【実施例1】
【0043】
以下に、本発明の表面処理溶加材の製造方法及び表面処理した溶加材を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって、いかなる制限を受けるものではない。
(溶加材の作製)
溶解鋳造炉のるつぼの中で、AZ61合金に難燃性付与のために、1.0質量%のカルシウム(Ca)を添加したマグネシウム(Mg)合金「AZ61−1質量%Ca」を600〜750℃で溶解し、溶解した溶湯が均質になるよう撹拌した後、円筒状に固化形成した。次に、これをビレットとして、押し出し比を150、押し出し温度を420℃で熱間押し出し加工、次に冷間での伸線加工を経て直径1.2mmのワイヤ状の溶加材(AZX611)を作製した。ここで、AZX611は、6質量%Al、1質量%Zn、1質量%Ca、残部がMgおよび不可避不純物からなる。すなわち、溶加材は、合金組成100質量%中に、6質量%Al、1質量%Zn、1質量%Ca、残部がMgおよび不可避不純物から構成されている。組成は、固形形成した円筒形状の塊から一部を切り出し、酸分解後にICP発光分光分析法で成分分析し確認した。
【0044】
(脱脂工程)
奥野製薬工業株式会社 製 「トップマグスター100」110ml/L、「トップマグスター100AD」5ml/Lの55〜65℃の脱脂液中に上記線引きした溶加材を5分間浸漬した。脱脂工程終了後水洗した。
【0045】
(エッチング工程)
奥村製薬工業株式会社 製 「トップマグロック(登録商標)ET−100」700ml/L、55〜65℃のエッチング液中に上記脱脂済み溶加材を60秒間浸漬した。エッチング工程終了後水洗した。
【0046】
(フッ化物処理)
表1に示す条件で、フッ化物水溶液中に上記エッチング済溶加材を浸漬しフッ化物処理を行った。
フッ化物処理終了後水洗した。乾燥させ、処理した溶加材は水不透過性の袋中で気密的に保管した。
【0047】
【表1】
(溶接性試験)
【0048】
厚さが3mm、幅が130mm、成形方向に長さが330mmのAZX611からなる2枚の試験板、及び直径が1.2mm、長さが10mの上記フッ化物処理を施したMg合金溶加材(AZX611)を1巻用いた。溶接方法は、ミグ(MIG)溶接法で、オプション仕様としてマグネシウム合金用にワイヤ送給量を制御されたデジタルパルスMIG溶接機(ダイヘン社製:商品名:DP400P)を用いてAZX611溶接接合構造体(接合構造)(溶接継手)を作製した。接合構造体(接合構造)の形状は、幅が260mm、長さが330mmになるように並べて、成形方向に平行に突合せ部を溶接した。主な溶接条件は以下の通りである。すなわち、直流式で電流120A、電圧21.4V、溶接速度は650mm/min、不活性ガスにはアルゴンガスを用い、その流量は17L/minとした。
(溶接性評価)
【0049】
適切な溶接ビードが形成されているかどうかの評価は、溶接ビードの外観観察法で行った。現在は,マグネシウム合金について溶接ビードに関する評価の基準が見当たらないため、一般社団法人日本溶接協会の鉄鋼材料に関する「外観試験の合否判定指針」を参考に以下の基準で判断した。
アンダーカットの発生や裏面の溶け込み不足は不良と判定した。その他、MIG溶接の溶接体全長に対する途中での突っ込みや、溶接ビードの平坦性欠如が生じていれば不良と判定した。
すなわち、溶接性の評価として、溶接ビードが上記「外観試験の合否判定指針」に沿ったものを○とし、「外観試験の合否判定指針」で欠陥が発生したものを×として判定した。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に促進劣化後の被膜外観色相、溶接性及びXPS、燃焼ICの結果を示す。
以下表1、表2に基づき説明する。
実施例1−
1〜1−
7は1.0〜3.5mol(モル)/Lのフッ化水素酸と0.5〜2.0mol(モル)/Lの一水素二フッ化アンモニウムの組み合わせにてなる液温が20
