特許第6827478号(P6827478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827478
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】動物用排泄物処理シート
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   A01K1/015 A
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-550473(P2018-550473)
(86)(22)【出願日】2018年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2018007630
(87)【国際公開番号】WO2019167191
(87)【国際公開日】20190906
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】笹野 廉紘
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3192208(JP,U)
【文献】 特開平02−111363(JP,A)
【文献】 特開平10−028700(JP,A)
【文献】 特開2014−070317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を備えた動物用排泄物処理シートであって、
前記動物用排泄物処理シートは、
排泄物の供給面である第1面と、該第1面とは反対側の面である第2面とを有し、
平面視にて、前記動物用排泄物処理シートの中央に位置し、前記表面シート、前記吸収体及び前記裏面シートが厚さ方向に重複する部分として区画される中央部と、
前記中央部を囲繞し、前記中央部の外縁から前記動物用排泄物処理シートの外縁に向かって延出し、前記表面シートと前記裏面シートとが厚さ方向に接合された外周部と、を含み、
更に、前記動物用排泄物処理シートは、
前記外周部において、前記中央部を囲繞するように延在し、前記裏面シートにおける前記第1面側の表面から前記表面シートにおける前記第1面側の表面に亘って厚さ方向に配置された疎水剤を含む止水部、を備え、
前記止水部における前記表面シートの前記第1面側の領域に対応する部分の幅は、前記止水部における前記表面シートの前記第2面側の領域に対応する部分の幅よりも広い、
動物用排泄物処理シート。
【請求項2】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を備えた動物用排泄物処理シートであって、
前記動物用排泄物処理シートは、
排泄物の供給面である第1面と、該第1面とは反対側の面である第2面とを有し、
平面視にて、前記動物用排泄物処理シートの中央に位置し、前記表面シート、前記吸収体及び前記裏面シートが厚さ方向に重複する部分として区画される中央部と、
前記中央部を囲繞し、前記中央部の外縁から前記動物用排泄物処理シートの外縁に向かって延出し、前記表面シートと前記裏面シートとが厚さ方向に接合された外周部と、を含み、
更に、前記動物用排泄物処理シートは、
前記外周部において、前記中央部を囲繞するように延在し、前記裏面シートにおける前記第1面側の表面から前記表面シートにおける前記第1面側の表面に亘って厚さ方向に配置された疎水剤を含む止水部、を備え、
前記止水部における前記表面シートの前記第2面側の領域に対応する部分の幅は、前記止水部における前記表面シートの前記第1面側の領域に対応する部分の幅よりも広い、
動物用排泄物処理シート。
【請求項3】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を備えた動物用排泄物処理シートであって、
前記動物用排泄物処理シートは、
排泄物の供給面である第1面と、該第1面とは反対側の面である第2面とを有し、
平面視にて、前記動物用排泄物処理シートの中央に位置し、前記表面シート、前記吸収体及び前記裏面シートが厚さ方向に重複する部分として区画される中央部と、
前記中央部を囲繞し、前記中央部の外縁から前記動物用排泄物処理シートの外縁に向かって延出し、前記表面シートと前記裏面シートとが厚さ方向に接合された外周部と、を含み、
更に、前記動物用排泄物処理シートは、
前記外周部において、前記中央部を囲繞するように延在し、前記裏面シートにおける前記第1面側の表面から前記表面シートにおける前記第1面側の表面に亘って厚さ方向に配置された疎水剤を含む止水部、を備え、
前記表面シートにおける前記止水部の前記第1面側の部分に対応する領域の繊維密度は、前記表面シートにおける前記止水部の前記第2面側の部分に対応する領域の繊維密度よりも低い、
動物用排泄物処理シート。
【請求項4】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を備えた動物用排泄物処理シートであって、
前記動物用排泄物処理シートは、
排泄物の供給面である第1面と、該第1面とは反対側の面である第2面とを有し、
平面視にて、前記動物用排泄物処理シートの中央に位置し、前記表面シート、前記吸収体及び前記裏面シートが厚さ方向に重複する部分として区画される中央部と、
前記中央部を囲繞し、前記中央部の外縁から前記動物用排泄物処理シートの外縁に向かって延出し、前記表面シートと前記裏面シートとが厚さ方向に接合された外周部と、を含み、
更に、前記動物用排泄物処理シートは、
前記外周部において、前記中央部を囲繞するように延在し、前記裏面シートにおける前記第1面側の表面から前記表面シートにおける前記第1面側の表面に亘って厚さ方向に配置された疎水剤を含む止水部、を備え、
前記表面シートにおける前記止水部の前記第2面側の部分に対応する領域の繊維密度は、前記表面シートにおける前記止水部の前記第1面側の部分に対応する領域の繊維密度よりも低い、
動物用排泄物処理シート。
【請求項5】
前記表面シートは、シート状の繊維構造体によって構成されており、
前記止水部において、前記疎水剤は、少なくとも前記繊維構造体の構成繊維の表面に被覆されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項6】
前記表面シートは、シート状の繊維構造体によって構成されており、
前記止水部において、前記疎水剤は、少なくとも前記繊維構造体の構成繊維間の空隙に充填されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項7】
前記疎水剤は、撥水剤を含む、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項8】
前記撥水剤は、パラフィン系撥水剤、シリコン系撥水剤及びフッ素系撥水剤のうちの少なくとも一つを含む、
請求項に記載の動物用排泄物処理シート。
【請求項9】
前記表面シートは、嵩回復されたエアスルー不織布を含む、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬などの動物を飼育する際に用いられる動物用排泄物処理シートに関する。
【背景技術】
【0002】
犬などの動物が排泄した尿などの排泄物を処理するための動物用排泄物処理シートが知られている。その一例として、特許文献1に、ペットシートが開示されている。このペットシートは、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に介在する吸収体とを有し、側端部にて表面シートと裏面シートとが接合されている。そして、互いに対向する少なくとも1対の側端部に、シート表面から立ち上がるフラップが、シート縁部に平行に形成されている。特許文献1によれば、このペットシートは、ペットシートの縁部付近で排泄された尿をフラップの部分で堰止めることにより、尿がペットシートの縁部から外部に漏れるのを防止できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−313721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のペットシートのような動物用排泄物処理シートでは、フラップが、シートの梱包時に梱包の圧力で折り畳まれたり、シートの使用時にペットに踏まれたりして、シートの表面から立ち上がれず、潰れた状態や横倒しの状態になる可能性がある。そうなると、ペットから排泄された尿がシートの表面上を伝って面方向の外方側に漏れる「伝い漏れ」を生じるおそれがある。加えて、尿を堰き止めるフラップが親水性の表面シートを含むようにして構成されていると、尿が親水性の表面シートの内部を伝って面方向の外方側に漏れる「滲み漏れ」を生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、動物から排泄された尿を面方向の外方側へ漏れ難くすることが可能な動物用排泄物処理シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(1)液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を備えた動物用排泄物処理シートであって、前記動物用排泄物処理シートは、排泄物の供給面である第1面と、該第1面とは反対側の面である第2面とを有し、平面視にて、前記動物用排泄物処理シートの中央に位置し、前記表面シート、前記吸収体及び前記裏面シートが厚さ方向に重複する部分として区画される中央部と、前記中央部を囲繞し、前記中央部の外縁から前記動物用排泄物処理シートの外縁に向かって延出し、前記表面シートと前記裏面シートとが厚さ方向に接合された外周部と、を含み、更に、前記動物用排泄物処理シートは、前記外周部において、前記中央部を囲繞するように延在し、前記裏面シートにおける前記第1面側の表面から前記表面シートにおける前記第1面側の表面に亘って厚さ方向に配置された疎水剤を含む止水部、を備える。
本動物用排泄物処理シートでは、外周部に、裏面シートの第1面側の表面から表面シートの第1面側の表面に亘って厚さ方向に疎水剤が配置されている。そのため、動物から排泄された尿が、表面シートの表面上を伝って面方向の外方側に移動してきても、表面シートの表面付近に配置された疎水剤により、その移動を抑制できる。それにより、尿の「伝い漏れ」を抑制できる。そして、止水部6が疎水剤で形成されているため、動物用排泄物処理シート1がパッキングされたり、動物に踏まれたりしても、止水作用が低下し難く、止水部6としての機能を十分に発揮することができ、「伝い漏れ」を安定的に抑制することができる。更に、動物から排泄された尿が表面シートの内部を伝って面方向の外方側に移動してきても、表面シート内に厚さ方向に亘って配置された疎水剤により、その移動を抑制できる。それにより、尿の「滲み漏れ」を抑制できる。よって、動物から排泄された尿を面方向の外方側へ漏れ難くすることが可能となる。
【0007】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(2)前記表面シートは、シート状の繊維構造体によって構成されており、前記止水部において、前記疎水剤は、少なくとも前記繊維構造体の構成繊維の表面に被覆されている、上記(1)に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
