【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、総務省、「超高精細度衛星・地上放送の周波数有効利用技術の研究開発」に係わる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記元データのアンテナ利得分布は、前記偏波共用アンテナが備える給電部へ集波する前記反射鏡によって生じる右旋及び左旋円偏波の衛星放送波の受信アンテナ利得のピーク方向のずれを示す離軸角度に応じたアンテナ利得特性からなることを特徴とする、請求項1に記載の受信レベル測定装置。
前記制御手段は、当該受信電力を計測する旨、及び前記制御手段によって決定した当該方向調整に用いる電力値を含む情報を操作者に対し視覚的に又は 聴覚的に、或いはその双方で表示するよう所定の表示部を制御する表示制御手段を更に備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の受信レベル測定装置。
前記制御手段は、前記電力計測手段によって計測対象とする所定の放送チャンネルの右旋円偏波と左旋円偏波の中間周波数の信号を、当該右旋円偏波の放送チャンネルの中心周波数と、当該左旋円偏波の放送チャンネルの中心周波数とが所定の周波数差に最も近くなるよう、自動的に周波数選択制御を行う周波数選択設定手段を更に備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の受信レベル測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
オフセットパラボラアンテナは、軸対称ではない反射鏡を用いることで、給電部を反射鏡の開口面外に配置し、サイドローブ特性などを改善したアンテナであり、衛星放送の衛星放送受信アンテナ装置に適している。例えば、
図5(a),(b)には、現行の12GHz帯の衛星放送の衛星放送受信アンテナ装置2として、典型的なオフセットパラボラアンテナを示している。
図5(a)の斜視図に示すように、衛星放送受信アンテナ装置2は、概略的には、反射鏡21により12GHz帯の右旋円偏波の衛星放送波を給電部22に向けて反射させ、給電部22によりその反射波を受信し、一般的には給電部22に内蔵されるコンバータで中間周波数の信号に変換してケーブル23(例えば同軸ケーブル)を介して受像機へ出力するよう構成される。そして、コンバータには中間周波数の信号に対し所定の増幅率で増幅して出力する電力増幅器が設けられている。
【0011】
このようなオフセットパラボラアンテナは、様々な大きさのものがあり、また様々な設計方法があるが、主として、放送周波数f(本例では12GHz帯)に対する反射鏡21の開口径rと給電部22の構造が特定されている場合には、
図5(b)の側面図に示すように、焦点距離Dは開口径×0.5程度、オフセット角θは給電部3が反射鏡2の開口面に干渉せず大きくなりすぎない範囲で選定される。
【0012】
ところで、右旋円偏波、左旋円偏波ともに東経110度の静止軌道上に位置する人工衛星から送信されるため、衛星放送の電波の到来方向は右旋及び左旋円偏波ともに同じである。
【0013】
しかしながら、オフセットパラボラアンテナにおける反射鏡は、その非対称性から、右旋円偏波と左旋円偏波の主偏波のピーク方向がずれるという現象が生じる。
【0014】
図6(a)に、反射鏡2の開口径r=45cmの12GHz帯衛星放送波用のオフセットパラボラアンテナについて、反射鏡2で生じる主偏波ピーク方向のずれを示す主偏波放射パターンの計算結果を示しており、即ち給電部22におけるコンバータの入力時のアンテナ利得を示している。
図6(a)における計算に用いた周波数fは12.225GHz、横軸は、反射鏡2のカット面を水平面として、放送衛星の方位(本例では東経110度)に対し反射鏡2の中心からの離軸角度を示している。即ち、離軸角度0は、放送衛星の方位に向かう反射鏡2の中心軸を示している。
【0015】
図6(a)から分かるように、右旋円偏波の受信アンテナ利得のピークP
Rの方向と、左旋円偏波の受信アンテナ利得のピークP
Lの方向とは0.8度ずれている。右旋円偏波の受信アンテナ利得の離軸角度特性と左旋円偏波の受信アンテナ利得の離軸角度特性との交点となるアンテナ利得P
Oは、反射鏡21の軸中心に位置している。
【0016】
よって、
図6(a)に示す右旋円偏波の受信アンテナ利得のピークP
R又は左旋円偏波の受信アンテナ利得のピークP
Lで受信アンテナの方向調整を行うと、他方の偏波におけるアンテナ利得が低下してしまい、例えば
