特許第6827493号(P6827493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827493
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】吸収性物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/536 20060101AFI20210128BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20210128BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20210128BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61F13/536 200
   A61F13/15 352
   A61F13/511 100
   A61F13/539
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-90071(P2019-90071)
(22)【出願日】2019年5月10日
(65)【公開番号】特開2020-185075(P2020-185075A)
(43)【公開日】2020年11月19日
【審査請求日】2020年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 瑶介
(72)【発明者】
【氏名】野田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 知行
(72)【発明者】
【氏名】細川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】東 秀樹
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−291234(JP,A)
【文献】 特開2012−179284(JP,A)
【文献】 特開2016−67613(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/100703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/536
A61F 13/15
A61F 13/511
A61F 13/539
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる表面シートと、裏面シートと、これらのシートの間に位置する吸収体とを備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記表面シートと前記吸収体とが共に前記吸収性物品の非肌対向面側に向かって窪む、複数の凹部を有し、
前記複数の凹部の各々は、前記表面シートの連続する切断面によって形成された開口部と、前記開口部の前記非肌対向面側に位置する周壁部および底部を有する吸収体側凹部と、によって形成されており、
前記底部は、前記吸収性物品の肌対向面側に向かって突出する凸部を有することを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記複数の凹部のうちの少なくとも一部の凹部は、前記周壁部の前記底部に近接する側の端部において前記周壁部の全周にわたって延在し、且つ繊維密度が相対的に小さい低繊維密度部を有することを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記低繊維密度部が、前記凹部から離れる方向に延びる空隙部であることを特徴とする、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記凹部は、前記開口部の開口面積が前記周壁部の前記底部に近接する側の端部の開口面積よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記底部は、平面視にて、中央に位置する底部中央部と、前記底部中央部の周囲に隣接する底部周辺部と、を有し、
前記凸部は、前記底部中央部において頂部を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記底部周辺部の繊維密度が、前記底部中央部の繊維密度よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品は、前記表面シートと前記吸収体との間に拡散シートを有し、
前記複数の凹部の各々は、前記開口部と前記吸収体側凹部との間に、前記拡散シートの連続する切断面によって形成された拡散シート側開口部を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、平面視にて、着用時に着用者の排泄口に対応する排泄口対応領域を有しており、
前記排泄口対応領域は、前記複数の凹部が形成された凹部形成領域と重なることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
厚さ方向において前記複数の凹部の各々と対応する位置に、前記吸収体の非肌対向面側の表面から窪む複数の非肌対向面側凹部を有することを特徴とする、請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体は、厚さ方向において前記凹部形成領域と重なる部分が、相対的に厚さの大きい中高部であることを特徴とする、請求項8または9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収性物品は、平面視にて、長手方向および幅方向を有するとともに、前記凹部形成領域の前記幅方向の外方側において前記長手方向に延びる一対の圧搾部を有することを特徴とする、請求項9または10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法であって、
前記製造方法は、
前記表面シートおよび前記吸収体を含む積層物に対して、複数のピンを表面シート側から押し当てて、前記表面シートを切断しながら前記吸収体を厚さ方向に圧縮することにより、前記複数の凹部を形成する凹部形成工程を有し、
前記複数のピンの各々は、先端面に前記凸部を形成するための凹部を備えた先端部と、前記先端部とは反対側の端部となる非先端部とを有することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項13】
前記複数のピンの各々は、前記先端部の直径が前記非先端部の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品は、着用者の股間部に接触しながら長時間にわたって着用されるものであるため、着用者に違和感や不快感などを生じさせないように、着用者から排出された排泄物を素早く吸収する技術や排泄物を外に漏れ出さないようにする技術が、種々検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、エアレイド不織布と該エアレイド不織布の一面側に配された液透過性シートとを有し、該エアレイド不織布と該液透過性シートとが共にエンボス加工されて該液透過性シートの側に個々に独立した不連続な多数の凹部が形成されており、該凹部内において該液透過性シートの一部が開口して該エアレイド不織布の一部が露出している吸収体が開示されている。この特許文献1に開示された吸収体によれば、低粘度の軟便および高粘度の軟便の双方を吸収ないし保持でき、漏れ出しを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−204993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された吸収体は、凹部内において液透過性シート(トップシート)の一部が開口して、エアレイド不織布(シート状吸収材)の一部が露出するように構成されているため、凹部内において液透過性シートが開口して、エアレイド不織布が露出している部分では、着用者から排出された経血等の排泄物がエアレイド不織布に移行しやすくなっている一方、液透過性シートが開口せず、エアレイド不織布が露出していない部分では、排泄物がエアレイド不織布に移行しにくくなっている。
