(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送手段によって搬送された基板の第1の辺の近傍を支持する第1の支持具群と、前記第1の支持具群とともに前記第1の辺の近傍を支持する、少なくとも一つの支持具を含む第2の支持具群と、を備える基板支持装置であって、
前記第1の支持具群は、一部の隣り合う支持具間の距離が他の隣り合う支持具間の距離と異なっており、
前記第1の支持具群によって前記第1の辺の近傍を支持した後に、前記基板と離間した前記第2の支持具群を前記第1の辺の近傍を支持する位置に移動させる支持具移動手段を備える、ことを特徴とする基板支持装置。
前記支持具移動手段は、前記第1の支持具群を構成する複数の支持具において隣り合う支持具間の距離が他の隣り合う支持具間の距離よりも大きい支持具間に前記第2の支持具群を構成する支持具が配置されるように、前記第2の支持具群を移動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の基板支持装置。
搬送手段によって搬送された基板の第1の辺の近傍を支持する第1の支持具群と、前記第1の支持具群とともに前記第1の辺の近傍を支持する、少なくとも一つの支持具を含む第2の支持具群と、を備える基板支持装置であって、
前記第1の支持具群によって前記第1の辺の近傍を支持した後に、前記基板の第1の辺の近傍を支持する複数の支持具の間で、隣り合う支持具間の距離が等しくなるように、前記第2の支持具群を移動させる支持具移動手段を備える、ことを特徴とする基板支持装置。
搬送手段によって搬送された基板の第1の辺の近傍を支持する第1の支持具群と、前記第1の支持具群とともに前記第1の辺の近傍を支持する、少なくとも一つの支持具を含む第2の支持具群と、を備える基板支持装置であって、
前記第1の支持具群によって前記第1の辺の近傍を支持した後に、前記基板の第1の辺の近傍を支持する複数の支持具が直線上に並ぶように、前記第2の支持具群を移動させる支持具移動手段を備える、ことを特徴とする基板支持装置。
前記第2の支持具群は、前記搬送手段から前記基板を受け取って前記第1の支持具群で前記第1の辺の近傍を支持する際には前記基板と離間している、ことを特徴とする請求項3または4に記載の基板支持装置。
搬送手段によって搬送された基板の第1の辺の近傍を支持する第1の支持具群と、前記第1の支持具群とともに前記第1の辺の近傍を支持する、少なくとも一つの支持具を含む第2の支持具群と、を備える基板支持装置であって、
前記第1の支持具群によって前記第1の辺の近傍を支持した後に、前記基板と接触していない前記第2の支持具群を前記第1の辺の近傍を支持する位置に移動させる支持具移動手段を備える、ことを特徴とする基板支持装置。
前記支持具移動手段は、前記第2の支持具群を重力方向における高さが変わるように移動させる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の基板支持装置。
前記支持具移動手段は、前記第1の支持具群と前記第2の支持具群の重力方向における高さが同じになるように、前記第2の支持具群を移動させる、ことを特徴とする請求項7に記載の基板支持装置。
搬送手段によって搬送された基板の第1の辺の近傍を一部の隣り合う支持具間の距離が他の隣り合う支持具間の距離と異なる第1の支持具群により支持する第1の支持工程と、
前記第1の支持工程の後に、前記第1の支持具群とは別の、少なくとも一つの支持具を含む第2の支持具群を前記基板と離間した位置から前記第1の辺の近傍を支持する位置に移動させる支持具移動工程と、
前記支持具移動工程の後に、前記第1の支持具群と前記第2の支持具群によって前記基板の第1の辺の近傍を支持する第2の支持工程と、
を有する、ことを特徴とする基板支持方法。
前記支持具移動工程は、前記第1の支持具群を構成する複数の支持具において隣り合う支持具間の距離が他の隣り合う支持具間の距離よりも大きい支持具間に前記第2の支持具群を構成する支持具が配置されるように、前記第2の支持具群を移動させる工程である、
ことを特徴とする請求項15に記載の基板支持方法。
前記支持具移動工程は、前記第2の支持具群を前記基板と離間した位置から前記第1の辺の近傍を支持する位置に移動させる工程である、ことを特徴とする請求項17または18に記載の基板支持方法。
前記支持具移動工程は、前記第2の支持具群を、重力方向における高さが変わるように移動させる工程である、ことを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項に記載の基板支持方法。
前記支持具移動工程は、前記第1の支持具群と前記第2の支持具群の重力方向における高さが同じになるように、前記第2の支持具群を移動させる工程である、ことを特徴とする請求項21に記載の基板支持方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
