特許第6826189号(P6826189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許6826189(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826189
(24)【登録日】2021年1月18日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマー
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/16 20060101AFI20210121BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20210121BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20210121BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20210121BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20210121BHJP
   C08G 77/46 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   C09D5/16
   C08G77/20
   C08F290/14
   C09D183/07
   C08G77/38
   C08G77/46
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-510089(P2019-510089)
(86)(22)【出願日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2018013087
(87)【国際公開番号】WO2018181645
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-64193(P2017-64193)
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智幸
(72)【発明者】
【氏名】大澤 芳人
(72)【発明者】
【氏名】森本 行生
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−167185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/20
C08F 290/14
C08G 77/38
C08G 77/46
C09D 5/16
C09D 183/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(b1)で表されるメタ(アクリル)変性シリコーンマクロモノマーを含む、海中防汚用樹脂組成物
【化1】
(式中、R30は水素原子又はメチル基であり、aは2〜5の整数であり、bは1〜10の整数であり、cは2又は3の整数であり、dは1〜1000の整数であり、eは1〜80の整数であり、R31〜R39は、互いに独立に、(メタ)アクリル基を有しない置換又は非置換の一価炭化水素基またはアルコキシ基である)。
【請求項2】
前記式(b1)においてeが2〜5の整数である、請求項1記載の海中防汚用樹脂組成物
【請求項3】
前記式(b1)においてeが2である、請求項2記載の海中防汚用樹脂組成物
【請求項4】
前記式(b1)において、さらにaが2〜4の整数であり、bが〜10の整数であり、cが3であり、dが1〜100の整数である、請求項2または3記載の海中防汚用樹脂組成物
【請求項5】
前記式(b1)において、eが1であり、bが1〜10の整数である、請求項1記載の海中防汚用樹脂組成物
【請求項6】
前記式(b1)において、さらにaが2〜4の整数であり、cが3であり、dが1〜100の整数である、請求項5記載の海中防汚用樹脂組成物
【請求項7】
前記式(b1)においてR31〜R39が、互いに独立に、(メタ)アクリル基を有しない、炭素数1〜8の非置換の一価炭化水素基またはアルコキシ基である、請求項1〜6のいずれか1項記載の海中防汚用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーを構成単位に有する(メタ)アクリル系共重合体を含む、海中防汚塗料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーに関するものであり、特に防汚塗料用ポリマーの原料となり得る(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋構造物や船舶は、海中生物の付着により表面の腐食や航行速度の低下が起こる為、付着防止を目的として、従来より防汚塗料の塗装が行われている。防汚塗料としては自己研磨型の防汚塗料が知られており、典型的には加水分解性樹脂と防汚剤とを含む組成物である。当該防汚塗料を施した塗膜面では、表面から徐々に塗料が海中に溶解し、常に防汚剤を含んだ表面が露出する事により、長期間に渡って防汚効果を発揮する事が出来る。この様な防汚塗料として、例えば、特許文献1には、シロキサン含有重合性単量体に基づく構成単位と、2価の金属原子を含有する金属原子含有重合性単量体に基づく構成単位とを有する共重合体を含有する塗料組成物が記載されており、特許文献2には、シロキサン含有基とトリオルガノシリルオキシカルボニル基とを有する加水分解性樹脂を含有する防汚塗料組成物が記載されている。
