特許第6825734号(P6825734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6825734
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20210121BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20210121BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20210121BHJP
【FI】
   D01F1/10
   B29C64/118
   B33Y70/10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-43591(P2020-43591)
(22)【出願日】2020年3月13日
(62)【分割の表示】特願2017-22669(P2017-22669)の分割
【原出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2020-111867(P2020-111867A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津森 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】塚谷 敏彦
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/129613(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0339633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 − 48/96
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00 − 99/00
D01F 1/00 − 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDから発光した光の波長を変換して、該波長とは異なる波長の光を発光する蛍光体を含有する波長変換部材を、溶融積層法による3Dプリンターにより製造するための原料フィラメントであり、粒子状の上記蛍光体が熱可塑性樹脂中に30質量%以下の濃度で分散しており、
上記蛍光体が、A2(M1-x,Mnx)F6(式中、AはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種又は2種以上のアルカリ金属、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnから選ばれる1種又は2種以上の4価元素であり、xは0.001〜0.3の範囲の正数である。)で表されるマンガン賦活複フッ化物蛍光体を含み、
上記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂及びアクリルイミド樹脂から選ばれることを特徴とする蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント。
【請求項2】
上記マンガン賦活複フッ化物蛍光体が、K2(Si1-x,Mnx)F6(式中、xは0.001〜0.3の範囲の正数である。)で表されるマンガン賦活ケイフッ化カリウム蛍光体であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント。
【請求項3】
上記熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン−プロピレン共重合体から選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDから発光した光の波長を変換して、異なる波長の光を発光する蛍光体を含有する波長変換部材の製造に好適な蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な白色LEDは、青色LED素子と、この素子から発光した光を、より長波長の可視光成分に変換する蛍光体とにより構成されている。このような白色LEDにおいては、蛍光体に入射した励起光である青色光が波長変換されることにより生じた、青色光より長波長の光と、蛍光体に吸収されなかった青色光とが合わさることで、白色光が生成される。白色LEDでは、発光した光の色度、色温度及び発光効率などの特性は、蛍光体の種類及び濃度に大きく依存しており、発光光の特性は、通常、蛍光体の種類と濃度により調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015−520494号公報
【特許文献2】特表2015−515734号公報