そのため、特許文献1に開示された吸収体では、凹部内に到達した経血等の排泄物が、凹部を中心としてその周辺部に均等に移行しにくく、排泄物を吸収体のより広範な領域に均等に吸収させにくい(すなわち、吸収体の吸収領域を最大限活用することができず、吸収効率が悪い)という問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、吸収体の吸収領域を最大限活用することができ、吸収効率に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、不織布からなる表面シートと、裏面シートと、これらのシートの間に位置する吸収体とを備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記表面シートと前記吸収体とが共に前記吸収性物品の非肌対向面側に向かって窪む、複数の凹部を有し、
前記複数の凹部の各々は、前記表面シートの連続する切断面によって形成された開口部と、前記開口部の前記非肌対向面側に位置する周壁部および底部を有する吸収体側凹部と、によって形成されており、
前記底部は、前記吸収性物品の肌対向面側に向かって突出する凸部を有することを特徴とする、前記吸収性物品である。
【0008】
本態様の吸収性物品は、複数の凹部の各々が、表面シートの連続する切断面によって形成された開口部と、当該開口部の前記非肌対向面側に位置する周壁部および底部を有する吸収体側凹部とによって形成されており、各凹部において、表面シートが完全に開口して、吸収体が周壁部全体に露出するように構成されているため、着用者から排出された経血等の排泄物が周壁部を介して凹部の周辺部に均等に移行しやすくなっている。
そのため、本態様の吸収性物品は、凹部内に流れ込んだ経血等の排泄物を底部に形成された凸部によって周囲方向に拡散し、さらにその拡散した排泄物を、上記周壁部を介して凹部の周辺部に均等に移行させることができ、結果的に、排泄物を吸収体のより広範な領域に均等に吸収させることができる。
したがって、本態様の吸収性物品は、吸収体の吸収領域を最大限活用することができ、優れた吸収効率を発揮することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1の吸収性物品において、前記複数の凹部のうちの少なくとも一部の凹部は、前記周壁部の前記底部に近接する側の端部において前記周壁部の全周にわたって延在し、且つ繊維密度が相対的に小さい低繊維密度部を有することを特徴とする。
【0010】
本態様の吸収性物品は、周壁部の、底部に近接する側の端部において周壁部の全周にわたって延在する低繊維密度部が、相対的に小さい(すなわち、周壁部のその他の部分よりも小さい)繊維密度を有していて、当該低繊維密度部が排泄物を吸収しやすくなっているため、底部に向かって流れる排泄物または上記凸部によって拡散した排泄物を、周壁部の低繊維密度部を介して素早く均等に吸収体内に移行させることができる。
【0011】
本発明の更に別の態様(態様3)では、上記態様2の吸収性物品において、前記低繊維密度部が、前記凹部から離れる方向に延びる空隙部であることを特徴とする。
【0012】
本態様の吸収性物品は、上述の低繊維密度部が凹部から離れる方向に延びる空隙部であるため、底部に向かって流れる排泄物または上記凸部によって拡散した排泄物を、周壁部の空隙部を介してより素早く、均等に吸収体内に移行させることができる。
【0013】
本発明の更に別の態様(態様4)では、上記態様1〜3のいずれかの吸収性物品において、前記凹部は、前記開口部の開口面積が前記周壁部の前記底部に近接する側の端部の開口面積よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
本態様の吸収性物品は、凹部の開口部の開口面積が前記周壁部の前記底部に近接する側の端部の開口面積よりも小さいため、排泄物を吸収体のより広範な領域に均等に吸収させやすい上、吸収体に吸収された排泄物が凹部を通って吸収性物品の肌対向面に液戻りするのを生じにくくすることができる。
【0015】
本発明の更に別の態様(態様5)では、上記態様1〜4のいずれかの吸収性物品において、前記底部は、平面視にて、中央に位置する底部中央部と、前記底部中央部の周囲に隣接する底部周辺部と、を有し、
前記凸部は、前記底部中央部において頂部を有することを特徴とする。
【0016】
本態様の吸収性物品は、上記凸部が底部中央部に頂部を有しており、凹部内に流れ込んだ排泄物を上記凸部においてより均等に周囲方向に拡散させることができるため、当該排泄物を凹部の周辺部に、より均等に移行させることができる。
【0017】
本発明の更に別の態様(態様6)では、上記態様5の吸収性物品において、前記底部周辺部の繊維密度が、前記底部中央部の繊維密度よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
本態様の吸収性物品は、底部周辺部の繊維密度が底部中央部の繊維密度よりも大きいことで、凹部内に流れ込んだ排泄物を毛細管現象により上記底部周辺部へ引き込みやすくなっているため、凸部に到達した排泄物をより確実に周囲方向に拡散させることができる。
【0019】
本発明の更に別の態様(態様7)では、上記態様1〜6のいずれかの吸収性物品において、前記吸収性物品は、前記表面シートと前記吸収体との間に拡散シートを有し、
前記複数の凹部の各々は、前記開口部と前記吸収体側凹部との間に、前記拡散シートの連続する切断面によって形成された拡散シート側開口部を有することを特徴とする。
【0020】
本態様の吸収性物品は、表面シートと吸収体との間に拡散シートを有し、且つ該拡散シートが表面シートと同様に拡散シート側開口部を有しているため、上記複数の凹部の間に供給されて表面シートを透過した排泄物を拡散シートによって面方向に拡散させたり、凹部内に流入した排泄物を上記拡散シート側開口部から拡散シートによって面方向に拡散させたりすることができる。
これにより、本態様の吸収性物品は、排泄物を吸収体のより広範な領域に均等に吸収させることができる。
【0021】
本発明の更に別の態様(態様8)では、上記態様1〜7のいずれかの吸収性物品において、前記吸収性物品は、平面視にて、着用時に着用者の排泄口に対応する排泄口対応領域を有しており、
前記排泄口対応領域は、前記複数の凹部が形成された凹部形成領域と重なることを特徴とする。
【0022】
本態様の吸収性物品は、排泄口対応領域が凹部形成領域と重なるものであるため、着用者から排出された排泄物を、より効率よく上記複数の凹部に流入させることができる。
【0023】
本発明の更に別の態様(態様9)では、上記態様8の吸収性物品において、厚さ方向において前記複数の凹部の各々と対応する位置に、前記吸収体の非肌対向面側の表面から窪む複数の非肌対向面側凹部を有することを特徴とする。
【0024】
本態様の吸収性物品は、厚さ方向において複数の凹部の各々と対応する位置に、複数の非肌対向面側凹部を有しているため、凹部と非肌対向面側凹部とによって挟まれた底部を基点として、吸収性物品が折れ曲がりやすく、吸収性物品の着用時に、複数の凹部が形成された凹部形成領域が着用者の股間部の身体形状に合わせて変形しやすくなっている。
これにより、本態様の吸収性物品は、着用時に、凹部形成領域を着用者の肌に密着させやすく、より優れた吸収効率を発揮することができる。
【0025】
本発明の更に別の態様(態様10)では、上記態様8または9の吸収性物品において、前記吸収体は、厚さ方向において前記凹部形成領域と重なる部分が、相対的に厚さの大きい中高部であることを特徴とする。
【0026】
本態様の吸収性物品は、吸収体の、上記凹部形成領域と重なる部分が中高部であるため、吸収性物品の着用時に、上記中高部と重なる凹部形成領域が着用者の股間部に密着しやすく、着用者から排出された排泄物を、より的確に上記複数の凹部に流入させることができる。
【0027】
本発明の更に別の態様(態様11)では、上記態様9または10の吸収性物品において、前記吸収性物品は、平面視にて、長手方向および幅方向を有するとともに、前記凹部形成領域の前記幅方向の外方側において前記長手方向に延びる一対の圧搾部を有することを特徴とする。
【0028】
本態様の吸収性物品は、凹部形成領域の幅方向の外方側において長手方向に延びる一対の圧搾部を有しているため、かかる一対の圧搾部の各々が折れ基点となって、吸収性物品の幅方向に沿った断面形状が略W字形となるように変形しやすくなっている。
これにより、本態様の吸収性物品は、着用時に、上記一対の圧搾部の間に位置する凹部形成領域が着用者の股間部に密着しやすく、着用者から排出された排泄物を、より的確に上記複数の凹部に流入させることができる。
【0029】
本発明の更に別の態様(態様12)では、上記態様1〜11のいずれかの吸収性物品の製造方法であって、前記製造方法は、前記表面シートおよび前記吸収体を含む積層物に対して、複数のピンを表面シート側から押し当てて、前記表面シートを切断しながら前記吸収体を厚さ方向に圧縮することにより、前記複数の凹部を形成する凹部形成工程を有し、
前記複数のピンの各々は、先端面に前記凸部を形成するための凹部を備えた先端部と、前記先端部とは反対側の端部となる非先端部とを有することを特徴とする。
【0030】
