(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るイオン選択性電極の概略構成例を示す図である。本実施形態に係るイオン選択性電極1は、内部溶液を用いたイオン選択性電極である。イオン選択性電極1は、筐体11と密閉部13とを有し、筐体11には測定液を流すための流路12が貫通して形成されている。
図1において、(a)は、流路12に垂直な面を示し、(b)は、流路12に平行な面を示し、(c)は、(a)のA−A’断面を示し、(d)は、(b)のB−B’断面を示す。
【0017】
筐体11には、それぞれ独立した内部空間として、領域14(本発明の「第1の領域」に相当する)と、領域15(本発明の「第2の領域」に相当する)と、領域16とが形成されている。領域14と領域15は、筐体11内の仕切り壁20を介して区切られている。筐体11には、領域14及び領域15それぞれに通じる開口が密閉部13側に設けられており、領域14及び領域15は、筐体11に密閉部13が固定されることにより密閉される。なお、密閉部13は、領域14と領域15を個別に密閉するように2つに分割されていてもよい。領域14と領域16は、仕切り壁21を介して区切られている。領域15と領域16は、仕切り壁22を介して区切られている。
【0018】
また、筐体11には、検出部であるイオン感応膜17と、内部液18と、配線19とが設けられている。仕切り壁21には、流路12が貫通しており、流路12の外周壁の一部に設けられた開口部が領域14に向けて開いている。イオン感応膜17は、少なくとも一部の領域がこの流路12の開口部に覆うように、領域14内に設けられている。内部液18は、領域14内に充填されている。配線19は、仕切り壁20を貫通して領域14から領域15にかけて設けられており、その一端部が内部液18に接触するように領域14内に露出し、その他端部が領域15内に露出している。図示していないが、領域15内には、電子部品(図示せず)が設置され、配線19の端部を当該電子部品の端子に接続することができる。イオン感応膜17の電位の信号は、内部液18に接触している配線19の端部に伝わり、さらに配線19の他端部に伝わり、電子部品に入力される。領域16は、筐体11を一体成型する際の精度を向上するための肉盗みとして設けられる空間であり、必須の構成ではない。
【0019】
なお、筐体11と密閉部13の間には、流路12の開口部から漏れ出した測定液や内部液18が領域14から漏れ出さないように、隙間が形成されていないのが望ましいが、これらの液体が漏れ出さない程度の隙間が形成されていてもよい。また、仕切り壁20の配線19が貫通する貫通孔と配線19の間には、液体が領域14から漏れ出さないように、隙間が形成されていないのが望ましいが、これらの液体が漏れ出さない程度の隙間が形成されていてもよい。
【0020】
筐体11及び密閉部13には、例えば、硬質プラスチックや金属、硬質プラスチックにシリカなどの充填材を充填した複合材料などの材料を用いることができる。筐体11と密閉部13の固定方法は、特に限定されず、例えば、接着、接合、溶着、嵌め合わせなどである。具体例としては、振動溶着、超音波溶着、レーザ溶着などの手段で溶着したり、有機材料を含む接着剤で接着したり、スナップフィット形状などの係合部で嵌め合わせたりすることができる。なお、接着剤としては、シリコン、エポキシなどの有機化合物の接着剤や、有機材料の接着剤中にシリカなどの充填材を充填して用いることもできる。また、筐体11と密閉部13の間には、スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系など有機材料の成分を含む封止部材、これら有機材料の成分を含むエラストマーの封止部材や、天然ゴムやジエン系、シリコンやフッ素などの非ジエン系のゴム材料の封止部材を設置し、密閉性を向上させることもできる。貫通孔と配線19の間にも、同様に封止部材を設けてもよい。もちろん、接着剤や封止部材の材料は、これらに限定されない。
【0021】
イオン感応膜17には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの陽イオン選択性電極の場合は、Pure Appl. Chem., Vol.72, No.10, pp.1851-2082, 2000に記載されているような、例えばクラウンエーテルなどのイオノフォアを含む膜を用いることができ、塩素、炭酸、チオシアン、硝酸、水酸、リン酸、硫酸、ヨウ素などの陰イオン選択性電極の場合は、Pure Appl. Chem., Vol.74, No. 6, pp.923-994, 2002に記載されているようなイオノフォアを含む膜の他に、塩化銀、臭化銀などのハロゲン化銀やイオン交換膜(特開平10-318973、特開平11-132991、特開2003-207476)を用いることができ、参照電極の場合は、多孔質ガラス、セラミックなどを用いることができる。もちろん、イオン感応膜17の材料は、これらに限定されない。
