【文献】
Anal. Chem., 2010, vol.82, pp.9983-9988
【文献】
Biotechnol. Bioeng., 2008, vol.100, pp.1156-1165
【文献】
J. Biosci. Bioeng., 2014, vol.118, pp.327-332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆流防止機構は、前記培養液導出流路から前記第2培養液貯留室へ向かう方向の前記培養液の流れを許容し、かつ前記流れの逆の方向の流れを阻止する逆止弁である、請求項6に記載の細胞培養装置。
前記逆流防止機構は、前記第1培養液貯留室から前記培養液導入流路への前記培養液の流れを許容し、かつ前記第1培養液貯留室から前記培養液導入流路への気体の流れを阻止するラプラス弁である、請求項8に記載の細胞培養装置。
前記貯留槽は、前記主培養液室、前記第1培養液貯留室および前記第2培養液貯留室が形成された容器状の槽本体と、前記主培養液室、前記第1培養液貯留室および前記第2培養液貯留室の開口を開閉自在かつ気密に閉止する蓋部とを有する、請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の細胞培養装置。
前記壁部を前記底部プレートに向けて押さえつけて保持する壁部押圧部をさらに備え、 前記壁部押圧部は、前記底部プレートに向けて前記壁部を押圧する押圧部材を有する、請求項14に記載の細胞培養装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−073468号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Scannell, J. W. et al. Nat. Rev. Drug Discov., 11, 191 (2012)
【非特許文献2】Pammolli, F. et al. Nat. Rev. Drug Discov., 10, 428 (2011)
【非特許文献3】van Midwoud, P. M. et al. Integr. Biol., 3, 509 (2012)
【非特許文献4】Ghaemmaghami, A. M. et al. Drug Discov. Today, 17, 173 (2012)
【非特許文献5】Bhatia, S. N. et al. Nat. Biotechnol., 32, 760 (2014)
【非特許文献6】Baker, M. Nature, 471, 661 (2011)
【非特許文献7】Sung, J. H. et al. Lab Chip, 13, 1201 (2013)
【非特許文献8】H. J. Kim, D. Huh, G. Hamilton and D. E. Ingber,, Lab Chip,12, 2165-2174 (2012).
【非特許文献9】M. B. Esch, J. H. Sung, J. Yang, C. H. Yu, J. J. Yu, J. C. March and M. L. Shuler, Biomed. Microdevices, 14, 895-906 (2012).
【非特許文献10】K.-J. Jang, A. P. Mehr, G. A. Hamilton, L. A. McPartlin, S. Chung, K.-Y. Suh and D. E. Ingber, Integr. Biol., 5, 1119-1129 (2013).
【非特許文献11】R. Booth and H. Kim, Lab Chip, 12, 1784-1792 (2012).
【非特許文献12】S.Sugiura, et al., Anal.Chem., 82, 8278 (2010)
【非特許文献13】S.Sugiura, et al., Biotechnol.Bioeng., 100, 1156 (2008)
【非特許文献14】K.Hattori, et al., J.Biosci.Bioeng., 118, 327 (2014)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
[細胞培養装置]
第1実施形態の細胞培養装置10について、図面を参照して説明する。
図1は、細胞培養装置10を模式的に示す断面図である。
図2は、細胞培養装置10を模式的に示す斜視図である。
図1および
図2に示すように、細胞培養装置10は、貯留槽11と、加圧ポンプ14とを備えている。貯留槽11は、1つの細胞培養ユニット9を備えている。貯留槽11は、容器状の槽本体12と、蓋部13と、を備えている。
【0015】
細胞培養ユニット9は、主培養液室3と、第1培養液貯留室1と、第2培養液貯留室2と、隔膜4と、培養液導入流路5と、培養液導出流路6と、連絡流路7とを有する。
主培養液室3は、主室3cと、主室3cの底面3eに形成された凹部3dとを有する。
主室3cの内部空間は培養液C1が流通する流通空間3aである。凹部3dの内部空間のうち隔膜4の内面4a側の空間は流通空間3aの一部である。凹部3dの内部空間のうち隔膜4の外面4b側の空間は、外面側空間3bである。