尿が繊維構造体の表面又は内部を移動する場合、主に構成繊維の表面を伝って移動する。そこで、本動物用排泄物処理シートでは、疎水剤が構成繊維の表面に被覆している。それにより、動物から排泄された尿が、表面シートの表面又は内部を面方向の外方側に移動してきても、構成繊維の表面に配置された疎水剤により、その移動をより抑制できる。
【0008】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(3)前記表面シートは、シート状の繊維構造体によって構成されており、前記止水部において、前記疎水剤は、少なくとも前記繊維構造体の構成繊維間の空隙に充填されている、上記(1)又は(2)に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
尿が繊維構造体の表面又は内部を移動する場合、構成繊維間の空隙において、主に構成繊維の表面を伝って移動する。そこで、本動物用排泄物処理シートでは、疎水剤が構成繊維間の空隙に充填されている。それにより、動物から排泄された尿が、表面シートの表面又は内部を移動してきても、構成繊維間の空隙に充填された疎水剤により、その移動をより抑制できる。
【0009】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(4)前記止水部における前記表面シートの前記第1面側の領域に対応する部分の幅は、前記止水部における前記表面シートの前記第2面側の領域に対応する部分の幅よりも広い、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
本動物用排泄物処理シートでは、止水部における表面シートの第1面側の領域に対応する部分の幅が、第2面側の領域に対応する部分の幅よりも広くなっている。そのため、動物から排泄された尿が、表面シートの内部を移動してきて止水部近傍に達したとしても、表面シートの第1面側の表面に漏れ出てくることをより抑制できる。それにより、尿の「伝い漏れ」をより抑制できる。
【0010】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(5)前記止水部における前記表面シートの前記第2面側の領域に対応する部分の幅は、前記止水部における前記表面シートの前記第1面側の領域に対応する部分の幅よりも広い、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
本動物用排泄物処理シートでは、止水部における表面シートの第2面側の領域に対応する部分の幅が、第1面側の領域に対応する部分の幅よりも広くなっている。そのため、動物から排泄された尿が、表面シートの内部を移動してきて止水部近傍に達したとしても、表面シートの第2面側の表面、すなわち表面シートと裏面シートとの間を伝って、外方側に漏れ出てくることをより抑制できる。それゆえ、尿の「滲み漏れ」をより抑制できる。
【0011】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(6)前記表面シートにおける前記止水部の前記第1面側の部分に対応する領域の繊維密度は、前記表面シートにおける前記止水部の前記第2面側の部分に対応する領域の繊維密度よりも低い、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
本動物用排泄物処理シートでは、表面シートの第1面側の領域の繊維密度が、第2面側の領域の繊維密度より低くなっている。すなわち、表面シートの第1面側の領域では、隣り合う構成繊維の間隔が広くなっている。それゆえ、その第1面側の領域での毛細管力が低くなっている。その結果、動物から排泄された尿が、表面シートの内部を拡散して、止水部近傍に到達し難くすることができ、到達したとしても、第1面側の領域での毛細管力の低下及び疎水剤により、表面シートの第1面側の表面に漏れ出てくることをより抑制できる。それにより、尿の「伝い漏れ」をより抑制できる。
【0012】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(7)前記表面シートにおける前記止水部の前記第2面側の部分に対応する領域の繊維密度は、前記表面シートにおける前記止水部の前記第1面側の部分に対応する領域の繊維密度よりも低い、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
本動物用排泄物処理シートでは、表面シートの第2面側の領域の繊維密度が、第1面側の領域の繊維密度より低くなっている。すなわち、表面シートの第2面側の領域では、隣り合う構成繊維の間隔が広くなっている。それゆえ、その第2面側の領域での毛細管力が低くなっている。その結果、動物から排泄された尿が、表面シートの内部を拡散して、止水部近傍に到達し難くすることができ、到達したとしても、第2面側の領域での毛細管力の低下及び疎水剤により、表面シートと裏面シートとの間を伝って、外方側に漏れ出てくることをより抑制できる。それにより、尿の「滲み漏れ」をより抑制できる。
【0013】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(8)前記疎水剤は、撥水剤を含む、上記(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
本動物用排泄物処理シートでは、疎水剤として撥水剤を用いているので、その撥水剤により、動物から排泄された尿の移動をより確実に抑制できる。
【0014】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(9)前記撥水剤は、パラフィン系撥水剤、シリコン系撥水剤及びフッ素系撥水剤のうちの少なくとも一つを含む、上記(8)に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
本動物用排泄物処理シートでは、パラフィン系撥水剤、シリコン系撥水剤及びフッ素系の撥水剤のうちの少なくとも一つを含む撥水剤を用いているので、それら撥水剤により動物から排泄された尿の移動をより確実に抑制できる。
【0015】
本発明の動物用排泄物処理シートは、(10)前記表面シートは、嵩回復されたエアスルー不織布を含む、上記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の動物用排泄物処理シート、であってもよい。
本動物用排泄物処理シートでは、表面シートに嵩回復されたエアスルー不織布を用いている。嵩回復されたエアスルー不織布は嵩高く繊維密度が低く、したがって構成繊維の繊維間距離が相対的に大きくなっている。それにより、表面シート内での毛細管力が低下して、動物から排泄された尿が、表面シートの内部を移動してきて止水部近傍に到達し難くすることができ、到達したとしても、毛細管力が低いため、疎水剤により尿の移動をより容易に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の動物用排泄物処理シートは、動物から排泄された尿を面方向の外方側へ漏れ難くすることが可能な動物用排泄物処理シートを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る動物用排泄物処理シートの構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る動物用排泄物処理シートの構成を示す平面図である。
図3図2の動物用排泄物処理シートの囲み線IIIで囲まれた要部の構成を示す拡大平面図である。
図4図2の動物用排泄物処理シートのIV−IV線に沿った要部の構成を示す部分断面図である。
図5図4の動物用排泄物処理シートの囲み線Vで囲まれた要部の構成を示す拡大断面図である。
図6図2の動物用排泄物処理シートに動物が尿を排泄した後の状態を模式的に示す平面図である。
図7図6の動物用排泄物処理シートの囲み線VIIで囲まれた要部の構成を示す拡大平面図である。
図8】実施形態に係る動物用排泄物処理シートの製造装置の構成を示す模式図である。
図9図4の動物用排泄物処理シートの囲み線Vで囲まれた要部の他の構成を示す拡大断面図である。
図10】実施形態に係る動物用排泄物処理シートの製造装置の他の構成を示す模式図である。
図11図4の動物用排泄物処理シートの囲み線Vで囲まれた要部の更に他の構成を示す拡大断面図である。
図12】実施例に係る動物用排泄物処理シートの液漏れ防止効果の評価方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の動物用排泄物処理シートの実施形態について、図面を参照しながら説明する。本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で排泄物の供給面が上方を向くように、水平面上に置いた対象物(例示:動物用排泄物処理シート及びその資材)を垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を単に「平面視」という。
【0019】
本明細書において、各用語の定義は以下のとおりである。「長手方向」は、「平面視における縦長の動物用排泄物処理シートの長さの長い方向」を指す。「幅方向」は、「平面視における縦長の動物用排泄物処理シートの長さの短い方向(短手方向)」を指す。「厚さ方向」は、「展開した状態で水平面上に置いた動物用排泄物処理シートの垂直方向」を指す。これらの長手方向と幅方向と厚さ方向とは、互いに直交する関係にある。また、「面方向」は、「平面視における略シート状の動物用排泄物処理シートの平面が延びる方向(すなわち、水平面方向)」を指す。この面方向と厚さ方向とは、互いに直交する関係にある。また、「動物用排泄物処理シートの第1方向(例示:長手方向)の中央に位置し、第1方向と直交する第2方向(例示:幅方向)に延びる仮想線」を「中央軸線C」とする。また、「動物用排泄物処理シートの第2方向の中央に位置し、第2方向と直交する第1方向に延びる仮想線」を「中央軸線C」とする。また、「動物用排泄物処理シートの第1方向(例示:長手方向)において、中央軸線Cに対して相対的に近位側」を「第1方向の内方側」といい、同「遠位側」を「第1方向の外方側」という。同様に、「動物用排泄物処理シートの第2方向において、中央軸線Cに対して相対的に近位側」を「第2方向の内方側」といい、同「遠位側」を「第2方向の外方側」という。そして「動物用排泄物処理シートの面方向において、該動物用排泄物処理シートの中心(第1方向に延びる中央軸線C及び第2方向に延びる中央軸線Cの交点)に対して相対的に近位側」を「面方向の内方側」といい、同「遠位側」を「面方向の外方側」という。また、「動物用排泄物処理シートの厚さ方向において、排泄物の供給面に相対的に近位側」を「供給面側」といい、同「遠位側」を「非供給面側」という。また、「動物用排泄物処理シートの供給側の面」を単に「供給面」といい、同「非供給面側の面」を単に「非供給面」という。非供給面側は、動物用排泄物処理シートが載置される載置面に相対的に近位側でもあるため、「非供給面側」を「載置面側」ということがある。同様に、「非供給面」を「載置面」ということがある。また、これらの用語は、動物用排泄物処理シートだけでなく、動物用排泄物処理シートに用いられる各資材に対しても共通に使用するものとする。