【0003】
しかしながら、これらのシロキサン含有重合性単量体を原料とした共重合体から構成された塗料組成物は塗膜が優れた防汚効果を示すものの、塗膜の表面平滑性が低いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−300410号公報
【特許文献2】国際公開第2011/046087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、防汚性ならびに表面平滑性に優れた塗膜を形成できる(メタ)アクリル系共重合体の原料となる(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記式(b1)で表される(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーを含む、を含む、海中防汚用樹脂組成物を提供する。
【化1】
(式中、R30は水素原子又はメチル基であり、aは2〜5の整数であり、bは1〜10の整数であり、cは2又は3の整数であり、dは1〜1000の整数であり、eは1〜80の整数であり、R31〜R39は、互いに独立に、(メタ)アクリル基を有しない置換又は非置換の一価炭化水素基またはアルコキシ基である)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーは、(メタ)アクリル系共重合体の原料として使用できる。特には防汚塗料用ポリマーとしての(メタ)アクリル系共重合体の原料として有用であり、防汚性及び表面平滑性に優れた防汚塗膜を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーは、上記式(b1)で表される。以下、該(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーについて詳細に説明する。
【0009】
式(b1)において、R30は水素原子又はメチル基である。aは2〜5の整数であり、原料入手の観点から2〜4が好ましい。
【0010】
式(b1)において、bは0〜50の整数であり、好ましくは0〜30の整数であり、更に好ましくは0又は1〜10の整数であり、特に好ましくは0又は1〜5の整数である。bが50を超える化合物を防汚塗料用ポリマー原料として使用すると、得られる塗膜は親水性が高くなりすぎたり、シリコーン部位の含有割合が減少して塗膜の耐水性が低下する虞がある。
【0011】
式(b1)において、cは0〜18の整数であり、原料入手の観点から好ましくは2又は3であり、更に好ましくは3である。
【0012】
式(b1)において、dは1〜1000の整数であり、好ましくは1〜200の整数であり、更に好ましくは1〜100の整数であり、特に1〜60の整数が好ましい。dが1000を越えると、ポリマーを合成する時に他の重合性単量体との相溶性が低下する虞がある。
【0013】
式(b1)において、eは1〜80の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、更に好ましくは1〜5の整数であり、特に好ましくは1〜3の整数である。eは(メタ)アクリル基の数を意味し、他の重合性単量体と重合するのに必要な重合性基の数である。eが80を超えると、得られるポリマーの溶解性が著しく低下する虞がある。
【0014】
式(b1)において、d+eは2〜1000が好ましく、好ましくは2〜150であり、特には2〜100であるのがよい。
【0015】
本発明における好ましい態様の一つは、前記式(b1)において、eが2〜5である化合物である。好ましくはeが2〜4であり、さらに好ましくはeが2又は3であり、特にはeが2である化合物である。eが上記範囲にある化合物をポリマー原料として使用することで、塗膜硬度、耐水性、及び乾燥性等の点において良好なポリマーが得られる。さらには、aが2〜4の整数であり、bが0〜10の整数であり、cが3であり、dが1〜100の整数である化合物がよい。
【0016】
また、別の好ましい態様としては、前記式(b1)においてeが1であり、bが1〜10の整数である化合物である。さらにはaが2〜4の整数であり、cが3であり、及びdが1〜100の整数である化合物がよい。上記範囲にある化合物をポリマー原料として使用することで、防汚性等の点において良好なポリマーが得られる。
【0017】
31〜R39は、互いに独立に(メタ)アクリル基を有しない置換又は非置換の一価炭化水素基、またはアルコキシ基である。本発明において(メタ)アクリル基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を意味する。
【0018】