【0022】
配線19には、例えば、金属材料(銀、金、銅、アルミなどの金属材料と、その金属化合物)やカーボンなどの有機化合物、金属材料やカーボンと樹脂材料との複合材料などの、電気的な導電性を有する材料を用いることができる。具体例としては、銀塩化銀電極を用いることができる。
【0023】
イオン選択性電極1の製造方法の一例としては、筐体11と密閉部13をそれぞれ射出成形法などで一体化成形し、仕切り壁21にイオン感応膜17を設置し、仕切り壁20の貫通孔に配線19を挿入して設置し、領域15内に電子部品を設置するとともに配線19と接続し、領域14内に内部液18を充填し、最後に密閉部13を筐体11に固定して領域14及び領域15を密閉する。配線19は、筐体11を一体成形する際にインサート成形して一体化してもよい。また、配線19は複数本設置することもできる。
【0024】
なお、3次元プリンタなどで密閉部13を筐体11の一部として一体化成形する場合には、密閉部13は必須の構成でない。また、領域16は、必須の構成ではない。また、流路12及びイオン感応膜17の位置は限定されず、例えば仕切り壁20に設けられてもよい。この場合、仕切り壁21は、流路12及びイオン感応膜17が設置されないので、例えば仕切り壁21の長さ(
図1の上下方向の寸法)を小さくして、イオン選択性電極1を小型化することができる。
【0025】
第1実施形態のイオン選択性電極1は、イオン感応膜17及び内部液18が配置される領域14と、電子部品が配置される領域15とを、仕切り壁20を介して独立した空間として筐体11内に備える。また、これらの領域14及び15は、密閉部13により密閉されている。これにより、測定液が流路12を流れる際の圧力やせん断力で、イオン感応膜17が流路12の開口部から剥がれて、測定液が領域14に漏れ出して内部液18に圧力が加わった場合でも、測定液や内部液18が領域15に流れることがないので、電子部品の回路のショートなどの故障や汚損を防止することができる。また、測定液や内部液18がイオン選択性電極1の外部に流出することがないので、外部の電子部品の故障や汚損を防止することができる。
【0026】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態と一部の構成が異なる。第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0027】
図2は、第2実施形態に係るイオン選択性電極の概略構成例を示す図である。
図2において、(a)は、流路12に垂直な面を示し、(b)は、流路12に平行な面を示し、(c)は、(a)のA−A’断面を示し、(d)は、(b)のB−B’断面を示す。
【0028】
本実施形態に係るイオン選択性電極1Aは、第1実施形態の配線19に替えて配線19Aを有する。配線19Aは、仕切り壁20と、領域15を跨いで仕切り壁20に対向する筐体11の外壁とを貫通して設けられており、その一端部が内部液18に接触するように領域14内に露出し、その他端部がイオン選択性電極1Aの外部に露出している。図示していないが、イオン選択性電極1Aの外部には、電子部品が設置され、配線19Aの端部を当該電子部品の端子に接続することができる。イオン感応膜17の電位の信号は、内部液18に接触している配線19Aの端部に伝わり、さらに配線19Aの他端部に伝わり、電子部品に入力される。領域15内には、電子部品が設置されていても、設置されていなくてもよい。配線19Aを領域15内で分岐して、領域15内の電子部品に接続してもよい。
【0029】
なお、仕切り壁20の配線19Aが貫通する貫通孔と配線19Aの間には、液体が領域14から漏れ出さないように、隙間が形成されていないのが望ましいが、これらの液体が漏れ出さない程度の隙間が形成されていてもよい。配線19Aが貫通する筐体11の外壁についても同様である。配線19Aは、筐体11を成形した後に仕切り壁20及び外壁の貫通孔に通してもよいし、筐体11を一体成形する際にインサート成形して一体化してもよい。また、配線19Aは複数本設置することもできる。
【0030】
