特許第6828219号(P6828219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6828219
(24)【登録日】2021年1月22日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】核酸分子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20210128BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20210128BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20210128BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20210128BHJP
【FI】
   C12N15/10 112Z
   C12N15/11 ZZNA
   C12P19/34 A
   C12N15/113 Z
【請求項の数】14
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2020-518565(P2020-518565)
(86)(22)【出願日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】JP2019031421
【審査請求日】2020年3月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】阪田 彬裕
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−046596(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0121716(US,A1)
【文献】 Rapid Communications in Mass Spectrometry,2014年,Vol.28,p.339-350
【文献】 Rapid Communications in Mass Spectrometry,2015年,Vol.29,p.2402-2410, Supporting information
【文献】 The Journal of Biological Chemistry, 2004, 279(49), pp.50654-50661
【文献】 Virology, 2004, 319(1), pp.141-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAに、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類され、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとを連結する工程、および
(II)(I)の連結工程で生成した一本鎖RNAを含む反応生成物をモノアルキルアンモニウム塩およびジアルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩を含む移動相を用いた逆相カラムクロマトグラフィーによって精製する工程を含む一本鎖RNAの製造方法であって、
a)前記第1の一本鎖RNAが、5’末端側から順に、X1領域およびZ領域からなる一本鎖RNAであり;
b)前記第2の一本鎖RNAが、5’末端側から順に、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域およびY1領域からなる一本鎖RNAであり;
c)前記X1領域と前記X2領域とが、互いに完全に相補的な、5以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;
d)前記Y1領域と前記Y2領域とが、互いに完全に相補的な、2以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;
e)前記Z領域が、ヌクレオチド数が0〜3のヌクレオチド配列を含む領域であり;
f)前記Lyリンカー領域が、4〜30量体のヌクレオチド配列またはアミノ酸から誘導される原子団を有するリンカー領域であり;
g)前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとの連結により生成する一本鎖RNAが、5’末端側から順に、前記X2領域、前記Y2領域、前記Lyリンカー領域、前記Y1領域、前記X1領域および前記Z領域からなる連結一本鎖RNAである、
一本鎖RNAの製造方法。
【請求項2】
前記Z領域が、5’末端側から順に、Z1領域、Lzリンカー領域及びZ2領域からなる領域であり、
前記Lzリンカー領域が、アミノ酸から誘導される原子団を有するリンカー領域であり、
前記Z1領域と前記Z2領域とが、互いに相補的なヌクレオチド配列を含み、
前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとの連結により生成する一本鎖RNAが、5’末端側から順に、前記X2領域、前記Y2領域、前記Lyリンカー領域、前記Y1領域、前記X1領域、前記Z1領域、前記Lzリンカー領域および前記Z2領域からなる一本鎖RNAである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記Lyリンカー領域が、下記式(I)で表される二価の基である、請求項1または2に記載の製造方法。
【化1】
(式中、Y11及びY21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y12及びY22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY12とY22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、
11に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、
21に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のY11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【請求項4】
前記Lyリンカー領域が、下記式(I)で表される二価の基であり、前記Lzリンカー領域が、下記式(I’)で表される二価の基である、請求項2または3に記載の製造方法。
【化2】
(式中、Y11及びY21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y12及びY22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY12とY22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、
11に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、
21に結合している末端の酸素原子は、前記Y2領域および前記Y1領域のY11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【化3】
(式中、Y’11及びY’21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y’12及びY’22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY’12とY’22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、
Y’11に結合している末端の酸素原子は、前記Z1領域および前記Z2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、
Y’21に結合している末端の酸素原子は、前記Z2領域および前記Z1領域のY’11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【請求項5】
前記Lyリンカー領域および前記Lzリンカー領域が、それぞれ独立して、下記式(II−A)または(II−B)で表される構造の二価の基である、請求項2、3または4に記載の製造方法。
【化4】
(式中、nおよびmは、それぞれ独立して、1から20の何れかの整数を表す。)
【請求項6】
Lyリンカー領域が、X2領域、Y2領域、Y1領域およびX1領域のヌクレオチド数の総和より少ない数のヌクレオチド配列からなるリンカー領域である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
Lyリンカー領域が、5’末端からLya領域、Lyb領域およびLyc領域からなり、Lya領域およびLyc領域は、互いにワトソンクリック塩基対を形成しない2塩基のヌクレオチド配列からなるリンカー領域である、請求項1、2または6に記載の製造方法。
【請求項8】
Lyリンカー領域が、5’末端からLya領域、Lyb領域およびLyc領域からなり、Lyb領域は0から20量体のヌクレオチド配列からなり、Lya領域およびLyc領域は、それぞれ2塩基のヌクレオチド配列のリンカー領域であり、その組合せである(Lya、Lyc)または(Lyc、Lya)は、以下の組み合わせから選ばれる、請求項1、2、6または7に記載の製造方法。
(Lya、Lyc)または(Lyc、Lya)=(AA、AA)、(AA、AC)、(AA、AG)、(AA、CA)、(AA、CC)、(AA、CG)、(AA、GA)、(AA、GC)、(AA、GG)、(AC、AA)、(AC、AC)、(AC、AG)、(AC、CA)、(AC、CC)、(AC、CG)、(AC、UA)、(AC、UC)、(AC、UG)、(AG、AA)、(AG、AC)、(AG、AG)(AG、GA)、(AG、GG)、(AG、UA)、(AG、UC)、(AG、UU)、(AU、CA)、(AU、CC)、(AU、CG)、(AU、GA)、(AU、GC)、(AU、GG)、(AU、UA)、(AU、UC)、(AU、UG)、(AU、UU)、(CA、AA)、(CA、AC)、(CA、AU)、(CC、AA)、(CC、AC)、(CC、AU)、(CC、CC)、(CC、CU)、(CC、UA)、(CC、UC)、(CC、UU)、(CG、AA)、(CG、AC)、(CG、AU)、(CG、GA)、(CG、GC)、(CG、GU)、(GA、AA)、(GA、AG)、(GA、GG)、(GA、GU)、(GC、AA)、(GC、AG)、(GC、AU)、(GC、CA)、(GC、CG)、(GC、CU)、(GC、GA)、(GC、GG)、(GC、GU)、(GC、UA)、(GC、UG)、(GC、UU)、(GG、AA)、(GG、AG)、(GG、AU)、(GG、GA)、(GG、GG)、(GG、GU)、(GG、UU)、(GU、CA)、(GU、CG)、(GU、GU)、(GU、UA)、(GU、UG)、(GU、UU)、(UA、AC)、(UA、AG)、(UA、AU)、(UC、AC)、(UC、AG)、(UC、AU)、(UC、CC)、(UC、CG)、(UC、CU)、(UC、UC)、(UC、UG)、(UC、UU)、(UG、AA)、(UG、AC)、(UG、AG)、(UG、AU)、(UG、GC)、(UG、GG)、(UG、GU)、(UG、UC)、(UG、UG)、(UG、UU)、(UU、CC)、(UU、CG)、(UU、CU)、(UU、GC)、(UU、GG)、(UU、GU)、(UU、UC)、(UU、UG)、(UU、UU)
