(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリウレタン樹脂水分散液に混合する際の前記ラジカル重合性単量体水分散液の25℃における粘度を100mPa・s以上にする、請求項1に記載の複合樹脂水分散液の製造方法。
前記ラジカル重合性単量体水分散液と前記ポリウレタン樹脂水分散液とを混合する際には、前記ラジカル重合性単量体及び前記ポリウレタン樹脂の合計に対してラジカル重合性単量体の割合を10〜80質量%にする、請求項1又は2に記載の複合樹脂水分散液の製造方法。
ラジカル重合性単量体水分散液に含まれる界面活性剤の量を、ラジカル重合性単量体100質量部に対して固形分換算で0.1〜3.5質量部にする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合樹脂水分散液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<複合樹脂水分散液の製造方法>
本発明の一態様の複合樹脂水分散液の製造方法は、ラジカル重合性単量体水分散液とポリウレタン樹脂水分散液とを混合した後、重合開始剤を添加してラジカル重合性単量体を重合する方法である。この製造方法により、ポリウレタン樹脂とラジカル重合性単量体の重合体とが混ざり合った粒子状の複合樹脂を含む水分散液が得られる。
【0008】
(ラジカル重合性単量体水分散液)
本態様において、ラジカル重合性単量体水分散液とは、ラジカル重合性単量体が界面活性剤によって乳化され、水中に分散した分散液である。該ラジカル重合性単量体分散液は、ラジカル重合性単量体と界面活性剤と水とを含む混合液を混合し、ラジカル重合性単量体を乳化処理することによって得られる。
【0009】
[ラジカル重合性単量体]
ラジカル重合性単量体とは、ラジカル重合性基を有する単量体である。
ラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート単量体;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリル酸、メタクリル酸等のラジカル重合性カルボン酸単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有ラジカル重合性単量体;ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート等の末端ヒドロキシ型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体;メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有ラジカル重合性単量体;ダイアセトンアクリルアミド等のカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート等の光安定化作用を有する(メタ)アクリレート;2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレート;2−アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ラジカル重合性単量体;ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等の金属含有ラジカル重合性単量体;(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン等のラジカル重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルにヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルトリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらラジカル重合性単量体は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。
本態様におけるラジカル重合性単量体は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を含むことが好ましく、なかでも、塗膜の柔軟性が向上することから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することがより好ましい。さらに、ポリウレタン樹脂への含浸性が高いこと、重合率を向上させやすいこと、重合中の凝集物を低減させやすいことから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも一種が特に好ましい。
【0010】
ラジカル重合性単量体の量は、ポリウレタン樹脂とラジカル重合性単量体の合計に対して10〜80質量%が好ましい。ラジカル重合性単量体の量が前記範囲であれば、粗大粒子の生成をより抑制できる。また、ラジカル重合性単量体の量が前記範囲であれば、ポリウレタン樹脂が有する強靭性、耐溶剤性、耐摩耗性及び低温乾燥性等の特性と、ラジカル重合性単量体から形成された重合体が有する特性とを兼ね備えた複合樹脂を容易に製造できる。
【0011】
[界面活性剤]
界面活性剤とは、分子内に親水性部位と疎水性部位を有する化合物である。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。また、界面活性剤は、非反応性であってもよいし、反応性であってもよい。
