(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも表層、中間層、裏層の3層からなる積層フィルムであって、かつ該積層フィルムの少なくとも中間層が、エチレンブロックとα−オレフィンブロックとを有するブロック共重合体を含んでなり、かつ該α−オレフィンの炭素数が4以上20以下であり、かつ前記積層フィルムの前記表層及び前記裏層のいずれもがポリオレフィン系樹脂組成物からなり、全層中に占める前記ブロック共重合体の質量割合が50質量%以上99質量%以下であり、かつ前記表層、前記裏層の前記ポリオレフィン系樹脂組成物の121℃における引張貯蔵弾性率が1MPa以上80MPa以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
【背景技術】
【0002】
医療分野で輸血に使用される血液は、通常供血者の献血により得られた血液を、各成分に分離して保存後、輸血に使用される。例えば、全血を採血バッグに入れて遠心分離器にかけ、低密度(低比重)成分と高密度(高比重)の赤血球成分とに分離し、採血バッグを加圧することにより上澄み成分である血漿が、チューブを介して血液バッグに移送されるとともに、分画された各成分は、血漿製剤と赤血球製剤として利用される。ここで、血漿の採取に使用される血液バッグ(血漿バッグ)は、予め高温滅菌処理されている。
血液バッグに分画採取された血漿製剤は、凍結保存され、使用時には恒温槽や融解装置を用いて融解させた後に使用される。
【0003】
このようなことから、血液バッグには凍結処理温度に耐え得る低温耐衝撃性と、内容物を入れずに高温滅菌した際の耐ブロッキング性、耐熱性、衛生性が要求される。また血液バッグは、通常、所定の形状に切断した枚葉形態のフィルム同士の周縁部を熱融着して袋状に成型することにより製袋されるため、製袋時に内側となる層には、製袋のためのヒートシール性も必要となる。
【0004】
従来、血液バッグを構成する材料としては、柔軟性、血液保存性に優れる為に一般的には軟質塩化ビニル樹脂組成物が用いられている(非特許文献1)。しかし、軟質塩化ビニル樹脂組成物から構成される血液バッグは、低温衝撃性に乏しく、低温下での慢性的な割れが問題となっており、さらに、可塑剤の溶出や廃棄燃焼時の塩化水素・ダイオキシンの発生などの問題もある為、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂組成物を使用するものが望まれている。
しかし、ポリエチレン系樹脂組成物を主として使用したものは柔軟性、耐寒性に優れるが、耐熱性に乏しく(特許文献1)、耐熱性の向上には電子線架橋が必要となり装置の維持に多大なエネルギーとコストを要するという問題がある(特許文献2)。
他方、ポリプロピレン系樹脂を主として使用したものは耐熱性に優れるが、柔軟性、耐寒性に乏しいという問題がある(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【0018】
<ポリオレフィン系樹脂積層フィルム>
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルム(以下、単に「積層フィルム」ということがある。)は、少なくとも表層、中間層、裏層の3層から構成されることが重要である。3層以上であれば中間層の柔軟性と、表裏層の耐熱性との両方を具備することができる為、好ましい。また、層間密着性やさらなる機能性賦与の観点から、4層以上の構成にしても良い。上限については特に制限は無いが、生産設備が複雑になり生産性が悪化する可能性がある為、20層以下が好ましい。
【0019】
<表裏層>
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、表裏層のいずれもがポリオレフィン系樹脂組成物からなることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含む組成物である。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ―4―メチルペンテン、或いはこれらの共重合体などが挙げられるが、溶出性の観点でポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレン−プロピレン)共重合体が好ましい。各層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物に占めるポリオレフィン系樹脂の割合としては、層間密着性の観点から、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0020】
表裏層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物の121℃における引張貯蔵弾性率は、1MPa以上80MPa以下であることが好ましく、1.5MPa以上75MPa以下であることがより好ましく、2MPa以上70MPaであることが更に好ましい。121℃における引張貯蔵弾性率が1MPa以上であることで、医療用包装体とした際の加熱滅菌時における変形を抑制するという効果がある。一方で80MPa以下であることで、医療用包装体に好適な柔軟性を付与できる。
【0021】
表裏層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物の121℃における引張貯蔵弾性率は、JIS K 7244−4に基づき測定され、測定周波数1Hzにおける121℃の引張貯蔵弾性率として求められる。
【0022】
表裏層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で必要に応じて滑剤、防曇剤、酸化防止剤、安定剤、アンチブロッキング剤などの添加剤が添加されていても良い。
【0023】
表裏層のそれぞれの層厚さとしては、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上80μm以下がより好ましく、3μm以上70μm以下が更に好ましい。1μm以上であることで、本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの耐熱性を維持するという効果がある。100μm以下であることで、本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムに柔軟性を賦与するという効果がある。それぞれの層厚さは、SEMによる断面観察により測定することができる。
【0024】
<エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(bEOP)>
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは少なくとも表層、中間層、裏層の3層からなり、かつ該積層フィルムの少なくとも中間層に、エチレンブロックとα−オレフィンブロックとを有するブロック共重合体(以下、bEOPと表記することもある。)を含んでなることが重要である。積層フィルムの少なくとも中間層が前述のブロック共重合体を含むことで、フィルムに良好な柔軟性と耐熱性が賦与される。
【0025】
中間層に含まれるbEOPの含有量は、特に限定されないが、中間層を構成する樹脂組成物100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。50質量%以上であることで、積層フィルムに良好な柔軟性と耐熱性が賦与されるという効果がある。一方で上限としては特に制限は無く100質量%である。
なお、bEOPが、積層フィルムの中間層のみに含まれる場合が最も好ましい。
【0026】