本発明は、基板上に薄膜を形成する成膜装置及びその制御方法に関し、特に、基板の高精度な搬送および位置調整のための技術に関する。本発明は、平行平板の基板の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択でき、また、蒸着材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。
本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。なかでも、有機EL表示装置の製造装置は、基板の大型化あるいは表示パネルの高精細化により基板の搬送精度及び基板とマスクのアライメント精度のさらなる向上が要求されているため、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0016】
<製造装置及び製造プロセス>
図1は、電子デバイスの製造装置の構成の一部を模式的に示す上視図である。
図1の製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mm、厚み約0.5mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルが作製される。
【0017】
電子デバイスの製造装置は、一般に、
図1に示すように、複数の成膜室111、112と、搬送室110とを有する。搬送室110内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット119が設けられている。搬送ロボット119は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造をもつロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
【0018】
各成膜室111、112にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置ともよぶ)が設けられている。搬送ロボット119との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。各成膜室の成膜装置は、成膜対象が有機膜であるか金属膜であるかの違いや蒸着源の違いやマスクの違いなど細かい点で相違する部分はあるものの、基本的な構成(特に基板の搬送やアライメントに関わる構成)はほぼ共通している。以下、各成膜室の成膜装置の共通構成について説明する。
【0019】
<成膜装置>
図2は、成膜装置の構成を模式的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板は水平面(XY平面)と平行となるよう固定されるものとし、このときの基板の短手方向(短辺に平行な方向)をX方向、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向とする。またZ軸まわりの回転角をθで表す。
【0020】
成膜装置は、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200の内部は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。真空チャンバ200の内部には、概略、基板保持ユニット210と、マスク220と、マスク台221と、冷却板230と、蒸着源240が設けられる。基板保持ユニット210は、搬送ロボット119から受け取った基板10を保持・搬送する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。マスク220は、基板10上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、枠状のマスク台221の上に固定されている。成膜時にはマスク220の上に基板10が載置される。したがってマスク220は基板10を載置する載置体としての役割も担う。冷却板230は、成膜時に基板10(のマスク220とは反対側の面)に密着し、基板10の温度上昇を抑えることで有機材料の変質や劣化を抑制する部材である。冷却板230がマグネット板を兼ねていてもよい。マグネット板とは、磁力によってマスク220を引き付けることで、成膜時の基板10とマスク220の密着性を高める部材である。蒸着源240は、蒸着材料、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成される(いずれも不図示)。
【0021】
真空チャンバ200の上(外側)には、基板Zアクチュエータ250、クランプZアク
チュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、Xアクチュエータ(不図示)、Yアクチュエータ(不図示)、θアクチュエータ(不図示)が設けられている。これらのアクチュエータは、例えば、モータとボールねじ、モータとリニアガイドなどで構成される。基板Zアクチュエータ250は、基板保持ユニット210の全体を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段(基板昇降手段)である。クランプZアクチュエータ251は、基板保持ユニット210の挟持機構(後述)を開閉させるための駆動手段である。冷却板Zアクチュエータ252は、冷却板230を昇降させるための駆動手段である。Xアクチュエータ、Yアクチュエータ、θアクチュエータ(以下まとめて「XYθアクチュエータ」と呼ぶ)は基板10のアライメントのための駆動手段である。XYθアクチュエータは、基板保持ユニット210及び冷却板230の全体を、X方向移動、Y方向移動、θ回転させる。なお、本実施形態では、マスク220を固定した状態で基板10のX,Y,θを調整する構成としたが、マスク220の位置を調整し、又は、基板10とマスク220の両者の位置を調整することで、基板10とマスク220のアライメントを行ってもよい。
【0022】
真空チャンバ200の上(外側)には、基板10及びマスク220のアライメントのために、基板10及びマスク220それぞれの位置を測定するカメラ260、261が設けられている。カメラ260、261は、真空チャンバ200に設けられた窓を通して、基板10とマスク220を撮影する。その画像から基板10上のアライメントマーク及びマスク220上のアライメントマークを認識することで、各々のXY位置やXY面内での相対ズレを計測することができる。短時間で高精度なアライメントを実現するために、大まかに位置合わせを行う第1アライメント(「ラフアライメント」とも称す)と、高精度に位置合わせを行う第2アライメント(「ファインアライメント」とも称す)の2段階のアライメントを実施することが好ましい。その場合、低解像だが広視野の第1アライメント用のカメラ260と狭視野だが高解像の第2アライメント用のカメラ261の2種類のカメラを用いるとよい。本実施形態では、基板10及びマスク220それぞれについて、対向する一対の辺の2箇所に付されたアライメントマークを2台の第1アライメント用のカメラ260で測定し、基板10及びマスク220の4隅に付されたアライメントマークを4台の第2アライメント用のカメラ261で測定する。
【0023】
成膜装置は、制御部270を有する。制御部270は、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、XYθアクチュエータ、及びカメラ260、261の制御の他、基板10の搬送及びアライメント、蒸着源の制御、成膜の制御などの機能を有する。制御部270は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部270の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部270が設けられていてもよいし、1つの制御部270が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0024】
なお、基板10の保持・搬送及びアライメントに関わる構成部分(基板保持ユニット210、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、XYθアクチュエータ、カメラ260、261、制御部270など)は、「基板載置装置」、「基板挟持装置」、「基板搬送装置」などとも呼ばれる。
【0025】
<基板保持ユニット>
図3を参照して基板保持ユニット210の構成を説明する。
図3は基板保持ユニット210の斜視図である。
【0026】
基板保持ユニット210は、挟持機構によって基板10の周縁部を挟持することにより、基板10を保持・搬送する手段である。具体的には、基板保持ユニット210は、基板10の4辺それぞれを下から支持する複数の支持具300が設けられた支持枠体301と、長辺部の支持具300との間で基板10を挟み込む複数の押圧具302が設けられたクランプ部材303と、短辺部の支持具300を移動させるための支持具移動機構304と、を有する。一対の支持具300と押圧具302とで1つの挟持機構が構成される。
図3の例では、基板10の短辺に沿って3つの支持具300が配置され、長辺に沿って6つの挟持機構(支持具300と押圧具302のペア)が配置されており、長辺2辺を挟持する構成となっている。ただし挟持機構の構成は
図3の例に限られず、処理対象となる基板のサイズや形状あるいは成膜条件などに合わせて、挟持機構の数や配置を適宜変更してもよい。なお、支持具300は「受け爪」又は「フィンガ」とも呼ばれ、押圧具302は「クランプ」とも呼ばれる。
【0027】
支持具移動機構304は、短辺部の支持具300を上下方向(Z方向)および短辺に沿った方向(X方向)に移動させるための機構である。支持具移動機構304によって、一部の支持具をその他の支持具とは独立して移動可能である。なお、図面手前側の短辺の支持具に対しても支持具移動機構304が設けられるが、図面の見やすさのため図示を省略している。また、