図6(a)に示す例では0.6dB低下する。
【0017】
このため、偏波共用アンテナにおいては、第1の課題として、右旋円偏波と左旋円偏波のアンテナ利得が等しくなるよう反射鏡21の方向調整を可能とする受信レベル測定装置が望まれる。
【0018】
この第1の課題を解決するべく、偏波共用アンテナにおける右旋円偏波と左旋円偏波の同時受信のために、反射鏡21の軸中心に位置しているアンテナ利得P
Oが得られるよう反射鏡21の方向調整を行うのが好適である。
【0019】
しかしながら、給電部22におけるコンバータの出力時には、右旋円偏波の中間周波数の信号(右旋用IF信号)と左旋円偏波の中間周波数の信号(左旋用IF信号)としてそれぞれ出力されるアンテナ利得特性に個体差(主にコンバータ内の電力増幅器の増幅率ばらつき)を生じさせることが多い。
図6(b)に、
図6(a)における計算結果に対しコンバータの出力時のアンテナ利得を例示している。即ち、コンバータの出力時には
図6(b)に示すように右旋用IF信号と左旋用IF信号にはコンバータの個体差が加わるため、コンバータの出力時における右旋用IF信号による受信アンテナ利得のピークP
Rが左旋用IF信号による受信アンテナ利得のピークP
Lより大きくなることがある。或いは逆に、右旋用IF信号による受信アンテナ利得のピークP
Rより左旋用IF信号による受信アンテナ利得のピークP
Lが大きくなることがある。
【0020】
このような場合、右旋円偏波と左旋円偏波のアンテナ利得が等しくなるよう反射鏡21の方向調整を行うと、コンバータの出力時における右旋円偏波の受信アンテナ利得の離軸角度特性と左旋円偏波の受信アンテナ利得の離軸角度特性との交点となるアンテナ利得P
O’で方向調整を行ってしまい、反射鏡の中心軸が放送衛星の方位(本例では東経110度)からずれてしまうことになる。これは、反射鏡21の軸中心に位置しているアンテナ利得(
図6(b)では右旋円偏波のアンテナ利得P
O)が得られるよう反射鏡21の方向調整を行う場合と比較して、
図6(a)から分かるように受信C/Nとして劣化した位置で方向調整を行っていることに相当する。
【0021】
つまり、
図6(a)に示す反射鏡21による右旋円偏波と左旋円偏波のアンテナ利得が一致していることと、
図6(b)に示す給電部22のコンバータによる右旋用IF信号の出力と左旋用IF信号の出力の電力が一致していることとは同じとはいえない。
【0022】
このため、偏波共用アンテナにおいては、第2の課題として、右旋円偏波と左旋円偏波のアンテナ利得の受信C/Nとしてより高い受信品質となるよう反射鏡21の方向調整を可能とする受信レベル測定装置が望まれる。
【0023】
尚、特許文献1の技法では、右旋円偏波と左旋円偏波の受信を想定していない装置であり、右旋円偏波と左旋円偏波のアンテナ利得が等しくなるよう判別する工夫が無いため、第1及び第2の課題を解決することができない。
【0024】
また、仮に、特許文献1の技法に対し右旋円偏波と左旋円偏波のアンテナ利得が等しくなるよう判別する工夫が設けられ、尚且つ給電部22のコンバータによる右旋用IF信号の出力と左旋用IF信号の出力の電力に対し自動利得調整(AGC)回路を用いて受信電力を調整し、そのときのアンテナレベルとデジタル信号品位を取得し表示するよう構成しても、各偏波のIF信号に対し利得調整するAGC回路にもばらつきが生じうるため、第2の課題を解決することができない。即ち、単にAGC回路を設けるのみでは当該
図6(b)で例示するような給電部22(コンバータ)の個体差を高精度に吸収して方向調整を行うことができない。
【0025】
従って、従来技法では、右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波を受信可能とした偏波共用アンテナについて高受信品質となるよう反射鏡を方向調整することができない。
【0026】
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波を受信可能とした偏波共用アンテナについて高受信品質となるよう方向調整可能とする受信レベル測定装置及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明による受信レベル測定装置は、反射鏡を用いて右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波を受信可能とした偏波共用アンテナの方向調整を行うための受信レベル測定装置であって、前記偏波共用アンテナの方向調整のために、前記偏波共用アンテナにより受信される衛星放送波における所定の放送チャンネルの右旋円偏波と左旋円偏波の中間周波数の信号に対しそれぞれの受信電力を計測する電力計測手段と、前記電力計測手段によって計測される受信電力から、所定の計測期間内の右旋円偏波と左旋円偏波の中間周波数の信号における各受信電力のピーク値を算出し、前記偏波共用アンテナに関して予め保持している
