特許第6826110号(P6826110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826110
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】ホスフィネート類を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/48 20060101AFI20210121BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210121BHJP
【FI】
   C07F9/48
   !C07B61/00 300
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-516067(P2018-516067)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公表番号】特表2018-534260(P2018-534260A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2016072786
(87)【国際公開番号】WO2017055193
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年8月19日
(31)【優先権主張番号】15187469.0
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエイエスエフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レッセル,ハンス−ヨアヒム
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−038294(JP,A)
【文献】 特表2010−513243(JP,A)
【文献】 特開昭56−161310(JP,A)
【文献】 特開昭58−188889(JP,A)
【文献】 DAUGHERTY, K. E. ET AL,Nuclear magnetic resonance study of the hydrolysis of diethyl methylphosphonite,Applied Spectroscopy,1968年,22(2),95-98
【文献】 PETNEHAZY, I. ET AL,Convenient one pot synthesis of phosphonites and H-phosphinates,Synthetic Communications,2003年,33(10),1665-1674
【文献】 VOLLE, J. ET AL,Revisited synthesis of aryl-H-phosphinates,Synthesis,2011年,(15),2490-2494
【文献】 PETROY, K. A. ET AL,Transesterification of methylphosphinates,Zhurnal Obshchei Khimii,1961年,31,2367-2370
【文献】 HOFFMANN, F. W. ET AL,Organic Phosphorus Compounds. IV.1A Study of the Transesterification of Dialkyl Alkylphosphonites,Journal of the American Chemical Society,1958年,80(22),5937-5940
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
で表される化合物を製造する方法であって、式(II)
【化2】
で表される化合物を、式(III)
【化3】
〔ここで、いずれの場合にも、
は、(C−C12)−アルキル、(C−C12)−ハロアルキル、(C−C10)−アリール、(C−C10)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C10)−シクロアルキル又は(C−C10)−ハロシクロアルキルを表し;
は、(C−C12)−アルキル、(C−C12)−ハロアルキル、(C−C10)−アリール、(C−C10)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C10)−シクロアルキル又は(C−C10)−ハロシクロアルキルを表し;
及びRは、それぞれ互いに独立して、メチル又はエチルを表す〕
で表される化合物と、酸性触媒の存在下、及び、水の存在下で反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
使用する水の総量が、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、少なくとも0.8モル当量であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する水の総量が、使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜5モル当量であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用する水の総量が、使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜3モル当量であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
使用する水の総量が、使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜2モル当量であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