【0020】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1を展開した状態の構成を示す斜視図である。図2は、その動物用排泄物処理シート1を展開した状態で表面シート2側から厚さ方向に見た構成を示す平面図である。図3は、図2における動物用排泄物処理シート1の囲み線IIIで囲まれた要部の構成を示す拡大平面図である。図4は、図2における動物用排泄物処理シート1のIV−IV線に沿った要部の構成を示す部分断面図である。
【0021】
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、互いに直交する第1方向D、第2方向D及び厚さ方向Tを有し、平面視にて、第1方向Dに長い縦長の略矩形状の外形形状を有する積層シートによって構成されている。なお、本発明において、動物用排泄物処理シートの外形形状は、このような略矩形状に限定されず、各種用途や意匠性等に応じて、正方形、多角形、円形、楕円形、角丸長方形等の任意の外形形状を採用できる。また、動物用排泄物処理シート1の平面視における外形寸法は、動物用排泄物処理シート1が適用される動物のサイズや種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、適用される動物が犬の場合、第1方向D(長手方向)の長さは400mm〜1200mmが挙げられ、第2方向D(幅方向)の長さは250mm〜800mmが挙げられる。
【0022】
動物用排泄物処理シート1は、厚さ方向Tにおいて、液透過性のシート状の繊維構造体からなる表面シート2と、液不透過性の樹脂フィルムからなる裏面シート4と、これらシート間に配置される吸液性の吸収体3と、を備えている。表面シート2は、動物から排出された排泄物の供給面となる第1面Fを形成する。裏面シート4は、供給面とは反対側の載置面(すなわち、動物用排泄物処理シート1が載置される床面・地面と対向する面)となる第2面Fを形成する。更に、動物用排泄物処理シート1は、平面視にて、中央部Aと、外周部Aと、を有している。中央部Aは、平面視にて、動物用排泄物処理シート1の中央に位置し、表面シート2、吸収体3及び裏面シート4が厚さ方向Tに重複する部分として区画される。外周部Aは、平面視にて、中央部Aを囲繞し、中央部Aの外縁から動物用排泄物処理シート1の外縁(すなわち第1方向Dの両端に位置する第1方向外縁E及び第2方向Dの両端に位置する第2方向外縁E)に向かって延出する。
【0023】
動物用排泄物処理シート1は、更に、疎水剤を含む止水部6を備えている。止水部6(の疎水剤)は、外周部Aにおいて、中央部Aを囲繞するように延在し、裏面シート4における第1面F側の表面から表面シート2における第1面F側の表面に亘って厚さ方向Tに配置されている。本実施形態において、止水部6の幅は、平面視では、ほぼ一定である。例えば、図2に示すように、第2方向Dの両端部に、第1方向Dに沿って延びる止水部6の幅や、第1方向Dの両端部に、第2方向Dに沿って延びる止水部6の幅は、概ね一定である。ただし、本実施形態では、幅が概ね一定とは、幅の最大値と幅の最小値との差が幅の最大値の30%以下、好ましくは20%以下であることをいう。ただし、本発明は、その態様に限定されるものではなく、止水部6の幅が部分的に太かったり、細かったりしていてもよく、排泄された尿が通り抜けできなければ部分的に途切れていてもよい。そして、本実施形態における止水部6は、動物用排泄物処理シート1の第1面Fから突出しないように露出している。
【0024】
本実施形態において、動物用排泄物処理シート1は、更に、接合部5を備えている。接合部5は、外周部Aにおいて、中央部Aを囲繞するように延在し、裏面シート4における第1面F側の表面と表面シート2における第1面F側の表面とを接合する。接合部5としては、例えばホットメルト型接着剤のような任意の接着剤による接合や熱融着による接合が挙げられる。本実施形態では、接合部5は、平面視で、止水部6よりも幅が広く、止水部6を含むように止水部6の全部と互いに重複している。ただし、接合部5は、平面視で、止水部6よりも幅が狭くてもよく、止水部6の一部のみと互いに重複してもよい。又は、接合部5及び止水部6は、平面視で、互いに重複せず、一方が他方に対して面方向の内側に位置してもよい。
【0025】
図5は、図4の動物用排泄物処理シートの囲み線Vで囲まれた要部の構成を示す拡大断面図である。この図では接合部5は省略されている。上述されたように止水部6は、厚さ方向Tにおいて、裏面シート4における第1面F側の表面から表面シート2における第1面F側の表面に亘って配置された疎水剤を含んでいる。すなわち、止水部6では、疎水剤が、厚さ方向Tにおいて、裏面シート4の第1面F側の表面と表面シート2の第1面F側の表面との間に連続的に配置されている。本実施形態では、厚さ方向Tに垂直な方向の疎水剤の幅は、表面シート2の第1面F側の領域2aから、止水部6における表面シート2の第2面F側の領域2bまで概ね同じである。ただし、表面シート2の第1面F側の領域2aとは、表面シート2における厚さ方向Tの第1面F側の半分の領域であり、表面シート2の第2面F側の領域2bとは、表面シート2における厚さ方向Tの第2面F側の半分の領域である。したがって、止水部6は、裏面シート4における第1面F側の表面から厚さ方向Tに起立した壁状の疎水剤で中央部Aを囲んでいる。ただし、疎水剤が壁状とは、隙間などが無い完全な壁を疎水剤が形成している場合だけでなく、排泄された尿が止水部6を通り抜けできなければ、部分的に隙間や空隙が存在したり、部分的に疎水剤が途切れた部分が存在したりする場合を含んでいる。排泄された尿が止水部6を通り抜けできない、とは、止水部6を通り抜ける尿の量がゼロである必要は無く、通り抜ける尿の量が非常に少なく、所定の許容範囲内であることを含む。許容範囲としては、例えば、平面視で、止水部6が延設される方向に垂直な方向に1時間当たり1mm以下滲む程度の量が挙げられる。本実施形態では、厚さ方向Tにおける面方向に平行な止水部6の幅は、ほぼ一定であるが、本発明はその態様に限定されない。すなわち、止水部6の幅は、部分的に太かったり、細かったりしていてもよく、排泄された尿が通り抜けできなければ部分的に途切れていてもよい。
【0026】
図6は、図2における動物用排泄物処理シート1に動物が尿Uを排泄した後の状態を模式的に示す平面図である。図7は、図6における動物用排泄物処理シート1の囲み線VIIで囲まれた要部の構成を示す拡大平面図である。
【0027】
このように、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、外周部Aに、裏面シート4の第1面F側の表面から表面シート2の第1面F側の表面に亘って厚さ方向Tに止水部6の疎水剤が配置されている。そのため、図6及び図7に示すように、そのため、動物から排泄された尿Uが、表面シート2の表面(第1面F)上を伝って面方向の外方側に移動してきても、表面シート2の表面付近に配置された疎水剤により、その移動を抑制できる。それにより、尿Uの「伝い漏れ」を抑制できる。そして、上述の止水部6は、疎水剤で形成されているため、動物用排泄物処理シート1がパッキングされたり、動物に踏まれたりしても止水作用が低下し難く、止水部6としての機能を十分に発揮することができ、「伝い漏れ」を安定的に抑制することができる。更に、動物から排泄された尿Uが表面シート2の内部を伝って面方向の外方側に移動してきても、表面シート2内に厚さ方向Tに亘って配置された疎水剤により、その移動を抑制できる。それにより、尿Uの「滲み漏れ」を抑制できる。よって、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1によれば、動物から排泄された尿Uを面方向の外方側へ漏れ難くすることが可能となる。
【0028】
動物用排泄物処理シート1は、展開した状態でペットのような動物の飼育空間(例示:室内)の所定位置に、表面シート2が排泄物の供給面側に位置するように載置される。そして、動物用排泄物処理シート1は、動物から尿などの排泄物が排泄されたとき、該排泄物を吸収及び保持して、飼育空間を清潔な状態に保つために使用される。更に、動物用排泄物処理シート1は、飼育空間の床面又は室外の地面に直接載置しても、ホルダーやトレイ、敷材などを介して載置してもよい。
【0029】
ここで、本動物用排泄物処理シート1が適用される「動物」は、ペット等として飼育され得る動物であれば特に制限されず、犬や猫、ハムスター等の様々な動物を対象とすることができる。また、本動物用排泄物処理シート1が吸収及び保持する対象の「排泄物」は、尿に限定されず、例えば、よだれ等の唾液、血液、低粘度の便などの液状ないし低粘度の各種体液を含む。なお、本明細書においては、便宜的に尿を対象として説明する。
【0030】
次に、第1の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造方法について説明する。図8は、実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造装置100の構成を示す模式図である。製造装置100は、疎水剤塗布部101と、接着剤塗布部102、押圧ロール103と、横断方向押圧ロール104と、搬送方向押圧ロール105とを備えている。
【0031】
連続表面シート112は、表面シート2用のシート状部材であり、表面シート2が第1方向Dに連結した形状を有する。そして、本製造方法では、連続表面シート112は、搬送方向MD及び横断方向CDがそれぞれ第1方向D及び第2方向Dと平行になるように、搬送ロールにより搬送方向MDに搬送される。連続表面シート112の搬送途中で、疎水剤塗布部101が、連続表面シート112の一方の面に接触しながら、一方の面の所定位置に疎水剤116を塗布する。疎水剤116を塗布される所定位置は、連続表面シート112における表面シート2の外周部Aに対応する位置である。すなわち、連続表面シート112における横断方向CDの両外縁近傍における搬送方向MDに平行な位置、及び、搬送方向MDに所定間隔ごと離れた横断方向CDに平行な位置である。疎水剤116は、連続表面シート112の一方の面に塗布されて内部に拡散するが、他方の面までは必ずしも到達しない。
【0032】
次いで、本製造方法では、連続表面シート112は、搬送ロールにより搬送方向MDに更に搬送される。連続表面シート112の搬送途中で、接着剤塗布部102が、連続表面シート112の一方の面に接触しながら、一方の面の所定位置に接着剤(図示されず)を塗布する。接着剤を塗布される所定位置は、疎水剤116を塗布される所定位置と概ね同じであるが、本実施の形態では、接着剤は疎水剤116よりも幅広に塗布される。
【0033】
連続裏面シート114は、裏面シート4用のシート状部材であり、裏面シート4が第1方向Dに連結した形状を有する。吸収体113は、吸収体3用の吸収性材料であり、実質的に吸収体3である。そして、本製造方法では、次いで、連続裏面シート114及び吸収体113が、搬送方向MD及び横断方向CDがそれぞれ第1方向D及び第2方向Dと平行になるように、それぞれ搬送ロールや搬送ベルトにより搬送方向MDに搬送される。更に、連続表面シート112が搬送ロールにより搬送方向MDに搬送される。そして、搬送ベルト上に連続裏面シート114、吸収体113及び連続表面シート112がこの順番に積層され、押圧ロール103で押圧される。このとき、連続表面シート112における接着剤を塗布された一方の面は、連続裏面シート114に接触するので、連続表面シート112と連続裏面シート114とが接着されて、接合部(図示されず)が形成される。それにより、連続裏面シート114、吸収体113及び連続表面シート112の積層体が搬送方向MD(第1方向D)に連結した連続処理シートが形成される。