図3では、短辺部の中央の支持具300のみに対して支持具移動機構304が設けられているが、中央以外の支持具300に対して支持具移動機構304が設けられてもかまわない。
【0028】
搬送ロボット119から基板保持ユニット210への基板10の受け渡しは例えば次のように行われる。まず、クランプZアクチュエータ251によりクランプ部材303を上昇させ、押圧具302を支持具300から離間させることで、挟持機構を解放状態にする。搬送ロボット119によって支持具300と押圧具302の間に基板10を導入した後、基板10を支持具300によって支持する。この状態で基板Zアクチュエータ250により基板保持ユニット210を駆動することで、基板10を昇降(Z方向移動)させることができる。なお、クランプZアクチュエータ251は基板保持ユニット210と共に上昇/下降するため、基板保持ユニット210が昇降しても挟持機構の状態は変化しない。
【0029】
なお、
図3の符号101は、基板10の4隅に付された第2アライメント用のアライメントマークを示し、符号102は、基板10の短辺中央に付された第1アライメント用のアライメントマークを示している。
【0030】
<実施例1>
図4(a)〜4(d)は、基板保持ユニット210が基板10を搬送ロボットから受け取ってマスク(載置体)220の上に載置する際における、支持具300による基板10の支持方法を説明する図である。
【0031】
図4(a)は、基板保持ユニット210および基板10を下側から見た図である。図に示すように、基板保持ユニット210の支持具は、基板10の周縁部103(支持可能なエリア)を支持する。上述したように、基板10の長辺は支持具300と押圧具302とによって挟持される一方、基板10の短辺は支持具300によって支持されるのみである。ここで、短辺側の一部の支持具(図では支持具403)以外の支持具は、同じ高さに位置する。この高さのことを、以下では単に基準高さと称する。
【0032】
図4(b)〜4(d)は、基板10の中央部(
図4(c))と短辺部(
図4(b)(d))における断面図である。基板10の中央部においては、
図4(c)に示すように中央が自重によって下向きに撓む。一方、基板10の短辺部においては、
図4(b)(d)に示すように、中央の支持具403は基準高さよりも下方向に待避されている。したがって
、支持具402と404の間では、基板10は自重によって下向きに撓む。短辺部におけるその他の支持具の間での基板10の撓みは、支持具402と404の間での撓みよりも小さくなる。
【0033】
このように、本実施例では、短辺部において、基板10の自重を利用して基板10を積極的に撓ませている。これにより、基板10ごとにクセの相違があったとしても、基板保持ユニット210が基板10を保持する際の、基板10の撓みの様相(撓み方)を一定にすることができる。
【0034】
なお、図では中央の支持具403は基板10を支持していないが、支持具403は基板10を支持してもよい。
【0035】
以下、
図5〜
図9を参照して、基板保持ユニット210が基板10を搬送ロボットから受け取ってマスク(載置体)220の上に載置するまでの一連の処理について、説明する。
【0036】
図5(a)は、搬送ロボット119のロボットハンド501に保持された基板10を、基板保持ユニット210に受け渡す際の状態を示す。なお、ロボットハンド501に保持された基板10は自重により中央が下に撓んでいる。そこで、基板10のこの形状を維持したまま基板保持ユニット210が基板10を受け取れるように、短辺側中央の支持具403は、基板10と接触しない位置まで下方向に待避される。このように、撓みを維持したままロボットハンド501と基板保持ユニット210の間で基板10の受け渡しを行うことで、受け渡し時(受け取り時)の基板のズレを緩和できる。
【0037】
図5(b)は、基板10の受け渡しが完了し、ロボットハンド501が抜き取られた状態を示す。
【0038】
受け渡しの完了後、短辺側中央の支持具403は、基板10と接触するまで支持具移動機構304によって移動させられる。
図5(c)は移動後の状態を示す図である。移動後の支持具403の高さは、あらかじめ定めておいてもよいし、センサによって計測して決定してもよい。基板10は支持具403によって中央部が持ち上げられることによって、下方向への撓みが緩和し全ての支持具401〜405によって支持されるようになる。
【0039】
次に、
図6(a)に示すように、基板10の長辺部が挟持された上で、基板10をマスク220とは接触しない位置まで下降する。基板10の長辺部の挟持は、クランプ部材303を下降させて押圧具302を所定の押圧力で支持具300に押し当てることによって行われる。基板10の下降は、基板Zアクチュエータ250によって基板保持ユニット210を駆動することによって行われる。なお、基板保持ユニット210の高さは固定したまま、マスク台221を載置体昇降手段によって昇降させることによって、基板10をマスク220に載置してもよい。
