【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未来開拓研究プロジェクト 次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電動機(回転電気機械)では、構造上、2つの運転モード(具体的には界磁巻線を通電する運転モードと界磁巻線を通電しない運転モード)しか選択することができないので、回転電気機械の制御を多様化させることが困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、回転電気機械の制御を多様化させることが可能な回転電気機械装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、回転子(10)と、該回転子(10)と所定のエアギャップをおいて対向する固定子(20)とを有する回転電気機械(2)と、制御部(3)とを備え、上記固定子(20)は、円環状に形成された固定子コア(21)と、上記固定子コア(21)に設けられ、その発生磁束方向が径方向と交差するように構成された永久磁石(22)と、上記固定子コア(21)において上記永久磁石(22)よりも上記径方向の外側に設けられ、直流の外側界磁電流(i23)が供給されて該永久磁石(22)を通過する外側界磁磁束(M23)を発生させるように構成された外側界磁巻線(23)と、上記固定子コア(21)において上記永久磁石(22)よりも上記径方向の内側に設けられ、直流の内側界磁電流(i24)が供給されて該永久磁石(22)を通過する内側界磁磁束(M24)を発生させるように構成された内側界磁巻線(24)と、上記固定子コア(21)に設けられ、交流の電機子電流(i25)が供給されて上記回転子(10)を回転させるための回転磁界を発生させるように構成された電機子巻線(25)とを有し、上記制御部(3)は、上記外側界磁電流(i23)と上記内側界磁電流(i24)とを個別に制御するように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0007】
上記第1の態様では、固定子(20)に永久磁石(22)と外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)とを設けて外側界磁巻線(23)に供給される外側界磁電流(i23)と内側界磁巻線(24)に供給される内側界磁電流(i24)とを個別に制御することにより、固定子(20)に永久磁石(22)と1種類の界磁巻線とが設けられている場合よりも、回転電気機械(2)における制御の自由度を向上させることができる。
【0008】
第2の態様は、上記第1の態様において、上記制御部(3)が、上記回転電気機械(2)の運転状態に応じて上記外側界磁電流(i23)と上記内側界磁電流(i24)とを個別に制御するように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0009】
上記第2の態様では、回転電気機械(2)の運転状態に応じて外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを個別に適切に制御することができる。
【0010】
第3の態様は、上記第1または第2の態様において、上記制御部(3)が、上記永久磁石(22)を通過する上記外側界磁磁束(M23)の向きが該永久磁石(22)の磁束方向の逆方向となるように上記外側界磁電流(i23)を制御し、上記内側界磁磁束(M24)が発生しないように上記内側界磁電流(i24)を制御する外側磁界生成制御を行うように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0011】
上記第3の態様では、外側磁界生成制御を行うことにより、外側界磁電流(i23)を制御して外側界磁磁束(M23)を制御することができる。また、外側界磁生成制御では、永久磁石(22)よりも径方向の内側に位置する内側界磁巻線(24)において内側界磁磁束(M24)が発生しないので、永久磁石(22)の磁束(M22)が回転子(10)におけるトルクの発生に寄与しやすくなっている。
【0012】
第4の態様は、上記第3の態様において、上記制御部(3)が、上記回転子(10)の回転トルクが予め定められた回転トルク閾値を下回り且つ該回転子(10)の回転速度が予め定められた回転速度閾値を下回る場合に、上記外側磁界生成制御を行うように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0013】
上記第4の態様では、回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を下回り、且つ、回転子(10)の回転速度が回転速度閾値を下回る場合に、外側磁界生成制御を行うことにより、外側磁界生成制御を効果的に行うことができる。
【0014】
第5の態様は、上記第1または第2の態様において、上記制御部(3)が、上記外側界磁磁束(M23)が発生しないように上記外側界磁電流(i23)を制御し、上記永久磁石(22)を通過する上記内側界磁磁束(M24)の向きが該永久磁石(22)の磁束方向と同方向となるように上記内側界磁電流(i24)を制御する内側磁界生成制御を行うように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0015】
上記第5の態様では、内側磁界生成制御を行うことにより、内側界磁電流(i24)を制御して内側界磁磁束(M24)を制御することができる。内側界磁生成制御では、内側界磁磁束(M24)が永久磁石(22)に対して順磁界として作用するので、永久磁石(22)において内側界磁磁束(M24)による減磁は、発生しない。そのため、内側界磁電流(i24)を広範囲に制御することができる。
【0016】
第6の態様は、上記第5の態様において、上記制御部(3)が、上記回転子(10)の回転トルクが予め定められた回転トルク閾値を上回り且つ上記永久磁石(22)の温度が予め定められた温度閾値を上回る場合に、上記内側磁界生成制御を行うように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0017】
上記第6の態様では、回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を上回り、且つ、永久磁石(22)の温度が温度閾値を上回る場合に、内側磁界生成制御を効果的に行うことができる。
【0018】
第7の態様は、上記第1および第2の態様において、上記制御部(3)が、上記永久磁石(22)を通過する上記外側界磁磁束(M23)の向きが該永久磁石(22)の磁束方向と同方向となるように上記外側界磁電流(i23)を制御し、上記永久磁石(22)を通過する上記内側界磁磁束(M24)の向きが該永久磁石(22)の磁束方向と同方向となるように上記内側界磁電流(i24)を制御する順磁界生成制御を行うように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0019】
上記第7の態様では、順磁界生成制御を行うことにより、外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを制御して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を制御することができる。また、順磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)の両方が永久磁石(22)に対して順磁界として作用するので、永久磁石(22)に順磁界(比較的に大きな順磁界)を印加することができる。
