特許第6825452号(P6825452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6825452-金属粉体の冷却装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825452
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】金属粉体の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F28C 3/12 20060101AFI20210121BHJP
   F25D 1/00 20060101ALI20210121BHJP
   F27D 15/02 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   F28C3/12
   F25D1/00 Z
   F27D15/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-66220(P2017-66220)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-169081(P2018-169081A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】一本松 昭二
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−24239(JP,A)
【文献】 特開2016−56417(JP,A)
【文献】 実開平1−122039(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28C 3/12
B22F
B65G 51/02
F27D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した金属粉体が投入される投入タンクの下端部に連結され、該金属粉体を流送するための流送配管と、
前記流送配管を通って流送された金属粉体を貯蔵する貯蔵用タンクと、
前記貯蔵用タンクの下流側に設けられる移送用タンクと、
前記移送用タンクの下端部に連結され、該移送用タンクから次工程の処理装置へ前記金属粉体を移送するための移送配管と、
を備え、
前記流送配管には、前記投入タンクとの連結箇所に、冷却ガスを取り込む冷却ガス取込口が設けられており、
前記金属粉体は、前記冷却ガス取込口から取り込まれる冷却ガスにより前記流送配管内で冷却されながら流送されるとともに、
前記貯蔵用タンク内で測定される前記金属粉体の測定温度に基づいて、その金属粉体を前記次工程が行われる処理装置に移送するか、あるいは再び前記貯蔵用タンクに循環移送させるかの制御を行う制御部をさらに備えた
金属粉体の冷却装置。
【請求項2】
前記貯蔵用タンクの上方に設けられ、前記冷却ガスを吸い込んで前記金属粉体を流送させるブロワーを備える
請求項1に記載の金属粉体の冷却装置。
【請求項3】
前記貯蔵用タンクには、前記流送配管を介して該貯蔵用タンクに貯蔵された金属粉体の温度を測定する、前記制御部と電気的に接続された温度センサーが設けられている
請求項1又は2に記載の金属粉体の冷却装置。
【請求項4】
前記移送配管には、前記移送用タンクから移送される金属粉体の移送先を切り替える、前記制御部と電気的に接続された切替弁が設けられており、
前記温度センサーにより測定された金属粉体の温度が所定の温度を超える場合、該金属粉体が、前記切替弁のポイントで前記移送配管に接続された循環配管を介して前記貯蔵用タンクに戻される
請求項3に記載の金属粉体の冷却装置。
【請求項5】
前記移送配管には、前記移送用タンクとの連結箇所に、冷却ガスを取り込む冷却ガス取込口が設けられており、該移送配管内を通過する金属粉体が冷却される