【0040】
なお、ここでは、基板10の長辺部を挟持した状態で基板10を下降させているが、基板10を挟持することなく下降させてもかまわない。
【0041】
図6(b)は、第1アライメントを示す図である。第1アライメントは、大まかな位置合わせを行うアライメント処理であり、「ラフアライメント」とも称される。第1アライメントでは、カメラ260によって基板10に設けられた基板アライメントマーク102とマスク220に設けられたマスクアライメントマーク(不図示)を認識し、各々のXY位置やXY面内での相対的なズレを計測し、位置合わせを行う。第1アライメントに用いるカメラ260は、大まかな位置合わせができるように、低解像だが広視野なカメラであ
る。位置合わせの際には、基板10(基板保持ユニット210)の位置を調整してもよいし、マスク220の位置を調整してもよいし、基板10とマスク220の両者の位置を調整してもよい。
【0042】
第1アライメント処理が完了したら、
図6(c)に示すように基板10をさらに下降させて、基板10をマスク220上に載置する。ここで、基板10をマスク220上に載置した状態とは、基板10とマスク220が接触している状態を意味する。すなわち、基板10をマスク220上に載置した状態とは、基板10がマスク220と接触開始した時点、基板10とマスク220の接触面積が接触開始時点よりも増えた時点、および基板10がマスク220に完全に載置された時点のいずれの時点の状態も含む。
【0043】
短辺部中央の支持具403は、その他の支持具よりも低い高さ(基準高さよりも低い高さ)に位置しているが、基板10をマスク220に載置する際に、
図7(a)に示すように、支持具移動機構304によってその他の支持具と同じ高さ(基準高さ)に移動させられる。これにより、基板10をマスク220に載置する際の歪みを軽減できる。支持具403の移動は、基板10とマスク220が接触する前に行われてもよいし、基板10とマスク220が接触した後に行われてもよい。
【0044】
図7(b)から
図8(c)は第2アライメントを説明する図である。第2アライメントは、高精度な位置合わせを行うアライメント処理であり、「ファインアライメント」とも称される。まず、
図7(b)に示すように、カメラ261によって基板10に設けられた基板アライメントマーク101とマスク220に設けられたマスクアライメントマーク(不図示)を認識し、各々のXY位置やXY面内での相対ズレを計測する。カメラ261は、高精度な位置合わせができるように、狭視野だが高解像なカメラである。計測されたズレが閾値を超える場合には、位置合わせ処理が行われる。以下では、計測されたズレが閾値を超える場合について説明する。
【0045】
計測されたズレが閾値を超える場合には、
図7(c)に示すように、基板Zアクチュエータ250を駆動して、基板10を上昇させてマスク220から離す。この際、支持具403の高さは維持したまま、すなわち他の支持具と同じ高さとしてもよいし、支持具移動機構304によって支持具移動機構304の高さを調整してもよい。
【0046】
図8(a)では、カメラ261によって計測されたズレに基づいてXYθアクチュエータを駆動して、位置合わせを行う。位置合わせの際には、基板10(基板保持ユニット210)の位置を調整してもよいし、マスク220の位置を調整してもよいし、基板10とマスク220の両者の位置を調整してもよい。
【0047】
その後、
図8(b)に示すように再び基板10を下降させて、基板10をマスク220上に載置する。そして、
図8(c)に示すように、カメラ261によって基板10およびマスク220のアライメントマークの撮影を行い、ズレを計測する。計測されたズレが閾値を超える場合には、上述した位置合わせ処理が繰り返される。
【0048】
ズレがしきい値以内になった場合には、
図9(a)に示すように、冷却板Zアクチュエータを駆動して、冷却板230を下降させて基板10に密着させる。本実施形態では、冷却板230はマグネット板を兼ねており、磁力によってマスク220を引き付けることで、基板10とマスク20の密着性を高める。
【0049】
冷却板(マグネット板)の下降が完了したら、
図9(b)に示すように、クランプ部材303を上昇させて、基板10の長辺部の挟持を解除(アンクランプ)する。その後、
図9(c)に示すように、基板保持ユニット210を下降させる。
【0050】
以上の工程により、マスク220上への基板10の載置処理が完了し、成膜装置による成膜処理(蒸着処理)が行われる。
【0051】
