特許第6823997号(P6823997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6823997着色剤分散液、感光性樹脂組成物、硬化物、有機EL素子、パターンの形成方法、及び感光性樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6823997
(24)【登録日】2021年1月14日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】着色剤分散液、感光性樹脂組成物、硬化物、有機EL素子、パターンの形成方法、及び感光性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20210121BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20210121BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210121BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20210121BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20210121BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210121BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20210121BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20210121BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20210121BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20210121BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20210121BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20210121BHJP
   B01F 17/22 20060101ALI20210121BHJP
   B01F 17/54 20060101ALI20210121BHJP
   C07F 7/21 20060101ALN20210121BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C09B67/20 F
   G03F7/004 505
   G03F7/075 511
   G03F7/075 521
   G03F7/027 512
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
   C08G59/17
   C08G77/26
   C08F290/00
   C09B67/20 L
   B01F17/52
   B01F17/22
   B01F17/54
   !C07F7/21
【請求項の数】14
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2016-209008(P2016-209008)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-70695(P2018-70695A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】松本 直純
(72)【発明者】
【氏名】大内 康秀
(72)【発明者】
【氏名】石川 達郎
(72)【発明者】
【氏名】黒子 麻祐美
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0272765(US,A1)
【文献】 特開2015−125190(JP,A)
【文献】 特開2013−114184(JP,A)
【文献】 特開2015−199812(JP,A)
【文献】 特開2014−172968(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/152617(WO,A1)
【文献】 特開2004−146079(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0243452(US,A1)
【文献】 特開2003−221306(JP,A)
【文献】 特開2002−309149(JP,A)
【文献】 特表2016−533880(JP,A)
【文献】 特開2016−143062(JP,A)
【文献】 特開2013−134264(JP,A)
【文献】 特開2006−259266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09B 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤(E)を含む着色剤分散液であって、
前記着色剤(E)が、顔料(E1)と、分散剤(E2)とを含み、
前記分散剤(E2)が、下記式(e2a):
【化1】
(式(e2a)中、Re1は1価の有機基である。)
で表される構成単位を有するシルセスキオキサン化合物を含
前記式(e2a)で表される構成単位が、下記式(e2a−I):
−X−B−Y−COOH・・・(e2a−I)
で表される基を前記Re1として有する構成単位(A)と、下記式(e2a−II):
−Z−A・・・(e2a−II)
で表される基を前記Re1として有する構成単位(B)とを含み、
が、単結合、炭素原子数1〜6のアルキレン基、炭素原子数6〜12のアリーレン基、又は−Re6−NH−Re7−で表される基であり、
e6及びRe7が、それぞれ独立に、炭素原子数1〜3のアルキレン基であり、
が、2価の環式有機基であり、
が、−NH−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、又は−NH−CO−NH−であり、
及びYは、それぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、及びエポキシ基含有有機基からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよく、
が、単結合、炭素原子数1〜6のアルキレン基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基である、
が、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、又はエポキシ基含有有機基である、着色剤分散液。
【請求項2】
前記顔料(E1)の含有量が、前記着色剤分散液の固形分全体の質量に対して30〜95質量%である、請求項1に記載の着色剤分散液。
【請求項3】
前記分散剤(E2)の量が、前記着色剤分散液の固形分全体の質量に対して、5〜70質量%である、請求項1又は2に記載の着色剤分散液。
【請求項4】
前記顔料(E1)が遮光剤を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の着色剤分散液。
【請求項5】
アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、請求項1〜のいずれか1項に記載の着色剤分散液とを含む、感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記顔料(E1)の含有量が、前記感光性樹脂組成物の固形分全体の質量に対して5〜80質量%である、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、カルド骨格を有する樹脂を含む、請求項又はに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記カルド骨格を有する樹脂が、下式(a−1):
【化2】
(式(a−1)中、Xは、下記式(a−2):
【化3】
で表される基を示し、前記式(a−2)中、Ra1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Ra2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Ra3は、それぞれ独立に直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、m2は、0又は1を示し、Wは下記式(a−3):
【化4】
で表される基を示し、前記式(a−3)中の環Aは芳香族環が縮合していてもよく置換基を有していてもよい脂肪族環を示し、Ra0は水素原子又は−CO−Y−COOHで表される基であり、Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基を除いた2価の残基を示し、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2つの酸無水物基を除いた4価の残基を示す。また、式(a−1)中、m1は0〜20の整数を表す。)
で表される樹脂である、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
1分子中に複数個のエポキシ基又はオキセタニル基を備える多官能架橋性化合物(D)を含み、
前記多官能架橋性化合物(D)のエポキシ当量又はオキセタニル当量が50〜350g/eqである、請求項のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記多官能架橋性化合物(D)が、1分子あたり2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含む、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物を備える、有機EL素子。
【請求項13】
請求項10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を塗布することで、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
露光された前記塗布膜を現像する工程と、を含む、パターンの形成方法。
【請求項14】
請求項10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
前記顔料(E1)を、前記分散剤(E2)の存在下、液中に分散させることで、前記着色剤分散液を準備する工程と、
前記着色剤分散液と、前記アルカリ可溶性樹脂(A)、前記光重合性モノマー(B)、及び前記(C)光重合開始剤とを混合する工程と、
を含む、感光性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤分散液と、当該着色剤分散液を含む感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物の硬化物と、当該硬化物を備える有機EL素子と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターンの形成方法と、前述の着色剤分散液を用いる感光性樹脂組成物の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL表示素子や、カラーフィルタ、有機TFTアレイ等の光学素子は、基板上に、画素を取り囲むバンク(隔壁)を形成した後に、バンクに囲まれた領域内に、種々の機能層を設けることで製造されている。このようなバンクを容易に形成する方法として、感光性樹脂組成物を用いるフォトリソグラフィー法によりバンクを形成する方法が知られている(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/069789号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の方法に従って、バンクとして使用され得る硬化膜を形成する場合、硬化膜からのガス発生量が多くなることが懸念される。有機EL素子において、バンクは、ITO等の電極層や、発光層に接するように設けられる。そして、電極層や発光層がバンクから発生するガスで汚染されてしまうと、これらの劣化が促進されることが懸念される。
このため、発生ガス量の少ない硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物が望まれている。
【0005】
感光性樹脂組成物を硬化させた硬化膜からのガス発生は種々の原因によるが、一因として、感光性樹脂組成物に含まれる種々の成分の分解が挙げられる。
この点、バンクとして使用される硬化膜の形成に用いられる感光性樹脂組成物は、通常、分散剤により分散された顔料を含む着色剤分散液を含有し、分散剤は分解によるガス発生の一因であると考えられる。
このため、着色剤分散液に含まれる分散剤の改変による、硬化膜からのガス発生の抑制が期待される。
他方で、顔料分散液である以上、当然、顔料分散液には、顔料の良好な分散が維持されていることが求められる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、良好に分散された顔料を含み、感光性樹脂組成物に配合した場合に、発生ガス量の少ない硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物を与える着色剤分散液と、当該着色剤分散液を含む感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物の硬化物と、当該硬化物を備える有機EL素子と、前述の感光性樹脂組成物を用いるパターンの形成方法と、前述の着色剤分散液を用いる感光性樹脂組成物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料(E1)と分散剤(E2)とを含む着色剤(E)を含有する着色剤分散液において、特定の構造のシルセスキオキサン化合物を含む分散剤(E2)を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、着色剤(E)を含む着色剤分散液であって、
着色剤(E)が、顔料(E1)と、分散剤(E2)とを含み、
分散剤(E2)が、下記式(e2a):
【化1】
(式(e2a)中、Re1は1価の有機基である。)
で表される構成単位を有するシルセスキオキサン化合物を含む、着色剤分散液である。
【0009】
本発明の第2の態様は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、第1の態様にかかる着色剤分散液とを含む、感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第2の態様にかかる感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物である。
【0011】
本発明の第4の態様は、第3の態様にかかる硬化物を備える、有機EL素子である。
【0012】
本発明の第5の態様は、第2の態様にかかる感光性樹脂組成物を塗布することで、塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
露光された塗布膜を現像する工程と、を含む、パターンの形成方法である。
【0013】
本発明の第6の態様は、第2の態様にかかる感光性樹脂組成物の製造方法であって、
顔料(E1)を、分散剤(E2)の存在下、液中に分散させることで、着色剤分散液を準備する工程と、
着色剤分散液と、アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合性モノマー(B)、及び(C)光重合開始剤とを混合する工程と、を含む、感光性樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発生ガス量の少ない硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物と、前述の感光性樹脂組成物用いて形成される硬化膜及び有機EL素子における発光層の区画用のバンクと、前述のバンクを備える有機EL素子用の基板及び有機EL素子と、前述の感光性樹脂組成物を用いる硬化膜及び有機EL素子における発光層の区画用のバンクの製造方法と、前述のバンクを備える有機EL素子用の基板を用いる有機EL素子の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明を行う。なお、本明細書中における「〜」は、とくに断りがなければ以上(下限値)から以下(上限値)を表す。
【0016】
≪着色剤分散液≫
着色剤分散液は、着色剤(E)を含む。着色剤(E)は、顔料(E1)と、分散剤(E2)とを含む。
分散剤(E2)は、下記式(e2a):
【化2】
(式(e2a)中、Re1は1価の有機基である。)
で表される構成単位を有するシルセスキオキサン化合物を含む。
かかる着色剤分散液は、上記の分散剤(E2)を含むため、顔料が良好に分散れている。また、上記の分散剤(E2)を含む着色剤分散液を含有する感光性樹脂組成物を用いて形成された硬化物では、ガスの発生が抑制される。
【0017】
以下、着色剤分散液に含まれる成分と、着色剤分散液の製造方法とについて説明する。
【0018】
<着色剤(E)>
着色剤分散液は着色剤(E)を含む。着色剤(E)は、顔料(E1)と分散剤(E2)とを必須に含む。
【0019】
着色剤(E)は、顔料(E1)以外にも、必要に応じて着色成分として染料を含んでいてもよい。この染料は公知の材料のなかから適宜選択すればよい。
染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料等を挙げることができる。
また、これら染料については、レーキ化(造塩化)することで有機溶媒等に分散させ、これを着色剤(E)に含有させてもよい。
これらの染料以外にも、例えば、特開2013−225132号公報、特開2014−178477号公報、特開2013−137543号公報、特開2011−38085号公報、特開2014−197206号公報等に記載の染料等も好ましく用いることができる。
これら染料もまた、後述の顔料(E1)(例えば、ペリレン系顔料、ラクタム系顔料、AgSn合金微粒子等)と組み合わせて使用することができる。
【0020】
〔顔料(E1)〕
顔料(E1)としては、特に限定されないが、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)において、ピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを用いるのが好ましい。
【0021】
好適に使用できる黄色顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様であり、番号のみを記載する。)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73,74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、及び185が挙げられる。
【0022】
好適に使用できる橙色顔料の例としては、C.I.ピグメントオレンジ1(以下、「C.I.ピグメントオレンジ」は同様であり、番号のみを記載する。)、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、及び73が挙げられる。
【0023】
好適に使用できる紫色顔料の例としては、C.I.ピグメントバイオレット1(以下、「C.I.ピグメントバイオレット」は同様であり、番号のみを記載する。)、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、及び50が挙げられる。
【0024】
好適に使用できる赤色顔料の例としては、C.I.ピグメントレッド1(以下、「C.I.ピグメントレッド」は同様であり、番号のみを記載する。)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、及び265が挙げられる。
【0025】
好適に使用できる青色顔料の例としては、C.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、及び66が挙げられる。
【0026】
好適に使用できる、上記の他の色相の顔料の例としては、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37等の緑色顔料、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、C.I.ピグメントブラウン28等の茶色顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等の黒色顔料が挙げられる。
【0027】
また、着色剤分散液は、着色剤(E)として遮光剤を含んでいてもよい。遮光剤を含む着色剤分散液は、液晶表示パネルにおけるブラックマトリクス又はブラックカラムスペーサの形成や、有機EL素子における発光層の区画用のバンクの形成に用いられる感光性樹脂組成物の調製に好適に用いられる。
