(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対のアーム部と、一対の前記アーム部の基端部を互いに連結する連結部と、一対の前記アーム部の長手方向に沿って移動自在に具備してある締付リングとを有し、前記締付リングが前記アーム部の先端側に位置し、前記クリップの先端部が体内組織を把持した状態で体内に留置されたクリップを、体外からの操作により取り外すクリップ取外装置であって、
シースと、
前記シースに対して軸方向移動自在に前記シースに挿通してある駆動ワイヤと、
前記駆動ワイヤの遠位端側に設けてある取外装置本体と、を有し、
前記取外装置本体は、前記シースの遠位端部に引き込まれる状態では相互に近接するように閉じ、前記シースの遠位端部から飛び出した状態では、相互に引き離されるように開く一対の長手片を備え、
少なくとも一方の前記長手片には、先端側に向けて前記長手片の幅が広くなるように係合テーパ部が形成してあり、当該係合テーパ部は、一対の前記長手片の間に前記クリップの前記アーム部を位置させた状態で一対の前記長手片が前記シースの遠位端部に引き込まれる過程で、前記クリップの前記締付リングに係合して、前記締付リングを前記クリップの基端部方向に移動させるものであることを特徴とするクリップ取外装置。
前記係合テーパ部が位置する前記長手片の内側対向面には、前記長手片の基端部における基端側対向面よりも内側に向けて隆起している隆起対向面が形成してある請求項1に記載のクリップ取外装置。
前記隆起テーパ面が、前記係合テーパ部よりも基端側に位置する前記長手片の基端部と前記係合テーパ部との境界、または前記境界よりも前記長手片に沿って基端側に位置する請求項3に記載のクリップ取外装置。
前記隆起対向面よりも前記長手片に沿って先端側には、前記隆起対向面の隆起方向に対して反対側に凹んでいる凹状対向面が形成してある請求項2〜4のいずれかに記載のクリップ取外装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、体内に留置されたクリップを体外からの操作により、容易に取り外すことができるクリップ取外装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るクリップ取外装置は、
一対のアーム部と、一対の前記アーム部の基端部を互いに連結する連結部と、一対の前記アーム部の長手方向に沿って移動自在に具備してある締付リングとを有し、前記締付リングが前記アーム部の先端側に位置し、前記クリップの先端部が体内組織を把持した状態で体内に留置されたクリップを、体外からの操作により取り外すクリップ取外装置であって、
シースと、
前記シースに対して軸方向移動自在に前記シースに挿通してある駆動ワイヤと、
前記駆動ワイヤの遠位端側に設けてある取外装置本体と、を有し、
前記取外装置本体は、前記シースの遠位端部に引き込まれる状態では相互に近接するように閉じ、前記シースの遠位端部から飛び出した状態では、相互に引き離されるように開く一対の長手片を備え、
少なくとも一方の前記長手片には、先端側に向けて前記長手片の幅が広くなるように係合テーパ部が形成してあり、当該係合テーパ部は、一対の前記長手片の間に前記クリップの前記アーム部を位置させた状態で一対の前記長手片が前記シースの遠位端部に引き込まれる過程で、前記クリップの前記締付リングに係合して、前記締付リングを前記クリップの基端部方向に移動させるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るクリップ取外装置を用いて、体内に留置されたクリップを体外からの操作により取り外すためには、まず、体内組織を把持しているクリップの横に、シースの遠位端部を近づけてから、体外にあるクリップ取外装置の近位端側での操作によってシースに対して駆動ワイヤを押し込むことによって、取外装置本体をシースから押し出し、一対の長手片の先端部を開かせる。そして、開かせた長手片の間で、クリップの締付リングよりも体内組織側に位置するアーム部を挟み込む位置に、取外装置本体をシースと共に移動させる。
【0010】
その状態で、シースの遠位端部の内部に、一対の長手片を引き込めば、これらの長手片の先端側は、相互に近づく方向に移動する。それと共に、長手片の長手方向に沿った所定の移動位置で、クリップの締付リングの体内組織側(下側/体内組織に近い側)端部が係合テーパ部に係合する。係合テーパ部は、長手片が先端側に向けて幅が広くなるように形成してあり、長手片がシースの遠位端部に引き込まれる過程で、クリップの締付リングの下側に係合して、締付リングをクリップの基端部方向に移動させる。
