【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1の自動分析装置の全体概略構成を示す斜視図であり、
図2は
図1に示す反応ディスク及び攪拌機構の縦断面図である。
図1に示すように自動分析装置100としての生化学自動分析装置は、主として、反応容器102を周方向に沿って所定の間隔にて相互に離間するよう複数格納する反応ディスク101、反応ディスク101に格納されている反応容器102の恒温状態を保つための恒温槽114、サンプルカップ104を周方向に沿って所定の間隔にて相互に離間するよう複数収納するサンプルディスク103、試薬ボトル105を周方向に沿って複数格納する試薬ディスク106、サンプルカップ104内のサンプルを反応容器102へ所定量分注するサンプル分注機構107、試薬ボトル105内の試薬を反応容器102へ所定量に分注する試薬分注機構108、分注されたサンプルと試薬を反応容器102内で非接触にて攪拌し混合する攪拌機構109、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の反応過程及び反応後の例えば吸光度を測定する測光機構110、及び、測光(検査)が終了した後に反応容器102を洗浄する洗浄機構111より構成される。これらの各構成要素は、検査を開始する前に予めユーザー(検査技師)によりコンソール113を介して設定された情報(例えば、分析項目、分析項目に応じたサンプル及び試薬の分注量(液量)等)に基づき、コントローラ112がプログラムを作成し当該ブログラムを実行することにより動作が制御される。
【0011】
なお、
図1では、サンプルディスク103に周方向に沿って複数のサンプルカップ104を格納する例を示すが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、同心円状に内周側及び外周側に周方向に沿って複数のサンプルカップ104を格納するようサンプルディスク103を構成しても良い。また、更には、サンプルディスク103に代えて、サンプルを収容する複数本のサンプル容器をサンプルラックに収納する構成としても良い。
また、反応ディスク101についても、例えば、同心円状に内周側及び外周側に周方向に沿って複数の反応容器102を格納する構成としても良い。但しこの場合、内周側に格納される反応容器102と外周側に格納刺される反応容器102とが、反応ディスク101の径方向において重ならぬよう格納する必要がある。
【0012】
以下に、自動分析装置100としての生化学自動分析装置の動作について説明する。
コントローラ112からの制御信号(制御指令)により、サンプル分注機構107は、サンプルカップ104より所定量(所定の液量)のサンプルを吸引し、指定された反応容器102に所定量(所定の液量)のサンプルを吐出することでサンプル分注動作を実行する。次に、コントローラ112からの制御信号(制御指令)により、サンプル分注機構107によって所定量(所定の液量)のサンプルが分注された反応容器102が試薬分注ポジションへ位置付けるよう反応ディスク101が回転する。試薬分注機構108は、コントローラ112からの制御信号(制御指令)により、試薬ディスク106に格納される試薬ボトル105から分析項目に応じた液量の試薬を吸引する。その後、サンプル分注機構107は、円弧状の軌跡を描くよう回動し、試薬分注ポジションに位置付けられた所定量(所定の液量)のサンプルを収容する反応容器102へ試薬を吐出することで試薬分注動作を実行する。
【0013】
続いて、反応ディスク101は、コントローラ112からの制御信号(制御指令)により、サンプル及び試薬が分注された反応容器102が攪拌ポジション、すなわち、攪拌機構109が設置されている位置まで回転する。攪拌機構109は、反応容器102内のサンプルと試薬を非接触にて攪拌し混合する。コントローラ112からの制御信号(制御指令)により、攪拌が終了した時点から測定が開始され反応が終了した時点で、反応ディスク101は洗浄ポジションまで回転する。洗浄機構111は、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物を吸引し、空となった反応容器102の洗浄処理を実行する。
上述のサンプル分注動作から洗浄処理までの一連のプロセスが、複数のサンプルに対して逐一バッチ処理的に実行される。
【0014】
次に攪拌機構109の詳細について説明する。