【特許文献3】特表2013−521614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなLED発光装置において、発光した光の色度、色温度、発光効率などの発光特性は、波長変換部材の形状や厚みによっても変化する。このような波長変換部材に用いられる蛍光体は、比較的高価なものであるから、その使用量を削減することが求められているが、波長変換部材の形状や厚みによって発光特性を改善して、蛍光体の使用量を低減しようとする場合、LED素子を封止する樹脂などの封止材に蛍光体を分散させたLEDパッケージでは、波長変換部材をなす封止材の形状や厚みを大きく変更することができないため、限界がある。
【0005】
これに対して、LED素子又はLED素子が封止材で封止されたLEDパッケージとは別の部材として形成された波長変換部材を用いるリモートフォスファー型のLED発光装置であれば、波長変換部材の形状や厚み、更には、LED素子又はLED素子パッケージに対する波長変換部材の配置を変更して、より少ない量の蛍光体で、より高い発光特性を得ることが可能であり、波長変換部材の態様変更の自由度が高い。
【0006】
しかしながら、様々な形状の波長変換部材を作製してその光学特性を検討するには、通常の金型を用いた製造方法では、多数の金型を用意する必要があり、コストが高くなる。また、波長変換部材の製造方法は、蛍光体が均一に分散された波長変換部材を製造できるものでなければ、波長変換部材に必要とされる十分な光学特性を得ることができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、より少ない量の蛍光体で、より高い発光特性、特に、より高い発光効率を与えることができる波長変換部材を、金型を用いることなく、蛍光体の分散性が高い状態、即ち、波長変換部材全体において、蛍光体が均一に分散し、蛍光体濃度のばらつきが抑えられた状態で製造できる蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、リモートフォスファー型のLED発光装置に用いる波長変換部材として、LEDから発光した光の波長を変換して、この波長とは異なる波長の光を発光する蛍光体を含有する波長変換部材の形状、厚み、LEDに対する波長変換部材の配置などについて検討するにあたり、波長変換部材を、金型を用いることなく、効率よく製造できる方法について鋭意検討を重ねた結果、LEDから発光した光の波長を変換して、当該波長とは異なる波長の光を発光する蛍光体を含有する波長変換部材を、粒子状の蛍光体が熱可塑性樹脂中に30質量%以下の濃度で分散している蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを用いて、溶融積層法による3Dプリンターにより製造することにより、蛍光体の分散性が高い状態で、波長変換部材を製造できることを見出した。
【0009】
そして、本発明者らは、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを、粒子状の蛍光体を熱可塑性樹脂に混合して蛍光体含有熱可塑性樹脂を得た後、
(1)蛍光体含有熱可塑性樹脂を、溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)を30以上60以下として押出成形すること、又は
(2)蛍光体含有熱可塑性樹脂を、180℃以上240℃未満の温度で溶融させた状態でオリフィス穴から押出し、かつ溶融した蛍光体含有熱可塑性樹脂の押出の線速度に対して、3倍以上30倍以下の線速度で延伸しながら引取る押出成形すること
により、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント中の蛍光体の分散性が高くなり、ひいては、得られた蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを用いて、溶融積層法による3Dプリンターにより製造した波長変換部材においても、蛍光体の分散性が高い波長変換部材となることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記の蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを提供する。
請求項1:
LEDから発光した光の波長を変換して、該波長とは異なる波長の光を発光する蛍光体を含有する波長変換部材を、溶融積層法による3Dプリンターにより製造するための原料フィラメントであり、粒子状の上記蛍光体が熱可塑性樹脂中に30質量%以下の濃度で分散しており、
上記蛍光体が、A2(M1-x,Mnx)F6(式中、AはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種又は2種以上のアルカリ金属、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnから選ばれる1種又は2種以上の4価元素であり、xは0.001〜0.3の範囲の正数である。)で表されるマンガン賦活複フッ化物蛍光体を含み、
上記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂及びアクリルイミド樹脂から選ばれることを特徴とする蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント。