【請求項9】
前記X1領域、前記Y1領域および前記Z領域からなるW1領域、および前記X2領域および前記Y2領域からなるW2領域の少なくとも一方に、RNA干渉法の標的となる遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド配列を含む、請求項1から8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記RNAリガーゼが、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2、KVP40由来のリガーゼ2、Trypanosoma brucei RNAリガーゼ、Deinococcus radiodurans RNAリガーゼ、またはLeishmania tarentolae RNAリガーゼである、請求項1から9の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記RNAリガーゼが、配列番号9、10、または11に記載のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるRNAリガーゼである、請求項1から10の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記RNAリガーゼが、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2またはKVP40由来のRNAリガーゼ2である、請求項1から11の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記アンモニウム塩が、ヘキシルアンモニウム塩、ジプロピルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩、およびジアミルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩である請求項1から12の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記逆相カラムクロマトグラフィーの充填剤が、フェニル基、炭素数1〜20のアルキル基、またはシアノプロピル基のいずれか1つ以上が固定されたシリカまたはポリマーである請求項1から13のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、RNA干渉法に用いられる一本鎖RNAが開示されており、かかる化合物の製造方法としては、核酸合成装置を用いて多段階の化学反応により製造する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/017919号
【特許文献2】国際公開第2013/103146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、一本鎖RNAの簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、
(I)5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAに、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類され、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとを連結する工程、および
(II)(I)の連結工程で生成した一本鎖RNAを含む反応生成物をモノアルキルアンモニウム塩およびジアルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩を含む移動相を用いた逆相カラムクロマトグラフィーによって精製する工程を含む一本鎖RNAの製造方法であって、
a)前記第1の一本鎖RNAが、5’末端側から順に、X1領域およびZ領域からなる一本鎖RNAであり;
b)前記第2の一本鎖RNAが、5’末端側から順に、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域およびY1領域からなる一本鎖RNAであり;
c)前記X1領域と前記X2領域とが、互いに相補的な、5以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;
d)前記Y1領域と前記Y2領域とが、互いに相補的な、2以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;
e)前記Z領域が、任意のヌクレオチド数のヌクレオチド配列を含む領域であり;
f)前記Lyリンカー領域が、4〜30量体のヌクレオチド配列またはアミノ酸から誘導される原子団を有するリンカー領域であり;
g)前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとの連結により生成する一本鎖RNAが、5’末端側から順に、前記X2領域、前記Y2領域、前記Lyリンカー領域、前記Y1領域、前記X1領域および前記Z領域からなる連結一本鎖RNAである、一本鎖RNAの製造方法。
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Z領域が、5’末端側から順に、Z1領域、Lzリンカー領域及びZ2領域からなる領域であり、前記Lzリンカー領域がアミノ酸から誘導される原子団を有するリンカー領域であり、前記Z1領域と前記Z2領域とが、互いに相補的なヌクレオチド配列を含み、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとの連結により生成する一本鎖RNAが、5’末端側から順に、前記X2領域、前記Y2領域、前記Lyリンカー領域、前記Y1領域、前記X1領域、前記Z1領域、前記Lzリンカー領域および前記Z2領域からなる連結一本鎖RNAである、製造方法である。
【0006】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Lyリンカー領域が、下記式(I)で表される二価の基である、製造方法である。
【0007】
【化1】
(式中、Y11及びY21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y12及びY22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY12とY22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y11に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y21に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のY11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0008】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Lyリンカー領域が、下記式(I)で表される二価の基であり、前記Lzリンカー領域が、下記式(I’)で表される二価の基である、製造方法である。
【0009】
【化2】
(式中、Y11及びY21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y12及びY22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY12とY22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y11に結合している末端の酸素原子は、前記Y1領域および前記Y2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y21に結合している末端の酸素原子は、前記Y2領域および前記Y1領域のY11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0010】
【化3】
(式中、Y’11及びY’21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y’12及びY’22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY’12とY’22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y’11に結合している末端の酸素原子は、前記Z1領域および前記Z2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y’21に結合している末端の酸素原子は、前記Z2領域および前記Z1領域のY’11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0011】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記Lyリンカー領域および前記Lzリンカー領域が、それぞれ独立して、下記式(II−A)または(II−B)で表される構造の二価の基である、製造方法である。
【0012】
【化4】
(式中、nおよびmは、それぞれ独立して、1から20の何れかの整数を表す。)
【0013】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記X1領域、前記Y1領域および前記Z領域からなるW1領域、および前記X2領域および前記Y2領域からなるW2領域の少なくとも一方に、RNA干渉法の標的となる遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド配列を含む、製造方法である。