積層フィルムの中間層は、最低限1層あれば良く、複数存在していても構わない。中間層の厚さ(複数存在する形態においては、総厚さ)としては、30μm以上500μm以下が好ましく、40μm以上400μm以下がより好ましく、50μm以上300μm以下が更に好ましい。中間層の厚さが30μm以上であることで本発明の積層フィルムに柔軟性を賦与するという効果がある。一方、500μm以下であることで、本発明の積層フィルムに耐熱性を賦与するという効果がある。中間層の厚さは、SEMによる断面観察により測定することができる。
【0027】
積層フィルムの表層及び/又は裏層にbEOPが含まれる形態において、bEOPの含有量は、各層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。表層及び/又は裏層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物に含まれるbEOPの含有量が30質量%を超えるとフィルムを巻き取る際、フィルム同士がブロッキングしやすくなり、製造プロセスで不具合を生じる可能性がある。
【0028】
本発明に用いられるbEOPにおいて、α−オレフィンの炭素数が4以上であることが重要であり、6以上であることが好ましく、8以上であることがさらに好ましい。
α−オレフィンの炭素数が4以上であることで、bEOPの柔軟性と耐熱性とが向上し、フィルムとした際の柔軟性が賦与されるという効果がある。上限としては、共重合体の製造が困難になる為、20以下が好ましい。
このようなbEOPとしては、それぞれエチレンとα−オレフィンとを混合し、重合触媒を使用して重合する以外に、ダウケミカル社「INFUSE」として市販されており、入手することができる。
【0029】
(共重合比率)
本発明に用いられるbEOPにおいて、α−オレフィンの共重合比率は、30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。30質量%以上であることで、フィルムにした際の柔軟性を発現するという効果がある。50質量%以下であることで、フィルムにした際の耐熱性を発現するという効果がある。より好ましくは32質量%以上48質量%以下、更に好ましくは34質量%以上46質量%以下である。
【0030】
なお、本発明に用いられるbEOPの共重合比率は、
13C−NMRにより次の条件で測定した。
試料約200mgを外径10mmのNMR試料管に量りとり、重オルトジクロロベンゼンと重パラジクロロベンゼンとの質量比7/1の混合溶液2.7mLを加えて130℃で溶解した。Variant社製Unity400を用い、周波数100MHz、フリップ角900°、パルス繰り返し時間20s、積算回数3200回、温度130℃にて測定し、エチレン主鎖のシグナルを30.0ppmとして
13C−NMRスペクトルを帰属し、α−オレフィンの含有量を求めた。
【0031】
<その他の層>
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、本発明の主旨を逸脱しない範囲で前述の3層以外に、更なる層を積層していても良い。更なる層の例としては、層間強度を向上する為の接着層、フィルムの透過性を阻害する為のバリア層、フィルムの視認性を向上する為の着色層などが挙げられる。更なる層は、どの順番で積層していても構わない。
【0032】
本発明のポリオレフィン樹脂系積層フィルムの各層には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で必要に応じて滑剤、防曇剤、酸化防止剤、安定剤などの添加剤が添加されていても良い。
【0033】
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K 6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0034】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、121℃における熱収縮率が1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。該熱収縮率が1%以下であることで、医療用包装体として加工する際の加工不良を低減できるという効果がある。一方で下限としては特に制限は無いが0%以上であることが好ましい。熱収縮率は後述の方法により測定される。
【0035】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの耐寒性は、脆化温度を測定することにより定量化できる。脆化温度は後述の方法により測定される。本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの脆化温度は、−55℃以下が好ましく、−60℃以下がより好ましい。脆化温度が−55℃以下であることで医療用包装体として冷凍保存した際の破損を低減するという効果がある。下限としては特に制限は無いが−200℃が好ましい。
【0036】
<ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法>
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、Tダイ法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法、ラミネーション法などの製法により製造することができる。これらの中でも衛生性の観点でTダイ法や水冷インフレーション法が好ましい。
【0037】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造において、押出成形における押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜300℃が好ましく、190〜250℃がより好ましく、200〜220℃が更に好ましい。180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性が向上することから好ましい。一方、300℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる積層フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0039】
<測定及び評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
【0040】
(1)ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの厚さ
1/1000mmのダイアルゲージにて、サーミスタ成分が塗工された部分の面内を不特定に5箇所測定し、その平均値をポリオレフィン系樹脂積層フィルムの厚さとした。
【0041】
(2)表裏層の厚さ
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、その断面SEMを測定することで、表層・裏層のそれぞれの厚さを測定した。なお、本実施例では便宜上、キャスト面側の表裏層を裏層、非キャスト面側の表裏層を表層とした。
【0042】
(3)中間層の厚さ
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、その断面SEMを測定することで、中間層の厚さを測定した。
【0043】
(4)耐寒性
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルム及び、既存のポリ塩化ビニル製フィルムの耐寒性を下記の基準で評価した。
なお、脆化温度はJIS K 7216に準拠して測定した。
◎:フィルムの脆化温度が−60℃を下回る。
○:フィルムの脆化温度が−60℃以上、−55℃以下である。
△:フィルムの脆化温度が−55℃以上、−50℃を下回る。
