(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る研磨装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0027】
図1は、一実施形態による研磨装置1(
図3参照)に用いる基板保持ヘッド21を説明するための図である。
図1Aは、一実施形態による研磨装置1(
図3参照)に用いる基板保持ヘッド21の断面図である。
図1Bは、
図1Aに示されるフランジ部56を単独で示
す平面図である。
図1Cは、
図1Aに示される基板Wを保持する下面29の外周部の付近を拡大して示す図である。
図2Aは、
図1Aに示される基板保持ヘッド21の底面図である。
図1A〜
図1C、
図2A、
図2Bを参照して、基板保持ヘッド21の構成、その周辺部品の構成を説明する。基板保持ヘッド21は、ヘッド本体22、リテーナ部材23、外周部材25を備える。
【0028】
図1Aに示されるように、ヘッド本体22の下側外周部には、リテーナ部材23が配置されている。
図2Aに示される実施形態においては、基板Wの4つの角部に対応する位置に4個のリテーナ部材23aが配置され、さらに基板Wの4つの辺部に対応する位置に4個のリテーナ部材23bが配置されている。
図1、2に示される基板保持ヘッド21において、ヘッド本体22の上部外周側面26およびリテーナ部材23のそれぞれの外周側面27に接触して覆う環状の外周部材25が配置されている。外周部材25の外周形状は四辺形とすることができる。ヘッド本体22およびリテーナ部材23は、研磨対象物である四辺形の基板W(
図1A中、2点鎖線にて表示)を後述のように吸着して収納して保持することができる。この状態で、ヘッド本体22の基板支持面としての下面29が基板Wの裏面W1に直接対向し、リテーナ部材23の内周側面28が基板Wの側面W2に直接対向している。
【0029】
基板Wは、シリコン基板、ガラス基板、樹脂基板、多層配線層を含む基板、電子デバイスが配置されたパッケージ基板などとすることができる。リテーナ部材23の材質は、研磨する基板Wに応じて変更することができる。たとえば、基板Wがシリコン基板であれば、リテーナ部材23の材質は、一般に高分子材料やセラミック材料が用いられ、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の硬化プラスチックとすることができる。また、基板Wがガラス基板であれば、リテーナ部材23の材質を基板に類似したガラスとすることができる。
【0030】
図3に示されるように、基板保持ヘッド21の鉛直方向下側には、研磨盤38が配置される。研磨盤38の上面には研磨布39(
図3)が貼り付けられている。研磨布39は、基板Wの被研磨面W3が接触するよう構成されている。研磨布39は、基板Wの被研磨面W3と接触する面が、研磨面である。
【0031】
図2Aに示されるように、各リテーナ部材23の内周側面28は、全体として四辺形の開口30を形成している。開口30の四辺形は、基板Wの外周四辺形より僅かに大きく形成されている。
図2Aは、リテーナ部材23は、基板Wの角部に対応する位置に設けられるリテーナ部材23a、および基板Wの辺部に対応する位置に設けられるリテーナ部材23bを示している。角部のリテーナ部材23aは、基板Wを研磨するときに基板Wの角部に生じやすい過研磨を防止するためのものである。一実施形態として、基板Wの辺部に対応する位置に設けられるリテーナ部材23bは無くてもよい。
【0032】
基板保持ヘッド21において、各リテーナ部材23は、リテーナ部材23の上部に位置する上部部材31により固定されている。リテーナ部材23は、たとえばボルトなどの固定部材を使用して上部部材31に取り外し可能に固定することができる。上部部材31は、ヘッド本体22の下部外周側面53に形成された凹部32に部分的に挿入されている。各リテーナ部材23は、基板保持面である下面29に対し相対的に上下動可能に凹部32に挿入されている。上部部材31の凹部32に挿入した部分に、ヘッド本体22を貫通して打ち込んだリテーナ部材23の回り止め用のピン60が係合している。ヘッド本体22の中間下面33には、円柱形状に凹んだ空間部34が形成され、各空間部34は、各リテーナ部材23の上部部材31の上側に位置している。また、各空間部34は、上部部材31の長手方向の中央部に位置している(
図2A参照)。
【0033】
各空間部34は上部に各空気供給ノズル35を有し、各空気供給ノズル35は各空気供給ライン36に接続されている。各空気供給ライン36は、締め切り手段である各バルブV1(
図3参照)、制御手段である各第1エアレギュレータR1(
図3参照)を介して圧力流体としての圧縮空気を供給する圧縮空気源42(
図3参照)に接続されている。各空間部34の圧力は、各第1エアレギュレータR1によって独立に制御され、独立に変更可能である。よって、各リテーナ部材23を、それぞれ独立して、また基板Wとは独立して、研磨面に対して押圧可能である。
【0034】
空間部34にはシール部材37が挿入され、空間部34をシールし空間部34の圧力を維持することができる。シール部材37は空間部34内部で
図1A中、上下に移動が可能である。シール部材37は空間部34の圧力により
図1A中、下側に押されリテーナ部材23の上部部材31を押す。そのため、リテーナ部材23は、研磨盤38すなわち研磨布39、研磨面に向けて押圧される。
【0035】
上述のように、リテーナ部材23は、取り外し可能に上部部材31に固定することができる。そのため、研磨する基板Wの材質や、過研磨が生じる領域の大きさに応じて、リテーナ部材23の材質や寸法を変更することができる。
図2Bは、
図2Aに示される基板Wの角部付近の拡大図である。
図2Bにおいて、基板Wの角部にL1、L2、L3で囲まれる三角形で示される領域に過研磨が生じるとする。過研磨が生じる領域は、予め実験などで測定しておくことができる。基板Wの角部に配置されるL字形のリテーナ部材23の各辺の長さ(R1、R2)は、過研磨領域のL1、L2に応じて選択してもよい。たとえば、L1とR1が同等のサイズであり、L2とR2が同等のサイズとなるリテーナ部材23を選択することができる。また、基板Wに生じる過研磨の大きさに応じて、リテーナ部材23の研磨面への押圧力を調整することもできる。
【0036】
ヘッド本体22の下面29は基板支持面であり、形状が基板Wとほぼ同じ大きさの四辺形である。基板Wを保持する下面29の外周部には環状の溝40が形成されており、溝40には弾性リングとしての環状のゴム材50(
図2A中、2点鎖線にて表示、外周は基板Wの外周と一致するように示されている。)がはめ込まれている(
図1C)。ゴム材50が、溝40にはめ込まれた状態で、下面29からゴム材50の凸部44が突出し、凸部44が研磨対象物である基板Wの裏面W1に接触する。下面29、ゴム材50の凸部44、基板Wの裏面W1は、空間としての空間部43を画成する。
【0037】
ヘッド本体22には、空間部43に連通する第2空気供給ノズル41が形成され、第2空気供給ノズル41は、供給ラインとしての第2空気供給ライン62に接続されている。第2空気供給ライン62は、第2バルブV2(
図3参照)、第2エアレギュレータR2(
図3参照)を介して圧縮空気源42(
図3参照)に接続され、バルブV0(
図3参照)を介して真空排気源49(
図3参照)に接続されている。バルブV0を閉と第2バルブV2を開にした状態で空間部43の圧力は、第2エアレギュレータR2によって所定の圧力に制御されるので、この圧力により基板Wは研磨盤38に向かって押し付けられる。また、第2バルブV2を閉とした状態で、バルブV0を開とすることで、空間部43が真空となり基板Wが、下面29に吸着される。
【0038】
ゴム材50は、シリコンゴム、フッ素ゴム等から形成され、先端に丸みが形成されたV字の断面形状の凸部44を有する。凸部44の断面形状を先端に丸みが形成されたV字型としたので、基板Wが研磨盤38上で完全に水平でなくても、ゴム材50と基板Wの裏面W1との接触面積を最小にし、かつ空間部43を安定してシールし、空間部43内の圧力を保持することができる。
【0039】
ヘッド本体22には、純水供給ライン46に接続された純水供給ノズル45が形成され
、各リテーナ部材23の上部部材31、基板保持ヘッド本体22の凹部32に純水を供給し、リテーナ部材23の周囲の隙間に入り込んだ砥液(スラリー)等を洗い流すことができる。純水供給ライン46は、純水バルブV4(
図3参照)、純水レギュレータR4(
図3参照)を介して純水供給源47(
図3参照)に接続されている。純水レギュレータR4によって純水の供給圧力は、所定の圧力に制御され、または供給量が所定の量に制御される。
【0040】
基板保持ヘッド21は、セラミックス製のベアリングボール3を介してヘッド軸2に接続されている。ヘッド軸2の下部には、外周部に切り欠き54、外周部近傍に貫通孔55を有するフランジ部56が形成されている(