使用する式(III)で表される化合物の総量が、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜25モル当量であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
使用する式(III)で表される化合物の総量が、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、3〜15モル当量であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
標準的な条件下における前記酸性触媒のpKaが、3未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
記酸性触媒が、HPO、HSO、HCl、HBr、HClO、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性イオン交換体、酸性ポリシロキサン及び酸性ゼオライトからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記反応をワンポット反応として実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記反応を、30〜140℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記反応を、不活性希釈剤の中で又は希釈剤無しで実施することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル、(C−C)−アリール、(C−C)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C)−シクロアルキル又は(C−C)−ハロシクロアルキルを表し;
及び、
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル、(C−C)−アリール、(C−C)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C)−シクロアルキル又は(C−C)−ハロシクロアルキルを表す;
ことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル又は(C−C)−アリールを表し;
及び、
は、(C−C)−アルキル又は(C−C)−ハロアルキルを表す;
ことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
がメチル又はエチルを表し、及び/又は
が(C−C)−アルキルを表す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
がC−アルキル又はC−アルキルである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
医薬分野又は農薬分野において使用することができる生物学的に活性な物質を製造する方法であって、以下の段階(a)及び段階(b):
(a) 請求項1〜16において定義されている方法で製造される、請求項1、請求項13、請求項14、請求項15又は請求項16において定義されている式(I)で表される化合物を製造する段階;
(b) 段階(a)で得られた式(I)で表される化合物を医薬分野又は農薬分野において使用することができる生物学的に活性な物質を製造するために使用する段階;
を含んでいる、前記方法。
【請求項18】
前記生物学的に活性な物質がリン含有アミノ酸である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、以下で定義されている式(I)で表される特定のホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)を製造する方法、及び、医薬又は農薬の分野において使用し得る生物学的に活性な物質を製造するための、好ましくは、リン含有アミノ酸を製造するための、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスフィネート類(亜ホスホン酸モノエステル類)、例えば、アルキルホスフィネート類(アルキル亜ホスホン酸モノエステル類)は、さまざまな産業の分野における、特に、医薬分野又は農薬分野において使用することが可能な生物学的活性物質を製造するための、有益な中間体である。
【0003】
例えば、US 4,168,963には、多種多様なリン含有除草活性化合物が記載されており、その中で、特に、ホスフィノトリシン(2−アミノ−4−[ヒドロキシ(メチル)ホスフィノイル]ブタン酸; 一般名:グルホシネート; 以下では、「グルホシネート」と称する)及びその塩は、農薬分野において商業的重要性を有してきた。
【化1】
【0004】
そのようなリン含有除草活性化合物(特に、グルホシネート)を合成するための中間体を製造する方法は、例えば、US 4,521,348、US 4,599,207及びUS 6,359,162B1に記載されている。
【0005】
モノアルキルホスフィネート類の製造は、当業者には知られており、そして、文献から知られている調製方法に準じて、例えば、US 3,914,345、US 4,474,711又はUS 5,128,495に従って、実施することができる。
【0006】
特定のハロリン化合物から出発するモノアルキルホスフィネート類の製造は、例えば、US 4,485,052、GB 1461376及びGB 1490835に記載されている。
【0007】
アルキル亜ホスホン酸ジアルキル類の製造は、例えば、US 5,166,385に記載されている。
【0008】