、右旋円偏波の中間周波数の信号と左旋円偏波の中間周波数の信号としてそれぞれ出力されるアンテナ利得特性に個体差が生じない計算結果の元データのアンテナ利得分布について当該各受信電力のピーク値を基に
当該元データに対する受信時の
各偏波間のレベル差を対比可能に正規化したアンテナ利得分布を算出し、当該正規化したアンテナ利得分布に基づいて当該反射鏡の中心軸が放送衛星の方位に向かう時の受信レベルを推定し、前記電力計測手段から得られる電力値のうち当該推定した受信レベルに相当する電力値を当該方向調整に用いるよう決定する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明による受信レベル測定装置において、前記元データのアンテナ利得分布は、前記偏波共用アンテナが備える給電部へ集波する前記反射鏡によって生じる右旋及び左旋円偏波の衛星放送波の受信アンテナ利得のピーク方向のずれを示す離軸角度に応じたアンテナ利得特性からなることを特徴とする。
【0029】
また、本発明による受信レベル測定装置において、前記制御手段は、当該受信電力を計測する旨、及び前記制御手段によって決定した当該方向調整に用いる電力値を含む情報を操作者に対し視覚的に又は 聴覚的に、或いはその双方で表示するよう所定の表示部を制御する表示制御手段を更に備えることを特徴とする。
【0030】
また、本発明による受信レベル測定装置において、前記制御手段は、前記電力計測手段によって計測対象とする所定の放送チャンネルの右旋円偏波と左旋円偏波の中間周波数の信号を、当該右旋円偏波の放送チャンネルの中心周波数と、当該左旋円偏波の放送チャンネルの中心周波数とが所定の周波数差
に最も近くなるよう、自動的に周波数選択制御を行う周波数選択設定手段を更に備えることを特徴とする。
【0031】
また、本発明による受信レベル測定装置において、前記偏波共用アンテナが12GHz帯の衛星放送波の受信用に構成されていることを特徴とする。
【0032】
また、本発明によるプログラムは、本発明の受信
レベル測定装置における制御手段として機能するコンピュータに、前記制御手段の機能を実行させるためのプログラムとして構成される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、偏波共用アンテナにおける右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波の受信レベルを同時に確認できる。
【0034】
また、本発明によれば、偏波共用アンテナにおける右旋円偏波と左旋円偏波の主偏波ピークのずれを考慮して方向調整を行うことができる。特に、右旋円偏波、左旋円偏波ともに高受信品質の受信アンテナ利得を得るように偏波共用アンテナの方向調整を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の受信レベル測定装置1と、その制御に係るプログラムについて説明する。
【0037】
(装置構成)
図1は、本発明による一実施形態の受信レベル測定装置1の概略構成を示すブロック図である。受信レベル測定装置1は、衛星放送受信アンテナ装置2からケーブル23(例えば同軸ケーブル)を介して、右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波の中間周波数(IF)信号を入力し、各偏波の受信レベルを同時に確認して、衛星放送受信アンテナ装置2の方向調整を可能とする装置である。
【0038】
尚、衛星放送受信アンテナ装置2は、
図5に示す衛星放送受信アンテナ装置2を、12GHz帯の衛星放送信号(BS又はCS)の右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波を受信可能としたオフセットパラボラアンテナとして構成した例を説明する。例えば、衛星放送受信アンテナ装置2は反射鏡21及び給電部22を備え、反射鏡21を介して給電部22により12GHz帯の各偏波の衛星放送信号を受信し、給電部22に内蔵されるコンバータにより各偏波のIF信号に変換してケーブル23を介して受信レベル測定装置1へ出力する。通常、このIF信号は、当該ケーブル23を介して受像機に向けて出力される信号である。