図2に示すように攪拌機構109は、反応ディスク101に格納される反応容器102の外部の側方であって恒温槽114の内壁に支持されるよう設けられた超音波発生部(音源)201、超音波発生部(音源)201より出射された超音波を集束させて反応容器102内に入射させるための超音波集束部(音響レンズ)206、超音波集束部(音響レンズ)206を鉛直方向に沿って上下動させる詳細後述する上下動機構、及び、超音波集束部(音響レンズ)206の上部側が反応容器102へ近づくよう超音波集束部(音響レンズ)206を傾斜させる傾斜機構を備える。超音波集束部(音響レンズ)206は、超音波発生部(音源)201と、反応容器102の外側面であって超音波発生部(音源)201側の外側面との間に、相互に所定の間隔を介して配されている。ここで、所定の間隔とは、超音波集束部(音響レンズ)206の上部側が、傾斜機構により反応容器102へ近づくよう傾斜させた場合においても超音波集束部(音響レンズ)206が反応容器102の外側面と接触しない範囲内で設定される。これら、超音波発生部(音源)201、超音波集束部(音響レンズ)206、上下動機構、及び、傾斜機構は、恒温槽114内の恒温水202に浸漬している。
【0015】
図2に示すように超音波発生部(音源)201は、1つの圧電素子に対し、超音波集束部(音響レンズ)206に対向する側の面に1枚の電極(図示せず)が設けられ、他方の面、すなわち、1枚の電極(図示せず)が設けられた面とは反対側の面にアレイ状に分割された複数の電極が設けられている。これにより、超音波発生部(音源)201は、それぞれ独立に駆動可能なセグメント205がアレイ状に配置された構造を有する。なお、ここでアレイ状とは、一次元アレイ又は二次元アレイを意味する。また、
図2では、1つの圧電素子に対し、超音波集束部(音響レンズ)206に対向する側の面に1枚の電極(図示せず)を設け、他方の面にアレイ状に分割された複数の電極を設ける例を示しているが、これに限らず、複数の圧電素子をアレイ状に配し超音波発生部(音源)201を構成しても良い。
【0016】
一般的に、超音波は伝搬してく途中で徐々に減衰するものの、密度×音速にて規定される音響インピーダンスが急激に変化する界面が存在すると、当該界面にて超音波の一部が反射される。そこで、超音波発生部(音源)201との間に恒温水202が介在しつつ配される超音波集束部(音響レンズ)206の材質としては、例えば、エポキシ樹脂などの音響インピーダンスが整合するような、或は、反射を極力抑制可能な樹脂が適宜選択され用いられる。また、超音波集束部(音響レンズ)206は、超音波発生部(音源)201に対向する側の面が平坦な平板状をなし、他方の面、すなわち、反応容器102に対向する側の面に凹部を有している。超音波集束部(音響レンズ)206の凹部の形状は、球面の一部として近似された形状が望ましく、円筒の側面の一部として近似された形状でも良い。なお、球面の一部として近似された形状又は円筒の側面の一部として近似された形状である凹部の曲率半径は、反応容器102内の水平方向略中央部に中心を有する曲率半径又は、反応容器102内の水平方向略中央部より超音波発生部(音源)201側(手前側)であって反応容器102の内壁面と離間する位置に中心を有する曲率半径となる。
【0017】
超音波集束部(音響レンズ)206を鉛直方向に沿って上下動させる上下動機構は、防水性のリニアサーボ211、一端が超音波集束部(音響レンズ)206の底面に接触し超音波集束部(音響レンズ)206を支持するシリンダロッド212、及び、防水性のリニアサーボ211を支持する支持部213を備える。防水性のリニアサーボ211には、ドライバ回路203より制御信号(制御指令)が伝送され、図示しない電源部より給電される。防水性のリニアサーボ211の制御により、シリンダロッド212が鉛直方向に上下動することで、超音波集束部(音響レンズ)206の高さが調節される。
また、超音波集束部(音響レンズ)206の上部側が反応容器102へ近づくよう超音波集束部(音響レンズ)206を傾斜させる傾斜機構は、超音波集束部(音響レンズ)206の底面との接触部分であるシリンダロッド212の上端部が前後及び/又は左右に変位することで実現される。接触部分のシリンダロッド212の上端部には、例えば、シリンダロッド212の内部にサーボ(図示せず)、又は、複数のワイヤ線(図示せず)が仕込まれている。仮に、サーボであれば、ドライバ回路203より制御信号(制御指令)が伝送され、図示しない電源部より給電されることで、接触部分のシリンダロッド212の上端部を変位させる。一方、仮に、複数のワイヤ線であれば、ワイヤ線を例えば恒温槽114内に設定される水密(防水性)なモータにより巻き取る又は送り出すことにより、接触部分のシリンダロッド212の上端部を変位させる。