【0034】
次いで、連続処理シートにおける疎水剤116が塗布された所定位置のうち、表面シート2の外周部Aに対応する位置であって、横断方向CD(第2方向D)に平行な位置を、横断方向押圧ロール104で押圧する。更に、連続処理シートにおける疎水剤116が塗布された所定位置のうち、表面シート2の外周部Aに対応する位置であって、搬送方向MD(第1方向D)に平行な位置を、搬送方向押圧ロール105で押圧する。なお、横断方向押圧ロール104及び搬送方向押圧ロール105の押圧の順番は逆でもよい。
【0035】
それにより、連続表面シート112における一方の面(連続裏面シート114側の表面)の近傍に存在する疎水剤116を、連続表面シート112における他方の面(連続裏面シート114と反対側の表面)にまで拡げることができる。すなわち、疎水剤116を、連続表面シート112の厚さ方向Tの全体に拡げることができる。したがって、連続裏面シート114における連続表面シート112側の表面から連続表面シート112における連続裏面シート114と反対側の表面に亘って厚さ方向Tに疎水剤116を配置できる。
【0036】
このようにして、動物用排泄物処理シート1が搬送方向MD(第1方向D)に連結した連続動物用排泄物処理シート111が形成される。その後、搬送方向MDの所定間隔で、横断方向CDに切断することで、動物用排泄物処理シート1が連続的に製造される。
【0037】
以下、本発明の動物用排泄物処理シートを構成する各種部材について、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1を用いて更に説明する。
【0038】
[表面シート]
本実施形態において、動物用排泄物処理シート1に用いられる表面シート2は、図1及び図2に示すように、平面視にて、第1方向Dに長い縦長の略矩形状の外形形状を有している。ただし、動物用排泄物処理シート1の第1方向Dにおける両側の第1方向外縁Eが短辺であり、第2方向Dにおける両側の第2方向外縁Eが長辺である。表面シート2は、厚さ方向Tにおいて、動物から排泄された尿を最初に受ける位置(供給面側の位置)に配置され、動物から排泄された尿を供給面から非供給面側(載置面側)に位置する吸収体3へと移行させる、液透過性のシート状部材によって構成されている。
【0039】
本発明において、表面シートとして用い得る液透過性のシート状部材としては、所定の液透過性を有するものであれば特に制限されない。そのシート部材としては、例えば、エアスルー不織布、SMS不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の不織布や織布、編布などのシート状の繊維構造体;樹脂フィルムに開孔を施した開孔フィルムなどが挙げられる。シート状の繊維構造体は、界面活性剤により親水化処理が施されていてもよい。これらの中でも、液透過性や強度、柔軟性などの観点から、シート状の繊維構造体が好ましく、更に嵩回復などの観点から、エアスルー不織布がより好ましい。
【0040】
また、表面シートとしてシート状の繊維構造体を用いる場合、その構成繊維は特に制限されない。その構成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂などの樹脂からなる熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。なお、熱可塑性樹脂繊維の構造は、特に制限されず、例えば、芯鞘型繊維等の複合繊維や異形断面型繊維、立体捲縮繊維などが挙げられる。
【0041】
更に、熱可塑性樹脂繊維は、例えば、界面活性剤や親水化剤等を用いた処理(例示:繊維内部への界面活性剤の練り込み、繊維表面への界面活性剤の塗布)などの親水化処理が施されていてもよい。また、熱可塑性樹脂繊維は、例えば、顔料や香料、消臭剤、抗菌剤などの任意の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0042】
本発明において、表面シートとして用い得るシート状部材の坪量は、シート状部材が所定の液透過性及び強度を有すれば特に制限されない。その坪量は、例えば6g/m〜30g/mの範囲内であり、好ましくは15g/m〜25g/mの範囲内である。シート状部材の坪量がこの範囲内にあると、表面シートとして所定の強度を有するため、動物用排泄物処理シートの上に犬などの動物が乗っても破れ難い。また、このシート状部材が繊維構造体からなる場合、構成繊維間の距離が所定の範囲内となるため、表面シートにおいて、尿を供給面側から載置面側へ移行させ易くなる。更に、表面シートを透過して吸収体に吸収された尿が、表面シートにおける繊維の密集した構造により視認され難くなる。
【0043】
本発明において、表面シートとして用い得るシート状部材の構成繊維の繊維密度は、所定の液透過性及び強度を有するものであれば特に制限されない。その繊維密度は、例えば0.2×10−2g/cm〜30×10−2g/cmの範囲内であり、好ましくは0.5×10−2g/cm〜25×10−2g/cmの範囲内である。シート状部材の構成繊維の密度がこのような範囲内にあると、表面シートにおいて、尿を供給面側から載置面側へ移行させ易くなる。
【0044】
特に、シート状部材における少なくとも外周部Aの止水部6に対応する部分の構成繊維の密度が、相対的に低い20×10−2g/cm以下の範囲内にあることが好ましい。シート状部材における外周部Aの止水部6に対応する部分の構成繊維の密度が相対的に低いと、構成繊維間の距離が相対的に増加する。そのため、次の式(1)で示される毛細管力hにおいて、構成繊維間の距離rが相対的に増加することにより、毛細管力hが相対的に低下する。
h=(2Tcosθ)/ρgr …(1)
ただし、式(1)において、T:表面張力、θ:接触角、ρ:尿の密度、g:重力加速度、r:構成繊維間の距離、である。したがって、止水部6において毛細管力hが相対的に低く抑えられるため、中央部Aから外周部Aの止水部6へ向かう動物の尿の拡散が相対的に低く抑えられ、止水部6の止水作用をアシストすることができる。それにより、止水部6は止水効果をより効果的に奏することができる。なお、供給面側から載置面側への尿の移行は、シート状部材の厚さ方向Tでの尿の拡散であり、移動距離が短いため、上記の毛細管力の減少はほとんど影響しない。
【0045】
本実施形態では、表面シート2のシート状部材として嵩回復されたエアスルー不織布を用いている。すなわち、エアスルー不織布を、加熱雰囲気を通過させたり、熱風を吹きかけたりすること等により嵩回復させることができる。嵩回復されたエアスルー不織布は嵩が高い(厚さが厚い)ので、繊維密度が低く、したがって構成繊維間の距離が相対的に大きくなっている。それにより、上述の式(1)から表面シート内での毛細管力hが低下し、動物から排泄された尿が、表面シートの内部を移動してきても、止水部近傍に到達し難くでき、到達したとしても、毛細管力が低いため、疎水剤により尿の移動をより容易に抑制できる。このように、エアスルー不織布は、嵩回復の処理により、構成繊維間の距離を極めて容易に拡げて所望の範囲内にすることができ、好ましい。
【0046】
また、表面シートの構造は、表面シートとして用い得る所定の液透過性を有するものであれば特に制限されず、表面シートは、本実施形態のように略平坦な構造を有するものや排泄物の供給面側の表面に凹凸構造を有するものなどを好適に用いることができる。特に、排泄物の供給面側の表面に凹凸構造を有する表面シートは、尿を厚さ方向に透過させる液透過性に優れる上、尿が表面シートの表面を伝わり難い。そのため、凹凸構造を有する表面シートは、動物用排泄物処理シートの第1面に供給された尿を吸収体に素早く移行させることができ、更に面方向の外方側への尿の漏れを、より一層生じ難くできる。
【0047】
なお、表面シートの凹凸構造の形態は、尿などの液の移行を促進し得るものであれば特に制限されない。凹凸構造の形態としては、例えば平面視にて、表面シートの所定方向に延び、該所定方向に直交する方向に所定間隔で並ぶ複数の直線状の凸条部と、隣り合う凸条部の間に位置し、凸条部と並行して延びる複数の直線状の凹溝部と、を備える凹凸構造が挙げられる。ただし、凸条部の内部構造は、中空でもよいし、中実でもよい。別の凹凸構造の形態としては、例えば、略平坦な基部上に半球状や円柱状等の凸部が複数個配置された凹凸構造が挙げられる。更に別の凹凸構造の形態としては、例えば、表面シートの供給面側の表面の略全体に亘って凸部と凹部が不規則に形成された凹凸構造が挙げられる。これら凹凸構造を形成する手段は、特に制限されず、例えば、繊維ウェブに連続的に気体(例示:空気)を吹き付ける方法や圧縮成形法、ギア延伸法などの任意の賦形方法を採用することができる。
【0048】
また、表面シートとして用い得るシート状部材の寸法形状や厚み等は、かかるシート状部材が動物用排泄物処理シートの表面シートとして機能し得るものであれば特に制限されず、所望の液透過性や強度等に応じた任意の寸法形状や厚み等を採用することができる。
【0049】
[吸収体]
本実施形態において、動物用排泄物処理シート1に用いられる吸収体3は、図2に示すように、平面視にて、四角形の外形形状を有している。その四角形は、動物用排泄物処理シート1の第2方向に延びる中央軸線Cを第1方向Dに跨いで延在すると共に、第1方向Dに延びる中央軸線Cを第2方向Dに跨いで延在する。吸収体3は、動物用排泄物処理シート1の厚さ方向Tにおいて、表面シート2と裏面シート4との間に配置され、表面シート2を透過してきた尿を吸収して保持する吸収性部材により構成されている。表面シート2と吸収体3は、ホットメルト型接着剤等の任意の接着剤(図示されず)により接合されている。該接着剤は、排泄物の透過を妨げない程度の坪量(例示:0.1g/m〜10g/m)及び塗工形態(例示:フィルム状(カーテン塗工)、スパイラル状、ドット状、ストライプ状)で、表面シート2と吸収体3の間に配置されている。
【0050】
吸収体3は、平面視にて、表面シート2及び裏面シート4よりも一回り小さい外形寸法を有していて、動物用排泄物処理シート1の中央領域に配置されている。よって、動物用排泄物処理シート1は、平面視で表面シート2、吸収体3及び裏面シート4が厚さ方向Tに重複する部分である中央部Aと、中央部Aを囲繞し、中央部Aの外縁から動物用排泄物処理シート1の外縁に向かって延出する外周部Aと、に区画される。
【0051】
吸収体3は、図4に示すように、親水性の有色シート31と、吸収コア32と、コアラップシート33と、を備えている。有色シート31は、厚さ方向Tにおいて、相対的に供給面側に位置し、青色や緑色、黄色、オレンジ色等の任意の色に着色されている。吸収コア32は、厚さ方向Tにおいて、相対的に非供給面側に位置し、排泄物を吸収し保持するための吸収性材料によって形成されている。コアラップシート33は、これらの有色シート31及び吸収コア32を非供給面側から被覆しており、少なくとも1枚の液透過性シートからなる。更に、吸収コア32は、図4に示すように、第1吸収コア321と、第2吸収コア322と、を備えている。第1吸収コア321は、厚さ方向Tにおいて、相対的に供給面側に位置し、吸収性ポリマー321aによって構成されている。第2吸収コア322は、厚さ方向Tにおいて、相対的に非供給面側に位置し、吸収性ポリマー322a及び吸水性繊維322bによって構成されている。
【0052】