【0020】
第8の態様は、上記第1および第2の態様において、上記制御部(3)が、上記永久磁石(22)を通過する上記外側界磁磁束(M23)の向きが該永久磁石(22)の磁束方向の逆方向となるように上記外側界磁電流(i23)を制御し、上記永久磁石(22)を通過する上記内側界磁磁束(M24)の向きが該永久磁石(22)の磁束方向の逆方向となるように上記内側界磁電流(i24)を制御する逆磁界生成制御を行うように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0021】
上記第8の態様では、逆磁界生成制御において外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを制御して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を制御することができる。また、逆磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)の両方が永久磁石(22)に対して逆磁界として作用するので、永久磁石(22)に逆磁界(比較的に大きな逆磁界)を印加することができる。
【0022】
第9の態様において、上記制御部(3)が、上記回転子(10)の回転トルクが予め定められた回転トルク閾値を下回り且つ該回転子(10)の回転速度が予め定められた回転速度閾値を上回る場合に、上記逆磁界生成制御を行うように構成されていることを特徴とする回転電気機械装置である。
【0023】
上記第9の態様では、回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を下回り、且つ、回転子(10)の回転速度が回転速度閾値を上回る場合に、逆磁界生成制御を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
第1の態様によれば、回転電気機械(2)における制御の自由度を向上させることができるので、回転電気機械(2)の制御を多様化させることができる。
【0025】
第2の態様によれば、回転電気機械(2)の運転状態に応じて外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを個別に適切に制御することができるので、回転電気機械(2)を適切に制御することができる。
【0026】
第3および第4の態様によれば、外側界磁生成制御において外側界磁電流(i23)を制御して外側界磁磁束(M23)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。また、外側界磁生成制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)が回転子(10)におけるトルクの発生に寄与しやすくなっているので、回転電気機械(2)を高効率で運転することができる。
【0027】
第5および第6の態様によれば、内側磁界生成制御において内側界磁電流(i24)を制御して内側界磁磁束(M24)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。また、内側磁界生成制御では、内側界磁電流(i24)を広範囲に制御することができるので、回転子(10)において発生するトルクを広範囲に制御することができる。
【0028】
第7の態様によれば、順磁界生成制御において外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを制御して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。また、順磁界生成制御では、永久磁石(22)に順磁界(比較的に大きな順磁界)を印加することができるので、永久磁石(22)を着磁することができる。
【0029】
第8および第9の態様によれば、逆磁界生成制御において外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを制御して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。また、逆磁界生成制御では、永久磁石(22)に逆磁界(比較的に大きな逆磁界)を印加することができるので、永久磁石(22)の磁束(M22)を弱めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0032】
(回転電気機械装置)
図1は、実施形態による回転電気機械装置(1)の構成を例示している。この回転電気機械装置(1)は、回転電気機械(2)と制御部(3)とを備えている。この例では、回転電気機械(2)は、電動機の一種であるハイブリッド界磁フラックススイッチングモータ(HEFSM)を構成している。そして、電動機を構成する回転電気機械(2)は、例えば、自動車や空気調和装置などに用いることができ、後述する回転子(10)に設けられた駆動軸(12)によって自動車のトランスミッションや空気調和機の圧縮機などを駆動する。
【0033】
なお、以下の説明において、軸方向とは、駆動軸(12)の軸心(P)(すなわち回転子(10)の回転中心)の方向のことであり、径方向とは、軸心(P)と直交する方向のことである。また、外周側とは、軸心(P)からより遠い側のことであり、内周側とは、軸心(P)により近い側のことである。
【0034】
〔回転電気機械〕
回転電気機械(2)は、回転子(10)と固定子(20)とを備え、ケーシング(図示を省略)に収容されている。固定子(20)は、回転子(10)と所定のエアギャップ(G)を挟んで対向している。
【0035】
〈回転子〉
回転子(10)は、回転子コア(11)と駆動軸(12)とを有している。回転子コア(11)は、軟磁性体によって構成されている。この例では、回転子コア(11)は、電磁鋼板をプレス加工によって打ち抜いて作製した多数のコア部材を軸方向に積層した積層コアによって構成されている。回転子コア(11)の中心部には、駆動軸(12)が挿入される貫通孔(111)が設けられている。また、回転子コア(11)には、外周側へ向けて突出する複数(この例では10個)の突部(112)が設けられている。複数の突部(112)は、回転子コア(11)の周方向に等ピッチで並んでいる。すなわち、回転子コア(11)は、軸方向から見て歯車状に形成されている。なお、複数の突部(112)は、固定子(20)に対する回転子(10)の相対的位置により磁気抵抗を異ならせるため設けられたものである。したがって、複数の突部(112)は、必ずしも厳密に等間隔(等ピッチ)で並んでいなくてもよい。また、回転子(10)の形状(軸方向から見た場合の形状)は、歯車状となっていなくてもよい。例えば、回転子コア(11)の凹部(突部(112)の間の部分)に薄肉の回転子コアを設けて回転子(10)の形状を真円状としてもよい。
【0036】
〈固定子〉
固定子(20)は、固定子コア(21)と、永久磁石(22)と、外側界磁巻線(23)と、内側界磁巻線(24)と、電機子巻線(25)とを有している。この例では、固定子コア(21)には、12個の永久磁石(22)と12個の外側界磁巻線(23)と12個の内側界磁巻線(24)が設けられている。
【0037】
《固定コア》
固定子コア(21)は、軟磁性体によって構成されて円環状に形成されている。この例では、固定子コア(21)は、電磁鋼板をプレス加工によって打ち抜いて作製した多数のコア部材を軸方向に積層した積層コアによって構成されている。
【0038】