本態様の製造方法は、先端面に上記凸部を形成するための凹部を備えた複数のピンを表面シート側から押し当てて、表面シートを切断しながら吸収体を厚さ方向に圧縮することにより、吸収性物品における上記特定の構造を備えた凹部を、一つの工程で容易に形成することができる。
これにより、本態様の製造方法は、吸収体の吸収領域を最大限活用することができ、優れた吸収効率を発揮することができる吸収性物品を、効率よく容易に得ることができる。
【0031】
本発明の更に別の態様(態様13)では、上記態様12の製造方法において、前記複数のピンの各々は、前記先端部の直径が前記非先端部の直径よりも小さいことを特徴とする。
【0032】
本態様の製造方法は、凹部形成工程で用いる複数のピンの各々において、先端部の直径が非先端部の直径よりも小さく形成されているため、吸収性物品における上記特定の構造を備えた凹部を、より精度よく形成することができる。
したがって、本態様の製造方法は、吸収体の吸収領域を最大限活用することができ、優れた吸収効率を発揮することができる吸収性物品を、より精度よく容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、吸収体の吸収領域を最大限活用することができ、吸収効率に優れた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1を、展開した状態で表面シート2側から厚さ方向Tに見た平面図である。
図2図2は、図1における生理用ナプキン1のII−II線に沿った端面図である。
図3図3は、生理用ナプキン1の凹部6の要部を拡大した模式図である。
図4図4は、生理用ナプキン1の非肌対向面側凹部の形態が異なる場合の要部を拡大した模式図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態に係る生理用ナプキン1’の凹部6’の要部を拡大した模式図である。
図6図6は、本発明の更に別の実施形態に係る生理用ナプキン1’’における、図2に対応する端面図である。
図7図7は、本発明の吸収性物品の製造に用いるピンの断面形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、生理用ナプキン等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0036】
(各種定義)
本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1は、図1および図2に示すように、互いに直交する長手方向L、幅方向Wおよび厚さ方向Tを有しており、さらに、幅方向Wの中心を通り且つ長手方向Lに延びる長手方向中心線C(仮想線)と、長手方向Lの中心を通り且つ幅方向Wに延びる幅方向中心線C(仮想線)とを有している。
【0037】
本明細書では、生理用ナプキン1の長手方向Lにおいて、幅方向中心線Cに対して相対的に近位側を長手方向Lの内方側といい、幅方向中心線Cに対して相対的に遠位側を長手方向Lの外方側という。同様に、生理用ナプキン1の幅方向Wにおいて、長手方向中心線Cに対して相対的に近位側を幅方向Wの内方側といい、長手方向中心線Cに対して相対的に遠位側を幅方向Wの外方側という。
また、本明細書では、生理用ナプキン1またはその構成部材(例えば、表面シート、拡散シート等)の厚さ方向Tに直交する、長手方向Lおよび幅方向Wを含む平面内の任意の方向を面方向という。
さらに、本明細書では、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて、生理用ナプキン1の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側を肌対向面側S1といい、生理用ナプキン1の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側を非肌対向面側S2という。
なお、これらの用語の定義は、生理用ナプキン1の構成部材や生理用ナプキン1以外の吸収性物品およびその構成部材などにも同様に用いられる。
【0038】
[生理用ナプキン]
本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1は、図1に示すように、平面視にて、長手方向Lに長く幅方向Wに短い縦長の形状であって、長手方向Lの両端縁が長手方向Lの外方側に向かって円弧を描くように突出した所定の縦長の形状を有している。
さらに、生理用ナプキン1は、長手方向Lの中央部分において、幅方向Wの両端部が幅方向Wの外方側に向かって略台形状を形成するように突出した、一対のフラップ部FL、FLを有している。
【0039】
なお、生理用ナプキン1の形状は、このような態様のものに限定されず、長手方向Lの長さが幅方向Wの長さよりも長い縦長の形状であれば、使用態様等に応じた任意の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形など)を採用することができる。また、フラップ部FLの形状も上記の略台形状に限定されず、例えば、半円形状や半楕円形状などの形状であってもよい。なお、生理用ナプキン1は、このようなフラップ部FLを有していなくてもよい。
【0040】
また、生理用ナプキン1は、図2に示すように、厚さ方向Tにおいて、生理用ナプキン1の肌対向面側S1の表面を形成する、不織布からなる表面シート2と、生理用ナプキン1の非肌対向面側S2の表面を形成する裏面シート3と、これらのシートの間に位置する吸収体4と、を基本構成として備えている。
さらに、この生理用ナプキン1においては、図1および図2に示すように、厚さ方向Tにおいて表面シート2と吸収体4との間に配置された拡散シート5と、生理用ナプキン1の幅方向Wの両端部に配置された一対のサイドシート9、9と、裏面シート3の非肌対向面側S2の表面に配置された、生理用ナプキン1を着用者の着衣(例えば、下着等)に固定するための複数の粘着部ADと、を更に備えている。
【0041】
なお、これらの拡散シートや一対のサイドシート、粘着部などの構成部材の要否は、吸収性物品の種類や用途などによるため、これらの構成部材を備えることは、本発明の吸収性物品において必須の構成要件ではない。
【0042】
また、生理用ナプキン1においては、図2に示すように、表面シート2の幅方向Wの両端部の各々が非肌対向面側S2にループ状に折り返されてなる一対のループ部を有していて、上記一対のサイドシート9、9の各々は、幅方向Wの内方側の端部がこのループ部の非肌対向面側S2の表面に接合されている。
【0043】
そして、生理用ナプキン1は、図1図3に示すように、表面シート2、拡散シート5および吸収体4が共に非肌対向面側S2に向かって窪む、複数の凹部6を有している。
さらに、複数の凹部6の各々は、図3に示すように、表面シート2の連続する切断面によって形成された開口部61と、当該開口部61の非肌対向面側S2に位置し、拡散シート5の連続する切断面によって形成された拡散シート側開口部66と、当該拡散シート側開口部66の非肌対向面側S2に位置し、周壁部63および底部64を有する吸収体側凹部62と、によって構成されており、さらに、底部64は、生理用ナプキン1の肌対向面側S1に向かって突出する凸部65を有している。
【0044】
このように生理用ナプキン1は、複数の凹部6の各々が、少なくとも、表面シート2の連続する切断面によって形成された開口部61と、当該開口部61の非肌対向面側S2に位置する周壁部63および底部64を有する吸収体側凹部62とによって構成されていることで、各凹部6において、表面シート2が完全に開口して、吸収体4が周壁部63の全体に露出するように構成されているため、着用者から排出された経血等の排泄物が周壁部63を介して凹部6の周辺部に均等に移行しやすくなっている。
そのため、生理用ナプキン1は、凹部6内に流れ込んだ経血等の排泄物を底部64に形成された凸部65によって周囲方向に拡散し、さらにその拡散した排泄物を、上記周壁部63を介して凹部6の周辺部に均等に移行させることができ、結果的に、排泄物を吸収体4のより広範な領域に均等に吸収させることができる。
したがって、生理用ナプキン1は、吸収体4の吸収領域を最大限活用することができ、優れた吸収効率を発揮することができる。
【0045】
なお、上述のとおり、拡散シート5は必須の構成要件ではないため、生理用ナプキン1が拡散シート5を備えていない場合は、上記凹部6は、表面シート2の開口部61と、当該開口部61の非肌対向面側S2に位置する吸収体側凹部62とによって形成されることとなる。
【0046】
また、図3には図示していないが、各凹部6において表面シート2および拡散シート5は、それぞれ非肌対向面側S2にわずかに窪みつつ連続的に切断されており、その連続する切断面によって、上記開口部61および拡散シート側開口部66がそれぞれ形成されている。