さらに、特定のアルキル亜ホスホン酸ジアルキルを鹸化反応に付してアルキルホスフィン酸又はそのモノエステルを生成させることは知られており、例えば、「Applied Spectroscopy 1968, 22, 95−98」、「J. Med. Chem. 1988, 31, 204−212」、「J. of General Chem. of the USSR 1962, 32, 3288−3296」、「Synthetic Communications 2003, 33, 1665−1674」及び「J. Organomet. Chem. 1997, 529, 135−142」に記載されている。
【0009】
「J. Am. Chem. Soc. 1958, 80, 5937−5940」には、特定のアルキル亜ホスホン酸ジアルキルのエステル交換反応が記載されている。
【0010】
しかしながら、アルキルホスフィネート類(アルキル亜ホスホン酸モノエステル類)を製造するための従来技術の方法は、依然として、不利点、例えば、アルキルホスフィネート類(アルキル亜ホスホン酸モノエステル類)の純度及び/若しくは収率が不充分であること、副産物若しくは副生物のフラクションが過剰であること、アルキルホスフィネート類(アルキル亜ホスホン酸モノエステル類)の精製若しくは単離が過度に複雑であること、並びに/又は、プロセス若しくはプラント工学に関して過度に困難である反応条件などの不利点を有している。
【0011】
アルキル亜ホスホン酸モノ−C−C−エステルは、安定性が低く、また、危険性を有し得るので、好ましくは、工業規模では使用されない。従って、グルホシネートアンモニウムの大規模合成においては、メチルホスフィン酸ブチルは重要な中間体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,168,963号
【特許文献2】米国特許第4,521,348号
【特許文献3】米国特許第4,599,207号
【特許文献4】米国特許第6,359,162B1号
【特許文献5】米国特許第3,914,345号
【特許文献6】米国特許第4,474,711号
【特許文献7】米国特許第5,128,495号
【特許文献8】米国特許第4,485,052号
【特許文献9】英国特許第1461376号
【特許文献10】英国特許第1490835号
【特許文献11】米国特許第5,166,385号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Applied Spectroscopy 1968, 22, 95−98
【非特許文献2】J. Med. Chem. 1988, 31, 204−212
【非特許文献3】J. of General Chem. of the USSR 1962, 32, 3288−3296
【非特許文献4】Synthetic Communications 2003, 33, 1665−1674
【非特許文献5】J. Organomet. Chem. 1997, 529, 135−142
【非特許文献6】J. Am. Chem. Soc. 1958, 80, 5937−5940
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、ホスフィネート類(亜ホスホン酸モノエステル類)を改善された収率で生成させ、及び/又は、副産物又は副生物のフラクションの生成を少なくし、及び、さらに、好ましくは、改善された反応様式(例えば、安全性、環境及び/又は品質に関連した側面に関する反応様式)を可能とし、及び、従って、好ましくは、工業規模での実施にも適している、ホスフィネート類(亜ホスホン酸モノエステル類)(特に、アルキルホスフィネート類(アルキル亜ホスホン酸モノエステル類))を製造する方法を見いだすことであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に記載されている本発明の方法は、この目的を達成する。
【0016】
本発明は、式(I)
【化2】
【0017】
で表されるホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)を製造する方法を提供し、ここで、該方法は、式(II)
【化3】
【0018】
で表される化合物を、式(III)
【化4】
【0019】
〔ここで、いずれの場合にも、
は、(C−C12)−アルキル、(C−C12)−ハロアルキル、(C−C10)−アリール、(C−C10)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C10)−シクロアルキル又は(C−C10)−ハロシクロアルキルを表し;
は、(C−C12)−アルキル、(C−C12)−ハロアルキル、(C−C10)−アリール、(C−C10)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C10)−シクロアルキル又は(C−C10)−ハロシクロアルキルを表し;
及びRは、それぞれ互いに独立して、メチル又はエチルを表す〕
で表される化合物と、酸性触媒の存在下、及び、水の存在下で反応させることを特徴とする。
【0020】
本発明による方法を用いて、同時に最少量の水の存在下及び酸性触媒の存在下で、式(II)で表される化合物を式(III)で表されるアルコールと反応させることによって、式(I)で表される所望のホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)が優れた収率で且つ極めて高い純度で得られる。
【0021】
本発明による方法においては、式(II)で表される化合物の部分的な加水分解及びエステル交換反応が、その場で、好ましくは、ワンポット反応において起こる。本発明による方法においては、特に、好ましい又は特に好ましいと称される本発明による方法の構成のうちの1つにおいては、式(I)で表されるホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)は、実質的に定量的な収率で且つ極めて高い純度で得られる。本発明による方法は、(プロセス工学の観点から)極めて単純であり、大規模で実施するのに適している。