なお、超音波集束部(音響レンズ)206を鉛直方向に沿って上下動させる上下動機構として、リニアサーボ211、シリンダロッド212、及びリニアサーボ211を支持する支持部213を設ける構成を一例として説明したが、これに限られるものではない。例えば、水密(防水性)なモータと、モータの回転力を直動に変換し得るクランク機構、及び水密(防水性)なモータを恒温槽114の底部に固定する支持部を有する構成としても良い。
【0018】
図2に示すように、ドライバ回路203より各セグメント205へそれぞれ位相差を有する電圧が印加されると、超音波発生部(音源)201は、反応容器102の下方側へと向かう超音波(平面波)207を出射する。出射された超音波(平面波)207は、恒温水202中を伝搬し超音波集束部(音響レンズ)206の平坦な平板状をなす面に入射する。超音波集束部(音響レンズ)206に入射した超音波(平面波)207は、超音波集束部(音響レンズ)206の凹部の形状に沿った超音波(球面波)208となり恒温水202中を伝搬し、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面付近の焦点209に集束する。音響放射圧の作用により、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物に対流210が生じ、サンプルと試薬の混合物が攪拌され、混合される。
なお、上述の反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面付近の焦点209に超音波が集束した状態で、上述の傾斜機構が超音波集束部(音響レンズ)206の傾斜角を変更しつつ、上述の上下動機構が超音波集束部(音響レンズ)206を鉛直方向下方へと移動させることにより、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面付近の焦点209は、略円弧状の軌道に沿って反応容器102の下方へと移動する。これにより反応容器102内のサンプルと試薬の混合物に生ずる対流210の流速が増加し、サンプルと試薬の混合物の攪拌効率を向上させることが可能となる。なお、上述の上下動機構が超音波集束部(音響レンズ)206を鉛直方向に上下動させても良い。すなわち、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面付近の焦点209が、略円弧状の軌道に沿って反応容器102の下方へと移動した後、上記略円弧状の軌道に沿って反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面付近へと移動させても良い。
【0019】
図3は、
図2に示すドライバ回路の機能ブロック図であり、
図4は、音源を構成するセグメントへの印加電圧と音響レンズによる超音波の集束の関係を示す概念図である。
図3に示すように、ドライバ回路203は、液面高さ演算部231、超音波照射領域決定部232、振幅変調部233、遅延制御部234、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235、音響レンズ上下動制御部236、記憶部237、入力I/F238、出力I/F239を備え、これらは内部バス240介して相互に接続されている。ここで、液面高さ演算部231、超音波照射領域決定部232、振幅変調部233、遅延制御部234、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235、及び音響レンズ上下動制御部236は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に格納するRAM、外部記憶装置などの記憶装置にて実現されると共に、CPUなどのプロセッサがROMに格納された各種プログラムを読み出し実行し、実行結果である演算結果をRAM又は外部記憶装置に格納する。
【0020】
記憶部237は、予めユーザー(検査技師)によりコンソール113の入力装置(例えば、マウス又はキーボード等)を介して設定された情報、すなわち、少なくとも、反応容器102に分注されるサンプルと試薬の量、反応容器102の体積と底面積、攪拌のタイミング、各セグメント205の位置情報、超音波集束部(音響レンズ)206の焦点距離と初期位置情報、超音波集束部(音響レンズ)206と反応容器102との間隔等を含む情報204(