【0012】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ラウリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(例えば第一工業製薬(株):ネオコールSW−C等が挙げられる。)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリル燐酸エステル等の非反応性界面活性剤、およびアルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば三洋化成(株)製:エレミノール(登録商標)JS−2、花王(株)製:ラテムル(登録商標)S−180A、S−180等が挙げられる。)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば、第一工業製薬(株)製:アクアロン(登録商標)HS−10,HS−5,BC−10,BC−5等が挙げられる)、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、第一工業製薬(株)製:ハイテノールNF−13等が挙げられる)、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、日本乳化剤(株)製:ニューコール707SFや第一工業製薬(株)製:ハイテノールNF13等が挙げられる)、α−スルホ−ω−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩(例えば、(株)ADEKA製:アデカリアソープ(登録商標)SE−10,SE−1025A等が挙げられる)、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば、第一工業製薬(株)製:アクアロン(登録商標)KH−10等が挙げられる)、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩(例えば、(株)ADEKA製:アデカリアソープ(登録商標)SR−10,SR−1025等が挙げられる)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩(例えば、花王(株)製:ラテムル(登録商標)PD−104等が挙げられる)等の反応性界面活性剤等が挙げられる。
【0013】
カチオン性界面活性剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等の非反応性界面活性剤等が挙げられる。
【0014】
ノニオン性界面活性としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピルブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非反応性界面活性剤、α−ヒドロ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル))((株)ADEKA製:アデカリアソープER−10,ER−20,ER−30,ER−40)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(第一工業製薬(株)製:アクアロンRN−20,RN−30,RN−50)、ポリオキシアルキルアルケニルエーテル(花王(株)製:ラテムルPD−420,PD−430,PD−450)等の反応性界面活性剤等が挙げられる。
【0015】
上記界面活性剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記界面活性剤のうち、ラジカル重合性単量体を微細に乳化できるという点で、ニューコール707SF、ハイテノールNF−13、ネオコールSW−C、SR−1025等のアニオン性界面活性剤が好ましい。
ポリウレタン樹脂水分散液がアニオン性である場合には、安定性の点から、アニオン性或いはノニオン系界面活性剤を選択することが好ましい。また、ポリウレタン樹脂水分散液がカチオン性である場合には、安定性の点から、カチオン性或いはノニオン性界面活性剤を選択することが好ましい。
【0016】
界面活性剤の使用量は、粗大粒子の生成をより少なくできることから、ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。一方、界面活性剤の使用量は、ポリウレタン樹脂粒子の外でラジカル重合性単量体が乳化重合することを抑制する点で、ラジカル重合性単量体単位100質量部に対して3.5質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。すなわち、界面活性剤の使用量は、ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.1〜3.5質量部が好ましく、0.5〜1.5質量部がより好ましい。
【0017】
[乳化処理]
乳化処理方法としては特に限定されず、機械的力を用いた方法、すなわち外部から強い剪断力を与えることで乳化する方法を適用できる。
液に強い剪断力を与える装置としては、例えば、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサーなどの高速高剪断攪拌機、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー((株)イズミフードマシナリ製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等の高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0018】
乳化処理しポリウレタン樹脂水分散液に混合する際のラジカル重合性単量体水分散液(以下、「乳化処理液」という。)の粘度は、通常50mPa・s以上1000mPa・s以下である。粗大粒子の生成をより少なくできるという点では、乳化処理液の粘度を100mPa・s以上にすることが好ましい。一方、複合樹脂水分散液の製造時の取り扱い性を良くする点では、乳化処理液の粘度を500mPa・s以下にすることが好ましい。すなわち、乳化処理液の粘度は100〜500mPa・sが好ましい。乳化処理液の粘度は、上記装置の処理時間の長さ、剪断力の強さ、界面活性剤の量、水の量を調整することで制御できる。
