(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負極が、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を活物質として含
み、
上記化合物(I)が、下記式(1)若しくは(2)で表される化合物であるか、又は下記式(3)若しくは(4)で表される構造単位を有する重合体であ
り、
【化10】
(式(1)〜(4)中、R
1〜R
4、R
7〜R
14、R
17〜R
20、R
22〜R
29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又は炭化水素基である。
R
5、R
6、R
15、R
16は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基又は式(5)〜(9)で表されるいずれかの基である。R
36〜R
39は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子である。Mは、遷移金属である。
R
21、R
30は、単結合、アルキレン基、カルボニル基、エステル基、含窒素基、芳香族基、複素環基、フェニレン基、含酸素炭化水素鎖、
又は含窒素炭化水素
鎖である。
X
1〜X
16は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は有機基である。
R
1〜R
39、X
1〜X
16で表されるそれぞれの基は、置換基で置換されていてもよい。
m、nは、2以上の整数である。)
正極が、下記式(10)〜(16)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を活物質として含む
、水系二次電池。
【化11】
(式(10)〜(16)中、R
40〜R
61は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、芳香族基、複素環基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、アルキルチオ基又は炭化水素基である。Mは、遷移金属である。R
40〜R
61で表されるそれぞれの基は、置換基で置換されていてもよい。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リチウムイオン二次電池に用いられる有機溶媒を含む電解液は可燃性であり、人体に対して有害である。また、その使用時に万が一破損して電解液が電池筐体より外部へ漏出してしまうと、使用者に危険が伴うという不都合があった。また、イミド系化合物を電極活物質として用いたリチウムイオン二次電池のサイクル特性は十分ではないという不都合もあった。
【0006】
そこで、本発明は、使用時に万が一破損して電池筐体より漏出しても安全な水系電解液を使用した蓄電デバイスを提供することを目的とする。具体的には、本発明は、安全性に優れると共に、サイクル特性にも優れる二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、二次電池において、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物を電極活物質として含み、かつ電解液として水系電解液を備えることで、安全性に優れると共に、充放電時の安定性を向上させることでき、サイクル特性にも優れる二次電池とすることができることを見出した。すなわち、上記課題を解決するための本発明の要旨は以下に示す通りである。
【0008】
[1]正極又は負極の少なくともいずれかが、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を活物質として含む、水系二次電池。
[2]上記化合物(I)が、下記式(1)若しくは(2)で表される化合物であるか、又は下記式(3)若しくは(4)で表される構造単位を有する重合体である、[1]記載の水系二次電池。
【化1】
(式(1)〜(4)中、R
1〜R
4、R
7〜R
14、R
17〜R
20、R
22〜R
29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又は炭化水素基である。
R
5、R
6、R
15、R
16は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基又は式(5)〜(9)で表されるいずれかの基である。R
36〜R
39は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子である。Mは、遷移金属である。
R
21、R
30は、単結合、アルキレン基、カルボニル基、エステル基、含窒素基、芳香族基、複素環基、フェニレン基、含酸素炭化水素鎖、含窒素炭化水素鎖又はメタロセンから誘導される基である。
X
1〜X
16は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は有機基である。
R
1〜R
39、X
1〜X
16で表されるそれぞれの基は、置換基で置換されていてもよい。
m、nは、2以上の整数である。)
[3]負極が、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を活物質として含む、[1]又は[2]記載の水系二次電池。
[4]正極が、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を活物質として含む、[1]から[3]のいずれか記載の水系二次電池。
[5]正極が、下記式(10)〜(16)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を活物質として含む、[3]記載の水系二次電池。
【化2】
(式(10)〜(16)中、R
40〜R
61は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、芳香族基、複素環基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、アルキルチオ基又は炭化水素基である。Mは、遷移金属である。R