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属粉体の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉体の冷却装置に関するものであり、より詳しくは、高温条件で加熱処理や乾燥処理が行われた後等の、加熱された金属粉体を短時間で効率的に冷却することができる金属粉体の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉体は、例えば、還元剤を含有する溶液から金属粒子を析出生成させることや、溶液からの晶析により得られる金属化合物を粉砕機等によって粒子状に粉砕することで得ることができる。このようにして得られた金属粉体は、高温の温度条件で加熱処理が施されたり、金属粉を洗浄後高温で乾燥処理して金属粉体に付着した水分等を除去する操作が行われる。その後、高温条件での処理により加熱された金属粉体(加熱粉)は、例えば加工処理等が行われる次工程に移送されるに先立ち、所定の温度以下にまで冷却される。
【0003】
金属粉体の冷却は、一般的に、金属粉体間の熱伝導率が悪いため、冷却装置内で粉体を撹拌等することよって掻き混ぜて冷却する、若しくは、冷却装置に振動を加えて装置内に装入した粉体を流動させながら缶体と熱交換して冷却する等の方法で行われている。
【0004】
具体的に、冷却装置内での粉体の冷却は、装置に設けられた冷却ジャケット内を流れる冷媒と熱交換を行う間接冷却や、冷却装置内に直接的に冷風を吹き込みながら粉体と熱交換を行う直接冷却の方法がある。
【0005】
しかしながら、これらの方法は、粉体の熱伝導は非常に悪く、冷却時間が必然的に長くなり、効率的な操作を行うことができない。また、粉体の冷却時間が長くなると、冷却装置と粉体との磨耗による粉体へ異物混入量が多くなるという問題もある。さらに、粉体の冷却処時間が長くなる場合、処理量を多くして効率的な操業を行うためには、冷却設備を大型化する必要がある。
【0006】
一方で、粉体の冷却処理を早くするために、例えば装置内での撹拌能力を上げようとすると、硬度の高い材料を缶体や撹拌羽根に溶射して、磨耗を最小限に抑える工夫を施すことが必要になるが、これら方策は非常に設備コストを増加させてしまう。また、装置と粉体との磨耗を完全に無くすことは不可能であるため、定期的に装置のメンテナンスを実施する必要があるが、設備の大型化や低摩耗対策を施すと、メンテナンスコストも高いものとなり、さらにメンテナンス自体も難しくなってしまう。
【0007】
なお、特許文献1には、セメントの冷却システムとして、運搬車両から貯槽施設にセメントを空気圧送する圧送設備と、所定の温度以下に空気を冷却する設備とを具備して、輸送する際に冷却空気を使用して冷却する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献1に記載の技術は、セメントの冷却に関する技術であり、金属粉体の冷却に容易に適用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−136861号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】粉体技術総覧 2014−2015,一般社団法人日本粉体技術協会,p88−105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、金属粉体に対する冷却処理を短時間でかつ効率的に実行できる金属粉体の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、加熱された金属粉体を、冷却ガスを取り込んだ流送配管を介して流送させることで、その流送配管内で冷却ガスとの接触による熱交換が行われるようにし、金属粉体を流送させながら短時間に効率的に冷却させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明の第1の発明は、加熱した金属粉体が投入される投入タンクの下端部に連結され、該金属粉体を流送するための流送配管と、前記流送配管を通って流送された金属粉体を貯蔵する貯蔵用タンクと、前記貯蔵用タンクの下流側に設けられる移送用タンクと、前記移送用タンクの下端部に連結され、該移送用タンクから次工程の処理装置へ前記金属粉体を移送するための移送配管と、を備え、前記流送配管には、前記投入タンクとの連結箇所に、冷却ガスを取り込む冷却ガス取込口が設けられており、前記金属粉体は、前記冷却ガス取込口から取り込まれる冷却ガスにより前記流送配管内で冷却されながら流送される、金属粉体の冷却装置である。
