特許第6822375号(P6822375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6822375シリコンエピタキシャルウエーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822375
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】シリコンエピタキシャルウエーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20210114BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20210114BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20210114BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20210114BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20210114BHJP
【FI】
   H01L21/324 X
   H01L21/322 Y
   H01L21/26 F
   H01L21/20
   !H01L21/31 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-202984(P2017-202984)
(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公開番号】特開2019-79834(P2019-79834A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】水澤 康
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−044389(JP,A)
【文献】 特開2013−197373(JP,A)
【文献】 特開2003−007634(JP,A)
【文献】 特開平11−150119(JP,A)
【文献】 特開2003−031582(JP,A)
【文献】 特開2000−077418(JP,A)
【文献】 特開2013−089858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/205
H01L 21/26−21/268
H01L 21/31
H01L 21/322−21/326
H01L 21/365
H01L 21/42−21/425
H01L 21/428
H01L 21/469
H01L 21/477−21/479
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンエピタキシャルウエーハの製造方法であって、
シリコン基板を準備する工程と、
前記シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、
形成した前記シリコンエピタキシャル層の表面の自然酸化膜を除去した後に、RTA処理を施す工程と
を有し、
前記シリコンエピタキシャル層を形成する工程において形成するシリコンエピタキシャル層の厚さDを、前記準備したシリコン基板の酸素濃度Aに従って所定の厚さ以上とすることを特徴とするシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項2】
前記形成するシリコンエピタキシャル層の厚さDを、1≧(0.31×A[ppma−JEIDA]+9)/D[μm]の関係を満たすように形成することを特徴とする請求項1に記載のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法。
【請求項3】
前記製造されたシリコンエピタキシャルウエーハは撮像素子用に用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンエピタキシャルウエーハの製造方法及びシリコンエピタキシャルウエーハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路を作製するための基板として、主にCZ(Czochra1ski)法によって作製されたシリコンウエーハが用いられている。近年の最先端撮像素子における不良、特に残像特性不良については、BO欠陥が原因であることが指摘されている。
【0003】
一方で、白傷不良はデバイス活性領域中の金属不純物が原因であることが示唆されている。デバイス活性領域中の金属不純物を低減するためには、基板にゲッタリングサイトを形成し、デバイス活性領域の金属不純物濃度を低減することが有効である。
【0004】
具体的なゲッタリングサイトには、BMD(Bulk Micro Defect)が挙げられる。BMDはデバイス製造における熱処理中に形成されるが、近年のデバイス製造プロセスは低温かつ短時間化しており、BMDの密度は低く、BMDのサイズは小さくなる傾向がある。
【0005】
そこで、デバイス製造プロセス前にBMD形成が促進されることが知られているRTA(Rapid Thermal Annealing)処理を行うことで、ゲッタリング能力を強化することが有効であると考えられる。しかし、RTA処理を行うと表層に酸素が拡散してしまう。