図1B参照)。この切り欠き54にヘッド本体22に打ち込まれた第1ピン57が係合し、切り欠き54からこの係合する第1ピン57にトルクの伝達が可能なように構成されている。そのため、ヘッド軸2から基板保持ヘッド21にトルクが伝達される。貫通孔55には、ヘッド本体22にねじ込まれた鍔付きの第2ピン58が挿入され、フランジ部56と第2ピン58の鍔の間に圧縮バネ59が掛け渡されている。そのため、圧縮バネ59のバランスによりヘッド軸2が鉛直に保たれている。
【0041】
なお、ヘッド本体22の中間下面33に凹んで形成された空間部34は、円柱形状で形成され、リテーナ部材23の上部部材31の上側に位置している。また、
図2に示される実施形態においては、空間部34は、上部部材31の長手方向の中央部に位置している。空間部34は、リテーナ部材23の数だけ設けることができ、
図2に示される実施形態のように8個のリテーナ部材23を設ける場合は、8個の空間部34が設けられる。角部にだけリテーナ部材23aを設ける場合、空間部34は4個となる。ただし、空間部34の形状や位置、個数は任意とすることができる。たとえば、空間部34を円柱形状ではなく直方体形状の空間とすることもでき、リテーナ部材23につき複数、たとえば2個(たとえば、リテーナ部材23の両端部)または3個(たとえば、リテーナ部材23の両端部および中央部)の空間部34を備えるようにしてもよい。
【0042】
図3は、基板保持ヘッド21を用いた研磨装置1の構成を示す概念図である。
図3を参照し、適宜
図1、
図2を参照して、研磨装置1の構成を説明する。研磨装置1は、基板保持ヘッド21、ベアリングボール3、ヘッド軸2、研磨盤38、研磨布39、第1空気供給ライン36、第2空気供給ライン62、第1エアレギュレータR1、第2エアレギュレータR2、純水供給ライン46、純水レギュレータR4を備える。研磨装置1は、さらにヘッド固定部材4、連結軸48、エアシリンダ5、ピストン14、第3空気供給ライン51、第3エアレギュレータR3、回転筒6、タイミングプーリ7、タイミングベルト8、タイミングプーリ10、モータ9、砥液供給ノズル13等を備える。
【0043】
前述のように基板保持ヘッド21は、ベアリングボール3を介してヘッド軸2に係合されている。ヘッド軸2は、ヘッド固定部材4に昇降及び回転自在に図示しない軸受を介して係合され、連結軸48、連結棒61を介してエアシリンダ5内のピストン14に連結されている。エアシリンダ5は、第3空気供給ライン51に接続されている。第3空気供給ライン51は、第3バルブV3、第3エアレギュレータR3を介して圧縮空気源42に接続される。エアシリンダ5の圧力は、第3エアレギュレータR3によって所定の圧力に制御される。
【0044】
エアシリンダ5の圧力によって、ピストン14は上下動し、ピストン14の上下動により、連結軸48、基板保持ヘッド軸2は、連結棒61を介し上下動し、基板保持ヘッド21の下面に保持された基板Wを研磨盤38から離し、あるいは研磨盤38向かって押し付ける。また、基板保持ヘッド21の上面とヘッド軸2の下端面は、ベアリングボール3を収容するボール軸受を形成しており、基板保持ヘッド21はベアリングボール3を介して
研磨盤38に対してまた研磨布39に対してベアリングボール3を中心に傾動可能になっている。なお、ベアリングボール3はヘッド軸2の中心に位置する。
【0045】
また、ヘッド軸2には回転筒6が取り付けられており、回転筒6はその外周にタイミングプーリ7を備えている。そして、タイミングプーリ7は、タイミングベルト8を介して、ヘッド固定部材4(アームともいう)に固定されたモータ9に設けられたタイミングプーリ10に接続されている。したがって、モータ9を回転駆動することによって、タイミングベルト8およびタイミングプーリ7を介して回転筒6およびヘッド軸2が一体に回転し、ヘッド軸2の回転により基板保持ヘッド21が回転する。また、ヘッド固定部材4の一端は、揺動軸64により支持され、揺動自在となっている。なお、連結軸48へは、ヘッド軸2からの回転は伝達されない。
【0046】
研磨装置1は、制御装置900を有し、研磨装置1に設けられる各種センサや動作機構は制御装置900により制御されるように構成することができる。制御装置900は、入出力装置、演算装置、記憶装置などを備える一般的なコンピュータから構成することができる。
【0047】
次に、
図1、
図2および
図3を参照して、研磨装置1の作用を説明する。上記構成の研磨装置1において、基板保持ヘッド21の下面29に形成された開口30に基板Wを収納し、バルブV0を開とし、空間部43の圧力を真空とし、基板Wを下面29に吸着させる。なお、具体的には、基板Wの裏面W1の外周のみがゴム材50の凸部44に接触する。
【0048】
最初の状態では、基板保持ヘッド21は研磨盤38を離れ研磨盤38より上に位置している。次に、バルブV3を閉から開にし、第3エアレギュレータR3により圧縮空気源42から第3空気供給ライン51を通ってエアシリンダ5に供給される空気圧を制御して、所定の圧力とする。エアシリンダ5内の圧力が所定の値になると、ピストン14が下に移動するので、連結軸48を介してヘッド軸2、基板保持ヘッド21が下に移動し、基板Wが研磨布39の研磨面39A上に載置される。回転筒6は、基板保持ヘッド軸2に取り付けられ、軸方向に相対的に移動可能であるので、基板保持ヘッド軸2が上下動しても、回転筒6はヘッド固定部材4に対して静止している。
【0049】
基板Wが研磨布39上に載置されたのち、バルブV3は、開の状態を保つのでエアシリンダ5内の圧力に起因するピストン14を押す力により、基板保持ヘッド21が、基板Wを研磨布39に向かって押し付けている。なお、基板Wを研磨布39に向かって押し付けるとは、基板Wを研磨盤38に向かって押し付けることも意味している。
【0050】
次に、バルブV0を開から閉にし、さらにバルブV2を閉から開にし、第2エアレギュレータR2により圧縮空気源42から第2空気供給ライン62、第2空気供給ノズル41を通って供給される空間部43の空気圧を制御して、所定の圧力とする。空間部43の空気圧を所定の圧力とすることにより基板Wは、研磨布39に向かって押し付けられる。空間部43を加圧することにより基板Wの中央部を均一な力で押圧することができ、研磨による基板Wの平坦度が向上する。また、空間部43が構成されているので、基板Wの裏面W1に仮に砥液、研磨屑が回り込んでも、裏面W1に傷が形成されない。
【0051】
なお、基板Wの裏面W1の外周のみにゴム材50の凸部44が接触しているので、基板Wの裏面W1の形状の平面からのずれ、水平面からの傾きをより確実に吸収し、空間部43をより安定してシールすることができ、安定した押し付け力を基板Wに付加することができ、研磨による基板Wの平坦度がさらに向上する。
【0052】
なお、ゴム材50を備えない装置で基板を研磨する際には、基板の裏面全面を基板保持
ヘッドの下面と直接接触させて研磨することができる。
【0053】
次に、すべてのバルブV1を閉から開とし、圧縮空気源42から第1空気供給ライン36、第1空気供給ノズル35を通って供給される空間部34の空気圧を第1エアレギュレータR1によりそれぞれ独立に制御して、独立の所定の圧力とする。空間部34の空気圧を所定の圧力とすることにより、シール部材37がリテーナ部材23の上部部材31を所定の押圧力で押し、リテーナ部材23は、研磨布39(研磨盤38)に向かってそれぞれの押圧力により押圧される。また、上述したように、リテーナ部材23は、基板Wとは独立に研磨盤38に向けて押圧され、基板Wとは独立に上下動するように構成されている。そのため、各リテーナ部材23は、基板Wの周囲において研磨盤38を独立して押圧することができ、研磨布39の表面の凹凸に呼応してまたは基板Wの過研磨を予測して基板Wとは独立に上下動させることができる。各リテーナ部材23により、基板Wの角部及び各辺近傍の過研磨や研磨不足を緩和することができ、基板Wの平坦度を向上させることができる。
【0054】
上述のように、各リテーナ部材23は互いに独立に動作することができる。したがって、各リテーナ部材23は、他のリテーナ部材23の動作の影響を受けずに動作して基板Wの周囲を押すので、研磨による基板Wのうねりの解消度が向上し、また研磨後の平坦度を向上させることができる。
【0055】
各リテーナ部材23を、それぞれ独立に制御された押圧力で押圧することができるので、基板Wの四辺形の各角部および各辺部に隣接した領域毎に独立した押圧力を付与することができる。したがって、たとえば、基板Wの研磨速度を大きくしたい箇所に隣接するリテーナ部材23の押圧力を弱くし、研磨速度を小さくしたい箇所に隣接するリテーナ部材23の押圧力を強くすることができる。また、基板Wのそり上がっている個所に隣接するリテーナ部材23の押圧力を強くし、そりが生じていない個所に隣接するリテーナ部材23の押圧力を弱くすることができる。このように押圧力を制御することにより、研磨による基板Wのうねりの解消度を向上させ、また研磨後の平坦度を向上させることができる。
【0056】