【0011】
その結果、締付リングは、クリップのアーム部に沿って基端部側に移動し、クリップのアーム部の先端部は、相互に開き、アーム部の先端部で挟んでいた体内組織からクリップが外れる。これにより、クリップによる体内組織の把持を解除させることができる。
【0012】
したがって、本発明のクリップ取外装置では、従来技術とは異なり、非常に小さい締付リング自体を保持する必要がなく、体内組織を把持しているクリップの横からクリップの締付リングの体内組織側に位置する一対のアーム部を挟み込むのみでよい。このため、その操作は容易であり、クリップの取外作業を短時間で行うことができるようになる。なお、取外装置本体の長手片でクリップのアーム部を挟み込む際に、向きを調整してアーム部が相互に閉じる方向に力が加わるようにすれば、締付リングによるアーム部の締め付けが緩むので、締付リングとアーム部との間に生じていた摩擦力が大幅に緩和される。そのため、係合テーパ部に沿った締付リングの移動がより容易になり、体内組織の把持の解除がより容易になる。
【0013】
前記係合テーパ部が位置する前記長手片の内側対向面には、前記長手片の基端部における基端側対向面よりも内側に向けて隆起している隆起対向面が形成してあってもよい。隆起対向面は、一対の長手片の少なくとも一方に形成してあればよいが、両方の長手片に形成してあることがさらに好ましい。隆起対向面同士が向き合うことで、これらの間に挟まれているクリップの一対のアーム部に相互に閉じる方向の力を加えやすくなり、締付リングの締め付けを緩めやすくなるので、係合テーパ部に沿って締付リングを移動させやすくなる。なお、このような作用は、隆起対向面を、一方の長手片に形成することでも得られる。
【0014】
前記基端側対向面と前記隆起対向面との境界部には、隆起テーパ面が形成してあってもよい。このように構成することで、一対のアーム部を一対の長手片に挟んだ状態で、これらの長手片をシースの遠位端部の内部に引き込む動作がスムーズになる。
【0015】
前記隆起テーパ面が、前記係合テーパ部よりも基端側に位置する前記長手片の基端部と前記係合テーパ部との境界に位置してもよいし、または前記境界よりも前記長手片に沿って基端側に位置してもよい。あるいは、係合テーパ部が形成してある長手片の内側対向面の途中に位置してもよい。
【0016】
好ましくは、前記隆起対向面よりも前記長手片に沿って先端側には、前記隆起対向面の隆起方向に対して反対側に凹んでいる凹状対向面が形成してある。凹状対向面は、一対の長手片の少なくとも一方に形成してあればよいが、両方の長手片に形成してあることがさらに好ましい。凹状対向面同士が向き合うことで、これらの間に挟まれているクリップの一対のアーム部同士の間隔は広がることになる。そのため、長手片がシースの遠位端部に引き込まれる過程において、隆起対向面によってアーム部に相互に閉じる方向の力を加えつつ、係合テーパ部によりアーム部の基端部側に移動させられた締付リングは、長手片との係合によって基端部側に移動させられた状態が保たれたままで、凹状対向面の存在によってアーム部同士の間隔が広がることとなり、締付リングが重力によって再び先端側に移動してしまうことを防止できる。したがって、体内組織の把持を解除したクリップを長手片から解放する際に、重力によって締付リングが先端側に移動してしまって再びクリップが閉じてしまう現象を防止できる。なお、このような作用は、凹状対向面を、一方の長手片に形成することでも得られる。
【0017】
少なくとも一方の長手片の先端部に、幅方向の両側にそれぞれ係合テーパ部が形成してあってもよい。幅方向の両側に位置する係合テーパ部の内の一方は、締付リングの体内組織側端部に係合して締付リングをアーム部の基端部に戻すように移動し、他方は、体内組織の表面に沿って移動し、体内組織の表面に対して長手片の先端部を持ち上げるように機能する。その結果、係合テーパ部が締付リングの体内組織側端部に係合して締付リングをアーム部の基端部に戻すように移動させる機能を増大させることができる。また、長手片の先端部において幅方向の両側にそれぞれ係合テーパ部が形成してあれば、いずれの係合テーパ部を締付リングに係合させてもよいため、係合テーパ部と締付リングとの位置合わせが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るクリップ取外装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
〔医療用クリップ〕
まず、クリップ取外装置の取り外しの対象物としての内視鏡用クリップ(医療用クリップ)について、