請求項2:
上記マンガン賦活複フッ化物蛍光体が、K2(Si1-x,Mnx)F6(式中、xは0.001〜0.3の範囲の正数である。)で表されるマンガン賦活ケイフッ化カリウム蛍光体であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント。
請求項3:
上記熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン−プロピレン共重合体から選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リモートフォスファー型のLED発光装置に用いられる波長変換部材を、金型を用いることなく、効率よく製造でき、また、得られた波長変換部材の蛍光体の分散性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で作製した本発明の波長変換部材(No.1)の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
図2】実施例1で作製した本発明の波長変換部材(No.2)の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
図3】実施例1で作製した本発明の波長変換部材(No.3)の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
図4】実施例1で波長変換部材(No.1)を用いて作製した本発明のリモートフォスファー型のLED発光装置の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
本発明の波長変換部材は、LEDから発光した光の波長を変換して、この波長とは異なる波長の光を発光する蛍光体を含有する。本発明において、LEDは、LED素子のみ、即ち、LED半導体チップのみの場合を対象としてもよいが、通常は、LED素子(LED半導体チップ)が基材又は基板の上に設置され、リード線、端子などの配線部材と共に、樹脂などの封止材で封止されたLEDパッケージが用いられる。LEDパッケージとしては、通常、封止材中に、LED素子から発光した光の波長を変換して、この波長とは異なる波長の光を発光する蛍光体を含まないものが用いられるが、封止材中に蛍光体を含むものを用いてもよい。
【0014】
LEDとしては、発光光が赤色光の赤色LED、発光光が緑色の緑色LED、発光光が青色の青色LED、発光光が黄色の黄色LED、発光光が白色の白色LEDなどの可視光を発光するダイオードや、紫外光を発光する紫外線LEDなどを用いることができるが、青色LED、特に、ピーク波長が440〜470nmの青色光を発光する青色LEDが好適である。
【0015】
蛍光体の種類は、LEDが発光する励起光の波長と、LED発光装置から発光させる光の色に応じて、適宜選択することができる。例えば、青色発光ダイオードを用いる場合、青色発光ダイオードを用いて白色を発光するLED発光装置を構成するために用いられる蛍光体が好適である。このような蛍光体としては、励起光である青色光で励起されて、黄色、緑色、橙色、赤色などの光を発光する蛍光体が挙げられる。具体的には、Y3Al512:Ce、(Y,Gd)3(Al,Ga)512、(Y,Gd)3Al512:Ce、Lu3Al512:Ce、(Lu,Y)3Al512:Ce、Y3(Al,Ga)512:Tb、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu、β−SiAlON:Euなどの黄色蛍光体又は緑色蛍光体などが挙げられる。
【0016】
また、5000K以下の低い色温度が求められる場合は、黄色蛍光体又は緑色蛍光体と共に、赤色蛍光体を用いることができる。赤色蛍光体としては、CaAlSiN:Eu2+、Sr−CaAlSiN3:Eu3+などが挙げられるが、特に演色性に優れた白色のLED発光装置とする場合には、マンガン賦活複フッ化物蛍光体を用いることが好ましい。
【0017】
マンガン賦活複フッ化物蛍光体は、複フッ化物の構成元素の一部が、賦活元素であるマンガン(Mn)で置換された構造を有し、例えば、A2MF6(式中、AはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種又は2種以上のアルカリ金属、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnから選ばれる1種又は2種以上の4価元素である。)で表される複フッ化物の構成元素の一部が、賦活元素であるマンガン(Mn)で置換された構造を有するものが挙げられる。このようなものとしては、A2(M1-x,Mnx)F6(式中、A及びMは、上記と同じであり、xは0.001〜0.3の範囲の正数である。)で表されるマンガン賦活複フッ化物蛍光体が好適である。このマンガン賦活複フッ化物蛍光体は、Mで表される4価元素のサイトの一部がマンガンで置換された構造、即ち、4価のマンガン(Mn4+)として置換された構造であることから、A2MF6:Mn4+と表記してもよい。本発明においては、このようなマンガン賦活複フッ化物蛍光体のなかでも、AがK、MがSiであるK2(Si1-x,Mnx)F6(式中、xは上記と同じ。)で表されるマンガン賦活ケイフッ化カリウム蛍光体(一般に、KSF蛍光体と呼ばれる。)が、励起波長域や耐候性の観点から特に好ましい。