【0047】
以下、生理用ナプキン1を構成する各種部材について、更に詳細に説明する。
【0048】
[表面シート]
上述の生理用ナプキン1において表面シート2は、図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の前方側の長手方向端部から後方側の長手方向端部にわたって長手方向Lに延在する、縦長の形状を有している。また、表面シート2は、図2に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて肌対向面側S1の位置に配置されて、着用者の肌に当接し得る接触面(すなわち、生理用ナプキン1の肌対向面側S1の表面)を形成する液透過性の不織布によって構成されている。
【0049】
なお、本明細書では、生理用ナプキン1の長手方向Lにおいて、生理用ナプキン1の着用時に着用者の腹部に対して相対的に近位側となる一方側を前方側といい、着用者の腹部に対して相対的に遠位側となる他方側を後方側という。これに関連して、生理用ナプキン1は、図1に示すように、長手方向Lにおいて、前方側領域A、中央領域Aおよび後方側領域Aを有する。
【0050】
また、表面シート2は、図2に示すように、当該表面シート2の非肌対向面側S2に位置する拡散シート5および吸収体4に比べて幅方向Wにやや大きい形状を有しており、幅方向Wの両端部において非肌対向面側S2に折り返されてなる一対のループ部が形成されている。さらに、折り返された表面シート2の両端部は、拡散シート5と一対のサイドシート9、9との間に挟まれ、一対のサイドシート9、9の向かい合う一対の内方側端部と、長手方向Lに沿って間欠的または連続的に延びる一対の接着部(不図示)を介して互いに接合されている。
なお、表面シート2の非肌対向面側S2に配置される拡散シート5は、図2に示すように、幅方向Wの両端部の各々が表面シート2のループ部の内側に位置している。
【0051】
表面シートとして用いられる不織布は、生理用ナプキンの表面シートとして用い得る諸特性(例えば、液透過性や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布などの任意の不織布を用いることができる。
【0052】
また、不織布を構成する繊維の種類は、特に制限されず、例えば、セルロース系繊維;親水化処理を施したオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維などの親水性繊維が挙げられ、これらの繊維は単独で用いても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0053】
不織布の構成繊維に用い得るセルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維(コットン等の植物繊維など)や再生セルロース繊維、精製セルロース繊維、半合成セルロース繊維などが挙げられる。
【0054】
一方、不織布の構成繊維に用い得る熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、6−ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の熱可塑性樹脂からなる繊維が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。不織布がこのような熱可塑性樹脂繊維を含んでいると、表面シートの強度が高くなるため、表面シートに着用者の体圧等が掛かるような場合であっても、上述の開口部が潰れにくくなり、上述の凹部による作用効果をより確実に発揮することができる。
さらに、熱可塑性樹脂繊維の形態も特に制限されず、例えば、PET(芯部)/PE(鞘部)やPP(芯部)/PE(鞘部)等の芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維、海島型複合繊維等の複合繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維;潜在捲縮または顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維などが挙げられ、これらの繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0055】
上記の各種繊維の中でも、表面シートとして用いられる不織布の構成繊維は、天然セルロース繊維などの保水性繊維が好ましく、コットンがより好ましい。コットンなどの保水性繊維は、水などの液体を吸収して保持しやすい上、繊維長も比較的長いため、このような繊維を不織布の構成繊維として用いると、保水性繊維が、隣り合う凹部間に跨るように配置されて、凹部間における液の移行性が向上したり、表面シートの面方向における液拡散性が向上したりするため、結果的に排泄物を吸収体のより広範な領域に均等に吸収させることができる。
なお、保水性繊維の具体的な平均繊維長は、特に限定されないが、例えば5mm〜80mmの範囲内であり、好ましくは10mm〜60mmの範囲内である。
【0056】
また、不織布の構成繊維が柔軟性や風合いなどに優れたオーガニックコットンであると、表面シートが良好な柔軟性や風合いなどを確保しやすく、より優れた肌触りを実現することができ、さらに着用者に対して、表面シートに天然素材を使用していることによる安心感を醸成することができるという利点もある。
なお、オーガニックコットンは、GOTS(Global Organic Textile Standard)の認証を受けたコットンを意味する。
【0057】
なお、不織布の構成繊維として用い得る上記の各種繊維は、それぞれを単独で用いても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0058】
また、表面シートとして用いられる不織布の構造は、上述の凹部の開口部を有する限り特に制限されず、上述の凹部の開口部以外は、平坦なシート状構造を有していても、液拡散性を発現し得る所定の凹凸構造(例えば、断面形状が波形となる凹凸構造や畝溝構造等)を有していてもよい。さらに、不織布がこのような凹凸構造を有する場合、当該凹凸構造における複数の凸部の各々は、中実の内部構造を有していても、中空の内部構造を有していてもよい。
【0059】
なお、表面シートの形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品の表面シートとして用い得るものであれば特に制限されず、所望の液透過性や肌触り、柔軟性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。例えば、表面シートの厚さは、0.001mm〜5.0mmの範囲内、好ましくは0.01mm〜3.0mmの範囲内の厚さであり、また、表面シートの坪量は、5g/m〜100g/mの範囲内、好ましくは6g/m〜50g/mの範囲内の坪量である。
【0060】
なお、表面シートは、単層構造の不織布によって構成されていても、2層以上の多層構造の不織布によって構成されていてもよい。
【0061】
なお、上述の生理用ナプキン1においては、表面シート2が、ホットメルト型接着剤等の接着剤によって拡散シート5と接合されており、拡散シート5および一対のサイドシート9、9の各々の吸収体4に対向する部分が、接着剤によって吸収体4に接合されている。さらに、一対のサイドシート9、9および吸収体4の各々の裏面シート3に対向する部分は、接着剤によって裏面シート3に接合されている。
【0062】
なお、表面シートは、上述の一対のループ部を有していなくてもよいが、表面シートがこのような一対のループ部を有していると、吸収性物品が着用者の大腿部から受ける力を一対のループ部のクッション作用で柔らかく受け止めることができるため、着用者に与える触感をより良好にすることができるという利点がある。
【0063】
[裏面シート]
上述の生理用ナプキン1において裏面シート3は、平面視にて、生理用ナプキン1の前方側の長手方向端部から後方側の長手方向端部にわたって長手方向Lに延在するとともに、生理用ナプキン1の幅方向Wにおける一方側の幅方向端部から他方側の幅方向端部にわたって幅方向Wに延在する、縦長の形状を有している。また、裏面シート3は、図2に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて非肌対向面側S2の位置に配置されて、吸収体4を透過してきた経血等の排泄物が生理用ナプキン1の外部へ漏出するのを防ぐ液不透過性のシート状部材によって構成されている。
【0064】