次に、バルブV4を閉から開とし、純水供給源47から純水供給ライン46、純水供給ノズル45を通って基板保持ヘッド本体22の凹部32に純水が供給される。純水の供給圧力または供給量は純水レギュレータR4によって所定の圧力、所定の量に制御される。純水の供給によってリテーナ部材23の周囲の隙間に入り込んだ砥液等を洗い流すことができる。
【0057】
次に砥液供給ノズル13から研磨布39上面に研磨液としての砥液Qを流し、モータ9によって回転させる。モータ9が回転すると、タイミングプーリ10が回転し、タイミングベルト8を介してタイミングプーリ7が回転し、回転が基板保持ヘッド軸2に伝達される。基板保持ヘッド軸2が回転すると、基板保持ヘッド21が回転し、基板保持ヘッド21によって研磨布39に押し付けられている基板Wが回転する。このときリテーナ部材23は、基板Wに同期して回転する。一方、研磨盤38も不図示の回転駆動装置によって、基板保持ヘッド21の回転方向と同一の方向に回転するので基板Wと研磨布39の研磨面39Aとの間に相対運動が生じ、基板Wの被研磨面W3の化学的、機械的研磨が行われる。砥液供給ノズル13から研磨布39上面に研磨液としての砥液Qを流しているので、研磨布39に砥液Qが保持され、基板Wはその被研磨面W3と研磨布39の間に砥液Qが残存した状態で研磨される。
【0058】
図4Aは、一実施形態による基板保持ヘッド21の構造を模式的に示す断面図である。
図4Aは、後述の
図4B中の矢印Aの方向から見た断面図に相当する。基板保持ヘッド21は、ヘッド軸2の下端にベアリングボール3を介して連結されている。ベアリングボー
ル3は、基板保持ヘッド21とヘッド軸2との互いの傾動を許容しつつ、ヘッド軸2の回転を基板保持ヘッド21に伝達するボールジョイントである。基板保持ヘッド21は、略円盤状のヘッド本体22と、ヘッド本体22の下部に配置されたリテーナ部材23と、を備えている。ヘッド本体22は金属やセラミックス等の強度および剛性が高い材料から形成することができる。また、リテーナ部材23は、剛性の高い樹脂材またはセラミックス等から形成することができる。
【0059】
ヘッド本体22およびリテーナ部材23の内側に形成された空間内には、基板Wに当接する弾性パッド70が収容されている。弾性パッド70とヘッド本体22との間には、複数の圧力室(エアバッグ)P1,P2が設けられている。圧力室P1,P2は弾性パッド70とヘッド本体22とによって形成されている。圧力室P1,P2にはそれぞれ流体路81,83を介して加圧空気等の加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。中央の圧力室P1は基板Wの過研磨が生じにくい領域(たとえば
図2Aに示される基板Wの中央の領域)に対応する形状、圧力室P2は基板Wの過研磨が生じやすい領域(たとえば
図2Aに示される基板Wの角部の領域)に対応する形状とすることができる。
図4Bは、
図4Aに示される基板保持ヘッド21を下方からみた底面図である。ただし、
図4Bは、基板Wの部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
図4Bは、基板Wが基板保持ヘッド21に保持されたときの圧力室P1、P2の配置を示している。上述のように、圧力室P2は、基板Wの過研磨が生じやすい領域であり、
図4Bに示されるように、四辺形の基板Wの四隅の三角形で示される位置に対応する領域に配置されている。圧力室P1は、圧力室P2以外の領域である。なお、一実施形態として、圧力室P1、P2以外にも、他の圧力室およびそこに流体を供給するための流体路を設けてもよい。他の圧力室を真空引きすることにより基板Wを基板保持ヘッド21の弾性パッド70に保持させるように、また、他の圧力室に窒素ガス、乾燥空気、圧縮空気等を供給することにより、基板Wが基板保持ヘッド21からリリースされるようにしてもよい。さらに、基板Wを基板保持ヘッド21の弾性パッド70に真空吸着させるために、任意の圧力室の基板側の一部に穴を形成しておいてもよい。
【0060】
圧力室P1,P2の内部圧力は互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、基板Wの中央部および4つの角部に対する押圧力を独立に調整することができる。さらに、図示の実施形態のように圧力室P2が複数ある場合、圧力室のそれぞれは互いに独立して内部圧力を制御することができる。
図4に示される実施形態において、弾性パッド70は、連続的な1つの弾性部材から圧力室P1,P2を形成するように形成されている。
【0061】
基板Wの周端部はリテーナ部材23に囲まれており、研磨中に基板Wが基板保持ヘッド21から飛び出さないようになっている。リテーナ部材23とヘッド本体22との間には弾性バッグ73が配置されており、その弾性バッグ73の内部には圧力室Prが形成されている。リテーナ部材23は、弾性バッグ73の膨張/収縮によりヘッド本体22に対して相対的に上下動可能となっている。圧力室Prには流体路86が連通しており、加圧空気等の加圧流体が流体路86を通じて圧力室Prに供給されるようになっている。圧力室Prの内部圧力は調整可能となっている。したがって、基板Wの研磨布39に対する押圧力とは独立してリテーナ部材23の研磨布39に対する押圧力を調整することができる。
図4に示される実施形態による基板保持ヘッド21において、
図2に示されるように複数のリテーナ部材23を備えるように構成し、各リテーナ部材23を各弾性バッグ73により、それぞれ独立して各リテーナ部材23の研磨布39に対する押圧力を調整することができる。また、
図4、および以下で説明する
図5〜7に示される実施形態による基板保持ヘッド21において、リテーナ部材23およびその取付機構、移動機構として、
図1、2とともに説明した構造を採用してもよい。
【0062】
図5Aは、一実施形態による基板保持ヘッド21の構造を模式的に示す断面図である。
図5Aは、後述の
図5B中の矢印Aの方向から見た断面図に相当する。
図5Aに示される基板保持ヘッド21は、圧力室P1、P2を形成する弾性パッド70の構造以外は、
図4Aで説明した基板保持ヘッド21と同様の構成とすることができる。
図5Aに示される実施形態による基板保持ヘッド21において、圧力室P1は、
図4Aと同様に単一の弾性パッド70により形成されている。
図5Aに示される実施形態による基板保持ヘッド21において、圧力室P2は、圧力室P1を形成する弾性パッド70とは別体の弾性パッド70−2により形成されており、また、圧力室P1の空間内に形成される。圧力室P2は、二重構造ともいえる。
図5Aの実施形態においても
図4Aの実施形態と同様に、中央の圧力室P1は基板Wの過研磨が生じにくい領域(たとえば
図2Aに示される基板の中央の領域)に対応する形状、圧力室P2は基板Wの過研磨が生じやすい領域(たとえば
図2Aに示される基板Wの角部の領域)に対応する形状とすることができる。
図5Bは、
図5Aに示される基板保持ヘッド21を下方からみた底面図である。ただし、
図5Bは、基板Wの部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
図5Bは、基板Wが基板保持ヘッド21に保持されたときの圧力室P1、P2の配置を示している。上述のように、圧力室P2は、基板Wの過研磨が生じやすい領域であり、
図5Bに示されるように、四辺形の基板Wの四隅の三角形で示される位置に対応する領域に配置されている。圧力室P1は、圧力室P2以外の領域である。なお、一実施形態として、上述したように、圧力室P1、P2以外にも、他の圧力室およびそこに流体を供給するための流体路を設けてもよい。圧力室P1を形成する弾性パッド70と、圧力室P2を形成する弾性パッド70−2は、材料は同一でもよく、また、異なる材料を使用してもよい。
【0063】
図6Aは、一実施形態による基板保持ヘッド21の構造を模式的に示す断面図である。
図6Aは、後述の
図6B中の矢印Aの方向から見た断面図に相当する。
図6に示される基板保持ヘッド21は、圧力室P1、P2を形成する弾性パッド70の構造以外は、
図4で説明した基板保持ヘッド21と同様の構成とすることができる。
図6Aに示される実施形態による基板保持ヘッド21において、圧力室P1は、
図4Aと同様に単一の弾性パッド70により形成されている。
図6Aに示される実施形態による基板保持ヘッド21において、圧力室P2は、圧力室P1を形成する弾性パッド70とは別体の弾性パッド70−2により形成されており、また、圧力室P2は圧力室P1に隣接して形成される。
図6Aの実施形態においても
図4の実施形態と同様に、中央の圧力室P1は基板Wの過研磨が生じにくい領域(たとえば
図2Aに示される基板Wの中央の領域)に対応する形状、圧力室P2は基板Wの過研磨が生じやすい領域(たとえば
図2Aに示される基板Wの角部の領域)に対応する形状とすることができる。
図6Bは、
図6Aに示される基板保持ヘッド21を下方からみた底面図である。ただし、