なお、配線19Aの端部をイオン選択性電極1Aの外部に引き出せれば、領域15を跨いで仕切り壁20に対向する筐体11の外壁を通す構成に限られない。例えば、配線19Aは、領域14を跨いで仕切り壁20に対向する筐体11の外壁を貫通して設けられ、その一端部が内部液18に接触するように領域14内に露出し、その他端部が外部に露出していてもよい。すなわち、配線19Aは、領域14を囲む壁部のいずれかの部分を貫通して外部に引き出されてもよいし、隣の領域15あるいは領域16を通った後、領域15あるいは領域16を囲む壁部のいずれかの部分を貫通して外部に引き出されてもよい。また、イオン選択性電極1Aには、配線19Aに加えて、第1実施形態と同様に配線19を設けてもよい。
【0031】
第2実施形態のイオン選択性電極1Aも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、イオン選択性電極1Aは、外部の電子部品に信号を出力することができる。
【0032】
[第3実施形態]
第3実施形態は、第1実施形態と一部の構成が異なる。第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0033】
図3は、第3実施形態に係るイオン選択性電極の概略構成例を示す図である。
図3において、(a)は、流路12に垂直な面を示し、(b)は、流路12に平行な面を示し、(c)は、(a)のA−A’断面を示し、(d)は、(b)のB−B’断面を示す。
【0034】
本実施形態に係るイオン選択性電極1Bには、領域15内に基板30が設置されている。基板30には、追記可能記憶領域31が設けられている。配線19の端部は、基板30の端子に接続されている。なお、配線19を伝わる信号は、イオン感応膜17の電位を示すアナログ信号であるため、基板30には、アナログ/デジタル変換などを行うインターフェイス部を設けてもよい。基板30の入出力部32は、筐体11の外壁あるいは密閉部13を貫通する貫通孔を介して、外部に露出しており、外部の電子部品と接続される。基板30は、デジタル信号及びアナログ信号の少なくとも一方の信号を、入出力部32を介して、外部の電子部品に出力したり外部の電子部品から受け付けたりすることができる。入出力部32を入力部と出力部の別々に設けてもよい。
【0035】
なお、イオン選択性電極1Bには、配線19に加えて、第2実施形態と同様に配線19Aを設けてもよい。このようにすれば、アナログ信号のみを、基板30を介さずに外部の電子部品に出力することができる。
【0036】
基板30は、筐体11を成形した後に領域15内に挿入してもよいし、筐体11を一体成形する際にインサート成形して一体化してもよい。
【0037】
基板30には、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置を設置することができる。演算装置は、インターフェイス部でアナログ/デジタル変換されたイオン感応膜17の電位を示すデジタル信号を取得し、入出力部32を介して外部の電子部品に出力したり、追記可能記憶領域31に出力してデータとして記録したりすることができる。また、演算装置は、入出力部32を介して外部の電子部品から入力されたデータを、追記可能記憶領域31に出力してデータとして記録してもよい。
【0038】
基板30には、電子回路基板を用いることができる。例えば、プリント基板やフレキシブル基板やリジッド・フレキシブル基板などである。また、例えば、銅やニッケルや鉄やマンガンなどの金属材料、その金属化合物から成るリードフレームを用いることもできる。
【0039】
追記可能記憶領域31には、電源を切っても記憶情報が保持される不揮発性メモリを用いることができる。例えば、NOR型フラッシュメモリ、NAND型フラッシュメモリ、強誘電体メモリ(Ferroelectric RAM: FeRAM)、磁気抵抗メモリ(Magnetoresistive RAM: MRAM)、相変化メモリ(Phase Change RAM: PRAM)、抵抗変化型メモリ(Resistive RAM: ReRAM)などである。また、これらの不揮発性メモリを搭載したマイクロSDカード、SDカード、SDHCカード、SDHCメモリカード、SDXCメモリカードも用いてもよい。この場合、これらのカードを抜き差しするための開口を、筐体11の外壁あるいは密閉部13に設け、基板30に着脱可能としてもよい。
【0040】
なお、基板30には、追記可能記憶領域31に加え、あるいはその替わりに、温度センサ、圧力センサ、湿度センサ、無線モジュール、無線タグ、及び先述の演算装置のいずれか1つ以上を搭載してもよい。温度センサ、圧力センサ、湿度センサ、及び演算装置は、入出力部32を介して信号を外部の電子部品との間で入出力することができる。温度センサ、圧力センサ、及び湿度センサからの信号が、アナログ信号である場合、インターフェイス部でアナログ/デジタル変換されるようにしてもよい。演算装置は、各センサから出力されるセンサ出力情報を、追記可能記憶領域31に記憶させてもよい。