【0014】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記RNAリガーゼが、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2、KVP40由来のリガーゼ2、Trypanosoma brucei RNAリガーゼ、Deinococcus radiodurans RNAリガーゼ、またはLeishmania tarentolae RNAリガーゼである、製造方法である。
【0015】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記RNAリガーゼが、配列番号9、10、または11に記載のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるRNAリガーゼである、製造方法である。
【0016】
また、本発明の一態様にかかる一本鎖RNAの製造方法は、前記製造方法において、前記RNAリガーゼが、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2またはKVP40由来のRNAリガーゼ2である、製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、一本鎖RNAを簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1および第2の一本鎖RNAの各領域の結合順序の一例を示す模式図である。
図2】連結一本鎖RNAの製造のステップの一例を示す模式図である。
図3】第1および第2の一本鎖RNAの各領域の結合順序の一例を示す模式図である。
図4】連結一本鎖RNAの製造のステップの一例を示す模式図である。
図5】移動相Aとしてトリエチルアンモニウムアセテート水溶液を用いた逆相カラムクロマトグラフィーで測定した紫外検出法(波長260nm)のクロマトグラムである。
図6】実施例1において移動相Aとしてヘキシルアンモニウムアセテート水溶液を用いた逆相カラムクロマトグラフィーで測定した紫外検出法(波長260nm)のクロマトグラムである。
図7】実施例1において移動相Aとしてジプロピルアンモニウムアセテート水溶液を用いた逆相カラムクロマトグラフィーで測定した紫外検出法(波長260nm)のクロマトグラムである。
図8】実施例1において移動相Aとしてジブチルアンモニウムアセテート水溶液を用いた逆相カラムクロマトグラフィーで測定した紫外検出法(波長260nm)のクロマトグラムである。
図9】実施例1において移動相Aとしてジアミルアンモニウムアセテート水溶液を用いた逆相カラムクロマトグラフィーで測定した紫外検出法(波長260nm)のクロマトグラムである。
図10】実施例1において移動相Aとしてテトラブチルアンモニウムホスファート水溶液を用いた逆相カラムクロマトグラフィーで測定した紫外検出法(波長260nm)のクロマトグラムである。
図11】実施例1ないし3および比較例1ないし3で用いた第1および第2のRNAと生成する連結一本鎖RNAの配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態にかかる製造方法においては、5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAに、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類され、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとを連結して一本鎖RNAを製造する工程を含む。本実施形態の製造方法により得られる連結一本鎖RNAは、5’末端側から、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域、Y1領域、X1領域およびZ領域からなる一本鎖RNAである。前記Z領域は、5’末端側から、Z1領域、Lzリンカー領域およびZ2領域からなっていてもよく、前記連結一本鎖RNAは、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域、Y1領域、X1領域、Z1領域、Lzリンカー領域およびZ2領域からなる一本鎖RNAであってもよい。前記連結一本鎖RNAは、Y1領域とX1領域とZ領域(又はZ1領域)とからなるW1領域、および、X2領域とY2領域とからなるW2領域の少なくとも一方に、RNA干渉法の標的となる遺伝子の発現を抑制する配列を含んでいてもよい。
【0020】
RNA干渉(RNAi)とは、標的遺伝子のmRNA配列の少なくとも一部と同一の配列からなるセンスRNA及びこれと相補的な配列からなるアンチセンスRNAからなる二本鎖RNAを細胞内に導入することにより、標的遺伝子のmRNAが分解され、その結果タンパク質への翻訳阻害を誘導し、標的遺伝子の発現が阻害される現象をいう。RNA干渉の機構の詳細については未だに不明な部分もあるが、DICERといわれる酵素(RNase III核酸分解酵素ファミリーの一種)が二本鎖RNAと接触し、二本鎖RNAがsiRNAと呼ばれる小さな断片に分解されるのが主な機構と考えられている。
【0021】
標的となる遺伝子は、特に制限されず、所望の遺伝子を適宜選択することができる。標的となる遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド配列は、遺伝子発現を抑制可能な配列である限り特に制限されず、公知のデータベース(例えば、GenBankなど)等に登録されている標的遺伝子の配列情報を基に常法により設計することが可能である。当該ヌクレオチド配列は、標的となる遺伝子の所定の領域に対して、80%または85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、最も好ましくは100%の同一性を有する。
【0022】
RNA干渉により、標的遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド配列としては、例えば、標的遺伝子のmRNA配列の少なくとも一部と同一の配列からなるセンスRNAを用いることができる。RNA干渉により、標的遺伝子の発現を抑制するヌクレオチド配列の塩基数は、特に制限されず、例えば19〜30塩基であり、好ましくは19〜21塩基である。
【0023】
W1領域およびW2領域のいずれか一方または両者は、同じ標的遺伝子に対する同一の発現抑制配列を2つ以上有していてもよいし、同じ標的に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有していてもよいし、異なる標的遺伝子に対する異なる発現抑制配列を2つ以上有していてもよい。W1領域が、2つ以上の発現抑制配列を有する場合、各発現抑制配列の配置箇所は、特に制限されず、X1領域およびY1領域のいずれか一領域または両者でもよいし、両者に架かる領域であってもよい。W2領域が、2つ以上の発現抑制配列を有する場合、各発現抑制配列の配置箇所は、X2領域およびY2領域のいずれか一領域または両者でもよいし、両者に架かる領域であってもよい。発現抑制配列は、標的遺伝子の所定領域に対して、通常80%または85%以上の相補性を有しており、90%以上の相補性を有していることが好ましく、より好ましくは95%であり、さらに好ましくは98%であり、特に好ましくは100%である。
【0024】
かかる連結一本鎖RNAは、5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAとにリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖とを連結する工程で製造される(図1乃至4参照)。
【0025】
連結一本鎖RNAは、分子内において相補性のある配列部分が並び、分子内で部分的に二重鎖を形成しうる。連結一本鎖RNA分子は、図2及び図4に示すように、X1領域とX2領域が互いに相補性を有するヌクレオチド配列を含み、さらにY1領域とY2領域が互いに相補性を有するヌクレオチド配列を含み、これらの相補性を有する配列との間で、二重鎖が形成され、LyおよびLzのリンカー領域が、その長さに応じてループ構造をとる。図2及び図4は、あくまでも、前記領域の連結順序および二重鎖部を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ、リンカー領域(LyおよびLz)の形状等は、これらに限定されない。
【0026】
Y1領域とX1領域とZ領域(又はZ1領域)とからなるW1領域およびX2領域とY2領域とからなるW2領域の少なくとも一方が、RNA干渉法の標的となる遺伝子の発現を抑制する配列を少なくとも1つ含んでいてもよい。連結一本鎖RNAにおいて、W1領域とW2領域とは、完全に相補的でもよいし、1もしくは数ヌクレオチドが非相補的であってもよいが、完全に相補的であることが好ましい。前記1若しくは数個のヌクレオチドは、例えば、1〜7個のヌクレオチド、好ましくは1〜5個のヌクレオチドである。Y1領域は、Y2領域の全領域に対して相補的なヌクレオチド配列を有している。Y1領域とY2領域とは、互いに完全に相補的なヌクレオチド配列であり、2つ以上の同数のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。X1領域とX2領域とは、完全に相補的でもよいし、1〜5個のヌクレオチドが非相補的であってもよく、2つ以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。本実施形態の製造方法では、Z領域は、任意の数のヌクレオチド配列を含む領域であり、必須の配列ではなく、ヌクレオチドの数が0の態様であってもよく、1つ以上のヌクレオチドを含む態様であってもよい。Z領域は、5’末端からZ1、LzおよびZ2の各領域を連結したものであってもよい。
【0027】
以下に各領域の長さを例示するが、これに限定されない。本明細書において、ヌクレオチド数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、具体例として、「1〜4ヌクレオチド」との記載は、「1ヌクレオチド」、「2ヌクレオチド」、「3ヌクレオチド」、および「4ヌクレオチド」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0028】
連結一本鎖RNA分子において、W2領域のヌクレオチド数(W2n)と、X2領域のヌクレオチド数(X2n)およびY2領域のヌクレオチド数(Y2n)との関係は、例えば、下記式(1)の条件を満たす。W1領域のヌクレオチド数(W1n)と、X1領域のヌクレオチド数(X1n)およびY1領域のヌクレオチド数(Y1n)との関係は、例えば、下記式(2)の条件を満たす。