第1吸収コア321は、図4に示すように、上述の有色シート31と第2吸収コア322の間において面状に分散した状態で配置された、粒状の吸収性ポリマー321aによって構成されている。第2吸収コア322は、上述の第1吸収コア321とコアラップシート33の間において面状に分散した状態で配置された、粒状の吸収性ポリマー322aと吸水性繊維322bとの混合物によって構成されている。
【0053】
第1吸収コア321を構成する吸収性ポリマー321aと、第2吸収コア322を構成する吸収性ポリマー322aは、同一の吸収性ポリマーであっても、異なる吸収性ポリマーであってもよい。これら吸収性ポリマーは、尿などの排泄物を吸収及び保持し得るものであれば特に制限されず、例えば、ポリアクリル酸系(例示:アクリル酸ナトリウムコポリマー)、デンプン系、セルロース系等の任意の高吸水性ポリマーを採用することができる。吸収性ポリマーの坪量は特に制限されないが、吸収性等の点から、吸収性ポリマー321aの坪量は20g/m〜50g/mの範囲内であることが好ましく、吸収性ポリマー322aの坪量は8g/m〜30g/mの範囲内であることが好ましい。
【0054】
第2吸収コア322に含まれる吸水性繊維は、尿などの排泄物を吸収及び保持し得るものであれば特に制限されず、例えば、フラッフパルプ等のパルプ、コットンなどのセルロース系吸水性繊維を用いることができる。吸水性繊維の坪量は、特に制限されないが、吸収性の点から、30g/m〜115g/mの範囲内であることが好ましい。
【0055】
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、吸収体3の吸収コア32が上述の第1吸収コア321及び第2吸収コア322により構成されている。そのため、表面シート2を透過してきた尿は、第2吸収コア322に含まれる吸水性繊維322bの親和力によって、第1吸収コア321の吸収性ポリマー321aの間を通過して第2吸収コア322に引き込まれ易くなっている。これにより、動物用排泄物処理シート1は、表面シート2を透過してきた尿を迅速に吸収体3に吸収させることができるため、尿が動物用排泄物処理シート1の面方向の外方側へ流れ難く、該面方向の外方側への尿の漏れを、より生じ難くすることができる。更に、本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、動物が第1面F上に乗ったとき、動物の足から掛かる圧力により第2吸収コア322に含まれる吸水性繊維322bの間に保持された尿が滲み出てきたとしても、この滲み出てきた尿を滲出させ難くできる。その理由は、第2吸収コア322に含まれる吸収性ポリマー322aと、第2吸収コア322の供給面側に位置する第1吸収コア321の吸収性ポリマー321aとによって、その滲み出てきた尿を吸収することができるからである。
【0056】
また、本第1の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、吸収体3が第1吸収コア321の吸収性ポリマー321aと、第2吸収コア322の吸収性ポリマー322a及び吸水性繊維322bとを吸収性材料として含んでいる。そのため、吸収体全体としての保水量が大きく、尿などの排泄物を長時間に亘って確実に吸収及び保持することができる。
【0057】
なお、本発明において、吸収体として用い得る吸収性部材は、尿などの排泄物を吸収して保持し得るものであれば本実施形態の態様のものに限定されず、当分野において公知の任意の吸収性部材を用いることができる。また、吸収性部材は、本実施形態のような2層の吸収コアを備えた2層構造の吸収性部材のほか、単一層の吸収コアを備えた単層構造や3層以上の吸収コアを備えた多層構造の吸収性部材であってもよい。
【0058】
本実施形態において、有色シート31は、青色、緑色、黄色、オレンジ色等の任意の色に着色されたティッシュペーパーにより構成されており、図4に示すように、吸収体3において、吸収コア32の供給面側(表面シート側)の表面を覆うように配置されている。ただし、ティッシュペーパーは、例えば、針葉樹晒クラフトパルプを主原料として形成された、坪量が13.5g/m程度のティッシュペーパーが挙げられる。この有色シート31は、コアラップシート33と協働して吸収コア32の型崩れを防止すると共に、吸収コア32に吸収された尿の色を、有色シート31の色彩に紛れさせて目立たなく(すなわち、吸収体3に吸収された排泄物が供給面側から視認し難く)できる。
【0059】
本実施形態において、有色シート31は、シート全体が任意の色に着色されているが、本発明においては、このような態様に限定されず、有色シートは、部分的に着色されていてもよい。また、有色シートの着色形態も特に制限されず、有色シートは、単一の色彩に着色されていても、複数種類の色彩に着色されていてもよく、また、所定の色彩を伴った模様や柄、キャラクター等の任意の形態で着色することができる。このような有色シートは、例えば、着色前の基材シート(例示:ティッシュペーパー、エアスルー不織布等の不織布)に、染色や印刷などの任意の着色手段を用いて着色することにより得られる。
【0060】
本実施形態において、コアラップシート33は、上述の有色シート31と同様のティッシュペーパー(例示:針葉樹晒クラフトパルプを主原料として形成された、坪量が13.0g/m〜13.5g/mのティッシュペーパー等)によって構成されている。コアラップシート33は、図4に示すように、吸収体3において、有色シート31及び吸収コア32を非供給面側(すなわち、裏面シート側)から被覆するように配置されている。このようなコアラップシート33を備えていることにより、動物用排泄物処理シート1は、吸収コア32の型崩れや有色シート31の位置ズレ等が生じにくくなっている。本発明において、コアラップシートは、液透過性を有し且つ吸収コアの型崩れ等を防止し得るものであれば特に制限されず、上述のティッシュペーパーのほか、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布などの任意の不織布を用いることができる。
【0061】
本実施形態においては、吸収体3は、図1及び図2に示すように、平面視にて四角形の外形形状を有しているが、本発明においては、このような態様に限定されず、吸収体は、例えば、円形、楕円形等の四角形以外の任意の平面視形状を有していてもよい。更に、本発明においては、吸収体の配置される位置も、動物用排泄物処理シートが上述の中央部と外周部に区画され得る限り特に限定されず、吸収体は、平面視にて、動物用排泄物処理シートの中心に対して任意の方向に一定程度偏って配置されていてもよい。
【0062】
なお、吸収体として用い得る吸収性部材の外形寸法や厚み、坪量等は、かかる吸収性部材が動物用排泄物処理シートの吸収体として機能し得るものであれば特に制限されない。そそれら外形寸法や厚み、坪量等は、当該動物用排泄物処理シートが適用される動物のサイズや種類等に応じた任意の外形寸法や厚み、坪量等を採用することができる。
【0063】
[裏面シート]
本実施形態において、動物用排泄物処理シート1に用いられる裏面シート4は、平面視にて、第1方向Dに長い縦長の略矩形の外形形状を有している。ただし、動物用排泄物処理シート1の第1方向Dにおける両側の第1方向外縁Eが短辺であり、第2方向Dにおける両側の第2方向外縁Eが長辺である。裏面シート4は、動物用排泄物処理シート1の厚さ方向Tにおいて、該動物用排泄物処理シート1が載置される床面又は地面と対向する位置(すなわち、非供給面側の位置)に配置される。裏面シート4は、動物用排泄物処理シート1に吸収及び保持された尿の漏洩を防ぐように機能する、液不透過性のシート状部材によって構成されている。
【0064】
本発明において、裏面シートとして用い得る液不透過性のシート状部材としては、所定の液不透過性を有するものであれば特に制限されない。そのシート状部材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等によって形成された樹脂フィルム、該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体、各種樹脂フィルム同士を積層した撥水性又は疎水性の不織布などが挙げられる。積層樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレン/ポリプロピレンの積層フィルムが挙げられる。
【0065】
更に、裏面シートとして用い得るシート状部材の坪量は、所定の液不透過性及び強度を有するものであれば特に制限されず、例えば、5g/m〜30g/mの範囲内であり、好ましくは15g/m〜20g/mの範囲内である。
【0066】
また、裏面シートは、上述の表面シートと同様に、吸収体を非供給面側から覆うことができる外形形状及び寸法を有しており、本実施形態においては、裏面シート4は、平面視にて、表面シート2と略同一の外形形状及び寸法を有している。なお、裏面シートとして用い得るシート状部材の寸法形状や厚み等は、かかるシート状部材が動物用排泄物処理シートの裏面シートとして機能し得るものであれば特に制限されず、所望の液不透過性や強度等に応じた任意の寸法形状や厚み等を採用することができる。
【0067】
[接合部]
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、図1図4に示すように、外周部Aにおいて、中央部Aを囲繞するように延在し且つ表面シート2と裏面シート4とがホットメルト型接着剤等の任意の接着剤を介して接合された接合部5を備えている。接合部5は、接着剤が少なくとも表面シート2の非供給面側の表面から厚さ方向に一定程度浸み込み、表面シート2の構成繊維間に入り込んだ状態で固まっている。そのため、表面シート2と裏面シート4の接合強度を十分に確保しつつ、供給面に排泄された尿や吸収体から漏れ出た尿が表面シート2の内部を伝って面方向の外方側に漏れる滲み漏れを抑制でき、尿を動物用排泄物処理シート1の面方向の外方側へ漏れ難くできる。
【0068】
本発明において、接合部に用いられる接着剤の塗工量及び塗工形態は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、任意の塗工量及び塗工形態を採用することができる。塗工量としては、例えば、0.1g/m〜10g/mが挙げられる。塗工形態としては、例えば、1本又は複数本の直線状、帯状、スパイラル状、オメガ状、ジグザグ状等で接着剤を塗工する形態が挙げられる。
【0069】
なお、別の実施形態として、接合部5は、表面シート2及び裏面シート4を形成する繊維構造体の構成繊維同士が溶融した状態で融着した融着部によって構成されていてもよい。その場合、接合部5は、平面視で、止水部6よりも面方向の外側又は内側に、止水部6と重複しないように形成されることが好ましい。
【0070】
[止水部]
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1は、外周部Aにて、中央部Aを囲繞するように延在し、裏面シート4における第1面F側の表面から表面シート2における第1面F側の表面に亘って厚さ方向Tに配置された疎水剤を含む止水部6を備えている。
【0071】