図2に示すように、固定子コア(21)は、固定子ヨーク(211)と複数(この例では24個)のティース(212)とを有している。固定子ヨーク(211)は、円環状に形成されて固定子コア(21)の外周部を構成している。複数のティース(212)は、固定子ヨーク(211)の内周面から内周側へ向けて突出するように形成されている。また、複数のティース(212)は、軸心(P)回りに周方向に所定ピッチで配置されている。これにより、複数のティース(212)の間には、複数のスロット(213)が形成されている。
【0039】
複数のティース(212)の間にそれぞれ形成された複数のスロット(213)は、界磁スロット(213a)と電機子スロット(213b)とに大別される。具体的には、界磁スロット(213a)は、複数のスロット(213)のうち周方向において1つ飛ばしで隣り合うスロット(213)のことであり、電機子スロット(213b)は、複数のスロット(213)のうち界磁スロット(213a)を除くスロット(213)のことである。すなわち、固定子コア(21)では、界磁スロット(213a)と電機子スロット(213b)とが周方向に交互に配置されている。この例では、固定子コア(21)には、24個のスロット(213)が設けられており、24個のスロット(213)のうち周方向において1つ飛ばしで隣り合う12個のスロット(213)が12個の界磁スロット(213a)をそれぞれ構成し、残りの12個のスロット(213)が12個の電機子スロット(213b)をそれぞれ構成している。
【0040】
なお、以下の説明では、界磁スロット(213a)や電機子スロット(213b)のような複数の構成要素において特定の構成要素に着目する場合には、その構成要素の参照符号に枝番が付されている(例えば213a-1,213a-2,…など)。
【0041】
《永久磁石》
永久磁石(22)は、固定子コア(21)に設けられ、その発生磁束方向が径方向と交差(この例では直交)するように構成されている。この例では、12個の永久磁石(22)が12個の界磁スロット(213a)の中央部にそれぞれ配置されている。
【0042】
また、この例では、永久磁石(22)は、希土類元素を用いた磁石(いわゆる希土類磁石)によって構成されている。具体的には、永久磁石(22)は、ネオジムと鉄とホウ素を主成分とする希土類磁石(ネオジム-ボロン-鉄系の磁石)であって、必要に応じてジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)などの重希土類元素を粒界拡散法によって表面付近のみに含ませた(または重希土類元素を含む合金からなる)焼結磁石である。
【0043】
また、この例では、永久磁石(22)は、その横断面(軸心(P)に直交する方向の断面、
図1で見える断面)が矩形状(具体的には径方向が長辺となる矩形状)に形成され、その軸方向長さが固定子コア(21)の軸方向長さと概ね同じとなっている。すなわち、この例では、永久磁石(22)は、直方体状に形成されている。
【0044】
また、この例では、複数の永久磁石(22)は、周方向において同じ極性の磁極面が向かい合うように複数の界磁スロット(213a)にそれぞれ配置されている。すなわち、複数の永久磁石(22)は、それぞれの発生磁化方向が周方向に沿うように磁化されており、周方向の一方側へ向けて交互に異なる極性の磁極面を向けて配置されている。
【0045】
《外側界磁巻線》
外側界磁巻線(23)は、固定子コア(21)において永久磁石(22)よりも径方向の外側に設けられ、直流の外側界磁電流(i23)が供給されて永久磁石(22)を通過する外側界磁磁束(M23)を発生させるように構成されている。外側界磁巻線(23)は、永久磁石(22)の磁束を制御するための巻線である。
【0046】
この例では、12個の外側界磁巻線(23)が12個の界磁スロット(213a)にそれぞれ収容された状態で外側界磁巻線(23)がティース(212)に巻回されている。具体的には、周方向において互いに隣り合う一対の界磁スロット(213a)によって挟まれる一対のティース(212)(以下では一対の界磁ティース(212a)とも記載する)に対して1つの外側界磁巻線(23)が巻回されている。すなわち、この例では、一対の界磁ティース(212a)を1つのティースとみなして、これに1つの外側界磁巻線(23)が集中巻で巻回されている。詳しくは、外側界磁巻線(23)は、径方向に沿う軸を巻回軸として一対の界磁ティース(212a)に巻回されている。そして、外側界磁巻線(23)は、界磁スロット(213a)において永久磁石(22)よりも径方向の外側に配置されている。
【0047】
例えば、
図1を用いて具体的に説明すると、第1外側界磁巻線(23-1)は、周方向において互いに隣り合う第1界磁スロット(213a-1)と第2界磁スロット(213a-2)との間に挟まれた第2ティース(212-2)と第3ティース(212-3)とによって構成された一対の界磁ティース(212a)に巻回されている。そして、第1外側界磁巻線(23-1)は、第1界磁スロット(213a-1)および第2界磁スロット(213a-2)において第1永久磁石(22-1)および第2永久磁石(22-2)よりも径方向の外側に配置されている。
【0048】
なお、この例では、複数(具体的には12個)の外側界磁巻線(23)に共通の外側界磁電流(i23)が流れるように複数の外側界磁巻線(23)が直列に接続されている。また、複数の外側界磁巻線(23)は、共通の線材(例えば1本の被覆電線)によって構成されている。具体的には、一対の界磁ティース(212a)における線材の巻回方向とその一対の界磁ティース(212a)に隣接する他の一対の界磁ティース(212a)における線材の巻回方向とが互いに逆方向となるように、複数の外側界磁巻線(23)を構成するための共通の線材が複数対の界磁ティース(212a)に連続的に巻回されている。
【0049】
《内側界磁巻線》
内側界磁巻線(24)は、固定子コア(21)において永久磁石(22)よりも径方向の内側に設けられ、直流の内側界磁電流(i24)が供給されて永久磁石(22)を通過する内側界磁磁束(M24)を発生させるように構成されている。内側界磁巻線(24)は、永久磁石(22)の磁束を制御するための巻線である。
【0050】
この例では、12個の内側界磁巻線(24)が12個の界磁スロット(213a)にそれぞれ収容された状態で内側界磁巻線(24)がティース(212)に巻回されている。具体的には、一対の界磁ティース(212a)に対して1つの内側界磁巻線(24)が巻回されている。すなわち、この例では、一対の界磁ティース(212a)を1つのティースとみなして、これに1つの内側界磁巻線(24)が集中巻で巻回されている。詳しくは、内側界磁巻線(24)は、径方向に沿う軸を巻回軸として一対の界磁ティース(212a)に巻回されている。そして、内側界磁巻線(24)は、界磁スロット(213a)において永久磁石(22)よりも径方向の内側に配置されている。
【0051】
例えば、
図1を用いて具体的に説明すると、第1内側界磁巻線(24-1)は、周方向において互いに隣り合う第1界磁スロット(213a-1)と第2界磁スロット(213a-2)との間に挟まれた第2ティース(212-2)と第3ティース(212-3)とによって構成された一対の界磁ティース(212a)に巻回されている。そして、第1内側界磁巻線(24-1)は、第1界磁スロット(213a-1)および第2界磁スロット(213a-2)において第1永久磁石(22-1)および第2永久磁石(22-2)よりも径方向の内側に配置されている。
【0052】