〜25℃の混合水溶液中に浸漬処理したものである。良好な溶接性が得られた。
【0052】
実施例1−
1、
実施例1−5〜1−7、
比較例1−1〜1−2では、1.5mol(モル)/Lのフッ化水素酸と0.8mol(モル)/Lの一水素二フッ化アンモニウムの組み合わせにてなる液温が20
〜25℃の混合水溶液中に浸漬処理したものであるが、この条件では良好な溶接性を得るには処理時間は30秒以上が
必要である。促進劣化に耐えうる被膜がフッ化物処理により形成されたものと思われる。40秒では更に良好な溶接性が得られたが、これ以上の長い処理時間は生産性等が悪くなるため、処理時間は数分までで十分と思われる。
【0053】
実施例1−1、
比較例1−
3〜1−4は、1.5mol(モル)/Lのフッ化水素酸と0.8mol(モル)/Lの一水素二フッ化アンモニウムの組み合わせにて処理時間が5分の場合であるが、液温が20〜25℃、30〜35℃、40〜45℃と異なる。各条件の場合において溶加材の溶接性は良好であるが、液温が30℃以上であると、フッ素ミストが発生し、製造現場環境上好ましくない。
【0054】
比較例1−5は、1.5mol(モル)/Lのフッ化水素酸のみで液温が20
〜25℃、処理時間が5分の場合である。溶接性は良好であるが、反応ガスの発生が多く製造現場環境上好ましくない。
【0055】
更に
比較例1−
6は、0.5mol(モル)/Lのフッ化水素酸のみで液温が20
〜25℃、処理時間が5分の場合である。溶接性は良好であるが、反応ガスの発生が多く製造現場環境上好ましくない。
【0056】
比較例1−7〜1−
8はフッ化水素酸は含まず、0.8mol(モル)/Lと2.0mol(モル)/Lの一水素二フッ化アンモニウムのみの水溶液中で液温20
〜25℃、処理時間5分間処理したものであるが、反応が弱く、溶接試験では一部導通不良を生じた。反応性が弱いため、一水素二フッ化アンモニウムだけの場合は濃度、処理時間、液温につき、より反応性を上げる条件に設定する必要があると思われる。
【0057】
被膜外観と溶接性の間に相関関係が認められ、被膜が白〜薄黄色、薄黄色の場合は溶接性が良好であった。
(XPS分析)
【0058】
XPS分析装置としては、アルバック・ファイ株式会社 製 機種名 ESCA−5800を用いた。
分析試料は AZX611溶加材を脱脂、エッチング、フッ化物処理後、恒温恒湿機中で65℃、90%条件下に24時間放置し、促進劣化させた物を用いた。試料セット方法は、分析の有効面積が大きく1本では測定できないため、溶加材を3本に切断し、束ね、有効面積部にセットした。
深さ方向の元素組成の変化を測定するため、エッチングにはアルゴンイオン銃を用いた。スパッタ速度はSiO
2換算で3nm/分である。測定と交互にスパッタイオン銃にて試料表面にアルゴンイオンを照射した。12秒毎に元素の定量分析を実施するよう設定をした。
図1〜3に、XPSの元素分析した結果のグラフを示す。
【0059】
図1は実施例1−7の条件でフッ化物処理し促進劣化した溶加材のXPSのグラフである。横軸はスパッタ時間(分)であり、縦軸は元素別の原子の検出比率(%)を示す。
フッ素(F)原子の検出比率は測定開始後1分以内に40%に達し、その後徐々に漸減している。
一方マグネシウム(Mg)原子の検出比率は原子比率は測定開始後1分後では10数%であるが、徐々に増加し33分前後でフッ素の原子比率に並ぶ。酸素(O)原子の検出比率は測定開始後1分程度で20数%から漸増している。アルミニウム(Al)原子の検出比率は大凡10%程度で推移する。カルシウム(Ca)原子と、炭素(C)の検出比率は大凡5%程度で推移する。亜鉛(Zn)の検出比率はほぼ0%であった。
【0060】
XPS分析の結果から、被覆層の厚み方向に被覆層の組成が徐々に緩やかに変化しており、Mg合金の溶加材に対しフッ化物処理をすることにより、Mgとフッ素の化合物である、MgF
2 、MgO、Mg(OH)