図2)を、コントローラ112より、入力I/F238及び内部バス240を介して所定の記憶領域に格納している。
【0021】
液面高さ演算部231は、内部バス240を介して記憶部237へアクセスし、記憶部237に格納される、反応容器102に分注されるサンプルと試薬の量、及び反応容器102の体積と底面積を読み出し、反応容器102内に収容されている被攪拌液であるサンプルと試薬の混合物の液面の高さを演算する。液面高さ演算部231は、求めた液面の高さを、超音波照射領域決定部232、振幅変調部233、及び音響レンズ高さ・傾斜角決定部235へ内部バス240を介して転送する。
【0022】
超音波照射領域決定部232は、液面高さ演算部231より転送された液面の高さに基づき、当該液面を含む反応容器102内の被攪拌液であるサンプルと試薬の混合物への最適な超音波照射領域を決定する。超音波照射領域決定部232は、決定した超音波照射領域を遅延制御部234及び音響レンズ高さ・傾斜角決定部235へ内部バス240を介して転送する。
【0023】
音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、内部バス240を介して記憶部237へアクセスし、記憶部237に格納される、超音波集束部(音響レンズ)206の焦点距離と初期位置情報、及び、超音波集束部(音響レンズ)206と反応容器102との間隔を読み出す。音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、読み出した、超音波集束部(音響レンズ)206の焦点距離と初期位置情報、及び、超音波集束部(音響レンズ)206と反応容器102との間隔、更には、液面高さ演算部231より転送された液面の高さ及び超音波照射領域決定部232より転送された超音波照射領域に基づき、超音波集束部(音響レンズ)206の高さ及び傾斜角を決定する。具体的には、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、超音波集束部(音響レンズ)206を鉛直方向に沿って上下動させる上下動機構を構成するシリンダロッド212の鉛直方向に沿ったストローク量を決定し、防水性のリニアサーボ211へ出力する制御信号(制御指令)を決定する。また、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、液面の高さ及び焦点距離に基づき、液面付近に焦点209が位置付けられるよう傾斜角を決定し、超音波集束部(音響レンズ)206の上部側が反応容器102へ近づくよう超音波集束部(音響レンズ)206を傾斜させる傾斜機構へ出力する制御信号(制御指令)を決定する。音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、決定した超音波集束部(音響レンズ)206の高さ及び傾斜角を遅延制御部234へ内部バス240を介して転送する。
なお、傾斜機構が超音波集束部(音響レンズ)206の傾斜角を変更しつつ、上下動機構が超音波集束部(音響レンズ)206を鉛直方向下方へと移動させる場合においては、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、超音波集束部(音響レンズ)206と反応容器102との間隔に基づき、超音波集束部(音響レンズ)206が反応容器102の外側面と接触しない範囲内となるよう傾斜角の変更量を決定する。また、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面付近の焦点209の下方への移動量を決定する。そして、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235は、焦点209の下方への移動量、すなわち、シリンダロッド212の鉛直方向に沿った下方へのストローク量を音響レンズ上下動制御部236へ内部バス240を介して転送する。
【0024】
