトルをウエハ下部に設置された分光器62で検出して反応層の膜厚を測定することも可能である。反応層の膜厚の変化を示す特定波長の信号強度の変化分を分光器62にて検出し、反応層の膜厚を算出することもできる。
【0034】
本発明に係るエッチング方法の一実施例について
図5ないし7を用いて説明する。
図5は、本発明に係るエッチング方法のプロセスフローである。また、
図6(a)は、反応層形成工程(
図5のステップ1)を説明するための図であり、
図6(b)は、脱離工程(
図5のステップ2)を説明する図である。また、
図7(a)は、反応層除去工程(
図5のステップ4)の前のエッチング形状の断面の模式図であり、
図7(b)は、反応層除去工程(
図5のステップ4)の後のエッチング形状の断面の模式図である。
【0035】
本実施例では、被エッチングパターンの一例として試料であるウエハ1上に被エッチング層10、被エッチング材料2の層間膜が形成されており、マスク3に微細なラインパターンが形成されている構造において、層間膜である被エッチング材料2をエッチングする場合について説明する。
【0036】
最初に
図5のステップ1(反応層形成工程)において 、
図6(a)に示すように被エッチング材料2を含むパターンを形成したウエハ1上に被エッチング材料と反応性のある、反応性ガスやラジカル、またはエッチャントを供給して被エッチングパターンの表面に反応層9を形成する。
【0037】
次に
図5のステップ2(脱離工程)において、プラズマ等によって生成されたイオンを被エッチングパターンに照射する。
図6(b)に示すように被エッチング材料2の表面では、イオンから供給されたエネルギーによって反応層9と被エッチング材料2が反応し、反応生成物12を脱離させる。本実施例では、反応生成物12を脱離させるエネルギーは、プラズマからのイオン11のエネルギーによって供給した場合を示したが、反応生成物12を脱離させるエネルギーは、ランプ加熱等によってウエハ温度を上昇させることにより供給して良い。
【0038】
尚、この脱離工程では、被エッチング材料2表面から発生した反応生成物12や被エッチング材料からイオンスパッタ等で脱離した成分が被エッチングパターンの内部、特に開口部13付近に再付着して開口部13を狭くしたり塞いだりする場合がある。また、被エッチング材料2表面において、アスペクト比が高い場合、脱離工程でイオン11が十分に側壁下部14に到達せず、脱離工程後に反応層9が部分的に残存する場合がある。このようなことから被エッチング材料2表面には、反応層が1サイクル毎に堆積していく。このため、反応層形成工程及び脱離工程において、反応層の膜厚及び反応層生成物12が再付着した成分(堆積膜)の膜厚をモニタする。
【0039】
次に
図5のステップ3において、被エッチングパターン表面上に許容値以上の反応層9が形成されているかどうか、または開口部13付近に許容値以上の堆積膜が形成されているかどうかを判断する。例えば、
図7(a)に示すように被エッチングパターン表面上に許容値より厚い反応層9が形成されたと判断した場合、
図5のステップ4において、
図7(b)に示すように過剰な反応層9を除去する反応層除去工程を実施する。尚、過剰な反応層9は、反応層形成工程で形成された反応層と反応生成物12が再付着した成分と反応層9が脱離して再付着した成分とを含む。反応層除去工程後は、反応層形成工程(
図5のステップ1)を行う。
【0040】
図5のステップ3において、被エッチングパターン表面上に許容値以上の反応層9が形成されていない及び開口部13付近に許容値以上の堆積膜が形成されていないと判断した場合、
図5のステップ5において、所定のエッチング深さに到達しているかどうか判断する。所定のエッチング深さに到達していない場合は、反応層形成工程(
図5のステップ1)を実施する。
【0041】
また、
図5のステップ5において、所定のエッチング深さに到達していると判断した場合は、
図5に示すエッチング方法のプロセスフローを終了する。尚、ステップ5において、「所定のエッチング深さ」の代りに所定の反応層形成工程と脱離工程のサイクル数により判断しても良い。この所定の反応層形成工程と脱離工程のサイクル数は、所定のエッチング深さとなる予め求められたサイクル数である。また、
図5のステップ5において、所定のエッチング深さに到達していると判断した場合、反応生成物等の堆積膜を除去する工程を実施した後、
図5に示すエッチング方法のプロセスを終了しても良い。
【0042】
次に形成された反応層の膜厚から反応層除去工程のエッチング処理条件を決定する方法について述べる。
図7は、被エッチングパターンとしてウエハ1上に被エッチング層10、被エッチング材料2の層間膜が形成されており、マスク3として微細なラインパターンが形成されている構造に反応層除去工程を実施した図である。反応層9の反応層形成工程と脱離工程を繰り返して被エッチング材料2のエッチングが進行し、開口部の反応層の膜厚Ts、マスク3上等上の反応層の膜厚Tm及び被エッチング材料上の反応層厚Tbがそれぞれ所定の許容値を超える場合には、反応層除去工程が実施される。