40〜R
61で表されるそれぞれの基は、置換基で置換されていてもよい。)
[6]アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも一種の塩を含有する水系電解液を備える、[1]から[5]のいずれか記載の水系二次電池。
[7]上記水系電解液が、ナトリウム塩を含有する、[6]記載の水系二次電池。
[8]導電助剤、集電体、及び結着剤を含む、[1]から[7]のいずれか記載の水系二次電池。
[9]ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を電極活物質として含み、水系電解液を備える、ハイブリッドキャパシタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水系二次電池は、正極又は負極の少なくともいずれかにおいて、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を活物質として含み、かつ水系電解液を用いる。これにより、本発明の水系二次電池は、使用時に万が一破損した場合であっても、従来の有機溶媒を含む電解液を用いた二次電池と比較してより安全であり、かつ充放電のサイクル特性にも優れる。そのため、本発明の水系二次電池は、定置用蓄電池の用途に特化し、また携帯電話、ノートパソコン等のIT機器や電気自動車等の電源として、広く使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の水系二次電池について詳細に説明する。本発明の水系二次電池は、正極と、負極と、水系電解液とを備える。上記正極又は負極の少なくともいずれかが、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を電極活物質として含み、電解液が水系電解液であることを特徴とする。これらに加えて、上述した効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の構成を備えていてもよい。それぞれについて、以下に説明する。
【0012】
[水系二次電池の構造]
はじめに、本発明の水系二次電池の一実施形態の形状、構造について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0013】
本発明の一実施形態の円筒型の水系二次電池10(
図1)は、正極集電体11に正極活物質層12を形成した正極シート13と、負極集電体14の表面に負極活物質層17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす水系電解液20とを備えたものである。水系二次電池10は、上記正極活物質層又は負極活物質層の少なくともいずれかが、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を電極活物質として含むことを特徴としている。この水系二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シート18に接続された負極端子26とを配設して形成されている。
【0014】
本発明の一実施形態のコイン型の水系二次電池40(
図2)は、正極側の集電体35に正極活物質層32を形成した正極シートと、負極側の集電体37に負極活物質層33を形成した負極シートと、正極シートと負極シートとの間に設けられたセパレータ34とを備えている。水系二次電池40は、正極シート及び負極シートに水系電解液を含浸させているか、又はゲル状の水系電解液を備えている。負極側の集電体37上にリングワッシャー30を載置すると共に、ガスケット36を周縁に配し、かしめ機等で負極ケース38を正極ケース39に固着して外装封止し、これによりコイン型の水系二次電池40が作製される。水系二次電池40は、上記正極活物質層32又は負極活物質層33の少なくともいずれかが、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を電極活物質として含むことを特徴としている。
【0015】
(電極活物質)
本発明の水系二次電池は、正極又は負極の少なくともいずれかが、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を電極活物質として含む。化合物(I)は、下記式(1)若しくは(2)で表される化合物であるか、又は下記式(3)若しくは(4)で表される構造単位を有する重合体であることが好ましい。
【0017】
上記式(1)〜(4)中、R
1〜R
4、R
7〜R
14、R
17〜R
20、R
22〜R
29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又は炭化水素基である。
R
5、R
6、R
15、R
16は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基又は式(5)〜(9)で表されるいずれかの基である。R
36〜R
39は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子である。Mは、遷移金属である。
R
21、R
30は、単結合、アルキレン基、カルボニル基、エステル基、含窒素基、芳香族基、複素環基、フェニレン基、含酸素炭化水素鎖、含窒素炭化水素鎖又はメタロセンから誘導される基である。
X
1〜X
16は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は有機基である。
R
1〜R
39、X
1〜X
16で表されるそれぞれの基は、置換基で置換されていてもよい。
m、nは、2以上の整数である。
【0018】
上記式(1)〜(4)におけるR
1〜R
4、R
7〜R
14、R
17〜R
20、R
22〜R
29のハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0019】