なお、この例では、複数(具体的には12個)の内側界磁巻線(24)に共通の内側界磁電流(i24)が流れるように複数の内側界磁巻線(24)が直列に接続されている。また、複数の内側界磁巻線(24)は、共通の線材(例えば1本の被覆電線)によって構成されている。具体的には、一対の界磁ティース(212a)における線材の巻回方向とその一対の界磁ティース(212a)に隣接する他の一対の界磁ティース(212a)における線材の巻回方向とが互いに逆方向となるように、複数の内側界磁巻線(24)を構成するための共通の線材が複数対の界磁ティース(212a)に連続的に巻回されている。
【0053】
《電機子巻線》
電機子巻線(25)は、固定子コア(21)に設けられ、交流の電機子電流(i25)が供給されて回転子(10)を回転させるための回転磁界を発生させるように構成されている。すなわち、電機子巻線(25)は、回転磁界を形成するための巻線である。
【0054】
この例では、12個の電機子巻線(25)が12個の電機子スロット(213b)に収納された状態で電機子巻線(25)がティース(212)に巻回されている。具体的には、周方向において互いに隣り合う一対の電機子スロット(213b)によって挟まれる一対のティース(212)(以下では一対の電機子ティース(212b)とも記載する)に対して1つの電機子巻線(25)が巻回されている。すなわち、この例では、一対の電機子ティース(212b)を1つのティースとみなして、これに1つの電機子巻線(25)が集中巻で巻回されている。詳しくは、電機子巻線(25)は、径方向に沿う軸を巻回軸として一対の電機子ティース(212b)に巻回されている。
【0055】
例えば、
図1を用いて具体的に説明すると、第1電機子巻線(25-1)は、周方向において互いに隣り合う第1電機子スロット(213b-1)と第2電機子スロット(213b-2)との間に挟まれた第1ティース(212-1)と第2ティース(212-2)とによって構成された一対の電機子ティース(212b)に巻回されている。
【0056】
この例では、12個の電機子巻線(25)に三相の交流電流である電機子電流(i25)が流れるように12個の電機子巻線(25)が接続されている。すなわち、この例では、電機子巻線(25)として三相の電機子巻線が採用されている。
【0057】
〔制御部〕
制御部(3)は、外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)と電機子電流(i25)とを制御して回転電気機械(2)の動作を制御するように構成されている。特に、制御部(3)は、外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを個別に制御するように構成されている。この例では、制御部(3)は、電源(31)と制御回路(32)とを有している。
【0058】
電源(31)は、外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)と電機子巻線(25)とに対して、直流の外側界磁電流(i23)と直流の内側界磁電流(i24)と交流の電機子電流(i25)とをそれぞれ個別に供給するように構成されている。この例では、
図3に示すように、電源(31)は、外側界磁電源部(311)と、内側界磁電源部(312)と、電機子電源部(313)とを有している。
【0059】
外側界磁電源部(311)は、直列に接続された複数(この例では12個)の外側界磁巻線(23)に対して外側界磁電流(i23)を供給するように構成されている。なお、外側界磁電源部(311)には、種々の電源を採用することが可能である。例えば、外側界磁電源部(311)としてチョッパ回路(降圧チョッパ回路,昇圧チョッパ回路,昇降圧チョッパ回路を含む)を用いることにより、外側界磁電流(i23)を容易に制御することができる。また、外側界磁電源部(311)から供給される外側界磁電流(i23)は、脈動成分を含んでいてもよい。
【0060】
内側界磁電源部(312)は、直列に接続された複数(この例では12個)の内側界磁巻線(24)に対して内側界磁電流(i24)を供給するように構成されている。なお、外側界磁電源部(311)と同様に、内側界磁電源部(312)には、種々の電源を採用することが可能である。例えば、内側界磁電源部(312)としてチョッパ回路(降圧チョッパ回路,昇圧チョッパ回路,昇降圧チョッパ回路を含む)を用いることにより、内側界磁電流(i24)を容易に制御することができる。また、内側界磁電源部(312)から供給される内側界磁電流(i24)は、脈動成分を含んでいてもよい。
【0061】
電機子電源部(313)は、三相巻線が構成されるように接続された複数(この例では12個)の電機子巻線(25)に対して三相交流の電機子電流(i25)を供給するように構成されている。なお、電機子電源部(313)には、種々の電源を採用することが可能である。例えば、電機子電源部(313)としてインバータ回路が用いられていてもよい。
【0062】
制御回路(32)は、電源(31)を制御して回転電気機械(2)の動作を制御するように構成されている。具体的には、制御回路(32)は、回転電気機械(2)の各種パラメータを検知する各種センサ(図示を省略)の検知結果に基づいて、回転電気機械(2)の動作が所望の動作となるように電源(31)を制御する。例えば、制御回路(32)は、CPUなどの演算処理部や、演算処理部を動作させるためのプログラムや情報を記憶するメモリなどの記憶部によって構成されている。
【0063】
この例では、制御部(3)は、磁界停止制御と、内外磁界生成制御と、外側磁界生成制御と、内側磁界生成制御と、順磁界生成制御と、逆磁界生成制御とを行うように構成されている。
【0064】
〈磁界停止制御〉
図4に示すように、磁界停止制御では、制御部(3)は、外側界磁磁束(M23)が発生しないように外側界磁電流(i23)を制御し、内側界磁磁束(M24)が発生しないように内側界磁電流(i24)を制御する。具体的には、制御部(3)は、外側界磁電流(i23)および内側界磁電流(i24)の供給を停止する。
【0065】
磁界停止制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)は、
図4の実線の矢印で示した経路(主経路)に主に流れ、
図4の破線の矢印で示した経路(副経路)に僅かに流れる。すなわち、磁界停止制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)が固定子(20)内でほぼ短絡しているとみなして差し支えない。
【0066】
また、磁界停止制御において、制御部(3)は、電機子巻線(25)に電機子電流(i25)を供給する。これにより、電機子巻線(25)において回転磁界(回転子(10)を回転させるための磁束)が発生して電機子巻線(25)による回転磁界と永久磁石(22)の磁束(M22)とが回転子(10)と鎖交し、回転子(10)においてトルクが発生する。なお、このトルクは、次の式1で表すことができる。
【0067】
T=P
n・Φ
mag・i
q … [式1]
【0068】
なお、式1において、“T”は回転子(10)に発生するトルクであり、“P
n”は回転電気機械(2)の極対数であり、“Φ
mag”は永久磁石(22)の磁束(M22)の大きさであり、“i
q”は電機子電流(i25)の大きさ(q軸電流の大きさ)である。
【0069】
また、磁界停止制御では、外側界磁電流(i23)および内側界磁電流(i24)の供給が停止されるので、外側界磁巻線(23)および内側界磁巻線(24)における銅損をゼロにすることができる。
【0070】
また、磁界停止制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に低く且つ回転子(10)の回転速度が比較的に高くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。