図5および
図6を参照して説明する。なお、以下では、アーム部として板状に形成されたアーム板部を有するクリップについての説明とするが、クリップ取外装置の取り外しの対象物としての内視鏡用クリップは、かかる板状のものに限られず、棒状(円柱状、角柱状等)のアーム部を有するものであってもよい。
【0021】
クリップ1は、一対のアーム板部(アーム部)11,12および略U字形状に折り曲げられた連結板部13を備えて構成されている。連結板部13には一対のアーム板部11,12を開閉させる締付リング14がスライド可能に外嵌されている。
【0022】
一対のアーム板部11,12は、外力が作用しない状態で先端部に向かって相互間距離が広くなるように(互いにその先端に行くに従って略V字状に開くように(開脚して))配置されている。アーム板部11の基端部の一端(基端)は連結板部13の一端に、アーム板部12の基端部の一端(基端)は連結板部13の他端にそれぞれ一体的に接続されている。
【0023】
各アーム板部11,12の先端部には、爪部11a,12aがそれぞれ一体的に設けられている。爪部11a,12aは、アーム板部11,12の先端において、内側(即ち、閉じ方向)を指向して折り曲げられることにより形成されている。各爪部11a,12aは、その先端の中間部分に凹陥する切欠部(不図示)を有していていもよい。
【0024】
内視鏡用クリップ1を構成する連結板部13と、一対のアーム板部11,12と、一対の爪部11a,12aとは、一枚の板材を折り曲げ成形することにより形成されることが可能である。内視鏡用クリップ1を構成する板材の板厚は、特に限定されないが、好ましくは0.10〜0.30mmである。板材としては、弾性を有する金属板が好ましく、たとえばステンレス鋼板が用いられる。
【0025】
締付リング14は、略円筒状のリング部材から構成されている。但し、締付リング14は、線材をコイル状に巻回してなるスプリングで構成されてもよい。締付リング14は、その内側の案内孔に、連結板部13が挿通され、連結板部13の外周とアーム板部11,12の外周との間を軸方向に移動(スライド)可能に装着(外嵌)されている。
図6に示すように、締付リング14が、連結板部13に外嵌された位置(解除位置)からアーム板部11,12に外嵌された位置(保持位置)にスライドされた場合に、締付リング14の内部(案内孔)に一対のアーム板部11,12の基端部が引き込まれ、これらのアーム板部11,12を閉脚、即ちアーム板部11,12のそれぞれを互いに近接させるようになっている。
【0026】
図5に示すように、締付リング14がクリップ1の基端側寄り(連結板部13)に配置された状態では、アーム板部11,12は自己の弾性により開いた(開脚した)状態になっている。必要に応じて、
図6に示すように、締付リング14をクリップ1の先端側寄りの位置に移動(スライド)させることにより、アーム板部11,12を徐々に閉じることができる。そして、締付リング14をアーム板部11,12の基端部まで移動させることにより、アーム板部11,12を閉じた(閉脚した)状態に維持することができる。
【0027】
このような内視鏡用クリップ1は、締付リング14が連結板部13に配置されてアーム板部11,12が開いた状態で、内視鏡3の処置具案内管31に通されるクリップ装置16の遠位端に取り付けられる。そして、内視鏡3の処置具案内管31を経て、例えば、病変部切除によって形成された欠損部が存在する箇所等の処置すべき体内組織4まで導かれる。その後、クリップ装置16の近位端に設けられた操作部からの操作により、締付リング14をアーム板部11,12の基端部までスライドさせてアーム板部11,12を閉じる。これによって、
図6に示すように、アーム板部11および12の先端部が、病変部切除により形成された体内組織(粘膜等)4の欠損部4aを挟み込んで把持することにより欠損部4aが縫縮され、その状態でクリップ装置16から外されて体内に留置される。
【0028】
たとえばこのようにして体内に留置されたクリップ1を取り外す必要が生じた場合にクリップ取外装置(クリップリムーバ)が用いられる。
【0029】
〔クリップ取外装置〕
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態に係るクリップ取外装置について、
図1〜
図11を参照して説明する。クリップ取外装置2は、シース22と、シース22に対して軸方向移動自在にシース22に挿通してある駆動ワイヤ23と、駆動ワイヤ23の遠位端側に設けてある取外装置本体21と、を有する。シース22の近位端部には、シース側ロック部材26とベース側ロック部材25とにより、ベース部27が連結してある。