図1において、外面側空間3bは流通空間3aの下方に位置している。貯留槽11には、外面側空間3bに連通するサンプリング孔(図示略)を形成することができる。これによって、サンプリング孔を通して外面側空間3b内の液体を採取することができる。主培養液室3は、貯留槽11内に形成された中空部である。
【0016】
(シェアストレスに関する設計)
流通空間3aの高さ(隔膜4の厚さ方向の距離)は、次のように定めることによって、流通空間3aを流れる培養液C1の流速を高め、隔膜4上の細胞20に対して十分なシェアストレスを付加することが可能となる。
図2に示すように、付加されるシェアストレス(τ)は、流通空間3aの幅(w
0)、高さ(h
0)、培養液C1の流量(Q)、および培養液C1の粘度(μ)に基づいて、式(1)により推算できる(非特許文献15:F. M. White, Viscous Fluid Flow, McGraw-Hill Companies, Inc, Boston, 2006.を参照)。
【0018】
細胞機能を向上させるために適切なシェアストレスは細胞によって異なるが、例えば血管内皮細胞の場合は、1〜10dyn/cm
2であることが知られており(非特許文献16:K. Hattori, Y. Munehira, H. Kobayashi, T. Satoh, S. Sugiura and T. Kanamori, "Microfluidic perfusion culture chip providing different strengths of shear stress for analysis of vascular endothelial function", J. Biosci. Bioeng., 118, 327-332 (2014).を参照)、腎上皮細胞の場合は0.2dyn/cm
2であることが知られている(非特許文献10を参照)。
一方、医薬品候補化合物や化成品のin vitro細胞アッセイに使用する際の1アッセイあたりの培養液量は培養液のコストとハンドリングを考えると10μl〜10ml程度が現実的である。よって、適切なシェアストレスを実現するためには、上記(1)式より、流通空間3aの高さは、1μm〜1000μmの範囲にあることが好ましい。
なお、流通空間3aの高さh
0は、隔膜4の内面4a(上面)と、流通空間3aの内天面との距離(隔膜4の厚さ方向の距離)である。
【0019】
隔膜4は、所定の大きさ以下の物質が厚さ方向に透過可能である。隔膜4を透過する物質移動は、例えば拡散により起きる。物質移動は、隔膜4に付着した細胞20の作用により促進されることもある。隔膜4は例えば多孔質膜であってよい。隔膜4の平均細孔径は例えば0.1μm〜10μmである。隔膜4の材質は、ポリカーボネート、ポリエステル、シリコーン樹脂のいずれか1つであってよい。隔膜4は、例えば半透膜であってもよい。なお、細胞20は隔膜4を透過できない。隔膜4は、内面4aが細胞接着性材料でコーティングされていることが好ましい。細胞接着性材料は、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、マトリゲル、およびポリリジンのうち1または2以上が好ましい。
【0020】
隔膜4は、凹部3d内に、流通空間3aと外面側空間3bとを隔てるように設置されている。隔膜4は、凹部3dの底面より高い位置にあり、主室3cの底面3eと平行に、凹部3dを塞ぐように設置することができる。隔膜4の内面4a(一方の面)は流通空間3aに臨み、外面4b(他方の面)は外面側空間3bに臨んでいる。
【0021】
第1培養液貯留室1および第2培養液貯留室2は、貯留槽11の槽本体12の上面に形成された凹部によって形成された空間であり、培養液C1を貯留可能である。
第1培養液貯留室1は、主室1cと、主室1cの底面1eに形成された細胞保持凹部1d(細胞保持部)とを有する。第1培養液貯留室1の内部空間は培養液貯留空間1aである。
第2培養液貯留室2は、主室2cと、主室2cの底面2eに形成された細胞保持凹部2d(細胞保持部)とを有する。第2培養液貯留室2の内部空間は培養液貯留空間2aである。
【0022】
培養液導入流路5は、一端が第1培養液貯留室1の主室1cの底部に接続され、他端が主培養液室3の主室3cの底部に接続されている。培養液導入流路5は、培養液C1を第1培養液貯留室1から主培養液室3の流通空間3aに導くことができる。
培養液導出流路6は、一端が主培養液室3の主室3cの底部に接続され、他端が第2培養液貯留室2の主室2cの底部に接続されている。培養液導出流路6は、培養液C1を主培養液室3の流通空間3aから第2培養液貯留室2に導くことができる。
連絡流路7は、一端が第2培養液貯留室2の主室2cの底部に接続され、他端が第1培養液貯留室1の主室1cの底部に接続されている。連絡流路7は、培養液C1を第2培養液貯留室2から第1培養液貯留室1に導くことができる。
【0023】