【0013】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記貯蔵用タンクの上方に設けられ、前記冷却ガスを吸い込んで前記金属粉体を流送させるブロワーを備える、金属粉体の冷却装置である。
【0014】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記貯蔵用タンクには、前記流送配管を介して該貯蔵用タンクに貯蔵された金属粉体の温度を測定する温度センサーが設けられている、金属粉体の冷却装置である。
【0015】
(4)本発明の第4の発明は、第3の発明において、前記移送配管には、前記移送用タンクから移送される金属粉体の移送先を切り替える切替弁が設けられており、前記温度センサーにより測定された金属粉体の温度が所定の温度を超える場合、該金属粉体が、前記切替弁のポイントで前記移送配管に接続された循環配管を介して前記貯蔵用タンクに戻される、金属粉体の冷却装置である。
【0016】
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記移送配管には、前記移送用タンクとの連結箇所に、冷却ガスを取り込む冷却ガス取込口が設けられており、該移送配管内を通過する金属粉体が冷却される、金属粉体の冷却装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属粉体に対する冷却処理を短時間でかつ効率的に実行することができる金属粉体の冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】金属粉体の冷却装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る金属粉体の冷却装置(以下、単に「冷却装置」ともいう)の構成を示す模式図である。金属粉体の冷却装置1は、加熱した金属粉体(加熱粉)が投入される投入タンク11と、投入タンク11の下端部に連結されて加熱粉を流送するための流送配管12と、流送配管12を通って流送された加熱粉体を貯蔵する貯蔵用タンク13と、貯蔵用タンク13の下流側に設けられる移送用タンク14と、移送用タンク14の下端部に連結されてその移送用タンク14から次工程が行われる処理装置へ金属粉体を移送するための移送配管15と、を備える。
【0021】
そして、冷却装置1には、流送配管12において、投入タンク11との連結箇所に、冷却ガスを取り込む冷却ガス取込口12Aが設けられており、加熱粉は、冷却ガス取込口12Aから取り込まれる冷却ガスにより、流送配管12内で冷却されながら流送されることを特徴としている。
【0022】
また、冷却装置1には、金属粉体の移送先を制御する制御部30が設けられている。制御部30は、流送配管12内を冷却されながら流送された金属粉体の測定温度に基づいて、その金属粉体を次工程が行われる処理装置に移送するか、あるいは再び貯蔵用タンク13に循環移送させるかの制御を行う。
【0023】
このような構成を有する冷却装置1によれば、加熱粉が流送配管内を通過する際に、冷却ガスにより冷却されながら流送されるため、短時間で効率的に冷却処理を行うことができる。また、従来のような撹拌翼や振動装置等の付加設備を備えて撹拌処理や振動を加えながら冷却する冷却装置を別途設けて冷却処理を行う必要がないため、金属粉体に異物が混入するおそれがなく、設備コスト等も有効に抑えることができる。また、制御部30により、所定の基準に基づいて金属粉体を循環させるようにすることで、確実に冷却された金属粉体を次工程に移送させることができる。
【0024】
具体的に、本実施の形態に係る冷却装置1によれば、所定量の金属粉体を4℃〜5℃/min程度で冷却することができる。なお、従来の冷却装置、例えば撹拌しながら冷却する冷却装置では、同量の金属粉体に対する冷却処理を行った場合、冷却速度としてはおよそ1℃〜2℃/min程度であった。
【0025】
以下、冷却装置1の各構成について、より具体的に説明する。
【0026】
[投入タンク]
投入タンク11は、加熱された金属粉体を一旦貯留するタンクである。投入タンク11としては、特に限定されず、公知の貯留タンクを用いることができる。また、投入タンク11の下端部、すなわち後述する流送配管12との連結箇所には、流送配管12への加熱粉の装入を調節することができるバルブ11aを設けることができる。
【0027】