W2n=X2n+Y2n ・・・(1)
W1n≧X1n+Y1n ・・・(2)
【0029】
連結一本鎖RNA分子において、X1領域のヌクレオチド数(X1n)とY1領域のヌクレオチド数(Y1n)との関係は、特に制限されず、例えば、下記式のいずれかの条件を満たす。
X1n=Y1n ・・・(3)
X1n<Y1n ・・・(4)
X1n>Y1n ・・・(5)
【0030】
本実施形態の方法において、X1領域のヌクレオチド数(X1n)、およびX2領域のヌクレオチド数(X2n)は、2以上であり、好ましくは4以上であり、より好ましくは10以上である。
Y1領域のヌクレオチド数(Y1n)、およびY2領域のヌクレオチド数(Y2n)は、2以上であり、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。
【0031】
Z1領域は、好ましくは、Z2領域の全領域またはZ2領域の部分領域に対して相補的なヌクレオチド配列を含む。Z1領域とZ2領域とは、1もしくは数ヌクレオチドが非相補的であってもよいが、完全に相補的であることが好ましい。
【0032】
より詳しくは、Z2領域は、Z1領域よりも、1ヌクレオチド以上短いヌクレオチド配列からなることが好ましい。この場合、Z2領域のヌクレオチド配列全体が、Z1領域の任意の部分領域の全てのヌクレオチドと相補的となる。Z2領域の5’末端から3’末端までのヌクレオチド配列は、Z1領域の3’末端のヌクレオチドから始まり5’末端に向かってのヌクレオチド配列と相補性のある配列であることがより好ましい。
【0033】
連結一本鎖RNA分子において、X1領域のヌクレオチド数(X1n)とX2領域のヌクレオチド数(X2n)との関係、Y1領域のヌクレオチド数(Y1n)とY2領域のヌクレオチド数(Y2n)との関係、並びにZ1領域のヌクレオチド数(Z1n)とZ2領域のヌクレオチド数(Z2n)との関係は、下記式(6)、(7)および(8)の条件をそれぞれ満たす。
X1n≧X2n ・・・(6)
Y1n=Y2n ・・・(7)
Z1n≧Z2n ・・・(8)
【0034】
連結一本鎖RNAの全長(ヌクレオチドの総数)は、特に制限されない。連結一本鎖RNAにおいて、ヌクレオチド数の合計(全長のヌクレオチド数)は、下限が、典型的には、38であり、好ましくは42であり、より好ましくは50であり、さらに好ましくは51であり、特に好ましくは52であり、その上限は、典型的には、300であり、好ましくは200であり、より好ましくは150であり、さらに好ましくは100であり、特に好ましくは80である。連結一本鎖RNAにおいて、リンカー領域(Ly、Lz)を除くヌクレオチド数の合計は、下限が、典型的には、38であり、好ましくは42であり、より好ましくは50であり、さらに好ましくは51であり、特に好ましくは52であり、上限が、典型的には、300であり、好ましくは200であり、より好ましくは150であり、さらに好ましくは100であり、特に好ましくは80である。
【0035】
連結一本鎖RNAにおいて、LyおよびLzのリンカー領域の長さは、特に制限されない。これらのリンカー領域は、例えば、X1領域とX2領域とが二重鎖を形成可能な長さ、あるいはY1領域とY2領域とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。
【0036】
リンカー領域の主鎖を形成する原子の数は、その上限は、典型的には、100であり、好ましくは80であり、より好ましくは50である。
【0037】
Lyリンカー領域は、例えば、下記式(I)で表される二価の基であり、Lzリンカー領域は、例えば、下記式(I’)で表される二価の基である。
【0038】
【化5】
(式中、Y11及びY21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y12及びY22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY12とY22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y11に結合している末端の酸素原子は、Y1領域およびY2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y21に結合している末端の酸素原子は、Y1領域およびY2領域のY11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0039】
【化6】
(式中、Y’11及びY’21は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、Y’12及びY’22は、それぞれ独立して、水素原子もしくはアミノ基で置換されていてもよいアルキル基を表すか、或いはY’12とY’22とがその末端で互いに結合して炭素数3〜4のアルキレン基を表し、Y’11に結合している末端の酸素原子は、Z1領域およびZ2領域のいずれか一方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合しており、Y’21に結合している末端の酸素原子は、Z1領域およびZ2領域のY’11とは結合していない他方の領域の末端ヌクレオチドのリン酸エステルのリン原子と結合している。)
【0040】
前記Y11及びY21、並びに、Y’11及びY’21における炭素数1〜20のアルキレン基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい、
前記Y12及びY22、並びに、Y’12及びY’22におけるアミノ基で置換されていてもよいアルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜5がより好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい、
【0041】
Lyリンカー領域およびLzリンカー領域の好適な例としては、下記式(II−A)または(II−B)で表される構造の二価の基が挙げられる。
【0042】
【化7】
(式中、nおよびmは、それぞれ独立して、1から20の何れかの整数を表す。)
【0043】
nおよびmは、それぞれ独立して、1〜10のいずれかの整数であることが好ましく、1〜5のいずれかの整数であることがより好ましい。
【0044】
好ましい態様において、Lyリンカー領域およびLzリンカー領域は、それぞれ独立して、式(II−A)または(II−B)の何れかの二価の基を表す。
【0045】
第1の一本鎖RNAおよび第2の一本鎖RNAの例としては、具体的には、図11の鎖Iおよび鎖IIが例示される。
【0046】
本明細書及び図面において示す配列においては、「p」の略号は、5’末端の水酸基がリン酸基で修飾されていることを示す。また、配列中の「P」の略号は、下記構造式(III−A)で表されるアミダイトを用いて導入される構造である。
【0047】
【化8】
【0048】
本発明の方法においては、Lyリンカー領域が、4〜30量体のヌクレオチド配列からなるリンカー領域であってもよい。かかる例としては、例えば、Lyリンカー領域が、X2領域、Y2領域、Y1領域およびX1領域のヌクレオチド数の総和より少ない数のヌクレオチド配列からなるリンカー領域であってもよい。
【0049】
前記Lyリンカー領域は、より詳しくは、5’末端からLya領域、Lyb領域およびLyc領域からなり、Lya領域およびLyc領域は、互いにワトソンクリック塩基対を形成しない2塩基のヌクレオチド配列からなるリンカー領域であってもよい。
【0050】
Lyリンカー領域が、5’末端からLya領域、Lyb領域およびLyc領域からなり、Lyb領域は0から20量体のヌクレオチド配列からなり、Lya領域およびLyc領域は、それぞれ2塩基のヌクレオチド配列のリンカー領域であり、その組合せである(Lya、Lyc)または(Lyc、Lya)は、以下の組み合わせから選ばれるものであってもよい。
(Lya、Lyc)または(Lyc、Lya)=(AA、AA)、(AA、AC)、(AA、AG)、(AA、CA)、(AA、CC)、(AA、CG)、(AA、GA)、(AA、GC)、(AA、GG)、(AC、AA)、(AC、AC)、(AC、AG)、(AC、CA)、(AC、CC)、(AC、CG)、(AC、UA)、(AC、UC)、(AC、UG)、(AG、AA)、(AG、AC)、(AG、AG)(AG、GA)、(AG、GG)、(AG、UA)、(AG、UC)、(AG、UU)、(AU、CA)、(AU、CC)、(AU、CG)、(AU、GA)、(AU、GC)、(AU、GG)、(AU、UA)、(AU、UC)、(AU、UG)、(AU、UU)、(CA、AA)、(CA、AC)、(CA、AU)、(CC、AA)、(CC、AC)、(CC、AU)、(CC、CC)、(CC、CU)、(CC、UA)、(CC、UC)、(CC、UU)、(CG、AA)、(CG、AC)、(CG、AU)、(CG、GA)、(CG、GC)、(CG、GU)、(GA、AA)、(GA、AG)、(GA、GG)、(GA、GU)、(GC、AA)、(GC、AG)、(GC、AU)、(GC、CA)、(GC、CG)、(GC、CU)、(GC、GA)、(GC、GG)、(GC、GU)、(GC、UA)、(GC、UG)、(GC、UU)、(GG、AA)、(GG、AG)、(GG、AU)、(GG、GA)、(GG、GG)、(GG、GU)、(GG、UU)、(GU、CA)、(GU、CG)、(GU、GU)、(GU、UA)、(GU、UG)、(GU、UU)、(UA、AC)、(UA、AG)、(UA、AU)、(UC、AC)、(UC、AG)、(UC、AU)、(UC、CC)、(UC、CG)、(UC、CU)、(UC、UC)、(UC、UG)、(UC、UU)、(UG、AA)、(UG、AC)、(UG、AG)、(UG、AU)、(UG、GC)、(UG、GG)、(UG、GU)、(UG、UC)、(UG、UG)、(UG、UU)、(UU、CC)、(UU、CG)、(UU、CU)、(UU、GC)、(UU、GG)、(UU、GU)、(UU、UC)、(UU、UG)、(UU、UU)
【0051】
本実施形態の製造方法で実施する連結反応においては、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類されるRNAリガーゼであって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼ(以下、「本RNAリガーゼ」と記すこともある)が使用される。かかるRNAリガーゼとしては、たとえば、T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2が例示される。このRNAリガーゼ2は、例えば、New England BioLabsから購入できる。さらに、RNAリガーゼとしては、ビブリオファージ(vibriophage)KVP40由来のリガーゼ2、Trypanosoma brucei RNAリガーゼ、Deinococcus radiodurans RNAリガーゼ、若しくはLeishmania tarentolae RNAリガーゼが例示される。かかるRNAリガーゼは、たとえば、非特許文献(Structure and Mechanism of RNA Ligase, Structure, Vol.12, PP.327-339.)に記載の方法で各生物から抽出および精製することで得られたものを用いることもできる。