2等が生じているものと推測される。溶加材中に他の元素としてAlが含まれる場合はAlF
3、Al(OH)
3等が、Znが含まれる場合は ZnF
2 、ZnO、 Zn(OH)
2等が、Caが含まれる場合はCaF
2等が生じ、それらの混合物による被覆層が形成されているものと推測される。又、この混合物による被覆層は緻密ではないものと推測される。
【0061】
マグネシウム(Mg)を主成分とする合金材料にてなる溶加材の表面が少なくともフッ素、酸素及びマグネシウムの各元素、即ち上記三元素を含む被膜で被覆されており、フッ素(F)原子の検出比率がマグネシウム(Mg)原子の検出比率を上回るまでに必要なスパッタ時間において、各3種の元素の検出率はそれぞれ20%を超えている。このような元素組成である被膜がMIG溶接に必要な導電性を有しかつ劣化を防ぐことができたものと推測される。
【0062】
フッ素(F)原子の検出比率がマグネシウム(Mg)原子の検出比率を上回るまでに必要なスパッタ時間は33分である。スパッタイオン銃にて試料表面にア ルゴンイオンを対SiO
2換算で3nm/分のエッチング速度にて照射し12秒毎に元素の定量分析を実施するよう設定をしている。溶接性、被膜外観色相を合わせ考慮すると本実施例1−7の場合にはフッ素原子と酸素原子が主成分である被膜が保護に最低限必要な膜厚に達していたものと思われる。
【0063】
図2は実施例1−6の条件でフッ化物処理し促進劣化した溶加材のXPSのグラフである。
フッ素(F)原子の検出比率は測定開始後1分以内に30数%に達し、20分以降徐々に漸減している。
一方マグネシウム(Mg)原子の検出比率は原子比率は測定開始後1分後では10数%であるが、徐々に増加し48分前後でフッ素の原子比率を越える。酸素(O)原子の検出比率は測定開始後1分程度で27%を占めるが以降も漸増している。アルミニウム(Al)原子の検出比率は10〜20%程度で推移する。カルシウム(Ca)原子と、炭素(C)の検出比率は大凡5%程度で推移する。亜鉛(Zn)の検出比率はほぼ0%であった。実施例1−7と同様マグネシウム(Mg)を主成分とする合金材料にてなる溶加材の表面が少なくともフッ素、酸素及びマグネシウムの各元素、即ち上記三元素を含む被膜で被覆されており、フッ素(F)原子の検出比率がマグネシウム(Mg)原子の検出比率を上回るまでに必要なスパッタ時間において、各3種の元素の検出率はそれぞれ20%を超えている。このような元素組成である被膜がMIG溶接に必要な導電性を有しかつ劣化を防ぐことができたものと推測される。
【0064】
フッ素(F)原子の検出比率がマグネシウム(Mg)原子の検出比率を上回るまでに必要なスパッタ時間は48分である。溶接性、被膜外観色相を合わせ考慮すると本実施例1−6の場合にはフッ素原子と酸素原子が主成分である保護被膜が十分な膜厚に達していたものと思われる。
【0065】
図3は
比較例1−
1の条件でフッ化物処理し促進劣化した溶加材のXPSのグラフである。
フッ素(F)原子の検出比率は測定開始後1分以内に30数%に達し、20分以降徐々に漸減している。
一方マグネシウム(Mg)原子の検出比率は原子比率は測定開始後1分後では10数%であるが、徐々に増加し48分前後でフッ素の原子比率を越える。酸素(O)原子の検出比率は測定開始後1分程度で27%を占めるが以降も漸増している。アルミニウム(Al)原子の検出比率は10〜20%程度で推移する。カルシウム(Ca)原子と、炭素(C)の検出比率は大凡5%程度で推移する。亜鉛(Zn)の検出比率はほぼ0%であった。実施例1−7、実施例1−6と同様にマグネシウム(Mg)を主成分とする合金材料にてなる溶加材の表面が少なくともフッ素、酸素及びマグネシウムの各元素、即ち上記三元素を含む被膜で被覆されており、フッ素(F)原子の検出比率がマグネシウム(Mg)原子の検出比率を上回るまでに必要なスパッタ時間において、各3種の元素の検出率はそれぞれ20%を超えている。
【0066】