【0039】
コンバータは給電部22に内蔵され一体化されているのが一般的である。ただし、本発明に係る受信レベル測定装置1は、右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波を受信可能としその方向調整を要する偏波共用アンテナであれば如何なる形態のものにも適用できる。例えば、コンバータは給電部22に対し外付けされるものでもよい。
【0040】
従って、衛星放送受信アンテナ装置2は、本例では12GHz帯の衛星放送信号(BS又はCS)用の偏波共用アンテナを想定し、
図2(a)に示す周波数関係にある11.7〜12.75GHzに割り当てられる12GHz帯の右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送周波数を受信して、数GHz帯となる右旋及び左旋円偏波のIF信号へと周波数変換し、
図2(b)に示す周波数関係にある対応する各偏波の衛星放送のIF信号を受信レベル測定装置1へ出力する。
【0041】
ここで、受信レベル測定装置1は、右旋及び左旋円偏波の12GHz帯の衛星放送の或る放送チャンネルのそれぞれの周波数f
R,f
L(f
R≠f
L、且つf
R≒f
L)の信号に対し、右旋及び左旋円偏波用のそれぞれの局部発振周波数LO
1,LO
2(LO
1≠LO
2)を用いて衛星放送受信アンテナ装置2により固有に減算して周波数変換されている各偏波のIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2を、受信レベルの測定対象として設定する。
【0042】
図1に示すように、本実施形態の受信レベル測定装置1は、分配器11、電源供給部12、第1周波数選択部13、第2周波数選択部14、第1電力計測部15、第2電力計測部16、制御部17、表示部18、及び操作部19を備える。制御部17は、モード選択部171、周波数選択設定部172、記憶部173、データ処理部174、及び表示制御部175を備える。
【0043】
制御部17は、コンピュータとして機能させることができ、当該コンピュータに、モード選択部171、周波数選択設定部172、データ処理部174、及び表示制御部175の各構成要素を実現させるためのプログラムは、当該コンピュータの図示しない不揮発性メモリに記憶される。当該コンピュータに備えられる中央演算処理装置(CPU)などの制御で、各構成要素の機能を実現するための処理内容が記述されたプログラムを、適宜、当該不揮発性メモリから読み込んで各構成要素の機能を当該コンピュータに実現させることができる。ここで、当該各構成要素の機能をハードウェアの一部で実現してもよい。この不揮発性メモリは電気的に書き換え可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)で構成し、種々の偏波共用アンテナに適応化させるため外部から書き換え可能とするのが好適である。尚、本例の記憶部173は、一時記憶し読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)を想定している。
【0044】
制御部17は、モード選択部171により、操作者に対しマン‐マシンインターフェースとして機能する操作部19から「測定モード」と「調整モード」の2種類の動作モードを選択する操作を受け付け、「測定モード」と「調整モード」の2種類で周波数選択設定部172、データ処理部174、及び表示制御部175が当該2種類の動作モードに対応する制御を行うよう構成されている。
【0045】
「測定モード」は、方向調整を行うための受信電力を測定し、衛星放送受信アンテナ装置2の調整方向を決定するための動作モードである。
【0046】
「調整モード」は、測定モードを経て決定された調整方向を操作者に対し表示部18を経て知らせるための動作モードである。
【0047】
分配器11は、衛星放送受信アンテナ装置2から入力した右旋及び左旋円偏波のIF信号をそれぞれ第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14に分配して出力する。
【0048】
電源供給部12は、ケーブル23を介して衛星放送受信アンテナ装置2へ直流(DC)電源供給を行うとともに、受信レベル測定装置1の構成要素となる各部へ電源供給する機能部である。
【0049】