【0022】
総体的に、本発明による方法は、及び、以下に記載されているグルホシネートを製造する方法も、望ましくない二次成分を僅かにしか形成せず、従って、これらの方法は、より効率的であり、且つ、より省エネである。
【0023】
ラジカルR及びRのそれぞれのアルキルラジカルは、直鎖炭素骨格又は分枝鎖(分枝)炭素骨格を有し得る。
【0024】
表現「(C−C)−アルキル」は、一例として、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルについての簡潔な表記であり、即ち、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル又はtert−ブチルラジカルを包含する。さらに大きな範囲が指定されている炭素原子を有する一般的なアルキルラジカル、例えば、「(C−C)−アルキル」も、同様に、さらに大きな数の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキルラジカル(即ち、5個及び6個の炭素原子を有するアルキルラジカル)を包含する。
【0025】
「ハロゲン」は、好ましくは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群を示している。ハロアルキル、ハロアリール、ハロアラルキル及びハロシクロアルキルは、それぞれ、同一であるか又は異なっているハロゲン原子(好ましくは、フッ素、塩素及び臭素からなる群から選択されるハロゲン原子、特に、フッ素及び塩素からなる群から選択されるハロゲン原子)で部分的に又は完全に置換されている、アルキル、アリール、アラルキル及びシクロアルキルを意味する。かくして、ハロアルキルは、例えば、モノハロアルキル(=モノハロゲンアルキル)、ジハロアルキル(=ジハロゲンアルキル)、トリハロアルキル(=トリハロゲンアルキル)又はペルハロアルキル(例えば、CF、CHF、CHF、CFCF、CHFCHCl、CCl、CHCl、CHCHCl)を包含する。同様のことは、ハロゲンで置換されているその他のラジカルにも当てはまる。
【0026】
本発明による方法は、好ましくは、式(I)で表されるホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)の製造に関し、ここで、いずれの場合にも、
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル、(C−C)−アリール、(C−C)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C)−シクロアルキル又は(C−C)−ハロシクロアルキルを表し;
及び、
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル、(C−C)−アリール、(C−C)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C)−シクロアルキル又は(C−C)−ハロシクロアルキルを表す。
【0027】
本発明による方法は、好ましくは、式(I)で表されるホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)の製造に関し、ここで、いずれの場合にも、
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル又は(C−C)−アリールを表し、好ましくは、メチル又はエチルを表し;
及び、
は、(C−C)−アルキル又は(C−C)−ハロアルキルを表し、好ましくは、(C−C)−アルキルを表し、これらの中で、好ましいのは、C−アルキル又はC−アルキルである。
【0028】
本発明による方法は、特に、式(I)で表される特定のアルキルホスフィネート(アルキル亜ホスホン酸モノエステル)の製造に関し、ここで、特に好ましくは、式(I)において、
は、メチルを表し;及び、
は、(C−C)−アルキルを表し、特に好ましいのは、(C−C)−アルキルである。
【0029】
下記方法及び好ましい/特に好ましいということを特徴とする本発明の方法の実施形態は、特に、式(I)〔式中、Rはメチルを表し、及び、Rは(C−C)−アルキルを表す〕で表される化合物の製造に適用される。
【0030】
本発明による有利な方法は、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する水の総量が、少なくとも0.8モル当量、好ましくは、少なくとも0.9モル当量、さらに好ましくは、少なくとも0.95モル当量であることを特徴とする。
【0031】
本発明による好ましい方法は、使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する水の総量が1〜5モル当量であることを特徴とする。
【0032】
本発明による特に好ましい方法は、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する水の総量が1〜3モル当量、とりわけ好ましくは、1〜2モル当量であることを特徴とする。
【0033】
本発明による好ましい方法は、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する式(III)で表される化合物の総量が1〜25モル当量、好ましくは、2〜20モル当量であることを特徴とする。
【0034】
本発明による特に好ましい方法は、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する式(III)で表される化合物の総量が3〜15モル当量、好ましくは、4〜12モル当量、好ましくは、5〜10モル当量であることを特徴とする。
【0035】
化合物(III)の好ましくは回収された過剰量は、その後、それ以上精製することなく同じ反応において再使用することができる。