置換又は非置換の一価炭化水素基としては、好ましくは、炭素数1〜18の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1〜8の非置換一価炭化水素基である。該非置換の一価炭化水素基は不飽和結合を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、及びナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基が挙げられる。置換の一価炭化水素基としては、上記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されている基が挙げられる。また上記一価炭化水素基は酸素原子を途中に有しても良い。
【0019】
アルコキシ基は好ましくは炭素数1〜6を有し、更に好ましくは炭素数1〜4を有する。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、1−メチルエトキシ、1−メチルプロポキシ基、2−メチルプロポキシ基、ペンチロキシ基、3−メチルブチロキシ基、ヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、及びフェノキシ基等が挙げられる。
【0020】
上記の中でも、R31〜R39は、互いに独立に、合成のし易さの観点からメチル基、フェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基であるのが特に好ましい。
【0021】
前記式(b1)において、dが付された括弧内にあるシロキサン単位及びeが付された括弧内にあるシロキサン単位は、ランダムに配列していても、ブロックで配列していても良い。またR30〜R39で示される基は互いに独立であり、同一であっても異なっていても良い。
【0022】
前記式(b1)で表される化合物は、従来公知の方法で製造することができ、合成方法は特に制限されない。例えば、下記(1)〜(4)の各合成方法により製造することができる。得られた化合物は通常構造に分布を有した物となり、b、d及びeは1分子あたりの平均値であって良い。
【0023】
(1) 下記式(A1)で表されるシロキサンオリゴマーと、下記式(B1)で表される環状シロキサンと、下記式(C1)で表されるシロキサンとを平衡化反応させて合成する方法。
【化2】
(式中、xは1〜100の整数であり、R40は炭素数1〜8の一価炭化水素基であり、R30、R36、a、b、及びcは上記の通りである)
【化3】
(式中、yは1〜5の整数であり、R34、及びR35は上記の通りである)

【化4】
(式中、R31〜R33及びR37〜R39は上記の通りである)
【0024】
(2) 下記式(A2)で表されるシロキサンと(メタ)アクリル酸クロライドとを反応させる方法。
【化5】
(式中、R31〜R39及びa〜eは上記の通りである)
【0025】
(3) 下記式(A3)で表されるハイドロジェンシロキサンと下記式(B3)で表される化合物とを白金触媒存在下にてヒドロシリル化反応させて合成する方法。
【化6】
(式中のR31〜R39及びd及びeは上記の通りである)
【化7】
(式中、zは0〜16の整数であり、R30、a及びbは上記の通りである)
【0026】
(4) 上記式(A3)で表されるハイドロジェンシロキサンと下記式(B4)で表される化合物とを白金触媒存在下にて脱水素反応させて合成する方法。
【化8】
(式中、R30、a及びbは上記の通りである)
【0027】
上記した各反応における反応温度及び時間は、従来公知の方法に従い、適宜設定されれば良い。反応温度は好ましくは0〜100℃であり、反応時間は1〜20時間が好ましい。また原料化合物が溶解する適当な溶剤を用いて行っても良い。溶剤は例えば、2-プロピルアルコール及びトルエン等が使用できる。白金触媒は従来公知の触媒が使用できる。
【0028】
上記各反応は必要に応じて、重合禁止剤を添加しても良い。該重合禁止剤は(メタ)アクリル化合物に従来使用されている化合物であれば良い。例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−t−ブチルヒドロキノン、4−メトキシフェノール、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)などのフェノール系重合禁止剤が挙げられる。これらの重合禁止剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用しても良い。重合禁止剤の量は特に制限されるものでないが、得られる化合物の質量に対して5〜500ppmとなる量が好ましく、より好ましくは10〜200ppmとなる量である。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーは、(メタ)アクリル系共重合体の原料として使用できる。特には、防汚塗料用ポリマーの原料(ポリマーを構成するモノマー)として有用である。本発明の(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーは、単体としてポリマー原料に使用してもよいし、分布を有する場合(すなわち、得られた化合物がb、d、及びeが異なる値を持つ混合物である場合)には、混合物のまま使用して良い。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0031】