振幅変調部233は、内部バス240を介して記憶部237へアクセスし、記憶部237に格納される反応容器102の体積と底面積を読み出す。そして、振幅変調部233は、読み出した反応容器102の体積と底面積、及び液面高さ演算部231より転送された液面の高さに基づき、セグメント205へ印加する正弦波状の電圧の振幅を変調する。これは、一般的に液体中を伝搬してきた超音波が自由液面に到達すると、液体は飛沫又はミスト状となり気体側に飛び出すような力(音響放射圧が主要因)が作用する。そのため、振幅変調部233は、反応容器102の体積と底面積に基づく反応容器102の深さ及び反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面の高さに応じて、換言すれば、サンプルと試薬の混合物の液面の高さから反応容器102の開放口までの距離に応じて、セグメント205へ印加する正弦波状の電圧の振幅を変調している。これにより、反応容器102の開放口よりサンプルと試薬の混合物の飛沫又はミストが飛散することを防止することが可能となる。
【0025】
遅延制御部234は、内部バス240を介して記憶部237へアクセスし、記憶部237に格納される各セグメント205の位置情報を読み出す。遅延制御部234は、読み出したセグメント205の位置情報、超音波照射領域決定部232より転送された超音波照射領域、及び、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235より転送される超音波集束部(音響レンズ)206の高さ及び傾斜角に基づき、超音波発生部(音源)201を構成する複数のセグメント205のうち、超音波照射領域に対応するセグメント205を選択する。そして、遅延制御部234は、超音波集束部(音響レンズ)206の平坦な平板状をなす面(超音波発生部(音源)201に対向する側の面)と、超音波発生部(音源)201より出射される超音波の位相面が平行となるよう、選択された各セグメント205へそれぞれ遅延を有する(位相差を有する)電圧を、出力I/F239を介して印加する。この時、各セグメント205へ印加される正弦波状の電圧の振幅は、振幅変調部233によって変調されている。
【0026】
図4に示すように、記憶部237に格納された攪拌のタイミングに応じて、ドライバ回路203より遅延制御部234によって選択された各セグメント205へ印加される正弦波状の電圧は、振幅変調部233による振幅変調後の電圧であって、遅延制御部234によりそれぞれ位相差(遅延)を有している。選択された各セグメント205より下方へ超音波集束部(音響レンズ)206に向かい超音波(平面波)207が出射される。出射された超音波(平面波)207の位相面は、所定の傾斜角にて傾斜する超音波集束部(音響レンズ)206の平坦な平板状をなす面(超音波発生部(音源)201に対向する側の面)と平行であり、恒温水202中を伝搬し超音波集束部(音響レンズ)206に入射する。超音波集束部(音響レンズ)206に入射した超音波(平面波)207は、超音波集束部(音響レンズ)206の凹部の形状に沿った超音波(球面波)208となり恒温水202中を伝搬し、集束点209に集束する。
図4及び
図2に示すように、本実施例の自動分析装置100としての生化学自動分析装置では、超音波発生部(音源)201の上端部が、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面の高さよりも上方に位置している。
【0027】
なお、本実施例では、遅延制御部234をソフトウェアにて実現する場合を示したがこれに限られるものではない。例えば、遅延制御部234をスイッチ等のハードウェアにて構成し、各セグメント205に電圧を印加する配線にそれぞれスイッチを配し、各スイッチを所定の遅延時間間隔のタイミングにて投入するよう構成しても良い。
また、本実施例では、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235及び音響レンズ上下動制御部236をドライバ回路203に備える構成としたが、必ずしもこれに限られず、これら音響レンズ高さ・傾斜角決定部235及び音響レンズ上下動制御部236をコントローラ112に設ける構成としても良い。
【0028】
以上のとおり、本実施例によれば、反応容器内の試薬とサンプルの混合における攪拌効率の向上、及び、攪拌可能な試薬とサンプルを微量化し得る自動分析装置を提供することが可能となる。
また、本実施例によれば、攪拌可能な反応容器内のサンプルと試薬の混合物の液面高さを、超音波発生部(音源)の高さ以下とすることができる。
【実施例2】
【0029】
図5は、本発明の他の実施例に係る実施例2の自動分析装置を構成する反応ディスク及び攪拌機構の縦断面図であり、
図6は、
図5に示すドライバ回路の機能ブロック図であり、