止水部6を備えることで、動物用排泄物処理シート1は、図6及び図7に示すように、排泄された尿Uが、表面シート2の表面(第1面F)上を伝って面方向の外方側に移動してきても、表面シート2の表面付近に配置された疎水剤により、その移動を抑制できる。それにより、尿Uの「伝い漏れ」を抑制できる。そして、上述の止水部6は、疎水剤で形成されているため、動物用排泄物処理シート1がパッキングされたり、動物に踏まれたりしても止水作用が低下し難く、止水部6としての機能を十分に発揮することができ、「伝い漏れ」を安定的に抑制することができる。更に、動物から排泄された尿Uが表面シート2の内部を伝って面方向の外方側に移動してきても、表面シート2内に厚さ方向Tに亘って配置された疎水剤により、その移動を抑制できる。それにより、尿Uの「滲み漏れ」を抑制できる。
【0072】
本発明において、動物用排泄物処理シートの止水部を形成する疎水剤は、疎水性を有する剤であり、シート部材に疎水作用を有する部分を形成し得るものであれば特に制限されず、例えば、撥水剤や親油剤(親油性を有する剤)が挙げられる。撥水剤としては、パラフィン系撥水剤、シリコン系撥水剤、フッ素系撥水剤、又はそれらのうちの少なくとも二つの撥水剤の組み合わせが挙げられる。親油剤としては、トリグリセリド系親油剤、ワックス系親油剤、酢酸ビニル系親油剤、又はそれらのうちの少なくとも二つの親油剤の組み合わせが挙げられる。ワックス系親油剤は、例えばウレタン樹脂ワックス、アクリル樹脂ワックスが挙げられ、酢酸ビニル系親油剤は、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)が挙げられる。また、疎水剤として、撥水剤と親油剤とを組み合わせて用いてもよい。特に、疎水剤が撥水剤を含む場合(撥水剤が100%の場合を含む)、動物用排泄物処理シートは止水部6の撥水剤により動物から排泄された尿の移動をより確実に抑制できて、好ましい。
【0073】
本実施形態において、止水部6は、図5に示すように、厚さ方向Tに略壁状に中央部Aを囲繞しているが、本発明においては、このような態様に限定されない。例えば、表面シート2がシート状の繊維構造体によって構成されている場合、止水部6の疎水剤は、少なくとも繊維構造体の構成繊維の表面に被覆される。この場合、止水部6が形成された領域において、排泄された尿が通り抜けできなければ、疎水材が、該領域における全ての構成繊維の表面を被覆する必要は無く、一部の構成繊維の表面を被覆していればよい。その場合、疎水材が、該領域における一部の構成繊維の各々において、全ての表面を被覆する必要は無く、一部の表面を被覆していればよい。そのとき、該領域における全ての構成繊維間の空隙を埋める必要は無い。それにより、動物から排泄された尿が、表面シートの表面又は内部を面方向の外方側に移動してきても、構成繊維の表面に配置された疎水剤により、その移動をより抑制できる。疎水剤に被覆される構成繊維の割合は、例えば止水部6の領域の全構成繊維の70%以上が挙げられ、好ましくは80%以上が挙げられ、より好ましくは90%以上が挙げられる。あるいは、疎水剤に被覆される構成繊維の表面積の割合は、例えば止水部6の領域の全構成繊維の全表面積の70%以上が挙げられ、好ましくは80%以上が挙げられ、より好ましくは90%以上が挙げられる。
【0074】
あるいは、例えば、止水部6の疎水剤は、少なくとも繊維構造体の構成繊維間の空隙に充填される。この場合、止水部6が形成された領域において、排泄された尿が通り抜けできなければ、疎水材が、該領域における全ての構成繊維間の空隙に充填される必要は無く、一部の構成繊維間の空隙に充填されていればよい。そのとき、該領域における全ての構成繊維の表面を被覆する必要は無い。疎水剤に充填される構成繊維間の空隙の割合は、例えば止水部6の領域の全空隙の70%以上が挙げられ、好ましくは80%以上が挙げられ、より好ましくは90%以上が挙げられる。
【0075】
あるいは、止水部6は、上述の両者の組み合わせであってもよい。すなわち、止水部6の疎水剤は、構成繊維の一部又は全部における表面の一部または全部に被覆され、かつ、構成繊維間の空隙の一部または全部に充填されてもよい。
【0076】
本発明において、疎水剤の塗工量等は、疎水剤によって形成される止水部が動物用排泄物処理シートの止水部として機能し得るものであれば特に制限されず、任意の塗工量等を採用することができる。また、疎水剤は、本発明の効果を阻害しない限り、色素や香料等の任意の添加成分を含んでいてもよい。例えば、疎水剤が食紅等の色素を含むものであると、疎水剤によって形成される有色の止水部は、動物用排泄物処理シートに尿が供給される前においても、目視で視認しやすい。そのため、動物の飼い主がこの疎水剤からなる止水部を視認することで、この止水部を備えた動物用排泄物処理シートが、尿を外部へ漏らしにくい動物用排泄物処理シートであるとの安心感を、飼い主に醸成することができる。
【0077】
本実施形態において、止水部6は、図2に示すように、上述の接合部5と厚さ方向Tに重複する部分が中央部Aを囲繞するように延在しているが、本発明においては、このような態様に限定されない。例えば、本発明の動物用排泄物処理シートが適用される動物の習性や動物用排泄物処理シートの配置形態(例示:壁面に沿うようにして床面上に配置される形態等)によって動物の尿が面方向の外方側へ漏れにくい部分が存在する場合が考え得る。その場合には、止水部6は、該部分には配置せずに、尿が面方向の外方側へ漏れ出るおそれがある部分のみに配置してもよい。
【0078】
本実施形態において、止水部6は、図2に示すように、動物用排泄物処理シート1の中央部Aに位置する吸収体3の面方向の外方側(外周部A)において、動物用排泄物処理シート1の外縁に沿って、吸収体3を囲繞するように連続的に配置されている。すなわち、止水部6は、外周部Aにおいて、第1方向Dの両端に位置する第1方向外縁E及び第2方向Dの両端に位置する第2方向外縁Eのそれぞれに沿って、吸収体3を囲繞するように連続的に配置されている。ただし、本発明において、止水部の配置形態は、該止水部の止水作用を発揮し得る形態であれば本実施形態の態様に限定されず、止水部は任意の態様で配置することができる。止水部は、第1方向及び第2方向のうちの少なくとも一方の方向において、吸収体と重複するように配置されていることが好ましい。その場合、止水部及び止水部と厚さ方向に重複する接合部が、第1方向及び第2方向のうちの少なくとも一方向で吸収体と重複するため、動物用排泄物処理シートの中央部に排泄された尿の伝い漏れが抑制し易く、吸収体から漏れ出た尿の滲み漏れも抑制し易くなる。ただし、止水部が所定の一方向(例示:第1方向)において吸収体と重複するとは、平面視にて、吸収体の外形形状を所定の一方向に投影させたときに、止水部がその投影させた吸収体の範囲内に存在することを意味する。言い換えると、吸収体の外形形状における所定の一方向に直交する他方向(例示:第2方向)の両端縁を所定の一方向に延長した2本の仮想直線の間に、止水部が存在することを意味する。
【0079】
更に、止水部が第1方向及び第2方向のうちの少なくとも一方の方向に沿って連続的に延在していると、該止水部の延在方向と交差する方向(すなわち、止水部を横断する方向)に流れる尿の流路を遮断することができる。そのため、動物用排泄物処理シートの面方向の外方側への尿の漏れを、より一層生じにくくすることができる。
【0080】
本発明においては、止水部は、疎水剤を含む部分の他に、又は、該部分に重複して、融着部及び/又は圧搾部を更に備えていてもよい。融着部及び/又は圧搾部は、例えば、止水部よりも面方向の外側及び/又は外側に配置し得る。融着部は、動物用排泄物処理シートの外周部における表面シート及び裏面シートが厚さ方向に融着された部分である。融着部は、例えば、ヒートシーラー等の加熱融着手段や超音波融着手段等により形成できる。圧搾部は、動物用排泄物処理シートの外周部における表面シート及び裏面シートが厚さ方向に圧搾された部分である。圧搾部は、エンボス加工等の任意の圧搾加工手段により形成できる。止水部がこのような融着部や圧搾部を更に備えていると、該止水部において、表面シートの供給面から裏面シートの非供給面までの間に、尿の流路となり得る隙間が更に形成され難くなる。そのため、該止水部が動物用排泄物処理シートの面方向の外方側に向かって流れる尿の流路をより確実に遮断することができる。更に、止水部が融着部や圧搾部を更に備えていると、表面シートと裏面シートとをより高い接合強度で接合させることができる。それにより、表面シートと裏面シートとがより離間し難く、吸収体から漏れ出た尿を長期間に亘って漏れ難くすることができる。
【0081】
本実施形態においては、止水部6は、平面視にて、第1方向Dに延在する直線状の止水部と、第2方向Dに延在する直線状の止水部とを井桁状に組み合わせた態様で配置されている。ただし、本発明においては、止水部の配置態様は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されない。止水部は、例えば、第1方向及び第2方向の少なくとも一方向に延在する直線状、波線状、ジグザグ状若しくは破線状の態様、又はこれらの態様を任意に組み合わせた態様で配置することができる。その態様としては、例えば、平面視にて、吸収体を囲繞する井桁状、四角形状、L字形状、平行線状等の態様や、止水部の延在する方向に直交する方向に並ぶ多重線状の態様が挙げられる。
【0082】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の構成について説明する。第2の実施形態の動物用排泄物処理シート1は、第1の実施形態の動物用排泄物処理シート1とは止水部の構成が相違する。よって、以下では、第1の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0083】
図9は、図4の動物用排泄物処理シートの囲み線Vで囲まれた要部の他の構成を示す拡大断面図である。本実施形態の止水部6では、止水部6における表面シート2の第1面F側の領域2aに対応する部分6aの幅Wが、止水部6における表面シート2の第2面F側の領域2bに対応する部分6bの幅Wよりも広い。ここで、表面シート2の第1面F側の領域2aに対応する部分6aとは、表面シート2における厚さ方向Tの第1面F側の半分の領域2aに存在する疎水剤を含む部分である。表面シート2の第2面F側の領域2bに対応する部分6bとは、表面シート2における厚さ方向Tの第2面F側の半分の領域2bに存在する疎水剤を含む部分である。
【0084】
そのため、本動物用排泄物処理シート1は、第1の実施形態と同様の効果を奏することができると共に、以下の効果を奏することができる。すなわち、動物から排泄された尿が、表面シート2の内部を移動してきて止水部6近傍に達したとしても、止水部6の部分6aにより、表面シート2の第1面F側の表面に漏れ出てくることをより抑制できる。それにより、尿の「伝い漏れ」をより抑制できる。
【0085】
ここで、厚さ方向Tにおける部分6aの幅Wが部分6bの幅Wよりも広い、というとき、部分6aの幅Wの最大値が、部分6bの幅Wの最大値よりも大きいことを意味する。部分6aの幅Wの最大値の厚さ方向Tの位置は、特に制限はないが、「伝い漏れ」をより抑制する観点から、部分6aの厚さのうち、少なくとも第1面F側の50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。また、部分6aの幅Wが最大値となる厚さ方向Tの厚さは、特に制限はないが、「伝い漏れ」をより抑制する観点から、部分6aの厚さのうち、50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。
【0086】
更に、中央部Aを囲繞する止水部6のすべての領域が本実施形態(図9)の態様を有する必要はなく、少なくとも一部の領域が該態様を有していれば、当該領域において、上記効果を奏することができる。