【0043】
反応層除去工程のエッチング処理条件のパラメータとしてガス種、ガス流量、圧力、高周波電力、ウエハバイアス電圧、処理時間等があるが、ガス種、ガス流量、圧力、高周波電力については、予め推奨値を設定しておくことが望ましい。反応層9の膜厚から、ウエハバイアス電圧、処理時間を反応層の膜厚をモニタした時点で決定することもできる。また、ウエハバイアス電圧は、プラズマで生成されたイオンが被エッチング材料2上の反応層を突き抜けない範囲内の値とする。これは、反応層除去工程において、マスク等がエッチングされないようにするためである。
【0044】
ウエハバイアス電圧と同じエネルギーでのイオン11のマスクへの入射量がマスク上の反応層厚Tmより小さい値に設定される。ウエハバイアス電圧を決定したら、開口部の反応層の膜厚Ts、マスク上反応層の膜厚Tm及び被エッチング材料上の反応層厚Tbが所定の許容値内に入るまで反応層の除去が実施される。反応層除去工程の反応層の除去レートは、予め反応層の除去レート等をデータベースとして記憶部51に記憶させておいても良いし、反応層除去工程を所定時間実施した後、再度、反応層の膜厚を測定して除去レートを測定しても良い。
【0045】
以上のように反応層除去工程のウエハバイアス電圧を決定すると、反応層除去工程のウエハバイアス電圧は、脱離工程よりも低く設定される。尚、ラインパターンのような単純なパターンの場合、予め十分に低いウエハバイアス電圧を設定しておいても良い。
【0046】
次に
図8に示すようにウエハ1上に被エッチング層10が形成され、第1のマスク5と第2のマスク6が異なる層に形成されている構造において、第1のマスク5を用いて第1のエッチング領域7をエッチングし、第2のマスク6を用いて第2のエッチング領域8をエッチングする方法について説明する。尚、
図8(a)は、反応層除去工程前のエッチング形状の断面図であり、
図8(b)は、反応層除去工程後のエッチング形状の断面図である。
【0047】
反応層形成工程と脱離工程を繰り返してエッチング領域のエッチングが進行すると、開口部の反応層の膜厚Ts1、Ts2、マスク上の反応層の膜厚Tm1、Tm2、被エッチング材料上の反応層厚Tbのいずれかが所定の許容値を超える場合には、反応層除去工程が実施される。特に第2のマスク6の開口部が第1のマスクの開口部より狭いため、Ts1及びTm1よりTs2及びTm2の膜厚の制御が重要である。
【0048】
測定された反応層の膜厚からウエハバイアス電圧及び処理時間を反応層の膜厚をモニタした時点で決定することができる。また、ウエハバイアス電圧は、プラズマで生成されたイオンが第1のエッチング領域7及び第2のエッチング領域8の上に形成された反応層を突き抜けない範囲内の値とし、ウエハバイアス電圧と同じエネルギーでのイオンのマスクへの入射量がマスク上の反応層厚Tm1、Tm2より小さい値に設定される。
【0049】
ウエハバイアス電圧を決定した後、開口部の反応層の膜厚Ts1、Ts2、マスク上等の反応層の膜厚Tm1、Tm2、被エッチング材料上の反応層厚Tbの全てが所定の許容値内に入るまで反応層の除去が実施される。ここで、第1のマスク5を用いた第1のエッチング領域7のエッチングは、反応層形成工程と脱離工程のサイクルによるエッチングではなく、従来のエッチングでも良い。
【0050】
また、
図9に示すようにウエハ1上に被エッチング層10が形成され、第1のマスク5と第2のマスク6が異なる層に形成されている構造において、第1のマスク5を用いて第1のエッチング領域7をエッチングし、第2のマスク6を用いて第2のエッチング領域8をエッチングする方法について説明する。尚、
図9(a)は、反応層除去工程前のエッチング形状の断面図であり、
図9(b)は、反応層除去工程後のエッチング形状の断面図である。
【0051】
反応層形成工程と脱離工程を繰り返してエッチング領域のエッチングが進行すると、開口部の反応層の膜厚Ts1、Ts2、マスク上の反応層の膜厚Tm1、Tm2、被エッチング材料上の反応層厚Tb1、Tb2のいずれかが所定の許容値を超える場合には、反応層除去工程が実施される。また、
図9の構造の場合、第2のマスク6のファセットが発生し易いため、このファセットを考慮して反応層を除去する必要がある。
【0052】
測定された反応層の膜厚からウエハバイアス電圧及び処理時間を反応層の膜厚をモニタした時点で決定することができる。また、ウエハバイアス電圧は、プラズマで生成されたイオンが第1のエッチング領域7及び第2のエッチング領域8の上に形成された反応層を突き抜けない範囲内の値とし、ウエハバイアス電圧と同じエネルギーでのイオンのマスクへの入射量がマスク上の反応層厚Tm1、Tm2より小さい値に設定される。