【0041】
無線モジュール又は無線タグを搭載する場合は、入出力部32を設けなくてもよく、各デバイスは、無線モジュール又は無線タグを利用して信号を外部の電子部品との間で入出力することができる。具体例としては、演算装置は、イオン感応膜17の電位を示すデジタル信号を、無線モジュール又は無線タグを介して外部の電子部品に出力することができる。無線モジュール及び無線タグの通信規格は、例えば、ZigBee、Bluetooth、IEEE802.11b/11a/11g/11n/11ac、IEEE802.11i、IEEE802.11e、NFC(Near Field Communication)、RFID(Radio Frequency Identifier)などである。
【0042】
温度センサには、例えば、金属酸化物を主原料とし高温にて焼結されるセラミック半導体であるサーミスタ、検出部に用いる金属材料として白金(Pt)などが用いられる白金測温抵抗体、2種類の異なる金属で閉回路を形成し2箇所の接合点に温度差が生じると起電力(電圧)が生じる熱電対、などを用いることができる。
【0043】
圧力センサには、例えば、抵抗ブリッジを用いて圧力を加えることによって変化する歪み量を電圧変化として検出する歪ゲージ方式の圧力センサ、金属ゲージ薄膜が歪むことによって発生する電気抵抗の変化を検出する薄膜式の圧力センサ、などを用いることができる。
【0044】
湿度センサには、例えば、湿分を吸湿及び脱湿する感湿材を使用し電極間の電気信号を電気抵抗で捉える高分子抵抗式湿度センサ、湿分を吸湿及び脱湿する感湿材を使用し電極間の電気信号を電気容量で捉える高分子静電容量式湿度センサ、などを用いることができる。
【0045】
なお、基板30を用いずに、追記可能記憶領域31と、温度センサ、圧力センサ、湿度センサ、無線モジュール、無線タグ、及び演算装置のいずれか1つ以上を、領域15内に設けてもよい。
【0046】
第3実施形態のイオン選択性電極1Bも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、イオン選択性電極1Bでは、領域15に収容された基板30あるいは電子部品は、外部の電子部品と通信することができる。
【0047】
[第4実施形態]
第4実施形態は、第3実施形態と一部の構成が異なる。第3実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略し、第3実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0048】
図4は、第4実施形態に係るイオン選択性電極の概略構成例を示す図である。本実施形態に係るイオン選択性電極1Cは、筐体11Cと、密閉部41と、密閉部42とを有し、筐体11Cには流路12が貫通して形成されている。
図4において、(a)は、流路12に垂直な面を示し、(b)は、流路12に平行な面を示し、(c)は、(a)のA−A’断面を示し、(d)は、(b)のB−B’断面を示す。
【0049】
筐体11Cには、それぞれ独立した内部空間として、領域14Cと、領域15Cとが形成されている。領域14Cと領域15Cは、仕切り壁20Cを介して区切られている。筐体11Cには、領域14Cに通じる開口が密閉部41側に設けられており、領域14Cは、筐体11Cに密閉部41が固定されることにより密閉される。筐体11Cには、領域15Cに通じる開口が密閉部42側に設けられており、領域15Cは、筐体11Cに密閉部42が固定されることにより密閉される。
【0050】
仕切り壁20Cには、流路12が貫通しており、流路12の開口部が領域14Cに向けて開いている。イオン感応膜17は、この流路12の開口部に覆うように、領域14C内に設けられている。内部液18は、領域14C内に充填されている。配線19Cは、仕切り壁20Cを貫通して領域14Cから領域15Cにかけて設けられており、その一端部が内部液18に接触するように領域14C内に露出し、その他端部が領域15C内に露出している。
【0051】
イオン選択性電極1Cには、領域15C内に基板30Cが設置されている。基板30Cには、追記可能記憶領域31Cが設けられている。配線19Cの端部は、基板30Cの端子に接続されている。基板30Cの入出力部32Cは、筐体11Cの外壁あるいは密閉部42を貫通する貫通孔を介して、外部に露出しており、外部の電子部品と接続される。基板30Cは、デジタル信号及びアナログ信号の少なくとも一方の信号を、入出力部32Cを介して、外部の電子部品に出力したり外部の電子部品から受け付けたりすることができる。