上記式(1)〜(4)におけるR
1〜R
4、R
7〜R
14、R
17〜R
20、R
22〜R
29としては、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子であることが好ましく、全てが水素原子であることがより好ましい。
【0020】
上記式(1)〜(4)におけるR
5、R
6、R
15、R
16のアルコキシ基、炭化水素基としては、上記R
1〜R
4、R
7〜R
14、R
17〜R
20、R
22〜R
29について挙げられたものと同様の原子及び基が挙げられる。
【0021】
上記式(1)〜(4)におけるR
5、R
6、R
15、R
16としては、炭化水素基、上記式(5)〜(9)で表される基であることが好ましく、中でもアルキル基、上記式(5)〜(9)で表される基であることがより好ましく、炭素数が6以下のアルキル基、上記式(5)、(9)で表される基であることがさらに好ましい。なお、式(5)〜(9)で表される基におけるR
36〜R
39としては、水素原子であることが好ましい。また、上記式(9)におけるMとしては、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Sc(スカンジウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等が挙げられる。水系二次電池のサイクル特性を向上させるという観点から、Fe、Niが好ましく、Feがより好ましい。即ち、より好ましいメタロセン化合物は、式(9)において、MがFeであるフェロセン化合物、オリゴフェロセン化合物である。最も好ましくは、フェロセンである。なお、Mにはハロゲン化物などの、他の分子が付加してもよい。
【0022】
上記式(3)におけるR
21、式(4)におけるR
30におけるアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。これらのうち、メチレン基、エチレン基が好ましい。上記芳香族基としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等を含む基が挙げられる。上記複素環基としては、例えばピリジン環、ピリミジン環、フラン環、チオフェン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む5〜6員の芳香族複素環又は脂肪族複素環等を含む基が挙げられる。
【0023】
上記式(3)におけるR
21、式(4)におけるR
30としては、単結合、アルキレン基が好ましく、中でもアルキレン基がより好ましく、エチレン基がさらに好ましい。
【0024】
上記式(1)〜(4)におけるX
1〜X
16は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は有機基であり、=X
1〜X
16は、下記式のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0026】
上記式中、R
x1〜R
x3は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、チオアリール基、チオアルキル基、複素環基、ホルミル基、シリル基、ボリル基、スタンニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、イミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子の少なくともいずれか1種を使用することができる。これらの基は置換基で置換されていてもよい。また、R
x1〜R
x3は同一でもよく、互いに連結して飽和若しくは不飽和の環を形成してもよい。
【0027】
また、上記した中では、=Oが特に好ましく、=Oを使用することにより、充放電電圧をより高くすることができ、二次電池の高エネルギー密度化により好適な電極活物質を得ることができる。
【0028】
化合物(I)としては、下記式で表される化合物が好ましい。なお、下記式中、nは2以上の整数、mは0以上の整数を示す。
【0030】
化合物(I)としては、下記式で表される化合物がより好ましい。下記式中、nは2以上の整数を示す。
【0032】
本発明の水系二次電池において、正極が電極活物質として化合物(I)を含んでいてもよいし、負極が電極活物質として化合物(I)を含んでいてもよい。また、正極、負極の両方が電極活物質として化合物(I)を含んでいてもよい。正極、負極のうち一方だけが化合物(I)を電極活物質として含むとした場合には、負極が化合物(I)を電極活物質として含む電極であることが好ましい。
【0033】
正極、負極のうち一方だけが化合物(I)を電極活物質として含む場合の、対極の電極活物質としては、二次電池性能を十分に示すものであれば特に限定されないが、例えば、下記式(10)〜(16)で表される化合物等が挙げられる。
【0035】
上記式(10)〜(16)中、R
40〜R
61は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、芳香族基、複素環基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、アルキルチオ基又は炭化水素基である。Mは、遷移金属である。R
40〜R
61で表されるそれぞれの基は、置換基で置換されていてもよい。
【0036】
上記式(10)〜(16)におけるR
40〜R
61のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルキルチオ基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等が挙げられる。炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0037】