本態様における粘度は以下の測定方法により測定された値である。
すなわち、測定試料を25℃に調温し、B型粘度計(例えば、東京計器(株)製)を用い、ローター回転数60rpmの条件で測定する。
乳化処理液に含まれるラジカル重合性単量体の比率は、乳化処理液の安定性を高くする点で、30質量%以上80質量%以下が好ましく、50質量%以上75質量%以下がより好ましい。
【0019】
(ポリウレタン樹脂水分散液)
本態様において、ポリウレタン樹脂水分散液とは、ポリウレタン樹脂が水中に分散した分散液である。本態様におけるポリウレタン樹脂とは、多価アルコールと多価イソシアネート化合物とを反応させて得た樹脂のことである。
【0020】
ポリウレタン樹脂を形成する多価アルコールは、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物である。
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の低分子量ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3つ以上のヒドロキシ基を有する低分子量化合物、または、これらの低分子量多価アルコールの少なくとも一種とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどを付加重合させて得られるポリエーテルジオール;低分子量ジオールの少なくとも一種とアジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸を重縮合して得られるポリエステルジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラメチレンエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリエーテルジオール;その他、ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール、ポリアクリル酸エステルジオール等が挙げられる。多価アルコールは1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールは、複合樹脂水分散液から形成される塗膜の柔軟性を高くする点では、ポリエーテルジオールを含むことが好ましい。
【0021】
ポリウレタン樹脂を形成する上記多価イソシアネート化合物は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する有機化合物である。多価イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネート等が挙げられる。
脂肪族の多価イソシアネート化合物の具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式の多価イソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族の多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これら多価イソシアネート化合物は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価イソシアネート化合物のなかでも、得られるポリウレタン樹脂が黄変しにくいことから、脂肪族の多価イソシアネート化合物または脂環式の多価イソシアネート化合物が好ましい。
【0022】
ポリウレタン樹脂の製造方法としては、例えば、ジオキサン等のエーテル中で、前記多価アルコール化合物と前記多価イソシアネート化合物とを、ジブチル錫ジラウレートなどの触媒を用いて反応させる方法が挙げられる。
ポリウレタン樹脂の質量平均分子量は、ラジカル重合性単量体の反応性が向上する点から、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。また、ポリウレタン樹脂の質量平均分子量は、50万以下であることが好ましく、10万以下であることがより好ましい。すなわち、ポリウレタン樹脂の質量平均分子量は、500〜50万であることが好ましく、1000〜10万であることがより好ましい。ここで、「質量平均分子量」は、ポリマー試料を溶媒に溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーを用いて分子量を測定し、ポリスチレン換算によって求めた値である。
【0023】
本態様においては、ポリウレタン樹脂を水に分散させる。ポリウレタン樹脂の水への分散性を高めるために、ポリウレタン樹脂にカルボキシ基およびスルホン酸基の少なくとも一方を導入することが好ましい。特に、ポリウレタン樹脂にスルホン酸基を導入すると、前記ラジカル重合性単量体の重合安定性が向上するため、より好ましい。
また、ポリウレタン樹脂を界面活性剤により乳化しても構わない。
【0024】
ポリウレタン樹脂水分散液中のポリウレタン樹脂の平均粒子径は、最終的に得られる複合樹脂の粒子径が適切なものになり、また、得られる塗膜の物性が向上する観点から、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。また、ポリウレタン樹脂水分散液中のポリウレタン樹脂の平均粒子径は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。すなわち、ポリウレタン樹脂水分散液中のポリウレタン樹脂の平均粒子径は、10〜1000nmであることが好ましく、30〜500nmであることがより好ましく、40〜300nmであることが特に好ましい。