【0028】
後述する分散剤(E2)を含む着色剤分散液を含有する感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化物はガスの発生が少ない。
このため、分散剤(E2)を含む着色剤分散液を含有する感光性樹脂組成物を用いて形成されたバンクは、有機EL素子において有機発光材料(発光層)や電極にダメージを与えにくい。そして、バンクが遮光剤を含む場合、有機EL素子内での内部反射や有機EL素子内への不要な光の入光を防ぎやすい。
以上より、遮光剤と分散剤(E2)とを含む感光性樹脂組成物は、有機EL素子における発光層の区画用のバンクの形成に特に好ましく用いられる。
【0029】
着色剤(E)が顔料(E1)として遮光剤を含む場合、遮光剤としては黒色顔料や紫顔料を用いることが好ましい。黒色顔料や紫顔料の例としては、カーボンブラック、ペリレン系顔料、ラクタム系顔料、チタンブラック、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩又は金属炭酸塩等、有機物、無機物を問わず各種の顔料を挙げることができる。
【0030】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。
【0031】
カーボンブラックとしては、酸性基を導入する処理を施されたカーボンブラックも好ましい。カーボンブラックに導入される酸性基は、ブレンステッドの定義による酸性を示す官能基である。酸性基の具体例としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。カーボンブラックに導入された酸性基は、塩を形成していてもよい。酸性基と塩を形成するカチオンは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。カチオンの例としては、種々の金属イオン、含窒素化合物のカチオン、アンモニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオンが好ましい。
【0032】
以上説明した酸性基を導入する処理を施されたカーボンブラックの中では、感光性樹脂組成物を用いて形成される遮光性の硬化膜の高抵抗を達成する観点で、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基からなる群より選択される1種以上の官能基を有するカーボンブラックが好ましい。
【0033】
カーボンブラックに酸性基を導入する方法は特に限定されない。酸性基を導入する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
1)濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等を用いる直接置換法や、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等を用いる間接置換法により、カーボンブラックにスルホン酸基を導入する方法。
2)アミノ基と酸性基とを有する有機化合物と、カーボンブラックとをジアゾカップリングさせる方法。
3)ハロゲン原子と酸性基とを有する有機化合物と、水酸基を有するカーボンブラックとをウィリアムソンのエーテル化法により反応させる方法。
4)ハロカルボニル基と保護基により保護された酸性基とを有する有機化合物と、水酸基を有するカーボンブラックとを反応させる方法。
5)ハロカルボニル基と保護基により保護された酸性基とを有する有機化合物を用いて、カーボンブラックに対してフリーデルクラフツ反応を行った後、脱保護する方法。
【0034】
これらの方法の中では、酸性基の導入処理が、容易且つ安全であることから、方法2)が好ましい。方法2)で使用されるアミノ基と酸性基とを有する有機化合物としては、芳香族基にアミノ基と酸性基とが結合した化合物が好ましい。このような化合物の例としては、スルファニル酸のようなアミノベンゼンスルホン酸や、4−アミノ安息香酸のようなアミノ安息香酸が挙げられる。
【0035】
カーボンブラックに導入される酸性基のモル数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。カーボンブラックに導入される酸性基のモル数は、カーボンブラック100gに対して、1〜200mmolが好ましく、5〜100mmolがより好ましい。
【0036】
酸性基を導入されたカーボンブラックは、樹脂による被覆処理を施されていてもよい。
樹脂により被覆されたカーボンブラックを含む着色剤分散液を含有する感光性樹脂組成物を用いる場合、遮光性及び絶縁性に優れ、表面反射率が低い遮光性の硬化物を形成しやすい。
なお、樹脂による被覆処理によって、感光性樹脂組成物を用いて形成される遮光性の硬化物の誘電率に対する悪影響は特段生じない。カーボンブラックの被覆に使用できる樹脂の例としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グリプタル樹脂、エポキシ樹脂、アルキルベンゼン樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。カーボンブラックに対する樹脂の被覆量は、カーボンブラックの質量と樹脂の質量の合計に対して、1〜30質量%が好ましい。
【0037】
また、遮光剤としてはペリレン系顔料も好ましい。ペリレン系顔料の具体例としては、下記式(e−1)で表されるペリレン系顔料、下記式(e−2)で表されるペリレン系顔料、及び下記式(e−3)で表されるペリレン系顔料が挙げられる。市販品では、BASF社製の製品名K0084、及びK0086や、ピグメントブラック21、30、31、32、33、及び34等を、ペリレン系顔料として好ましく用いることができる。
【0038】
【化3】
式(e−1)中、Re11及びRe12は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキレン基を表し、Re13及びRe14は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、又はアセチル基を表す。
【0039】
【化4】
式(e−2)中、Re15及びRe16は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜7のアルキレン基を表す。
【0040】
【化5】
式(e−3)中、Re17及びRe18は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基であり、N,O、S、又はPのヘテロ原子を含んでいてもよい。Re7及びRe8がアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0041】
上記の式(e−1)で表される化合物、式(e−2)で表される化合物、及び式(e−3)で表される化合物は、例えば、特開昭62−1753号公報、特公昭63−26784号公報に記載の方法を用いて合成することができる。すなわち、ペリレン−3,5,9,10−テトラカルボン酸又はその二無水物とアミン類とを原料とし、水又は有機溶媒中で加熱反応を行う。そして、得られた粗製物を硫酸中で再沈殿させるか、又は、水、有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒中で再結晶させることによって目的物を得ることができる。
【0042】
着色剤分散液中においてペリレン系顔料を良好に分散させるためには、ペリレン系顔料の平均粒子径は10〜1000nmであるのが好ましい。
【0043】
また、遮光剤としては、ラクタム系顔料を含ませることもできる。ラクタム系顔料としては、例えば、下記式(e−4)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化6】
【0045】
式(e−4)中、Xe1は二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、Re19は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示し、Re20は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、Re21は、各々独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。
式(e−4)で表される化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
e19は、式(e−4)で表される化合物の製造が容易である点から、ジヒドロインドロン環の6位に結合するのが好ましく、Re21はジヒドロインドロン環の4位に結合するのが好ましい。同様の観点から、Re19、Re20、及びRe21は、好ましくは水素原子である。
式(e−4)で表される化合物は、幾何異性体としてEE体、ZZ体、EZ体を有するが、これらのいずれかの単一の化合物であってもよいし、これらの幾何異性体の混合物であってもよい。
式(e−4)で表される化合物は、例えば、国際公開第2000/24736号,国際公開第2010/081624号に記載された方法により製造することができる。
【0046】
着色剤分散液中においてラクタム系顔料を良好に分散させるためには、ラクタム系顔料の平均粒子径は10〜1000nmであるのが好ましい。
【0047】
また、着色剤としては、金属粒子も用いることができる。 このような金属粒子は、金属又は、金属と金属化合物とから形成されるものが好ましく、金属から形成されるものが特に好ましい。 金属粒子は、金属又は金属化合物を、それぞれ2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
特に、金属粒子が、長周期律表(IUPAC 1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことが好ましい。また、金属粒子が、第2〜14族からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことが好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族からなる群から選ばれる金属を主成分として含むことがより好ましい。金属粒子としては、第4周期、第5周期、又は第6周期の金属であって、第2族、第10族、第11族、第12族、又は第14族の金属の粒子がさらに好ましい。
【0048】
金属粒子に含まれる金属の好ましい例としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、カルシウム、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの中で好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、カルシウム、イリジウム、及びこれらの合金であり、より好ましい金属は、銅、銀、金、白金、パラジウム、錫、カルシウム、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましい金属は、銅、銀、金、白金、錫、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種である。
また、このような金属粒子は、コア・シェル構造をとっていてもよい。
【0049】
上に列挙した金属粒子のなかでも、銀錫(AgSn)合金を主成分とする微粒子(以下、「AgSn合金微粒子」という。)からなる無機顔料も遮光剤として好ましく用いられる。このAgSn合金微粒子は、AgSn合金が主成分であればよく、他の金属成分として、例えば、Ni、Pd、Au等が含まれていてもよい。
このAgSn合金微粒子の平均粒子径は、1〜300nmが好ましい。
【0050】
AgSn合金は、化学式AgxSnにて表した場合、化学的に安定したAgSn合金が得られるxの範囲は1≦x≦10であり、化学的安定性と黒色度とが同時に得られるxの範囲は3≦x≦4である。
ここで、上記xの範囲でAgSn合金中のAgの質量比を求めると、
x=1の場合、 Ag/AgSn=0.4762
x=3の場合、 3・Ag/Ag3Sn=0.7317
x=4の場合、 4・Ag/Ag4Sn=0.7843
x=10の場合、10・Ag/Ag10Sn=0.9008
となる。
従って、このAgSn合金は、Agを47.6〜90質量%含有した場合に化学的に安定なものとなり、Agを73.17〜78.43重量%含有した場合にAg量に対し効果的に化学的安定性と黒色度とを得ることができる。
【0051】
このAgSn合金微粒子は、通常の微粒子合成法を用いて作製することができる。微粒子合成法としては、気相反応法、噴霧熱分解法、アトマイズ法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法等が挙げられる。
【0052】
AgSn合金微粒子は絶縁性の高いものであるが、着色剤分散液を用いて調製される感光性樹脂組成物の用途によっては、さらに絶縁性を高めるため、表面を絶縁膜で覆うようにしても構わない。このような絶縁膜の材料としては、金属酸化物又は有機高分子化合物が好適である。
金属酸化物としては、絶縁性を有する金属酸化物、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化イットリウム(イットリア)、酸化チタン(チタニア)等が好適に用いられる。
また、有機高分子化合物としては、絶縁性を有する樹脂、例えば、ポリイミド、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリアミン化合物等が好適に用いられる。
【0053】
絶縁膜の膜厚は、AgSn合金微粒子の表面の絶縁性を十分に高めるためには1〜100nmの厚みが好ましく、より好ましくは5〜50nmである。
絶縁膜は、表面改質技術あるいは表面のコーティング技術により容易に形成することができる。特に、テトラエトキシシラン、アルミニウムトリエトキシド等のアルコキシドを用いれば、比較的低温で膜厚の均一な絶縁膜を形成することができるので好ましい。
【0054】
遮光剤としては、上述のペリレン系顔料、ラクタム系顔料、AgSn合金微粒子単独でも用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。
その他、遮光剤は、色調の調整の目的等で、上記の黒色顔料や紫顔料とともに、赤、青、緑、黄等の色相の色素を含んでいてもよい。黒色顔料や紫顔料の他の色相の色素は、公知の色素から適宜選択することができる。例えば、黒色顔料や紫顔料の他の色相の色素としては、上記の種々の顔料を用いることができる。黒色顔料や紫顔料以外の他の色相の色素の使用量は、遮光剤の全質量に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0055】
また、無機顔料と有機顔料はそれぞれ単独又は2種以上併用してもよいが、併用する場合には、無機顔料と有機顔料との総量100質量部に対して、有機顔料を10〜80質量部の範囲で用いることが好ましく、20〜40質量部の範囲で用いることがより好ましい。
【0056】
着色剤分散液における顔料(E1)の量は、着色剤分散液の固形分全体の質量に対して30〜95質量%であるのが好ましく、40〜90質量%がより好ましく、50〜85質量%がより好ましい。
顔料(E1)を、着色剤分散液の固形分全体の質量に対してこのような範囲内の量用いることにより、着色剤分散液中で顔料(E1)を良好に分散させやすい。
【0057】
<分散剤(E2)>
着色剤分散液は、前述の顔料(E1)とともに、分散剤(E2)を含む。分散剤(E2)の作用により、着色剤分散液中において顔料(E1)が良好に分散される。
【0058】
分散剤(E2)は、下記式(e2a):
【化7】
(式(e2a)中、Re1は1価の有機基である。)
で表される構成単位を有するシルセスキオキサン化合物を含む。
【0059】
シルセスキオキサン化合物の一般的な構造としては、かご型、不完全かご型、ラダー型、ランダム型等がよく知られている。分散剤(E2)として用いられるシルセスキオキサン化合物の構造は、特に限定されず、かご型、不完全かご型、ラダー型、ランダム型等、従来知られるいずれの構造であってもよい。
【0060】
かかる、シルセスキオキサン化合物は、シルセスキオキサン構造に起因して、良好な顔料分散効果を有する。
【0061】
また、シルセスキオキサン化合物は、化学的又は熱的に安定である。このため、上記のシルセスキオキサン化合物を分散剤(E2)として含む着色剤分散液を含有する感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化物からは、分散剤(E2)に起因するガスの発生が抑制される。
【0062】
シルセスキオキサン化合物は、芳香族基、アミド結合、及びウレタン結合から選択される1種以上を含むのが好ましい。これらの基又は結合は、一般的に、顔料用の分散剤に分散効果をもたらす化学構造である。このため、芳香族基、アミド結合、及びウレタン結合から選択される1種以上を含むシルセスキオキサン化合物は、顔料を良好に分散させやすい点でより好ましい。
【0063】
シルセスキオキサン化合物において芳香族基、アミド結合、又はウレタン結合が存在する位置は、式(e2a)で表される構成単位中の、Re1として示される有機基中であってもよく、式(e2a)で表される構成単位以外の位置であってもよいが、式(e2a)で表される構成単位中の、Re1として示される有機基中であるのが好ましい。
例えば、シルセスキオキサン化合物は、下記式、(e2a−1)、又は(e2a−2)で表される構成単位と結合し得る。下記式、(e2a−1)、又は(e2a−2)で表される構成単位においてRe0が有機基である場合に、当該有機基が、芳香族基、アミド結合、及びウレタン結合から選択される1種以上を含んでいてもよい。
【化8】
(式(e2a−1)及び(e2a−2)中、Re0は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基である。Re0が有機基である場合、当該有機基は、後述するRe1と同様である。)
【0064】
式(e2a)中のRe1が有機基である場合、その炭素原子数は特に限定されないが、例えば1〜50が好ましく、1〜30がより好ましく、1〜20が特に好ましい。有機基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらの構造を組み合わせた構造であってもよい。有機基は、1以上の不飽和結合を有していてもよい。有機基はヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子としては、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子等が挙げられる。
【0065】
有機基の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基等が挙げられる。
【0066】
これらの基が有してもよい置換基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ベンゾイル基、フェノキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基、炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、ナフチル基、ナフトキシ基、ナフトイル基、ナフトキシカルボニル基、ナフトイルオキシ基、炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1、又は2の炭素原子数1〜20の有機基で置換されたアミノ基、ニトロ基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0067】
式(e2a)において、Re1は1価の有機基であるが、当該有機基は、下記式(e2a−I):
−X−B−Y−COOH・・・(e2a−I)
で表される基、又は下記式(e2a−II):
−Z−A・・・(e2−II)
で表される基であるのが好ましい。
【0068】
式(e2a−I)において、Xは、単結合、炭素原子数1〜6のアルキレン基、炭素原子数6〜12のアリーレン基、又は−Re6−NH−Re7−で表される基である
e6及びRe7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜3のアルキレン基である。
は、2価の環式有機基、又は炭素原子数1〜20の鎖状脂肪族炭化水素基である。
は、−NH−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、又は−NH−CO−NH−であある。
及びYは、それぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、及びエポキシ基含有有機基からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい。
は、単結合、炭素原子数1〜6のアルキレン基、又は炭素原子数6〜12のアリーレン基である。