【0018】
KSF蛍光体は、青色光により励起されて波長600〜660nmの範囲に発光ピーク又は最大発光ピークを有する蛍光を発する。一方、KSF蛍光体の光吸収特性は、上述したCaAlSiN:Eu2+、Sr−CaAlSiN3:Eu3+などの赤色蛍光体とは異なり、波長が460nmより長くなると、吸収率が急激に低下する。そのため、460nm前後にピーク波長を有する青緑色の光を発光する青緑色LEDを補助励起光の励起源として用いる場合に、補助励起光の吸収/減衰を少なくすることができ、特に効果的である。
【0019】
蛍光体は、通常、粒子状(例えば、平均粒径D50(体積基準)が1μm以上、特に2μm以上で、30μm以下、特に18μm以下)のものを用いることが好ましい。波長変換部材は、蛍光体のみで構成すること(例えば、粒子状の蛍光体を成型して焼結するなどの方法で得ることができる。)も可能であるが、粒子状の蛍光体を、無機又は有機の透明材料又は半透明材料、具体的には、ガラスなどの無機材料や、樹脂、ゴム、エラストマー等の有機高分子材料などの有機材料に分散させたものが好適である。蛍光体は、波長変換部材の基材をなす透明材料又は半透明材料に均一に分散させることが好ましい。
【0020】
透明材料又は半透明材料としては、有機高分子材料の中でも、樹脂、特に硬質樹脂を用いることが好ましい。樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、アクリルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂等のエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂、特に硬質の熱可塑性樹脂が好適である。
【0021】
特に、蛍光体として、マンガン賦活複フッ化物蛍光体を用いる場合は、上記で例示した熱可塑性樹脂の中でも、エステル系樹脂以外の樹脂が好適である。マンガン賦活複フッ化物蛍光体とエステル系樹脂を用いると、加水分解反応により、樹脂が溶解又は脆化する場合がある。これに対して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、アクリルイミド樹脂においては、マンガン賦活複フッ化物蛍光体に対して、上記の問題を引き起こさずに、特に効果的な練り込みと高い分散性が得られる。
【0022】
波長変換部材中の蛍光体の濃度は、用いる蛍光体の種類、粒径、透明材料又は半透明材料の種類、LED発光装置としたときに得られる発光の色温度、厚み、LED素子と蛍光部材との配置、その他の諸条件により異なるが、蛍光体の総量として、2質量%以上、特に3質量%以上で、30質量%以下、特に20質量%以下、とりわけ15質量%以下であることが好ましい。
【0023】
例えば、Y3Al512:Ce蛍光体を樹脂に分散させて、厚み0.5〜5mmの波長変換部材とし、色温度6000Kの白色光を得ようとする場合、Y3Al512:Ce蛍光体の濃度は、概ね2〜8質量%である。より具体的には、厚み2mmの波長変換部材とし、色温度6000Kの白色光を得ようとする場合、Y3Al512:Ce蛍光体の濃度は、概ね4〜6質量%である。
【0024】
また、Y3Al512:Ce蛍光体と共に、マンガン賦活複フッ化物蛍光体を用いる場合、マンガン賦活複フッ化物蛍光体の濃度は、Y3Al512:Ce蛍光体の、概ね2〜4倍である。具体的には、例えば、Y3Al512:Ce蛍光体と、マンガン賦活複フッ化物蛍光体とを樹脂に分散させて、厚み0.5〜5mmの波長変換部材とし、色温度3500Kの白色光を得ようとする場合、Y3Al512:Ce蛍光体の濃度は、概ね2〜5質量%、マンガン賦活複フッ化物蛍光体の濃度は、概ね6〜13質量%である。より具体的には、厚み2mmの波長変換部材とし、色温度3500Kの白色光を得ようとする場合、Y3Al512:Ce蛍光体の濃度は、概ね2〜5質量%、マンガン賦活複フッ化物蛍光体の濃度は、概ね5〜10質量%である。
【0025】
リモートフォスファー型のLED発光装置に用いる波長変換部材は、LEDとは別の部材として製造されるため、形状、寸法、LEDに対する配置などを、LED発光装置に求められる光学特性に応じて、波長変換部材側で独自に調整することが可能である。本発明の波長変換部材では、その厚みを0.6mm以上、特に1mm以上で、4mm以下、特に2mm以下とすることが好ましい。これは、波長変換部材の厚みが0.6mmより薄いと、寸法誤差の影響が大きくなり、また、蛍光体の分散のばらつきの影響を大きく受けるため、波長変換部材全体での光学特性の均一化が容易でなくなるおそれがあるからであり、波長変換部材の厚みが4mmを超えると、蛍光体の量が増加するため蛍光体の利用効率が低下するおそれがあるからである。なお、厚みは、通常、実効厚み、即ち、LEDからの励起光が直接入射する位置での厚みを対象とする。
【0026】