図7は、音源を構成するセグメントへの印加電圧と音響レンズによる超音波の集束の関係を示す概念図である。本実施例では、超音波集束部(音響レンズ)の超音波発生部(音源)に対向する側の面が球面の一部として近似された形状又は円柱の側面の一部として近似された形状の凸部を有する点、及び超音波発生部(音源)より出射する超音波がその伝搬方向において凹となる球面波である点が実施例1と異なる。その他の構成は実施例1と同様であるため、以下では、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
図5に示すように、自動分析装置100としての生化学自動分析装置の攪拌機構109を構成する超音波集束部(音響レンズ)206aは、反応容器102に対向する側の面に実施例1と同様に、球面の一部として近似された形状又は円筒の側面の一部として近似された形状を有する凹部を有すると共に、超音波発生部(音源)201に対向する側の面に球面の一部として近似された形状又は円柱の側面の一部として近似された形状を有する凸部を有する。そして、凸部の曲率半径は凹部の曲率半径よりも大きい。
【0031】
図6及び
図7に示すように、本実施例のドライバ回路203aを構成する遅延制御部234aは、内部バス240を介して記憶部237へアクセスし、記憶部237に格納される各セグメント205の位置情報を読み出す。遅延制御部234は、読み出したセグメント205の位置情報、超音波照射領域決定部232より転送された超音波照射領域、及び、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235より転送される超音波集束部(音響レンズ)206aの高さ及び傾斜角に基づき、超音波発生部(音源)201を構成する複数のセグメント205のうち、超音波照射領域に対応するセグメント205を選択する。そして、遅延制御部234aは、超音波集束部(音響レンズ)206aの超音波発生部(音源)201に対向する側の面に設けられる球面の一部として近似された形状又は円柱の側面の一部として近似された形状の凸部と、超音波発生部(音源)201より出射される超音波の位相面が整合するよう、選択された各セグメント205へそれぞれ遅延を有する(位相差を有する)電圧を、出力I/F239を介して印加する。この時、各セグメント205へ印加される正弦波状の電圧の振幅は、振幅変調部233によって変調されている。
【0032】
図7に示すように、記憶部237に格納された攪拌のタイミングに応じて、ドライバ回路203aより遅延制御部234aによって選択された各セグメント205へ印加される正弦波状の電圧は、振幅変調部233による振幅変調後の電圧であって、遅延制御部234aによりそれぞれ位相差(遅延)を有している。選択された各セグメント205より下方へ超音波集束部(音響レンズ)206aに向かい伝搬方向において凹となる超音波(球面波)208が出射される。出射された超音波(球面波)208の位相面は、所定の傾斜角にて傾斜する超音波集束部(音響レンズ)206の球面の一部として近似された形状又は円柱の側面の一部として近似された形状の凸部(超音波発生部(音源)201に対向する側の面)に整合することから、選択された各セグメント205から超音波(球面波)208が出射される段階で1段目の集束がかかる。選択された各セグメント205より出射された超音波(球面波)208は、恒温水202中を伝搬し超音波集束部(音響レンズ)206に入射する。超音波集束部(音響レンズ)206に入射した超音波(球面波)208は、超音波集束部(音響レンズ)206の凹部の形状に沿った超音波(球面波)208となり恒温水202中を伝搬し、集束点209に集束する。すなわち、超音波集束部(音響レンズ)206にて2段目の集束がかかる。このように、超音波発生部(音源)201より出射され、反応容器102内のサンプルと試薬の混合物の液面付近の焦点209に集束する超音波は2段階にて集束されることから、超音波の集束効率が向上され、攪拌効率が向上する。また、更に、対流201の流速を上昇させることが可能となる。
【0033】
なお、本実施例では、遅延制御部234aをソフトウェアにて実現する場合を示したがこれに限られるものではない。例えば、遅延制御部234aをスイッチ等のハードウェアにて構成し、各セグメント205に電圧を印加する配線にそれぞれスイッチを配し、各スイッチを所定の遅延時間間隔のタイミングにて投入するよう構成しても良い。