は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、又はエポキシ基含有有機基である。
【0069】
シルセスキオキサン化合物は、式(e2a)で表される構成単位として、式(e2a−I)で表される基をRe1として有する構成単位(A)を有するのが好ましい。
シルセスキオキサン化合物が構成単位(A)を有し、且つシルセスキオキサン化合物中の全ての前記構成単位(A)において、Re1が(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、又はエポキシ基含有有機基で置換されていない場合に、シルセスキオキサン化合物は、上記式(e2a)で表され、且つ上記式(e2a−II)で表される基をRe1として有する構成単位(B)を必須に有するのが好ましい。
【0070】
における炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0071】
におけるアリーレン基の炭素原子数は、6〜12であり、6〜10が好ましい。
アリーレン基の好適な具体例としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン2,6−ジイル基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0072】
−Re6−NH−Re7−としては、具体的には、例えば、−CH−NH−CH−、−(CH−NH−(CH−、−(CH−NH−(CH−、−CH−NH−(CH−、−(CH−NH−CH−、−(CH−NH−(CH−、−(CH−NH−(CH−、−CH−NH−(CH−、−(CH−NH−CH−等が挙げられる。
【0073】
における2価の環式有機基は、芳香族環から2つの水素原子を除いた基であってもよく、脂肪族環から2つの水素原子を除いた基であってもよい。
が、芳香族環を含む2価基である場合は、2価の環式有機基としては、炭素原子数1又は2の置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の芳香族環から2つの水素原子を除いた基が好ましい。炭素原子数6〜10の芳香族環の好適な例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、メチルベンゼン環、ジメチルベンゼン環等が挙げられる
が、脂肪族環を含む2価基である場合、2価の環式有機基としては、炭素原子数5〜16の脂肪族環から2つの水素原子を除いた基が好ましい。炭素原子数5〜16の脂肪族環の好適な例としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、ジシクロペンタジエン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、キュバン環、バスケタン環等が挙げられることができる。
【0074】
が、炭素原子数1〜20の鎖状脂肪族炭化水素基である場合、当該鎖状脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、飽和炭化水素基であっても、不飽和炭化水素基であってもよい。
炭素原子数1〜20の鎖状脂肪族炭化水素基の好適な例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ビニレン基、(2−オクテニル)エチレン基、(2,4,6−トリメチル−2−ノネニル)エチレン基等のアルキレン基、二重結合を有するアルキレン基又は炭素原子数1〜9の分岐鎖を有するアルキレン基を挙げることができる。
【0075】
式(e2a−II)において、Zが炭素原子数1〜6のアルキレン基である場合の好適な例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0076】
におけるアリーレン基の炭素原子数は、6〜12であり、6〜10が好ましい。
アリーレン基の好適な具体例としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン2,6−ジイル基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0077】
式(e2a−II)において、Aは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、又はエポキシ基含有有機基である。エポキシ基含有有機基としては特に限定されないが、例えば、オキシラニル基、グリシジル基、及びグリシジルオキシ基等が挙げられる。
【0078】
式(e2a−I)で表される基の具体例としては、例えば、X、B、Yが下表1に示される組み合わせである基が挙げられる。表1中のYは、二つの結合手を有するが、そのうちの1つでカルボキシ基と結合し、他の1つでBと結合する。表1中のBについても同様にX、Yと結合する。
【0079】
【表1】
【0080】
式(e2a−II)で表される基の具体例としては、例えば、Z、及びAが下表2に示される組み合わせである基が挙げられる。
【0081】
【表2】
【0082】
シルセスキオキサン化合物は、下記式(e2b)で表される構成単位(a)と、下式(e2c)で表される構成単位(b)とを含むのが好ましい。
【0083】
【化9】
(式(e2b)中、Re2は、前述の式(e2a−I)で表される基を表すが、式(e2a−I)で表される基中のX及びYは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、及びエポキシ基含有有機基のいずれの基も置換基として持たない。
式(e2c)中、Re3は、前述の式(e2a−II)で表される基を表す。)
【0084】
シルセスキオキサン化合物としては、例えば、下記式(e2d)で表される構成単位(c)を含有するシルセスキオキサン化合物が挙げられる。
【化10】
(式(e2d)中、Re4は、前述の式(e2a−I)で表される基を表すが、式(e2a−I)で表される基中のX及びYの少なくとも一方は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、及びエポキシ基含有有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を置換基として有する。)
【0085】
シルセスキオキサン化合物は、上記の構成単位に加えて、さらに、下記式(e2e)で表される構成単位(d)を含有していてもよい。
【化11】
(式(e2e)中、Re5は、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、又は炭素原子数7〜12のアラルキル基を表す。)
【0086】
e5がアルキル基である場合、例えば、メチル基、エチル基、及びn−プロピル基が好ましい。Re5がアリール基、又はアラルキル基である場合、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基が好ましい。
【0087】
シルセスキオキサン化合物において、上記構成単位のうちに、式(e2a−I)で表される基を有する構成単位を少なくとも1つ含有するのが好ましい。シルセスキオキサン化合物において、いずれの構成単位中の式(e2a−I)で表される基も(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、及びエポキシ基含有有機基のいずれかにより置換されていない場合、シルセスキオキサン化合物は、式(e2a−I)で表される基を有する構成単位を少なくとも1つ含有するのが好ましい。
【0088】
シルセスキオキサン化合物において、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、及びエポキシ基含有有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を含有する構成単位の量は、10モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましい。
【0089】
シルセスキオキサン化合物において、構成単位の含有比としては、構成単位(a)及び構成単位(b)を含有する場合は、(a):(b)のモル比が、20:80〜80:20であるのが好ましい。
シルセスキオキサン化合物が構成単位(d)を含有する場合は、その含有量は10〜80モル%が好ましい。
【0090】
シルセスキオキサン化合物におけるシルセスキオキサン骨格は、通常トリアルコキシシランの加水分解、縮合反応に代表されるような工程を経て生じる(RSiO3/2)nの一般式を有するポリシロキサン骨格である。
【0091】
シルセスキオキサン化合物の重量平均分子量Mwとしては、1000〜10000が通常得られる範囲である。好ましくは、1500〜5000である。
【0092】
原料とするトリアルコキシシランとしては、例えば、上記構成単位(a)〜(d)を有する場合なら、該当するR置換基を有するトリアルコキシシランを用いるか、又は、シルセスキオキサン骨格を形成後に適切な試薬で修飾して所望のR置換基を形成すればよい。
【0093】
例えば、R置換基が(メタ)アクリル基である置換トリアルコキシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが反応性の観点から好ましい。
【0094】
R置換基がアリール基又は炭素数1〜12のアルキル基である置換トリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、1−ナフチルトリメトキシシラン、1−ナフチルトリエトキシシラン、p−メトキシフェニルトリメトキシシラン、p−メトキシフェニルトリエトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが耐熱性、反応性の観点から好ましい。
【0095】
シルセスキオキサン骨格を形成後に適切な試薬で修飾して所望のR置換基を形成するには、例えば、シルセスキオキサンに予めアミノ基を導入しておき、そのアミノ基を修飾してアミック酸とすればよい。シルセスキオキサンにアミノ基を導入するには、置換基がアミノ基であるトリアルコキシシランを用いればよい。
【0096】
シルセスキオキサン骨格の製造方法としては、原料トリアルコキシシランを加水分解・縮合する方法が挙げられる。例えば、加水分解、共縮合の条件としては、公知の条件を使用することができる。加水分解、共縮合を行う際に、触媒を使用してもよい。触媒としては、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、塩酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸を挙げることができる。反応条件としては、例えば、1〜10時間、25〜100℃が挙げられる。
【0097】
分散剤(E2)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、以上説明したシルセスキオキサン化合物以外の他の分散剤と組み合わせて使用されてもよい。シルセスキオキサン化合物とともに使用できる分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系等の高分子分散剤が挙げられる。
分散剤(E2)を、シルセスキオキサン化合物以外の他の分散剤と組み合わせて用いる場合、分散剤(E2)中の式(e2a)で表される構成単位を有するシルセスキオキサン化合物の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。
一方、分散剤(E2)中の式(e2a)で表される構成単位を有するシルセスキオキサン化合物の含有量の上限は、特に制限されないが、例えば100質量%以下とすることができ、95質量%以下とすることもできる。
【0098】
以上説明した分散剤(E2)の使用量は、着色剤分散液の固形分全体の質量に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜50質量%が特に好ましい。
また、分散剤(E2)の使用量は、顔料(E1)100質量部に対して、10〜90質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましい。
【0099】
<分散媒>
着色剤分散液は、通常、着色剤(E)を分散させるための分散媒を含む。分散媒の種類は特に限定されないが、典型的には有機溶剤である。
【0100】
着色剤分散液における分散媒として用いられる有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0101】
上記の有機溶剤の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートは、後述のアルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、及び光重合開始剤に対して優れた溶解性を示すとともに、上記着色剤の分散性を良好にすることができるため好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートを用いることが特に好ましい。
【0102】
着色剤分散液における分散媒の含有量は、着色剤(E)を良好に分散させることができる範囲で特に限定されない。分散媒の量は、着色剤分散液の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、着色剤分散液の固形分濃度が5〜30質量%となる量がより好ましい。
【0103】
<着色剤分散液の製造方法>
着色剤分散液は、顔料(E1)と、分散剤(E2)と、必要に応じて染料等のその他の成分と、分散媒とを3本ロールミル、ボールミル、サンドミル等の撹拌機や混練装置で混合(分散・混練)し、必要に応じて例えば口径5μm程度のメンブランフィルタ等のフィルタで濾過して製造することができる。
着色剤分散液の製造において、顔料(E1)と、分散剤(E2)とを、ともに撹拌機や混練装置で混合(分散・混練)しておくことで、顔料(E1)と分散剤(E2)との間で、相互作用が生じ、良好な顔料分散の効果が得られるものと考えられる。
上記の方法に従って、顔料(E1)の分散処理を行った後に、得られた分散液を濃縮、するか、所望の溶媒を用いて希釈することにより、着色剤分散液の固形分濃度を所望する濃度に調整してもよい。
【0104】
≪感光性樹脂組成物≫
感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、前述の着色剤分散液と、を含む。
上記の構成を備える感光性樹脂組成物は、ガス発生が抑制された硬化膜を形成可能である。
以下、感光性樹脂組成物の、必須又は任意の成分と、感光性樹脂組成物の調製方法とについて説明する。
【0105】
<着色剤分散液>
着色剤分散液としては前述の分散液を用いる。着色剤分散液の使用量は、感光性樹脂組成物が所望する色相、色濃度で着色される限り特に限定されない。
着色剤分残液の使用量は、顔料(E1)の量が、感光性樹脂組成物の固形分全体の質量に対して、5〜80質量%となる量が好ましく、25〜60質量%となる量がより好ましく、30〜55質量%となる量が特に好ましい。
【0106】
<アルカリ可溶性樹脂(A)>
感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)(本明細書において「(A)成分」とも記す。)を含む。
ここで、本明細書において、アルカリ可溶性樹脂(A)とは、分子内にアルカリ可溶性をもたせる官能基(例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基等)を備える樹脂を指す。
【0107】
アルカリ可溶性樹脂(A)としては、従来より、感光性樹脂組成物に配合されているアルカリ可溶性樹脂を特に制限することなく用いることができる。
アルカリ可溶性樹脂(A)は、感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化物からのガスの発生を抑制しやすい点で、(A1)カルド構造を有する樹脂(以下、「(A1)カルド樹脂」とも記す。)を含むのが好ましい。
【0108】
本実施形態の感光性樹脂組成物が、(A1)カルド樹脂を含む場合に、特にガス発生の抑制された硬化物を形成可能である点について、定かなものではないが以下の影響があるものと考えられる。
すなわち、まず、(A1)カルド樹脂は、カルド構造の嵩高さを有している。
一方、感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する際においては、(A1)カルド樹脂と、光重合性モノマー(B)や、後述する、1分子中に複数個のエポキシ基又はオキセタニル基を備える多官能架橋性化合物(D)との間での架橋が生じる。
これらの影響が相まって、感光性樹脂組成物を用いて硬化物を形成する際、感光性樹脂組成物の硬化物を備える積層構造体を加工して種々の素子を形成する際、及び感光性樹脂組成物の硬化物を備える種々の素子を使用する際等に硬化物からガスが発生することが抑制されると考えられる。
【0109】
(A1)カルド骨格を有する樹脂は、所定のアルカリ可溶性を有する樹脂であれば特に限定されない。カルド骨格とは、第1の環状構造を構成している1つの環炭素原子に、第2の環状構造と第3の環状構造とが結合した骨格をいう。なお、第2の環状構造と、第3の環状構造とは、同一の構造であっても異なった構造であってもよい。
カルド骨格の代表的な例としては、フルオレン環の9位の炭素原子に2つの芳香環(例えばベンゼン環)が結合した骨格が挙げられる。
【0110】
(A1)カルド構造を有する樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知の樹脂を用いることができる。その中でも、下記式(a−1)で表される樹脂が好ましい。
【0111】
【化12】
【0112】
式(a−1)中、Xは、下記式(a−2)で表される基を示す。m1は0〜20の整数を示す。
【0113】
【化13】
【0114】
上記式(a−2)中、Ra1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Ra2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Ra3は、それぞれ独立に直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、m2は、0又は1を示しWは、下記式(a−3)で表される基を示す。
【化14】
【0115】
式(a−2)中、Ra3としては、炭素原子数1〜20のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜10のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基が特に好ましく、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、及びプロパン1,3−ジイル基が最も好ましい。
【0116】
式(a−3)中の環Aは、芳香族環と縮合していてもよく置換基を有していてもよい脂肪族環を示す。脂肪族環は、脂肪族炭化水素環であっても、脂肪族複素環であってもよい。
脂肪族環としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等が挙げられる。
具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンが挙げられる。
脂肪族環に縮合してもよい芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族複素環でもよく、芳香族炭化水素環が好ましい。具体的にはベンゼン環、及びナフタレン環が好ましい。
【0117】
式(a−3)で表される2価基の好適な例としては、下記の基が挙げられる。
【化15】
【0118】
式(a−1)中の2価基Xは、残基Zを与えるテトラカルボン酸二無水物と、下式(a−2a)で表されるジオール化合物とを反応させることにより、(A1)カルド樹脂中に導入される。
【化16】
【0119】
式(a−2a)中、Ra1、Ra2、Ra3、及びm2は、式(a−2)について説明した通りである。式(a−2a)中の環Aについては、式(a−3)について説明した通りである。
【0120】
式(a−2a)で表されるジオール化合物は、例えば、以下の方法により製造し得る。
まず、下記式(a−2b)で表されるジオール化合物が有するフェノール性水酸基中の水素原子を、必要に応じて、常法に従って、−Ra3−OHで表される基に置換した後、エピクロルヒドリン等を用いてグリシジル化して、下記式(a−2c)で表されるエポキシ化合物を得る。
次いで、式(a−2c)で表されるエポキシ化合物を、アクリル酸又はメタアクリル酸と反応させることにより、式(a−2a)で表されるジオール化合物が得られる。
式(a−2b)及び式(a−2c)中、Ra1、Ra3、及びm2は、式(a−2)について説明した通りである。式(a−2b)及び式(a−2c)中の環Aについては、式(a−3)について説明した通りである。
なお、式(a−2a)で表されるジオール化合物の製造方法は、上記の方法に限定されない。
【化17】