前記平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径分布測定装置(例えば、大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000)を用いて室温下にて測定を行い、キュムラント解析により算出した散乱光強度基準による調和平均粒子径の値である。
【0025】
ポリウレタン樹脂水分散液中のポリウレタン樹脂の含有量は、得られる複合樹脂水分散液の固形分濃度を10〜80質量%の範囲に容易に調整できる点から、10質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。一方、得られる複合樹脂水分散液を塗料として用いた場合に良好な塗装性を発現するという観点から、ポリウレタン樹脂水分散液中のポリウレタン樹脂の含有量は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。すなわち、ポリウレタン樹脂の水分散液中のポリウレタン樹脂の含有量は、10〜70質量%が好ましく、25〜60質量%がより好ましい。
【0026】
上述したようなポリウレタン樹脂の水分散液としては、市販のポリウレタン水性重合体分散液(ポリウレタンディスパージョン:PUD)をそのまま用いることもできる。
具体的には、第一工業製薬(株)製:スーパーフレックス110、スーパーフレックス150、スーパーフレックス210、スーパーフレックス300、スーパーフレックス420、スーパーフレックス460、スーパーフレックス470、スーパーフレックス500M、スーパーフレックス620、スーパーフレックス650、スーパーフレックス740、スーパーフレックス820、スーパーフレックス840、F−8082D、住化コベストロウレタン(株)製:バイヒドロールUH2606、バイヒドロールUH650、バイヒドロールUHXP2648、バイヒドロールUHXP2650、インプラニールDLE、インプラニールDLC−F、インプラニールDLN、インプラニールDLP−R、インプラニールDLS、インプラニールDLU、インプラニールXP2611、インプラニールLPRSC1380、インプラニールLPRSC1537、インプラニールLPRSC1554、インプラニールLPRSC3040、DIC(株)製:ハイドランHW−301、HW−310、HW−311、HW−312B、HW−333、HW−340、HW−350、HW−375、HW−920、HW−930、HW−940、HW−950、HW−970、AP−10、AP−20、ECOS3000、三洋化成工業(株)製:ユーコートUWS−145、パーマリンUA−150、パーマリンUA−200、パーマリンUA−300、パーマリンUA−310、ユーコートUX−320、パーマリンUA−368、パーマリンUA−385、ユーコートUX−2510、日華化学(株)製:ネオステッカー100C、エバファノールHA−107C、エバファノールHA−50C、エバファノールHA−170、エバファノールHA−560、(株)ADEKA製:アデカボンタイターUHX−210、アデカボンタイターUHX−280等を、ポリウレタン樹脂水分散液として使用できる。
ポリウレタン樹脂水分散液は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(ラジカル重合性単量体の重合)
ラジカル重合性単量体を重合する際には、ラジカル重合性単量体水分散液とポリウレタン樹脂水分散液とを混合し、適宜窒素置換等により溶存酸素を低減させた後、重合開始剤を添加する。窒素置換は、ポリウレタン樹脂水分散液の安定性の観点から、室温(25℃)〜95℃の温度条件が好ましい。溶存酸素濃度は3mg/l以下に調整することが好ましく、少ない重合開始剤で速やかに重合できることから、1mg/l以下に調整することがより好ましい。
ラジカル重合性単量体水分散液とポリウレタン樹脂水分散液の混合は、ポリウレタン樹脂水分散液の中にラジカル重合性単量体水分散液を投入して混合してもよいし、ラジカル重合性単量体水分散液の中にポリウレタン樹脂水分散液を投入して混合してもよい。重合性単量体水分散液或いはポリウレタン樹脂水分散液は一括で投入してもよいし滴下により少量ずつ投入してもよい。
重合開始剤は重合性単量体水分散液とポリウレタン樹脂水分散液とを充分に混合してから添加することが好ましい。例えば、得られる複合樹脂の安定性の点で、重合開始剤は重合性単量体水分散液とポリウレタン樹脂水分散液とを混合してから20分経過した後に添加することが好ましく、30分経過した後に添加することがより好ましい。また、粗大粒子を減少させる点では、重合開始剤は、ラジカル重合性単量体水分散液とポリウレタン樹脂水分散液を混合後、300分以内に添加することが好ましく、180分以内に添加することがより好ましい。
重合開始剤を添加する際の温度は、用いる重合開始剤の10時間半減期温度を考慮して決定すればよいが、通常は10〜90℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。レドックス開始剤と組み合わせる場合には、上記範囲よりさらに低い温度で重合開始剤を添加してもよい。