蓋部13は、槽本体12の開口を開閉自在かつ気密に閉止可能である。詳しくは、蓋部13は、第1培養液貯留室1および第2培養液貯留室2の上部開口1b,2bをそれぞれ気密に閉止可能である。蓋部13が上部開口1b,2bを気密に閉止する構造としては、例えば、蓋部13が、上部開口1b,2bのそれぞれを包囲するように与えられたパッキン15を介して槽本体12の上面に当接する構造を例示できる。なお、
図1では、蓋部13は、槽本体12から離間して示されている。
【0024】
蓋部13は、第1培養液貯留室1、第2培養液貯留室2に相当する位置に、それぞれ通気孔1h,2hを有する。通気孔1h,2hは、それぞれ第1培養液貯留室1および第2培養液貯留室2に対して気体(例えば空気)を供給、および、第1培養液貯留室1および第2培養液貯留室2から気体(例えば空気)を排出することができる。通気孔1h,2hにはそれぞれエアフィルタ16が設けられることが好ましい。エアフィルタ16によって、第1培養液貯留室1および第2培養液貯留室2に異物が混入するのを防ぐことができる。
【0025】
第1培養液貯留室1には、培養液導入流路5の一端に、第1培養液貯留室1から培養液導入流路5への液体の流れを許容し、かつ第1培養液貯留室1から培養液導入流路5への気体の流入を阻止するラプラス弁31が設けられている。
第1培養液貯留室1には、連絡流路7の他端に、連絡流路7から第1培養液貯留室1へ向かう方向の液体の流れを許容し、かつその逆の方向の流れを阻止する逆止弁32が設けられている。
第2培養液貯留室2には、培養液導出流路6の他端に、培養液導出流路6から第2培養液貯留室2へ向かう方向の液体の流れを許容し、かつその逆の方向の流れを阻止する逆止弁34が設けられている。
【0026】
(逆止弁)
逆止弁32,34としては、例えば弁孔を有する弁座と、弁体とを備えた構造の逆止弁を例示できる。この逆止弁は、液が順方向に流れる際には、弁体が弁座から離れることにより弁孔が開かれるため、液は弁孔を通過して順方向に流れる。液が逆方向に流れる際には、弁体が弁座に当接して弁孔が閉止されるため、当該方向の液の流れは阻止される。
逆止弁32,34は、液体の流れを制御する逆流防止機構の例である。
【0027】
(ラプラス弁)
ラプラス弁31の構造と機能を、
図10A〜
図10Cを用いて説明する。
図10Aは、ラプラス弁117が設けられた液体貯留室の部分拡大図を示す。
図10Bは、ラプラス弁117を介して下流口114から連絡流路115に培地131が流入する場合の模式図を示す。
図10Cは、下流口114に空気が流入した際に、ラプラス弁117が機能している際の模式図を示す。
図10Cに示すように、微細な流路内において、培地131と空気との間には界面張力による圧力差、すなわちラプラス圧が発生する。流路の表面が液体培地で濡れている場合は、ラプラス圧未満の空気圧条件下において液体が満たされた微細流路に空気は流入しえない。このような条件下で微細流路は受動的な空気流入防止機構として扱うことができる。
【0028】
ラプラス弁の設計について、以下に説明する。
ラプラス弁に空気が流入してしまう圧力(ラプラス圧、限界圧力)(ΔP
Lap)は界面張力(γ)およびラプラス弁を構成するマイクロ流路の幅(w
L)および深さ(h
L)によって以下の式(2)で計算できる。
【0030】
細胞培養装置を駆動するための現実的な圧力範囲は市販の圧力制御装置で調整可能な圧力範囲および細胞の耐圧性によって決定されると考えられる。
仮に細胞の耐圧性を生体内の血圧の上限程度(30kPa=225mmHg)とすると、実施形態の細胞培養装置を駆動するために現実的な圧力範囲は1kPa〜30kPa程度となる。培養液の界面張力は60mN/m程度であり、ラプラス弁を構成するマイクロ流路の断面が正方形の場合、つまりw
L=h
Lの場合、30kPaで空気が流入するマイクロ流路の寸法は上記式(2)よりw
L=h
L=8μm程度、1kPaで空気が流入するマイクロ流路の寸法はw
L=h
L=240μm程度と推算される。
ラプラス弁を構成するマイクロ流路の寸法を上記寸法(30kPaのときのw
L=h
L=8μm、1kPaのときのw
L=h
L=240μm)よりも小さくすることで、想定する圧力で運用した際にラプラス弁に空気が流入してしまうことを防ぐことができる。
すなわち、ラプラス弁が機能するための限界の圧力であるラプラス圧ΔP
Lapが、実施形態の細胞培養装置で使用する圧力範囲よりも大きくなるように、ラプラス弁を構成するマイクロ流路を形成すれば、ラプラス弁に空気が流入してしまうことを防ぐことができる。
なお、w
Lとh
Lの比率が1:1でない場合も同様に式(2)に基づいて流路の寸法を設計することが可能である。
細胞培養装置10では、例えば、培養液導入流路5の幅および深さをそれぞれ200μmおよび25μmと設計し、ラプラス圧が5.4kPaと推算して、圧力がこの値以下となるように液体を培養液導入流路5に流すことができる。
ラプラス弁31は、液体の流れを制御する逆流防止機構の例である。
【0031】
(抵抗流路)
断面が矩形のマイクロ流路を流れる液体の流量(Q)と圧力損失(ΔP)には以下の関係がある(F. M. White, Viscous Fluid Flow, McGraw-Hill Companies, Inc, Boston, 2006を参照)。