フッ素(F)原子の検出比率がマグネシウム(Mg)原子の検出比率を上回るまでに必要なスパッタ時間は20分である。溶接性、被膜外観色相を合わせ考慮すると
比較例1−
1の場合には三元素を含む保護被膜が十分な膜厚に達していなかったものと思われる。
【0067】
尚、表1には上記フッ素(F)原子の検出比率がマグネシウム(Mg)原子の検出比率を下回るまでの時間を示す。
【0068】
(燃焼イオンクロマトグラフィー(燃焼IC)分析)
燃焼IC装置としては燃焼装置:AQF−100(三菱化学アナリテック社製) とIC装置:ICS−1500(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 (旧社名ダイオネクス社)を用いた。
【0069】
サンプリング方法
サンプリング重量:約25mgを目標として、実施例1のフッ化処理した溶加材を約1cmにカット後、0.01mgのオーダーまで精秤し試料重量を求めた。再現性確認のため、約50mgを目標とするものでも実施した。
【0070】
測定方法
1.試料(表1に示す実施例のフッ化処理した溶加材)を精秤し、試料セルに入れて燃焼装置に投入した。
2.燃焼・分解して発生したガスを吸収液に吸収させた。
3.吸収液中のFイオンをイオンクロマトグラフで測定した。
【0071】
測定条件
燃焼部 :燃焼温度 1000〜1100℃(反応部の入り口〜出口の温度)
:燃焼ガス 酸素ガス
燃焼ガス回収:バブリング法
回収液は、炭酸ナトリウムに過酸化水素を添加した溶液
クロマト部 :カラム AS12A(無機陰イオン分析カラム)
【0072】
燃焼イオンクロマトグラフィー(燃焼IC)による分析結果と溶接性との関係を
図4に示す。
図4はフッ化処理剤としてフッ化水素(HF)の濃度と一水素二フッ化アンモニウム(NH
4・HF
2)の濃度をX軸方向とY軸方向にとり、燃焼ICによるF(ppm)をZ軸方向にとりプロットしたものである。促進劣化後溶接性が良好のものを○、促進劣化後溶接性が不良のものを●で示す。
フッ素処理した溶加材中のフッ素の含有量(ppm)が21ppm(mg/kg)以上のものが促進劣化後溶接性が良好であった。
【0073】
(燃焼IC結果からの線径R、線長Lが異なる場合のF(フッ素)含有量の推定)
燃焼ICの測定結果は、被膜付き溶加材単位重量あたりのF重量(単位はmg/Kg=ppm)であったので、含有されているFの重量求め、次に、面積当たりのF重量は線径が変化しても変化しないと仮定して推定する。
【0074】
(1)燃焼IC分析した時の被膜付き溶加材(φ1.2mm、重量0.025g)の長さLと表面積S(mm
2)を求める。 被膜付き溶加材の体積密度をρ(g/cm
3、mg/mm
3)、被膜付き溶加材の体積をV(mm
3)とすると、被膜付き溶加材の重量W(mg)は
W = ρ×V=ρ×π×(R/2)
2×L であるから
L =W/(ρ ×π × (R/2)
2)
ここでAZX611のρは1.81×10
-3(g/mm
3)であるので、
AZX611の芯線に極薄い被膜が着いているものの
ρは1.81×10
-3(g/mm
3)とみなしてもよいため、
L= 0.025(g)/(1.81×10
-3(g/mm
3)×3.14×(1.2(mm)/2)
2 )=12.22(mm)
被膜付き溶加材の表面積S(mm
2)は、円柱の側面の面積に相当するため、
S = π×R×L =3.14×1.2(mm)×12.22(mm) =46.04(mm
2)
【0075】
(2)上記で燃焼ICを測定した結果、促進劣化後の溶接性のよい被膜付き芯線にてなる溶加材F(フッ素)の閾値が21mg/kgであったので、その時のF(フッ素))重量F(mg)を求める。
F(mg) = 21(mg/kg)×2.5×10
−5(kg) =52.5×10
−5(mg)
【0076】
(3)上記(1)、(2)の結果より、φ1.2、重量0.025gで測定した時の表面積あたりのF´(mg/mm
2)量を求める。
F´(mg/mm