上記式(16)におけるMとしては、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Sc(スカンジウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等が挙げられる。水系二次電池のサイクル特性を向上させるという観点から、Fe、Niが好ましく、Feがより好ましい。即ち、上記式(16)で表される電極活物質としては、MがFeであるフェロセン化合物、オリゴフェロセン化合物が好ましく、フェロセンがより好ましい。また、Mにはハロゲン化物などの、他の分子が付加してもよい。
【0038】
上記式(10)〜(16)におけるR
40〜R
61としては、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0039】
本発明の水系二次電池における対極の電極活物質としては、上記式(12)〜(16)で表される化合物に由来する構造単位を含むオリゴマーであることもまた好ましい。
【0040】
本発明の水系二次電池における対極の電極活物質としては、下記式で表されるテトラチアフルバレン(TTF)、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン(BEDT−TTF)、フェロセンポリマー、ニトロキシドポリマー等が好ましい化合物として挙げられる。これらの化合物は、正極活物質とすることが好ましい。
【0042】
本発明の水系二次電池における、正極活物質、負極活物質の組み合わせとしては、
(i) 正極活物質として化合物(I)以外の化合物/負極活物質として化合物(I)
(ii)正極活物質、負極活物質の両方に化合物(I)
が好ましい。(i)の場合の上記化合物(I)以外の化合物としては、TTF、BEDT−TTF、フェロセンポリマー、ニトロキシドポリマーが好ましい。特に、正極活物質としてBEDT−TTFを、負極活物質として上記式(I−3)の化合物を用いる組合せが好ましい。(ii)の場合の化合物(I)の組合せとしては、正極活物質として上記式(I−1)の化合物を、負極活物質として上記式(I−3)の化合物を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の水系二次電池における正極又は負極は、上述の活物質に加え、導電助剤、結着剤等を含んでいてもよい。
【0044】
正極及び負極に含まれる導電助剤としては、炭素材料、導電性高分子、粉末金属、無機導電性酸化物等を使用することができる。炭素材料は、例えば、活性炭、活性炭素繊維、多孔質炭素、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェン等である。導電性高分子は、例えば、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフルオレン、ポリピロール、ポリチオフェン等である。粉末金属は、例えば、アルミニウム、金、白金等である。これらのうち、炭素材料が好ましく、中でも活性炭が好ましい。
【0045】
正極及び負極に含まれる結着材としては、使用する電位領域で分解しない、用途に適したものを選んで使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系ゴム等である。
【0046】
正極及び負極に含まれる導電助剤及び結着剤は、それぞれ1種単独でも、2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0047】
負極における活物質層、及び正極における活物質層の各電極活物質層において、正極または負極の電極活物質、導電助剤及び結着材の構成比率は、質量基準でそれぞれ、5〜100質量%:0〜100質量%:0〜30質量%の範囲で適宜調整すればよい。導電助剤、結着剤は、付加されなくてもよい。また、負極活物質層及び正極活物質層の厚みは特に制限されない。
【0048】
(水系電解液)
本発明における水系電解液は、水と少なくとも1種の水溶性塩とを含有する。水溶性塩はアルカリ金属元素の塩及びアルカリ土類金属元素の塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩であることが好ましく、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、カリウム塩、ベリリウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩であることがより好ましく、ナトリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、カリウム塩であることが更に好ましく、ナトリウム塩であることが特に好ましい。
【0049】
水溶性塩に含まれるアニオンの種類は特に制限されない。アニオンとしては例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン等を挙げることができる。ハロゲン化物イオンは、具体的には、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等である。
【0050】
水溶性塩は25℃において中性塩、又はアルカリ性塩であることが好ましく、中性塩であることがより好ましい。中でも、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、テトラフルオロほう酸ナトリウム等からなる群から選ばれる少なくとも1種の中性のナトリウム塩;塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、テトラフルオロほう酸マグネシウム等からなる群から選択される少なくとも1種の中性のマグネシウム塩;塩化リチウム、臭化リチウム、テトラフルオロほう酸リチウム等からなる群から選択される少なくとも1種の中性のリチウム塩;塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、テトラフルオロほう酸カリウム等からなる群から選択される少なくとも1種の中性のカリウム塩がより好ましく、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム等が更に好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0051】