第1周波数選択部13は、分配器11から入力される右旋円偏波のIF信号のうち、制御部17の周波数選択設定部172によって選択設定された放送チャンネルの周波数f
Rに対するIF信号f
R−LO
1を選択し、その選択したIF信号を第1電力計測部15に出力する。即ち、第1周波数選択部13は、
図2(b)に例示するIF信号f
R−LO
1を選択して第1電力計測部15に出力する。
【0050】
第2周波数選択部14は、分配器11から入力される左旋円偏波のIF信号のうち制御部17の周波数選択設定部172によって選択設定された放送チャンネルの周波数f
Lに対するIF信号f
L−LO
2を選択し、その選択したIF信号を第2電力計測部16に出力する。即ち、第2周波数選択部14は、
図2(b)に例示するIF信号f
L−LO
2を選択して第2電力計測部16に出力する。
【0051】
第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14は、制御部17の周波数選択設定部172によって「測定モード」と「調整モード」で共通に選択設定された周波数のIF信号を受信レベルの測定対象として同調させる。尚、衛星放送受信アンテナ装置2における固有の周波数特性を排除するため、周波数選択設定部172によって12GHz帯の衛星放送の或る放送チャンネルのそれぞれの周波数f
R,f
L(f
R≠f
L、且つf
R≒f
L)に対するIF信号を選択する。周波数f
R,f
Lとの差は小さいほどよいが、例えば最も近い放送チャンネルの中心周波数の差として約20MHz(BSで19.18MHz、CSで20MHz)となるように周波数f
R,f
Lを設定すればよい。
【0052】
特に、第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14が電力計測をするための放送チャンネルの周波数f
R,f
Lに対するIF信号の選択(放送チャンネルの選局)を行うにあたって、右旋円偏波の放送チャンネルの中心周波数と、左旋円偏波の放送チャンネルの中心周波数とが最も近くなるよう、周波数選択設定部172によって自動的に周波数選択制御を行うよう構成される。
【0053】
或いは、測定対象の放送チャンネルの周波数f
R,f
Lの情報は操作部19を介して設定変更可能な態様で図示しない不揮発性メモリに格納しておき、周波数選択設定部172が、当該不揮発性メモリから放送チャンネルの周波数f
R,f
Lの情報を読み出し、対応する各偏波のIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2を第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14に対しそれぞれ設定するよう構成することもできる。
【0054】
また、この動作モードの選択時に、操作者に対し表示部18を介して測定対象の放送チャンネルのそれぞれの周波数f
R,f
Lを選択可能に提示するよう表示制御部175を制御し、操作者が選択した周波数f
R,f
Lの情報を基に周波数選択設定部172が対応する各偏波のIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2を第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14に対しそれぞれ設定するよう構成することもできる。この場合には、表示部18及び操作部19の機能を備えるマン‐マシンインターフェースとして機能する表示パネルで構成するのが好適である。
【0055】
また、周波数f
R,f
Lを操作者によって選択可能とせず予め定めた固定値とするときは、第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14が当該予め定めた固定値の周波数f
R,f
Lに対応するIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2を選択するよう構成することができる。この場合には周波数選択設定部172を設ける必要はない。
【0056】
このようにして各偏波のIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2は、「測定モード」と「調整モード」で共通に、第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14からそれぞれ第1電力計測部15及び第2電力計測部16へ出力される。
【0057】
第1電力計測部15は、第1周波数選択部13から入力される右旋円偏波のIF信号f