【0034】
上記式(3)および式(4)において、ΔPはマイクロ流路の入口と出口の圧力差、Rは流路抵抗、μは流体の粘度、lはマイクロ流路の長さ、wはマイクロ流路の幅、hはマイクロ流路の深さである。当該式(3)および式(4)はw>hの条件で成立する。
例えば、細胞培養装置10では、培養液導入流路5、培養液導出流路6、および連絡流路7は、流量を調節するために流路断面積が1/10以下となっている抵抗流路部位5a,6a,7aを備えていてもよい。
流路5,6,7において、抵抗流路部位と、それ以外の部分の部位との長さが等しい場合を考える。抵抗流路の断面積が他の部位の断面積の1/10となると、幅w、深さhが1/10
0.5となり、式(4)の抵抗流路の流路抵抗Rが、抵抗流路以外の部位の流路抵抗Rの100倍となる。
式(3)より、圧力損失についても抵抗流路の圧力損失が、抵抗流路以外の部位の圧力損失の100倍となる。流路全体を流れる流量を推算する際に、抵抗流路の抵抗と流路全体にかかる圧力のみを考慮して流量を推算した場合の推算誤差が1/100となり、これは許容できる誤差と言える。
すなわち、流路の一部に流量を調節するために流路断面積が1/10以下となっている抵抗流路部位が設けられた場合には、抵抗流路の圧力損失のみを考慮して流路設計をすることで流路網の設計が容易になるという利点がある。
なお、抵抗流路部位は、培養液導入流路5および培養液導出流路6の一方にのみ形成してもよい。
加圧ポンプ14は、例えばコンプレッサである。
【0035】
[細胞培養方法]
次に、細胞培養装置10を用いて細胞を培養する方法の一例について説明する。
【0036】
なお、本実施形態において培養する細胞は、特に限定されず、例えばヒトを含む動物由来の細胞、植物由来の細胞、微生物由来の細胞等を目的に応じて使用できる。
【0037】
(1)工程1
図1および
図2に示すように、細胞20を隔膜4の内面4aに播種して接着させる。主培養液室3の流通空間3aには培養液C1を導入してもよい。
隔膜4に播種する細胞20としては、尿細管細胞、脳血管内皮細胞などが使用できる。尿細管細胞を用いることによって、腎臓モデルが得られる。脳血管内皮細胞を用いることによって、血液脳関門モデルが得られる。
【0038】
培養液C1を第1培養液貯留室1に導入する。第1培養液貯留室1の凹部1dには細胞を播種してもよい。培養液C1は第2培養液貯留室2にも導入してもよい。第2培養液貯留室2の凹部2dには細胞を播種してもよい。その上で、蓋部13をパッキン15に押し当てるようにして閉じ、少なくとも第1培養液貯留室1の上部開口1bを気密に閉止する。
【0039】
(2)工程2
加圧ポンプ14を稼働させ、通気孔1hを通して第1培養液貯留室1に気体(例えば空気)を供給して第1培養液貯留室1内を加圧する。この際、第2培養液貯留室2は通気孔2hを通して大気に開放しておくことが好ましい。
第1培養液貯留室1内の圧力上昇によって、第1培養液貯留室1内の培養液C1は、培養液導入流路5を通って主培養液室3の流通空間3aに導入される。流通空間3a内の培養液C1は、培養液導出流路6を通って第2培養液貯留室2に導入される。
培養液C1は、第1培養液貯留室1から主培養液室3の流通空間3aを経て第2培養液貯留室2に流れるため、シェアストレスが加えられる環境下で細胞20の培養を行うことができる。
【0040】
(3)工程3
加圧ポンプ14によって、通気孔2hを通して第2培養液貯留室2に気体(例えば空気)を供給して各室内を加圧すると、第2培養液貯留室2内の圧力上昇によって、第2培養液貯留室2内の培養液C1は、連絡流路7を通って第1培養液貯留室1に導入される。なお、この際、第1培養液貯留室1は大気に開放しておくことが好ましい。
工程2,3を繰り返すことによって、第1培養液貯留室1、主培養液室3(流通空間3a)、第2培養液貯留室2の間で培養液C1を循環させることができる。
【0041】
被検体となる物質を系内(例えば主培養液室3の流通空間3a)に添加することによって、この物質の、細胞20に対する影響を評価することができる。被検体となる物質としては医薬品候補化合物、食品添加物、化粧品原料、塗料、農薬といった、各種化成品に利用される化学物質が挙げられる。なお、被検体はこれらに限定されない。
【0042】
細胞培養装置10では、送液のための流路の構造を簡略にすることができるため、装置構造を簡略化して装置を小型化するとともに、装置の設定等の操作を容易にすることができる。例えば、非特許文献8,10,11等に示す装置では、それぞれ、シリンジポンプ、カートリッジ式のペリスタポンプを用いて送液する構造が採用されており、送液のための配管接続が本実施形態よりも複雑となるとともに、装置が大型化し、試験の操作もより複雑である。
【0043】
(第2実施形態)
[細胞培養装置]
第2実施形態の細胞培養装置10Aについて、図面を参照して説明する。以下、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、細胞培養装置10Aにおいて、貯留槽11Aは、複数の細胞培養ユニット9を有する。細胞培養ユニット9の数は、2以上の任意の数であってよい。