裏面シートとして用いられる液不透過性のシート状部材は、着用者から排出される経血等の排泄物の透過を防止し得るものであれば特に制限されず、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂繊維(例えば、ポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、芯鞘型複合繊維等の各種複合繊維など)によって形成された疎水性不織布;PEやPP等の疎水性の熱可塑性樹脂によって形成された有孔または無孔の樹脂フィルム;該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;SMS不織布等の積層不織布などの、公知の液不透過性のシート状部材を採用することができる。
【0065】
なお、裏面シートの形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品の裏面シートとして用い得るものであれば特に制限されず、所望の防漏性能や通気性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0066】
[吸収体]
上述の生理用ナプキン1において吸収体4は、図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の長手方向中心線Cおよび幅方向中心線Cの各々を跨ぐように、それぞれ長手方向Lおよび幅方向Wの広範囲にわたって延在するとともに、前方側および後方側の両方の長手方向端部がそれぞれ長手方向Lの外方側に向かって円弧を描くように突出した縦長の形状を有している。また、吸収体4は、図2に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて表面シート2と裏面シート3の間(より具体的には、拡散シート5と裏面シート3の間)に配置されて、表面シート2等を透過してきた排泄物を吸収して保持し得る、所定の吸水性部材によって形成されている。
【0067】
なお、生理用ナプキン1は、図1に示すように、平面視にて、長手方向Lの中央部のやや前方寄りの位置であって幅方向Wの中央部の位置に、着用者の排泄口が対向または当接する排泄口対応領域XAが設定されており、吸収体4は、少なくともこの排泄口対応領域XAを覆う広範囲の領域に配置されている。
【0068】
ここで、排泄口対応領域とは、吸収性物品の着用時に、着用者の排泄口に対向または当接する領域であり、一般に、吸収性物品の種類や用途に応じて設定されるものである。排泄口対応領域は、例えば、長手方向において吸収体の中央部のやや前方寄りの位置に、吸収体の長手方向の全長の約1/4〜1/2の長さで、幅方向において吸収体の略中央部の位置に、吸収体の幅方向の全長の約1/2〜1/3の幅で設定される。なお、生理用ナプキンのようにフラップ部を備えている場合は、排泄口対応領域は、フラップ部と幅方向に重複するように設定されるのが一般的であり、例えば、排泄口対応領域は、当該排泄口対応領域の長手方向の中心位置がフラップ部の長手方向の中心位置と幅方向に略重複するように設定される。
【0069】
吸収体として用いられる吸水性部材は、少なくとも経血等の排泄物を吸収して保持し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の吸水性部材を採用することができる。そのような吸水性部材の例としては、所定の吸水性材料によって構成される少なくとも一つの吸収コアを、親水性を有するティッシュ等のコアラップシートで覆ったものなどが挙げられる。ここで、吸収コアを構成する吸水性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマーからなる粒状物;およびこれらを任意に組み合わせた混合物などが挙げられる。
なお、上述の生理用ナプキン1においては、吸収体4は、吸水性材料からなる吸収性コア(不図示)と、それを被覆するコアラップシート(不図示)によって構成されている。
【0070】
また、表面シートを形成する不織布がセルロース系繊維(好ましくは、コットン)を含む場合は、吸収体もセルロース系繊維(好ましくは、コットン)を含んでいることが好ましい。さらにその場合、表面シートに含まれるセルロース系繊維の一部が、吸収体に含まれるセルロース系繊維と直接的または間接的に連通していることが好ましい。吸収性物品がこのような構成を備えていると、液拡散性の高いセルロース系繊維が、表面シートを介して(場合によっては、拡散シートを更に介して)吸収体まで連通しやすくなるため、セルロース系繊維による排泄物の液拡散を利用して、排泄物を表面シートから吸収体に移行しやすくすることができ、結果的に、吸収性能を更に高めることができる。
【0071】
また、吸収体は、吸収性能を阻害しない限り、熱可塑性樹脂繊維などの合成繊維を含んでいてもよい。吸収体がこのような合成繊維を含んでいると、当該合成繊維による繊維ネットワーク構造の構築によって吸収体の強度が高くなるため、吸収体に着用者の体圧等が掛かるような場合であっても、上述の吸収体側凹部が潰れにくくなり、上述の凹部による作用効果をより確実に発揮することができる。
【0072】
なお、吸収体の形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品の吸収体として用い得るものであれば特に制限されず、所望の吸収性能や柔軟性、強度等に応じた任意の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形等)や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0073】
[拡散シート]
上述の生理用ナプキン1において拡散シート5は、平面視にて、生理用ナプキン1の前方側の長手方向端部から後方側の長手方向端部にわたって長手方向Lに延在する、縦長の形状を有している。また、拡散シート5は、図2に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向Tにおいて表面シート2と吸収体4との間に配置されて、表面シート2を透過してきた排泄物を、面方向に拡散させながら非肌対向面側S2の吸収体4へ移行させ得る、所定の液拡散性および液透過性を有するシート状部材によって構成されている。
【0074】
拡散シートとして用いられるシート状部材は、所定の液拡散性および液透過性を有するものであれば特に制限されず、例えば、液拡散性および液透過性を有する公知の不織布や織布、これらが積層された複合シートなどが挙げられる。
【0075】
なお、上述の生理用ナプキン1では、拡散シート5は、図2に示すように、表面シート2に比べて幅方向Wにやや小さい形状を有しており、幅方向Wの両端部がそれぞれ表面シート2のループ部内において、折り返された表面シート2の両端部によって厚さ方向Tに挟まれている。
【0076】
また、表面シートがセルロース系繊維(好ましくは、コットン繊維)を含む場合は、拡散シートもセルロース系繊維(好ましくは、コットン繊維)を含んでいることが好ましい。さらにその場合、表面シートに含まれるセルロース系繊維の一部が、拡散シートに含まれるセルロース系繊維と直接的または間接的に連通していることが好ましく、さらに、拡散シートに含まれるセルロース系繊維の一部が、吸収体に含まれるセルロース系繊維と直接的または間接的に連通していることが好ましい。吸収性物品がこのような構成を備えていると、液拡散性の高いセルロース系繊維が、表面シートから拡散シートを介して吸収体まで連通しやすくなるため、セルロース系繊維による排泄物の液拡散を利用して、排泄物を表面シートから拡散シートを介して吸収体へ移行しやすくすることができ、結果的に、吸収性能を更に高めることができる。
【0077】
なお、拡散シートは、セルロース系繊維を含んでいなくてもよく、その場合、拡散シートは、例えば、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布などを用いることができる。
【0078】
また、拡散シートは、表面シートの繊維密度よりも高い繊維密度を有していてもよい。拡散シートと表面シートの繊維密度がこのような関係を有していると、表面シートを透過する排泄物が毛細管現象によって拡散シートに移行しやすくなるため、吸収性能を更に高めることができる。
【0079】
なお、拡散シート5の形状や各種寸法、坪量等は、所定の液拡散性および液透過性を有するものであれば特に制限されず、所望の吸収性能や柔軟性等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0080】
[サイドシート]
上述の生理用ナプキン1において一対のサイドシート9、9は、図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の幅方向Wの両端部においてそれぞれ長手方向Lに延びる、一対の帯状の形状を有している。また、一対のサイドシート9、9は、生理用ナプキン1の幅方向Wの両端部において表面シート2の非肌対向面側S2に位置し、表面シート2の肌対向面側S1の表面に供給された経血等の排泄物を、生理用ナプキン1の幅方向Wの外方側に漏出しないように堰止めつつ、長手方向Lに拡散させるように機能する、親水性または撥水性のシート状部材によって構成されている。