一般的に、金属粉体は、湿式法等により製造された後に高い温度条件で加熱処理したり、洗浄後乾燥処理が行われるため、高温に加熱された加熱粉の状態となる。このような高温の加熱粉は、次工程にて所定の処理が施されるに先立ち、例えば50℃以下程度の温度に冷却される。本実施の形態に係る冷却装置1においては、製造された加熱粉を投入タンク11に一旦貯留し、後述する流送配管12を介して冷却しながら、次工程の処理に流送する。
【0028】
[流送配管]
流送配管12は、加熱粉を流送するための配管である。流送配管12は、一端が投入タンク11の下端部と連結され、他端が貯蔵用タンク13と連結されており、加熱粉を投入タンク11と貯蔵用タンク13との間で流送させる。図1中の矢印F1は、流送配管12を介した加熱粉の流送方向を示す。
【0029】
ここで、流送配管12には、投入タンク11との連結箇所に、冷却ガスを取り込む冷却ガス取込口12Aが設けられている。冷却ガス取込口12Aには、例えば、所定の温度に冷却された空気等の冷却ガスが供給され、その冷却ガス取込口12Aを介して流送配管12内に冷却ガスが取り込まれる。このように、冷却装置1においては、加熱粉を流送する流送配管12に冷却ガスが取り込まれるようになっており、加熱粉がその冷却ガスと接触することで熱交換され、その加熱粉を冷却しながら流送することができ、短時間に効率的に冷却処理を行うことができる。
【0030】
流送配管12内に取り込まれる冷却ガスとしては、冷却された空気が挙げられる。このように、冷却された空気により空気流送することで、加熱粉を効率的に冷却しながら流送することができる。また、冷却ガスとしては、空気に限定されず、例えば酸化防止のために窒素(N)ガスやアルゴンガス等の不活性ガスであってもよく、あるいは低露点の水分が除去された空気であってもよく、流送する金属粉体との関係で適宜決定することができる。
【0031】
また、冷却ガスは、所定の風速で流送配管12内に取り込まれるようにすることができる。所定の風速を有する冷却ガスが取り込まれるようにすることで、加熱粉を効率的に冷却することができるとともに、流送配管12内をスムーズに流送させることができる。
【0032】
また、詳しくは後述するが、貯蔵用タンク13の上方にブロワー17を設け、そのブロワー17により流送配管12に取り込まれて流れる冷却ガスを吸い込むようにし、これにより加熱粉を流送させるようにすることもできる。
【0033】
[貯蔵用タンク]
貯蔵用タンク13は、流送配管12が連結しており、その流送配管12を通って流送され加熱粉を装入し、貯蔵する。上述したように、流送配管12においては、加熱粉が冷却ガスにより冷却されながら流送されるため、その流送配管12を介して装入される加熱粉は、所定の程度で冷却された状態の金属粉体である。
【0034】
貯蔵用タンク13としては、特に限定されず、公知の貯留タンクを用いることができる。また、貯蔵用タンク13には、例えばそのタンク外周に、冷却ジャケット等の冷却部材を設けることができる。これにより、流送配管12から貯蔵用タンク13に装入され貯蔵されている金属粉体を冷却することができる。
【0035】
貯蔵用タンク13には、その上部にバグフィルターユニット16が設けられており、製造された金属粉体がブロワー17を介して外部に排出されないように集塵してタンク内に戻す。また、バグフィルターユニット16には、ブロワー17が接続されており、ブロワー17による吸引によって貯蔵用タンク13の内部が負圧になるため、流送配管12を介して流送される加熱粉の流送を行う。また、後述するように、移送配管15から循環して戻された金属粉体を効率的に循環移送させることができる。
【0036】
なお、バグフィルターユニット16は、特に限定されず、公知の集塵装置等の耐熱性のフィルターを用いることができる。また、ブロワー17についても、粒子を圧送できるものであれば特に限定されず、遠心式ブロワー、軸流式ブロワー等の公知のものを用いることができる。
【0037】
また、貯蔵用タンク13には、その内部に温度センサー13Tが設けられており、貯蔵された金属粉体の温度を測定する。温度センサー13Tは、流送配管12を介して冷却されながら流送され貯蔵用タンク13に貯蔵された金属粉体の温度を測定し、その金属粉体の測定温度情報を制御部30に送信する。これにより、制御部30では、貯蔵用タンク13に貯蔵された金属粉体が任意に設定された目的の温度にまで冷却された状態であるか否かの判断を行うことが可能となる。