【0053】
ウエハバイアス電圧を決定した後、開口部の反応層の膜厚Ts1、Ts2、マスク上等の反応層の膜厚Tm1、Tm2、被エッチング材料上の反応層厚Tb1、Tb2の全てが所定の許容値内に入るまで反応層の除去が実施される。ここで、第1のマスク5を用いた第1のエッチング領域7のエッチングは、反応層形成工程と脱離工程のサイクルによるエッチングではなく、従来のエッチングでも良い。
【0054】
また、本発明に係るエッチング方法は、上述した
図8及び9の構造のみだけでなく、マスクと被エッチング材料とが3段以上となった被エッチングパターンの構造においても本実施例と同様に実施することができる。
【0055】
また、上述した反応層形成工程と脱離工程と反応層除去工程の各々で使用するガスの種類は、エッチング処理が行われる被エッチング膜の材料に応じて適宜選択される。例えば、反応層形成用ガス24としてフルオロカーボンガスと第一のガスとの混合ガス、ハイドロフルオロカーボンガスと第一のガスとの混合ガスまたはフルオロカーボンガスとハイドロフルオロカーボンガスと第一のガスとの混合ガスを用いる場合、脱離用ガス25としては、例えば、フルオロカーボンガスと第二のガスとの混合ガス、ハイドロフルオロカーボンガスと第二のガスとの混合ガスまたはフルオロカーボンガスとハイドロフルオロカーボンガスと第二のガスとの混合ガスが用いられ、反応層除去用ガス26としては、例えば、第二のガスが用いられる。
【0056】
また、例えば、反応層形成用ガス24として、HBrガスと第三のガスとの混合ガス、BCl
3ガスと第三のガスとの混合ガスまたはHBrガスとBCl
3ガスと第三のガスとの混合ガスを用いる場合、脱離用ガス25としては、例えば、HBrガスと第四のガスとの混合ガス、BCl
3ガスと第四のガスとの混合ガスまたはHBrガスとBCl
3ガスと第四のガスとの混合ガスが用いられ、反応層除去用ガス26としては、例えば、第四のガスが用いられる。
【0057】
尚、フルオロカーボンガスは、C
4F
8ガス、C
5F
8ガス、C
4F
6ガス等であり、ハイドロフルオロカーボンガスは、CHF
3ガス、CH
2F
2ガス、CH
3Fガス等であって、希ガスは、Heガス、Arガス、Neガス、Krガス、Xeガス等である。また、第一のガスは、希ガス、O
2ガス、CO
2ガス、N
2ガスの中で少なくとも一つのガスであり、第二のガスは、希ガス、O
2ガス、CO
2ガス、CF
4ガス、N
2ガス、H
2ガス、無水HFガス、CH
4ガス、CHF
3ガス、NF
3ガスの中で少なくとも一つのガスである。
【0058】
また、第三のガスは、希ガス、Cl
2ガス、O
2ガス、CO
2ガス、N
2ガスの中で少なくとも一つのガスであり、第四のガスは、希ガス、Cl
2ガス、O
2ガス、CO
2ガス、CF
4ガス、N
2ガス、H
2ガス、無水HFガス、CH
4ガス、CHF
3ガス、NF
3ガスの中で少なくとも一つのガスである。
【0059】
以上、上述した本発明に係るプラズマ処理方法により、エッチングを実施したウエハ枚数によって最適なエッチング条件が徐々に変化していくようなプロセスの場合でも、より精密に被エッチングパターンをエッチングできる。
【0060】
また、上述した反応層形成工程と脱離工程と反応層除去工程の各々は、プラズマを用いた処理として説明したが、本発明に係るエッチング方法として、反応層形成工程と脱離工程と反応層除去工程の各々は、必ずしもプラズマを用いた処理でなくても良い。例えば、反応層形成工程は、反応層形成用ガス24をプラズマ化させずに被エッチング材料2に吸着させることによって反応層を形成しても良いし、脱離工程は、後述するウエハステージ22を加熱して反応生成物12を熱脱離させたり、あるいは、ウエハ1上部からランプ等で加熱することによって反応生成物12を熱脱離させても良いし、反応層除去工程は、プラズマ化されていない反応層除去用ガス26により反応層形成工程で形成された反応層9と脱離工程で生成された反応生成物12とを除去させても良い。
【0061】
本発明により、微細パターン、複数の深さの箇所にマスクを有するパターン、複数の材料のマスクを持つパターン、三次元構造を持つ微細パターン等において、過剰な反応層の堆積を抑制し、原子層レベルで反応層の膜厚を制御することが可能となる。また、本発明により、微細パターン、複数の深さの箇所にマスクを有するパターン、複数の材料のマスクを持つパターン、三次元構造を持つ微細パターン等において、エッチストップやテーパー形状等の異常形状を抑制し、精度良く3次元構造の微細パターンを加工することが可能となる。また、量産プロセスにおいても、プロセスの経時変化に対応することが可能となり、再現性良く高精度に加工できる。
【0062】
以上、本発明は、本実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えても良い。