2)= 52.5×10
−5(mg)/46.04(mm
2) = 1.14×10
−5(mg/mm
2)
(4)直径が変わっても、表面積当たりのF量は変化しないとみなすと、F量は被覆した溶加材の表面積に比例する。
F(mg)= F´(mg/mm
2)×S(mm
2)=F´(mg/mm
2)×π×L(mm)×R(mm)
=1.14×10
−5×3.14×L×R
= 3.58×10
−5(mg/mm
2)×L(mm)×R(mm)
となる。
【0077】
すなわち、溶接性の良いマグネシウム(Mg)を主成分とする合金材料にてなる溶加材においては、マグネシウム(Mg)を主成分とする合金材料にてなる溶加材の表面が少なくともフッ素、酸素、マグネシウムの各元素を含む被膜で被覆されており、直径R(mm)、長さL(mm)の被覆された溶加材を燃焼イオンクロマトグラフィーにて含有F(フッ素)量を測定すると、F(フッ素)量が3.58×10
−5×L(mm)×R(mm)よりも多いマグネシウム(Mg)を主成分とする合金材料にてなる溶加材であることが好ましい。
(比較例
1−9)
【0078】
(アルカリによる表面Mg(OH)
2化処理)
Mgに対し耐食性を付与させる目的でMg(OH)
2化処理を行った。
実施例1と同様AZX611を線引きした直径1.2mmのワイヤ状の溶加材に対し、前工程として
脱脂工程は奥野製薬工業株式会社製「トップマグスター 100」110ml/L、奥野製薬工業株式会社製「トップマグスター 100AD」5ml/Lの混合水溶液中に60〜65℃で5〜10分浸漬して行い、水洗し、エッチング工程は奥野製薬工業株式会社製「トップマグロック(登録商標)ET−100」700ml/Lの水溶液中60〜65℃で、30〜60秒浸漬して行い、水洗した。
【0079】
次にアルカリによる表面Mg(OH)
2化処理のため奥野製薬工業株式会社製「トップマグスター 100」340ml/Lの 水溶液中に60〜65℃で10分間浸漬して行い、水洗した。
常温環境化に放置後、耐食性が悪く腐食(変色)し、実施例1と同様にしてMIG溶接に対する溶接性試験を行ったが、溶接性は不良であった。
(比較例
1−10)
【0080】
(P−Mn−Ca系化成処理)
Mgに対するP、Mn、Ca、Oからなる被膜を形成する、Mgの塗装下地として使用されているP−Mn−Ca系化成処理につき評価した。
実施例1と同様にAZX611を線引きした直径1.2mmのワイヤ状の溶加材に対し比較例1と同様に前工程処理した。
【0081】
次にP−Mn−Ca系化成処理のため、奥野製薬工業株式会社製「トップマグスター 300MU」18.5ml/L、奥野製薬工業株式会社製「トップマグスター 300A」5ml/L、奥野製薬工業株式会社製「トップマグスター 300B」5mlの混合水溶液中に35℃で10秒〜1分間浸漬して行い、水洗した。
実施例1と同様にしてMIG溶接に対する溶接性試験を行ったが、溶接性は不良であった。
(比較例
1−11)
【0082】
(溶加材のパック方法1・・・真空包装)
実施例1と同様AZX611を線引きした直径1.2mmのワイヤ状の溶加材を、湿気や空気に対してバリア性を持つナイロンとポリエチレンの2層構造の袋を用い、溶加材を袋の中にセット後、0.1Torrまで減圧し、その後、加熱によって袋の口を溶着することにより減圧状態を保持した。3ヶ月経過後、実施例1と同様にMIG溶接試験を行うと溶接欠陥が多発した。
(比較例
1−12)
【0083】
(溶加材のパック方法2・・・アルゴンガス充填)
実施例1と同様AZX611を線引きした直径1.2mmのワイヤ状の溶加材を、湿気や空気に対してバリア性を持つナイロンとポリエチレンの2層構造の袋を用い、溶加材を袋の中にセット後、0.1Torrまで減圧し、その後、圧力15MPaのアルゴンガスを充填後、加熱によって袋の口を溶着することにより減圧状態を保持した。3ヶ月経過後、実施例1と同様にMIG溶接試験を行うと溶接欠陥が多発した。