【0028】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)およびその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}およびその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)およびその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類が挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性単量体の総質量に対して0.001〜10質量%であることが好ましい。重合の進行や反応の制御を考慮に入れると、0.005〜10質量%であることがより好ましい。また、最終的に得られる重合体の高分子量化による塗膜硬度、復元力、耐水性、耐溶剤、耐候性の向上の観点から0.005〜1質量%であることが更に好ましい。
【0030】
[還元剤]
ラジカル重合性単量体の重合においては、還元剤を重合開始剤と組み合わせて添加してもよい。
還元剤としては、例えば、10時間半減期温度が70℃以下である2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物、もしくは重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩、イソアスコルビン酸、ロンガリット等を用いることができる。これらの還元剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記重合開始剤と前記還元剤の好ましい組み合わせとしては、重合を進行させやすく、塗膜の耐水性および耐候性が良好になる点から、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類と、硫酸第一鉄、イソアスコルビン酸塩等の組み合わせが好ましい。
【0031】
[分子量調整剤]
ラジカル重合性単量体の重合においては、分子量を調整する目的で、分子量調整剤を添加してもよい。
分子量調整剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
分子量調整剤の使用量は、ラジカル重合性単量体の総質量に対して1質量%以下であることが好ましい。
【0032】
<複合樹脂水分散液>
上記製造方法により、ポリウレタン樹脂とラジカル重合性単量体の重合体とが混ざり合った粒子状の複合樹脂を含む水分散液が得られる。
複合樹脂分散液中の複合樹脂の平均粒子径は、塗膜の成膜性が高くなることから、10〜1000nmであることが好ましく、30〜500nmであることがより好ましく、50〜400nmであることがさらに好ましく、70〜300nmであることが特に好ましい。
前記平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径分布測定装置(例えば、大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000)を用いて室温下にて測定を行い、キュムラント解析により算出した散乱光強度基準による調和平均粒子径の値である。
【0033】
複合樹脂水分散液中の複合樹脂の固形分濃度は、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。複合樹脂水分散液中の固形分濃度が前記範囲内であれば、複合樹脂水分散液を塗料として使用する際の粘度調整及び固形分濃度を容易に調整できる。
複合樹脂水分散液には、必要に応じて塩基性化合物を添加して、複合樹脂水分散液のpHを中性領域〜弱アルカリ性、具体的にはpH6.5〜11.0に調整することが好ましい。pHを前記範囲に調整すれば、得られた複合樹脂水分散液の安定性が向上する。
このような塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン等のアミン系化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリが挙げられる。これらの塩基性化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記塩基性化合物のうち、複合樹脂水分散液の安定性が高くなる点から、アミン系化合物が好ましく、2−ジメチルアミノエタノールがより好ましい。
【0034】
本態様においては、複合樹脂水分散液の製造時にラジカル重合性単量体を乳化してから重合することで粗大粒子の生成を抑制しているため、複合樹脂水分散液中の粗大粒子含有量を少なくすることができる。そのため、本態様の複合樹脂水分散液から形成した塗膜は外観に優れる。また、粗大粒子を除去するための濾過工程を簡略化又は省略できる。
また、本態様の複合樹脂水分散液から形成した塗膜は、ポリウレタン樹脂が有する強靭性、耐溶剤性、耐摩耗性及び低温乾燥性等の特性と、ラジカル重合性単量体から形成された重合体が有する特性とを兼ね備えたものとなる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例における「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0036】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、窒素配管、および滴下ポンプを備えたフラスコに、ポリウレタン樹脂として、ポリエステル系ポリウレタン樹脂水分散液(商品名:インプラニールDLP−R、住化コベストロウレタン(株)製、固形分濃度50%):857部(固形分429部)、脱イオン水:1593部を仕込んだ。
また、ラジカル重合性単量体としてi−ブチルメタクリレート:500部、n−ブチルアクリレート:200部と界面活性剤としてニューコール707SF(商品名、日本乳化剤(株)製、固形分濃度30%):24.5部(固形分7.35部)と脱イオン水:300部を乳化処理して乳化処理液を得た。乳化処理では、ホモミクサーMARKII2.5型(PRIMIX(株)製)を使用し、攪拌条件を2000rpm,3分とした。乳化処理液の25℃における粘度は182mPa・sであった。ここで、粘度は、測定試料を25℃に調温し、B型粘度計(東京計器(株)製)を用い、ローター回転数60rpmの条件で測定した値である。