【0052】
イオン選択性電極1Cの材料や製造方法は、上述した各実施形態と同様である。また、領域15C内に収容可能な電子部品は、第3実施形態と同様である。なお、イオン選択性電極1Cには、配線19Cに加えて、第2実施形態と同様に配線19Aを設けてもよい。
【0053】
第4実施形態のイオン選択性電極1Cも、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、2つの領域14C及び領域15Cに個別に密閉部を設けているので、例えば、領域15Cを密閉したまま領域14Cを開放することできるし、その逆もできる。
【0054】
[第5実施形態]
第5実施形態は、第1実施形態と一部の構成が異なる。第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0055】
図5は、第5実施形態に係るイオン選択性電極の概略構成例を示す図である。
図5において、(a)は、流路12に垂直な面を示し、(b)は、流路12に平行な面を示し、(c)は、(a)のA−A’断面を示し、(d)は、(b)のB−B’断面を示す。
【0056】
本実施形態に係るイオン選択性電極1Dは、固体電極を用いたイオン選択性電極である。すなわち、イオン選択性電極1Dは、第1実施形態のイオン感応膜17に替えて固体電極50を有し、第1実施形態の配線19に替えて配線19Dを有する。内部液18は、領域14に充填されていない。
【0057】
固体電極50は、検出部であるイオン感応膜と、イオン吸蔵物質層と、導電性電極とから構成される。イオン感応膜は、流路12の開口部に覆うように設けられている。イオン吸蔵物質層は、イオン感応膜の流路12と反対側面に密着して設けられている。導電性電極は、イオン吸蔵物質層の流路12と反対側面に密着してイオン吸蔵物質層を支持するように設けられている。配線19Dは、仕切り壁20を貫通して領域14から領域15にかけて設けられており、その一端部が領域14内に露出して導電性電極に接触し、その他端部が領域15内に露出している。このようにして、配線19Dによって固体電極50から電位を取り出すことができる。
【0058】
イオン感応膜は、例えば、塩化ビニル樹脂、可塑剤、リガンド、疎水性アニオンなどを含む。イオン吸蔵物質層は、例えば、イオン吸蔵物質、導電性粒子、接合剤などを含む。
【0059】
第5実施形態によれば、測定液が流路12を流れる際の圧力やせん断力で、固体電極50が流路12の開口部から剥がれて、測定液が領域14に漏れ出した場合でも、測定液が領域15に流れることがないので、電子部品の回路のショートなどの故障や汚損を防止することができる。また、測定液がイオン選択性電極1Dの外部に流出することがないので、外部の電子部品の故障や汚損を防止することができる。
【0060】
[第6実施形態]
第6実施形態は、第2実施形態と一部の構成が異なる。第2実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略し、第2実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0061】
図6は、第6実施形態に係るイオン選択性電極の概略構成例を示す図である。
図6において、(a)は、流路12に垂直な面を示し、(b)は、流路12に平行な面を示し、(c)は、(a)のA−A’断面を示し、(d)は、(b)のB−B’断面を示す。
【0062】
本実施形態に係るイオン選択性電極1Eは、固体電極を用いたイオン選択性電極である。すなわち、イオン選択性電極1Eは、第2実施形態のイオン感応膜17に替えて固体電極50を有し、第2実施形態の配線19Aに替えて配線19Eを有する。内部液18は、領域14に充填されていない。
【0063】
固体電極50は、第5実施形態と同様である。配線19Eは、仕切り壁20と、領域15を跨いで仕切り壁20に対向する筐体11の外壁とを貫通して設けられており、その一端部が領域14内に露出して導電性電極に接触し、その他端部がイオン選択性電極1Eの外部に露出している。
【0064】
第6実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。また、イオン選択性電極1Eは、外部の電子部品に信号を出力することができる。
【0065】
[第7実施形態]