複数の細胞培養ユニット9のうち、隣り合う2つの細胞培養ユニット9,9の第1培養液貯留室1,1は、気体流路18(接続流路)によって互いに連通されている。
気体流路18の一端および他端は、第1培養液貯留室1,1内の上部気相空間1f,1fに接続されているため、気体流路18は、気体が流通可能となるように第1培養液貯留室1,1を接続している。
細胞培養ユニット9の数が3以上である場合には、少なくとも2つの細胞培養ユニット9の第1培養液貯留室1が気体流路18によって互いに連通されていればよい。
【0044】
細胞培養装置10Aでは、複数の第1培養液貯留室1のうち一部の第1培養液貯留室1を加圧することによって、気体流路18を介して接続されたすべての第1培養液貯留室1を一括的に加圧し、培養液C1を第1培養液貯留室1から主培養液室3の流通空間3aを経て第2培養液貯留室2に送ることができる。そのため、細胞培養装置10Aでは、容易な操作で、複数の試験を並列的に行うことができる。
また、少ない数の加圧ポンプ14(
図1参照)によって送液が可能となるため、装置の構造を簡略にすることができる。そのため、装置構造を簡略化して装置を小型化するとともに、装置の設定等の操作を容易にすることができる。
上述の非特許文献8,10,11等に示す装置では、それぞれ、シリンジポンプ、カートリッジ式のペリスタポンプを用いて送液する構造が採用されており、1つの被検体を評価するために1台のポンプと1つのOrgan-on-a-chipを使用している。
この構造で複数の被検体を評価しようとすると、対象となる被検体の数だけポンプやペリスタポンプのカートリッジを増設する必要があるため、送液のための配管接続が増えてしまう。
図3に示す細胞培養装置10Aは、容易な操作で、多数の被検体(薬剤等)を効率よく評価できる点で、非特許文献8,10,11等に示す装置より優れている。
【0045】
(第3実施形態)
[細胞培養装置]
第3実施形態の細胞培養装置10Bについて、図面を参照して説明する。
図4は、細胞培養装置10Bを模式的に示す断面図である。
図4に示すように、細胞培養装置10Bは、貯留槽11Bと、加圧ポンプ(図示略)とを備えている。貯留槽11Bは、1つの細胞培養ユニット9Bを備えている。貯留槽11Bは、槽本体12Bと、蓋部13Bと、を備えている。
細胞培養ユニット9Bは、主培養液室3と、第1培養液貯留室1と、第2培養液貯留室2と、隔膜4と、培養液導入流路5と、培養液導出流路6と、連絡流路7と、第1液体貯留室21と、第2液体貯留室22と、液体導入流路25と、液体導出流路26と、連絡流路27と、を有する。
【0046】
第1液体貯留室21および第2液体貯留室22は、貯留槽11Bの槽本体12Bの上面に形成された凹部によって形成された空間であり、培養液C2を貯留可能である。
第1液体貯留室21は、主室21cと、主室21cの底面21eに形成された細胞保持凹部21d(細胞保持部)とを有する。第1液体貯留室21の内部空間は培養液貯留空間21aである。
第2液体貯留室22は、主室22cと、主室22cの底面22eに形成された細胞保持凹部22d(細胞保持部)とを有する。第2液体貯留室22の内部空間は培養液貯留空間22aである。
【0047】
第1液体貯留室21および第2液体貯留室22では、主培養液室3の細胞20と異なる細胞を培養することも可能である。例えば、主培養液室3において血管内皮細胞を培養し、第1液体貯留室21において肝実質細胞を培養し、第2液体貯留室22において神経細胞を培養し、第1培養液貯留室1に被検体物質を添加することで、所定の生理学的な条件(例えば、シェアストレス負荷条件)下で培養された血管壁を透過した被検体物質が肝臓や神経に及ぼす影響を評価することが可能となる。
【0048】
液体導入流路25は、一端が第1液体貯留室21の主室21cの底部に接続され、他端が主培養液室3の凹部3dの底部に接続されている。液体導入流路25は、培養液C2を第1液体貯留室21から主培養液室3の外面側空間3bに導くことができる。
液体導出流路26は、一端が主培養液室3の凹部3dの底部に接続され、他端が第2液体貯留室22の底部に接続されている。液体導出流路26は、培養液C2を主培養液室3の外面側空間3bから第2液体貯留室22に導くことができる。
連絡流路27は、一端が第2液体貯留室22の主室22cの底部に接続され、他端が第1液体貯留室21の主室21cの底部に接続されている。連絡流路27は、培養液C2を第2液体貯留室22から第1液体貯留室21に導くことができる。
【0049】
蓋部13Bは、槽本体12Bの開口を開閉自在かつ気密に閉止可能である。例えば、蓋部13Bは、第1培養液貯留室1および第2培養液貯留室2の上部開口1b,2bと、第1液体貯留室21および第2液体貯留室22の上部開口21b,22bと、を、それぞれ気密に閉止可能である。
蓋部13Bが上部開口1b,2b,21b,22bを気密に閉止する構造としては、例えば、蓋部13が、上部開口1b,2b,21b,22bのそれぞれを包囲するように与えられたパッキン15を介して槽本体12Bの上面に当接する構造を例示できる。
【0050】