【0030】
ベース部27には、スライダ部28がスライド可能に取り付けられており、駆動ワイヤ23の近位端は、シース側ロック部材26およびベース側ロック部材25のそれぞれの貫通孔を通過して、スライダ部28まで至っており、ロックねじ29を介して、スライダ部28に解除可能に固定されるようになっている。
【0031】
ベース部27に対してスライダ部28を遠位端側にスライドさせることにより、駆動ワイヤ23がシース22に対して遠位端側に移動し、駆動ワイヤ23の遠位端側に設けられた取外装置本体21がシース22の遠位端部22aから押し出され、取外装置本体21の一対の長手片21aが開くように構成してある。これと反対に、ベース部27に対してスライダ部28を近位端側にスライドさせることにより、駆動ワイヤ23の遠位端側に設けられた取外装置本体21がシース22の遠位端部22aの内部に引き込まれ、一対の長手片21aが閉じるようになっている。
【0032】
図3に示すように、駆動ワイヤ23の遠位端は取外装置本体21の基部折り返し片21bに連結してある。
図1に示すスライダ部28をベース部27に対して進退移動させることで、駆動ワイヤ23がシース22の内部を軸方向に移動する。その結果、
図3に示すシース22の遠位端部22aから、取外装置本体21の一対の長手片21aを飛び出させたり、引き込ませたりすることができるようになっている。なお、本実施形態では、
図3に示すように、駆動ワイヤ23の遠位端にリング状の部材を接続し、そのリングに取外装置本体21を挿通させることにより、駆動ワイヤ23と取外装置本体21とを連結させているが、連結方法は特に限定されず、例えば、溶接等の接合手段によって単に直接連結させてもよい。
【0033】
シース22はチューブ状の部材である。シース22は可撓性を有するものであることが望ましく、シース22として樹脂等からなる単純なチューブを用いてもよいが、本実施形態ではコイルチューブを用いている。コイルチューブとしては、金属(ステンレス鋼等)等からなる長尺平板を螺旋状に巻回してなる平線コイルチューブを用いることができる。また、本実施形態では、シース22を構成するコイルチューブの遠位端側に、コイルチューブと実質的に同じ内径および外径を有する、金属(ステンレス鋼等)パイプを接続して、シース22の遠位端部22aを構成している。シース22の遠位端部22aを金属パイプで構成することにより、この遠位端部22aに一対の長手片21aを引き込んだ際に、長手片21aが弾性によって互いに離れる方向に開こうとする力に抗って、長手片21aをより確実に閉じることができる。但し、必ずしも、シース22の遠位端部22aを金属パイプで構成する必要はなく、例えば、シース22全体をコイルチューブで構成してもよい。
【0034】
また、シース22として、丸線コイルチューブまたは内面平コイルチューブを用いてもよいし、ワイヤチューブを用いてもよい。ワイヤチューブは、たとえば金属(ステンレス鋼等)等からなる複数本のワイヤー(ケーブル)を中空となるように螺旋状に撚ってなる中空撚り線からなるチューブである。
【0035】
駆動ワイヤ23は可撓性を有するワイヤからなり、本実施形態ではワイヤロープを用いている。ワイヤロープは、たとえば金属(ステンレス鋼等)等からなる複数本のワイヤ(ケーブル)を螺旋状にねじってなる撚り線からなるロープである。ただし、駆動ワイヤ23としては、他のワイヤを用いてもよく、例えばワイヤチューブを用いてもよい。また、駆動ワイヤ23を、単一の線材で構成してもよい。
【0036】
図1および
図2に示すように、駆動ワイヤ23は、シース22に対して軸方向に沿って移動自在にシース22に挿通されている。
図3に示すように、駆動ワイヤ23の先端(遠位端)に基部折り返し片21bが接続された取外装置本体21は、一対の長手片21aを一体的に有する。各長手片21aの先端には、各長手片21aの一部としての先端片21cが一体的に形成してある。基部折り返し片21bにより一体化してある一対の長手片21aは、例えばステンレス鋼板等の細長い弾性板片を折り曲げ成形することにより形成することができるが、例えばステンレス鋼棒等の細長い弾性棒材を折り曲げ成形して成形してもよい。あるいは、基部折り返し片21bにより一体化してある一対の長手片21aは、射出成形により、弾性を有する合成樹脂等で構成してもよい。
【0037】