【0006】
撮像素子デバイスでは、ウエーハ表層の酸素関連欠陥(例えばBO欠陥:非特許文献1参照)が発生すると、残像特性不良となる可能性があり、RTA処理時に導入された表層の酸素が特性劣化の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−091342号公報
【特許文献2】特開2005−123241号公報
【特許文献3】特開2013−089858号公報
【特許文献4】特開2013−219300号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】2016年応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集 14p−P6−10、14p−P6−11 「CMOSイメージセンサーの残像現象メカニズムの解明」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
撮像素子デバイスでは、残像特性不良となる酸素関連欠陥を発生させないため、デバイス活性領域である表層に酸素が極めて低いシリコンエピタキシャルウエーハを使用することが望ましい。一方で、金属不純物が原因となる白傷を低減するためには、高いゲッタリング能力を有するウエーハが有効であるが、シリコンエピタキシャルウエーハは、比較的高温のエピタキシャル成長工程で、結晶成長時に形成された基板中のBMDが消滅している。
【0010】
加えて、現状の撮像素子デバイス製造プロセスは、低温、短時間化しており、ゲッタリングサイトであるBMDが形成され難い。
【0011】
そこで、シリコンエピタキシャル成長工程後に、BMD形成を促進することができるようにRTA処理を施したシリコンエピタキシャルウエーハが、残像特性劣化や白傷不良を回避する撮像素子用としてのウエーハには有効であると考えられる。
【0012】
しかし、RTA処理時に、シリコンエピタキシャル層の表層に酸素が内方拡散してしまう問題がある。従って、RTA処理によりBMD形成は促進されて、白傷不良の懸念は低減されるが、酸素が内方拡散した表層はデバイス活性領域であるため表層に発生する酸素関連欠陥により撮像素子デバイスの残像特性不良の原因となってしまう。
【0013】
なお、RTA処理時に酸素が表層に内方拡散してしまう原因は、チャンバー内の空気を任意のガスに置換するためチャンバー内のガス置換時間を十分に延ばしても、内方拡散が検出されることから、チャンバー内の残留酸素ではない。
【0014】
また、デバイス製造プロセス中にシリコン基板からシリコンエピタキシャル層のデバイス活性層へ酸素が拡散することよって、デバイス活性層に酸素関連欠陥が発生し、撮像素子デバイスの残像特性が悪化するという問題もあった。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減することができるシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法及びシリコンエピタキシャルウエーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、シリコンエピタキシャルウエーハの製造方法であって、シリコン基板を準備する工程と、前記シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、形成した前記シリコンエピタキシャル層の表面の自然酸化膜を除去した後に、RTA処理を施す工程とを有し、前記シリコンエピタキシャル層を形成する工程において形成するシリコンエピタキシャル層の厚さDを、前記準備したシリコン基板の酸素濃度Aに従って所定の厚さ以上とすることを特徴とするシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法を提供する。
【0017】
このように、RTA処理前にシリコンエピタキシャル層の表面の自然酸化膜を除去することで、シリコンエピタキシャル層の表層への酸素の内方拡散を抑制することができる。
これにより、BMD形成を促進するRTA処理を行っても、シリコンエピタキシャル層の表層の酸素濃度を低減できるので、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減できるシリコンエピタキシャルウエーハを製造することができる。また、シリコンエピタキシャル層の厚さDを、前記準備したシリコン基板の酸素濃度Aに従って所定の厚さ以上とすることで、デバイス製造プロセス中にシリコン基板からデバイス活性層へ酸素が拡散することを防止することができる。これによりシリコンエピタキシャル層の表層の酸素濃度を低減することができ、撮像素子用に用いられたときに残像特性が悪化することをより効果的に防止することができる。
【0018】
このとき、形成するシリコンエピタキシャル層の厚さDを、1≧(0.31×A[ppma−JEIDA]+9)/D[μm]の関係を満たすように形成することが好ましい。
【0019】