第7実施形態は、第3実施形態と一部の構成が異なる。第3実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略し、第3実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0066】
図7は、第7実施形態に係るイオン選択性電極の概略構成例を示す図である。
図7において、(a)は、流路12に垂直な面を示し、(b)は、流路12に平行な面を示し、(c)は、(a)のA−A’断面を示し、(d)は、(b)のB−B’断面を示す。
【0067】
本実施形態に係るイオン選択性電極1Fは、固体電極を用いたイオン選択性電極である。すなわち、イオン選択性電極1Fは、第3実施形態のイオン感応膜17に替えて固体電極50を有し、第3実施形態の配線19に替えて配線19Fを有する。内部液18は、領域14に充填されていない。
【0068】
固体電極50は、第5実施形態と同様である。配線19Fは、仕切り壁20を貫通して領域14から領域15にかけて設けられており、その一端部が領域14内に露出して導電性電極に接触し、その他端部が領域15内に露出して基板30の端子に接続されている。
【0069】
第7実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。また、イオン選択性電極1Fでは、領域15に収容された基板30あるいは電子部品は、外部の電子部品と通信することができる。
【0070】
[他の実施形態]
図8は、上述の各実施形態のイオン選択性電極を適用した電解質測定装置の概略構成例を示す図である。電解質測定装置100は、測定ユニット110と、制御部130と、演算部140と、入出力部150と、記憶部160と、操作部170とを備える。
【0071】
測定ユニット110は、希釈槽111、検体分注ノズル112、希釈液分注ノズル113、内部標準液分注ノズル114、吸引ノズル115、配管116、ナトリウムイオン(Na
+)選択性電極117、カリウムイオン(K
+)選択性電極118、塩素イオン(Cl
−)選択性電極119、参照(Ref)電極120、上流側流路接続部121、下流側流路接続部122、配管123、ポンプ124、及び電位計測部125を有する。
【0072】
各電極117〜120には、上述の各実施形態で説明したいずれかのイオン選択性電極の構造を採用することができる。各電極117〜120は、それらの流路12と上流側流路接続部121及び下流側流路接続部122の流路とが1列に並んで連通するように(図中の破線で示す)、上流側流路接続部121と下流側流路接続部122の間に装着される。各電極117〜120は、個別に交換できるように着脱可能である。
【0073】
検体分注ノズル112、希釈液分注ノズル113、及び内部標準液分注ノズル114は、それぞれ血液や尿などの検体、希釈液、及び内部標準液を希釈槽111に分注吐出する。吸引ノズル115は、上下移動でき、希釈槽111内の溶液をポンプ124の駆動力で吸引する。吸引された溶液は、配管116及び上流側流路接続部121の流路を通じて電極117〜120の流路に導入され、さらに、下流側流路接続部122の流路及び配管123を通じて廃液される。
【0074】
図8の例では、各電極117〜120は、アナログ信号の配線126とデジタル信号の配線127の少なくとも一方で電位計測部125と接続されている。電位計測部125は、配線126及び配線127の少なくとも一方からの出力信号に基づいて電位を計測する。配線126は、例えば、
図2に示した配線19Aの端部、
図6に示した配線19Eの端部、
図3及び
図7に示した入出力部32のアナログ信号端子、あるいは、
図4に示した入出力部32Cのアナログ信号端子に接続される。配線127は、例えば、
図3及び
図7に示した入出力部32のデジタル信号端子、あるいは、
図4に示した入出力部32Cのデジタル信号端子に接続される。
【0075】
なお、制御部130、及び演算部140も、アナログ信号の配線とデジタル信号の配線の少なくとも一方で、各電極117〜120と接続されてもよい。
【0076】
制御部130は、検体分注ノズル112、希釈液分注ノズル113、内部標準液分注ノズル114、吸引ノズル115、ポンプ124、電位計測部125等の各ユニットの動作を制御する。制御部130は、例えば、プロセッサ、RAM、ROM、駆動回路などを含むコントローラ基板により実現することができる。
【0077】
演算部140は、電位計測部125から出力される電位を示す信号に基づいて所定の計算処理を実行し、その結果を、入出力部150を介して記憶部160に記録したり操作部170のディスプレイに出力したり、通信部(図示せず)を介して外部の装置に送信したりする。演算部140は、例えば、CPU、RAM、ROMなどを含む演算装置により実現することができる。