蓋部13Bは、第1培養液貯留室1、第2培養液貯留室2、第1液体貯留室21、および第2液体貯留室22に相当する位置に、それぞれ通気孔1h,2h,21h,22hを有する。通気孔1h,2h,21h,22hは、それぞれ貯留室1,2,21,22に対して気体(例えば空気)を供給、および、貯留室1,2,21,22から気体(例えば空気)を排出することができる。通気孔1h,2h,21h,22hにはそれぞれエアフィルタ16が設けられることが好ましい。
【0051】
第1液体貯留室21には、液体導入流路25の一端に、第1液体貯留室21から液体導入流路25への液体の流れを許容し、かつ第1液体貯留室21から液体導入流路25への気体の流入を阻止するラプラス弁35が設けられている。
第1液体貯留室21には、連絡流路27の他端に、連絡流路27から第1液体貯留室21へ向かう方向の液体の流れを許容し、かつその逆の方向の流れを阻止する逆止弁36が設けられている。
【0052】
第2液体貯留室22には、連絡流路27の一端に、第2液体貯留室22から連絡流路27への液体の流れを許容し、かつ第2液体貯留室22から連絡流路27への気体の流入を阻止するラプラス弁37が設けられている。
第2液体貯留室22には、液体導出流路26の他端に、液体導出流路26から第2液体貯留室22へ向かう方向の液体の流れを許容し、かつその逆の方向の流れを阻止する逆止弁38が設けられている。
液体導入流路25、液体導出流路26、および連絡流路27には、それぞれ抵抗流路部位25a,26a,27aが形成されている。
【0053】
[細胞培養方法]
次に、細胞培養装置10Bを使用した細胞培養方法の一例について説明する。
【0054】
(1)工程1
細胞20Aを主培養液室3の隔膜4の内面4aに播種して接着させる。細胞20Bを第2液体貯留室22の凹部22dに播種する。
【0055】
(2)工程2
第2培養液貯留室2に培養液C1を導入するとともに、第2液体貯留室22に培養液C2を導入し、蓋部13Bを閉じる。
【0056】
(3)工程3
通気孔2h、22hを通して第2培養液貯留室2および第2液体貯留室22に気体(例えば空気)を供給して各室内を加圧する。この際、第1培養液貯留室1および第1液体貯留室21は大気に開放しておくことが好ましい。
第2培養液貯留室2内の圧力上昇によって、第2培養液貯留室2内の培養液C1は、連絡流路7を通って第1培養液貯留室1に導入される。第2液体貯留室22内の圧力上昇によって、第2液体貯留室22内の培養液C2は、連絡流路27を通って第1液体貯留室21に導入される。
【0057】
(4)工程4
通気孔1h、21hを通して第1培養液貯留室1および第1液体貯留室21に気体(例えば空気)を供給して各室内を加圧する。この際、第2培養液貯留室2および第2液体貯留室22は大気に開放しておくことが好ましい。
第1培養液貯留室1内の圧力上昇によって、第1培養液貯留室1内の培養液C1は、培養液導入流路5を通り、主培養液室3の流通空間3aを経て第2培養液貯留室2に流れる。第1液体貯留室21内の圧力上昇によって、第1液体貯留室21内の培養液C2は、液体導入流路25を通り、主培養液室3の外面側空間3bを経て第2液体貯留室22に流れる。
【0058】
工程3,4を繰り返すことによって、第1培養液貯留室1、主培養液室3(流通空間3a)、第2培養液貯留室2の間で培養液C1を循環させることができる。また、第1液体貯留室21、主培養液室3(外面側空間3b)、培養液導出流路22の間で培養液C2を循環させることができる。このように、培養液C1,C2を循環させることができるため、シェアストレスが加えられる環境下で細胞20A,20Bの培養を行うことができる。
【0059】
細胞培養装置10Bでは、送液のための流路の構造を簡略にすることができるため、装置構造を簡略化して装置を小型化するとともに、装置の設定等の操作を容易にすることができる。
細胞培養装置10Bは、細胞20Aに脳血管内皮細胞を用い、細胞20Bに脳神経細胞を用いることで脳への薬物輸送・薬効発現評価モデルとして使用できる。
【0060】
(第4実施形態)
[細胞培養装置]
第4実施形態の細胞培養装置10Cについて、図面を参照して説明する。
図5は、細胞培養装置10Cを模式的に示す断面図である。
図5に示すように、細胞培養装置10Cは、貯留槽11Cと、加圧ポンプ(図示略)とを備えている。貯留槽11Cは、1つの細胞培養ユニット9Cを備えている。貯留槽11Cは、槽本体12Cと、蓋部13Cと、を備えている。
【0061】
細胞培養ユニット9Cは、主培養液室3と、第1培養液貯留室1と、第2培養液貯留室2と、第3培養液貯留室8と、主培養液室3内の隔膜4(4C1)と、第3培養液貯留室8内の隔膜4(4C2)と、培養液導入流路5Cと、培養液導出流路6と、第1連絡流路7C1と、第2連絡流路7C2と、第1液体貯留室21と、第2液体貯留室22と、液体導入流路25と、液体導出流路26と、連絡流路27と、を有する。
【0062】
第3培養液貯留室8は、主室8cと、主室8cの底面8eに形成された凹部8dとを有する。主室8cの内部空間は培養液C3が貯留される貯留空間8aである。凹部8dの内部空間のうち、凹部8d内に設けられた隔膜4(4C2)の内面4a側の空間は貯留空間8aの一部である。凹部8dの内部空間のうち隔膜4(4C2)の外面4b側の空間は、外面側空間8bである。