【0087】
次に、第2の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造方法について説明する。第2の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法は、第1の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法とは止水部の形成方法が相違する。よって、以下では、第1の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0088】
図10は、実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造装置100の構成を示す模式図である。製造装置100は、疎水剤塗布部101と、接着剤塗布部102、押圧ロール103と、横断方向押圧ロール104と、搬送方向押圧ロール105、サクション部106とを備えている。
【0089】
本製造方法では、第1の実施形態の工程と同様に、一方の面の所定位置に疎水剤116を塗布された連続表面シート112が搬送ロールにより搬送方向MDに搬送される。その後、連続表面シート112の搬送途中で、サクション部106が、連続表面シート112の他方の面を吸引する。それにより、連続表面シート112の主に一方の面に存在する疎水剤116が、他方の面に向かって吸引される。そして、疎水剤116が連続表面シート112の一方の面から移動されて他方の面へ到達して、吸引により搬送方向MD及び横断方向CDに拡がる。その結果、疎水剤116における連続表面シート112の他方の面(疎水剤を塗布されない面)側の領域に対応する部分の幅が、疎水剤116における連続表面シート112の一方の面(疎水剤を塗布される面)側の領域に対応する部分の幅よりも広くなる。なお、連続表面シート112の一方の面は、吸収体113や連続裏面シート114と接合される面である。その後、第1の実施形態と同様の工程が実施される。
【0090】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の構成について説明する。第3の実施形態の動物用排泄物処理シート1は、第2の実施形態の動物用排泄物処理シート1とは止水部の構成が相違する。よって、以下では、第2の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0091】
図11は、図4の動物用排泄物処理シートの囲み線Vで囲まれた要部の他の構成を示す拡大断面図である。本実施形態の止水部6では、止水部6における表面シート2の第2面F側の領域2bに対応する部分6bの幅Wが、止水部6における表面シート2の第1面F側の領域2aに対応する部分6aの幅Wよりも広い。
【0092】
そのため、本動物用排泄物処理シート1は、第1の実施形態と同様の効果を奏することができると共に、以下の効果を奏することができる。すなわち、動物から排泄された尿が、表面シート2の内部を移動してきて止水部6近傍に達しても、止水部6の部分6bにより、表面シート2の第2面F側の表面、すなわち表面シート2と裏面シート4との間を伝って、外方側に漏れ出てくることをより抑制できる。それにより、尿の「滲み漏れ」をより抑制できる。
【0093】
ここで、厚さ方向Tにおける部分6bの幅Wが部分6aの幅Wよりも広い、というとき、部分6bの幅Wの最大値が、部分6aの幅Wの最大値よりも大きいことを意味する。部分6bの幅Wの最大値の厚さ方向Tの位置は、特に制限はないが、「滲み漏れ」をより抑制する観点から、部分6bの厚さのうち、少なくとも第2面F側の50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。また、部分6bの幅Wが最大値となる厚さ方向Tの厚さは、特に制限はないが、「滲み漏れ」をより抑制する観点から、部分6bの厚さのうち、50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。
【0094】
更に、中央部Aを囲繞する止水部6のすべての領域が本実施形態(図11)の態様を有する必要はなく、少なくとも一部の領域が該態様を有していれば、当該領域において、上記効果を奏することができる。
【0095】
次に、第3の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造方法について説明する。第3の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法は、第2の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法とは止水部の形成方法が相違する。よって、以下では、第2の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0096】
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造装置(図示されず)は、図10に記載の第2の実施形態の製造装置100と比較すると、以下の点で相違している。すなわち本製造装置は、疎水剤塗布部101が連続表面シート112の他方の面側に配置され、サクション部106が連続表面シート112の一方の面側に配置されている。
【0097】
本製造方法では、連続表面シート112の搬送途中で、疎水剤塗布部101が、連続表面シート112の他方の面に接触しながら、他方の面の所定位置に疎水剤116を塗布する。次いで、連続表面シート112の搬送途中で、サクション部106が、連続表面シート112の一方の面を吸引される。それにより、連続表面シート112の主に他方の面に存在する疎水剤116が、一方の面に向かって吸引される。そして、疎水剤116が連続表面シート112の他方の面から移動されて一方の面へ到達して、吸引により搬送方向MD及び横断方向CDに拡がる。その結果、疎水剤116における連続表面シート112の一方の面(疎水剤を塗布されない面)側の領域に対応する部分の幅が、疎水剤116における連続表面シート112の他方の面(疎水剤を塗布される面)側の領域に対応する部分の幅よりも広くなる。連続表面シート112の一方の面は、吸収体113や連続裏面シート114と接合される面である。その後、第2の実施形態と同様の工程が実施される。
【0098】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の構成について説明する。第4の実施形態の動物用排泄物処理シート1は、第1の実施形態の動物用排泄物処理シート1とは止水部の構成が相違する。よって、以下では、第1の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0099】
本実施形態では、図5において、表面シート2における止水部6の第1面F側の部分6aに対応する領域2aの繊維密度が、表面シート2における止水部6の第2面F側の部分6bに対応する領域2bの繊維密度よりも低い。
【0100】
そのため、本動物用排泄物処理シート1は、第1の実施形態と同様の効果を奏することができると共に、以下の効果を奏することができる。すなわち、表面シート2の第1面F側の領域2aでは、隣り合う構成繊維の間隔が相対的に広くなっている。それゆえ、その第1面F側の領域2aでの毛細管力が相対的に低くなっている。その結果、動物から排泄された尿が、表面シート2の内部を拡散して、止水部6近傍に到達し難くすることができる。また、排泄された尿が、止水部6近傍に到達したとしても、第1面F側の領域2aでの毛細管力の低下及び疎水剤により、表面シート2の第1面F側の表面に漏れ出てくることをより抑制できる。それにより、尿の「伝い漏れ」をより抑制できる。
【0101】
ここで、表面シート2の領域2aの繊維密度が領域2bの繊維密度よりも低い、というとき、領域2aの繊維密度の最小値が、領域2bの繊維密度の最小値よりも低いことを意味する。領域2aの繊維密度の最小値の厚さ方向Tの位置は、特に制限はないが、「伝い漏れ」をより抑制する観点から、領域2aの厚さのうち、少なくとも第1面F側の50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。また、領域2aの繊維密度が最小値となる厚さ方向Tの厚さは、特に制限はないが、「伝い漏れ」をより抑制する観点から、領域2aの厚さのうち、50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。
【0102】
更に、表面シート2のすべての領域が本実施形態の態様を有する必要はなく、外周部Aの領域が該態様を有していれば、当該領域において、上記効果を奏することができる。また、外周部Aのすべての領域が本実施形態の態様を有する必要はなく、少なくとも一部の領域が該態様を有していれば、当該領域において、上記効果を奏することができる。
【0103】
次に、第4の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造方法について説明する。第4の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法は、第1の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法において、止水部の形成方法が相違する。よって、以下では、第1の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0104】
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造装置(図示されず)は、図8に記載の第1の実施形態の製造装置100と比較すると、以下の点で相違する。すなわち、本製造装置は、疎水剤塗布部101の前に、連続表面シート112の他方の面を加熱して、連続表面シート112の他方の面側の領域を嵩回復させる嵩回復装置(図示されず)が配置されている。
【0105】
本製造方法では、連続表面シート112が搬送ロールにより搬送方向MDに搬送されつつ、嵩回復装置(図示されず)により他方の面を加熱される。他方の面が加熱されることにより、連続表面シート112の他方の面側の領域(領域2aに対応)が嵩回復して、厚さが厚くなる。一方、連続表面シート112の一方の面は加熱されないため、連続表面シート112の一方の面側の領域(領域2bに対応)ほとんど嵩回復せず、厚さはほとんど変わらない。その後、第1の実施形態と同様の工程が実施される。
【0106】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の構成について説明する。第5の実施形態の動物用排泄物処理シート1は、第1の実施形態の動物用排泄物処理シート1とは止水部の構成が相違する。したがって、以下では、第1の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0107】
本実施形態では、図5において、表面シート2における止水部6の第2面F側の部分6bに対応する領域2bの繊維密度が、表面シート2における止水部6の第1面F側の部分6aに対応する領域2aの繊維密度よりも低い。
【0108】