【0052】
T4バクテリオファージ由来のT4 RNAリガーゼ2としては、配列番号9に記載のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼも使用可能である。かかるRNAリガーゼ2としては、配列番号9に記載のアミノ酸配列の酵素のほかに、その変異体であるT39A、F65A、またはF66A(RNA ligase structures reveal the basis for RNA specificity and conformational changes that drive ligation forward, Cell. Vol.127, pp.71-84.参照)などを例示することができる。かかるRNAリガーゼ2は、例えば、前記文献の記載に基づき、ATCC(登録商標) 11303としてATCC(American Type Culture Collection)に寄託されている、Escherichia coli bacteriophage T4を用いる方法やPCR等の方法で得ることが可能である。
【0053】
KVP40由来のRNAリガーゼ2は、非特許文献(Characterization of bacteriophage KVP40 and T4 RNA ligase 2, Virology, vol. 319, PP.141-151.)に記載の方法で取得することができる。具体的には、例えば、以下のような方法で取得できる。すなわち、バクテリオファージKVP40(例えば、寄託番号Go008199としてJGIに寄託されている)から抽出したDNAのうち、オープンリーディングフレーム293を、NdeIおよびBamHIによって制限酵素消化したのちに、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる。得られたDNAをプラスミドベクターpET16b(Novagen)に組み込む。または、当該のDNA配列をPCRによって人工合成することもできる。ここで、DNA配列解析により、所望の変異体を得ることができる。続いて、得られたベクターDNAをE.coli BL21(DE3)に組み込み、0.1mg/mLアンピシリンを含むLB培地中にて培養する。イソプロピル−β−チオガラクトシドを0.5mMになるように添加し、37℃で3時間培養する。その後の操作はすべて4℃で行うことが好ましい。まず、遠心操作により菌体を沈殿させ、沈殿物を−80℃にて保管する。凍った菌体にバッファーA[50mM Tris−HCl(pH7.5),0.2M NaCl,10%スクロース]を加える。そして、リゾチームとTriton X−100を加え、超音波によって菌体を破砕し、目的物を溶出させる。その後、アフィニティクロマトグラフィやサイズ排除クロマトグラフィーなどを利用して目的物を単離する。そして、得られた水溶液を遠心ろ過し、溶離液をバッファーに置換することによりリガーゼとして使用することができる。
このようにして、KVP40由来のRNAリガーゼ2を得ることができる。KVP40由来のRNAリガーゼ2としては、配列番号10のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼが使用可能である。
【0054】
Deinococcus radiodurans RNAリガーゼは非特許文献(An RNA Ligase from Deinococcus radiodurans, J Biol Chem., Vol. 279, No.49, PP. 50654-61.)に記載の方法で取得することができる。例えば、ATCC(登録商標)BAA−816としてATCCに寄託されている生物学的な材料から、前記リガーゼを得ることも可能である。Deinococcus radiodurans RNAリガーゼとしては、配列番号11のアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを使用可能である。かかるリガーゼとしては、具体的には、配列番号11のアミノ酸配列からなるRNAリガーゼに加えて、配列番号11のRNAリガーゼにおいて、K165AあるいはE278Aの変異を有するアミノ酸配列からなるRNAリガーゼが例示される(An RNA Ligase from Deinococcus radiodurans, J Biol Chem., Vol. 279, No.49, PP. 50654-61.)。
【0055】
Trypanosoma brucei RNAリガーゼは非特許文献(Assiciation of Two Novel Proteins TbMP52 and TbMP48 with the Trypanosoma brucei RNA Editing Complex, Vol.21, No.2, PP.380-389.)に記載の方法で取得することができる。
【0056】
Leishmania tarentolae RNAリガーゼは非特許文献(The Mitochondrial RNA Ligase from Leishmania tarentolae Can Join RNA Molecules Bridged by a Complementary RNA, Vol. 274, No.34, PP.24289-24296)に記載の方法で取得することができる。
【0057】
本RNAリガーゼを用いる本実施形態の製造方法の反応条件は、本RNAリガーゼが機能する条件であれば、特に限定されないが、一つの典型的な例としては、第1の核酸鎖と、第2の核酸鎖と、ATP、塩化マグネシウム、およびDTTを含むTris−HCl緩衝液(pH7.5)と、純水と、を混合し、その混合液に本RNAリガーゼを加え、その後当該リガーゼが機能する温度(例えば37℃)で所定時間(例えば1時間)反応させる条件が挙げられる。
あるいは、本実施形態の製造方法は、非特許文献(Bacteriophage T4 RNA ligase 2 (gp24-1) exemplifies a family of RNA ligases found in all, Proc. Natl. Acad. Sci, 2002, Vol.99, No.20, PP.12709-12714.)に記載の条件に準じて行うこともできる。
【0058】
前記RNAリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとを連結する工程で生成した一本鎖RNAを含む反応生成物をモノアルキルアンモニウム塩およびジアルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩を含む移動相を用いた逆相カラムクロマトグラフィーによって精製する工程について以下説明する。
【0059】
本RNAリガーゼを用いた第1の一本鎖RNAおよび第2の一本鎖RNAの連結反応で得られた粗生成物は、例えば、まず、RNAを沈殿、抽出する方法で単離してもよい。具体的には、連結反応後の溶液にエタノールやイソプロピルアルコールなどのRNAに対して溶解性の低い溶媒を加えることでRNAを沈殿させる方法や、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(例えば、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール=25/24/1)の混合溶液を連結反応後の溶液に加え、RNAを水層に抽出する方法を採用してもよい。
【0060】
生成した一本鎖RNAを逆相カラムクロマトグラフィーで精製する工程においては、モノアルキルアンモニウム塩およびジアルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩を含む移動相が使用される。かかるアンモニウム塩としては、典型的には、有機または無機の酸とモノアルキルアミンまたはジアルキルアミンからなるアンモニウム塩が例示される。
逆相カラムクロマトグラフィーにおいて、移動相(溶離液)となるのは、非疎水性の移動相であり、具体的には、前記のようなアンモニウム塩を含むものが例示される。かかる移動相としては、C1−C3アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールもしくはn−プロパノール)、ニトリル(例えば、アセトニトリル)および場合によっては、水を含む溶媒が、例示される。前記アンモニウム塩を形成する酸としては、例えば、炭酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸およびプロピオン酸が例示される。かかる移動相としては、典型的には、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミン/酢酸/水/アセトニトリルからなる溶離液が例示される。
【0061】
前記アンモニウム塩の濃度としては、例えば、1−200mM、5−150mMまたは20−100mMの濃度が例示される。移動相のpH範囲としては、例えば、pH:6−8、あるいは6.5−7.5の範囲が例示される。
【0062】
移動相は、前記アンモニウム塩以外のトリエチルアンモニウム塩等を含んでいてもよいが、モノアルキルアンモニウム塩およびジアルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩の割合は、全アンモニウム塩に対して、例えば、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上あるいはモノアルキルアンモニウム塩およびジアルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩のみからなる。選択される少なくとも1つのアンモニウム塩としては、具体的には、例えば、ヘキシルアンモニウム塩、ジプロピルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩、およびジアミルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩が例示され、これらから選ばれるアンモニウム塩を使用することが好ましい。