【0081】
なお、一対のサイドシート9、9の配置形態は特に限定されず、例えば、一対のサイドシート9、9は、生理用ナプキン1の幅方向Wの両端部において表面シート2の肌対向面側S1に位置していてもよい。
【0082】
サイドシートとして用いられる親水性または撥水性のシート状部材は、吸収性物品のサイドシートとして機能し得るものであれば特に制限されず、例えば、親水性または撥水性を有する繊維によって構成された不織布、親水化処理または撥水処理を施した不織布、通気性を有する合成樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0083】
なお、一対のサイドシートの各々の形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品のサイドシートとして用い得るものであれば特に制限されず、所望の防漏性能や吸収性能等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0084】
[凹部]
上述の生理用ナプキン1において複数の凹部6は、図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の長手方向Lの中央部のやや前方寄りの位置であって幅方向Wの中央部の位置に配置されている。この複数の凹部6が形成された領域を凹部形成領域XBという。
なお、凹部形成領域XBは、図1に示すように、長手方向Lにおいて最も前方側および後方側の各々に位置する凹部の長手方向外方側端縁を通り、かつ幅方向Wに延びる2本の仮想線と;幅方向Wにおいて最も一方側端部側および他方側端部側の各々に位置する凹部の幅方向外方側端縁を通り、かつ長手方向Lに延びる2本の仮想線と;によって囲まれた矩形状の領域を指す。
【0085】
そして、上述の生理用ナプキン1においては、図1に示すように、排泄口対応領域XAが、平面視にて凹部形成領域XBと重なっている。このように排泄口対応領域XAが凹部形成領域XBと重なっていると、着用者から排出された排泄物をより効率よく上記複数の凹部6に流入させることができる。
【0086】
なお、上述の生理用ナプキン1においては、複数の凹部6は、凹部形成領域XBにおいて、長手方向Lおよび幅方向Wに凹部6が隣接しないように千鳥状に配置(千鳥配置)されているが、本発明において複数の凹部の配置形態は特に限定されず、例えば、複数の凹部は、長手方向および幅方向の各々に均等に整列した格子状の配置形態や、全体として所定の図形等(例えば、円形、ハート形等)を形成するような配置形態、ランダムな(不規則な)配置形態などの任意の形態で配置することができる。
【0087】
さらに、複数の凹部の配置間隔も特に制限されず、例えば長手方向および幅方向のそれぞれの配置間隔として、1mm〜30mmの範囲内の配置間隔を採用することができる。かかる配置間隔は、長手方向と幅方向で同じであっても、異なっていてもよい。
【0088】
また、上述の生理用ナプキン1では、上記のとおり複数の凹部6の各々は、表面シート2、拡散シート5および吸収体4が共に非肌対向面側S2に向かって窪むように形成されており、表面シート2の連続する切断面によって形成された開口部61と、当該開口部61の非肌対向面側S2に位置し、拡散シート5の連続する切断面によって形成された拡散シート側開口部66と、当該拡散シート側開口部66の非肌対向面側S2に位置し、周壁部63および底部64を有する吸収体側凹部62と、によって構成されている。
さらに、底部64には、生理用ナプキン1の肌対向面側S1に向かって突出する凸部65が形成されている。
【0089】
(開口部)
上述の生理用ナプキン1において、凹部6の開口部61は、表面シート2が非肌対向面側S2にわずかに窪みつつ連続的に切断されたその切断面によって形成されている。
なお、拡散シート側開口部66もまた、拡散シート5が非肌対向面側S2にわずかに窪みつつ連続的に切断されたその切断面によって形成されている。
このように表面シート2や拡散シート5が完全に開口して、吸収体4が周壁部63の全体に露出するように構成されていると、着用者から排出された経血等の排泄物が周壁部63を介して凹部6の周辺部に均等に移行しやすくなる。
【0090】
特に、上述の生理用ナプキン1においては、表面シート2と吸収体4との間に拡散シート5を有しており、さらに、複数の凹部6の各々は、表面シート2によって形成された開口部61と吸収体側凹部62との間に、拡散シート5の連続する切断面によって形成された拡散シート側開口部66を有しているため、上記複数の凹部6の間に供給されて表面シート2を透過した排泄物を、拡散シート5によって面方向に拡散させたり、凹部6内に流入した排泄物を拡散シート側開口部66から拡散シート5によって面方向に拡散させたりすることができる。これにより、上述の生理用ナプキン1は、排泄物を吸収体4のより広範な領域に均等に吸収させることができる。
【0091】
なお、本発明の吸収性物品においては、拡散シートは必須の構成要件でないため、吸収性物品が拡散シートを備えない場合は、上記複数の凹部は、拡散シート側開口部を有さないことになる。
【0092】
また、上述の生理用ナプキン1では、複数の凹部6の各々は、開口部61が平面視にて円形の形状を有しているが、本発明において凹部の開口部の形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形以上の多角形、星形やハート形等の任意の平面形状などを採用することができる。なお、凹部の開口部の形状が星形やハート形などの意匠性を有する形状であると、吸収性物品に複数の凹部が形成されていることによる不安感などを生じにくくすることができ、また、後述するエンボス加工等によって形成される圧搾部の形状とともに一体感のあるデザインを創出することもできる。
【0093】
(吸収体側凹部)
上述の生理用ナプキン1において、凹部6の吸収体側凹部62は、図3に示すように、表面シート2による開口部61と拡散シート側開口部66の非肌対向面側S2において、吸収体4の肌対向面側S1の表面が非肌対向面側S2に向かって窪んでなる、有底の凹部であり、上述の拡散シート側開口部66に連接する周壁部63と、当該周壁部63の非肌対向面側S2に連接する底部64とを有している。
さらに、吸収体側凹部62の底部64には、生理用ナプキン1の肌対向面側S1に向かって突出する凸部65が形成されており、かかる凸部65によって、凹部6内に流れ込んだ経血等の排泄物を周囲方向に拡散させることができる。このようにして拡散された排泄物は、周壁部63を介して凹部6の周辺部に均等に移行し、結果的に、吸収体4のより広範な領域に均等に吸収されることとなる。
【0094】
なお、吸収体側凹部62の周壁部63、底部64および凸部65は、すべて吸収体4によって形成されているため、それぞれ所定の吸収性能を有している。
【0095】
また、上述の生理用ナプキン1においては、複数の凹部6のうちの少なくとも一部の凹部6は、周壁部63の底部64に近接する側の端部において当該周壁部63の全周にわたって延在し、かつ繊維密度が相対的に小さい低繊維密度部としての空隙部7を有している。このような低繊維密度部は、相対的に小さい(すなわち、周壁部63のその他の部分よりも小さい)繊維密度を有していて、相対的に排泄物を吸収しやすくなっているため、底部64に向かって流れ落ちる排泄物または上記凸部65によって拡散した排泄物を、周壁部63の低繊維密度部を介して素早く均等に吸収体4内に移行させることができる。
【0096】
さらに、上述の生理用ナプキン1においては、低繊維密度部が、図3に示すように、凹部6から離れる方向に延びる空隙部7によって形成されているため、底部64に向かって流れ落ちる排泄物または上記凸部65によって拡散した排泄物を、周壁部63の空隙部7を介してより素早く、均等に吸収体4内に移行させることができるという利点がある。
【0097】
また、上述の生理用ナプキン1では、凹部6の底部64が、図3に示すように、平面視にて、中央に位置する底部中央部64Cと、該底部中央部64Cの周囲に隣接する底部周辺部64Sと、を有しており、上述の凸部65は、底部中央部64Cにおいて頂部65Tを有している。このように凸部65の頂部65Tが底部中央部64Cに位置していると、凹部6内に流れ込んだ排泄物を凸部65においてより均等に周囲方向に拡散させることができるため、当該排泄物を凹部6の周辺部に、より均等に移行させることができる。
【0098】
なお、凸部65の頂部65Tの位置は上記底部中央部64Cに限定されず、例えば排泄物の拡散方向に偏り等が生じる場合は、凸部65の頂部65Tは、底部周辺部64Sに位置していてもよい。