×:フィルムの脆化温度が−50℃を超える。
【0044】
(5)耐熱性
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルム及び、既存のポリ塩化ビニル製フィルムを50mm×100mmの大きさに切り出し、正方20mmピッチの金網の上に乗せ、121℃の熱処理オーブンで1時間熱処理を行なった後、フィルム外観を下記の基準で評価し、耐熱性を評価した。
◎:フィルムに外観上の変形がない。
○:フィルムに外観上の変形がわずかにみられる。
△:金網のピッチに沿ってフィルムに変形痕が残る。
×:フィルムが明らかに形状を維持していない。
【0045】
(6)熱収縮
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルム及び、既存のポリ塩化ビニル製フィルムを長手方向、幅方向にそれぞれ10mm×200mmの短冊状に切り出し、121℃の熱処理オーブンで1時間熱処理を行なった後に長手方向、幅方向それぞれの短冊の熱収縮率を下記の計算式にて測定し、相加平均したものをフィルムの熱収縮率とした。
熱収縮率[%] = {(熱処理前の長さ)−(熱処理後の長さ)}/(熱処理前の長さ)×100
【0046】
(7)捲回性
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを直径3インチのプラスチック製コアに巻取り、その捲回性を以下基準で判断した。
○:フィルム同士が癒着せず、容易に巻き解くことができる。
×:フィルム同士が癒着して、容易に巻き解くことができない。あるいは巻き解けたとしてもフィルムに変形が残る。
【0047】
<実施例1>
層構造がA/B/Aとなる2種3層構造のTダイに2台の三菱重工株式会社製の32mm単軸押出機を接続し(それぞれA押出機、B押出機と呼ぶ)、A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaの直鎖状低密度ポリエチレン「FY−13(東ソー社製)」(比重0.950)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)をそれぞれ厚さ比A:B:A=1:8:1で、200℃で押出し、40℃の冷却ロールにより急冷し巻き取ることにより、2種3層構造の、幅400mm、厚さ300μmの実施例1に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0048】
<実施例2>
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が59MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学株式会社製)」(比重0.890)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)と直鎖状低密度ポリエチレン「FY−12(東ソー社製)」(比重0.915)を質量比7:3で混合したものをそれぞれ押出したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0049】
<実施例3>
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が59MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学株式会社製)」(比重0.890)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)をそれぞれ押出したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0050】
<実施例4>
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が59MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学株式会社製)」(比重0.890)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が48質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9107(ダウケミカル社製)」(比重0.866)をそれぞれ押出したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0051】
<実施例5>
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaの直鎖状低密度ポリエチレン「FY−13(東ソー社製)」(比重0.950)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)をそれぞれ厚さ比A:B:A=1:3:1で押出したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0052】
<比較例1>
A押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)を押出し、B押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaの直鎖状低密度ポリエチレン「FY−13(東ソー株式会社製)」(比重0.950)をそれぞれ押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る積層フィルムを得たが、巻き付けによりブロッキングが生じ、生産上問題が生じた。評価結果を表1に示す。
【0053】
<比較例2>
B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンランダム共重合体(rEOP)「AFFINITY PL1880G(ダウケミカル社製)」(比重0.902)を押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0054】
<比較例3>
B押出機からαオレフィン(炭素数3)の共重合比が36質量%のエチレン−プロピレンブロック共重合体「プライムTPO T310E(プライムポリマー社製)」(比重0.890)を押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0055】
<比較例4>
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学社製)」(比重0.890)を、B押出機からもポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学社製)」(比重0.890)をそれぞれ押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
<比較例5>
既存のポリ塩化ビニル製フィルムの評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1〜5では、優れた耐寒性と耐熱性とを有し、医療用包装体に好適に用いることができる積層フィルムが得られた。
一方で、比較例1では、表裏層と中間層とが逆であり、常温弾性率の低いエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)が外層にある為、捲回性に問題が生じた。比較例2では、エチレン−αオレフィンランダム共重合体(rEOP)を用いた為、耐熱性が十分でなかった。比較例3では、αオレフィンが炭素数3のポリプロピレンであった為、耐熱性が十分でなかった。比較例4に係る積層フィルムはポリプロピレンのみからなる為、耐寒性が十分でなかった。比較例5に係る既存のポリ塩化ビニル製フィルムは、耐寒性が良くなかった。