一対の長手片21aは、基部から先端に向けて、相互間の距離が広くなるような形状を有し、外力が作用しない状態で、一対の長手片21aの先端部相互間の開閉方向Rに沿った距離は、シース22の遠位端部22aの内径よりも広くなるように構成してある。これらの長手片21aがシース22の遠位端部22aの内部に引き込まれる状態では、長手片21aの先端は、相互に近接するように閉じる。また、長手片21aの先端は、シース22の遠位端部22aから飛び出した状態では、長手片21aおよび基部折り返し片21bの弾性により、
図3に示すように、相互に引き離されるように開くようになっている。
【0038】
図4に示すように、各長手片21aの先端部にある先端片21cの幅(
図3に示す開閉方向Rに略垂直方向の幅)W1は、長手片21aの基端部の幅W0に比較して大きいことが好ましく、W1/W0は、好ましくは1.5〜2.0である。先端片21cの幅W1は、シース22の遠位端部22aの内径よりも大きくてもよく、小さくてもよい。先端片21cの幅W1が、シース22の遠位端部22aの内径よりも小さい場合には、長手片21aの基端部のみでなく、先端片21cも、シース22の遠位端部22aの内部に引き込まれることが可能である。
【0039】
本実施形態では、各長手片21aの基端部から先端片21cに向けて幅が徐々に大きくなるように、係合テーパ部21dが長手片21aの幅方向の上側縁部に形成してある。本実施形態では、各長手片21aの幅方向の下側縁部は、先端片21cも含めて略直線状に形成してあり、係合テーパ部21dは形成されていない。なお、本実施形態では、先端片21cには、係合テーパ部21dの先端部に、幅が一定な幅広部が形成してあるが、係合テーパ部21dのみが形成してあってもよいし、係合テーパ部21dの先端部には、先端に向けて幅が狭くなる曲線状傾斜部21c1(
図4参照)または直線状傾斜部を設けてもよい。
【0040】
図4に示す係合テーパ部21dの長手方向の長さL1は、たとえば長手片21aの基端部の幅W0との関係で決定され、L1/W0は、好ましくは1〜2である。本実施形態では、係合テーパ部21dが形成してある先端片21cには、長手片21aの基端部における基端側対向面21eよりも内側に向けて隆起している隆起対向面21fが形成してある。
【0041】
なお、長手片21aの基端部とは、係合テーパ部21dよりも基端側に位置する長手片21aの部分であり、基部折り返し片21bを含んでも良い。本実施形態では、基部折り返し片21bの幅と長手片21aの基端部の幅W0は略同一であるが、異なっていても良い。さらに、長手片21aの基端部の幅W0は、長手方向に沿って多少異なっていてもよい。たとえば、
図8に示すように、クリップ1の締付リング14と体内組織4の表面との間に挟み込まれる長手片21a,21aの基端部では、その部分に挟み込みやすいように、強度が確保される範囲内で幅W0が小さくなっていてもよい。
【0042】
また、対向面21eおよび21fとは、一対の長手片21aの相互において、相互に向かい合っている面であり、本実施形態では、平面であるが、必ずしも平面ではなく、それぞれ凸状曲面であってもよい。ただし、対向面21fは、対向面21eに比較して、より高く内側(向かい合う方向)に隆起していることが好ましい。
【0043】
対向面21eと対向面21fとの境界には、先端側に向けて徐々に内側に隆起する隆起テーパ面21gが形成してあることが好ましい。本実施形態では、この隆起テーパ面21gは、長手片21aの基端部と先端片21cの係合テーパ部21dとの境界付近に形成してあるが、その境界よりも長手片21aに沿って基端側に形成してもよく、あるいは係合テーパ部21dが形成してある長手片の対向面の途中位置に形成してもよい。好ましくは、この隆起テーパ面21gは、長手片21aの基端部と先端片21cの係合テーパ部21dとの境界付近に形成するか、その境界よりも長手片21aに沿って少し基端側がよい。
【0044】
次に、上述したクリップ取外装置2の使用方法について、
図7〜
図11を参照して説明する。なお、
図7〜
図11において、クリップ1は、締付リング14が連結板部13に位置する解除位置からスライドされて一対のアーム板部11,12の基端部11b,12bに位置する保持位置に設定されている。その状態で、一対のアーム板部11,12の爪部によって、体内組織4(粘膜等)を把持した状態で体内に留置されているものとする。
【0045】
まず、たとえば
図5に示す内視鏡3の処置具案内管31を介して、クリップ装置16の代わりに、
図1に示すクリップ取外装置2のシース22を挿入する。そして
図7に示すように、シース22の遠位端部22aを体内に留置された把持を解除すべきクリップ1の近くに位置させる。すなわち、体内組織4を把持しているクリップ1の横に、シース22の遠位端部22aを近づける。この操作と前後して、