【0063】
前記逆相カラムクロマトグラフィーの充填剤としては、疎水性の固定相となる、例えば、フェニル基、炭素数1〜20のアルキル基、またはシアノプロピル基のいずれか1つ以上が固定されたシリカまたはポリマーが例示される。かかる充填剤であるシリカまたはポリマーとしては、例えば、粒子径が、2μm以上、あるいは、5μm以上のものが例示される。
【0064】
逆相カラムクロマトグラフィーによる分離は、前記充填剤を含むカラムに前記のアンモニウム塩を含む移動相を通液し、次いで同移動相にリガーゼにより連結された一本鎖RNAを溶解した溶液を通液し、前記RNAをカラム内に結合させ、次いで、通液する移動相中の有機溶媒濃度を順次増大させる勾配(グラジエント)により前記RNAに含まれる不純物(未反応の第1および/または第2のRNA鎖など)と目的とするRNA分子とを分離して溶出させることにより実施される。
逆相カラムクロマトグラフィーの温度は、例えば、20−100℃、25−80℃、あるいは30−60℃である。
逆相カラムクロマトグラフィーにより得られる画分は、一般的に核酸の分離分析に用いるクロマトグラフィーの条件下で、波長260nmのUV吸収で、組成を分析して、選択された画分が集められ、精製された目的物が得られ、たとえば、非特許文献(Handbook of Analysis of Oligonucleotides and Related Products, CRC Press)に記載の方法を用いることができる。
【0065】
第1の一本鎖RNAは、例えば、固相合成法により調製することができる。より具体的には、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(NTS M−4MX−E(日本テクノサービス株式会社製))を用いて調製することができる。ホスホロアミダイト法は、デブロッキング、カップリング、および酸化の3段階を1サイクルとして、望みの塩基配列が得られるまでこのサイクルを繰り返す方法である。各試薬に関して、たとえば、固相担体として多孔質ガラスを使用し、デブロッキング溶液としてジクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、カップリング剤として5−ベンジルチオ−1H−テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液として無水酢酸溶液とN−メチルイミダゾール溶液を使用して行うことができる。固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護は、たとえば、国際公開第2013/027843号に記載の方法に従って行うことができる。すなわち、アンモニア水溶液とエタノールを加えて塩基部およびリン酸基の脱保護と固相担体からの切り出しを行なったのち、固相担体をろ過し、その後、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて2’−水酸基の脱保護を行なってRNAを調製することができる。
【0066】
かかる固相合成法で使用するアミダイトとしては、特に制限されず、たとえば、下記構造式(III−a)中の、Rがターシャリブチルジメチルシリル(TBDMS)基、ビス(2−アセトキシ)メチル(ACE)基、(トリイソプロピルシリロキシ)メチル(TOM)基、(2−シアノエトキシ)エチル(CEE)基、(2−シアノエトキシ)メチル(CEM)基、パラ―トルイルスルホニルエトキシメチル(TEM)基、(2−シアノエトキシ)メトキシメチル(EMM)基などで保護された、TBDMSアミダイト(TBDMS RNA Amidites、商品名、ChemGenes Corporation)、ACEアミダイト、TOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト(Chakhmakhchevaの総説:Protective Groups in the Chemical Synthesis of Oligoribonucleotides、Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 2013, Vol. 39, No. 1, pp. 1-21.)、EMMアミダイト(国際公開第2013/027843号に記載)等を使用することもできる。
【0067】
またLyリンカー領域およびLzリンカー領域については、下記構造式(III―b)に示されるプロリン骨格を有するアミダイトを国際公開第2012/017919号の実施例A4の方法にて使用することができる。また、下記構造式(III―c)、(III―d)および(III−e)のいずれかで表されるアミダイト(国際公開第2013/103146号の実施例A1〜A3参照)を使用することにより、同様に核酸合成機にて調製することができる。
【0068】
5’末端の5’位のリン酸化には、5’末端のリン酸化用のアミダイトを固相合成にて使用してもよい。5’末端のリン酸化用のアミダイトは市販のアミダイトを使用することができる。また固相合成にて、5’末端の5’位が水酸基若しくは保護された水酸基であるRNA分子を合成しておき、適宜脱保護を行った後に、市販のリン酸化剤にてリン酸化することで5’末端にリン酸基を有する一本鎖RNAを調製することができる。リン酸化剤としては下記構造式(III−f)で示される市販のChemical Phosphorylation Reagent (Glen Research)が知られている(特許文献EP0816368)。
【0069】
【化9】
【0070】
式(III−a)において、Rは保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し、Rは保護基を示す。
【0071】
【化10】
【0072】
【化11】
【0073】
【化12】
【0074】
【化13】
【0075】
【化14】
【0076】
第2の一本鎖RNAは、固相合成法、即ちホスホロアミダイト法に基づく核酸合成機を用いて、同様に製造することができる。
【0077】
ヌクレオチドを構成する塩基は、通常は、核酸、典型的にはRNAを構成する天然の塩基であるが、非天然の塩基を場合によっては、使用してもよい。かかる非天然の塩基としては、天然あるいは非天然の塩基の修飾アナログが例示される。
【0078】
塩基の例としては、例えば、アデニンおよびグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシルおよびチミン等のピリミジン塩基等が挙げられる。塩基は、この他に、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等が挙げられる。前記塩基は、例えば、2−アミノアデニン、6−メチル化プリン等のアルキル誘導体;2−プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン;5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン;6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン;5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル;8−ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化および他の8−置換プリン;5−トリフルオロメチル化および他の5−置換ピリミジン;7−メチルグアニン;5−置換ピリミジン;6−アザピリミジン;N−2、N−6、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む);5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3−デアザ−5−アザシトシン;2−アミノプリン;5−アルキルウラシル;7−アルキルグアニン;5−アルキルシトシン;7−デアザアデニン;N6,N6−ジメチルアデニン;2,6−ジアミノプリン;5−アミノ−アリル−ウラシル;N3−メチルウラシル;置換1,2,4−トリアゾール;2−ピリジノン;5−ニトロインドール;3−ニトロピロール;5−メトキシウラシル;ウラシル−5−オキシ酢酸;5−メトキシカルボニルメチルウラシル;5−メチル−2−チオウラシル;5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル;5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル;3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル;3−メチルシトシン;5−メチルシトシン;N4−アセチルシトシン;2−チオシトシン;N6−メチルアデニン;N6−イソペンチルアデニン;2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン;N−メチルグアニン;O−アルキル化塩基等が挙げられる。また、プリン塩基およびピリミジン塩基には、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、およびイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
【0079】
本実施形態の方法で得られる、5’末端側から、X2領域、Y2領域、Lyリンカー領域、Y1領域、X1領域およびZ領域からなる一本鎖RNA核酸分子は、その5’末端と3’末端とが未連結であり、線状一本鎖核酸分子ということもできる。かかる一本鎖RNA核酸分子は、例えば、in vivoまたはin vitroにおいて、標的遺伝子の発現抑制に使用でき、RNA干渉により、標的遺伝子の発現抑制のために使用することができる。「標的遺伝子の発現抑制」とは、例えば、標的遺伝子の発現を阻害することを意味する。前記抑制のメカニズムは、特に制限されず、例えば、ダウンレギュレーションまたはサイレンシングでもよい。
標的遺伝子の発現抑制は、例えば、標的遺伝子からの転写産物の生成量の減少、転写産物の活性の減少、標的遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、または翻訳産物の活性の減少等によって確認できる。翻訳産物としてのタンパク質は、例えば、成熟タンパク質、または、プロセシングもしくは翻訳後修飾を受ける前の前駆体タンパク質等が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
1.第1の一本鎖RNAの合成
以下に示す一本鎖RNA(図11の鎖I)を合成した。当該鎖は26塩基長からなり、第1の一本鎖RNAに対応する。