波長変換部材の製造には、3Dプリント成形法の代表的な方式である熱溶融積層法(FDM法)を適用する。FDM法は、原料となる熱可塑性樹脂フィラメントを、三軸移動可能な溶融ノズルに給送することで、熱溶融した熱可塑性樹脂を押出して積層し、所望の形状の樹脂成形体を得る成形方法である。FDM法は、金型を用いる成形方法では、離型などに制約があり、製造条件が複雑になる形状の波長変換部材の製造に有利であり、また、金型を用意する必要がないので、波長変換部材の少量多品種の製造に適している。熱溶融した樹脂原料をノズルから吐出させつつ、積層し、硬化させることで、所望の形状の樹脂成形体を得るFDM法は、一般的な金型を用いた射出成形法などに比べて、内面が3次元形状、特に、より深い3次元形状の内面を有する波長変換部材の成形に有利である。
【0027】
FDM法では、熱可塑性樹脂に所定の蛍光体粒子を分散させた細線状のフィラメント(以下、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントと称する。)を用いる。蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、例えば、押出成形により製造することができる。蛍光体は、溶融押出成形の過程で、熱可塑性樹脂に所定の濃度に練りこまれるが、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント中に蛍光体を均一に分散させるためには、2軸スクリュータイプの押出成形機の使用が好ましい。また、分散した蛍光体粒子による摩耗による蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントへの鉄分などの混入を防ぐため、超硬合金等の硬質の材料や非鉄材料で形成された内壁やスクリューを用いた押出成形機を用いることも有効である。
【0028】
押出成形により蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを製造する場合、まず、粒子状の蛍光体を熱可塑性樹脂に混合して蛍光体含有熱可塑性樹脂を得る。その後、押出成形機を用いて蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを製造するが、押出成形時、蛍光体含有熱可塑性樹脂を、溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)を30以上60以下として押出成形することが好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂中に蛍光体粒子を偏在させずに均一に分散しつつ熱可塑性樹脂を溶融する方法として、押出成形機による混練溶融が有効であるが、蛍光体粒子の分散性は、溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)の影響を受ける。L/Dが高いほど、熱可塑性樹脂中の蛍光体粒子の分散性が良くなるものの、L/Dが高すぎると生産性が低下する。蛍光体が分散した熱可塑性樹脂を押出成形する場合、L/Dを30以上、特に40以上とすることで、良好な分散性が得られる。一方、蛍光体粒子の場合、L/Dが高すぎると、蛍光体粒子が押出成形機の内壁やスクリューと強く擦れることで装置が摩耗して、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントに、内壁やスクリューの材質の成分が混入するおそれがあるため60以下、特に50以下とすることが好ましい。
【0030】
また、押出成形時、蛍光体含有熱可塑性樹脂を、180℃以上、特に200℃以上で、240℃未満、特に235℃以下の温度で溶融させた状態でオリフィス孔から押出すことが好ましい。光体含有熱可塑性樹脂の温度を上記範囲とすることにより、線材である蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントの径寸法が安定する。この温度は、通常、装置運転温度、即ち、バレルの溶融領域の平均温度より10〜40℃程度低い温度である。
【0031】
更に、押出成形時、溶融した蛍光体含有熱可塑性樹脂の押出の線速度(蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントの吐出の線速度)、即ち、オリフィス部での線速度に対して、3倍以上、特に5倍以上で、30倍以下、特に10倍以下の線速度で延伸しながら引取ることも好ましい。蛍光体含有熱可塑性樹脂の押出の線速度と、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント引取りの線速度との比を、上記範囲とすることにより、吐出直後に、蛍光体の分散が部分的に不均一になっている部分があっても、十分な延伸によりその部分が広がり、平均化されて、蛍光体の分散が均質化され、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント中の蛍光体の濃度のばらつきを抑えることができる。蛍光体含有熱可塑性樹脂の押出の線速度と、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメント引取りの線速度との比が高すぎると、相対的に細い部分が急速な延伸を受けてより細くなり、太さの不均一、フィラメントの破断を生じるおそれがある。