形成するシリコンエピタキシャル層の厚さDを、このような関係を満たすように形成することで、すなわち、シリコンエピタキシャル層厚さは厚く、シリコン基板の酸素濃度は低くすることで、デバイス製造プロセスでシリコン基板からシリコンエピタキシャル層表層に向かって酸素が拡散しても、表層の酸素濃度を低く保つことができる。これにより、撮像素子用に用いられたときに残像特性が悪化することを確実に防止することができる。
【0020】
このとき、製造されたシリコンエピタキシャルウエーハは撮像素子用に用いられることが好ましい。
【0021】
本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法によれば、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減できるシリコンエピタキシャルウエーハを製造することができるので、製造されたシリコンエピタキシャルウエーハを撮像素子用に好適に用いることができる。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明はまた、酸素濃度Aを有するシリコン基板と、前記シリコン基板上に設けられたシリコンエピタキシャル層とを有し、前記シリコンエピタキシャル層の厚さDが、1≧(0.31×A[ppma−JEIDA]+9)/D[μm]の関係を満たすものであり、前記シリコン基板は、BMDが形成されているものであることを特徴とするシリコンエピタキシャルウエーハを提供する。
【0023】
シリコンエピタキシャル層の厚さDが、このような関係を満たすものであることで、デバイス製造プロセス中に基板からデバイス活性層へ酸素が拡散することを防止することができる。これによりシリコンエピタキシャル層の表層の酸素濃度を低減することができ、撮像素子用に用いられたときに残像特性が悪化することを防止することができる。また、シリコン基板にBMDが形成されているものであるので、BMDが白傷不良の原因となる金属不純物のゲッタリングサイトとして機能し、撮像素子用に用いられたときに白傷不良を低減することができる。
【0024】
このとき、シリコンエピタキシャルウエーハは撮像素子用に用いられるものであることが好ましい。
【0025】
本発明のシリコンエピタキシャルウエーハによれば、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減することができるので、このようなシリコンエピタキシャルウエーハを撮像素子用として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法によれば、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減できるシリコンエピタキシャルウエーハを製造することができる。また、本発明のシリコンエピタキシャルウエーハによれば、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法の一実施形態を示すフロー図である。
図2】本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの一実施形態を示す断面図である。
図3】表面酸化膜除去工程有/無の場合のRTA後の深さ方向の酸素濃度プロファイルを示す図である。
図4】各種のシリコンエピタキシャル層厚とシリコン基板酸素濃度サンプルでの撮像素子用デバイス製造プロセス後の残像特性評価結果を示す図である。
図5】残像特性が劣化しない、シリコンエピタキシャル層厚さとシリコン基板酸素濃度の臨界線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述したように、シリコンエピタキシャル成長工程後に、BMD形成を促進することができるようにRTA処理を施したシリコンエピタキシャルウエーハが、残像特性劣化や白傷不良を回避する撮像素子用としてのウエーハには有効であると考えられる。
【0029】
しかし、RTA処理時に、シリコンエピタキシャル層の表層に酸素が内方拡散してしまう問題がある。従って、RTA処理によりBMD形成は促進されて、白傷不良の懸念は低減されるが、酸素が内方拡散した表層はデバイス活性領域であるため表層に発生する酸素関連欠陥により撮像素子デバイスの残像特性不良の原因となってしまう。
【0030】
また、デバイス製造プロセス中にシリコン基板からシリコンエピタキシャル層のデバイス活性層へ酸素が拡散することよって、デバイス活性層に酸素関連欠陥が発生し、撮像素子デバイスの残像特性が悪化するという問題もあった。
【0031】
そこで、本発明者は、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減することができるシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法について鋭意検討を重ねた。
【0032】
その結果、本発明者は、RTA処理時にウエーハ表層に酸素が内方拡散する原因は、表面に存在する自然酸化膜であることを知見し、及びRTA処理前にシリコンエピタキシャル層の表面の自然酸化膜を除去することでシリコンエピタキシャル層の表層への酸素の内方拡散を抑制することができることを見出すとともに、シリコンエピタキシャル層の厚さを、シリコン基板の酸素濃度に従って所定の厚さ以上とすることで、デバイス製造プロセス中にシリコン基板からデバイス活性層へ酸素が拡散することを防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0033】