図6Bは、基板Wの部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
図6Bは、基板Wが基板保持ヘッド21に保持されたときの圧力室P1、P2の配置を示している。上述のように、圧力室P2は、基板Wの過研磨が生じやすい領域であり、
図6Bに示されるように、四辺形の基板Wの四隅の三角形で示される位置に対応する領域に配置されている。圧力室P1は、圧力室P2以外の領域である。なお、一実施形態として、上述したように、圧力室P1、P2以外にも、他の圧力室およびそこに流体を供給するための流体路を設けてもよい。圧力室P1を形成する弾性パッド70と、圧力室P2を形成する弾性パッド70−2は、材料は同一でもよく、また、異なる材料を使用してもよい。
【0064】
図7Aは、一実施形態による基板保持ヘッド21の構造を模式的に示す断面図である。
図7Aは、後述の
図7B中の矢印Aの方向から見た断面図に相当する。
図7Aに示される基板保持ヘッド21は、
図4〜
図6の実施形態の基板保持ヘッド21と同様であるが、さらに追加的な圧力室P3を備える。圧力室P3は、圧力室P1の内部空間に別体の弾性パッド70−4により形成されている。圧力室P3は、二重構造であるともいえる。圧力室P3には、流体路84を介して加圧空気等の加圧流体が供給され、あるいは真空引きがさ
れるようになっている。
図7Aに示される実施形態において、圧力室P3は、基本的には過研磨が生じにくい領域(たとえば
図2Aに示される基板の中央の領域)の一部に配置される。圧力室P3は、研磨対象である基板に特定のパターン(デバイス構造など)が形成されている位置に対応するように設けることができる。そのため、基板上においてパターンがある領域とパターンが無い領域に対する押し付け圧力をそれぞれ制御することができ、それぞれの領域の研磨量を制御することができる。
図7Bは、
図7Aに示される基板保持ヘッド21を下方からみた底面図である。ただし、
図7Bは、基板Wの部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
図7Bは、基板Wが基板保持ヘッド21に保持されたときの圧力室P1、P2、P3の配置を示している。上述のように、圧力室P2は、基板Wの過研磨が生じやすい領域であり、
図7Bに示されるように、四辺形の基板Wの四隅の三角形で示される位置に対応する領域に配置されている。圧力室3は、上述のように、研磨対象である基板に特定のパターン(デバイス構造など)が形成されている位置に対応するように設けることができ、一例として
図7Bでは、基板Wの中央付近に4つの四辺形の領域として圧力室P3が設けられている。圧力室P1は、圧力室P2、P3以外の領域である。なお、一実施形態として、上述したように、圧力室P1、P2、P3以外にも、他の圧力室およびそこに流体を供給するための流体路を設けてもよい。
【0065】
図21Aは、一実施形態による基板保持ヘッド21の構造を模式的に示す断面図である。
図21Aは、後述の
図21B中の矢印Aの方向から見た断面図に相当する。
図21に示される基板保持ヘッド21は、圧力室P1〜P5を形成する弾性パッド70の構造以外は、
図4で説明した基板保持ヘッド21と同様の構成とすることができる。
図21に示される実施形態による基板保持ヘッド21において、圧力室P1、P3、P4、P5が中心部から外側に向かって同心円状に形成されている。圧力室P1〜P5は、
図4に示される実施形態と同様に単一の弾性パッド70により形成することができる。あるいは、各圧力室P1〜P5の全てまたは一部を異なる弾性パッドにより形成してもよい。また、圧力室P1〜P5の一部は、
図7に示されるように二重構造になるように形成してもよい。
図21Aに示されるように、圧力室P1、P3、P4、P5にはそれぞれ、流体路81、84、85、87が連通しており、流体路81、84、85、87に空気等の流体を供給することで、圧力室P1、P3、P4、P5の圧力をそれぞれ独立に制御することができる。
図21Bは、
図21Aに示される基板保持ヘッド21を下方からみた底面図である。ただし、
図21Bは、基板Wの部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
図21Bは、基板Wが基板保持ヘッド21に保持されたときの圧力室P1〜P5の配置を示している。上述のように、圧力室P2は、基板Wの過研磨が生じやすい領域であり、
図21Bに示されるように、四辺形の基板Wの四隅の三角形で示される位置に対応する領域に配置されている。圧力室P1、P3、P4、P5は、上述のように中心部から外側に向かって同心円状に形成されている。このような圧力室の配置は、特に大型の基板を研磨する場合に有効である。大型の基板の場合、基板の中心部、中間部、端部において研磨量の差異が生じることがある。そこで、本実施形態のように、基板の各領域における、研磨布39への押圧力を制御することで、基板の研磨の面内均一性を向上させることができる。なお、
図21の実施形態においては、同心円状の圧力室P1、P3、P4、P5は、4個に分割されているが、同心円状の圧力室の数は任意であり、4以上または以下の分割構成にしてもよい。
【0066】
図22Aは、一実施形態による基板保持ヘッド21の構造を模式的に示す断面図である。
図22Aは、後述の
図22B中の矢印Aの方向から見た断面図に相当する。
図22に示される基板保持ヘッド21は、圧力室P1〜P7を形成する弾性パッド70の構造以外は、
図4で説明した基板保持ヘッド21と同様の構成とすることができる。
図22に示される実施形態による基板保持ヘッド21において、圧力室P1、P3、P4、P5、P6は、
図21の実施形態と同様に中心部から外側に向かって同心円状に形成されている。
図22に示される実施形態においては、基板Wの辺部に対応する位置にも圧力室P7が設けら
れている。
図22の実施形態においては、辺部の圧力室P7は、4か所である。これらの圧力室P1〜P7は、
図4に示される実施形態と同様に単一の弾性パッド70により形成することができる。あるいは、各圧力室P1〜P0の全てまたは一部を異なる弾性パッドにより形成してもよい。また、圧力室P1〜P7の一部は、
図7に示されるように二重構造になるように形成してもよい。
図22Aに示されるように、圧力室P1、P3、P4、P5、P6、P7にはそれぞれ、流体路81、84、85、87、88、89が連通しており、流体路81、84、85、87、88、89に空気等の流体を供給することで、圧力室P1、P3、P4、P5、P6、P7の圧力をそれぞれ独立に制御することができる。なお、
図22に示される実施形態において、圧力室P7は4個設けられている。これらの圧力室P7は、互いに独立して制御できるように構成してもよい。
図22Bは、
図22Aに示される基板保持ヘッド21を下方からみた底面図である。ただし、
図22Bは、基板Wの部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
図22Bは、基板Wが基板保持ヘッド21に保持されたときの圧力室P1〜P7の配置を示している。上述のように、圧力室P2は、基板Wの過研磨が生じやすい領域であり、
図22Bに示されるように、四辺形の基板Wの四隅の三角形で示される位置に対応する領域に配置されている。圧力室P1、P3、P4、P5、P6は、上述のように中心部から外側に向かって同心円状に形成されており、圧力室P7は、基板Wの辺部に対応する位置に形成されている。このような圧力室の配置は、特に大型の基板を研磨する場合に有効である。大型の基板の場合、基板の中心部、中間部、端部において研磨量の差異が生じることがある。そこで、本実施形態のように、基板の各領域における、研磨布39への押圧力を制御することで、基板の研磨の面内均一性を向上させることができる。特に、
図22に示される実施形態においては、基板Wの角部だけでなく辺部の研磨量を制御することができ、基板の研磨の面内均一性を向上させることができる。なお、
図22の実施形態においては、同心円状の圧力室P1、P3、P4、P5、P6は、5個に分割されているが、同心円状の圧力室の数は任意であり、5以上または以下の分割構成にしてもよい。
【0067】
図21に示される実施形態においては、(1)角部における圧力室P2、および(2)楕円形状の複数の圧力室P1、P3、P4を組み合わせている。
図22に示される実施形態においては、(1)角部における圧力室P2、(3)略長方形状の複数の圧力室P1、P3〜P5、および(4)辺部の圧力室P7を組み合わせている。これらの圧力室の形状および配置の特徴(1)〜(4)は任意に組み合わせることができる。また、各圧力室の数は任意とすることができる。(2)における楕円形状の複数の圧力室P1、P3、P4、および(3)における略長方形状の複数の圧力室P1、P3〜P5の中心は一致していてもよく、一致していなくてもよい。四辺形の基板の研磨の均一性を向上するために適切な圧力室の構造を採用することができる。
【0068】
図4〜
図7および