【0038】
貯蔵用タンク13は、下流側において移送用タンク14と接続されており、貯蔵用タンク13に貯蔵された金属粉体は、次に移送用タンクに移される。なお、貯蔵用タンク13と移送用タンク14との接続箇所には、ロータリーバルブ18を設けることができる。これにより、貯蔵用タンク13から移送用タンク14へ移される金属粉体の量を、配管長や流送速度、冷却された空気量に合わせて適宜調整することできる。
【0039】
[移送用タンク]
移送用タンク14は、上述したように貯蔵用タンク13の下流側に設けられ、貯蔵用タンク13から装入された金属粉体を一時的に貯留する。移送用タンク14には、後述する移送配管15が連結されており、基本的に、その移送配管15を介して次工程が行われる処理装置へ移送される金属粉体が一時的に貯留される。
【0040】
なお、移送用タンク14としては、公知の貯留タンクを用いることができる。
【0041】
[移送配管]
移送配管15は、移送用タンク14から次工程が行われる処理装置へと金属粉体を移送するための配管である。移送配管15は、一端が移送用タンク14の下端部と連結され、他端が次工程の処理装置と連結されており、金属粉体を移送用タンク14から所定の処理装置へと移送させる。図1中の矢印F2は、移送配管15を介した金属粉体の移送方向を示す。
【0042】
ここで、移送配管15においては、移送用タンク14との連結箇所に、冷却ガスを取り込む冷却ガス取込口15Aを設けることができる。流送配管12に設けられている冷却ガス取込口12Aと同様に、移送配管15に設けられる冷却ガス取込口15Aには、冷却された空気等の冷却ガスが供給され、その冷却ガス取込口15Aを介して移送配管15内に冷却ガスが取り込まれる。このように、移送配管15にも冷却ガスを取り込むようにすることで、次工程に移送される金属粉体を冷却しながら移送させることができる。また、金属粉体の移送スピードも高まり、滞留等を防止することができる。なお、このとき、移送配管15を介した次工程への移送においても、上述した貯蔵用タンク13、バグフィルターユニット16、ブロワー17と同様の構成を設けるようにしてもよい。
【0043】
なお、図1に示すように、流送配管12の冷却ガス取込口12Aと、移送配管15の冷却ガス取込口15Aとからそれぞれ取り込まれる冷却ガスの供給源は、共通化させることができ、同じ冷却ガスが取り込まれるようにすることができる。
【0044】
移送配管15には、所定の箇所において枝分かれするように、循環配管19が接続されている。また、その移送配管15と循環配管19との接続箇所(ポイント)には、移送用タンク14から移送される金属粉体の移送先を切り替える切替弁20が設けられている。
【0045】
移送配管15に接続された循環配管19は、切替弁20により移送先が切り替えられた金属粉体を循環移送させるための配管である。循環配管19は、その他端が、貯蔵用タンク13に連結される手前の流送配管12と接続されており、循環配管19と流送配管12との接続箇所には循環切替弁21が設けられている。なお、循環切替弁21は、貯蔵用タンク13へ装入される金属粉体(の装入源)を切り替えるものであり、投入タンク11から流送配管12を介して流送された金属粉体を装入するか、循環配管19を介して循環移送された金属粉体を装入するかを切り替える。このように、循環配管19を介して金属粉体を循環移送させ、流送配管12に戻るようにすることで、再びその金属粉体を冷却ガスにより冷却させることができる。図1中の矢印F3は、循環配管19を介した金属粉体の移送方向を示す。
【0046】
具体的に、移送用タンク14から供給された金属粉体を移送するに際しては、金属粉体が任意に設定した目的の温度以下となっているか否かを判断基準として、目的の温度以下に冷却された金属粉体は、そのまま移送配管15を通って次工程の処理装置へと移送される。一方で、目的の温度を超える状態である金属粉体は、未だ十分に冷却されていない粉体であるため、切替弁20による移送切替に基づき、移送配管15を介して循環配管19を通って循環移送される。上述したように、循環配管19は他端が流送配管12に接続されているため、金属粉体は、その循環配管19を介して循環移送させれた後、再び冷却ガスにより冷却される。
【0047】