なお、粘度はキャノンフェンスケ型毛細管粘度計により測定した25℃における値を示し、屈折率はデジタル屈折率計RX−7000α(アタゴ社製)により測定した25℃における値である。H-NMR分析は、装置:JEOL社製ECX500II、測定溶媒:CDClにより行った。固形分(質量%)は、試料を熱風乾燥機を用いて105℃で2時間乾燥させた際の、乾燥前質量と乾燥後質量とから下式により求めた。
固形分(質量%)= 乾燥後質量/乾燥前質量×100
【0032】
[比較例1]
<メタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−1)の製造>
冷却管と温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、1,1,1,3,3,5,5,7,7,7−デカメチルテトラシロキサン221g、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン264g、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランのオリゴマー(粘度80mm/s)265gを仕込んだ後、トリフルオロメタンスルホン酸1.20gを加え、90℃下にて7時間反応させた。反応後、液温を40℃まで下げ、水0.60g、炭酸水素ナトリウム12g、硫酸ナトリウム12gを順に加えて30分間撹拌し、ろ過にて固形分を除去した。更にその後、BHT0.27gを添加して、4%酸素含有窒素をバブリングしながら、100℃/15torrにて5時間かけて低沸成分を除去した。得られた物の収量は590gであり、粘度は19mm/s、屈折率は1.4239であった。H−NMR分析により、得られた化合物は下記式(b−1)で示されるメタクリル変性シリコーンマクロモノマーであることを確認した。
H−NMRデータは以下の通りである。
H−NMR:δ −0.10〜0.21(m,66H)、0.41〜0.58(m,4H)、1.59〜1.75(m,4H)、1.87〜1.93(s,6H)、4.01〜4.09(m,4H)、5.49〜5.54(s,2H)、6.04〜6.09(s,2H)
【化9】
(式中、dは平均7であり、eは平均2である。)
【0033】
[実施例2]
<メタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−2)の製造>
3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランの代わりに3−(メタクリロイルオキシエトキシ)プロピルメチルジメトキシシランのオリゴマー(粘度130mm/s)を131g用い、用いる他の原料の量を1,1,1,3,3,5,5,7,7,7−デカメチルテトラシロキサン178gならびに1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン423gに変更した以外は実施例1を繰り返した。得られた物の収量は605gであり、粘度は23mm/s、屈折率は1.4150であった。H−NMR分析により、得られた化合物は下記式(b−2)で示されるメタクリル変性シリコーンマクロモノマーであることを確認した。
H-NMRデータは以下の通りである。
H−NMR:δ −0.10〜0.21(m,93H)、0.41〜0.58(m,2H)、1.54〜1.69(m,2H)、1.88〜1.93(s,3H)、3.36〜3.45(m,2H)、3.60〜3.67(m,2H)、4.22〜4.29(m,2H)、5.50〜5.55(s,1H)、6.09〜6.13(s,1H)

【化10】
(式中、dは平均12であり、eは平均1である。)
【0034】
[比較例3]
<メタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−3)の製造>
用いる原料の量を、1,1,1,3,3,5,5,7,7,7−デカメチルテトラシロキサン188g、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン449gならびに3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランのオリゴマー(80mm/s)113gに変更した以外は実施例1を繰り返した。得られた物の収量は625gであり、粘度は16mm/s、屈折率は1.4098であった。H−NMR分析により、得られた化合物は下記式(b−3)で示されるメタクリル変性シリコーンマクロモノマーであることを確認した。
H−NMRデータは以下の通りである。
H−NMR:δ −0.10〜0.21(m,93H)、0.41〜0.58(m,2H)、1.59〜1.75(m,2H)、1.87〜1.93(s,3H)、4.01〜4.09(m,2H)、5.49〜5.54(s,1H)、6.04〜6.09(s,1H)
【化11】
(式中、dは平均12であり、eは平均1である。)
【0035】
[参考例1]