次いで、乳化処理液を前記フラスコに仕込み、窒素を100ml/minで供給しながらフラスコを40℃に昇温した。窒素を90分間供給した後、重合開始剤として、t−ブチルヒドロパーオキサイド水溶液(商品名;パーブチルH69、日油(株)製、固形分濃度69%):0.2部と、還元剤として、硫酸第一鉄:0.0020部、エチレンジアミン四酢酸(EDTA):0.0027部、イソアスコルビン酸ナトリウム一水和物:0.22部、脱イオン水:1部を添加した。
重合発熱によるピークトップ温度を確認した後、フラスコの内温を75℃に昇温し、1時間保持したのち冷却し、目開き200μmの濾過布を用いて濾過して複合樹脂水分散液を得た。
【0037】
[比較例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、窒素配管および滴下ポンプを備えたフラスコに、ポリウレタン樹脂として、ポリエステル系ポリウレタン樹脂水分散液(商品名:インプラニールDLP−R、住化コベストロウレタン(株)製、固形分濃度50%):857部(固形分429部)、脱イオン水:1750部と界面活性剤としてニューコール707SF(商品名、日本乳化剤(株)製、固形分濃度30%):24.5部(固形分7.35部)を仕込んだ。
また、ラジカル重合性単量体としてi−ブチルメタクリレート:500部、n−ブチルアクリレート:200部の混合物をフラスコに仕込み、窒素を100ml/minで供給しながらフラスコを40℃に昇温した。窒素を90分間供給した後、重合開始剤として、t−ブチルヒドロパーオキサイド水溶液(商品名;パーブチルH69、日油(株)製、固形分濃度69%):0.2部と、還元剤として、硫酸第一鉄:0.0020部、エチレンジアミン四酢酸(EDTA):0.0027部、イソアスコルビン酸ナトリウム一水和物:0.22部、脱イオン水:1部を添加した。
重合発熱によるピークトップ温度を確認した後、フラスコの内温を75℃に昇温し、1時間保持したのち冷却し、目開き200の濾過布を用いて濾過して複合樹脂水分散液を得た。
【0038】
[実施例2〜16]
表1,2に示す通りに、ポリウレタン樹脂水分散液、ラジカル重合性単量体、界面活性剤、ラジカル重合性単量体水分散液の乳化処理条件を変更した以外は、実施例1と同様の方法により複合樹脂水分散液を調製した。
【0039】
[比較例2,3]
表3に示す通りにポリウレタン樹脂水分散液を変更した以外は、比較例1と同様の方法により複合樹脂水分散液を調製した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
表中、下記の表記は、以下の分散液、単量体又は界面活性剤のことである。
・DLP−R:ポリエステル系ポリウレタン樹脂水分散液(商品名:インプラニールDLP−R、住化バイエルウレタン(株)製、固形分濃度50% 平均粒子径230nm)
・DLU:ポリエステル系ポリウレタン樹脂水分散液(商品名:インプラニールDLU、住化バイエルウレタン(株)製、固形分濃度60% 平均粒子径300nm)
・DLE:ポリエーテル系ポリウレタン樹脂(商品名:インプラニールDLE、住化バイエルウレタン(株)製、固形分濃度50% 平均粒子径251nm)
・IBMA:i−ブチルメタクリレート(該モノマーの単独重合体のガラス転移温度48℃)
・nBA:ノルマルブチルアクリレート(該モノマーの単独重合体のガラス転移温度−49℃)
・ニューコール707SF:アニオン性界面活性剤(日本乳化剤(株)製、固形分濃度30%)
・SR−1025:アニオン性反応性界面活性剤((株)ADEKA製、固形分濃度25%)
・ネオコールSW−C:アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、固形分濃度70%)
・ハイテノールNF13:アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、固形分濃度100%)
なお、ポリウレタン樹脂水分散液の平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径分布測定装置(大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000)を用いて室温下にて測定を行い、キュムラント解析により算出した散乱光強度基準による調和平均粒子径の値である。
【0044】
<評価>
各例の複合樹脂水分散液について、下記方法により粗大粒子の生成量を測定した。測定結果を表1〜3に示す。ここで、粗大粒子とは、目開き355μmの濾過布を通過しない粒子のことである。
[粗大粒子の測定方法]
得られた複合樹脂水分散液1000gを直径3cmの濾過布(目開き355μm)で濾過し、次いで、濾過布に捕捉された濾過残渣を純水で洗浄した。洗浄後の濾過布を顕微鏡を用いて観察し、ランダムに選んだ視野中心部にある20目×10目の矩形領域にある200目の領域のうち、粗大粒子に覆われている目の数を数えた。一つの測定サンプル(濾過布)について場所を変えて5領域計測し、粗大粒子に覆われている目の数の平均値を求めた。その平均値を表1に示す。この平均値を粗大粒子の数の指標として、少ない程、複合樹脂水分散液の品質が良いものと判定した。
【0045】
ポリウレタン樹脂水分散液とラジカル重合性単量体水分散液を混合した後にラジカル重合性単量体を重合させた実施例1〜16では、得られた複合樹脂水分散液は粗大粒子が少なく、品質が良好であった。
一方、ポリウレタン樹脂水分散液に乳化していないラジカル重合性単量体を混合した後にラジカル重合性単量体を重合させた比較例1〜3では、得られた複合樹脂水分散液は粗大粒子が多く品質が劣っていた。