【0032】
FDM法により波長変換部材を製造する場合、上述した熱可塑性樹脂を用いることが可能ではあるが、成形時における熱可塑性樹脂に対する蛍光体の良好な分散性に加え、所定の加熱で速やかな溶融、積層後の速やかな硬化、積層時の層間の溶接特性、基準台座への密着性、溶融及び硬化にともなう波長変換部材内部に蓄積される圧縮応力への耐久性などを考慮する必要がある。このような観点からは、FDM法による波長変換部材の製造では、アクリル樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン共重合体、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などの熱可塑性樹脂が特に好適である。
【0033】
蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントに分散させる蛍光体の粒子径は、用いる蛍光体の種類、その粒子形状、及び母材となる樹脂材料に合わせて設定され、通常、平均粒径D50(体積基準)が1μm以上、特に2μm以上で、30μm以下、特に18μm以下のものを用いることが好ましい。また、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントに分散させる蛍光体の濃度は、用いる蛍光体の種類、成形後の波長変換部材が目標とする発光色度に合わせて設定され、蛍光体の総量として、2質量%以上、特に3質量%以上で、30質量%以下、特に20質量%以下、とりわけ15質量%以下であることが好ましい。蛍光体濃度が高すぎると、溶融ノズルが閉塞する可能性が高くなると共に、溶融時のコシがなくなり、成形時にダレが生じるおそれがある。なお、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントの径は、現在用いられているFDM法を適用した3Dプリンターにおいては、通常φ1.75mm又はφ3mmである。
【0034】
蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、波長変換部材の成形時に水分を多く含んでいると、溶融し、積層する際に、溶融ヘッド内で水蒸気が発生し、これが積層時に細かな気泡となって、波長変換部材のヘイズを過度に増加させ、光学特性の変動の要因となるおそれがあり、また、密度が低下するおそれがある。特に、押出成形により蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを製造する場合、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントが冷却水槽を経由して水と接触することになるため、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントの内部に水が取り込まれる場合がある。そのため、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、その含有水分量を低減した後に使用することが好ましい。例えば、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを、例えば70℃以上、特に80℃以上で、好ましくは100℃以下の温度で、大気雰囲気などのガス雰囲気や、真空雰囲気などで、例えば6時間以上加熱することで、水分量を低減することができる。加熱時間の上限は、通常24時間以下である。なお、この加熱には、真空炉などの加熱炉などを用いることができる。
【0035】
FDM法では、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを用いてFDM装置(FDM3Dプリンター)により波長変換部材を成形すればよい。溶融ノズルのノズル内径は、φ0.2mm以上φ0.6mm以下が適している。これは、ノズル内径がφ0.2mm未満であると、蛍光体により溶融ノズルが閉塞し易くなる一方で、内径φ0.6mmを超えると波長変換部材の寸法精度が低下するため、成形後に、サイズ調整の加工が必要となる場合があるためである。成形時の溶融ノズルの温度は、190℃以上、特に220℃以上で、280℃以下、特に260℃以下が適している。これは溶融ノズルの温度が上記範囲未満では、熱可塑性樹脂の溶融が不十分となるおそれがある一方、上記範囲を超えると、溶融時のコシがなくなり、また、積層後の硬化が遅くなり、積層時にダレが生じるおそれがあるためである。
【0036】
本発明のLED発光装置は、LEDと、LEDが設置された基体と、波長変換部材とを備え、波長変換部材が、LEDと気体層又は真空層を介して離間するように配設されたリモートフォスファー型のLED発光装置である。本発明のLED発光装置は、本発明の波長変換部材を用いることにより、波長変換部材の内面が、LEDから照射された光の照射方向の前方側と、照射方向の側方側の一部又は全部とを取り囲み、波長変換部材が、基体と共に、LEDを内包し、かつLEDから照射された光が通過する空間を形成するように構成される。LED発光装置としては、特に、白色光を発光するLED発光装置が好ましいが、赤色光、緑色光、青色光、黄色光などの可視光を発光するLED発光装置でもよい。