そのため、本動物用排泄物処理シート1は、第1の実施形態と同様の効果を奏することができると共に、以下の効果を奏することができる。すなわち、表面シート2の第2面F側の領域2bでは、隣り合う構成繊維の間隔が相対的に広くなっている。それゆえ、その第2面F側の領域2bでの毛細管力が相対的に低くなっている。その結果、動物から排泄された尿が、表面シート2の内部を拡散して、止水部6近傍に到達し難くすることができる。また、排泄された尿が、止水部6近傍に到達しても、第2面F側の領域2bでの毛細管力の低下及び疎水剤により、表面シート2と裏面シート4との間を伝って外方側に漏れ出てくることをより抑制できる。それにより尿の「滲み漏れ」をより抑制できる。
【0109】
ここで、表面シート2の領域2bの繊維密度が領域2aの繊維密度よりも低い、というとき、領域2bの繊維密度の最小値が、領域2aの繊維密度の最小値よりも低いことを意味する。領域2bの繊維密度の最小値の厚さ方向Tの位置は、特に制限はないが、「滲み漏れ」をより抑制する観点から、領域2bの厚さのうち、少なくとも第2面F側の50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。また、領域2bの繊維密度が最小値となる厚さ方向Tの厚さは、特に制限はないが、「滲み漏れ」をより抑制する観点から、領域2bの厚さのうち、50%以下の範囲が好ましく、20%以下の範囲がより好ましく、10%以下の範囲が更に好ましい。
【0110】
更に、表面シート2のすべての領域が本実施形態の態様を有する必要はなく、外周部Aの領域が該態様を有していれば、当該領域において、上記効果を奏することができる。また、外周部Aのすべての領域が本実施形態の態様を有する必要はなく、少なくとも一部の領域が該態様を有していれば、当該領域において、上記効果を奏することができる。
【0111】
次に、第5の実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造方法について説明する。第5の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法は、第1の実施形態の動物用排泄物処理シート1の製造方法において、止水部の形成方法が相違する。よって、以下では、第1の実施形態と相違する構成について主に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0112】
本実施形態に係る動物用排泄物処理シート1の製造装置(図示されず)は、図8に記載の第1の実施形態の製造装置100と比較すると、以下の点で相違する。すなわち、疎水剤塗布部101の前に、連続表面シート112の一方の面を加熱して、連続表面シート112の一方の面側の領域を嵩回復させる嵩回復装置(図示されず)が配置されている。
【0113】
本製造方法では、表面シート2用の連続表面シート112が搬送ロールにより搬送方向MDに搬送されつつ、嵩回復装置(図示されず)により一方の面を加熱される。一方の面が加熱されることにより、連続表面シート112の一方の面側の領域(領域2bに対応)が嵩回復して、厚さが厚くなる。一方、他方の面は加熱されないため、連続表面シート112の他方の面側の領域(領域2aに対応)ほとんど嵩回復せず、厚さはほとんど変わらない。その後、連続表面シート112が搬送ロールにより搬送方向MDに搬送されつつ、連続表面シート112の一方の面に疎水剤塗布部101により疎水剤116が塗布される。以下、第1の実施形態と同様である。
【0114】
<シート状部材の坪量、厚さ及び繊維密度>
(1)シート状部材の坪量:シート状部材を5cm×5cmの大きさに切り出して試料とし、100℃以上の雰囲気での乾燥処理後に質量を測定する。測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値をシート状部材の坪量とする。
(2)シート状部材の厚さ:15cm2の測定子を備えた厚さ計((株)大栄化学精器製作所製 型式FS−60DS)を用い、3g/cmの測定荷重の条件でシート状部材の厚さを測定する。1つの試料で3か所の厚さを測定し、3か所の厚さの平均値をシート状部材の厚さとする。
(3)シート状部材の繊維密度:シート状部材の繊維密度は、上記方法で求めたシート状部材の秤量を、上記方法で求めたシート状部材の厚みで割り算して算出する。
【0115】
<シート状部材における局所的な繊維密度>
シート状部材における測定対象部分を含む領域を鋭利な刃物(例示:カッターナイフ)で切断する。次いで、走査型電子顕微鏡(例示:VE−7800 キーエンス社製)を用いて、切断されたシート状部材における測定対象部分の切断面を、測定対象部分の厚さ方向の中点を観察の中心として拡大し(例示:倍率100〜1000倍)、撮影する。次いで、撮影された切断面の一定面積(例示:1mm×0.25mm)当たりの繊維の切断面の個数を数える。そして、数えた繊維の切断面の個数を1mm当たりの繊維の切断面の個数に換算して、これを測定対象部分の繊維密度(本/mm)とする。ただし、この繊維密度の測定は3箇所で行い、その平均値を繊維密度とする。
【0116】
<シート状部材における疎水剤の幅>
シート状部材における表面及び裏面に露出した疎水剤の幅は、以下のように測定する。着色された疎水剤を通常の疎水剤と同様の方法でシート状部材に塗布する。次いで、シート状部材の表面及び裏面に露出した、着色された疎水剤の幅を物差しで測定する。ただし、この幅の測定は3箇所で行い、その平均値をシート状部材における表面及び裏面の疎水剤の幅とする。
シート状部材における厚さ方向の疎水剤の幅は、以下のように測定する。着色された疎水剤を通常の疎水剤と同様の方法でシート状部材に塗布する。次いで、シート状部材における着色された疎水剤を含む領域(測定対象部分を含む領域)を鋭利な刃物(例示:カッターナイフ)で切断する。次いで、光学顕微鏡を用いて、切断されたシート状部材における測定対象部分の切断面を、測定対象部分の厚さ方向の中点を観察の中心として拡大し(例示:倍率10〜100倍)、撮影する。次いで、撮影された切断面における着色された領域の幅を計測する。。ただし、この幅の測定は3箇所で行い、その平均値をシート状部材における表面及び裏面の疎水剤の幅とする。
【実施例】
【0117】
以下、実施例に基づいて、本発明の動物用排泄物処理シート1について更に詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0118】
(1)試料の作製
第1の実施形態の製造方法を用いて動物用排泄物処理シートを製造した。ただし、各試料について、以下のように、表面シート及び疎水剤を選択した。
(a)実施例1:表面シートとして坪量22gsm、厚さ0.80mmのエアスルー不織布を用いた。止水部の疎水剤としてパラフィン系撥水剤(TH−44:日華化学株式会社製;成分として固形パラフィン、カチオン系ポリマー、ブチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、水を含む)を水で25倍に希釈し、坪量20gsmで用いた。
(b)実施例2:表面シート(実施例1のエアスルー不織布)の厚さを熱風による嵩回復で1.10mmとした以外は実施例1と同一とした。
(c)比較例1:止水部(疎水剤)を形成しない以外は実施例1と同一とした。
(d)比較例2:止水部の疎水剤を表面シートのほぼ表面のみに形成した以外は実施例1と同一とした。
(e)実施例3:表面シートとして坪量17gsm、厚さ0.15mmのポイントボンド不織布とした以外は実施例1と同一とした。
(f)比較例3:止水部(疎水剤)を形成しない以外は実施例3と同一とした。
(g)実施例4:止水部の疎水剤としてシリコン系撥水剤(日華化学株式会社製;成分としてシリコーン、シリカ、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、水含む)を用いた以外は実施例1と同一とした。
(h)実施例5:止水部の疎水剤としてトリグリセリド(パナセート:日油株式会社製;成分として中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む)を用いた以外は実施例1と同一とした。
(i)実施例6:止水部の疎水剤としてワックス(株式会社リンレイ製;成分としてウレタン樹脂、アクリル樹脂、水を含む)を用いた以外は実施例1と同一とした。
(j)実施例7:止水部の疎水剤としてEVA(Ethylene−Vinyl Acetate)(アクゾノーベル株式会社製;成分はエチル酢酸ビニル重合体を含む)を用いた以外は実施例1と同一とした。
【0119】
(2)試料の評価方法
実施例1〜7の試料を以下の方法で評価した。図12は、実施例に係る動物用排泄物処理シートの液漏れ防止効果の評価方法を説明するための模式図である。
(i)各試料を乾燥状態とした。乾燥状態は、各試料を標準状態(温度23±2℃、相対湿度50±5%)において24時間以上保存することにより得た。
(ii)次いで、吸収体3の端縁を基準に内側へ距離d1の点Pに、滴下装置(図示されず)から人工尿を330ml/min.の滴下速度で滴下した。そして、人工尿が、距離d1を移動して、吸収体3の端縁に達し、更に、吸収体3の端縁から距離d2を移動して止水部6(疎水剤)の一方の端縁に達し、更に、止水部6他方の端縁を乗り越えた瞬間に、人工尿の滴下を停止した。ただし、d1=25mmとし、d2=10mmとした。
(iii)滴下装置に残存する人工尿の量より人工尿の滴下量を算出し、滴下量(ml)を漏れ防止の能力、すなわち止水効果とした。そして、滴下量30ml以上を良好な止水効果があると評価した(滴下量は好ましくは40ml以上であり、より好ましくは50ml以上である)。
また、比較例1〜3の試料についても実施例の試料と同じ方法で評価した。
【0120】
(3)試料の評価結果
各試料の評価結果を表1及び表2に示す。
表1において、実施例1と比較例1、2との比較、及び、実施例3と比較例3との比較から、本発明の止水部は、止水部がない場合や止水部が表面にしかない場合と比較して、非常に高い止水効果が得られることが分かった。これは、疎水剤が、裏面シート4における第1面F側の表面から表面シート2における第1面F側の表面に亘って厚さ方向Tに配置されたためと考えられる。また、実施例1と実施例2との比較から、同一坪量では、嵩が高い(厚さが厚い)方が、極めて高い止水効果が得られることが分かった。これは、嵩が高い、すなわち繊維密度が低いため、繊維間距離が増加した結果、疎水剤の効果に加えて、毛細管力が低下したためと考えられる。
【0121】
表2において、疎水剤には止水効果があるが、種類により止水効果は若干の差があることが分かった。すなわち、いわゆる撥水剤(例示:パラフィン系撥水剤、シリコン系撥水剤)の方が親油剤(例示:トリグリセリド、ワックス、EVA)よりも止水効果が高かった。これは、疎水剤自体の特性や、表面シート2のシート部材との相性に起因していると考えられる。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
本発明の動物用排泄物処理シートは、上述の各実施形態や各実施例に制限されず、本発明の目的や趣旨を逸脱しない範囲内において、各実施形態や各実施例に記載された複数の技術を適宜組み合わせたり代替したり変更したりすることが可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【符号の説明】
【0125】
1 動物用排泄物処理シート
2 表面シート
3 吸収体
4 裏面シート
6 止水部
中央部
外周部
第1面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12