図21、22で示される実施形態においては、基板Wと研磨布39との接触圧力を、圧力室P1〜P7により領域ごとに制御することができる。また、圧力室P1〜P7がそれぞれ複数設けられている場合、それぞれの圧力室P1〜P7の圧力を独立して制御することができる。そのため、基板Wの部分的な過研磨および研磨不足が生じないようにすることができ、研磨後の基板の平坦度を向上させることができる。
【0069】
図8Aは、一実施形態による、基板保持ヘッド21を模式的に示す底面図である。
図8Aは、基板保持ヘッド21のリテーナ部材23と基板Wだけを示しており、他の構造は省略している。
図8Aの実施形態においては、基板Wは四辺形である。
図8Aの基板保持ヘッド21は、外形が円形または楕円形であるリテーナ部材23を備える。あるいは、リテーナ部材23は、角部が湾曲する形状を備える外形が概ね四辺形のものでもよい。
図8Aに示されるリテーナ部材23の形状は、とがった角部が無いのでリテーナ部材23の回転に対して、リテーナ部材23による押圧分布の急激な変化部がない。そのため、四辺形の基板Wを内部に設置しても押圧分布が角部で急激な変化をすることなく均一な研磨が可能
となる。
【0070】
図8Aに示される実施形態においては、リテーナ部材23の研磨布39の方を向く面には、複数の溝90が形成されている。
図8Aに示されるように、溝90は、概ね放射状に形成されている。そのため、基板保持ヘッド21を回転させながら基板Wを研磨する時に、リテーナ部材23の内側に配置される基板Wの表面にスラリーを効率的に取り込むことができ、スラリーのリフレッシュを行うことが可能になる。また、溝90のいくつかは基板側から外側に向かって溝の幅が大きくなるように形成することができる。
図8Aに示されるリテーナ部材23の溝90は、基板側から外側に向かって溝の幅が大きくなっている。また、一実施形態として、リテーナ部材23のいくつかの溝90は、外側から基板側に向かって溝90の幅が大きくなるように形成してもよく、さらに、基板側から外側に向かって幅が大きくなる溝と、外側から基板側に向かって幅が大きくなる溝が混在するようにしてもよい。リテーナ部材23の溝90の形状と基板保持ヘッド21の回転方向により、基板Wの表面へのスラリーの取り込み、および基板Wの表面からのスラリーの排出がより効率的になされる。たとえば、
図8Aに示されるリテーナ部材23の溝90は、放射状に形成され、リテーナ部材23の外側に向かって溝90の幅が大きくなっている。そのため、基板保持ヘッド21を
図8Aの紙面の上方からみて時計回りに回転させる場合、研磨時に基板Wの表面にスラリーを取り込みやすく、逆に反時計回りに基板保持ヘッド21を回転させる場合、研磨時に基板Wの表面からスラリーを排出しやすい。一実施形態において、研磨時に基板Wの表面にスラリーを取り込みやすい溝90と、研磨時に基板Wの表面からスラリーを排出しやすい溝90とを両方形成して、基板W表面へのスラリーの循環を効率的に行えるようにしてもよい。
【0071】
図8Bは、
図8Aに示される基板保持ヘッド21の断面を模式的に示す図である。
図8Bにおいては、図示の明瞭化のために、リテーナ部材23、基板W、研磨盤38、および研磨布39だけを示している。基板保持ヘッド21へのリテーナ部材23の取付構造、移動機構、基板Wの保持構造などは、任意の構造を採用することができ、たとえば、
図1、4で説明した構造を採用することができる。
【0072】
図9は、一実施形態による、研磨装置1を概略的に示す側面図である。
図9の研磨装置1は、四辺形の基板Wを保持する基板保持ヘッド21を備える。基板保持ヘッド21の詳細構造は任意とすることができ、たとえば、本明細書で開示される任意の構造を備える基板保持ヘッド21とすることができる。
図9の研磨装置1は、回転可能な研磨盤38および研磨盤38の上面に配置される研磨布39を備える。また、
図9の研磨装置1は、研磨布39の表面へスラリーを供給するための砥液供給ノズル13を備える。基板保持ヘッド21に保持された基板Wを研磨するときは、基板保持ヘッド21を研磨布39へ押し当て、砥液供給ノズル13により研磨布39にスラリーを供給しながら、研磨盤38および基板保持ヘッド21をそれぞれ回転させる。
図9の研磨装置1は、基板Wの研磨中に基板保持ヘッド21を研磨布39の表面に平行な方向(たとえば円形の研磨盤38の半径方向)に移動させる移動機構を備える。この移動機構による基板保持ヘッド21の移動量は、
図9に示されるように、四辺形の基板Wを研磨しているときに、基板Wの一部が研磨布39からはみ出すように決定することができる。
図9に示されるように、研磨盤38の回転軸と、基板保持ヘッド21の回転軸との間の最大距離(「揺動範囲」ともいう)をR、研磨布39の半径をr1、基板保持ヘッド21の半径(四辺形の基板Wに外接する円の半径)をr2とするとき、R>(r1−r2)となるように基板保持ヘッド21の移動範囲を制御すれば、四辺形の基板の一部が研磨布39からはみ出すことになる。上述したように、四辺形の基板Wを研磨すると、基板Wの角部に過研磨が生じやすい。
図9の研磨装置1のように、四辺形の基板Wの一部が研磨布39からはみ出るように基板保持ヘッド21を移動させながら基板Wを研磨することで、研磨中に、基板Wの角部が研磨布39に接触していない時間が生じ、基板Wの角部の研磨量を低減することができ、角部の過研磨を抑制す
ることが可能になる。基板保持ヘッド21の揺動範囲Rは、研磨量のシミュレーションや実験によって決定することができる。
【0073】
なお、
図9の実施形態による研磨装置1においては、基板保持ヘッド21の揺動範囲Rを大きくして、研磨中に四辺形の基板Wの一部が研磨布39からはみ出すようにしているが、他の実施形態として揺動範囲Rが小さくなるように制御してもよい。基板保持ヘッド21の揺動範囲Rを小さくすることで、研磨盤38および研磨布39を小さくすることができ、小型の研磨装置を実現することができる。揺動範囲Rを小さくする場合、揺動範囲Rは、たとえば0.1mm〜50mmとすることができる。
【0074】
図9に示される研磨装置1において、研磨盤38は、基板Wの研磨の終点を検知するためのセンサ100を備えることができる。
図10は、一実施形態による、センサ100を備える研磨盤38を概略的に示す断面図である。
図10は、研磨盤38のセンサ100が設けられる部分を示している。
図10に示されるように、センサ100は、研磨盤38に配置される。センサ100は、渦電流センサ、光学式センサ、ファイバーセンサ等を使用することができる。センサ100は、有線または無線により制御装置900(
図3)と連絡可能に構成される。センサ100として光学式センサを使用する場合、研磨布39の一部に切欠き102を設ける。切欠き102の位置にビューポート104を配置する。ビューポート104を介して、光学式のセンサにより光照射と反射光の検知を行うことができる。研磨中の基板Wの反射率の変化などから、基板Wの研磨の終点を検知することができる。センサ100としてファイバーセンサを用いる場合、ビューポート104は無くてもよい。その場合、ファイバーセンサの周囲から純水を供給しながら検出を行うことができる。センサ100は、研磨盤38に複数配置してもよい。たとえば、研磨盤38の中心部と周辺部に配置し、両方のセンサ100からの信号を監視して、基板Wの研磨の終点を決定してもよい。また、複数のセンサ100を用いることで、基板Wの複数の領域の研磨面の膜厚を監視することができる。基板Wの複数の領域の研磨の終点が同時期になるように、複数のセンサ100からの信号に基づき研磨条件を制御することができる。たとえば、上述したリテーナ部材23の押圧力や、
図4〜
図7の実施形態においては、圧力室P1、P2、P3の圧力などを変更することができる。
【0075】
スラリーのリフレッシュ化を行う形態として次の形態が可能である。たとえば、
図3に示される実施形態において、揺動軸64にヘッド固定部材4が取り付けられ、ヘッド固定部材4の先に基板保持ヘッド21が取り付けられている。基板保持ヘッド21と研磨布39が取り付けられた研磨盤38とが共に回転して、基板保持ヘッド21に取り付けられた基板Wの研磨が行われる。この時、処理液供給ノズル13からスラリー等の処理液を研磨布39上に供給するが、一実施形態として、ヘッド固定部材4を揺動軸64により旋回させて定期的にヘッド固定部材4が研磨盤38上から退避するようにし、研磨布39上に残留しているスラリーを洗い流すようにすることができる。また、一実施形態として、ヘッド固定部材4を揺動軸64により旋回させてヘッド固定部材4を研磨盤38上から退避させるようにするのではなく、基板保持ヘッド21を上方向に移動させて、研磨布39から基板Wおよびリテーナ部材23が離れたときに研磨布39上に残留しているスラリーを洗い流して、新しいスラリーを供給するようにしてもよい。これらの、スラリーのリフレッシュ方式は、特に長辺が300mmを超えるような大型の基板について有利である。基板が大型となると基板の中心部に入ったスラリーのリフレッシュが難しくなるからである。