【0036】
本発明による方法の好ましい構成においては、該反応において使用する式(III)で表されるアルコールの総量のうちの一部分を最初に使用するのが好ましい。好ましくは、最初に、使用する式(III)で表されるアルコールの総量のうちの20〜80重量%の割合(好ましくは、30〜70重量%の割合、さらに好ましくは、40〜60重量%の割合)を式(II)で表される化合物、水及び酸性触媒と混合及び反応させ、その後、得られた反応混合物に、使用する式(III)で表されるアルコールの総量のうちの残りの量を添加する。
【0037】
本発明による好ましい方法は、標準的な条件(273.15K、及び、100kPa)下における酸性触媒のpKaが3未満、好ましくは、2未満、及び、好ましくは、1未満、であることを特徴とする。
【0038】
本発明による一方法においては、HPO、HSO、HCl、HBr、HClO、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸から選択される酸性触媒が好ましい。
【0039】
本発明による一方法においては、酸性イオン交換体、酸性ポリシロキサン及び酸性ゼオライトから選択される酸性不均一系(固体)触媒が好ましい。
【0040】
従って、本発明による好ましい方法は、1又は該酸性触媒が、HPO、HSO、HCl、HBr、HClO、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性イオン交換体、酸性ポリシロキサン及び酸性ゼオライトからなる群から選択されることを特徴とする。
【0041】
本発明による特に好ましい方法は、標準的な条件(273.15K、及び、100kPa)下における酸性触媒のpKaが0(ゼロ)未満、好ましくは、−1未満、であることを特徴とする。
【0042】
特に好ましいのは、HSO、HCl、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸から選択される酸性触媒である。
【0043】
特に好ましい酸性不均一系(固体)触媒は、スルホン酸基(即ち、−SOH基)を有している酸性不均一系(固体)触媒である。
【0044】
本発明による方法における酸性触媒の総使用量(総量)は、本発明による方法を実施する上で重要ではなく、いずれの場合にも式(II)で表される化合物の総使用量(総量)に基づいて、好ましくは、0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%である。
【0045】
本発明による方法の特に有利な点及び特に好ましい構成は、当該反応をワンポット反応として実施すること、即ち、化合物(I)を生成させるための化合物(II)と化合物(III)の反応を、特に好ましくは、中間体を単離することなく本発明に従って実施することを特徴とする。
【0046】
本発明による方法は、好ましくは、当該反応が30〜140℃の範囲内の温度で、好ましくは、40〜130℃の範囲内の温度で、さらに好ましくは、50〜120℃の範囲内の温度で、特に好ましくは、60〜110℃の範囲内の温度で実施されるように、実施する。
【0047】
本発明による方法では、穏やかな反応条件下、プロセス/プラント工学に関して実施するのがより容易な方法で、式(I)で表されるホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)を製造することが可能である。従って、式(I)で表されるホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)は、より良好な収率及び高い純度で、プロセス工学に関してより容易に得ることができる。
【0048】
精製後における、例えば、蒸留による精製後における、式(I)で表される所望の生成物の純度は、通常、95%より高い。
【0049】
従って、本発明による方法は、工業規模で実施するのに特に適している。即ち、本発明による方法は、好ましくは、本発明による方法において、少なくとも100kgの量の式(II)で表される化合物、好ましくは、少なくとも250kgの量の式(II)で表される化合物、さらに好ましくは、少なくとも500kgの量の式(II)で表される化合物を使用するような方法で、実施する。
【0050】
形成された式(I)で表されるホスフィネート(亜ホスホン酸モノエステル)は、グルホシネート及びグルホシネート塩などのリン含有アミノ酸を合成するための出発物質として使用することができる。
【0051】
式(II)で表される化合物を式(III)で表されるアルコールと反応させることによって式(I)で表される化合物を製造するための本発明による方法の好ましい構成は、
使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する水の総量が1〜3モル当量であること;
及び、
いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する式(III)で表される化合物の総量が2〜20モル当量であること、さらに好ましくは、使用する式(III)で表される化合物の総量が3〜15モル当量であること;
を特徴とする。
【0052】
式(II)で表される化合物を式(III)で表されるアルコールと反応させることによって式(I)で表される化合物を製造するための本発明による方法の好ましいさらなる構成は、
使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する水の総量が1〜2モル当量であること;
及び、
いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する式(III)で表される化合物の総量が4〜12モル当量であること、さらに好ましくは、使用する式(III)で表される化合物の総量が5〜10モル当量であること;
を特徴とする。
【0053】