【0121】
式(a−2b)で表されるジオール化合物の好適な例としては、以下のジオール化合物が挙げられる。
【化18】
【0122】
上記式(a−1)中、Ra0は水素原子又は−CO−Y−COOHで表される基である。ここで、Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を示す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0123】
また、上記式(a−1)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を示す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、下記式(a−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a−1)中、mは、0〜20の整数を示す。
【0124】
【化19】
(式(a−4)中、Ra4、Ra5、及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種を示し、m3は、0〜12の整数を示す。)
【0125】
式(a−4)中のRa4として選択され得るアルキル基は、炭素原子数が1〜10のアルキル基である。アルキル基の備える炭素原子数をこの範囲に設定することで、得られるカルボン酸エステルの耐熱性を一段と向上させることができる。Ra4がアルキル基である場合、その炭素原子数は、耐熱性に優れるカルド樹脂を得やすい点から、1〜6が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。
a4がアルキル基である場合、当該アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0126】
式(a−4)中のRa4としては、耐熱性に優れるカルド樹脂を得やすい点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基がより好ましい。式(a−4)中のRa4は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
式(a−4)中の複数のRa4は、高純度のテトラカルボン酸二無水物の調製が容易であることから、同一の基であるのが好ましい。
【0127】
式(a−4)中のm3は0〜12の整数を示す。m3の値を12以下とすることによって、テトラカルボン酸二無水物の精製を容易にすることができる。
テトラカルボン酸二無水物の精製が容易である点から、m3の上限は5が好ましく、3がより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物の化学的安定性の点から、m3の下限は1が好ましく、2がより好ましい。
式(a−4)中のm3は、2又は3が特に好ましい。
【0128】
式(a−4)中のRa5、及びRa6として選択され得る炭素原子数1〜10のアルキル基は、Ra4として選択され得る炭素原子数1〜10のアルキル基と同様である。
a5、及びRa6は、テトラカルボン酸二無水物の精製が容易である点から、水素原子、又は炭素原子数1〜10(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましく、水素原子又はメチル基であるのが特に好ましい。
【0129】
式(a−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン−2−スピロ−2’−シクロペンタノン−5’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−(メチルノルボルナン)−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン−2−スピロ−2’−シクロヘキサノン−6’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α’−スピロ−2’’−(メチルノルボルナン)−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロプロパノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロブタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘプタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロオクタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロノナノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロウンデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロドデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロトリデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロテトラデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタデカノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−(メチルシクロペンタノン)−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−(メチルシクロヘキサノン)−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0130】
(A1)カルド樹脂の重量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、十分な耐熱性、膜強度を得ることができる。
【0131】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、(A2)アクリル系樹脂を用いるのも好ましい。(A2)アクリル系樹脂は、単独で使用されてもよく、他のアルカリ可溶性樹脂と組み合わせて使用されていてもよい。
(A1)カルド樹脂を用いる前述の利点から、(A2)アクリル系樹脂を他のアルカリ可溶性樹脂と組み合わせて用いる場合、(A2)アクリル系樹脂と、(A1)カルド樹脂とを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0132】
(A2)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び/又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含むものを用いる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、又はメタアクリル酸である。(メタ)アクリル酸エステルは、下記式(a−5)で表されるものであって、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。
【0133】
【化20】
【0134】
上記式(a−5)中、Ra7は、水素原子又はメチル基であり、Ra8は、一価の有機基である。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0135】
a8の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(−NH、−NHR、−NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0136】
a8としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基が好ましく、これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0137】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0138】
アルキル基が、脂環式基、又は脂環式基を含む基である場合、アルキル基に含まれる好適な脂環式基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等の多環の脂環式基が挙げられる。
【0139】
また、(A2)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル以外の他の化合物をさらに重合させたものであってもよい。このような他の化合物としては、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0140】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0141】
不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
【0142】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0143】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0144】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0145】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0146】
(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の量と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の量とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の量は、アクリル系樹脂の質量に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。また、(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の量は、アクリル系樹脂の質量に対して、10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましい。
【0147】
(A2)アクリル系樹脂における、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の量と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の量との合計は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、(A2)アクリル系樹脂の質量に対して、5〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましい。
【0148】
(A2)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、2000〜200000であることが好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性樹脂組成物の膜形成能、露光後の現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0149】
アルカリ可溶性樹脂(A)として、(A1)カルド樹脂を用いる場合、アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に占める、(A1)カルド樹脂の質量の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0150】
(A)アルカリ可溶性樹脂の含有量は、後述する有機溶剤(S)の質量を除いた感光性樹脂組成物の質量(固形分全体)に対して20〜85質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、ガスを発生させにくい硬化膜を形成でき、現像性に優れる感光性樹脂組成物を得やすい。
【0151】
<光重合性モノマー(B)>
光重合性モノマー(B)としては、エチレン性不飽和基を有するモノマーを好ましく用いることができる。このエチレン性不飽和基を有するモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
【0152】
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0153】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート等と2−ビドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物)、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0154】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの中でも、感光性樹脂組成物の基板への密着性、感光性樹脂組成物の硬化後の強度を高める傾向にある点から、3官能以上の多官能モノマーが好ましく、4官能以上の多官能モノマーがより好ましく、5官能以上の多官能モノマーがさらに好ましい。
【0155】
光重合性モノマー(B)の組成物中の含有量は、後述する有機溶剤(S)の質量を除いた感光性樹脂組成物の質量(固形分全体)に対して1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0156】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0157】
光重合開始剤(C)として具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(O−アセチルオキシム)、(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)[4−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−2−メチルフェニル]メタノンO−アセチルオキシム、2−(ベンゾイルオキシイミノ)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1−オクタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0158】
これらの中でも、オキシム系の光重合開始剤を用いることが、感度の面で特に好ましい。オキシム系の光重合開始剤の中で、特に好ましいものとしては、O−アセチル−1−[6−(2−メチルベンゾイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンオキシム、エタノン,1−[9−エチル−6−(ピロール−2−イルカルボニル)−9H−カルバゾル−3−イル],1−(O−アセチルオキシム)、及び1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
【0159】
光重合開始剤としては、また、下記式(c1)で表されるオキシム系化合物を用いることも好ましい。
【化21】
(Rc1は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、
n1は0〜4の整数であり、
n2は0、又は1であり、
c2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基であり、
c3は、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。)
【0160】
式(c1)中、Rc1は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc1が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。n1が2〜4の整数である場合、Rc1は同一であっても異なっていてもよい。また、置換基の炭素原子数には、置換基がさらに有する置換基の炭素原子数を含まない。
【0161】
c1がアルキル基である場合、炭素原子数1〜20が好ましく、炭素原子数1〜6がより好ましい。また、Rc1がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc1がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc1がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0162】
c1がアルコキシ基である場合、炭素原子数1〜20が好ましく、炭素原子数1〜6がより好ましい。また、Rc1がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc1がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc1がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0163】
c1がシクロアルキル基、又はシクロアルコキシ基である場合、炭素原子数3〜10が好ましく、炭素原子数3〜6がより好ましい。Rc1がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc1がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0164】
c1が飽和脂肪族アシル基、又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、炭素原子数2〜20が好ましく、炭素原子数2〜7がより好ましい。Rc1が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc1が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0165】
c1がアルコキシカルボニル基である場合、炭素原子数2〜20が好ましく、炭素原子数2〜7がより好ましい。Rc1がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチルオキシルカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0166】
c1がフェニルアルキル基である場合、炭素原子数7〜20が好ましく、炭素原子数7〜10がより好ましい。またRc1がナフチルアルキル基である場合、炭素原子数11〜20が好ましく、炭素原子数11〜14がより好ましい。Rc1がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。Rc1がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc1が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc1は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0167】
c1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。Rc1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0168】
c1が1、又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc1と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0169】
c1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。Rc1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0170】
c1の中では、化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、オキシムエステル化合物の合成が容易であること等から、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、及び炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキルがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0171】
c1がフェニル基に結合する位置は、Rc1が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシムエステル化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位、又は5位が好ましく、5位がよりに好ましい。また、n1は、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0、又は1が特に好ましい。