水系電解液における水溶性塩の濃度は、水溶性塩の種類等に応じて適宜選択される。水系電解液における水溶性塩の濃度は、温度や溶質により溶解度が異なるが、例えば、水系電解液が20℃であるとき、水溶性塩が塩化ナトリウムであれば、0.1モル/L〜6.1モル/Lの範囲であることが好ましく、水溶性塩が塩化マグネシウムであれば、0.1モル/L〜5.7モル/Lの範囲であることが好ましい。水系電解液における水溶性塩の濃度は、飽和溶解度以下であればよく、濃度が高い方が好ましい。
【0052】
水系電解液は、水溶性の有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては例えば、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0053】
水系電解液が有機溶剤を含む場合、その含有率は水に対して50質量%以下であり、10質量%以下が好ましい。
【0054】
水系電解液は、必要に応じて各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては例えば、亜硫酸ナトリウム;カルボキシメチルセルロース等のゲル化剤が挙げられる。
【0055】
水系電解液は、その溶存酸素量が、7.3ppm以下であることが好ましい。溶存酸素量が7.3ppm以下であると二次電池のサイクル特性がより向上する傾向がある。より好ましい溶存酸素量は、5ppm以下であり、最も好ましい溶存酸素量は4ppm以下である。
【0056】
一般に水系電解液の常温(22℃〜23℃)における飽和溶存酸素量は8.2〜8.6ppmであり、一般的に用いられる操作により、溶存酸素量を7.3ppm以下にすることができる。たとえば、電池製造時に少なくとも1回以上脱気する、電池製造の際にパッキングを設けて酸素量の増加を抑制する構造を設ける等により、溶存酸素量を所望の範囲に維持することができる。脱気方法は通常用いられる方法から適宜選択され、例えば、減圧、加熱等をすることにより行うことができる。
【0057】
本発明の二次電池において、水系電解液は、ゲル化剤を用いてゲル状としたものも含む。本発明におけるゲル状の水系電解液は、液体状の水系電解液をゲル状としたものであり、液体の水系電解液にゲル化剤を添加して得ることができる。本発明において、ゲル状とは、分散系の一種で、ゾルのような液体分散媒のコロイドだが、分散質のネットワークにより高い粘性を持ち流動性を失い、系全体としては固体状になったものをいう。また、水系電解液は、収納ケース内の内部空間に封入してもよいし、電極シート等に含浸させて使用してもよい。なお、ゲル状水系電解液は、例えば、液体状の電解液をスナップカップに入れ、適量のカルボキシメチルセルロールを加えて、スパチュラでつぶし、ホモミキサーを用い室温で10,000rpm5分間程度攪拌する方法により作製することができる。
【0058】
また、開放系の電池では、水系電解液内に挿入管を設け、常時窒素ガスのバブリングを行うことにより溶存酸素量を低下させることができる。
【0059】
(セパレータ)
水系二次電池は、セパレータを備えてもよい。セパレータは正極及び負極を隔てるように配置されるものであり、イオンを通し、かつ正負極間のショートを防止することが求められる。セパレータとしては、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン繊維性の不織布やポリオレフィン製の微多孔膜、ガラスフィルター、セラミックの多孔質材料などを用いることができる。
【0060】
(集電体)
水系二次電池は、集電体(正極集電体及び負極集電体)を備えてもよい。正極集電体及び負極集電体の材料には、正極、負極それぞれの電位において副反応が発生しない材料が用いられる。より具体的には、正極集電体及び負極集電体には、正極及び負極の電位において溶解等の反応が発生しない耐食性を有する材料を用いればよい。正極集電体及び負極集電体の材料には、例えば、金属材料、合金、炭素材料、無機導電性酸化物材料等を用いることができる。金属材料は、例えば、銅、ニッケル、真鍮、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、タングステン、金、白金等である。合金は、例えばSUS等である。炭素材料は、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ガラス状炭素等である。
【0061】
[水系二次電池の製造方法]
本発明の水系二次電池は、負極及び正極と、電解液とを、円筒型ケース、コイン型ケースなどの収容ケースに封入して製造する。具体的な製造手順は、以下の実施例にて詳細に説明する。
【0062】
本発明の水系二次電池いずれの形状であってもよい。例えば、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型等が挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のもの等に適用してもよい。
【0063】
[蓄電デバイス]
正極又は負極の少なくともいずれかが、ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を活物質として含み、水系電解液を備える蓄電デバイスも、本発明に含まれる。本発明の蓄電デバイスとしては、上記ナフタレンジイミド構造又はペリレンジイミド構造を有する化合物(I)を含む電極化学反応とその対極は導電助剤の電極界面でのイオンの電気二重層形成での吸脱着を利用してエネルギーを貯蔵、放出するデバイスある、ハイブリッドキャパシタなどが挙げられる。ハイブリッドキャパシタとした際に、導電助剤のみで形成されたキャパシタに比べ、高いエネルギー密度を実現できる。また、水系電解液を採用しているため、安全性にも優れる。なお、本発明の蓄電デバイスが備える電極及び水系電解液についての説明は、本発明の水系二次電池における説明を適用できる。
【実施例】
【0064】