<酸化亜鉛および重合性モノマー含有混合物の製造>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器にn−ブタノール85.4gおよび酸化亜鉛40.7gを仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸43.1g、アクリル酸36.1g、水5.0gからなる混合液を3時間で等速滴下した。さらに2時間撹拌した後、n−ブタノールを36g添加して、固形分44.8質量%の透明な混合物を得た。
【0036】
[参考例2]
<樹脂組成物(X−1)の製造>
撹拌機、温度調整機、滴下ロートを備えた反応容器に、キシレン59g、プロピレングリコールモノメチルエーテル15g、エチルアクリレート4.0gを仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートから、メチルメタクリレート29.4部、エチルアクリレート14.9部、参考例1で得られた酸化亜鉛および重合性モノマー含有混合物26部、メタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−1)40部、キシレン10部、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)0.3部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)10.7部、連鎖移動剤(日油株式会社製、ノフマー(登録商標)MSD、α−メチルスチレンダイマー)1.0部からなる混合物を6時間かけて等速滴下した。滴下終了後、t−ブチルパーオキシオクトエート0.5部とキシレン10部を30分間隔で4回滴下し、さらに1時間撹拌した後、キシレン55部を添加し、固形分38.2質量%の溶液状の樹脂組成物(X−1)を得た。
【0037】
[参考例3]
<樹脂組成物(X−2)の製造>
メタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−1)の代わりにメタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−2)を用いた以外は参考例2と同様にして、固形分45.1質量%の溶液状の樹脂組成物(X−2)を得た。
【0038】
[参考例4]
<樹脂組成物(X−3)の製造>
メタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−1)の代わりにメタクリル変性シリコーンマクロモノマー(b−3)を用いた以外は参考例2と同様にして、固形分43.8質量%の溶液状の樹脂組成物(X−3)を得た。
【0039】
[参考例5]
<樹脂組成物(X−4)の製造>
メタクリル変性シリコーンマクロモノマーとして、(b−1)の代わりに下記式(b−4)で表されるメタクリル変性シリコーンマクロモノマーを用いた以外は参考例2と同様にして、固形分45.4質量%の溶液状の樹脂組成物(X−4)を得た。
【化12】
【0040】
[参考例6〜9]
<塗膜の評価>
得られた各樹樹脂組成物から形成される塗膜について、表面平滑性、塗膜硬度ならびに防汚性の評価を行った結果を表1に示す。
【0041】
(表面平滑性)
50mm×50mm×2mm(厚さ)の硬質塩化ビニル板に、樹脂溶液を乾燥膜厚120μmになるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥して塗膜を形成する事によって試験板を得た。この試験板を人工海水中に設置した回転ドラムに取り付け、周速7.7m/sで回転させた。100日後の塗膜について、高精度形状測定システムKS−1100、LT−9000(キーエンス株式会社製)にて線粗さを測定し、以下の基準で表面平滑性を評価した。
○:1.0μm未満。
×:1.0μm以上。
【0042】
(塗膜硬度)
ガラス基板上に、500μmアプリケーターを用いて樹脂溶液を乾燥膜厚が80〜150μmとなるように塗布し、25℃で1週間乾燥させて樹脂組成物の塗膜が形成された試験板を得た。この試験板の塗膜について、25℃において超微小硬度計(株式会社フィッシャー・インストルメンツ製、商品名:HM2000)により塗膜硬度を測定した。測定条件は、dQRST(F)/dt=一定、F(試験力)=10mN/10秒、C(最大荷重クリープ時間)=5秒、最大押し込み荷重=10mN、最大押し込み深さ=6μmとし、試験板の塗膜のそれぞれ異なる3ヶ所の平均値を塗膜硬度とし、以下の基準で評価した。
◎:9.0N/mm以上。
○:7.0〜9.0N/mm
×:8.0N/mm以下。
【0043】
(防汚性)
防錆塗料を予め両面に塗装したサンドブラスト鋼板に、樹脂溶液を両面に乾燥膜厚が200〜300μmとなるように刷毛で塗布した。得られた塗板を室温(25℃)で3日間乾燥させた後、愛知県内の湾の海面下1.0mに4ヶ月間静置浸漬し、試験板の全面積に対する海中生物が付着した面積の割合を調べ、以下の基準で評価した。
◎:海水生物の付着面積が5%以下。
○:海水生物の付着面積が5%超60%以下。
×:海水生物の付着面積が60%超。
【0044】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の(メタ)アクリル変性シリコーンマクロモノマーは(メタ)アクリル系共重合体の原料として有用である。好ましくは防汚塗料用ポリマーである(メタ)アクリル系共重合体の原料として有用であり、防汚性と表面平滑性に優れた防汚塗膜を提供できる。