図1に示すクリップ取外装置2のベース部27に対してスライダ部28を遠位端側にスライドして、駆動ワイヤ23の遠位端側に設けられた取外装置本体21をシース22の遠位端部22aから飛び出させ、一対の長手片21aを開く。
【0046】
その前後に、ベース部27およびスライダ部28を一体的に回転して、長手片21aの係合テーパ部21dと、クリップ1との位置関係を調整する。すなわち、クリップ1の連結板部13の方向を体内組織4に対して上方向とすると、長手片21aの係合テーパ部21dが上を向くように、長手片21aをシース22の軸周りに回転させる。
【0047】
その後に、
図8および
図9に示すように、開かせた長手片21a,21aの間で、クリップ1の締付リング14の体内組織4側(下側)に位置するアーム板部11,12を挟み込んで相互に閉じさせる力を加えられる位置に、取外装置本体21をシース22の遠位端部22aと共に移動させる。
【0048】
その状態で、
図9から
図10に示すように、シース22の遠位端部22aの内部に、一対の長手片21a,21aを長手方向Aに引き込めば、これらの長手片21a,21aの先端片21cは、相互に近づく(閉じる)方向に移動する。これにより、長手片21a,21aを締め付けていた締付リング14と長手片21a,21aとの間の摩擦力が大幅に緩和される。そして、それと共に、長手片21a,21aの長手方向Aに沿った所定の移動位置で、クリップ1の締付リング14の下側が係合テーパ部21dに係合する。係合テーパ部21dは、先端側に向けて幅が広くなるように形成してあり、シース22の遠位端部22aに引き込まれる過程で、クリップ1の締付リング14の下側に係合して、締付リング14をクリップ1の基端部方向(上方向/体内組織4から離れる方向)に移動させる。
【0049】
その結果、
図11に示すように、締付リング14は、クリップ1のアーム板部11,12に沿って基端部側に移動し、クリップ1のアーム板部11,12の先端部は、相互に開き、アーム板部11,12の先端部で挟んでいた体内組織4からクリップ1が外れる。これにより、クリップ1による体内組織4の把持を解除させることができる。なお、把持が解除されたクリップ1は、別途体外に取り出される。
【0050】
したがって、
図1に示す本実施形態のクリップ取外装置2では、従来技術とは異なり、非常に小さい締付リング14自体を保持する必要がなく、体内組織4を把持しているクリップ1に対して横からクリップ1の締付リング14の下側に位置するアーム板部11,12相互を挟み込むのみでよい。このため、その操作は容易であり、クリップ1の取外作業を短時間で行うことができるようになる。なお、本実施形態では、クリップ1のアーム板部11,12に相互に閉じさせる力を加えられるように、長手片21a,21aでアーム板部11,12を挟み込んだが、締付リング14の締め付け力を緩めなくとも係合テーパ部21dの作用だけで締付リング14をクリップ1の基端部方向に移動させることができる場合には、アーム板部11,12それぞれの側面が長手片21a,21aに当接するように挟み込んでもよい。
【0051】
さらに本実施形態では、
図3に示すように、係合テーパ部21dが位置する長手片21a,21aの対向面には、長手片21a,21aの基端部における基端側対向面21eよりも内側に向けて隆起している隆起対向面21fが形成してある。隆起対向面21fは、一対の長手片21a,21aの少なくとも一方に形成してあればよいが、本実施形態では両方の長手片21a,21aに形成してある。
【0052】
本実施形態では、隆起対向面21f,21f同士が向き合うことで、これらの間に挟まれているクリップ1の一対のアーム板部11,12に相互に閉じる方向の力を加えやすくなり、締付リング14による締め付けを緩めやすくなるので、
図10に示すように、係合テーパ部21dに沿って締付リング14を移動させやすくなる。なお、このような作用は、
図3に示す隆起対向面21fを、一方の長手片21aに形成することでも得られる。
【0053】
また本実施形態では、
図3に示すように、基端側対向面21eと隆起対向面21fとの境界部には、隆起テーパ面21gが形成してある。このように構成することで、
図9から
図10に示すように、一対のアーム板部11,12を一対の長手片21a,21aに挟んだ状態で、これらの長手片21a,21aをシース22の遠位端部22aの内部に引き込む動作がスムーズになる。
【0054】
第2実施形態
次に、