式(II)で表される化合物を式(III)で表されるアルコールと反応させることによって式(I)で表される化合物を製造するための本発明による方法の特に好ましい構成は、
使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する水の総量が1〜3モル当量であること;
いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する式(III)で表される化合物の総量が2〜20モル当量であること、さらに好ましくは、使用する式(III)で表される化合物の総量が3〜15モル当量であること;
前記酸性触媒が、HSO、HCl、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びスルホン酸基(即ち、−SOH基)を有する酸性不均一系(固体)触媒からなる群から選択されること;
当該反応を、30〜140℃の範囲内の温度で、好ましくは、40〜130℃の範囲内の温度で実施すること;及び、
いずれの場合にも式(II)で表される化合物の総使用量(総量)に基づいて、酸性触媒の総使用量(総量)が、好ましくは、0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%であること;
を特徴とする。
【0054】
式(II)で表される化合物を式(III)で表されるアルコールと反応させることによって式(I)で表される化合物を製造するための本発明による方法の特に好ましい構成は、
使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する水の総量が1〜2モル当量であること;
いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、使用する式(III)で表される化合物の総量が3〜15モル当量であること、さらに好ましくは、使用する式(III)で表される化合物の総量が4〜12モル当量であること;
前記酸性触媒が、HSO、HCl、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びスルホン酸基(即ち、−SOH基)を有する酸性不均一系(固体)触媒からなる群から選択されること;
当該反応を、50〜120℃の範囲内の温度で、好ましくは、60〜110℃の範囲内の温度で実施すること;及び、
式(II)で表される化合物の総使用量(総量)に基づいて、酸性触媒の総使用量(総量)が0.5〜5重量%であること;
を特徴とする。
【0055】
本発明による方法は、不連続プロセス方式(例えば、セミバッチ様式の操作において)又は連続プロセス方式(例えば、連続して操作される撹拌槽において)で実施し得る。
【0056】
本発明による方法は、好ましくは、不活性化条件下で、好ましくは、保護ガス雰囲気下で、実施する。好ましい保護ガスは、この場合、窒素/アルゴンである。
【0057】
さらに、本発明による方法は、過圧下又は減圧下で実施することも可能である。
【0058】
本発明による方法は、不活性希釈剤の中で、又は、希釈剤無しで、実施することができる。
【0059】
本発明による方法を不活性な(即ち、当該反応条件下で安定な)希釈剤の中で実施する場合、該希釈剤は、好ましくは、炭化水素類(この場合、好ましいのは、アルカン類及び芳香族炭化水素類である)、ハロゲン化炭化水素類(この場合、好ましいのは、ハロアルカン類及びハロゲン化芳香族炭化水素類である)、エーテル類(この場合、好ましいのは、環状エーテル類、アルキルアルキルエーテル類及びアリールアルキルエーテル類である)、カルボン酸エステル類(この場合、好ましいのは、アルキルアルキルエステル類及びアリールアルキルエステル類)及びカルボキサミド類及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
本発明による方法において使用可能な場合による希釈剤は、不活性有機溶媒、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)又はこれらの有機溶媒の混合物である。
【0061】
この場合、好ましい希釈剤は、ヘプタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール及びそれらの混合物である。
【0062】
さらに好ましくは、該希釈剤は、本発明による方法において式(II)で表される化合物の残基R又はRから生じるアルコール(メタノール及び/又はエタノール)と共沸混合物を形成し、これは、好ましくは、当該反応混合物から蒸留によって除去することが可能であり、即ち、留去することが可能である。これに関連して好ましい希釈剤は、芳香族炭化水素類であり、トルエン、キシレン及び/又はエチルベンゼンなどのアルキルベンゼン類が好ましい。
【0063】
好ましい構成においては、本発明による方法は、希釈剤を添加することなく実施する。
【0064】
本発明に関連して、グルホシネート塩は、好ましくは、グルホシネートのアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩である。
【0065】
本発明に関連して、特に好ましいのは、グルホシネート、グルホシネートナトリウム及びグルホシネートアンモニウムである。
【0066】
最後に、本発明は、医薬分野又は農薬分野において使用することができる生物学的に活性な物質を製造するための、好ましくは、リン含有アミノ酸を製造するための、特に、グルホシネート又はグルホシネート塩(この場合、特に、グルホシネート、グルホシネートナトリウム又はグルホシネートアンモニウム)を製造するための、上記で定義されている本発明による方法に従って製造された式(I)で表される化合物の使用にも関する。
【0067】
グルホシネート及び/又はグルホシネート塩を製造する方法は、例えば、US 4,521,348に記載されている方法と同様の方法で実施することができる。
【0068】