隔膜4(4C2)は、貯留空間8aと外面側空間8bとを隔てるように設置されている。隔膜4(4C2)の内面4a(一方の面)は貯留空間8aに臨み、外面4b(他方の面)は外面側空間8bに臨んでいる。
【0063】
培養液導入流路5Cは、一端が第3培養液貯留室8の凹部8dの底部に接続され、他端が主培養液室3の主室3cの底部に接続されている。培養液導入流路5Cは、培養液C1を第3培養液貯留室8の外面側空間8bから主培養液室3の流通空間3aに導くことができる。
第1連絡流路7C1は、一端が第2培養液貯留室2の主室2cの底部に接続され、他端が第1培養液貯留室1の主室1cの底部に接続されている。第1連絡流路7C1は、培養液C1を第2培養液貯留室2から第1培養液貯留室1に導くことができる。
第2連絡流路7C2は、一端が第1培養液貯留室1の主室1cの底部に接続され、他端が第3培養液貯留室8の凹部8dの底部に接続されている。第2連絡流路7C2は、培養液C1を第2培養液貯留室2から第3培養液貯留室8の外面側空間8bに導くことができる。
培養液導入流路5C、第1連絡流路7C1、および第2連絡流路7C2には、それぞれ抵抗流路部位5Ca,7C1a,7C2aが形成されている。
【0064】
次に、細胞培養装置10Cを使用した細胞培養方法の一例について説明する。
(1)工程1
細胞20Aを第3培養液貯留室8の隔膜4(4C2)の内面4aに播種して接着させる。細胞20Bを第1培養液貯留室1の凹部1dに播種する。細胞20Cを第2培養液貯留室2の凹部2dに播種する。細胞20Dを主培養液室3の隔膜4(4C1)の内面4aに播種して接着させる。
(2)工程2
第2培養液貯留室2に培養液C1を導入するとともに、第2液体貯留室22に液体培地M1(液体)を導入し、蓋部13Cを閉じる。
【0065】
(3)工程3
第2培養液貯留室2および第2液体貯留室22に気体を供給して各室内を加圧する。
培養液C1は、第2培養液貯留室2、第1連絡流路7C1、第1培養液貯留室1の順に流れる。
液体培地M1は、第2液体貯留室22、連絡流路27、第1液体貯留室21の順に流れる。
【0066】
(4)工程4
第1培養液貯留室1および第1液体貯留室21に気体を供給して各室内を加圧する。
培養液C1は、第1培養液貯留室1、第3培養液貯留室8の外面側空間8b、主培養液室3の流通空間3a、第2培養液貯留室2の順に流れる。
液体培地M1は、第1液体貯留室21、主培養液室3の外面側空間3b、第2液体貯留室22の順に流れる。
【0067】
工程3,4を繰り返すことによって、第2培養液貯留室2、第1培養液貯留室1、第3培養液貯留室8(外面側空間8b)、主培養液室3(流通空間3a)の間で培養液C1を循環させることができる。また、第2液体貯留室22、第1液体貯留室21、主培養液室3(外面側空間3b)の間で培養液を循環させることができる。そのため、シェアストレスが加えられる環境下で細胞20A〜20Dの培養を行うことができる。
【0068】
細胞培養装置10Cでは、送液のための流路の構造を簡略にすることができるため、装置構造を簡略化して装置を小型化するとともに、装置の設定等の操作を容易にすることができる。
【0069】
細胞培養装置10Cは、細胞20Aに腸管上皮細胞(小腸モデル)を用い、細胞20Bに肝細胞(肝臓モデル)を用い、細胞20Cにがん細胞(がんモデル)を用い、細胞20Dに尿細管細胞(腎臓モデル)を用いることで、腸で吸収され、肝臓で代謝され、腎臓で排泄される薬剤の薬物動態評価、全身性の抗がん作用発現評価モデルとして使用できる。
【0070】
第3実施形態の細胞培養装置10Bの具体例について、図面を参照して説明する。
図6は、細胞培養装置10Bを示す斜視図である。
図7は、細胞培養装置10Bの分解斜視図である。
図8Aは細胞培養装置10Bの分解状態の正断面図である。
図8Bは細胞培養装置10Bの正断面図である。
図9Aは細胞培養装置10Bの分解状態の側断面図である。
図9Bは細胞培養装置10Bの側断面図である。
【0071】
図6〜
図9Bに示すように、細胞培養装置10Bの貯留槽11Bは、複数の細胞培養ユニット9B(
図4参照)を備えている。
貯留槽11Bは、槽本体12Bと、蓋部13Bと、基体部40と、蓋部押圧部41と、壁部押圧部47と、を備えている。
基体部40は、底板51と、底板51の側縁から上方に突出して形成された厚肉部52,52と、底板51の端縁から上方に突出して形成された端壁部53,53と、を備えている。底板51と、厚肉部52,52と、端壁部53,53とは、底部プレート45を収容する収容空間54を画成している。厚肉部52の両端面には、押圧バー43の端部が挿入される挿入穴52a、および押圧バー48の端部が挿入される挿入穴52bが形成されている。基体部40は、底板51上に置かれた槽本体12Cを支持する。
【0072】