【実施例】
【0037】
以下に、実験例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
[実験例1]
アクリル樹脂(デルペット 60N(旭化成(株)製))に、蛍光体としてYAG:Ceと、KSFとを練り込み、YAG:Ce蛍光体濃度が2.8質量%、KSF蛍光体濃度が8.4質量%の蛍光体含有熱可塑性樹脂のペレットを得た。次に、このペレットを、2軸押出機 TEM−18(東芝機械(株)製)に投入し、バレル平均加熱温度240℃で溶融混練を行った後、220℃まで温度を下げて、φ4.5mmのオリフィス穴より1.1m/minの線速度で押し出し、吐出した蛍光体含有樹脂を冷水に潜らせてから、定速引取機 IMC−19A5R((株)井元製作所製)により、延伸倍率が6倍となる6.5m/minの線速度で引き取り、平均でφ1.75mmの線状とし、更に、70℃の真空炉内で12時間加熱して、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを得た。なお、この押出成形における溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)は42であった。
【0039】
得られた蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、各部の直径が均一で、溶融不良に起因する微小異形部位(フィッシュアイ)は、概ね150mに1個程度の割合であった。
【0040】
[実験例2]
ポリプロピレン(ノーブレン Z144(旭化成(株)製))に、蛍光体としてYAG:Ceを練り込み、YAG:Ce蛍光体濃度が6質量%の蛍光体含有熱可塑性樹脂のペレットを得た。次に、このペレットを、2軸押出機 TEM−18(東芝機械(株)製)に投入し、バレル平均加熱温度220℃で溶融混練を行った後、180℃まで温度を下げて、φ4.5mmのオリフィス穴より0.6m/minの線速度で押し出し、吐出した蛍光体含有樹脂を冷水に潜らせてから、定速引取機 IMC−19A5R((株)井元製作所製)により、延伸倍率が20倍となる12m/minの線速度で引き取り、平均でφ1.75mmの線状とし、更に、80℃の真空炉内で8時間加熱して、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを得た。なお、この押出成形における溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)は42であった。
【0041】
得られた蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、各部の直径が均一で、溶融不良に起因する微小異形部位(フィッシュアイ)は、概ね300mに1個程度の割合であった。
【0042】
[実験例3]
アクリル樹脂(デルペット 60N(旭化成(株)製))に、蛍光体としてYAG:Ceを練り込み、YAG:Ce蛍光体濃度が7質量%の蛍光体含有熱可塑性樹脂のペレットを得た。次に、このペレットを、2軸押出機 TEM−18(東芝機械(株)製)に投入し、バレル平均加熱温度250℃で溶融混練を行った後、235℃まで温度を下げて、φ4.5mmのオリフィス穴より1.2m/minの線速度で押し出し、吐出した蛍光体含有樹脂を冷水に潜らせてから、定速引取機 IMC−19A5R((株)井元製作所製)により、延伸倍率が15倍となる18m/minの線速度で引き取り、平均でφ1.75mmの線状として、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを得た。なお、この押出成形における溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)は38であった。
【0043】
得られた蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、各部の直径が均一で、溶融不良に起因する微小異形部位(フィッシュアイ)は、概ね200mに1個程度の割合であった。
【0044】
[実験例4]
実験例3と同様の方法で得た蛍光体含有熱可塑性樹脂のペレットを、2軸押出機 TEM−18(東芝機械(株)製)に投入し、バレル平均加熱温度240℃で溶融混練を行った後、温度を維持したまま、φ4.5mmのオリフィス穴より0.5m/minの線速度で押し出し、吐出した蛍光体含有樹脂を冷水に潜らせてから、定速引取機 IMC−19A5R((株)井元製作所製)により、延伸倍率が2.6倍となる1.3m/minの線速度で引き取り、平均でφ1.75mmの線状として、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを得た。なお、この押出成形における溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)は38であった。