本発明は、さらに、医薬分野又は農薬分野において使用することができる生物学的に活性な物質を製造する方法、好ましくは、リン含有アミノ酸を製造する方法にも関し、ここで、該方法は、以下の段階(a)及び段階(b)を含んでいる:
(a) 上記で定義されている式(I)で表される化合物を製造する段階;
(b) 段階(a)で得られた式(I)で表される化合物を医薬分野又は農薬分野において使用することができる生物学的に活性な物質を製造するために使用する段階、好ましくは、リン含有アミノ酸を製造するために使用する段階。
【0069】
下記実施例によって、本発明について説明する。
【実施例】
【0070】
実施例:
全てのデータは、別途示されていない限り、重量に基づいている。
【0071】
実施例1: 1−ブチルメチルホスフィネート(メタン亜ホスホン酸モノ−n−ブチルエステル)
200mLのトルエンの中の38.45g(0.2684mol)のメチル亜ホスホン酸ジエチル(純度95%)と1.5gのAmberlyst(登録商標)15(強酸性触媒、合成イオン交換樹脂)を、アルゴン雰囲気下、撹拌下にあるフラスコの中に最初に装入した。撹拌しながら、4.95g(0.275mol)の水及び50g(0.675mol)の1−ブタノールを添加した。その後、その混合物を50℃で30分間撹拌し、次いで、環流温度まで加熱した(初期、約83℃)。
【0072】
次いで、低沸点成分(エタノール及びトルエン)を短いVigreuxカラムを有する蒸留付属装置で留去した。4時間経過した後、追加の50g(0.675mol)の1−ブタノールを添加し、さらなる低沸点成分を留去した。最後に、底部140℃/頂部113℃で、37%の1−ブタノールと63%のトルエン(GC分析)の混合物を除去した。
【0073】
冷却し、酸性触媒を除去した後、55.6%の1−ブチルメチルホスフィネートと41.3%の1−ブタノールと3.1%のトルエン(標準に対するGC分析)の混合物64.3gが残留した。これは、収量35.75g(0.263mol)=理論値の97.9%に相当する。
【0074】
減圧下での精留(fractionated fine distillation)を用いて、1−ブチルメチルホスフィネートが純度98.5%で得られた。
【0075】
分析:31P−NMR(CDCl):
1−ブチルメチルホスフィネート 33.9ppm
メチル亜ホスホン酸ジエチル 177.8ppm。
【0076】
実施例2: 1−ペンチルメチルホスフィネート(メタン亜ホスホン酸モノ−n−ペンチルエステル)
20g(0.145mol)のメチル亜ホスホン酸ジエチル(純度99%)に2.62g(0.145mol)の水及び64.1g(0.727mol)の1−ペンタノールを添加し、その混合物を、付加的な溶媒の非存在下、0.1gの96%硫酸の存在下で反応させ、その際、その混合物を最初に50℃で30分間撹拌し、次いで、その内部温度を3時間かけて徐々に上昇させてその終わりまでには1−ペンタノールの環流温度とした。同時に、低沸点成分を留去し、その終わりには、1−ペンタノール(GC分析)の大部分を留去した。
【0077】
GCでの分析によれば、得られた反応混合物は、もはや反応体を含んでいなかった。
【0078】
減圧下で精留に付した後、粗製生成物から21.8g(0.139mol)の1−ペンチルメチルホスフィネート(純度96%)が得られた。これは、理論値の95.8%の収率に相当する。
【0079】
分析:31P−NMR(CDCl):
1−ペンチルメチルホスフィネート 34.11ppm。
【0080】
実施例3: 1−ブチルフェニルホスフィネート(フェニル亜ホスホン酸モノ−n−ブチルエステル)
5.0g(24.7mmol)のフェニル亜ホスホン酸ジエチル(純度98%)に、アルゴン下、付加的な溶媒の非存在下、9.72g(131.17mmol)の1−ブタノール、0.445g(24.7mmol)の水及び0.3gのAmberlyst(登録商標)15(強酸性触媒、合成イオン交換樹脂)を20℃で添加し、その混合物を環流温度まで加熱した。次いで、低沸点成分を、短いVigreuxカラムを有する蒸留付属装置で、最高底部温度117〜120℃で留去した。次いで、追加の8.1g(109.31mmol)の1−ブタノールを添加し、低沸点成分を底部温度約120℃でさらに留去した。その反応全体は、合計で約5.5時間続いた。そのプロフィールをGC分析でモニターした。最後に、7.95gの粗製生物が残った(H−NMRによれば、58.3%であり、残りは1−ブタノールであった)。これは、理論値の94.6%の収率に相当する。
【0081】
減圧下での精留に付すことによって、純粋な1−ブチルフェニルホスフィネートを得ることができた。
【0082】
分析:31P−NMR(CDCl):
1−ブチルフェニルホスフィネート 25.1ppm
フェニル亜ホスホン酸ジエチル 151.2ppm。
【0083】
実施例4: 2−メチルプロピルフェニルホスフィネート(フェニル亜ホスホン酸モノ−2−メチルプロピルエステル)
上記実施例2と同様にして、フェニル亜ホスホン酸ジエチル(純度98%)を、触媒量(2mol%、使用するフェニル亜ホスホン酸ジエチルに基づく)の濃硫酸の存在下で、水(1モル当量)及びイソブタノール(8モル当量)と反応させた。
【0084】
2−メチルプロピルフェニルホスフィネートが理論値の95.0%の収率で得られた。これは、精留に付した後で、98%の純度を有していた。
【0085】
分析:31P−NMR(CDCl):
2−メチルプロピルフェニルホスフィネート 25.4ppm。
【0086】
実施例5: 2−メチルプロピルフェニルホスフィネート(フェニル亜ホスホン酸モノ−2−メチルプロピルエステル)
上記実施例3と同様にして、フェニル亜ホスホン酸ジエチル(純度98%)を、触媒量(1重量%、使用するフェニル亜ホスホン酸ジエチルに基づく)のメタンスルホン酸の存在下で、水(1モル当量)及びイソブタノール(20モル当量;これは、大体等しい2つの部分に分けて添加した)と反応させた。