次に実施例により本発明の具体的態様を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【0065】
<水系二次電池の作製>
(正極及び負極の作製−方法1)
導電助剤である炭素材料(活性炭及びカーボンブラック)に正極活物質を担持させた。乳鉢内で、上記正極活物質を担持させた炭素と、さらに導電助剤として担持されていない炭素材料、結着材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを混合、混練した。この混合物をローラープレスで圧延してシート化した。
【0066】
(正極及び負極の作製−方法2)
導電助剤である炭素材料(活性炭及びカーボンブラック)に正極活物質を担持させた。乳鉢内で、上記正極活物質を担持させた炭素と、さらに導電助剤として担持されていない炭素材料、電解液を電極重量とほぼ同じになるように加え混練した後、結着材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを混合、混練した。この混合物をローラープレスで圧延してシート化した。
【0067】
(電池の組み立て:ビーカーセル)
得られた正極及び負極は、円形に切断し、白金線を取り付けた白金メッシュに張り付けた。そして、ガラス製サンプル瓶セルに、上記電極を取り付けた。ガラス製サンプル瓶セルに電極が張り付いた白金メッシュを電解液に浸して、真空雰囲気下にして電極に電解液を含浸した。
【0068】
(電池の組み立て:コインセル)
得られた正極及び負極は、円形に切断し集電体の上に電極を置いた。正極と負極の間にはセパレータが置かれ、電極とセパレータの間にはカルボキシメチルセルロースと3M NaClのゲル状物質(ゲル状の水系電解液)が置かれている。場合によっては電極を電解液中に浸し、真空雰囲気下にして電極に電解液を含浸した。
【0069】
(サイクリックボルタンメトリー用セルの組み立て)
上記方法1によって得られた電極シートは、白金線を取り付けた白金メッシュに張り付け、作用極とした。対極に活性炭とPTFEからなる電極を、白金線を取り付けた電極にプレス張り付けした。ガラス製サンプル瓶セルに電解液を加えた。サンプル瓶セルを蓋で密閉し、電極内に挿入管を設け、常時窒素ガスをバブリングさせた。
【0070】
(サイクリックボルタンメトリー)
作用極及び対極の作製条件、電解液の種類を表1に示す通りとし、それぞれのサイクリックボルタンメトリー用セルを組み立てた。参照電極としてはAg/AgClを使用し、
実施例1〜10、参考例11〜15、実施例16のセルをサイクリックボルタンメトリーに供した。各実施例における掃引範囲、掃引速度も表1に合わせて示した。実施例1については
図3に、実施例2については
図4に、実施例3〜6については
図5に、実施例7についは
図6に、実施例8については
図7に、実施例9については
図8に、実施例10については
図9に、
参考例11〜14については
図10に、
参考例15については
図11に、実施例16については
図12に、それぞれのサイクリックボルタモグラムを示す。
【0071】
対極は活性炭とカーボンブラックおよびPTFEを混練し、シート化して作用極の重量の2倍以上になるようにした。
【0072】
【表1】
【0073】
上記表1における活物質
1)としては、以下に示す(I−1)〜(I−8)の化合物を使用した。
【0074】
【化9】
【0075】
上記表1において、作用極の電極の組成比としては、実施例8以外は活物質/活性炭/KB/PTFEの比を示している。実施例8については、活物質/カーボンブラック/PTFEの比を示している。活性炭及びKB(ケッチェンブラック)は導電助剤として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は結着材として使用した。また、対極における導電助剤としては活性炭を、結着剤としてはPTFEを用いた。
【0076】
サイクリックボルタモグラムの結果から、
実施例1〜10、参考例11〜15、実施例16における条件(電極活物質と水系電解液)を用いると、高出力で、充放電を繰り返すことができる蓄電デバイスとすることができることがわかった。
【0077】
上記の方法により実施例17〜25の水系二次電池を作製した。実施例17〜25の水系二次電池において用いた正極活物質、負極活物質、導電助剤、結着材の種類及び質量、並びに電解液の種類を下記表2に示す。また、正極及び負極の作製方法の別(方法1又は2)も合わせて表2に示す。また、実施例17〜19、25はコインセルを用い、実施例20〜24はビーカーセルで行った。
【0078】
【表2】
【0079】
表2において示した活物質の種類(番号)は、表1における活物質の種類(番号)と同じである。活性炭及びKBは導電助剤として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は結着材として使用した。
【0080】
(充放電サイクル特性評価)
実施例17〜24で得られた水系二次電池を充放電試験に供した。なお、実施例17〜19、25においては、完成した電極シートを3M NaClの溶液に浸し、デシケータの中に入れ、真空状態にして3M NaClの溶液を含浸させたものを用いた。実施例20〜24においては、活物質が担持された活性炭及びKBに電解液を入れ、混練した後にPTFEを入れ、もう一度混練し、ローラープレスにかけてシート化して電極シートを作成した。実施例17〜19の水系二次電池のサイクル特性を
図13に、実施例20〜24の水系二次電池のサイクル特性を
図14に示す。
図13において、実施例17、18,19の充放電電圧はそれぞれ1.6、1.65、1.7Vであり、1C(負極の理論容量を基準)の電流値で充放電を行った。
図14において、実施例20、23、24は1.25Vの電圧、実施例21は1.35V、実施例22は1.4Vで充放電を行い3C(正極の理論容量を基準)の電流値で行った。実施例25の二次電池については、3種類(1.6、1.65、1.7V)の電圧および5種類(5C、3C、2C、1C、0.5C:負極の理論容量を基準)電流値の条件にて充放電を行った結果を
図15に示す。