また、凸部65の形状も特に限定されず、凸部65は、例えば、略円錐状、略半球状、略角錐状、略截頭錐体状などの任意の形状を採用することができる。
【0099】
さらに、上述の生理用ナプキン1においては、図3に示すように、底部周辺部64Sの繊維密度が、底部中央部64Cの繊維密度よりも大きくなっている。このように底部周辺部64Sの繊維密度が底部中央部64Cの繊維密度よりも大きくなっていると、凹部6内に流れ込んだ排泄物を毛細管現象により底部周辺部64Sに引き込みやすいため、凸部65に到達した排泄物をより確実に周囲方向に拡散させることができる。
【0100】
なお、本明細書において繊維密度(例えば、周壁部における低繊維密度部の繊維密度や底部の各部分における繊維密度等)は、以下の測定方法に従って測定することができる。
(1)吸収体等の試料を液体窒素にて完全に凍結させ、繊維密度の測定対象部分を含むように試料を厚さ方向に切断する。
(2)試料の厚さ方向に平行な切断面を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製:JCM−5100)を用いて拡大観察する。なお、観察倍率は、30本〜60本の繊維の切断面が一画面内に計測できる倍率(例えば、50倍〜500倍)とする。
(3)観察領域における繊維の切断面の数を測定する。すなわち、試料の所定面積の切断面に対する、切断されている繊維の切断面の個数を数える。
(4)得られた繊維の切断面の個数を1mm当たりの繊維の切断面の個数に換算し、これを繊維密度(本/mm)とする。なお、測定は任意の3ヶ所で実施し、測定値の平均値をその試料の繊維密度とする。すなわち、繊維密度として、繊維本数の密度を用いる。さらに言い換えると、繊維密度として、厚さ方向に平行な切断面における単位面積当たりの繊維の本数を用いる。
【0101】
なお、繊維密度としては、単位体積当たりの繊維の本数を用いてもよい。単位体積当たりの繊維の本数は、例えば、X線CTによる解析で求めることができる。単位面積当たりの繊維密度と単位体積当たりの繊維密度とでは、繊維密度の数値は異なるものの、各種部分間の繊維密度の相対的な比較(例えば、大小の比較)では同じ結果となる。
【0102】
なお、上述の生理用ナプキン1において、凹部6の底部64の肌対向面側S1の表面は、図3に示すように、凹部6の形成時に表面シート2から切り離され、かつ厚さ方向Tに圧縮された表面シート2の圧縮物67によって形成されており、さらに、その表面シート2の圧縮物67の非肌対向面側S2には、凹部6の形成時に拡散シート5から切り離され、かつ厚さ方向Tに圧縮された拡散シート5の圧縮物68と、吸収体4の吸収コアを囲繞するコアラップシートの圧縮物(不図示)と、吸収コアの圧縮物(不図示)と、を有している。
【0103】
さらに、上述の生理用ナプキン1においては、拡散シート5およびコアラップシートがそれぞれ着色されていてもよく、また、底部64の周縁部や開口部61、拡散シート側開口部66のみが着色されていても或いはこれらの部分がその他の部分よりも相対的に濃く着色されていてもよい。このように凹部6に係る構成部材や各種部分が着色されていると、着用者が凹部6の存在を認識しやすくなるため、着用者が生理用ナプキン1を着用する際に、複数の凹部6が形成された凹部形成領域XBを適切な位置にして着用しやすいという利点がある。
【0104】
また、上述の生理用ナプキン1は、凹部6の内面(例えば、開口部61や拡散シート側開口部66、周壁部63、底部64の各表面)に、血液低粘度化剤や親水性油剤等の任意の機能剤を含んでいてもよい。
【0105】
特に本発明においては、凹部の内面に、表面シートを形成する不織布(例えば、スパンボンド不織布やエアスルー不織布等)に使用されている親水性油剤とは異なる親水性油剤が付着していることが好ましい。すなわち、凹部の内面は、凹部の周辺部分よりも相対的に親水性が高いことが好ましい。
凹部の周辺部分の親水性が相対的に低くなることで、当該周辺部分の排泄物が凹部内へ流れ落ちやすくなり(すなわち、排泄物の凹部への滑落性が高くなり)、さらに凹部の内面の親水性が相対的に高くなることで、凹部内に流れ落ちた排泄物が吸収体へ移行しやすくなる(すなわち、吸収体への引き込み性が高くなる)。
なお、このような効果は、凹部の内面に、表面シートを形成する不織布に使用されている親水性油剤と同じ親水性油剤が表面シートよりも高い濃度で付着している場合でも、同様に得ることができる。
また、表面シートを形成する不織布に親水性油剤が使用されていない場合でも、凹部の内面に親水性油剤を付着させることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0106】
凹部の内面に親水性油剤を付着させる手段は特に制限されず、例えば、凹部を形成した後に、凹部の内面に親水性油剤を塗布してもよいし、凹部を形成する際に、少なくとも先端部に親水性油剤が付着した凹部形成用のピンを用いてもよい。
なお、凹部の内面に親水性油剤を付着させる際は、凹部の底部中央部よりも底部周辺部に付着させることが好ましい。親水性油剤をこのように付着させることで、底部周辺部における上述の毛細管現象による効果がより得られやすくなる。
【0107】
そして、上述の生理用ナプキン1では、図3に示すように、厚さ方向Tにおいて複数の凹部6の各々と対応する位置に、吸収体4の非肌対向面側S2の表面から肌対向面側S1に向かって窪む、複数の非肌対向面側凹部8を有している。このような複数の非肌対向面側凹部8を有していることで、上述の生理用ナプキン1は、凹部6と非肌対向面側凹部8とによって挟まれた底部64を基点として折れ曲がりやすく、着用時に、複数の凹部6の形成された凹部形成領域XBが着用者の股間部の身体形状に合わせて変形しやすくなっている。これにより、上述の生理用ナプキン1は、着用時に、凹部形成領域XBを着用者の肌に密着させやすく、より優れた吸収効率を発揮することができる。
【0108】
なお、上述の生理用ナプキン1においては、非肌対向面側凹部8は、図3に示すように略平坦な構造を有しているが、本発明において非肌対向面側凹部の構造はこのような形態に限定されず、非肌対向面側凹部は、例えば図4に示す非肌対向面側凹部8’のように、底部中央部64Cの非肌対向面側S2の表面が非肌対向面側S2に向かって突出する凸状の構造を有していてもよい。非肌対向面側凹部8’がこのような凸状の構造を有していると、底部64の底部周辺部64Sを基点として折れ曲がりやすくなるため、着用時に、複数の凹部6の形成された凹部形成領域XBが着用者の股間部の身体形状に合わせて変形しやすくなる上、上述の底部64における凸部65の構造を維持しやすくなる(すなわち、凸部65による作用効果をより確実に発揮することができる)という利点がある。
【0109】
また、上述の生理用ナプキン1では、複数の凹部6の各々は、開口部61から底部64に至るまでの開口面積が略一定となる構造を有しているが、本発明において、凹部の構造はこのような形態に限定されず、凹部は、例えば、図5に示す本発明の別の実施形態に係る生理用ナプキン1’の凹部6’のように、表面シート2による開口部61’の開口面積が吸収体側凹部62’の周壁部63’の、底部64’に近接する側の端部63T’の開口面積よりも小さく形成されていてもよい。
なお、この生理用ナプキン1’においては、図5に示すように、表面シート2による開口部61’の開口面積が拡散シート側開口部66’の開口面積よりも小さく形成されており、さらに、拡散シート側開口部66’の開口面積が周壁部63’の底部64’に近接する側の端部63T’の開口面積よりも小さく形成されている。
このように生理用ナプキン1’は、凹部6’の開口部61’の開口面積が周壁部63’の底部64’に近接する側の端部63T’の開口面積よりも小さく形成されているため、排泄物を吸収体4のより広範な領域に均等に吸収させやすい上、吸収体4に吸収された排泄物が凹部6’を通って生理用ナプキン1’の肌対向面側S1の表面に液戻りするのを生じにくくすることができる。
【0110】
また、本発明の更に別の実施形態に係る生理用ナプキン1’’では、図6に示すように、吸収体4’が、厚さ方向Tにおいて凹部形成領域XBと重なる部分に、相対的に厚さの大きい中高部4H’を有している。このように吸収体4’の凹部形成領域XBと重なる部分に中高部4H’が形成されていると、着用時に、中高部4H’と重なる凹部形成領域XBが着用者の股間部に密着しやすく、着用者から排出された排泄物を、より的確に上記複数の凹部6に流入させることができる。
【0111】
(圧搾部)
本発明の吸収性物品は、表面シート上に供給された排泄物を所定の方向(例えば、長手方向)に拡散させたり、吸収性物品を所定形状に折り曲げやすくしたりする目的で、表面シートの肌対向面側の表面から厚さ方向に窪む一または複数の圧搾部を有していてもよい。