本実施形態によれば、基板保持ユニット210によって基板10を保持する際に、短辺側の支持具の一部をその他の支持具よりも低くに位置させることで、基板10を自重によって下向きに撓ませる。これにより、基板10のクセの違いによらず、基板10の撓み方を同一とすることができる。したがって、基板10をマスク220に載置する際に載置位置が基板ごとにバラ付くことを抑制できる。これにより、アライメントを高精度かつ短時間で完了することができる。さらには、基板への成膜処理を高精度かつ短時間に完了することができる。
【0052】
本実施例において、短辺部の中央にある1つの支持具403についてのみ高さを調整するものとして説明したが、短辺部の中央にある複数の支持具の高さを調整してもよい。この際、これら複数の支持具の高さは同一である必要はなく、異なっていてかまわない。
【0053】
<実施例2>
本実施例では、基板10に対して実施例1とは異なる撓み方を与える。
図10(a)〜10(d)は、基板保持ユニット210が基板10を搬送ロボットから受け取ってマスク(載置体)220の上に載置する際における、支持具300による基板10の支持方法を説明する図である。
【0054】
図10(b)(d)に示すように、本実施例においては、基板10の短辺部において、端部の支持具401,405が基準高さより下方向に待避されている。したがって、基板10は端部側が支持されず、支持具402および404よりも端部においてはその他の箇所よりも大きく撓む。また、基板10の端部は自重により下方向に撓み、基板10は全体として上に凸な撓み方となる。
【0055】
基板10の撓み方は実施例1とは異なるが、本実施例においても、基板10に対して一律の撓みを与え、基板ごとの撓み方の差異をなくすことができる。すなわち、実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0056】
なお、
図10では、支持具401,405が基板10と接触していないが、例えば、基板10の受け取り後に支持具401,405を上昇させて基板10と接触させるようにしてもよい。
【0057】
<実施例3>
本実施例では、基板10に対して実施例2と同様の撓み方を与えるが、その方法が異なる。
図11(a)〜11(d)は、基板保持ユニット210が基板10を搬送ロボットから受け取ってマスク(載置体)220の上に載置する際における、支持具300による基板10の支持方法を説明する図である。
【0058】
図11(b)(d)に示すように、本実施例においては、基板10の短辺部において、中央の支持具403がその他の支持具の高さ(基準高さ)よりも上方向に移動されている。したがって、基板10の端部中央が機械的に持ち上げられ上に凸な撓み方となる。
【0059】
本実施例においても、基板10に対して一律の撓みを与え、基板ごとの撓み方の差異をなくすことができる。すなわち、実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0060】
<実施例4>
本実施例では、基板10に対して実施例2,3と同様の異なる撓み方を与えるが、その方法が異なる。
図12(a)〜12(d)は、基板保持ユニット210が基板10を搬送ロボットから受け取ってマスク(載置体)220の上に載置する際における、支持具300による基板10の支持方法を説明する図である。
【0061】
図12(b)(d)に示すように、本実施例においては、基板10の短辺部において、支持具の横方向(X方向)に移動させて、支持具を短辺の中央付近に集中させる。したがって、基板10は端部側の支持が弱くなり、基板10の端部は自重により下方向に撓み、基板10は全体として上に凸な撓み方となる。
【0062】
本実施例においては、支持具移動機構304は、横方向(X方向)に支持具を移動可能に構成される必要がある。本実施例における支持具移動機構304は、横方向のみに支持具を移動可能であってもよいし、横方向および上下方向(Z方向)の療法に支持具を移動可能であってもよい。
【0063】
本実施例においても、基板10に対して一律の撓みを与え、基板ごとの撓み方の差異をなくすことができる。すなわち、実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0064】
<その他の実施例>
支持具の配置は、基板10に対して一律の撓み方を与えられるような配置である限り、特に限定されない。例えば、一部の支持具間の距離(3次元距離)が他の支持具間の距離と異なるようにすることで、基板10に対して一律の撓み方を与えてもよい。採用可能な支持具の配置を、一部の支持具間での基板10の撓みが、その他の支持具間での撓みよりも大きくなるような配置と特定することもできる。あるいは、採用可能な支持具の配置を、支持具間の間隔が非等間隔な配置と特定することもできる。また、採用可能な支持具の配置を、複数の支持具を均等に配置した場合の仮想的な位置を基準位置としたときに、少なくとも1つの支持具が前記基準位置と異なる位置にあるような配置と特定することもできる。
【0065】
このような支持具の配置として、上記で説明した例以外に、
図13(a)(b)に示すような配置も採用可能である。