【0172】
c2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。また、Rc2が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基上の窒素原子は、炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0173】
c2において、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基、又はカルバゾリル基が、炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0174】
c2がカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0175】
フェニル基、又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1、又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、Rc1と同様である。
【0176】
c2において、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素原子数1〜6のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0177】
c2の中では、感度に優れる光重合開始剤を得やすい点から、下記式(c2)、又は(c3)で表される基が好ましく、下記式(c2)で表される基がより好ましく、下記式(c2)で表される基であって、AがSである基が特に好ましい。
【0178】
【化22】
(Rc4は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、n3は、0〜4の整数である。)
【0179】
【化23】
(Rc5及びRc6は、それぞれ、1価の有機基である。)
【0180】
式(c2)におけるRc4が有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(c2)においてRc4が有機基である場合の好適な例としては、炭素原子数1〜6のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0181】
c4の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0182】
また、式(c2)において、n3は、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0、又は1であるのが特に好ましい。n3が1である場合、Rc4の結合する位置は、Rc4が結合するフェニル基が酸素原子又は硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0183】
式(c3)におけるRc5は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Rc5の好適な例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0184】
c5の中では、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0185】
式(c3)におけるRc6は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc6として好適な基の具体例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc6として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基がより好ましく、2−メチルフェニル基が特に好ましい。
【0186】
c4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。Rc4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0187】
式(c1)におけるRc3は、水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。Rc3としては、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0188】
式(c1)で表されるオキシムエステル化合物の中でも特に好適な化合物としては、下記のPI−1〜PI−42が挙げられる。
【化24】
【0189】
【化25】
【0190】
【化26】
【0191】
【化27】
【0192】
【化28】
【0193】
【化29】
【0194】
また、下記式(c4)で表されるオキシムエステル化合物も、光重合開始剤として好ましい。
【0195】
【化30】
(Rc7は水素原子、ニトロ基又は1価の有機基であり、Rc8及びRc9は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、Rc8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよく、Rc10は1価の有機基であり、Rc11は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、n4は0〜4の整数であり、n5は0又は1である。)
【0196】
ここで、式(c4)のオキシムエステル化合物を製造するためのオキシム化合物としては、下式(c5)で表される化合物が好適である。
【0197】
【化31】
(Rc7、Rc8、Rc9、Rc10、n4、及びn5は、式(c4)と同様である。)
【0198】
式(c4)及び(c5)中、Rc7は、水素原子、ニトロ基又は1価の有機基である。Rc7は、式(c4)中のフルオレン環上で、−(CO)n5−で表される基に結合する6員芳香環とは、異なる6員芳香環に結合する。式(c4)中、Rc7のフルオレン環に対する結合位置は特に限定されない。式(c4)で表される化合物が1以上のRc7を有する場合、式(c4)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRc7のうちの1つがフルオレン環中の2位に結合するのが好ましい。Rc7が複数である場合、複数のRc7は同一であっても異なっていてもよい。
【0199】
c7が有機基である場合、Rc7は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc7が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。
【0200】
c7がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、Rc7がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc7がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc7がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0201】
c7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、Rc7がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc7がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0202】
c7がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。Rc7がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc7がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0203】
c7が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2〜21が好ましく、2〜7がより好ましい。Rc7が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc7が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0204】
c7がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。Rc7がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチルオキシカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0205】
c7がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。また、Rc7がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。Rc7がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。Rc7がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc7が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc7は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0206】
c7がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。Rc7がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0207】
c7がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、Rc7がヘテロシクリル基である場合と同様である。
【0208】
c7が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜21の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc7と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0209】
c7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。Rc7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0210】
以上説明した基の中でも、Rc7としては、ニトロ基、又はRc12−CO−で表される基であると、感度が向上する傾向があり好ましい。Rc12は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc12として好適な基の例としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc12として、これらの基の中では、2−メチルフェニル基、チオフェン−2−イル基、及びα−ナフチル基が特に好ましい。
また、Rc7が水素原子であると、透明性が良好となる傾向があり好ましい。なお、Rc7が水素原子であり且つRc10が後述の式(c4a)又は(c4b)で表される基であると透明性はより良好となる傾向がある。
【0211】
式(c4)中、Rc8及びRc9は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc8及びRc9として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc8及びRc9が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0212】
c8及びRc9が置換基を持たない鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が特に好ましい。Rc8及びRc9が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc8及びRc9がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0213】
c8及びRc9が置換基を有する鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が特に好ましい。この場合、置換基の炭素原子数は、鎖状アルキル基の炭素原子数に含まれない。置換基を有する鎖状アルキル基は、直鎖状であるのが好ましい。
アルキル基が有してもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、シアノ基、ハロゲン原子、環状有機基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。環状有機基としては、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、Rc7がシクロアルキル基である場合の好適な例と同様である。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。ヘテロシクリル基の具体例としては、Rc7がヘテロシクリル基である場合の好適な例と同様である。Rc7がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0214】
鎖状アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。好ましい置換基の数は鎖状アルキル基の炭素原子数に応じて変わる。置換基の数は、典型的には、1〜20であり、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0215】
c8及びRc9が環状有機基である場合、環状有機基は、脂環式基であっても、芳香族基であってもよい。環状有機基としては、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。Rc8及びRc9が環状有機基である場合に、環状有機基が有してもよい置換基は、Rc8及びRc9が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0216】
c8及びRc9が芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素−炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0217】
c8及びRc9が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3〜20が好ましく、3〜10がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0218】
c8及びRc9がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0219】
c8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよい。Rc8とRc9とが形成する環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。Rc8とRc9とが結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は、5員環〜6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
【0220】
c8とRc9とが結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
【0221】
以上説明したRc8及びRc9の中でも好適な基の例としては、式−A−Aで表される基が挙げられる。式中、Aは直鎖アルキレン基であり、Aは、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、又はアルコキシカルボニル基である挙げられる。
【0222】
の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。Aがアルコキシ基である場合、アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。Aがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。Aがハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Aが環状有機基である場合、環状有機基の例は、Rc8及びRc9が置換基として有する環状有機基と同様である。Aがアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の例は、Rc8及びRc9が置換基として有するアルコキシカルボニル基と同様である。
【0223】
c8及びRc9の好適な具体例としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、及びn−オクチル基等のアルキル基;2−メトキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、5−メトキシ−n−ペンチル基、6−メトキシ−n−ヘキシル基、7−メトキシ−n−ヘプチル基、8−メトキシ−n−オクチル基、2−エトキシエチル基、3−エトキシ−n−プロピル基、4−エトキシ−n−ブチル基、5−エトキシ−n−ペンチル基、6−エトキシ−n−ヘキシル基、7−エトキシ−n−ヘプチル基、及び8−エトキシ−n−オクチル基等のアルコキシアルキル基;2−シアノエチル基、3−シアノ−n−プロピル基、4−シアノ−n−ブチル基、5−シアノ−n−ペンチル基、6−シアノ−n−ヘキシル基、7−シアノ−n−ヘプチル基、及び8−シアノ−n−オクチル基等のシアノアルキル基;2−フェニルエチル基、3−フェニル−n−プロピル基、4−フェニル−n−ブチル基、5−フェニル−n−ペンチル基、6−フェニル−n−ヘキシル基、7−フェニル−n−ヘプチル基、及び8−フェニル−n−オクチル基等のフェニルアルキル基;2−シクロヘキシルエチル基、3−シクロヘキシル−n−プロピル基、4−シクロヘキシル−n−ブチル基、5−シクロヘキシル−n−ペンチル基、6−シクロヘキシル−n−ヘキシル基、7−シクロヘキシル−n−ヘプチル基、8−シクロヘキシル−n−オクチル基、2−シクロペンチルエチル基、3−シクロペンチル−n−プロピル基、4−シクロペンチル−n−ブチル基、5−シクロペンチル−n−ペンチル基、6−シクロペンチル−n−ヘキシル基、7−シクロペンチル−n−ヘプチル基、及び8−シクロペンチル−n−オクチル基等のシクロアルキルアルキル基;2−メトキシカルボニルエチル基、3−メトキシカルボニル−n−プロピル基、4−メトキシカルボニル−n−ブチル基、5−メトキシカルボニル−n−ペンチル基、6−メトキシカルボニル−n−ヘキシル基、7−メトキシカルボニル−n−ヘプチル基、8−メトキシカルボニル−n−オクチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、3−エトキシカルボニル−n−プロピル基、4−エトキシカルボニル−n−ブチル基、5−エトキシカルボニル−n−ペンチル基、6−エトキシカルボニル−n−ヘキシル基、7−エトキシカルボニル−n−ヘプチル基、及び8−エトキシカルボニル−n−オクチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2−クロロエチル基、3−クロロ−n−プロピル基、4−クロロ−n−ブチル基、5−クロロ−n−ペンチル基、6−クロロ−n−ヘキシル基、7−クロロ−n−ヘプチル基、8−クロロ−n−オクチル基、2−ブロモエチル基、3−ブロモ−n−プロピル基、4−ブロモ−n−ブチル基、5−ブロモ−n−ペンチル基、6−ブロモ−n−ヘキシル基、7−ブロモ−n−ヘプチル基、8−ブロモ−n−オクチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−n−ペンチル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0224】
c8及びRc9として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、2−メトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−フェニルエチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−n−ペンチル基である。
【0225】