R−LO
1の電力計測を行い、アナログ量の電力値をデジタル量の電力値に変換して制御部174内のデータ処理部174へ出力する。
【0058】
第2電力計測部16は、第2周波数選択部14から入力される右旋円偏波のIF信号f
L−LO
2の電力計測を行い、アナログ量の電力値をデジタル量の電力値に変換して制御部174内のデータ処理部174へ出力する。
【0059】
これにより、データ処理部174は、第1電力計測部15及び第2電力計測部16から、同調して各偏波のIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2について当該所定の計測期間内で電力計測した電力値を得ることができる。
【0060】
データ処理部174は、「測定モード」時では、第1電力計測部15及び第2電力計測部16から経時的に変化して得られる各偏波のIF信号の電力値を、モード選択部171から指示される「測定モード」の開始時から所定の計測期間まで監視して、その所定の計測期間内における各偏波のIF信号の受信電力のピーク値を求め、記憶部173に一時記憶する。
【0061】
尚、アンテナタイプに応じた各偏波用の基準のアンテナ利得分布の情報が、操作部19を介して設定変更可能な態様で図示しない不揮発性メモリに格納されている。即ち、各偏波用の基準のアンテナ利得分布として、例えば
図6(a)に示すアンテナ利得分布のデータを保持している。前述したように、
図6(a)に示すようなアンテナ利得分布は、放送周波数f(本例では12GHz帯)、反射鏡21の開口径r、焦点距離D、及びオフセット角θのパラメータで異なる。このため、予めこれらのパラメータを要素とする種々のアンテナタイプに応じたアンテナ利得分布を当該不揮発性メモリに格納しておき、調整対象のアンテナタイプを操作者が選択可能とするのが好適である。本例の場合、
図6(a)に示すようなアンテナ利得分布に対応するアンテナタイプが操作者によって指定され、モード選択部171が「測定モード」の開始時に当該アンテナタイプの情報をデータ処理部174へ指示しているものとする。
【0062】
そして、データ処理部174は、「測定モード」時に、予め保持している元データのアンテナ利得分布について、そのアンテナ利得分布の各偏波のピークP
R,P
L(
図6(a)参照)と、記憶部173に一時記憶した各偏波のIF信号の受信電力のピーク値とを基に、
当該元データに対する受信時の
各偏波間のレベル差を対比可能に正規化したアンテナ利得分布を算出し、当該各偏波の正規化したアンテナ利得分布を基に当該反射鏡の中心軸が放送衛星の方位に向かう時(離軸角度0)の受信レベルを推定し、当該推定した受信レベルに相当する第1電力計測部15及び第2電力計測部16から得られる受信電力の各偏波の電力値を決定する。このときの制御部17の詳細な制御動作例については
図3及び
図4を参照して後述する。
【0063】
更に、データ処理部174は、「測定モード」時に、当該推定した受信レベルに相当する第1電力計測部15及び第2電力計測部16から得られる受信電力の各偏波の電力値について表示制御部175を経て表示部18に出力する。このとき、表示制御部175は、「測定モード」により測定済みである旨を表示部18に表示させるよう表示制御するのが好適である。
【0064】
尚、データ処理部174による正規化処理は、正規化の基準をどこに設定するかによって様々な計算方法が想定されるが、各偏波のIF信号の受信電力のピーク値を基に
当該元データに対する受信時の
各偏波間のレベル差を対比可能に正規化したアンテナ利得分布を算出するものであればよい。
【0065】
このように、「測定モード」では、操作者は当該所定の計測期間で衛星放送受信アンテナ装置2を動かしてその方向調整を行うための電力計測を行う。このため当該所定の計測期間で得られる各偏波のIF信号の受信電力の電力値(受信レベル)は変化する。
【0066】
一方、「調整モード」時では、データ処理部174は、「測定モード」により測定済みの当該推定した受信レベルに相当する第1電力計測部15及び第2電力計測部16から得られる受信電力の各偏波の電力値が各偏波のIF信号に対して同時に所定の誤差内(例えば誤差10%以下)で第1電力計測部15及び第2電力計測部16から得られるときに、その旨を示す情報について表示制御部175を経て表示部18に出力する。
【0067】
「調整モード」においても操作者は当該所定の計測期間で衛星放送受信アンテナ装置2を動かしてその方向調整を行う。このため、この場合も当該所定の計測期間で得られる各偏波のIF信号の受信電力の電力値(受信レベル)は変化する。