例えば、上述の生理用ナプキン1においては、図1に示すように、平面視にて、排泄口対応領域XAに対して(すなわち、凹部形成領域XBに対して)幅方向Wの両外方側に位置し、かつ長手方向Lに連続的または間欠的に延びる一対の圧搾部12、12と、該一対の圧搾部12、12の各々の長手方向Lの後方側に位置し、かつ長手方向Lに延びる一対の圧搾部13、13と、排泄口対応領域XAに対して長手方向Lの前方側および後方側の各々に位置し、ハート形の環状形状を有する圧搾部11、14と、を有している。
【0112】
これらの圧搾部11〜14は、エンボスなどの加工手段により、表面シート2、拡散シート5および吸収体4が共に厚さ方向Tに圧搾されることで形成される。したがって、圧搾部11〜14の各底部は、表面シート2と拡散シート5と吸収体4とが厚さ方向Tに圧搾されて形成されている。
なお、これらの圧搾部11〜14は、図2に示すように、弱く圧搾されることにより、表面シート2の肌対向面側S1の表面からの深さが浅く、かつ繊維密度が相対的に低い低密度部と、強く圧搾されることにより、表面シート2の肌対向面側S1の表面からの深さが深く、かつ繊維密度が相対的に高い高密度部と、を有している。これら低密度部および高密度部は、図2に示すように、それぞれ各圧搾部11〜14における深さの浅い位置の底部および深さの深い位置の底部を形成している。
【0113】
なお、本発明において、圧搾部の平面視における形状は、特に限定されず、所望の液拡散性や変形誘導性、強度などに応じた任意の形状(例えば、曲線状、直線状、所定のデザイン状など)を採用することができる。
【0114】
また、本発明においては、吸収性物品がこのような圧搾部を有することは、必須の構成要件ではないものの、吸収性物品は、少なくとも、凹部形成領域の幅方向の外方側において長手方向に延びる一対の圧搾部を有していることが好ましい。上述の生理用ナプキン1では、凹部形成領域XBの幅方向Wの外方側において長手方向Lに延びる一対の圧搾部12、12を有しているため、かかる一対の圧搾部12、12の各々が折れ基点となって、生理用ナプキン1の幅方向Wに沿った断面形状が略W字形となるように変形しやすくなっている。これにより、上述の生理用ナプキン1は、着用時に、上記一対の圧搾部12、12の間に位置する凹部形成領域XBが着用者の股間部に密着しやすく、着用者から排出された排泄物を、より的確に上記複数の凹部6に流入させることができる。
【0115】
[製造方法]
次に、本発明の吸収性物品の製造方法について、例示的に上述の生理用ナプキン1の製造方法を用いて説明する。
【0116】
上述の生理用ナプキン1は、複数の凹部6を形成する工程(凹部形成工程)以外は、従来の生理用ナプキンと同様の製造方法によって得ることができる。
すなわち、上述の生理用ナプキン1は、少なくとも以下の各工程;
(1)表面シート用不織布と拡散シート用シート状部材をホットメルト型接着剤により接合する第1の積層工程と;
(2)第1の積層工程で得られた積層シートの幅方向(CD方向)の両端部に、所定の折り畳み冶具(例えば、セーラー等)を用いて一対のループ部を形成するループ部形成工程と;
(3)上記一対のループ部が形成された積層シートと、サイドシート用の一対の連続シートと、吸収体4とをホットメルト型接着剤により接合する第2の積層工程と;
(4)第2の積層工程で得られた積層物を、所定の凸部を有するエンボスロールとアンビルロールとが対面配置された圧搾装置に供給して、表面シート用不織布側から圧搾し、上記積層物に所定の圧搾部11〜14を形成する圧搾部形成工程と;
(5)上記積層物を、複数のピンを有する加工用ロールとアンビルロールとが対面配置された凹部形成用加工装置に供給し、上記複数のピンを表面シート側(すなわち、表面シート用不織布側)から押し当てて、表面シート用不織布および拡散シート用シート状部材を切断しながら吸収体4を厚さ方向に圧縮することにより、上記積層物に複数の凹部6を形成する凹部形成工程と;
(6)凹部形成工程後の積層物と、裏面シート用シート状部材とをホットメルト型接着剤により接合する第3の積層工程と;
(7)第3の積層工程で得られた積層物の裏面シート用シート状部材側の表面に、複数の粘着部ADを配置する粘着部形成工程と;を含む製造方法によって得ることができる。
【0117】
なお、上記製造方法において、凹部形成工程以外の工程は、吸収性物品の種類や構造等に応じて取捨選択されるものであり、各工程の順序も入替可能である。
さらに、上記製造方法に用いられる資材(例えば、表面シート用不織布や拡散シート用シート状部材、吸収体、裏面シート用シート状部材等)も特に制限されず、例えば、各種資材を追加の別工程で製造したり、市販の資材を採用したりしてもよい。例えば、上述の生理用ナプキン1の製造方法では、上記吸収体4は、粉砕パルプ工程を経て製造されたものが用いられる。
【0118】
また、上述の生理用ナプキン1の製造方法では、凹部形成工程で用いられる加工用ロールの複数のピンとして、図7(a)に示すような特定の構造のピン100を用いることができる。このピン100は、図7(a)に示すように、先端面に上記凹部6の底部64の凸部65を形成するための凹部105を備えた先端部110と、該先端部110とは反対側の端部となる非先端部120と、を有する特定の構造を備えている。凹部形成工程において、このような特定の構造の複数のピン100を用いると、生理用ナプキン1の上記複数の凹部6(より具体的には、底部64に凸部65が形成された複数の凹部6)を、一つの工程で容易に形成することができるため、上述の生理用ナプキン1を効率よく容易に得ることができる。
【0119】
また、上記複数のピン100の各々は、図7(a)に示すように、先端部110の直径P1が非先端部120の直径P2よりも小さく形成されている。凹部形成工程で用いられる複数のピン100の各々がこのように形成されていると、生理用ナプキン1の上記複数の凹部6をより精度よく形成することができるため、結果的に上述の生理用ナプキン1を、より精度よく容易に得ることができる。
【0120】
なお、本発明において、上記凹部形成工程で用いられる複数のピンの構造は、吸収性物品における上記複数の凹部を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば図7(b)に示すような構造のピン150を用いてもよい。このピン150においても、先端面に上記凹部6の底部64の凸部65を形成するための凹部155を備えた先端部160と、該先端部160とは反対側の端部となる非先端部170と、を有する特定の構造を備えており、さらに、このピン150においても、先端部160の直径P1が非先端部170側に向かって一定となる部分を有しているものの、先端部160の直径P1が非先端部170の直径P2よりも小さく形成されているため、上述の図7(a)に示すピン100と同様の効果を得ることができる。
【0121】
また、本発明においては、凹部形成工程で用いられる複数のピンの先端部に、親水性油剤が付着していてもよい。このようなピンを用いることで、凹部の形成と同時に、凹部の内面に親水性油剤を付着させることができるため、上述の排泄物の凹部内への滑落性および吸収体への引き込み性に優れた吸収性物品を、より効率よく製造することができる。
【0122】
さらに、本発明においては、凹部形成工程で用いられるアンビルロールのロール周面の構造は、上述の凹部を形成し得る限り特に制限されず、ロール周面は、例えば、凹凸のない平滑な構造を有していてもよいし、加工用ロールの複数のピンに対応した複数の窪み部を有していてもよい。なお、アンビルロールのロール周面が後者のような構造を有していると、加工用ロールの複数のピンが摩耗しにくく、本発明の吸収性物品をより精度よく製造することができるという利点がある。
【0123】
本発明は、上述の実施形態の生理用ナプキンのほかに、例えば、パンティーライナー、(軽)失禁パッド、使い捨ておむつなどの様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述の実施形態等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【符号の説明】
【0124】
1 生理用ナプキン
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 拡散シート
6 凹部
61 開口部
62 吸収体側凹部
63 周壁部
64 底部
64C 底部中央部
64S 底部周辺部
65 凸部
65T 頂部
66 拡散シート側開口部
67 表面シート2の圧縮物
68 拡散シート5の圧縮物
7 空隙部
8 非肌対向面側凹部
9 サイドシート
11〜14 圧搾部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7