【0071】
〈内外磁界生成制御〉
図5に示すように、内外磁界生成制御では、制御部(3)は、永久磁石(22)を通過する外側界磁磁束(M23)の向きが永久磁石(22)の磁束方向の逆方向となるように外側界磁電流(i23)を制御し、永久磁石(22)を通過する内側界磁磁束(M24)の向きが永久磁石(22)の磁束方向と同方向となるように内側界磁電流(i24)を制御する。具体的には、制御部(3)は、
図5に示すような外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)が発生するように、外側界磁巻線(23)および内側界磁巻線(24)に外側界磁電流(i23)および内側界磁電流(i24)をそれぞれ供給する。なお、
図5では、外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)の図示を省略して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)とを合成して得られる合成磁束(M20)を図示している。
【0072】
内外磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)によって固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)において磁気飽和を起こすことができる。これにより、永久磁石(22)の磁束(M22)が固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)に流れにくくなる。その結果、永久磁石(22)の磁束(M22)は、ティース(212)を経由して回転子コア(11)に流れ込みやすくなる。
【0073】
また、内外磁界生成制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)と合成磁束(外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20))とが回転子(10)を経由して流れて界磁磁束として回転子(10)に作用する。
【0074】
例えば、固定子コア(21)の第1界磁スロット(213a-1)よりも径方向の外側の部分において磁気飽和が起きると、第1界磁スロット(213a-1)内に配置された第1永久磁石(22-1)の磁束は、第1ティース(212-1)を通過して回転子(10)の第1突部(112-1)に流れ込む。第1突部(112-1)に流れ込んだ第1永久磁石(22-1)の磁束は、第2突部(112-2)を通過して第3ティース(212-3)に流れ込む。第3ティース(212-3)に流れ込んだ第1永久磁石(22-1)の磁束は、固定子コア(21)の外周部(具体的には第1電機子スロット(213b-1)よりも径方向の外側の部分)と第2ティース(212-2)とを順に通過して第1永久磁石(22-1)に戻る。
【0075】
また、固定子(20)の第2界磁スロット(213a-2)よりも径方向の外側の部分において磁気飽和が起きると、第2永久磁石(22-2)の磁束は、第4ティース(212-4)を通過して固定子コア(21)の外周部(具体的には第2電機子スロット(213b-2)よりも径方向の外側の部分)に流れ込み、その後、第5ティース(212-5)を通過して回転子(10)の第3突部(112-3)に流れ込む。第3突部(112-3)に流れ込んだ第2永久磁石(22-2)の磁束は、第2突部(112-2)を通過して第3ティース(212-3)に流れ込み、その後、第2永久磁石(22-2)に戻る。
【0076】
また、内外磁界発生制御において、制御部(3)は、電機子巻線(25)に電機子電流(i25)を供給する。これにより、電機子巻線(25)において回転磁界(回転子(10)を回転させるための磁束)が発生して電機子巻線(25)による回転磁界と永久磁石(22)の磁束(M22)とが回転子(10)と鎖交し、回転子(10)においてトルクが発生する。なお、このトルクは、次の式2で表すことができる。
【0077】
T=P
n(Φ
mag+Φ
f)i
q … [式2]
【0078】
なお、式2において、“T”は回転子(10)に発生するトルクであり、“P
n”は回転電気機械(2)の極対数であり、“Φ
mag”は永久磁石(22)の磁束(M22)の大きさであり、“i
q”は電機子電流(i25)の大きさ(q軸電流の大きさ)であり、“Φ
f”は外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)の大きさである。
【0079】
式2に示すように、内外界磁生成制御では、外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを制御して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。
【0080】
例えば、回転子(10)の低速回転時(回転子(10)の回転速度が比較的に低くなっている場合)に外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を増加させることにより、回転子(10)の低速回転時において大きなトルクを出力する強め磁界制御を行うことができる。また、回転子(10)の高速回転時(回転子(10)の回転速度が比較的に高くなっている場合)に外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を減少させることにより、回転子(10)の高速回転時において誘起電圧を調整して回転子(10)の回転速度を上昇させることができる。また、外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を減少させることにより、外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)における銅損を低減することができる。
【0081】
また、内外磁界生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に高くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。
【0082】
〈外側磁界生成制御〉
図6に示すように、外側磁界生成制御では、制御部(3)は、永久磁石(22)を通過する外側界磁磁束(M23)の向きが永久磁石(22)の磁束方向の逆方向となるように外側界磁電流(i23)を制御し、内側界磁磁束(M24)が発生しないように内側界磁電流(i24)を制御する。具体的には、制御部(3)は、
図6に示すような外側界磁磁束(M23)が発生するように外側界磁巻線(23)に外側界磁電流(i23)を供給し、内側界磁電流(i24)の供給を停止する。
【0083】
外側磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)によって固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)において永久磁石(22)の磁束(M22)の通過を妨げて遮断することができるとともに外側界磁電流(i23)の増加に伴って磁気飽和を起こすこともできる。これにより、永久磁石(22)の磁束(M22)が固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)に流れにくくなる。その結果、永久磁石(22)の磁束(M22)は、ティース(212)を経由して回転子コア(11)に流れ込みやすくなる。