c10の好適な有機基の例としては、Rc7と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。これらの基の具体例は、Rc7について説明したものと同様である。また、Rc10としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、Rc7に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0226】
有機基の中でも、Rc10としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2−メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5〜10が好ましく、5〜8がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2−(4−クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0227】
また、Rc10としては、−A−CO−O−Aで表される基も好ましい。Aは、2価の有機基であり、2価の炭化水素基であるのが好ましく、アルキレン基であるのが好ましい。Aは、1価の有機基であり、1価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0228】
がアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Aがアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素原子数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
【0229】
の好適な例としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、及び炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。Aの好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、及びβ−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0230】
−A−CO−O−Aで表される基の好適な具体例としては、2−メトキシカルボニルエチル基、2−エトキシカルボニルエチル基、2−n−プロピルオキシカルボニルエチル基、2−n−ブチルオキシカルボニルエチル基、2−n−ペンチルオキシカルボニルエチル基、2−n−ヘキシルオキシカルボニルエチル基、2−ベンジルオキシカルボニルエチル基、2−フェノキシカルボニルエチル基、3−メトキシカルボニル−n−プロピル基、3−エトキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−プロピルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−ブチルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−ペンチルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−n−ヘキシルオキシカルボニル−n−プロピル基、3−ベンジルオキシカルボニル−n−プロピル基、及び3−フェノキシカルボニル−n−プロピル基等が挙げられる。
【0231】
以上、Rc10について説明したが、Rc10としては、下記式(c4a)又は(c4b)で表される基が好ましい。
【化32】
(式(c4a)及び(c4b)中、Rc13及びRc14はそれぞれ有機基であり、n6は0〜4の整数であり、Rc13及びRがベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、Rc13とRc14とが互いに結合して環を形成してもよく、n7は1〜8の整数であり、n8は1〜5の整数であり、n9は0〜(n8+3)の整数であり、Rc15は有機基である。)
【0232】
式(c4a)中のRc13及びRc14についての有機基の例は、Rc7と同様である。Rc13としては、アルキル基又はフェニル基が好ましい。Rc13がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。つまり、Rc13はメチル基であるのが最も好ましい。Rc13とRc14とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(c4a)で表される基であって、Rc13とRc14とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン−1−イル基や、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−5−イル基等が挙げられる。上記式(c4a)中、n6は0〜4の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0233】
上記式(c4b)中、Rc15は有機基である。有機基としては、Rc7について説明した有機基と同様の基が挙げられる。有機基の中では、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。Rc15としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0234】
上記式(c4b)中、n8は1〜5の整数であり、1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(c4b)中、n9は0〜(n8+3)であり、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0が特に好ましい。上記式(c4b)中、n7は1〜8の整数であり、1〜5の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0235】
式(c4)中、Rc11は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1〜11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。Rc11がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、Rc7がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
【0236】
式(c4)中、Rc11としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0237】
式(c4)で表される化合物の好適な具体例としては、以下のPI−43〜PI−83が挙げられる。
【化33】
【0238】
【化34】
【0239】
光重合開始剤(C)の含有量は、後述する有機溶剤(S)の質量を除いた感光性樹脂組成物の質量(固形分全体)に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量を上記の範囲とすることにより、パターン形状の不良が生じにくい感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0240】
また、光重合開始剤(C)に、光開始助剤を組み合わせてもよい。光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル、ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート、3−メルカプトプロピオネート等のチオール化合物等が挙げられる。これらの光開始助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0241】
<多官能架橋性化合物(D)>
感光性樹脂組成物は、多官能架橋性化合物(D)を含むのが好ましい。多官能架橋性化合物(D)は、1分子中に複数個のエポキシ基又はオキセタニル基を備える架橋性の化合物である。
また、多官能架橋性化合物(D)のエポキシ当量又はオキセタニル当量は、好ましくは50〜350g/eqである。
感光性樹脂組成物が、このような範囲のエポキシ当量又はオキセタニル当量を有する多官能架橋性化合物を含むことにより、感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂(A)が密に架橋され、硬化膜からのガスの発生を特に抑制しやすい。
また、かかる効果をより顕著に発現させる観点からは、多官能架橋性化合物(D)のエポキシ当量又はオキセタニル当量は、60〜320g/eqであることがより好ましく、70〜300g/eqであることがさらに好ましく、75〜280g/eqであることが殊更に好ましい。
【0242】
硬化膜を形成する際の架橋反応性の点から、多官能架橋性化合物(D)は1分子あたり2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むのが好ましく、1分子あたり3つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むのがより好ましい。
多官能架橋性化合物(D)中の、1分子あたり2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0243】
多官能架橋性化合物(D)としては、エポキシ当量又はオキセタニル当量が所定の範囲内である限りにおいて、従来から種々の硬化性組成物に配合されている、多官能エポキシ化合物又は多官能オキセタン化合物を用いることができる。
多官能架橋性化合物(D)に含まれる多官能エポキシ化合物又は多官能オキセタン化合物の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。多官能エポキシ化合物又は多官能オキセタン化合物の分子量は、立体的な障害が少なくアルカリ可溶性樹脂(A)の分子鎖間を効率よく架橋しやすいことから、5000以下が好ましく、4500以下がより好ましく、4000以下が特に好ましい。
この分子量の下限値はとくに限定されないが、例えば、150以上である。
【0244】
多官能架橋性化合物(D)は、芳香族基を含む化合物であっても、芳香族基を含まない化合物であってもよい。ガス発生が少ない硬化物を形成できる感光性樹脂組成物を得やすいことから、多官能架橋性化合物(D)は、芳香族基を含まない化合物であるのが好ましい。
【0245】
好適な多官能架橋性化合物(D)の一例として、脂環式エポキシ基を有する多官能の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。かかる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、及びトリシクロデセンオキサイド基を有する多官能エポキシ化合物や、下記式(d1−1)〜(d1−5)で表される化合物が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0246】
【化35】
(式(d1−1)中、Zは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。Rd1〜Rd18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0247】
連結基Zとしては、例えば、2価の炭化水素基、−O−、−O−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−CBr−、−C(CBr−、−C(CF−、及び−Rd19−O−CO−からなる群より選択される2価の基及びこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。
【0248】
連結基Zである二価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素原子数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0249】
d19は、炭素原子数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0250】
【化36】
【0251】
(式(d1−2)中、Rd1〜Rd12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0252】
【化37】
(式(d1−3)中、Rd1〜Rd10は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Rd2及びRd8は、互いに結合してもよい。)
【0253】
【化38】
(式(d1−4)中、Rd1〜Rd12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Rd2及びRd10は、互いに結合してもよい。)
【0254】
【化39】
(式(d1−5)中、Rd1〜Rd12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0255】
式(d1−1)〜(d1−5)中、Rd1〜Rd18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0256】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0257】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0258】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0259】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロポキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロポキシ−n−ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロポキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロポキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロポキシ基、3−エトキシ−n−プロポキシ基、3−n−プロポキシ−n−プロポキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロポキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0260】
d1〜Rd18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、及び炭素原子数1〜5のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に機械的特性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、Rd1〜Rd18が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0261】
式(d1−2)〜(d1−5)中、Rd1〜Rd12は、式(d1−1)におけるRd1〜Rd12と同様である。式(d1−2)及び式(d1−4)において、Rd2及びRd10が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、−CH−、−C(CH−が挙げられる。式(P1−3)において、Rd2及びRd8が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、−CH−、−C(CH−が挙げられる。
【0262】
式(d1−1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(d1−1a)、式(d1−1b)、及び式(d1−1c)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン[=2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化40】
【0263】
式(d1−2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(d1−2a)で表されるビシクロノナジエンジエポキシド、又はジシクロノナジエンジエポキシド等が挙げられる。
【化41】
【0264】
式(d1−3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3−オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン−6,2’−オキシラン]等が挙げられる。
【0265】
式(d1−4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4−ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、1−メチル−4−(3−メチルオキシラン−2−イル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0266】
式(d1−5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0267】
多官能架橋性化合物(D)として好適に使用し得る、以上説明した脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂;9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−[2−(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−[2−(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)−3−メチルフェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)−3,5−ジメチルフェニル]−9H−フルオレン、及び9,9−ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン−2−イル)−9H−フルオレン等のエポキシ基含有フルオレン化合物;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂;2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物は、EHPE−3150(ダイセル社製)として市販される。
【0268】
多官能架橋性化合物(D)として好適に使用し得るオキセタン化合物としては、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン等の二官能以上のオキセタン化合物が挙げられる。
【0269】
さらに、下記式(d1−6)で表される化合物を多官能架橋性化合物(D)として好適に使用し得る。
【0270】
【化42】
(式(d1−6)中、Rd20〜Rd22は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、−O−、−C(=O)−、−NH−及びこれらの組み合わせからなる基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。E〜Eは、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、チオール基、カルボキシ基、水酸基及びコハク酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基又は水素原子である。ただし、E〜Eのうち少なくとも2つは、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。)
【0271】
式(d1−6)中、Rd20とE、Rd21とE、及びRd22とEで示される基は、例えば、少なくとも2つが、それぞれ、下記式(d1−6a)で表される基であることが好ましく、いずれもが、それぞれ、下記式(d1−6a)で表される基であることがより好ましい。1つの化合物に結合する複数の式(d1−6a)で表される基は、同じ基であることが好ましい。
−L−C (d1−6a)
(式(d1−6a)中、Lは直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、−O−、−C(=O)−、−NH−及びこれらの組み合わせからなる基であり、Cはエポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。式(d1−6a)中、LとCとが結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0272】