【0045】
得られた蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、各部の直径が1.5〜1.9mmと大幅にばらつき、直径が一定で連続した10m以上フィラメントを得ることはできなかった。
【0046】
[実験例5]
実験例1と同様の方法で得た蛍光体含有熱可塑性樹脂のペレットを、2軸押出機 TEM−18(東芝機械(株)製)に投入し、バレル平均加熱温度240℃で溶融混練を行った後、220℃まで温度を下げて、φ1.8mmのオリフィス穴より28m/minの線速度で押し出し、吐出した蛍光体含有樹脂を冷水に潜らせてから、定速引取機 IMC−19A5R((株)井元製作所製)により、延伸倍率が1.1倍となる30m/minの線速度で引き取り、平均でφ1.75mmの線状とし、更に、70℃の真空炉内で12時間加熱して、蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを得た。なお、この押出成形における溶融スクリュー径Dに対する有効スクリュー長Lの比率(L/D)は29であった。
【0047】
得られた蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントは、各部の直径のばらつきが大きく、10m以上の連続した成形体を得ることができなかった。また、溶融不良に起因する微小異形部位(フィッシュアイ)は、概ね15mに1個程度の割合であった。
【0048】
[実施例1]
実験例1で得たフィラメントを用い、FDM法の3Dプリンター Ninjabotシリーズ NJB−300W((株)三豊工業製)で、φ0.25mmの成形ノズルを適用して、図1〜3に示されるような3種のリングキャップ形状の波長変換部材を作製した。なお、成形には、Simplify 3D社のスライシングソフトを使用した。
【0049】
図1は、本発明の波長変換部材の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。図1に示される波長変換部材(No.1)の内面は、円形リング状平面(頂面)、円錐台周面である内周面(側面)及び円周面である外側面(側面)のみで構成され、頂面と側面とが接線を介して接合した多面形状の不連続な面となっている。図中で示されるa〜fの各部のサイズを表1に示す。なお、内面の内周は、φ29mm、LEDから上端までの高さを8.3mmとした。
【0050】
図2は、本発明の波長変換部材の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。図2に示される波長変換部材(No.2)の内面は、12角形リング状平面(頂面)、12角錐台周面である内周面(側面)及び12角柱周面である外側面(側面)のみで構成され、頂面と側面とが接線を介して接合した多面形状の不連続な面となっている。図中で示されるa〜fの各部のサイズを表1に示す。なお、内面の外周サイズは、外周最大径46mm、LEDから上端までの高さを5mmとした。
【0051】
図3は、本発明の波長変換部材の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。図3に示される波長変換部材(No.3)の内面は、円形リング状平面(頂面)、円柱周面である内周面(側面)及び外側面(側面)のみで構成され、頂面と側面とが接線を介して接合した多面形状の不連続な面となっている。図中で示されるa〜fの各部のサイズを表1に示す。なお、内面の外周サイズは、φ46mm、LEDから上端までの高さを6.3mmとした。
【0052】
図4は、波長変換部材(No.1)を用いて作製した本発明のリモートフォスファー型のLED発光装置の一例を示す分解斜視図である。図4に示されるように、白色塗装を施したアルミニウム基板21上に、LED22(PK2N青色(ProLight Opto Technology社製、ピーク波長453nm)を12個、φ38mmの円周上に等間隔に直列接続して設置し、このLEDアレイが波長変換部材1の底部側の内外周面間に位置するように波長変換部材1を配設して、リモートフォスファー型のLED発光装置10とした。この場合、アルミニウム基板表面からLEDの上端までの高さは1.7mmである。そして、LEDに、安定化電源で3Vの電圧、200mAの電流を印加して、LED発光装置の光学特性を、全光束測定システム HM−9100B(大塚電子(株)製)により評価し、また、目視にて色のばらつきを評価した。結果を表1に示す。なお、3種のLED発光装置の発光の色温度は4500〜5000K、平均演色評価数Raは91〜93の範囲内にあった。
【0053】
【表1】
【0054】
光学特性の評価結果から、本発明の蛍光体含有熱可塑性樹脂フィラメントを用いて製造した波長変換部材により、発光効率が高く、色度や色温度のばらつきが小さい、高い発光特性を有するリモートフォスファー型のLED発光装置が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0055】
1 波長変換部材
10 リモートフォスファー型のLED発光装置
21 基板
22 LED
図1
図2
図3
図4