【0084】
また、外側磁界生成制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)と外側界磁磁束(M23)とが回転子(10)を経由して流れて界磁磁束として回転子(10)に作用する。
【0085】
また、外側磁界発生制御において、制御部(3)は、電機子巻線(25)に電機子電流(i25)を供給する。これにより、電機子巻線(25)において回転磁界(回転子(10)を回転させるための磁束)が発生して電機子巻線(25)による回転磁界と永久磁石(22)の磁束(M22)とが回転子(10)と鎖交し、回転子(10)においてトルクが発生する。なお、このトルクは、次の式3で表すことができる。
【0086】
T=P
n(Φ
mag+Φ
fo)i
q … [式3]
【0087】
なお、式3において、“T”は回転子(10)に発生するトルクであり、“P
n”は回転電気機械(2)の極対数であり、“Φ
mag”は永久磁石(22)の磁束(M22)の大きさであり、“i
q”は電機子電流(i25)の大きさ(q軸電流の大きさ)であり、“Φ
fo”は外側界磁磁束(M23)の大きさである。
【0088】
式3に示すように、外側界磁生成制御では、外側界磁電流(i23)を制御して外側界磁磁束(M23)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。
【0089】
また、外側界磁生成制御では、永久磁石(22)よりも径方向の内側に位置する内側界磁巻線(24)において内側界磁磁束(M24)が発生しないので、永久磁石(22)の磁束(M22)が回転子(10)におけるトルクの発生に寄与しやすくなっている。そのため、回転電気機械(2)を高効率で運転することができる。
【0090】
また、外側界磁生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に低く且つ回転子(10)の回転速度が比較的に低くなるように回転電気機械(2)を制御する場合(具体的には回転子(10)の比較的に低い回転トルクを低損失で発生させ且つ回転子(10)の回転速度が比較的に低くなるように回転電気機械(2)を制御する場合)に有用である。
【0091】
〈内側磁界生成制御〉
図7に示すように、内側磁界生成制御では、制御部(3)は、外側界磁磁束(M23)が発生しないように外側界磁電流(i23)を制御し、永久磁石(22)を通過する内側界磁磁束(M24)の向きが永久磁石(22)の磁束方向と同方向となるように内側界磁電流(i24)を制御する。具体的には、制御部(3)は、外側界磁電流(i23)の供給を停止し、
図7に示すような内側界磁磁束(M24)が発生するように内側界磁巻線(24)に内側界磁電流(i24)を供給する。
【0092】
内側磁界生成制御では、内側界磁磁束(M24)によって固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)において永久磁石(22)の磁束(M22)の通過を妨げて遮断することができるとともに内側界磁電流(i24)の増加に伴って磁気飽和を起こすこともできる。これにより、永久磁石(22)の磁束(M22)が固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)に流れにくくなる。その結果、永久磁石(22)の磁束(M22)は、ティース(212)を経由して回転子コア(10)に流れ込みやすくなる。
【0093】
また、内側磁界生成制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)と内側界磁磁束(M24)とが回転子(10)を経由して流れて界磁磁束として回転子(10)に作用する。
【0094】
また、内側磁界発生制御において、制御部(3)は、電機子巻線(25)に電機子電流(i25)を供給する。これにより、電機子巻線(25)において回転磁界(回転子(10)を回転させるための磁束)が発生して電機子巻線(25)による回転磁界と永久磁石(22)の磁束(M22)とが回転子(10)と鎖交し、回転子(10)においてトルクが発生する。なお、このトルクは、次の式4で表すことができる。
【0095】
T=P
n(Φ
mag+Φ
fi)i
q … [式4]
【0096】
なお、式4において、“T”は回転子(10)に発生するトルクであり、“P
n”は回転電気機械(2)の極対数であり、“Φ
mag”は永久磁石(22)の磁束(M22)の大きさであり、“i
q”は電機子電流(i25)の大きさ(q軸電流の大きさ)であり、“Φ
fi”は内側界磁磁束(M24)の大きさである。
【0097】
式4に示すように、内側界磁生成制御では、内側界磁電流(i24)を制御して内側界磁磁束(M24)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。
【0098】
また、内側界磁生成制御では、内側界磁磁束(M24)が永久磁石(22)に対して順磁界として作用するので、永久磁石(22)において内側界磁磁束(M24)による減磁は、発生しない。そのため、内側界磁電流(i24)を広範囲に制御することができるので、回転子(10)において発生するトルクを広範囲に制御することができる。例えば、内側界磁電流(i24)を最大許容電流に設定して回転子(10)において発生するトルクを最大にすることができる。
【0099】
また、内側界磁生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に高くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。特に、内側界磁生成制御は、永久磁石(22)の温度が比較的に高くなっている場合(すなわち永久磁石(22)において減磁が発生する可能性がある場合)に有用である。
【0100】
〈順磁界生成制御〉
図8に示すように、順磁界生成制御では、制御部(3)は、永久磁石(22)を通過する外側界磁磁束(M23)の向きが永久磁石(22)の磁束方向と同方向となるように外側界磁電流(i23)を制御し、永久磁石(22)を通過する内側界磁磁束(M24)の向きが永久磁石(22)の磁束方向と同方向となるように内側界磁電流(i24)を制御する。具体的には、制御部(3)は、
図8に示すような外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)が発生するように、外側界磁巻線(23)および内側界磁巻線(24)に外側界磁電流(i23)および内側界磁電流(i24)をそれぞれ供給する。なお、
図8では、外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)の図示を省略している。
【0101】
順磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)によって固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)において永久磁石(22)の磁束(M22)の通過を妨げて遮断することができる。これにより、永久磁石(22)の磁束(M22)が固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)に流れにくくなる。その結果、永久磁石(22)の磁束(M22)は、ティース(212)を経由して回転子コア(11)に流れ込みやすくなる。
【0102】