式(d1−6a)中、Lとしての直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基としては、炭素原子数1〜10のアルキレン基が好ましく、また、Lとしてのアリーレン基としては、炭素原子数5〜10のアリーレン基が好ましい。式(d1−6a)中、Lは、直鎖状の炭素原子数1〜3のアルキレン基、フェニレン基、−O−、−C(=O)−、−NH−及びこれらの組み合わせからなる基であることが好ましく、メチレン基等の直鎖状の炭素原子数1〜3のアルキレン基及びフェニレン基の少なくとも1種、又は、これらと、−O−、−C(=O)−及びNH−の少なくとも1種との組み合わせからなる基が好ましい。
【0273】
式(d1−6a)中、LとCとが結合して環状構造を形成している場合としては、例えば、分岐鎖状のアルキレン基とエポキシ基とが結合して環状構造(脂環構造のエポキシ基を有する構造)を形成している場合、下記式(d1−6b)又は(d1−6c)で表される有機基が挙げられる。
【化43】
(式(d1−6b)中、Rd23は、水素原子又はメチル基である。)
【0274】
以下、式(d1−6)で表される化合物の例としてオキシラニル基、オキセタニル基、及び脂環式エポキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有するエポキシ化合物の例を示すが、これらに限定されるものではない。
【化44】
【0275】
また、多官能架橋性化合物(D)として好適に使用し得る化合物としては、分子内に2以上のグリシジル基を有するシロキサン化合物(以下、単に「シロキサン化合物」とも記す。)を挙げることができる。
【0276】
シロキサン化合物は、シロキサン結合(Si−O−Si)により構成されたシロキサン骨格と、2以上のグリシジル基とを分子内に有する化合物である。
シロキサン化合物におけるシロキサン骨格としては、例えば、環状シロキサン骨格やポリシロキサン骨格(例えば、直鎖状又は分岐鎖状のシリコーン(直鎖状又は分岐鎖状ポリシロキサン)や、かご型やラダー型のポリシルセスキオキサン等)等を挙げることができる。
【0277】
シロキサン化合物としては、なかでも、下記式(d1−7)で表される環状シロキサン骨格を有する化合物(以下、「環状シロキサン」という場合がある)が好ましい。
【化45】
【0278】
式(d1−7)中、Rd24、及びRd25は、グリシジル基を含有する一価の基又はアルキル基を示す。ただし、式(d1−7)で表される化合物におけるx1個のRd24及びx1個のRd25のうち、少なくとも2個はグリシジル基を含有する一価の基である。また、式(d1−7)中のx1は3以上の整数を示す。尚、式(d1−7)で表される化合物におけるRd24、Rd25は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、複数のRd24は同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数のRd25も同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0279】
上記グリシジル基を含有する一価の基としては、−D−O−Rd26で表されるグリシジルエーテル基[Dはアルキレン基を示し、Rd26はグリシジル基を示す]が好ましい。上記D(アルキレン基)としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等の炭素原子数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等を挙げることができる。
【0280】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1〜18(好ましくは炭素原子数1〜6、特に好ましくは炭素原子数1〜3)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
【0281】
式(d1−7)中のx1は3以上の整数を示し、なかでも、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点で3〜6の整数が好ましい。
【0282】
シロキサン化合物が分子内に有するグリシジル基の数は2個以上であり、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点から2〜6個が好ましく、特に好ましくは2〜4個である。
【0283】
感光性樹脂組成物は、式(d1−7)で表されるシロキサン化合物以外にも、脂環式エポキシ基含有環状シロキサン、特開2008−248169号公報に記載の脂環式エポキシ基含有シリコーン樹脂、及び特開2008−19422号公報に記載の1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能性基を有するオルガノポリシルセスキオキサン樹脂等のシロキサン骨格を有する化合物を含有していてもよい。
【0284】
シロキサン化合物としては、より具体的には、下記式で表される、分子内に2以上のグリシジル基を有する環状シロキサン等を挙げることができる。また、シロキサン化合物としては、例えば、商品名「X−40−2670」、「X−40−2701」、「X−40−2728」、「X−40−2738」、「X−40−2740」(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0285】
【化46】
【0286】
多官能架橋性化合物(D)の含有量は、後述する有機溶剤(S)の質量を除いた感光性樹脂組成物の質量(固形分全体)に対して1〜40質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましい。多官能架橋性化合物(D)の含有量を上記の範囲とすることにより、ガスの発生が少ない硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得やすい。
【0287】
感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の含有量[g]と、多官能架橋性化合物(D)の含有量[g]との比は、15:1〜0.5:1の範囲内であるのが好ましく、10:1〜1:1の範囲内であることがより好ましく、8:1〜2:1の範囲内であることがさらに好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A)と、多官能架橋性化合物(D)とをかかる範囲内の比率で用いることで、特に、ガスの発生が少ない硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得やすい。
【0288】
<フッ素系樹脂(F)>
感光性樹脂組成物は、フッ素系樹脂(F)(以下、「(F)成分」ともいう。)を含んでいてもよい。感光性樹脂組成物がフッ素系樹脂(F)を含有する場合、感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜に撥液性が付与される。
例えば、感光性樹脂組成物を用いて形成されたバンクを備える有機EL素子用の基板上において、バンクにより区画された領域内に、インクジェット法等の印刷法により発光層を形成する場合に、バンクがインクを弾くことによって、バンクへのインクの付着やバンクに囲まれた領域内にインクを注入する際の隣接する画素とのインクの混合を防ぐことができる。
【0289】
フッ素系樹脂(F)は、フッ素原子を含有する樹脂であって、感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜に撥液性を付与できる樹脂であれば特に限定されない。フッ素系樹脂(F)は、フッ素原子を含むモノマーの単独重合体、又はフッ素原子を含むモノマーと、フッ素原子を含まないモノマーとの共重合体であってよい。
【0290】
フッ素系樹脂(F)の好適な例としては、(f1)エチレン性不飽和基及びフッ素原子を有するモノマーと、(f2)(メタ)アクリル酸とを少なくとも共重合させた共重合体が挙げられる。このようなフッ素系樹脂(F)を用いる場合、感光性樹脂組成物を用いて、撥液性に優れる硬化膜、特に撥液性に優れる有機EL素子用のバンクを形成しやすい。
【0291】
((f1)エチレン性不飽和基及びフッ素原子を有するモノマー)
エチレン性不飽和基及びフッ素原子を有するモノマー(以下、「(f1)モノマー」ともいう。)は、エチレン性不飽和基とフッ素原子とを有していれば特に限定されない。このような(f1)モノマーとしては、下式(f1−1)で表される化合物等が挙げられる。これらの(f1)モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0292】
【化47】
【0293】
式(f1−1)中、X及びXはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子を示し、Xは水素原子、フッ素原子、メチル基、又はパーフルオロメチル基を示し、X及びXは水素原子、フッ素原子、又はパーフルオロメチル基を示す。Rfは炭素原子数1〜40の含フッ素アルキル基又は炭素原子数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基を示し、aは0〜3の整数を示し、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を示す。Rfが含フッ素アルキル基である場合、炭素原子数は2〜20が好ましく、3〜10がより好ましく、4〜6が特に好ましい。Rfがエーテル結合を有する含フッ素アルキル基である場合、炭素原子数は2〜50が好ましく、3〜20がより好ましく、4〜6が特に好ましい。
【0294】
(f1)モノマーから誘導されるユニットの含有量は、フッ素系樹脂(F)の質量に対して30〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜60質量%の範囲である。フッ素系樹脂(F)における(f1)モノマーから誘導されるユニットの含有量を上記の範囲とする場合、感光性樹脂組成物により撥液性に優れる硬化膜を形成しやすく、感光性樹脂組成物における、フッ素系樹脂(F)と、他の成分との相溶性が良好となる傾向がある。
【0295】
また、(f1)モノマーにおいては、−(CFF(t=1〜10)で表される基を有するものが好ましい。tは1〜8であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましい。(f1)モノマーが上記の基を有する場合、感光性樹脂組成物により撥液性に優れる硬化膜を形成しやすい。
【0296】
<(f2)(メタ)アクリル酸>
フッ素系樹脂(F)は、感光性樹脂組成物の現像性を向上させるために、カルボキシ基を有するモノマーである(f2)(メタ)アクリル酸に由来する単位を含むのが好ましい。
【0297】
(f2)(メタ)アクリル酸に由来する単位の含有量は、フッ素系樹脂(F)の質量に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。フッ素系樹脂(F)における(f2)(メタ)アクリル酸に由来する単位の含有量を上記の範囲とする場合、現像性が良好であり、撥液性に優れる硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得やすい。
【0298】
フッ素系樹脂(F)には、必要に応じて、上記の(f1)モノマー及び(f2)モノマー以外の他のモノマーを共重合させてもよい。このような他のモノマーとしては、以下に記述する種々のモノマーが挙げられる。
【0299】
((f3)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有するモノマー)
フッ素系樹脂(F)は、さらに、エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有するモノマー(以下、「(f3)モノマー」ともいう。)を共重合させた共重合体であることが好ましい。(f3)モノマーを共重合させることにより、感光性樹脂組成物により形成される硬化膜の撥液性をより向上させることができる。
【0300】
(f3)モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、下記式(f3−1)〜(f3−3)で表される脂環式エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基と二官能以上のエポキシ化合物のエポキシ基とを反応させて得られるモノマー、側鎖に水酸基やカルボキシ基を有するアクリル系モノマーの水酸基又はカルボキシ基と二官能以上のエポキシ化合物のエポキシ基とを反応させて得られるモノマー等が挙げられる。中でも、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの(f3)モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0301】
【化48】
【0302】
式(f3−1)、(f3−2)、(f3−3)中、Rf0は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、Rf1は水素原子又はメチル基を示し、uは1〜10の整数を示し、v及びwはそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。
【0303】
フッ素系樹脂(F)が(f3)モノマーに由来する単位を含む場合、フッ素系樹脂(F)中の当該単位の含有量は、フッ素系樹脂(F)の質量に対して1〜40質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。フッ素系樹脂(F)における(f3)モノマーに由来する単位の含有量を上記の範囲とする場合、撥液性が良好な硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物を得やすい。
【0304】
((f4)式(f4−1)で表される構造を有するモノマー)
フッ素系樹脂(F)は、さらに、エチレン性不飽和基及び下記式(f4−1)で表される構造を有するモノマー(以下、「(f4)モノマー」ともいう。)を共重合させた共重合体であることが好ましい。(f4)モノマーを共重合させることにより、現像性に優れる感光性樹脂組成物を得やすく、感光性樹脂組成物におけるフッ素系樹脂(F)と他の成分との相溶性を向上させることができる。
【0305】
【化49】
【0306】
(f4)モノマーは、エチレン性不飽和基及び下記式(f4−2)で表される構造を有するものがより好ましい。
【0307】
【化50】
【0308】
式(f4−1)、(f4−2)中、Rf2は炭素原子数1〜5のアルキレン基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、炭素原子数1〜3のアルキレン基が好ましく、エチレン基が最も好ましい。Rf3は水素原子、水酸基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。上記置換基としては、カルボキシ基、水酸基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基等が挙げられる。xは1以上の整数を示し、1〜60の整数が好ましく、1〜12の整数がより好ましい。
【0309】
このような(f4)モノマーとしては、下記式(f4−3)で表される化合物等が挙げられる。これらの(f4)モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【化51】
【0310】
式(f4−3)中、Rf4は水素原子又はメチル基を示す。Rf2、Rf3、xは上記式(f4−1)、(f4−2)と同義である。
【0311】
(f4)モノマーから誘導されるユニットの含有量は、フッ素系樹脂(F)の質量に対して1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜25質量%の範囲である。上記の範囲とすることにより、感光性樹脂組成物の現像性や、感光性樹脂組成物におけるフッ素系樹脂(F)と他の成分との相溶性が良好となる傾向があり好ましい。
【0312】
((f5)ケイ素原子を有するモノマー)
フッ素系樹脂(F)は、さらに、ケイ素原子を有するモノマー(以下、「(f5)モノマー」ともいう。)を共重合させた共重合体であることが好ましい。(f5)モノマーは、エチレン性不飽和基及びケイ素原子に結合した少なくとも1つのアルコキシ基を有するものであれば特に限定されない。この(f5)モノマーを共重合させることにより、感光性樹脂組成物により形成される硬化膜の撥液性をより向上させることができる。
【0313】
このような(f5)モノマーとしては、下記式(f5−1)で表される化合物等が挙げられる。これらの(f5)モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0314】
【化52】
【0315】
式(f5−1)中、Rf5は水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基を示し、好ましくは水素原子又はメチル基である。Rf6は炭素原子数1〜20のアルキレン基又はフェニレン基を示し、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキレン基である。Rf7、Rf8はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基である。Siに複数のRf7が結合している場合、該複数のRf7は同一であっても異なっていてもよい。また、Siに複数の(ORf8)が結合している場合、該複数の(ORf8)は同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1であり、好ましくは1である。qは1〜3の整数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは3である。
【0316】
(f5)モノマーから誘導されるユニットの含有量は、フッ素系樹脂(F)の質量に対して20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下の範囲である。上記の範囲とすることにより、撥液性及び感光性樹脂組成物の他の成分との相溶性が良好となる傾向があり好ましい。
【0317】
上記のモノマーの他のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を有する種々のモノマーを用いることができ、中でも、アクリル系モノマーが好ましい。アクリル系モノマーの好適な例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド(N−MAA)、メチルメタクリレート(MAA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボニルメタクリレート(IBMA)等が挙げられる。フッ素系樹脂(F)おける、これらの他のモノマーに由来する単位の含有量は、フッ素系樹脂(F)の質量に対して0〜25質量%であることが好ましい。
【0318】
(f1)モノマー及び(f2)モノマー並びに必要に応じてその他のモノマーを反応させて共重合体を得る方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0319】
フッ素系樹脂(F)の質量平均分子量は、2000〜50000であることが好ましく、より好ましくは5000〜20000である。フッ素系樹脂(F)の質量平均分子量を2000以上にすることにより、感光性樹脂組成物により形成される硬化膜の耐熱性及び強度を向上させることができ、また50000以下にすることにより感光性樹脂組成物の現像性を高めることができる。
【0320】
感光性樹脂組成物におけるフッ素系樹脂(F)の含有量は、後述する有機溶剤(S)の質量を除いた感光性樹脂組成物の質量(固形分全体)に対して、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜5質量%であるのがより好ましい。感光性樹脂組成物がこのような量でフッ素系樹脂(F)を含有する場合、感光性樹脂組成物を感度、現像性、及び解像性に優れるものとしつつ、感光性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜に良好な撥液性を付与しやすい。
【0321】
<有機溶剤(S)>
感光性樹脂組成物は、塗布性の改善や、粘度調整のため、有機溶剤(S)を含むことが好ましい。
【0322】
有機溶剤(S)として具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ピリジン、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等含窒素極性有機溶剤;等が挙げられる。
【0323】
これらの中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、乳酸アルキルエステル類、上述した他のエステル類が好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、上述した他のエステル類がより好ましい。
また、各成分の溶解性や、着色剤(E)の分散性等の点で、有機溶剤(S)が、含窒素極性有機溶剤を含むのも好ましい。
これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0324】
有機溶剤(S)の含有量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。感光性樹脂組成物の粘度は5〜500cpであることが好ましく、10〜50cpであることがより好ましく、20〜30cpであることがさらに好ましい。また、固形分濃度は5〜75質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、15〜45質量%であることがさらに好ましい。
【0325】
<その他の成分>
感光性樹脂組成物には、必要に応じて、界面活性剤、密着性向上剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。
感光性樹脂組成物は、形状が良好で、基板への密着性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、シランカップリング剤を含むものが好ましい。シランカップリング剤としては、従来知られるものを特に制限なく使用することができる。
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0326】
<感光性樹脂組成物の製造方法>
以上説明した感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、着色剤分散液と、必要に応じその他の任意成分とを、感光性樹脂組成物の固形分濃度が所望する値になるように均一に混合できる方法であれば特に限定されない。
好ましい製造方法は、
前述の顔料(E1)を、前述の分散剤(E2)の存在下に、分散媒中に分散させることで、前述の着色剤分散液を準備する工程と、
得られた着色剤分散液と、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを混合する工程と、を含む方法である。
【0327】
着色剤分散液を準備する工程は、着色剤分散液の製造方法として前述した通りである。
着色剤分散液と、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを混合する工程は、これらの成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されない。
感光性樹脂組成物が有機溶剤(S)を含む場合、これらの成分が、同時、又は逐次的に有機溶剤(S)に加えられてもよい。これらの感光性樹脂組成物の成分を逐次的に有機溶剤(S)に加える場合、各成分を添加する順序は特に限定されない。
着色剤分散液と、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを混合する際、必要に応じて、これらの成分以外の任意成分がこれらの成分とともに混合される。
上記各成分を、それぞれ所定量混合した後、撹拌機で均一に混合することにより感光性樹脂組成物が得られる。なお、得られた感光性樹脂組成物がより均一なものとなるようフィルタを用いて濾過してもよい。
【0328】
≪硬化物、及び有機EL素子≫
以上説明した、感光性樹脂組成物を露光するか、露光後に加熱して硬化させることにより、硬化物が形成される。
典型的には、感光性樹脂組成物を用いて形成された塗布膜を硬化させて、硬化物が形成される。
【0329】
硬化物の用途としては、絶縁膜が挙げられる。感光性樹脂組成物が着色剤(E)を含む場合には、着色された絶縁膜が形成される。特に、着色剤(E)が遮光剤である場合、遮光性の絶縁膜が形成される。
遮光性の黒色絶縁膜の好適な例としては、種々の画像表示装置用のパネルが備える、ブラックマトリクス中の黒色の隔壁や、ブラックカラムスペーサが挙げられる。
また、感光性樹脂組成物がRGB等の有彩色の着色剤(E)を含む場合、ブラックマトリクスにより区画された領域に着色された膜形態の硬化物を形成してカラーフィルタを製造することができる。
例えば、上記のブラックマトリクスや、有彩色の硬化膜を硬化物として含むカラーフィルタは、種々の表示装置において好適に使用される。
【0330】
また、前述の通り、かかる硬化物からはガス発生が少ない。このため、感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化物は、有機EL素子における発光層の区画用のバンクとして好適に用いられる。
バンクは、有機EL素子用の基板上に、ITO等の電極層と、有機発光材料からなる発光層とに接するように形成される。発光層がバンクにより区画されることで画素が形成される。ここで、電極層や発光層が、バンクから発生する種々の成分を含むガスで汚染されると、劣化が促進されることが懸念される。
しかし、以上説明した感光性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜をバンクとして適用すると、バンクからのガスの発生が抑制されるため、電極層や発光層が劣化しにくく、有機EL素子の耐久性が向上すると考えられる。つまり、以上説明した感光性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜をバンクとして備える有機EL素子は、耐久性に優れることが期待される。
【0331】
また、以上説明した感光性樹脂組成物を用いて形成されたバンクを備える基板は、有機EL素子用の基板として有用である。かかる有機EL素子用の基板を用いると、電極層や発光層の劣化が抑制された、耐久性に優れる有機EL素子を製造できる。
【0332】
≪硬化物の製造方法≫
硬化物の製造方法としては、感光性樹脂組成物の薄膜中において、光重合性モノマー(B)を重合させることができる方法であれば特に限定されない。光重合性モノマー(B)を重合させるためには、通常、露光が行われる。
また、感光性樹脂組成物が多官能架橋性化合物(D)を含む場合、アルカリ可溶性樹脂(A)と多官能架橋性化合物(D)との架橋反応を生じさせるために、露光された又は未露光の感光性樹脂組成物の薄膜に対して加熱を行うのが好ましい。
【0333】
硬化物の好適な製造方法としては、
感光性樹脂組成物を塗布することで、塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を露光する工程と、を含む方法が挙げられる。
有機EL素子等の各種画像表示素子において、着色された膜形態の硬化物を形成する場合、硬化物がパターニングされていることが多い。
パターニングされた硬化物を形成する場合、
感光性樹脂組成物を塗布することで、塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
露光された塗布膜を現像する工程と、を含む方法が、典型的には採用される。
【0334】
感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成するには、感光性樹脂組成物を硬化膜の用途に応じて選択された基板上に塗布して塗布膜を形成する。塗布膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて行われる。
【0335】
塗布された感光性樹脂組成物は、必要に応じて乾燥され、塗布膜を構成する。乾燥方法は、特に限定されず、例えば、(1)ホットプレートにて80〜120℃、好ましくは90〜100℃の温度にて60〜120秒間乾燥させる方法、(2)室温にて数時間〜数日間放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分間〜数時間入れて溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【0336】
次いで塗布膜に対する露光が行われる。露光は、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して行われる。露光は、例えば、ネガ型のマスクを介して露光を行う方法等により、位置選択的に行われてもよい。照射するエネルギー線量は、感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば40〜200mJ/cm程度が好ましい。
【0337】
塗布膜が位置選択的に露光された場合、露光後の膜を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングする。現像方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液は、感光性樹脂組成物の組成に応じて適宜選択される。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の塩基性の水溶液を用いることができる。
【0338】
感光性樹脂組成物が多官能架橋性化合物(D)を含む場合、次いで、露光された塗布膜、又は現像後のパターン化された塗布膜を加熱して、硬化物を形成するのが好ましい。
かかる硬化では、加熱により、アルカリ可溶性樹脂(A)と多官能架橋性化合物(D)との架橋反応を生じさせる。このため、硬化を行うためには、露光された塗布膜、又は現像後のパターン化された塗布膜に対して、ベークが行われる。
ベーク温度は、硬化が良好に進行する限り特に限定されないが、180〜280℃が好ましく、190〜260℃がより好ましい。
以上のようにベークを行うことにより、加熱により硬化された感光性樹脂組成物の硬化物が得られる。
【0339】
≪有機EL素子における発光層の区画用のバンクを製造する方法≫
有機EL素子における発光層の区画用のバンクを製造する方法は、有機EL素子用の基板上の所定の位置にバンクを製造可能な方法であれば特に限定されない。
好ましい方法としては、
感光性樹脂組成物を塗布することで、塗布膜を有機EL素子用の基板上に形成する工程と、
塗布膜中のバンクの位置に対応する箇所を、位置選択的に露光する工程と、
露光された塗布膜を現像する工程と、
必要に応じて現像された塗布膜を加熱により硬化する工程と、を含む方法が挙げられる。
【0340】
基板の典型例としては、主面の一方に、発光層が形成される箇所に対応する箇所にITO等からなる透明な電極層(アノード)を備える、透明な基板が挙げられる。
バンクは、透明な電極層の端部に接しつつ、発光層が形成される領域を囲うように形成される。
【0341】
有機EL素子用の基板に感光性樹脂組成物を塗布する方法、塗布膜中のバンクの位置に対応する箇所を、位置選択的に露光する方法と、露光された塗布膜を現像する方法と、現像された塗布膜を硬化する方法とについては、硬化膜の製造方法について前述した方法と同様である。
【0342】
以上説明した方法により、有機EL素子用の基板の所定の位置に、発光層の区画用のバンクを備える基板が得られる。
【0343】
≪有機EL素子の製造方法≫
以上説明した、感光性樹脂組成物の硬化物からなるバンクを備える有機EL素子用の基板を用いて有機EL素子が製造される。
当該方法は、有機EL素子用の基板における、バンクで区画された領域内に発光層を形成する工程を含む。
バンクを備える有機EL素子用の基板は、バンクで区画された領域内においてITO等からなる透明な電極層(アノード)が露出している。
典型的な方法では、電極層(アノード)上に、正孔輸送層が積層される。そして、正孔輸送層上に電子輸送層と、電極層(カソード)とがこの順で積層され、有機EL素子が製造される。必要に応じて、さらに、TFTや、カラーフィルタ等が適宜組み合わせられる。
バンクで区画された領域内に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等を形成する方法は特に限定されず、蒸着法であっても印刷法であってもよい。層形成用の材料のロスが少ないことや、所定の位置に所望する膜厚の層を速やかに形成しやすいことから、印刷法が好ましく、印刷法としてはインクジェット法が特に好ましい。
【0344】
以上の方法により製造される有機EL素子は、ガスの発生の少ないバンクを備えるため、電極層や発光層の劣化が抑制され、耐久性に優れる。
【実施例】
【0345】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0346】
〔調製例1〕
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(0.027モル)と、ヘキサヒドロ無水フタル酸とメチルヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(MH700G、新日本理化社製)(0.027モル)とを、メチルイソブチルケトン24gに溶解させて、室温で1時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーによりMH700Gの消失を確認した後、メチルイソブチルケトンを留去し、下記3種のシラン化合物の混合物を得た。
【化53】
【0347】
撹拌装置、及び温度計を備える反応容器に、メチルイソブチルケトン100gと、水酸化テトラメチルアンモニウムの濃度20質量%の水溶液7.4g(水酸化テトラメチルアンモニウム0.02モル)と、蒸留水20.8g(1.49モル)とを仕込んだ。
次いで、反応容器に、上記方法に従って得られたシラン化合物の混合物68.7g(0.20モル)と、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン46.9g(0.20モル)と、フェニルトリメトキシシラン29.7g(0.10モル)と、40〜45℃で徐々に加えた後、反応容器の内容物を同温度で3時間撹拌して、反応を行った。
反応度、反応容器にメチルイソブチルケトン100gを加え、次いで、蒸留水50gずつ反応容器に加え、水層のpHがほぼ7になるまで、有機層の水洗を繰り返した。
洗浄された有機層に炭酸ナトリウムを加えて乾燥させた後、有機層をろ過した。濾過された有機層からメチルイソブチルケトンを留去し、以下の構成単位(i)〜(v)からなる、分散剤(E2)として使用されるシルセスキオキサン化合物を得た。
シルセスキオキサン中、構成単位(i)〜(iii)の含有量の合計は40モル%であり、構成単位(iv)の含有量は40モル%であり、構成単位(v)の含有量は20モル%である。
【化54】
【0348】
〔調製例2〕
1500mL四つ口フラスコ中に、下記式で表されるエポキシ化合物275g(0.5モル、エポキシ当量292)と、2,6−ジ−tertブチル−4−メチルフェノール100mg及びアクリル酸72gを触媒とともに仕込み、これに25mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。
【化55】
【0349】
次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。ここで溶液は次第に透明粘稠になったがそのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状の下式の構造のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【化56】
【0350】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート347.4g(0.5モル)にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート650gを加えて溶解した後、下記式(b1)−1の化合物(以下、化合物(b1)−1とも記す、)(0.25モル)、を触媒とともに混合し、徐々に昇温して130℃で4時間反応させた。
なお、化合物(b1)−1は、下記式で表されるテトラカルボン酸二無水物(ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物)である。
【化57】
【0351】
酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸30gを混合し、90℃で6時間反応させ、ビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートと、酸無水物(化合物(b1)−1)とから生成したカルド樹脂である樹脂A1を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
【0352】
〔実施例1〕
ラクタム系顔料75質量部(“Irgaphor”(登録商標)ブラックS0100CF;BASF社製)と、調製例1で得たシルセスキオキサン化合物15質量部と、ウレタン系分散剤10質量部とを、固形分濃度が20質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに加えた後、分散処理を行い、着色剤分散液を得た。
得られた着色剤分散液について、顔料の分散性を以下の基準に従って評価した。評価結果を表3に記す。
○:室温で1週間静置しても顔料の沈降が確認されない。
×:室温で1週間静置した際に顔料の沈降が確認される。
【0353】
得られた着色剤分散液225質量部(顔料と分散剤との合計45質量部)と、調製例2で得た樹脂A1(アルカリ可溶性樹脂(A))30質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー(B))7質量部と、下記構造のオキシムエステル化合物(光重合開始剤(C))8質量部と、下記D1(多官能架橋性化合物(D))10質量部とを混合し、再度、固形分濃度が20質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、感光性樹脂組成物を得た。
【化58】
【0354】
得られた感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従って、硬化物からのガス発生を評価した。
<ガス発生評価>
10cm×10cmのガラス基板上に感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で120秒間乾燥して塗布膜を形成した。
次いで、塗布膜に高圧水銀ランプを使用した露光機を用いて、露光量50mJ/cmで全面露光を行った。
露光された塗布膜に対して、230℃で30分間ポストベークを行い、膜厚2μmの硬化膜を得た。
【0355】
形成された硬化膜を試料に用いて、パージ&トラップサンプラー(加熱脱着装置)を取り付けたガスクロマトグラフィー質量分析法(P&T−GC/MS)により発生ガス量を評価した。測定とガスの定量は下記(i)〜(iii)の手順に沿って行った。
(i)ガス発生と二次吸着管への捕集
一次トラップ管に硬化膜1mgを入れ、加熱脱着装置(Perkin Elmer製:Tarbo Matrix ATD)を用いて、230℃で10分間加熱し、脱離したガスを二次トラップ管に吸着させた。
(ii)GC/MS分析
二次トラップ管を250℃で1分間加熱し、脱離したガスをGC/MS(Agilent Technologies社製:7890B(GC)、5977AMSD(MS))にて分析した。
(iii)定量分析
樹脂組成物のPT−GC/MS分析で得られたチャートの各ピーク面積から定量を行った。具体的に、検出されたアウトガスのピークの合計エリア%を評価値として定めた。
【0356】
得られた評価値(合計エリア%)に基づいて、下記の基準に従って発生ガス量を評価した。3〜5の評価であれば、ガス発生量が少ないと解される。評価結果を表1に記す。
5:評価値の値が1.0E未満。
4:評価値の値が1.0E以上2.5E未満。
3:評価値の値が2.5E以上5.0E未満。
2:評価値の値が5.0E以上1.0E未満。
1:評価値の値が1.0E以上。
【0357】
〔比較例1〜3〕
分散剤を、表3に記載の分散剤に変えることの他は、実施例1と同様に、着色剤分散液と、感光性樹脂組成物とを調製した。
得られた着色剤分散液と、感光性樹脂組成物とについて、実施例1と同様に、顔料の分散性と、硬化膜からのガス発生の評価とを行った。これらの評価結果を表3に記す。
なお、比較例3については、そもそも顔料分散を良好に行うことができなかったため、ガス発生については評価を行わなかった。
【0358】
〔実施例2、比較例4〕
実施例2においては、実施例1で用いたラクタム系顔料に変えて平均粒子径200〜300nmの銀錫合金微粒子を顔料として用い、着色剤分散液を得た。
また、得られた着色剤分散液については、実施例1と同様に分散性を評価し、また感光性樹脂組成物調製の上、ガス発生評価を行った。
比較例4においては、比較例2で用いたラクタム系顔料に変えて平均粒子径200〜300nmの銀錫合金微粒子を顔料として用い、着色剤分散液を得た。
また、得られた着色剤分散液については、実施例1と同様に分散性を評価し、また感光性樹脂組成物調製の上、ガス発生評価を行った。
【0359】
【表3】
【0360】
表3によれば、実施例から、所定の構造のシルセスキオキサン化合物を含む分散剤を用いて顔料を分散して着色剤分散液を調製すれば、顔料が良好に分散されるとともに、得られた着色剤分散液を用いて調製された感光性樹脂組成物の硬化物からのガス発生が顕著に抑制されることが分かる。
他方、比較例1〜4から、所定の構造のシルセスキオキサン化合物を分散剤として用いない場合、そもそも顔料分散を良好にできないか、顔料を良好に分散させることができても、感光性樹脂添組成物からのガス発生をほとんど抑制できないことが分かる。