【0076】
図11は、一実施形態による、研磨装置1を概略的に示す側面図である。
図11の研磨装置1は、四辺形の基板Wを保持する基板保持ヘッド21を備える。基板保持ヘッド21の詳細構造は任意とすることができ、たとえば、本明細書で開示される任意の構造を備える基板保持ヘッド21とすることができる。
図11の研磨装置1は、回転可能な研磨盤38および研磨盤38の上面に配置される研磨布39を備える。また、
図11の研磨装置1
は、研磨布39の表面へスラリーを供給するための砥液供給ノズル13を備える。基板保持ヘッド21に保持された基板Wを研磨するときは、基板保持ヘッド21を研磨布39へ押し当て、砥液供給ノズル13により研磨布39にスラリーを供給しながら、研磨盤38および基板保持ヘッド21をそれぞれ回転させる。
図11に示される研磨装置1は、温度制御部150を備える。温度制御部150は、研磨布39の温度を制御するためのものである。
図11に示される実施形態による研磨装置1は、研磨布39に接触可能に構成される温度制御部材152を備える。温度制御部材152は、たとえば、ヒータ内蔵型のセラミック部材や、温度調整された液体が通る流体流路を備えるセラミック部材などから構成することができる。基板Wの研磨中に、温度制御された温度制御部材152を研磨布39に接触させることで、研磨布39の温度を制御することができる。なお、温度制御部材152には、基板Wの表面に平行な方向、および基板の表面に垂直な方向に温度制御部材152を移動させるための移動機構(図示せず)が連結される。かかる移動機構により、研磨中に温度制御部材152を適宜移動させて、基板Wの研磨中に基板保持ヘッド21と温度制御部材152とが干渉しないようにすることができる。
【0077】
図12は、一実施形態による温度制御部150を備える研磨盤38を概略的に示す断面図である。
図12に示される研磨盤38は、研磨布39の下に温度制御部材152を備える。一実施形態において、
図12の温度制御部材152は、電熱線などから形成されるヒータ154を備える。また、一実施形態として、
図12の温度制御部材152は、温度調整された液体または気体が通る流体通路156を備える。温度制御部材152は、これらのヒータ154または流体通路156を備えるセラミック部材とすることができる。
図12に示される研磨盤38は、温度調整された温度制御部材152により研磨布39の温度を制御することができる。
【0078】
図13は、一実施形態による研磨方法を示すフローチャートである。
図13のフローチャートは基板の両方の面を研磨する方法の一例を示している。本方法の研磨を実現するのに、研磨装置は任意のものを使用することができ、本明細書で開示する特徴を備える研磨装置1を用いてもよく、また、それ以外の研磨装置を用いてもよい。まず、基準面を形成するために、研磨対象である基板Wの第1面を研磨する。このとき第1面はハードバックの研磨を行う。ハードバックの研磨を行うために、セラミックなどの硬質のプレートを備える基板保持ヘッド21に基板Wを保持させる。このとき硬質のバッキング材を使用してもよく、また、樹脂製の吸着フィルムを用いて基板Wを基板保持ヘッド21に取り付けてもよい。基板Wの第1面に基準面を形成することができたら、次に基板Wの第1面の反対側の第2面を研磨する。本方法を行う研磨装置1において、研磨装置1内で基板を搬送するための搬送機構は、基板Wを反転させる反転機構を備える。かかる反転機構により基板Wを反転させて、基板Wの第2面が研磨布39の方を向くように基板Wを基板保持ヘッド21に保持させる。基板Wの第2面を研磨するときはソフトバッグの研磨を行う。第2面を研磨したら、基板Wをもう一度反転させて、第1面に対してソフトバッグの研磨を行う。なお、本方法を実行する研磨装置1において、基準面を形成するときに第1面をハードバックで研磨するときに、ハードバック用の基板保持ヘッドと、ソフトバッグ用の基板保持ヘッドとの両方のヘッドを備えるように構成してもよい。また、基準面を形成するときにソフトバッグの研磨を行ってもよい。また、基板Wの両方の面を研磨せずに片面だけを研磨してもよい。たとえば、基準面を形成するために第1面を研磨し、その後に基板を反転させて第2面を研磨するものとしてもよい。基板を研磨するときに、本明細書で開示するリテーナ部材23や、弾性パッド70を利用することで、基板Wの研磨布39に対する押圧力を制御し、研磨の均一性を高めることができる。ハードバックの研磨の場合、リテーナ部材23を使用せずに、基板Wの周囲の溝構造が研磨布39の高さ方向(基板Wの面に垂直な方法)のクリアランスを±10μm〜1000μmの範囲で調整しておくようにしてもよい。
【0079】
本明細書で開示される研磨装置1で基板を研磨する際、任意の研磨条件で研磨を行うことができる。たとえば以下の研磨条件で研磨を行うことができる。基板Wに生じている大きなうねりを取る場合は、固定砥粒を用いることができる。たとえば、上述の基準面を形成する場合に用いることができ、固定砥粒を備える研磨布39を使用することができる。固定砥粒としては、たとえば、下記のものがある。酸化セリウム(CeO
2)、SiO
2、Al
2O
2、ZrO
2、MnO
2、Mn
2O
3等が用いられる。絶縁膜を研磨する場合には、酸化セリウム(CeO
2)、Al
2O
3が金属膜を研磨する場合には、Al
2O
3、SiO
2等が好適である。これらの砥粒として微細な砥粒を使用すればスクラッチの無い研磨を実現できることが分かっており、微細な砥粒を少しの力で分散可能な造粒粉に加工し、固定砥粒に用い、スクラッチの無い研磨を実現することができる。砥粒は、たとえば、平均粒径1.0μm以下、平均粒径10μm以下とすることができる。たとえば、基板の粗削り研磨の時に平均粒径が数μmの固定砥粒を用い、さらに仕上げ研磨の時に平均粒径が数百nmの固定砥粒を用いることができる。これらの砥粒を硬質又は軟質バインダを用いて研磨パッドなどに固定する。また、基板の研磨に不織布研磨材を用いることもできる。不織布研磨材としては、例えばスコッチブライト(登録商標)に代表されるように、合成繊維の1本1本に研磨砥粒を接着剤でつなぎ止めたものを使用することができる。不織布研磨材はその繊維構造によって、研磨のために加えられた力が繊維のスプリング効果(弾力性)によって分散される為、削りすぎや深いスクラッチが入ることを防止することができる。また、基板Wを研磨するときにCMPに使用されるスラリーを使用することもできる。スラリーとしては、たとえば、2−キノリンカルボン酸、酸化剤、ポリシロキサン被膜などの界面活性剤で表面が覆われた硬質無機化合物粒子(材質:アルミナや酸化セリウムもしくは、Al,Cu,Si,Cr,Ce,Ti,C,Fe のうちの少なくとも1種類の元素を主成分とする酸化物、炭化物、又は窒化物、あるいはこれら各化合物の混合物または混晶物)からなる研磨砥粒および水とを含有する。酸化剤としては、例えば過酸化水素(H
2O
2)、次亜塩素酸ソーダ(NaClO)等を用いることができる。スラリー中の研磨砥粒の含有量は、0.1〜50重量%にすることが好ましい。また、基板の粗削り研磨に固定砥粒を用い、仕上げ研磨の時にスラリーを用いたCMP研磨を用いることもできる。
【0080】
図14は、一実施形態による、研磨装置1を概略的に示す側面図である。
図14の研磨装置1は、四辺形の基板Wを保持するテーブル238を備える。テーブル238は、たとえばモータなどにより回転可能に構成される。また、テーブル238は、上面にたとえば真空吸着などにより四辺形の基板Wを固定することができるように構成される。基板Wは、被研磨面が上方になるようにテーブル238に固定される。さらに、テーブル238には、四辺形の基板Wを囲う位置にリテーナ部材223を備える。なお、
図14および後述の
図15〜
図19に示される実施形態において、
図4〜
図7で説明した圧力室P1、P2、P3を形成する弾性パッド70、70−2、70−4等を使用して基板Wと後述する研磨パッド239との接触圧力を領域ごとに制御できるようにしてもよい。その場合、圧力室P1、P2、P3を形成する弾性パッド70、70−2、70−4および流体路81、83、84は、テーブル238に設けられる。また、一実施形態として、基板Wをテーブル238に保持するのに、上述したハードバックの方式を使用してもよい。
【0081】
図15は、
図14に示される研磨装置1のテーブル238を上方からみた上面図である。
図14に示される実施形態においては、テーブル238は、四辺形の基板Wを囲うように8個のリテーナ部材223を備えている。なお、
図15において、基板Wの角部に隣接して配置されるリテーナ部材を符号223aで示し、基板Wの辺部に隣接して配置されるリテーナ部材を符号223bで示している。各リテーナ部材23は、
図1、2とともに説明した基板保持ヘッド21へのリテーナ部材23の取付構造と類似の構造を使用して、テーブル238に取り外し可能に固定することができる。また、
図1、2の実施形態において、リテーナ部材23が、基板Wの面に垂直な方向に移動可能であったのと同様に、