図13(a)(b)のいずれも、複数の支持具が同一の高さにあるが、中央での支持具間距離が、端部での支持具間距離よりも大きい配置例である。
図13(a)と
図13(b)の相違点は、中央での支持具間距離が異なる点であるが、この距離に応じて基板10の撓み方を変えられる。
【0066】
<変形例>
上記の実施例の説明において、支持具の移動は省略してもかまわない。したがって、基板保持ユニット210は、支持具移動機構304を備えなくてもよい。例えば、実施例1の変形例として、中央の支持具403がその他の支持具よりも低い位置に固定されていてもよい。支持具の間隔が異なれば、基板10を保持したときの撓み方を同一とすることができ、基板10をマスク220に載置する際の載置位置のばらつきを抑制できる。
【0067】
上記の実施例の説明において、対向する短辺の両方において支持具の間隔を調整しているが、一辺のみにおいて支持具の間隔を調整してもかまわない。また、上記の実施例では、長辺を挟持し短辺を支持のみする例を説明しているが、逆に短辺を挟持し長辺を支持のみしてもよい。この場合、支持のみをする少なくとも一辺において支持具の間隔を調整すればよい。また、挟持を行う辺においても支持具の間隔を調整してもかまわない。
【0068】
上記の実施例の説明において、基板10の長辺の挟持のタイミングは適宜変更してかまわない。例えば、基板10をマスク体への載置は、基板10の挟持を解除した状態で行っ
てもかまわない。あるいは、基板10がマスク体へ載置されている状態で、基板の10のつかみ直し(挟持の解除および再挟持)を行ってもよい。
【0069】
また、第1アライメント(ラフアライメント)と第2アライメント(ファインアライメント9の2段階のアライメントを実行しているが、第1アライメントを省略して第2アライメントのみを行ってもよい。また、冷却板による密着後(例えば、
図9(c))に再度アライメント処理を実行してもよい。
【0070】
<電子デバイスの製造方法の実施例>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0071】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図14(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図14(b)は1画素の断面構造を表している。
【0072】
図14(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0073】
図14(b)は、
図14(a)のA−B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応する所定パターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0074】
有機EL層を発光素子単位に形成するためには、マスクを介して成膜する方法が用いられる。近年、表示装置の高精細化が進んでおり、有機EL層の形成には開口の幅が数十μmのマスクが用いられる。このようなマスクを用いた成膜の場合、マスクが成膜中に蒸発源から受熱して熱変形するとマスクと基板との位置がずれてしまい、基板上に形成される薄膜のパターンが所望の位置からずれて形成されてしまう。そこで、これら有機EL層の成膜には本発明にかかる成膜装置(真空蒸着装置)が好適に用いられる。
【0075】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0076】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成さ
れた基板63を準備する。
【0077】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0078】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0079】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0080】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0081】
電子輸送層67までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0082】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0083】
このようにして得られた有機EL表示装置は、発光素子ごとに発光層が精度よく形成される。従って、上記製造方法を用いれば、発光層の位置ずれに起因する有機EL表示装置の不良の発生を抑制することができる。
【0084】
なお、上述した支持具間隔制御や挟持力制御は、第1アライメントの前、第1アライメントと第2アライメントの間、第2アライメントの後、いずれの場面においても適用できる。