なお、特許文献1は、シリコンウエーハ表面上の自然酸化膜を除去した後、急速加熱・急速冷却装置を用いて熱処理することを開示しているが、ポリッシュドウエーハのマイクロラフネスの改善を目的としており、エピタキシャルウエーハを対象としたものではない。
【0034】
特許文献2は、急速加熱・急速冷却熱処理を行う前に、ウエーハ表層部に存在するボイド型欠陥の内壁酸化膜を除去することを開示しているが、ボイドの除去を目的としており、エピタキシャル層にはボイド欠陥は存在しないので、この場合もエピタキシャルウエーハを対象としたものではない。
【0035】
これに対し、本発明ではシリコンエピタキシャルウエーハ表面の自然酸化膜を除去してからRTA処理を行うことで、酸素の内方拡散を防止しながらゲッタリング能力を付与することを特徴としている。
特に撮像素子用に用いた場合に、表面からの酸素の内方拡散を防止できるので、残像特性を劣化させる原因となる酸素関連欠陥(例えばBO欠陥)の構成因子である酸素を低減させることができる。
【0036】
一方、特許文献3、4では、基板の酸素濃度の影響を考慮したエピタキシャル層厚さの設計方法を検討しているが、エピタキシャル層の表面からの酸素の内方拡散や基板のゲッタリングサイトとして機能するBMDは考慮されていないので、撮像素子デバイス製造プロセス後の残像特性や白傷不良の面では十分なものとは言えない。
【0037】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
まず、本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法の一実施形態を示すフロー図である。
【0039】
まず、シリコン基板を準備する(図1のS1参照)。
具体的には、酸素濃度Aを有するシリコン基板を準備する。シリコン基板は、例えば、CZ法により形成された単結晶シリコンインゴットからウエーハ状に切り出したものを用いることができる。
【0040】
次に、シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成する(図1のS2参照)。
具体的には、図1のS1で準備したシリコン基板上に、シリコン基板の酸素濃度Aに従って所定の厚さ以上の厚さDのシリコンエピタキシャル層を形成する。シリコンエピタキシャル層の形成は、例えば、既存のエピタキシャル成長装置を用いて行うことができる。
シリコンエピタキシャル層の厚さDを、準備したシリコン基板の酸素濃度Aに従って所定の厚さ以上とすることで、デバイス製造プロセス中にシリコン基板からデバイス活性層へ酸素が拡散することを防止することができる。これによりシリコンエピタキシャル層の表層酸素濃度を低減することができ、撮像素子用に用いられたときに残像特性が悪化することを防止することができる。
【0041】
次に、形成したシリコンエピタキシャル層の表面の自然酸化膜を除去し(図1のS3参照)、その後、RTA処理を施す(図1のS4参照)。RTA処理を行うことにより、白傷不良の原因となる金属不純物のゲッタリングサイトとして機能するBMD形成を促進することができ、撮像素子用に用いられたときに白傷不良を低減できるシリコンエピタキシャルウエーハを製造することができる。また、RTA処理前にシリコンエピタキシャル層の表面の自然酸化膜を除去することで、シリコンエピタキシャル層の表層への酸素の内方拡散を抑制することができ、これにより、BMD形成を促進するRTA処理を行っても、シリコンエピタキシャル層の表層の酸素濃度を低減できるので、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減できるシリコンエピタキシャルウエーハを製造することができる。
自然酸化膜を除去する方法としては、例えば、フッ酸水溶液へ浸漬する方法が挙げられるがこれに限定されない。RTA処理は、例えば、既存のランプアニール装置を用いて行うことができる。
【0042】
シリコンエピタキシャル層の形成において、形成するシリコンエピタキシャル層の厚さDを、1≧(0.31×A[ppma−JEIDA]+9)/D[μm]の関係を満たすように形成することが好ましい。この式は、後述のように、実験的に求められたものである。
形成するシリコンエピタキシャル層の厚さDを、このような関係を満たすように形成することで、すなわち、シリコンエピタキシャル層厚さは厚く、シリコン基板の酸素濃度は低くすることで、デバイス製造プロセスでシリコン基板からシリコンエピタキシャル層表層に向かって酸素が拡散しても、表層の酸素濃度を低く保つことができる。これにより、撮像素子用に用いられたときに残像特性が悪化することを確実に防止することができる。また、上記関係を満たせばよいので、不必要に厚いエピタキシャル層を形成しなくても済むし、必要以上に低酸素濃度のシリコン基板を準備せずとも済む指標になる。
【0043】
上記のように製造されたシリコンエピタキシャルウエーハは撮像素子用に用いられることが好ましい。
本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの製造方法によれば、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減できるシリコンエピタキシャルウエーハを製造することができるので、製造されたシリコンエピタキシャルウエーハを撮像素子用に好適に用いることができる。