【0082】
鎖I:pUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUUCPG (5'-3') (配列番号1)
配列表中の配列番号1の記載は、5’末端から「P」の前までの塩基配列を示す。当該一本鎖RNAは、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名NTS M−4MX−E、日本テクノサービス株式会社)を用いて3’側から5’側に向かって合成した。
【0083】
当該合成には、RNAアミダイトとして、それぞれ下記の式のウリジンEMMアミダイト(国際公開第2013/027843号の実施例2に記載)、シチジンEMMアミダイト(同実施例3に記載)、アデノシンEMMアミダイト(同実施例4に記載)、グアノシンEMMアミダイト(同実施例5に記載)、及びプロリンアミダイト(IIIb)(国際公開第2012/017919号の実施例A3に記載)を使用し、5’リン酸化には前記構造式(III-f)で示されるChemical Phosphorylation Reagent(Glen Research)を使用し、固相担体として多孔質ガラスを使用し、デブロッキング溶液としてトリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5−ベンジルチオ−1H−テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液として無水フェノキシ酢酸溶液とN−メチルイミダゾール溶液とを使用して行った。
【0084】
ウリジンEMMアミダイト
【化15】
【0085】
シチジンEMMアミダイト
【化16】
【0086】
アデノシンEMMアミダイト
【化17】
【0087】
グアノシンEMMアミダイト
【化18】
【0088】
プロリンアミダイト(IIIb)
【化19】
【0089】
固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護は、国際公開第2013/027843号に記載の方法に従った。すなわち、アンモニア水溶液とエタノールとを加え、しばらく静置した後に固相担体をろ過し、溶媒を留去した。その後、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて水酸基の脱保護を行った。得られたRNAを注射用蒸留水を用いて所望の濃度となるように溶解した。
【0090】
2.第2の一本鎖RNAの合成
以下に示す一本鎖RNA(図11の鎖II)を合成した。当該鎖は27塩基長からなり、第2の一本鎖RNAに対応する。
【0091】
鎖II:AGCAGAGUACACACAGCAUAUACCPGG (5'-3') (配列番号2)
当該一本鎖RNAは、上記と同様の方法により合成した。
【0092】
配列表中の配列番号2の記載は、5’末端から「P」の前までの塩基配列を示す。前記第1および第2のRNAをライゲーションすることで得られる連結一本鎖RNAを下記鎖III及び図11に示す。
鎖III:
AGCAGAGUACACACAGCAUAUACCPGGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUUCPG (5'-3') (配列番号1,2)
上記配列中、5’末端の塩基から27番目の塩基までの塩基配列は前記配列番号2の配列に相当し、また、28番目の塩基から3’末端の塩基までの塩基配列は前記配列番号1の配列に相当する。
【0093】
3.ライゲーション反応目的物の一本鎖RNA標品の固相合成
上記第1および第2のRNAをライゲーションすることで得られる連結一本鎖RNAの標品を、前記第1および第2のRNAと同様に、固相合成法で合成した。
【0094】
4.HPLCを用いた精製条件の検討
上記3種類の合成RNAを標品として用い、表1に示す条件によって分離分析を行い、精製条件を検討した。
【表1】
【0095】
移動相Aとして100mM トリエチルアンモニウムアセテート(pH.7.0)、移動相Bとしてアセトニトリルを用いて分離分析を行った結果を図5に示す。ライゲーション反応の原料である鎖Iおよび生成物である鎖IIIの分離は不可能であった。
【0096】
移動相Aとして100mM ヘキシルアンモニウムアセテート(pH.7.0)、移動相Bとしてアセトニトリルを用いて分離分析を行った結果を図6に示す。ライゲーション反応の原料である鎖Iおよび鎖II、ならびに生成物である鎖IIIの分離分取が可能であることが示された。
【0097】
移動相Aとして100mM ジプロピルアンモニウムアセテート(pH.7.0)、移動相Bとしてアセトニトリルを用いて分離分析を行った結果を図7に示す。ライゲーション反応の原料である鎖Iおよび鎖II、ならびに生成物である鎖IIIの分離分取が可能であることが示された。
【0098】
移動相Aとして100mM ジブチルアンモニウムアセテート(pH.7.0)、移動相Bとしてアセトニトリルを用いて分離分析を行った結果を図8に示す。ライゲーション反応の原料である鎖Iおよび鎖II、ならびに生成物である鎖IIIの分離分取が可能であることが示された。
【0099】
移動相Aとして100mM ジアミルアンモニウムアセテート(pH.7.0)、移動相Bとしてアセトニトリルを用いて分離分析を行った結果を図9に示す。ライゲーション反応の原料である鎖Iおよび鎖II、ならびに生成物である鎖IIIの分離分取が可能であることが示された。
【0100】
移動相Aとして10mM テトラブチルアンモニウムホスファート(pH.7.5)、移動相Bとしてアセトニトリルを用いて分離分析を行った結果を図10に示す。ライゲーション反応の原料である鎖Iおよび鎖II、ならびに生成物である鎖IIIの分離分取は、不可能であった

【0101】
5.ライゲーション
次に、50mLコニカルチューブの中に蒸留水(大塚製薬社製)を22.3mL、500mM Tris−Acetate(pH7.0)2.8mL、0.87mMの鎖IのRNAを78.1μL、0.74mMの鎖IIのRNAを101.3μL加え、65℃に加温した水浴中に10分間静置し、その後室温にて冷却した。そして、1625units T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs社)、20mM MgCl、10mM DTT、および4mM ATP混合液2.8mLの組成で、反応スケール28.2mLで行った。その後、37℃で1時間インキュベートし、0.2M エチレンジアミン四酢酸水溶液1mLを反応液に加えて65℃の水浴中に10分間静置し、反応を停止させた。
【0102】
得られた反応液から一部を取り出し、HPLCによって分析したところ、粗生成物中の目的物の純度は61%、鎖Iおよび鎖IIの残存割合はそれぞれ6.4%、8.3%であった。なお、HPLCにおいて波長260nmのUVスペクトルによって検出し、得られたクロマトグラムの総面積値に対する目的物の面積値を純度として算出し、総面積値に対する原料の面積値を残存割合として算出した。
【0103】
続いて、前記反応液を14mL取り出し、マイレクス−GP(メルク社)を用いてろ過し、100mM ヘキシルアンモニウムアセテート(pH.7.0) 1mLで洗いこんだ。
【0104】
6.精製
下記表2に記載の条件で、カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。ただし、精製前にカラム内に移動相A/移動相B=65/35の比率で流速1.0mL/minで10分間通液したのちにサンプルを添加した。得られた画分をそれぞれHPLCにて分析した。なお、HPLCにおいて波長260nmのUVスペクトルによって検出し、得られたクロマトグラムの総面積値に対する目的物の面積値を純度として算出した。
その結果、得られた画分の中で目的物が最も高純度になった画分は、純度96.4%となった。得られた試料を質量分析測定によって測定した結果、表3に示すとおり、計算値と合致していることから、目的物が得られていることが確認できた。また、原料である鎖Iおよび鎖IIは検出されなかった。
【表2】

【表3】
【0105】
[比較例1]
実施例1におけるライゲーションで得られた反応液から14mLを取り出し、マイレクス−GP(メルク社製)を用いてろ過し、100mM トリエチルアンモニウムアセテート(pH.7.0) 1mLで洗いこんだ。
【0106】
下記表4の条件でカラムクロマトグラフィー精製を行った。ただし、精製前にカラム内に移動相A/移動相B=95/5の比率で流速1.0mL/minで10分間通液したのちにサンプルを添加した。得られた画分をHPLCにて分析した。なお、実施例1に記載の方法と同様に純度を算出した。
その結果、目的物が最も高純度になった画分は、純度77%であった。得られた試料を質量分析測定した結果を表3に示す。
【表4】
【0107】
[参考例1]
5.ライゲーション
次に、250mLポリプロピレン反応器の中に蒸留水(大塚製薬社製)を68mM、500mM Tris−Acetate(pH7.0)8.6mL、0.87mMの鎖IのRNAを203μL、0.74mMの鎖IIのRNAを230μL加え、65℃に加温した水浴中に10分間静置し、その後室温にて冷却した。そして、2500units T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs社)、20mM MgCl、10mM DTT、および4mM ATP混合液2.8mLの組成で、反応スケール28.2mLで行った。その後、35℃で24時間インキュベートし、0.2M エチレンジアミン四酢酸水溶液1mLを反応液に加えて65℃の水浴中に10分間静置し、反応を停止させた。
【0108】
続いて、得られた反応液を1mL取り出し、マイレクス−GP(メルク社)を用いてろ過し、蒸留水(大塚製薬社製)1mLで洗いこんだ。
【0109】
6.精製
下記表5に記載の条件で、カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。ただし、精製前にカラム内に移動相A/移動相B=65/35の比率で流速1.0mL/minで10分間通液したのちにサンプルを添加した。得られた画分をそれぞれHPLCにて分析し、実施例1と同様の方法で純度および残存割合を算出した。
その結果、得られた画分のうち、目的物が最も高い純度を示した画分の純度は79%、鎖Iおよび鎖IIの残存割合についてはそれぞれ5.0%、7.1%となった。
【表5】
【0110】
これらの結果を表6にまとめた。イオン交換クロマトグラフィー(以下、イオン交換と略記することもある)やトリエチルアンモニウムアセテートを用いた逆相クロマトグラフィー(以下、TEAA精製と略記することもある)では目的物と未反応原料が同時に溶出する一方、ヘキシルアンモニウムアセテートを用いた逆相クロマトグラフィー(以下、HAA精製と略記することもある。)では目的物と未反応原料を分離できることが判明した。