【0068】
ただし、「調整モード」では、当該所定の計測期間を無制限とするよう、第1電力計測部15及び第2電力計測部16を制御部17の制御により選択設定し、操作者が時間制限なく衛星放送受信アンテナ装置2を動かしてその方向調整を行うよう構成することもできる。
【0069】
表示制御部175は、「測定モード」時にはその旨を示し、「調整モード」時には測定済みの当該推定した受信レベルに相当する第1電力計測部15及び第2電力計測部16から得られる受信電力の各偏波の電力値等の情報を操作者に対し視覚的及び/又は聴覚的に表示するよう表示部18を制御する。より具体的には、表示制御部175は、各動作モードや方向調整に用いる電力値等の情報を、操作者に対し視覚的に視認できるよう表示部18を制御し、或いは数値だけでなく、その都度得られる右旋円偏波の受信レベル(電力値)と左旋円偏波の受信レベルを表示することや、当該推定した受信レベルに相当する電力値に近づくにつれて表示色が変わるように表示部18を制御する。或いは、表示制御部175は、当該推定した受信レベルに相当する電力値に近づくにつれ変化する音を発生させるように表示部18を制御するのが好適である。
【0070】
尚、実際の装置設計においては適宜フィルタが挿入されるが、ここでは省略した。また、第1電力計測部15及び第2電力計測部16の前段に固定増幅率又は可変増幅率の電力増幅器を設けてもよい。ただし、可変増幅率の電力増幅器を設けるときは、「測定モード」の開始から計測期間中、及び「調整モード」で同じ増幅率となるよう制御部17で制御する必要がある。
【0071】
本実施形態の受信レベル測定装置1によれば、右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送を高受信品質で受信できるように、偏波共用アンテナの方向調整を行うことができる。
【0072】
(制御フロー)
次に、
図1を参照しながら、
図3及び
図4を基に、制御部17における「測定モード」時の制御フローについて、より詳細に説明する。
図3は本実施形態の受信レベル測定装置1における制御部17の測定モード時の制御を示すフローチャートであり、
図4はその測定モード時の制御に関する説明図である。
【0073】
図3を参照するに、まず、操作者により操作部19を介して、「測定モード」と「調整モード」のうち「測定モード」の指定と、放送周波数f(本例では12GHz帯)、
図6(a)に示すようなアンテナ利得分布を有する反射鏡21の開口径r、焦点距離D、及びオフセット角θのパラメータを要素とする特定のアンテナタイプの指定と、電力計測をするための放送チャンネルの指定が行われ、制御部17のモード選択部171がこれらの指定を受け付ける(ステップS1)。
【0074】
そして、制御部17は、モード選択部171により、「測定モード」の動作開始を周波数選択設定部172、データ処理部174、及び表示制御部175に指示する。
【0075】
続いて、制御部17は、周波数選択設定部172により、第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14に対して放送チャンネルを選択設定する(ステップS2)。
【0076】
この周波数選択設定部172による選択設定に応じて、第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14は、それぞれ分配器11から入力される右旋及び左旋円偏波のIF信号のうち選択設定された放送チャンネルの周波数f
R,f
Lに対するIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2を選択して第1電力計測部15及び第2電力計測部16に出力する。
【0077】
そして、第1電力計測部15及び第2電力計測部16は、それぞれ第1周波数選択部13及び第2周波数選択部14から入力される右旋及び左旋円偏波のIF信号f
R−LO
1,f
L−LO
2の電力計測を同調して行う。
【0078】
続いて、制御部17は、データ処理部174により、所定の計測時間内で第1電力計測部15及び第2電力計測部16で計測された各偏波のIF信号の受信電力のピーク値を測定し、記憶部173に一時記憶する(ステップS3)。
【0079】
例えば