図12を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態に対して、本実施形態では、取外装置本体121の構成を変更している。なお、上述した第1実施形態と共通する部分の説明は省略すると共に、図面において、共通する構成部分については共通の符号を付してある。
【0055】
本実施形態では、取外装置本体121の一対の長手片21a,21aの先端側に各長手片21a,21aの一部としての先端片121c,121cが形成してあり、先端片121c,121cには、幅方向の両側にそれぞれ係合テーパ部21dが形成してある。幅方向の両側に位置する係合テーパ部21dの内の上側係合テーパ部21dは、
図10に示す締付リング14の下側に係合して締付リング14をアーム板部11,12の基端側(上側)に移動させるように締付リング14に係合する。
【0056】
また、
図12に示す他方の下側係合テーパ部21dは、
図10に示す体内組織4の表面に沿って移動し、体内組織4の表面に対して長手片21aの先端片121cを持ち上げるように機能する。その結果、締付リング14の下側に係合して締付リング14をアーム板部11,12の基端側(上側)に移動させる機能を増大させることができる。また、長手片21aの先端片121cにおいて幅方向の両側にそれぞれ係合テーパ部21dが形成してあれば、いずれの係合テーパ部21dを締付リング14に係合させてもよいため、取外装置本体121の上下を考慮する必要がなくなり、係合テーパ部21dと締付リング14との位置合わせが容易である。
【0057】
なお、本実施形態では、一対の長手片21a,21aにそれぞれ幅方向に一対の係合テーパ部21dが形成してあるが、片方の長手片21aにのみ、幅方向に一対の係合テーパ部21dが形成してあってもよい。
【0058】
第3実施形態
次に、
図13を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。上述した第2実施形態に対して、本実施形態では、取外装置本体221の構成を変更している。なお、上述した第2実施形態と共通する部分の説明は省略すると共に、図面において、共通する構成部分については共通の符号を付してある。
【0059】
本実施形態では、取外装置本体221の長手片21aの先端側に形成してある先端片221cにおいて、隆起対向面21fよりも長手片21a,21aに沿ってさらに先端側には、隆起対向面21fの隆起方向に対して反対側に凹んでいる凹状対向面221hが形成してある。凹状対向面221hは、少なくとも一方の長手片21aに形成してあればよいが、両方の長手片21aに形成してあることがさらに好ましい。
【0060】
凹状対向面221h同士が向き合うことで、これらの間に挟まれている
図10に示すクリップ1の一対のアーム板部11,12同士の間隔は広がることになる。そのため、長手片21aがシース22の遠位端部22aに引き込まれる過程で、隆起対向面21fによってアーム板部11,12を相互に閉じる方向に力をかけながら、係合テーパ部21dにより締付リング14がアーム板部11,12の基端(上側)に移動させられた後、先端片221の縁によって締付リング14が支持された状態が保たれたまま、凹状対向面221hによってアーム板部11,12同士の間隔が広がることになる。アーム板部11,12の間隔を広げる前に、締付リング14の支持を解除してしまうと、重力によって締付リング14が再び先端側に移動してしまって、意図せずにクリップ1が閉じられてしまうおそれがあるが、本実施形態では、この現象を防止できる。なお、このような作用は、
図13に示す凹状対向面221hを、少なくとも一方の長手片21aの先端片221cに形成することでも得られる。
【0061】
また
図13に示す第3実施形態では、隆起テーパ面21gが、長手片21aの基端部と係合テーパ部21dとの境界に位置してあるが、本実施形態では、その境界よりも長手片21aに沿って基端側に位置してある。その場合には、長手片21aがシース22の遠位端部22aに引き込まれる過程(
図9から
図10に至る過程)で、クリップ1のアーム板部11,12は、隆起対向面21fの間に強く挟まれた後に、係合テーパ部21dに締付リング14の下端が係合することになり、締付リング14は、アーム板部11,12に沿って上方向に移動させられる。なお、
図13に示す隆起テーパ面21gは、係合テーパ部21dが位置する長手片21aの対向面の途中に位置してもよい。
【0062】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、各実施形態の構成部分を組み合わせることなどで種々に改変することができる。