【0044】
次に、本発明のシリコンエピタキシャルウエーハについて図2を参照しながら説明する。図2は、本発明のシリコンエピタキシャルウエーハの一実施形態を示す断面図である。
【0045】
図2のシリコンエピタキシャルウエーハ10は、酸素濃度Aを有するシリコン基板11と、シリコン基板11上に設けられたシリコンエピタキシャル層12とを有している。
ここで、シリコンエピタキシャル層12の厚さDは、1≧(0.31×A[ppma−JEIDA]+9)/D[μm]の関係を満たしているものである。シリコンエピタキシャル層12の厚さDが、このような関係を満たすことで、デバイス製造プロセス中に基板からデバイス活性層へ酸素が拡散することを防止することができる。これによりシリコンエピタキシャル層の表層の酸素濃度を低減することができ、撮像素子用に用いられたときに残像特性が悪化することを防止することができる。
また、シリコン基板11は、BMDが形成されているものであるので、BMDが白傷不良の原因となる金属不純物のゲッタリングサイトとして機能し、シリコンエピタキシャルウエーハが撮像素子用に用いられたときに白傷不良を低減することができる。
【0046】
上記のシリコンエピタキシャルウエーハは撮像素子用に用いられるものであることが好ましい。
本発明のシリコンエピタキシャルウエーハによれば、撮像素子用に用いられたときに残像特性劣化や白傷不良を低減することができるので、このようなシリコンエピタキシャルウエーハを撮像素子用に好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実験例、実施例、及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(実験例1)
n型エピタキシャル層の厚さ10μm、抵抗率10Ω・cmの直径200mmのn/n−シリコンエピタキシャルウエーハ(シリコン基板の酸素農濃度は10ppma−JEIDA)を表面自然酸化膜を除去せずに、窒素雰囲気でRTA処理(1100℃/10sec)を施した。その後、シリコンエピタキシャルウエーハ表層の酸素濃度の深さ方向分布をSIMSで評価した。図3にSIMS分析の結果を示す。図3からわかるように、窒素ガス雰囲気にも関わらず、表層に酸素が内方拡散していることが判明した。シリコンエピタキシャルウエーハが炉内に投入されてから、窒素ガス(流量:5SLM)で置換を60秒行っており、チャンバー内の体積を考慮すると、置換時間は十分である。
【0049】
次に、上記と同様のシリコンエピタキシャルウエーハの表面自然酸化膜を除去した後に窒素雰囲気でRTA処理(1100℃/10sec)を施した。自然酸化膜は、HF水溶液に浸漬することで除去した。同様にSIMSで表層の酸素濃度プロファイルを測定した。図3にSIMS分析の結果を示す。図3からわかるように、表層の表面側の酸素濃度は低減していた。この結果から、RTA処理中にウエーハ表層に酸素が内方拡散する原因は、表面の自然酸化膜であることが判明した。
【0050】
(実施例1)
シリコン基板酸素濃度1〜20ppma(n型、抵抗率10Ω・cm)、シリコンエピタキシャル層の厚さが1〜20μmの直径200mmのn型シリコンエピタキシャルウエーハについて、表面の自然酸化膜をHF水溶液に浸漬して除去した後に、窒素雰囲気で1100℃、10secのRTA処理を施し、その後、撮像素子デバイスを模したプロセス熱処理を施した後に残像特性を評価した。
【0051】
その結果、各種エピタキシャル層厚さと基板酸素濃度での残像特性は図4のようになった。図4において、×印は残像特性が劣化することを表し、○印は残像特性が劣化しないことを表す。
また、図4の結果から、残像特性が悪化しないシリコンエピタキシャル層厚さとシリコン基板酸素濃度の関係を得た。
【0052】
(比較例1)
実施例1と同様にして、シリコンエピタキシャルウエーハを作製した。ただし、RTA処理前に自然酸化膜の除去を行わなかった。比較例1についても、実施例1と同様な評価を行った。
【0053】
表面の自然酸化膜を除去しなかった比較例1では、残像特性はシリコン基板酸素濃度やシリコンエピタキシャル層の厚さによらず劣化した。この理由は、RTA処理時に内方拡散した酸素が酸素関連欠陥を形成したためである。
【0054】
図5に、自然酸化膜除去後にRTA処理を行ったものであって、残像特性が劣化しないシリコンエピタキシャル層の厚さとシリコン基板酸素濃度の臨界線を示す。図中の○印が、残像特性が劣化しない条件で、図中の×印が残像特性が劣化した条件である。その臨界線は、シリコンエピタキシャル層厚をD、シリコン基板酸素濃度をAとすると、D[μm]=0.31×A[ppma−JEIDA]+9となる。すなわち、シリコンエピタキシャル層厚Dが、1≧(0.31×A[ppma−JEIDA]+9)/D[μm]という関係を満たせば、残像特性が劣化しない条件となる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
10…シリコンエピタキシャルウエーハ、 11…シリコン基板、
12…シリコンエピタキシャル層。
図1
図2
図3
図4
図5