【0078】
入出力部150は、制御部130及び演算部140を入出力装置や記憶装置と接続するインターフェイス装置である。記憶部160は、測定結果等のデータを記憶する。記憶部160は、例えばハードディスクドライブにより実現することができる。操作部170は、ユーザーの操作を受け付けたり、ユーザーに対して情報を出力したりする。操作部170は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置と、ディスプレイやスピーカなどの出力装置とにより実現することができる。
【0079】
各電極117〜120が追記可能記憶領域31を備える場合、電位計測部125、制御部130、又は演算部140は、各電極117〜120から出力される電位を示す信号やその他の信号(例えばセンサ出力)に基づいて得られた電位データやその他のデータを、デジタル信号の配線あるいはアナログ信号の配線を介して各電極の追記可能記憶領域31に記憶させることができる。アナログとデジタルの変換は、各電極内部で行ってもよいし、電位計測部125、制御部130、又は演算部140で行ってもよいし、電位計測部125、制御部130、及び演算部140とは別のインターフェイス部で行ってもよい。
【0080】
各電極117〜120が無線モジュール又は無線タグを備える場合、電位計測部125、制御部130、又は演算部140は、電解質測定装置100に設けられた無線モジュール又は無線リーダライタ(図示せず)を使って、各電極に対して信号あるいはデータの入出力を行ってもよい。
【0081】
測定ユニット110は、希釈槽111、検体分注ノズル112、希釈液分注ノズル113、内部標準液分注ノズル114、吸引ノズル115、配管116、上流側流路接続部121、下流側流路接続部122、配管123、ポンプ124、電磁弁(図示せず)、シリンジ(図示せず)、真空ビン(図示せず)などの構成要素の1つ以上の任意の箇所に、センサを備えてもよい。センサは、例えば、振動測定用センサ、音響測定用センサ、気泡認識センサ、カメラ、圧力センサ、温度センサ、湿度センサなどを含む。この場合、電位計測部125、制御部130、又は演算部140は、各種センサから、振動、音響、気泡、撮影情報、圧力、温度、湿度の情報を取得し、各電極117〜120の追記可能記憶領域31に記録してもよい。また、電位計測部125、制御部130、又は演算部140は、測定日時や測定回数などの装置稼動ログ、起電力などの情報を追記可能記憶領域31に記録してもよい。
【0082】
図9は、上述の各実施形態のイオン選択性電極を適用した電解質測定装置の概略構成の他の例を示す図である。
図8と異なる点を中心に説明する。
【0083】
図9に示す電解質測定装置100の測定ユニット110Aは、ナトリウムイオン(Na
+)選択性電極、カリウムイオン(K
+)選択性電極、及び塩素イオン(Cl
−)選択性電極を一体化したイオン選択性電極117Aを備える。イオン選択性電極117Aは、流路12を連結するように3つのイオン電極の筐体を一体化して構成されるが、イオン感応膜あるいは固体電極が設けられる領域(例えば領域14)、及び配線(例えば配線19)は個別に設けられる。電子部品が設けられる領域(例えば領域15)と密閉部(例えば密閉部13)は、3つのイオン電極に対して個別に設けられもよいし一体化されてもよい。
【0084】
なお、一体型のイオン選択性電極117Aは、
図9に示すものに限らず、上述した4つの電極117〜120のうち2つ以上を一体化してもよい。
【0085】
図10は、上述の電解質測定装置を備える電解質測定システムの概略構成例を示す図である。
図10の(a)に示す電解質測定システム1000は、上述の電解質測定装置100と、主に検体の光学計測を行う生化学測定装置200とを備える。電解質測定システム1000には、当該システムを操作するための端末などの操作部500が接続されている。
図10の(b)に示す電解質測定システム2000は、上述の電解質測定装置100と、上述の生化学測定装置200と、免疫を測定するための免疫測定装置300と、これらの各装置との間で検体を入出力する検体搬送装置400とを備える。電解質測定システム2000には、当該システムを操作するための端末などの操作部500が接続されている。
【0086】
本発明のイオン選択性電極の各構成要素は、原理的に明らかに同様の目的及び効果を奏するのであれば、
図1〜7に示した形状、大きさ、位置等に限定されるものではない。
【0087】
また、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。