図1
4の実施形態においても各リテーナ部材223は、テーブル238の基板支持面に垂直な方向の高さを変更可能に構成することができる。典型的には、リテーナ部材223は、基板Wがテーブル238に固定された状態において、リテーナ部材223の表面がわずかに基板Wの表面よりも高い位置になるように設定する。このようにリテーナ部材223の高さを設定することで、基板Wを研磨するときに、基板Wの縁部、特に角部での過研磨を防止することができる。
【0082】
図14、15に示されるテーブル238は回転可能であるが、他の実施形態として、テーブル238は、代替的にまたは追加的に、テーブル238を基板Wの平面に平行な方向に移動させる移動機構、および/またはテーブル238を基板の平面に垂直な方向に移動させる移動機構を備えるものとしてもよい。
【0083】
図14に示される研磨装置1は、さらに、モータなどにより回転可能な研磨ヘッド221を備える。研磨ヘッド221には、研磨パッド239が取り付けられる。一実施形態として、研磨ヘッド221を基板Wの平面に平行な方向に移動させる移動機構、および研磨ヘッド221を基板の平面に垂直な方向に移動させる移動機構を備える。また、一実施形態として、研磨パッド239の面積は、基板Wの面積よりも小さい。
【0084】
図14に示される研磨装置1は、さらに、テーブル238に保持された基板W上にスラリーおよび/または水などの液体を供給するためのノズル213を備える。テーブル238に保持された基板Wを研磨するときは、研磨ヘッド221を基板Wの方へ移動させて、研磨ヘッド221を回転させながら研磨パッド239を基板Wに押当て基板Wを研磨する。研磨中に研磨ヘッド221を基板W上で移動させることで、また、テーブル238を回転させることで、基板Wの全体を研磨することができる。
【0085】
図16は、一実施形態による、研磨装置1を概略的に示す側面図である。
図16の研磨装置1は、四辺形の基板Wを保持するテーブル238、回転可能な研磨ヘッド221、テーブル238に保持された基板W上にスラリーおよび/または水などの液体を供給するためのノズル213を備える。
図16に示される研磨装置1は、研磨ヘッド221が2個備えられていることを除いて、
図14、15で説明した実施形態と同様とすることができる。また、研磨ヘッド221は、2個でなくとも任意の数の研磨ヘッド221を採用してもよい。
図16の実施形態による研磨装置1は、複数の研磨ヘッド221を備えているので、様々な研磨が可能になる。たとえは、基板Wの全体に対して粗研磨を行う場合、複数の研磨ヘッド221で同時に研磨を実行し、仕上げ研磨の際は1つの研磨ヘッド221で基板の研磨を行うようにしてもよい。また、複数の研磨ヘッド221をそれぞれ独立に制御することができる。また、一実施形態として、複数の研磨ヘッド221を備える研磨装置1において、少なくとも1つの研磨ヘッド221が研削ブレード(砥石)であり、少なくとも1つの研磨ヘッド221が研磨パッド239とすることができる。かかる実施形態において、複数のノズル213を設けてもよい。複数のノズル213は、たとえば、スラリー供給ノズル、研削液供給ノズル、純水供給ノズルなどとすることができる。これらの複数のノズル213は、研削する時、CMP研磨する時、残留スラリーや砥粒などを洗い流すときに切り替えて使用することができる。一実施形態として、粗研磨は研削を用い、仕上げ研磨にCMPを用いることができる。この実施形態の長所は以下の通りである。パッケージ基板の研磨を行う場合、樹脂がモールドされた状態からの研磨または金属が成膜された状態からの研磨を想定した場合においても、半導体の微細加工プロセスに比べて大きな凹凸がある表面状態となっている。CMPは小さなマイクロメートルオーダーの凹凸をナノメートルオーダーの平坦度に仕上げる研磨に優れている。一方、研削は比較的大きな凹凸、たとえばマイクロメートルオーダーからミリメートルオーダーの凹凸をアイクロメートルオーダーの平坦度にする研磨に優れている。よって、パッケージ基板の成膜後の粗研磨は研削で行い、マイクロメートルオーダーの凹凸または終点までの研磨量が数十マイ
クロメートル以下になったら、CMPで仕上げ研磨を行うと効率が良く精度のよい研磨が達成できる。
【0086】
図17は、一実施形態による、研磨装置1を概略的に示す側面図である。
図17の研磨装置1は、四辺形の基板Wを保持するテーブル238、回転可能な研磨ヘッド221、テーブル238に保持された基板W上にスラリーおよび/または水などの液体を供給するためのノズル213を備える。
図17に示される研磨装置1において、研磨ヘッド221以外は、
図14、15に示される研磨装置1と同様の構成とすることができる。
図17に示される実施形態において、研磨ヘッド221は、研磨の終点を検知するためのセンサ100を備える。センサ100は、
図9で説明した研磨盤38に設けられるセンサ100と同様に、渦電流センサ、光学式センサ、ファイバーセンサ等を使用することができる。センサ100は、有線または無線により制御装置900(
図3参照)と連絡可能に構成される。一実施形態として、
図17に示されるように、センサ100のための配線は、研磨ヘッド221のヘッド軸202の中を通すことができる。図示のように、センサ100は、研磨ヘッド221内で、基板Wに近い場所に設けられる。センサ100が光学式のセンサの場合、センサ100が配置される場所において、研磨パッド239に切欠き212が設けられ、切欠き212の部分に透明なガラスなどからなるビューポート204を配置する。そのため、ビューポート204を介して光学センサのレーザーの基板Wへの照射や基板Wからの反射光の測定を行うことができる。また、一実施形態としてビューポート204は無くてもよい。その場合、センサ100の周囲から純水を供給しながら検出を行うことができる。なお、センサ100は、
図16に示されるように複数の研磨ヘッド221を備える研磨装置1に適用することもできる。その場合、センサ100は、複数の研磨ヘッド221の1つにだけ設けるようにしてもよく、また、複数の研磨ヘッド221にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0087】
図17に示される実施形態において、基板W上にスラリーおよび/または水などの液体を供給するためのノズル213は、研磨ヘッド221内に設けられる。
図17に示されるように、ノズル213は、ビューポート204に配置される。ノズル213は、研磨ヘッド221のヘッド軸202の内部を通る配管により、スラリー、純水、および/または洗浄液等の液体供給源に連結されている。そのため、
図17に示される研磨装置1においては、研磨ヘッド221から、基板Wの研磨している箇所に直接的にスラリー等を効率的に供給することができる。なお、
図17においては、センサ100およびノズル213の両方が研磨ヘッド221に組み込まれているが、一実施形態として、いずれか一方だけが研磨ヘッド221に組み込まれるようにしてもよい。たとえば、センサ100だけが研磨ヘッド221に設置されている場合、ノズル213は、たとえば
図14に示されるように、研磨ヘッド221の外部に配置することができる。また、センサ100を備えずに、ノズル213が研磨ヘッド221に設置されるようにしてもよい。その場合、
図17に示される研磨パッド239の切欠き212やビューポート204は不要になる。
【0088】
図18は、一実施形態による、研磨装置1を概略的に示す側面図である。
図18の研磨装置1は、四辺形の基板Wを保持するテーブル238、回転可能な研磨ヘッド221、テーブル238に保持された基板W上に、スラリーおよび/または水などの液体を供給するためのノズル213を備える。
図18に示される研磨装置1において、テーブル238以外は、任意の構成とすることができ、たとえば
図14〜
図17とともに説明した研磨装置1と同様の構成とすることができる。
図18に示される実施形態において、テーブル238は、水平度調整機構250を備える。水平度調整機構250は、テーブル238の上面に設置された平坦なベース252と、ベース252の下部に設けられる複数の高さ調整機構254と、を有する。複数の高さ調整機構254の高さを調整することで、ベース252の傾きを調整することができる。大型の基板Wを研磨する場合、基板Wの設置面が水平でないと、基板Wの端部ではz方向(基板の面に垂直な方向)の位置の差異が大きくなり
、研磨の終点検知の誤差が大きくなる。ベース252の下に配置される高さ調整機構254は、たとえばピエゾ素子、マイクロアクチュエータ、可動ステージなどとすることができる。高さ調整機構254の調整精度は0.1μmから1μm程度とすることが好ましい。
【0089】
図19は、一実施形態による、研磨装置1を概略的に示す側面図である。
図19の研磨装置1は、四辺形の基板Wを保持するテーブル238、回転可能な研磨ヘッド221、テーブル238に保持された基板W上にスラリーおよび/または水などの液体を供給するためのノズル213を備える。テーブル238、研磨ヘッド221、ノズル213は、