【表6】
【0111】
[実施例2]
1.第1の一本鎖RNAの合成
第1の一本鎖RNAとして、以下に示す一本鎖RNA(図11の鎖IV)を使用した。当該鎖は23基長からなり、第1の一本鎖RNAに対応する。
【0112】
鎖IV:pUCAUCAUCGUCUCAAAUGAGUCU (5'-3') (配列番号3)
当該一本鎖RNAは、シグマアルドリッチジャパン社から購入したものを使用した。
【0113】
2.第2の一本鎖RNAの合成
第2の一本鎖RNAとして、以下に示す一本鎖RNA(図11の鎖V)を使用した。当該鎖は36塩基長からなり、第2の一本鎖RNAに対応する。
【0114】
鎖V:ACUCCAUUUGUUUUGAUGAUGGAUUCUUAUGCUCCA (5'-3') (配列番号4)
当該一本鎖RNAは、シグマアルドリッチジャパン社から購入したものを使用した。
【0115】
上記第1および第2のRNAをライゲーションすることで得られる連結一本鎖RNAを下記および図11に示す。
鎖VI:
ACUCCAUUUGUUUUGAUGAUGGAUUCUUAUGCUCCAUCAUCAUCGUCUCAAAUGAGUCU (5'-3') (配列番号5)
上記配列中、5’末端の塩基から36番目の塩基までの塩基配列は前記配列番号4の配列に相当し、また、37番目の塩基から3’末端の塩基までの塩基配列は前記配列番号3の配列に相当する。
【0116】
3.ライゲーション
次に、50mLコニカルチューブの中に蒸留水(大塚製薬社製)を1.74mL、500mM Tris−Acetate(pH7.0)234μL、0.10mMの鎖IVのRNAを64.1μL、0.10mMの鎖VのRNAを70.5μL加え、65℃に加温した水浴中に10分間静置し、その後室温にて冷却した。そして、1750units T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs社)、20mM MgCl、10mM DTT、および4mM ATP混合液234μLの組成で、反応スケール2.4mLで行った。その後、37℃で1時間インキュベートし、0.2M エチレンジアミン四酢酸水溶液0.1mLを反応液に加えて65℃の水浴中に10分間静置し、反応を停止させた。
【0117】
得られた反応液から一部を取り出し、HPLCによって分析し、実施例1と同様に純度および残存割合を算出した。その結果、粗生成物中の目的物の純度は29.3%、鎖IVおよび鎖Vの残存割合はそれぞれ13.8%、11.8%であった。
【0118】
続いて、前記反応液を1.2mL取り出し、マイレクス−GP(メルク社)を用いてろ過し、100mM ヘキシルアンモニウムアセテート(pH.7.0) 1mLで洗いこんだ。
【0119】
4.精製
表2に記載の条件で、カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。ただし、精製前にカラム内に移動相A/移動相B=65/35の比率で流速1.0mL/minで10分間通液したのちにサンプルを添加した。得られた画分をそれぞれHPLCにて分析し、実施例1と同様の方法で純度を算出した。その結果、得られた画分の中で目的物が最も高純度になった画分の目的物の純度は80.5%となった。得られた試料を質量分析測定によって測定した結果を表7に示す。計算値と合致していることから、目的物が得られていることが確認できた。また、質量分析では原料である鎖IVおよび鎖Vは検出されなかった。
【表7】
【0120】
[比較例2]
実施例2において、ライゲーションを停止して得られた反応液から1.2mLを取り出し、マイレクス−GP(メルク社製)を用いてろ過し、100mM トリエチルアンモニウムアセテート(pH.7.0) 1mLで洗いこんだ。
【0121】
表4の条件でカラムクロマトグラフィー精製を行った。ただし、精製前にカラム内に移動相A/移動相B=95/5の比率で流速1.0mL/minで10分間通液したのちにサンプルを添加した。得られた画分をそれぞれHPLCにて分析し、実施例1と同様の方法で純度および残存割合を算出した。その結果、最も目的物が高純度となった画分について、純度は47.1%、鎖IVおよび鎖Vの残存割合はそれぞれ1.9%、13.7%となった。得られた試料を質量分析測定によって測定した結果、計算値と合致していることから、目的物が得られることが確認できた。得られた試料を質量分析測定した結果を表7に示す。
【0122】
比較例2および実施例2について、目的物が最も高純度となった画分の純度および原料の残存割合を表8にまとめた。
【表8】
【0123】
[実施例3]
1.第1の一本鎖RNAの合成
以下に示す一本鎖RNA(図11の鎖VII)を合成した。当該鎖は23塩基長からなり、第1の一本鎖RNAに対応する。
【0124】
鎖VII:pUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUU (5'-3') (配列番号6)
当該一本鎖RNAは、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名NTS M−4MX−E、日本テクノサービス株式会社)を用いて3’側から5’側に向かって、実施例1における一本鎖RNA(鎖I)の合成と同様のやりかたで合成し、さらに、同様の方法で固相合成後の固相担体からの切出しと脱保護を行った。
【0125】
2.第2の一本鎖RNAの合成
以下に示す一本鎖RNA(図11の鎖VIII)を前記第一の一本鎖RNAと同様の方法で合成した。当該鎖は29塩基長からなり、第2の一本鎖RNAに対応する。
【0126】
鎖VIII:GCAGAGUACACACAGCAUAUACCCACCGG (5'-3') (配列番号7)
【0127】
上記第1および第2のRNAをライゲーションすることで得られる連結一本鎖RNAを下記に示す。
鎖IX:
GCAGAGUACACACAGCAUAUACCCACCGGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUU (5'-3') (配列番号8)
上記配列中、5’末端の塩基から29番目の塩基までの塩基配列は前記配列番号7の配列に相当し、また、30番目の塩基から3’末端の塩基までの塩基配列は前記配列番号6の配列に相当する。
【0128】
3.ライゲーション
次に、50mLコニカルチューブの中に蒸留水(大塚製薬社製)を19.6mL、500mM Tris−Acetate(pH7.0)2.5mL、0.62mMの鎖VIIのRNAを111.2μL、0.49mMの鎖VIIIのRNAを154.9μL加え、65℃に加温した水浴中に10分間静置し、その後室温にて冷却した。そして、1750units T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs社)、20mM MgCl、10mM DTT、および4mM ATP混合液2.5mLの組成で、反応スケール25mLで行った。その後、37℃で1時間インキュベートし、0.2M エチレンジアミン四酢酸水溶液1mLを反応液に加えて65℃の水浴中に10分間静置し、反応を停止させた。
【0129】
得られた反応液から一部を取り出し、実施例1と同様に純度および残存割合を算出した。その結果、粗生成物中の目的物の純度は33.0%、鎖VIIおよび鎖VIIIの残存割合はそれぞれ15.7%、28.1%であった。
【0130】
続いて、前記反応液を12.5mL取り出し、マイレクス−GP(メルク社)を用いてろ過し、100mM ヘキシルアンモニウムアセテート(pH.7.0) 1mLで洗いこんだ。
【0131】
4.精製
表2に記載の条件で、カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。ただし、精製前にカラム内に移動相A/移動相B=65/35の比率で流速1.0mL/minで10分間通液したのちにサンプルを添加した。得られた画分をそれぞれHPLCにて分析し、実施例1と同様の方法で純度および残存割合を算出した。その結果、目的物が最も高純度となった画分の純度は94.2%、鎖VIIおよび鎖VIIIの残存割合についてはそれぞれ0.4%、0.5%となった。得られた試料を質量分析測定によって測定した結果を表9に示す。計算値と合致していることから、目的物が得られていることが確認できた。
【表9】
【0132】
[比較例3]
実施例3のライゲーション反応で得られた一本鎖RNAを含む反応液から12.5mLを取り出し、マイレクス−GP(メルク社製)を用いてろ過し、100mM トリエチルアンモニウムアセテート(pH.7.0) 1mLで洗いこんだ。
【0133】
表4の条件でカラムクロマトグラフィー精製を行った。ただし、精製前にカラム内に移動相A/移動相B=95/5の比率で流速1.0mL/minで10分間通液したのちにサンプルを添加した。得られた画分をそれぞれHPLCにて分析し、実施例1と同様の方法で純度および残存割合を算出した。その結果、目的物が最も高純度となった画分の純度は35.5%、鎖VIIおよび鎖VIIIの残存割合はそれぞれ17.0%、30.1%となった。得られた試料を質量分析測定によって測定した結果、計算値と合致していることから、目的物が得られることが確認できた。得られた試料を質量分析測定した結果を表9に示す。
【0134】
比較例3および実施例3について、目的物が最も高純度となった画分の純度および原料の残存割合を表10にまとめた。
【表10】

【表11】
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の製造方法によれば、一本鎖RNAを簡便に製造できる。
【配列表フリーテキスト】
【0136】
配列番号1〜8は、RNAの塩基配列を示す。
配列番号9〜11は、アミノ酸配列を示す。
【要約】
本発明は、(I)5’末端にリン酸基を有する第1の一本鎖RNAと3’末端に水酸基を有する第2の一本鎖RNAに、国際生化学連合が酵素番号として定めるEC6.5.1.3に分類され、二本鎖ニック修復活性を有するRNAリガーゼを作用させ、前記第1の一本鎖RNAと前記第2の一本鎖RNAとを連結する工程、および(II)(I)の連結工程で生成した一本鎖RNAを含む反応生成物をモノアルキルアンモニウム塩およびジアルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアンモニウム塩を含む移動相を用いた逆相カラムクロマトグラフィーによって精製する工程を含む一本鎖RNAの製造方法、を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]