蓋部押圧部41は、槽本体12Bに向けて蓋部13を押圧する一対の押圧バー43(押圧部材)を有する。押圧バー43は、両端部を挿入穴52aに挿入した状態で、この挿入部分を支点として、厚肉部52に沿う中心軸の軸周り方向に回動可能となっている。押圧バー43は、蓋部13Bの上面の両側部に形成された係止凹部55に係止させることができる。これによって、蓋部13Bを槽本体12Bに対して押さえつけた状態で保持するとともに、槽本体12Bの内部空間を密閉することができる。
【0073】
槽本体12Bは、底部プレート45と、底部プレート45の上面45a(一方の面)に設けられたブロック状の壁部46と、を備えている。
壁部46は、厚さ方向に貫通して形成された複数の貫通孔部50を有する。第1培養液貯留室1、第2培養液貯留室2、主培養液室3、第1液体貯留室21、および第2液体貯留室22は、貫通孔部50と、底部プレート45とによって区画される空間であり、平面視形状はそれぞれ長円形である。
【0074】
底部プレート45には、培養液導入流路5と、培養液導出流路6と、連絡流路7と、液体導入流路25と、液体導出流路26と、連絡流路27とが形成されている(
図4参照)。
壁部押圧部47は、底部プレート45に向けて壁部46を押圧する押圧バー48(押圧部材)を有する。押圧バー48は、例えば金属などで構成されており、両端部を挿入穴52bに挿入した状態で、この挿入部分を支点として、厚肉部52に沿う中心軸の軸周り方向に回動可能となっている。押圧バー48は、壁部46の両側部に形成された係止凹部56に係止させることができる。これによって、壁部46を底部プレート45に対して押圧し、底部プレート45に隙間なく密着させることができる。壁部押圧部47は、押圧バー48によって、壁部46を底部プレート45に向けて押さえつけた状態で保持することができる。
【0075】
図8Aおよび
図8Bに示すように、細胞培養装置10Bでは、複数の細胞培養ユニット9Bの第1培養液貯留室1のうち少なくとも2つは気体流路18によって互いに連通されていることが好ましい。また、複数の細胞培養ユニット9Bの第2培養液貯留室2のうち少なくとも2つは気体流路(図示略)によって互いに連通されていることが好ましい。また、複数の細胞培養ユニット9Bの第1液体貯留室21のうち少なくとも2つは気体流路(図示略)によって互いに連通されていることが好ましい。また、複数の細胞培養ユニット9Bの第2液体貯留室22のうち少なくとも2つは気体流路(図示略)によって互いに連通されていることが好ましい。
【0076】
細胞培養装置10Bでは、複数の細胞培養ユニット9Bが、蓋部13Bに形成された気体流路18によって互いに連通されているため、複数の細胞培養ユニット9Bの貯留室を一括的に加圧することができる。例えば、複数の第1培養液貯留室1を一括的に加圧することができる。同様に、第2培養液貯留室2、第1液体貯留室21、および第2液体貯留室22についても一括的な加圧が可能である。そのため、細胞培養装置10Bでは、容易な操作で、複数の細胞培養ユニット9Bにおける試験を並列的に行うことができる。
【0077】
槽本体12Bおよび蓋部13Bは、例えば樹脂(プラスチック)、ガラス等が使用できる。細胞を光学的に観察することが容易であることから、前記材料は透明材料であることが好ましく、具体的には樹脂およびガラスが好ましい。
樹脂としては、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA))、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)、ポリビニルピリジン系樹脂(ポリ(4−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジン−スチレン共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET))、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等がある。
なかでも、シリコーン系樹脂(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂(例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA))、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)は、高い透明性を有するため好ましい。
【0078】
細胞培養装置10Bでは、複数の細胞培養ユニット9Bを有するため、複数の試験を並列的に行うことができる。また、装置の構造を簡略にすることができるため、装置構造を簡略化して装置を小型化するとともに、装置の設定等の操作を容易にすることができる。
細胞培養装置10Bは、容易な操作で、多数の被検体の影響を効率よく評価できる点で優れている。
【0079】
上述の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
例えば、
図4等に示す細胞培養装置10Bの貯留槽11Bは、槽本体12Bと蓋部13Bとを有するが、これに限らず、一体型の貯留槽を採用してもよい。
本実施形態は、細胞工学分野、再生医療分野、バイオ関連工業分野、組織工学分野などにおいて有用である。特に、医薬品の開発、細胞生物学の基礎研究に有用である。