また、順磁界生成制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)と合成磁束(外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20))とが回転子(10)を経由して流れて界磁磁束として回転子(10)に作用する。
【0103】
また、順磁界生成制御において、制御部(3)は、電機子巻線(25)に電機子電流(i25)を供給する。これにより、電機子巻線(25)において回転磁界(回転子(10)を回転させるための磁束)が発生して電機子巻線(25)による回転磁界と永久磁石(22)の磁束(M22)とが回転子(10)と鎖交し、回転子(10)においてトルクが発生する。なお、このトルクは、前述の式2で表すことができる。
【0104】
前述の式2に示すように、順磁界生成制御では、外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを制御して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。
【0105】
また、順磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)の両方が永久磁石(22)に対して順磁界として作用するので、永久磁石(22)に順磁界(比較的に大きな順磁界)を印加することができる。これにより、永久磁石(22)を着磁することができる。
【0106】
〈逆磁界生成制御〉
図9に示すように、逆磁界生成制御では、制御部(3)は、永久磁石(22)を通過する外側界磁磁束(M23)の向きが永久磁石(22)の磁束方向の逆方向となるように外側界磁電流(i23)を制御し、永久磁石(22)を通過する内側界磁磁束(M24)の向きが永久磁石(22)の磁束方向の逆方向となるように内側界磁電流(i24)を制御する。具体的には、制御部(3)は、
図9に示すような外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)が発生するように、外側界磁巻線(23)および内側界磁巻線(24)に外側界磁電流(i23)および内側界磁電流(i24)をそれぞれ供給する。なお、
図9では、外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)の図示を省略している。
【0107】
逆磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)によって固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)において磁気飽和を起こすことができる。これにより、永久磁石(22)の磁束(M22)が固定子コア(21)の外周部(具体的には界磁スロット(213a)よりも径方向の外側の部分)に流れにくくなる。その結果、永久磁石(22)の磁束(M22)は、ティース(212)を経由して回転子コア(11)に流れ込みやすくなる。
【0108】
また、逆磁界生成制御では、永久磁石(22)の磁束(M22)と合成磁束(外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20))とが回転子(10)を経由して流れて界磁磁束として回転子(10)に作用する。
【0109】
また、逆磁界生成制御において、制御部(3)は、電機子巻線(25)に電機子電流(i25)を供給する。これにより、電機子巻線(25)において回転磁界(回転子(10)を回転させるための磁束)が発生して電機子巻線(25)による回転磁界と永久磁石(22)の磁束(M22)とが回転子(10)と鎖交し、回転子(10)においてトルクが発生する。なお、このトルクは、前述の式2で表すことができる。
【0110】
前述の式2に示すように、逆磁界生成制御では、外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを制御して外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24)との合成磁束(M20)を制御することにより、回転子(10)において発生するトルクを制御することができる。
【0111】
また、逆磁界生成制御では、外側界磁磁束(M23)および内側界磁磁束(M24)の両方が永久磁石(22)に対して逆磁界として作用するので、永久磁石(22)に逆磁界(比較的に大きな逆磁界)を印加することができる。これにより、永久磁石(22)の磁束(M22)を弱めることができる。例えば、逆磁界生成制御を行うことによって、d軸電流を流し続けることなく弱め界磁制御を行うことができる。
【0112】
また、逆磁界生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に低く且つ回転子(10)の回転速度が比較的に高くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。
【0113】
〔制御部の動作〕
次に、
図10を参照して、制御部(3)の動作について説明する。この例では、制御部(3)は、回転電気機械(2)の運転状態に応じて外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを個別に制御するように構成されている。すなわち、制御部(3)は、回転電気機械(2)の運転状態に応じて各種の制御を切り換えて行うように構成されている。例えば、制御部(3)は、以下の処理を行う。
【0114】
〈ステップ(ST11)〉
まず、制御部(3)は、回転子(10)の回転トルク(具体的には回転トルク指令、以下同様)と回転速度を取得する。また、制御部(3)は、永久磁石(22)の温度を取得する。例えば、制御部(3)は、回転子(10)の回転速度を検出するように構成された回転速度センサ(図示を省略)の検出結果に基づいて回転子(10)の回転速度を取得する。また、制御部(3)は、永久磁石(22)の温度を検出するように構成された温度センサ(図示を省略)の検出結果に基づいて永久磁石(22)の温度を取得する。
【0115】
〈ステップ(ST12)〉
次に、制御部(3)は、回転子(10)の回転トルクが予め定められた回転トルク閾値を上回るか否かを判定する。回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を上回る場合には、ステップ(ST13)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST16)へ進む。
【0116】
〈ステップ(ST13)〉
回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を上回る場合、制御部(3)は、永久磁石(22)の温度が予め定められた温度閾値を上回るか否かを判定する。なお、温度閾値は、永久磁石(22)において減磁が発生しないとみなせるときの永久磁石(22)の温度に設定されている。永久磁石(22)の温度が温度閾値を上回る場合(すなわち永久磁石(22)において減磁が発生する可能性がある場合)には、ステップ(ST14)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST15)へ進む。
【0117】
〈ステップ(ST14)〉
回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を上回り、且つ、永久磁石(22)の温度が温度閾値を上回る場合、制御部(3)は、内側磁界生成制御を行う。なお、内側界磁生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に高くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。さらに、内側界磁生成制御は、永久磁石(22)の温度が比較的に高くなっている場合(すなわち永久磁石(22)において減磁が発生する可能性がある場合)に有用である。したがって、内側磁界生成制御を効果的に行うことができる。