[制御部]
制御部30は、金属粉体の移送先を制御する。制御部30は、貯蔵用タンク13に設けられた温度センサー13Tと、移送配管15の途中(循環配管19との接続箇所)に設けられた切替弁20と、それぞれ電気的に接続されており、貯蔵用タンク13内で測定される金属粉体の測定温度に基づいて、金属粉体を次工程が行われる処理装置に移送するか、あるいは再び貯蔵用タンク13に循環移送させるかの制御を行う。
【0048】
具体的に、貯蔵用タンク13において流送配管12内を冷却されながら流送されてきた金属粉体の温度が温度センサー13Tにより測定されると、制御部30は、その温度センサー13Tにより測定温度の情報を受信する。制御部30は、受信した金属粉体の測定温度が、予め任意に設定された目的の温度(設定目的温度)以下であるか否かの判断を行う。例えば、設定目的温度を50℃とした場合、制御部30は、金属粉体の測定温度が50℃以下であるか50℃を超えるかの判定を行い、測定温度が50℃以下であればその金属粉体は十分に冷却されていると判断し、50℃を超えればその金属粉体は未だ十分に冷却されていないと判断する。
【0049】
そして、制御部30は、その測定温度に基づく金属粉体の冷却程度の判断に基づいて、移送配管15を介した金属粉体の移送先を制御する。すなわち、制御部30は、金属粉体の測定温度が設定目的温度以下であり金属粉体が十分に冷却されていると判断すると、移送配管15を介してそのまま(切替弁20を切り替えずに)次工程が行われる処理装置へと金属粉体を移送する。一方で、金属粉体の測定温度が設定目的温度を超えており金属粉体が十分に冷却されていないと判断すると、切替弁20を切り替えて移送配管15を介して循環配管19へと移送させる。上述したように、循環配管19は、冷却ガスが流通する流送配管12に接続されており、十分に冷却されていない金属粉体を循環移送する。
【0050】
このように制御部30は、金属粉体の測定温度に基づいて金属粉体の移送先を的確に制御している。これにより、冷却装置1は、金属粉体に対する冷却処理を確実にかつ効率的に行うことができ、未だ高温の熱を帯びた金属粉体が次工程へ移送されることを有効に防ぐことができる。
【0051】
また、制御部30は、上述したような温度センサー13Tによる金属粉体の測定温度に基づく制御に加え、例えば金属粉体を意図的に複数回(例えば5回など)循環させるように制御してもよい。例えば、移送用タンク14から供給された金属粉体を移送配管15を介して移送させる際、制御部30は、意図的に切替弁20を切り替えて循環配管19に循環移送させるようにし、これを5回繰り返す。そして、5回の循環が終了した後、貯蔵用タンク13に貯蔵された金属粉体を温度センサー13Tにより測定し、その測定温度に基づいて、もう一度循環させるか、移送配管15を介して次工程の処理装置に移送させるかの制御を行う。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る金属粉体の冷却装置1によれば、加熱された金属粉体が流送配管12内を通過する際に、冷却ガスにより冷却されながら流送されるため、短時間で効率的に冷却処理を行うことができる。また、従来のような撹拌を行いながら冷却する冷却装置を別途設けて冷却処理を行う必要がないため、金属粉体に異物が混入するおそれがなく、設備コスト等も有効に抑えることができる。
【0053】
また、制御部30を設けて、所定の基準に基づいて金属粉体を循環させるようにすることで、確実に冷却された金属粉体を次工程に移送させることができる。
【0054】
なお、本実施の形態においては、流送配管12の冷却ガス取込口12Aと、移送配管15の冷却ガス取込口15Aとから冷却ガスが取り込まれる態様を示したが、これに限定されない。例えば、流送配管12や移送配管15の途中の箇所に同様の冷却ガス取込口を設けて、その途中の箇所から冷却ガスを取り込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 冷却装置
11 投入タンク
12 流送配管
12A 冷却ガス取込口
13 貯蔵用タンク
13T 温度センサー
14 移送用タンク
15 移送配管
15A 冷却ガス取込口
16 バグフィルターユニット
17 ブロワー
18 ロータリーバルブ
19 循環配管
20 切替弁
21 循環切替弁
30 制御部
図1