また、本実施例では、音響レンズ高さ・傾斜角決定部235及び音響レンズ上下動制御部236をドライバ回路203に備える構成としたが、必ずしもこれに限られず、これら音響レンズ高さ・傾斜角決定部235及び音響レンズ上下動制御部236をコントローラ112に設ける構成としても良い。
【0034】
以上のとおり、本実施例によれば、実施例1の効果に加え、実施例1と比較し、超音波の集束効率が向上し、攪拌効率を向上することが可能となる。また、更に対流の流速を上昇させることが可能となる。
【実施例3】
【0035】
図8は、本発明の他の実施例に係る実施例3の自動分析装置を構成する反応ディスク及び攪拌機構の縦断面図であり、
図9は、
図8に示すドライバ回路の機能ブロック図であり、
図10は、音源を構成するセグメントへの印加電圧と音響レンズによる超音波の集束の関係を示す概念図である。本実施例では、超音波集束部(音響レンズ)の超音波発生部(音源)に対向する側の面が球面の一部として近似された形状又は円筒の側面の一部として近似された形状の凹部を有する点、及び遅延制御部を有しない点が実施例1及び実施例2と異なる。その他の構成は実施例1と同様であるため、以下では、実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
図8に示すように、自動分析装置100としての生化学自動分析装置の攪拌機構109を構成する超音波集束部(音響レンズ)206bは、反応容器102に対向する側の面に実施例1と同様に、球面の一部として近似された形状又は円筒の側面の一部として近似された形状を有する凹部を有すると共に、超音波発生部(音源)201に対向する側の面に球面の一部として近似された形状又は円筒の側面の一部として近似された形状を有する凹部を有する。そして、超音波発生部(音源)201に対向する側の面の凹部の曲率半径は、反応容器102に対向する側の面の凹部の曲率半径よりも大きい。
【0037】
図9に示すように、本実施例のドライバ回路203bは、遅延制御部を有しない。ドライバ回路203bを構成する振幅変調部233は、内部バス240を介して記憶部237へアクセスし、記憶部237に格納される反応容器102の体積と底面積を読み出す。そして、振幅変調部233は、読み出した反応容器102の体積と底面積、及び液面高さ演算部231より転送された液面の高さに基づき、セグメント205へ印加する正弦波状の電圧の振幅を変調する。そして、振幅変調部233は、超音波照射領域決定部232より決定された超音波照射領域に対応する各セグメント205へ、振幅が変調された正弦波状の電圧を、出力I/F239を介して同位相にて印加する。
【0038】
図10に示すように、記憶部237に格納された攪拌のタイミングに応じて、振幅が変調された正弦波状の電圧が同位相にて各セグメント205に印加されると、各セグメント205は音波集束部(音響レンズ)206bに向かい超音波(平面波)207を出射する。各セグメント205より出射された超音波(平面波)207は、恒温水202中を伝搬し超音波集束部(音響レンズ)206bに到達するまでの間に、伝搬方向において凸となる超音波(球面波)208に変化する現象が生じる場合がある。これは、それぞれ独立に駆動可能なセグメント205がアレイ状に配置された構造を有する超音波発生部(音源)201に同位相の正弦波状の電圧が印加されると、あたかも点音源或は巨視的に一つのセグメントから超音波が出射された場合と等価となることによる。このような場合であっても、本実施例の音波集束部(音響レンズ)206bは、超音波発生部(音源)201に対向する側の面に球面の一部として近似された形状又は円筒の側面の一部として近似された形状を有する凹部を有することから、伝搬方向において凸となる超音波(球面波)208と超音波発生部(音源)201に対向する側の面の凹部とが整合する。そして、超音波集束部(音響レンズ)206bに入射した超音波(球面波)208は、超音波集束部(音響レンズ)206の反応容器102に対向する側の面の凹部の形状に沿った超音波(球面波)208となり恒温水202中を伝搬し、集束点209に集束する。
【0039】
なお、本実施例では、超音波発生部(音源)201を複数のセグメント205にて構成したが、これに限らず、超音波発生部(音源)201を点音源としても良い。
【0040】
以上のとおり、本実施例によれば、実施例1の効果に加え、遅延制御が不要となることから、ドライバ回路の構成を実施例1と比較し簡素化できる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。