【0118】
〈ステップ(ST15)〉
一方、回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を上回り、且つ、永久磁石(22)の温度が温度閾値を上回らない場合、制御部(3)は、内外磁界生成制御を行う。なお、内外磁界生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に高くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。したがって、内外磁界生成制御を効果的に行うことができる。
【0119】
〈ステップ(ST16)〉
また、ステップ(ST12)において回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を上回らないと判定された場合、制御部(3)は、回転子(10)の回転速度が予め定められた回転速度閾値を上回るか否かを判定する。回転子(10)の回転速度が回転速度閾値を上回る場合には、ステップ(ST17)へ進み、そうでない場合には、ステップ(ST18)へ進む。
【0120】
〈ステップ(ST17)〉
回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を下回り、且つ、回転子(10)の回転速度が回転速度閾値を上回る場合、制御部(3)は、逆磁界生成制御を行う。なお、逆磁界生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に低く且つ回転子(10)の回転速度が比較的に高くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。したがって、逆磁界生成制御を効果的に行うことができる。なお、ステップ(ST17)において、逆磁界生成制御の代わりに、磁界停止制御が行われてもよい。
【0121】
〈ステップ(ST18)〉
一方、回転子(10)の回転トルクが回転トルク閾値を下回り、且つ、回転子(10)の回転速度が回転速度閾値を下回る場合、制御部(3)は、外側磁界生成制御を行う。なお、外側界磁生成制御は、回転子(10)の回転トルクが比較的に低く且つ回転子(10)の回転速度が比較的に低くなるように回転電気機械(2)を制御する場合に有用である。したがって、外側界磁生成制御を効果的に行うことができる。なお、ステップ(ST18)において、外側界磁生成制御の代わりに、磁界停止制御が行われてもよい。
【0122】
〔実施形態による効果〕
以上のように、固定子(20)に永久磁石(22)と外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)とを設けて外側界磁巻線(23)に供給される外側界磁電流(i23)と内側界磁巻線(24)に供給される内側界磁電流(i24)とを個別に制御することにより、固定子(20)に永久磁石(22)と1種類の界磁巻線とが設けられている場合(例えば特許文献1の場合)よりも、回転電気機械(2)における制御の自由度を向上させることができる。これにより、回転電気機械(2)の制御を多様化させることができる。
【0123】
また、回転電気機械(2)の運転状態に応じて外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを個別に適切に制御することができる。これにより、回転電気機械(2)を適切に制御することができる。
【0124】
(制御部の変形例)
図11に示すように、制御部(3)において、電源(31)は、
図3に示した外側界磁電源部(311)と内側界磁電源部(312)とに代えて、内外界磁電源部(300)を有していてもよい。内外界磁電源部(300)は、共通電源部(310)と外側界磁スイッチ(S1)と内側界磁スイッチ(S2)とを有している。
【0125】
共通電源部(310)は、直流電流を供給するように構成されている。この例では、共通電源部(310)の一方の端子と他方の端子との間に外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)が直列に接続されている。具体的には、共通電源部(310)の一方の端子から他方の端子へ向けて12個の外側界磁巻線(23)と12個の内側界磁巻線(24)とが順に接続されている。
【0126】
外側界磁スイッチ(S1)は、その一端が共通電源部(310)の一方の端子に接続され、その他端が外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)との接続部に接続され、制御回路(32)による制御に応答して共通電源部(310)の一方の端子を外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)との接続部に短絡させる状態(オン状態)と短絡させない状態(オフ状態)とに切り換えるように構成されている。共通電源部(310)の一方の端子を外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)との接続部に短絡させると、外側界磁巻線(23)に直流電流(外側界磁電流(i23)となる直流電流)が流れないようになる。
【0127】
内側界磁スイッチ(S2)は、その一端が外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)との接続部に接続され、その他端が共通電源部(310)の他方の端子に接続され、制御回路(32)による制御に応答して共通電源部(310)の他方の端子を外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)との接続部に短絡させる状態(オン状態)と短絡させない状態(オフ状態)とに切り換えるように構成されている。共通電源部(310)の他方の端子を外側界磁巻線(23)と内側界磁巻線(24)との接続部に短絡させると、内側界磁巻線(24)に直流電流(内側界磁電流(i24)となる直流電流)が流れないようになる。
【0128】
以上のように構成した場合も、制御部(3)は、外側界磁電流(i23)と内側界磁電流(i24)とを個別に制御することができる。
【0129】
(その他の実施形態)
なお、
図4〜
図9に示した各種の磁束(具体的には永久磁石(22)の磁束(M22)と外側界磁磁束(M23)と内側界磁磁束(M24))の流れは、あくまで一例であり、回転子(10)の回転位置(突部(112)の位置)に応じて各種の磁束経路(磁束が流れる経路)が異なり得る。ただし、回転子(10)の回転位置が変化しても各種の磁束は、回転子(10)を経由して流れて界磁磁束として回転子(10)に作用する。
【0130】
また、以上の説明では、回転電気機械(2)が電動機を構成する場合を例に挙げたが、回転電気機械(2)は、発電機を構成するものであってもよい。
【0131】
また、永久磁石(22)に重希土類元素が含まれている場合を例に挙げたが、永久磁石(22)は、重希土類元素を含まない磁石材料によって構成されていてもよい。
【0132】
また、以上の実施形態および変形例を適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、この発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。