図4(a)に示すように、「測定モード」の動作開始から、操作者は当該所定の計測期間で衛星放送受信アンテナ装置2を動かしてその方向調整を行うための電力計測を行う。電力計測は第1電力計測部15及び第2電力計測部16によって行われる。このため当該所定の計測期間で得られる各偏波のIF信号の受信電力の電力値(受信レベル)は変化する。そして、データ処理部174は、当該所定の計測期間における各偏波のIF信号のピーク値を測定することができ、例えば
図4(a)に示す例では各偏波間でレベル差ΔPのピーク値が測定される。尚、データ処理部174は、当該所定の計測期間で所定レベル以上のIF信号のピーク値を得ることができないときは、表示制御部175を介して計測エラーを示す旨を表示部18に表示させ、再度の計測を行う旨を提示する。
【0080】
続いて、制御部17は、データ処理部174により、操作者が指定したアンテナタイプに対応する予め保持している元データのアンテナ利得分布について、そのアンテナ利得分布の各偏波のピークP
R,P
L(
図6(a)参照)と、記憶部173に一時記憶した各偏波のIF信号の受信電力のピーク値とを基に、正規化したアンテナ利得分布を算出する(ステップS4)。
【0081】
正規化処理は、正規化の基準をどこに設定するかによって様々な計算方法が想定されるが、本例では、
図6(a)に例示する元データの右旋円偏波のアンテナ利得分布のピークP
Rを当該計測した右旋円偏波のピーク値へとシフト(乗算)させた右旋円偏波のアンテナ利得分布を算出して正規化データとし、同じく
図6(a)に例示する元データの左旋円偏波のアンテナ利得分布のピークP
Lを当該計測した左旋円偏波のピーク値へとシフト(乗算)させた左旋円偏波のアンテナ利得分布を算出して正規化データとする。これにより、各偏波間でレベル差ΔPのピーク値となる当該衛星放送受信アンテナ装置2が持つアンテナ利得分布を推定する。
【0082】
続いて、制御部17は、データ処理部174により、例えば
図4(b)に示すように、正規化したアンテナ利得分布に基づいて当該反射鏡の中心軸が放送衛星の方位に向かう時の受信レベルを方向調整用の受信レベルとして推定する(ステップS5)。
【0083】
続いて、制御部17は、第1電力計測部15及び第2電力計測部16から得られる電力値のうち当該推定した受信レベルに相当する電力値を調整モード用として決定する(ステップS6)。
【0084】
続いて、制御部17は、表示制御部175により、「調整モード」へ移行可能である旨(即ち、方向調整のための各偏波のIF信号の電力値が測定済みである旨)を表示部18に表示するよう制御する(ステップS7)。
【0085】
操作者により操作部19を介して、「調整モード」が指定されると、制御部17のモード選択部171がこの指定を受け付けて、「調整モード」の動作開始をデータ処理部174、及び表示制御部175に指示する。このとき、周波数選択設定部172では「測定モード」時に選択されているIF信号が維持される。
【0086】
「調整モード」においても操作者は当該所定の計測期間で衛星放送受信アンテナ装置2を動かしてその方向調整を行う。このため、この場合も当該所定の計測期間で得られる各偏波のIF信号の受信電力の電力値(受信レベル)は変化する。
【0087】
そして、データ処理部174は、第1電力計測部15及び第2電力計測部16から得られる受信電力の各偏波の電力値を監視して、「測定モード」により測定済みの当該推定した受信レベルに相当する電力値が各偏波のIF信号に対して同時に所定の誤差内(例えば誤差10%以下)で得られるときに、その旨を示す情報について表示制御部175を経て表示部18に出力する。
【0088】
以上のように、本実施形態の受信レベル測定装置1によれば、偏波共用アンテナにおける右旋円偏波と左旋円偏波の衛星放送波の受信レベルを同時に確認できる。
【0089】
また、本実施形態の受信レベル測定装置1によれば、偏波共用アンテナにおける右旋円偏波と左旋円偏波の主偏波ピークのずれを考慮して方向調整を行うことができる。特に、右旋円偏波、左旋円偏波ともに高受信品質の受信アンテナ利得を得るように偏波共用アンテナの方向調整を行うことができる。
【0090】
以上、特定の実施形態の例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前述した例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前述した例では、好適例として12GHz帯の衛星放送波の衛星放送受信アンテナ装置を例に説明したが、オフセットパラボラアンテナ方式の偏波共用アンテナを利用することが可能である限り、当該放送波の受信に限定する必要はない。また、本発明に係る受信レベル測定装置を受像機内に設ける構成とすることもできる。