【0087】
2−メチルプロピルフェニルホスフィネートが理論値の97.0%の収率で得られた。これは、精留に付した後で、98.5%の純度を有していた。
【0088】
分析:31P−NMR(CDCl):
2−メチルプロピルフェニルホスフィネート 25.3ppm。

本発明は例えば以下の態様を含む。
[項1]
式(I)
【化5】
で表される化合物を製造する方法であって、式(II)
【化6】
で表される化合物を、式(III)
【化7】
〔ここで、いずれの場合にも、
は、(C−C12)−アルキル、(C−C12)−ハロアルキル、(C−C10)−アリール、(C−C10)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C10)−シクロアルキル又は(C−C10)−ハロシクロアルキルを表し;
は、(C−C12)−アルキル、(C−C12)−ハロアルキル、(C−C10)−アリール、(C−C10)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C10)−シクロアルキル又は(C−C10)−ハロシクロアルキルを表し;
及びRは、それぞれ互いに独立して、メチル又はエチルを表す〕
で表される化合物と、酸性触媒の存在下、及び、水の存在下で反応させることを特徴とする、前記方法。
[項2]
使用する水の総量が、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、少なくとも0.8モル当量、好ましくは、少なくとも0.9モル当量、さらに好ましくは、少なくとも0.95モル当量であることを特徴とする、項1に記載の方法。
[項3]
使用する水の総量が、使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜5モル当量であることを特徴とする、項1又は2に記載の方法。
[項4]
使用する水の総量が、使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜3モル当量であることを特徴とする、項1〜3のいずれかに記載の方法。
[項5]
使用する水の総量が、使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜2モル当量であることを特徴とする、項1〜4のいずれかに記載の方法。
[項6]
使用する式(III)で表される化合物の総量が、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、1〜25モル当量、好ましくは、2〜20モル当量であることを特徴とする、項1〜5のいずれかに記載の方法。
[項7]
使用する式(III)で表される化合物の総量が、いずれの場合にも使用する式(II)で表される化合物の総量に基づいて、3〜15モル当量、好ましくは、4〜12モル当量、好ましくは、5〜10モル当量であることを特徴とする、項1〜6のいずれかに記載の方法。
[項8]
標準的な条件下における前記酸性触媒のpKaが、3未満、好ましくは、2未満であることを特徴とする、項1〜7のいずれかに記載の方法。
[項9]
1又は前記酸性触媒が、HPO、HSO、HCl、HBr、HClO、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性イオン交換体、酸性ポリシロキサン及び酸性ゼオライトからなる群から選択されることを特徴とする、項1〜8のいずれかに記載の方法。
[項10]
前記反応をワンポット反応として実施することを特徴とする、項1〜9のいずれかに記載の方法。
[項11]
前記反応を、30〜140℃の範囲内の温度で、好ましくは、40〜130℃の範囲内の温度で、さらに好ましくは、50〜120℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、項1〜10のいずれかに記載の方法。
[項12]
前記反応を、不活性希釈剤の中で又は希釈剤無しで実施することを特徴とする、項1〜11のいずれかに記載の方法。
[項13]
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル、(C−C)−アリール、(C−C)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C)−シクロアルキル又は(C−C)−ハロシクロアルキルを表し;
及び、
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル、(C−C)−アリール、(C−C)−ハロアリール、(C−C10)−アラルキル、(C−C10)−ハロアラルキル、(C−C)−シクロアルキル又は(C−C)−ハロシクロアルキルを表す;
ことを特徴とする、項1〜12のいずれかに記載の方法。
[項14]
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−ハロアルキル又は(C−C)−アリールを表し、好ましくは、メチル又はエチルを表し;
及び、
は、(C−C)−アルキル又は(C−C)−ハロアルキルを表し、好ましくは、(C−C)−アルキルを表し、これらの中で、好ましいのは、C−アルキル又はC−アルキルである;
ことを特徴とする、項1〜13のいずれかに記載の方法。
[項15]
医薬分野又は農薬分野において使用することができる生物学的に活性な物質を製造する方法、好ましくは、リン含有アミノ酸を製造する方法であって、以下の段階(a)及び段階(b):
(a) 項1〜14において定義されている方法で製造される、項1、項13又は項14において定義されている式(I)で表される化合物を製造する段階;
(b) 段階(a)で得られた式(I)で表される化合物を医薬分野又は農薬分野において使用することができる生物学的に活性な物質を製造するために使用する段階、好ましくは、リン含有アミノ酸を製造するために使用する段階;
を含んでいる、前記方法。