図14〜
図18で説明した実施形態と同様の構成とすることができる。
図19に示される研磨装置1において、研磨ヘッド221は、ヘッド軸202に取り付けられている。ヘッド軸202は、ヘッド固定部材214(アームともいう)に回転自在に図示しない軸受を介して係合されている。また、ヘッド固定部材214の一端は、揺動軸264により支持され、揺動モータ266によりヘッド固定部材214を揺動させることができる。ヘッド固定部材214を揺動させることで、研磨ヘッド221を基板Wの面内方向に移動させることができ、基板Wの全面を研磨することができる。また、揺動軸264は、基板Wの面に垂直な方向に移動可能であり、それにより研磨パッド239の基板への押圧力を制御することができる。なお、研磨装置1の駆動機構は、
図3で説明したものと同様の構成とすることもできる。
図19の実施形態による研磨装置1において、研磨の終点を検知するために、ヘッド固定部材214に設けられる、研磨パッド239の基板Wへの押圧力を測定するためのロードセルによるトルク変動を測定すること、および/または揺動モータ266のモータ電流変動値によるトルク変動を測定することで研磨の終点検知を行うことが可能である。研磨パッド239により基板Wを研磨しているとき、基板W上の研磨する層の研磨が終了し、下の層が現れるときに研磨パッド239と基板Wの表面との間の摺動抵抗が変化する。かかる変化をトルク変動として検知することで基板Wの研磨の終点検知を行うことができる。
図19の実施形態における終点研磨においては、トルク変動を測定するときにヘッド固定部材214が介在するために、研磨パッド239と基板Wとの間の力変動を効率よく電流変動として測定することができる。そのため、従来の終点検知である、研磨ヘッド221や回転テーブル238のトルク変動を測定する場合に比べて、本実施形態による終点検知は高い感度で終点検知を行うことができる。なお、
図19に示される研磨装置1において、
図19とともに説明した構成以外は、任意の構成とすることができ、たとえば本明細書で説明した他の実施形態の構成を使用することができる。
【0090】
図20は、一実施形態による、研磨装置1を備える基板処理装置1000の全体構成を示す平面図である。
【0091】
<基板処理装置>
図20は、基板処理装置1000の平面図である。
図20に示すように、基板処理装置1000は、ロード/アンロードユニット200と、研磨ユニット300と、洗浄ユニット400と、を備える。また、基板処理装置1000は、ロード/アンロードユニット200、研磨ユニット300、及び、洗浄ユニット400、の各種動作を制御するための制御ユニット500を備える。以下、ロード/アンロードユニット200、研磨ユニット300、及び、洗浄ユニット400、について説明する。
【0092】
<ロード/アンロードユニット>
ロード/アンロードユニット200は、研磨及び洗浄などの処理が行われる前の基板Wを研磨ユニット300へ渡すとともに、研磨及び洗浄などの処理が行われた後の基板Wを洗浄ユニット400から受け取るためのユニットである。ロード/アンロードユニット200は、複数(本実施形態では4台)のフロントロード部220を備える。フロントロード部220にはそれぞれ、基板をストックするためのカセット222が搭載される。
【0093】
ロード/アンロードユニット200は、筐体1002の内部に設置されたレール230と、レール230上に配置された複数(本実施形態では2台)の搬送ロボット240と、を備える。搬送ロボット240は、研磨及び洗浄などの処理が行われる前の基板Wをカセット222から取り出して研磨ユニット300へ渡す。また、搬送ロボット240は、研磨及び洗浄などの処理が行われた後の基板Wを洗浄ユニット400から受け取ってカセット222へ戻す。
【0094】
<研磨ユニット>
研磨ユニット300は、基板Wの研磨を行うためのユニットである。研磨ユニット300は、第1研磨ユニット300A、第2研磨ユニット300B、第3研磨ユニット300C、及び、第4研磨ユニット300D、を備える。第1研磨ユニット300A、第2研磨ユニット300B、第3研磨ユニット300C、及び、第4研磨ユニット300D、は同一の構成としてもよく、また異なる構成としてもよい。また、第1研磨ユニット300A、第2研磨ユニット300B、第3研磨ユニット300C、及び、第4研磨ユニット300Dの少なくとも1つは、本明細書で開示される任意の特徴を備える研磨装置1を備えることができる。一例として、第1研磨ユニット300Aは、上述した任意の研磨盤38と、上述した任意の基板保持ヘッド21と、を備えるものとすることができる。第1研磨ユニット300Aは、研磨布39に研磨液又はドレッシング液を供給するための処理液供給ノズル13を備える。研磨液は、例えば、スラリーである。ドレッシング液は、例えば、純水である。また、第1研磨ユニット300Aは、研磨布39のコンディショニングを行うためのドレッサ350Aを備える。また、第1研磨ユニット300Aは、液体、又は、液体と気体との混合流体、を研磨布39に向けて噴射するためのアトマイザ360Aを備える。液体は、例えば、純水である。気体は、例えば、窒素ガスである。
【0095】
次に、基板Wを搬送するための搬送機構について説明する。搬送機構は、リフタ370と、第1リニアトランスポータ372と、スイングトランスポータ374と、第2リニアトランスポータ376と、仮置き台378と、を備える。
【0096】
リフタ370は、搬送ロボット240から基板Wを受け取る。第1リニアトランスポータ372は、リフタ370から受け取った基板Wを、第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、及び、第4搬送位置TP4、の間で搬送する。第1研磨ユニット300A及び第2研磨ユニット300Bは、第1リニアトランスポータ372から基板Wを受け取って研磨する。第1研磨ユニット300A及び第2研磨ユニット300Bは、研磨した基板Wを第1リニアトランスポータ372へ渡す。
【0097】
スイングトランスポータ374は、第1リニアトランスポータ372と第2リニアトランスポータ376との間で基板Wの受け渡しを行う。第2リニアトランスポータ376は、スイングトランスポータ374から受け取った基板Wを、第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、及び、第7搬送位置TP7、の間で搬送する。第3研磨ユニット300C及び第4研磨ユニット300Dは、第2リニアトランスポータ372から基板Wを受け取って研磨する。第3研磨ユニット300C及び第4研磨ユニット300Dは、研磨した基板Wを第2リニアトランスポータ372へ渡す。研磨ユニット300によって研磨処理が行われた基板Wは、スイングトランスポータ374によって仮置き台378へ置かれる。
【0098】
<洗浄ユニット>
洗浄ユニット400は、研磨ユニット300によって研磨処理が行われた基板Wの洗浄処理及び乾燥処理を行うためのユニットである。洗浄ユニット400は、第1洗浄室410と、第1搬送室420と、第2洗浄室430と、第2搬送室440と、乾燥室450と、を備える。
【0099】
仮置き台378へ置かれた基板Wは、第1搬送室420を介して第1洗浄室410又は第2洗浄室430へ搬送される。基板Wは、第1洗浄室410又は第2洗浄室430において洗浄処理される。第1洗浄室410又は第2洗浄室430において洗浄処理された基板Wは、第2搬送室440を介して乾燥室450へ搬送される。基板Wは、乾燥室450において乾燥処理される。乾燥処理された基板Wは、搬送ロボット240によって乾燥室450から取り出されてカセット222へ戻される。一実施形態として、第1洗浄室410および第2洗浄室430は、ロールスポンジ型の洗浄機415を備えることができる。ロールスポンジ型の洗浄機415は、洗浄液(たとえば薬液および/または純水)を基板Wに供給しながら、回転するロールスポンジを基板Wに接触させて、基板Wを洗浄する洗浄機である。乾燥室450は、任意の公知の乾燥器を備えることができる。
【0100】
制御ユニット500は、基板処理装置1000の全体の動作を制御する。制御ユニット500は、入出力装置、演算装置、記憶装置などを備える一般的なコンピュータから構成することができる。また、制御ユニット500は、前述の研磨装置1の動作を制御するための制御装置900(
図3)を含むことができる。
【0101】
上述の研磨装置および研磨方法は、四辺形の基板に対する研磨の均一性を向上させることができる。これらの研磨装置および研磨方法は、電子デバイスが配置されたパッケージ基板の研磨にも適用することができる。たとえば、インターポーザを有するパッケージ基板や再配線チップ埋め込み型のパッケージ基板を研磨するのに適用することができる。
【0102】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。