(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項6記載の樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱硬化する工程と、該モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有する半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)することができ、特に、大口径、薄化ウエハに対して良好なモールド性を有し、同時に、モールド後において反りが小さく、クラックが発生しづらい高伸張性であって、良好なウエハ保護性能を与え、更に、モールド工程を良好に行うことができ、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂組成物、該組成物から得られる高伸張性樹脂フィルム、該樹脂フィルムによりモールドされた半導体装置、及びその半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(A)エポキシ樹脂又はシリコーン変性エポキシ樹脂、(B)所定のラクトンを含む硬化剤、及び(C)硬化促進剤を組み合わせることで、硬化時の収縮が抑制され、又は硬化時に膨張する樹脂組成物が得られることを見出した。更に、前記樹脂組成物をフィルム化することでより容易に取り扱えるウエハモールド材となり、また、硬化後の低反り性が特に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明は、下記樹脂組成物、樹脂フィルム、並びに半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供する。
1.(A)下記式(1)で表され、重量平均分子量が3,000〜500,000のシリコーン変性エポキシ樹脂、
(B)下記式(4)で表されるラクトンを含む硬化剤、及び
(C)硬化促進剤
を含む
、引張り強度測定装置((株)島津製作所製オートグラフAGS-5kNG)を用いて測定される引張り弾性率が150〜8,500MPaの樹脂を与える樹脂組成物であって、
(B)成分のラクトンが、(A)成分のシリコーン変性エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対し、0.7〜1.8モル含まれる樹脂組成物。
【化1】
[式中、R
1〜R
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。また、a、b、c及びdは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0<d<1、かつa+b+c+d=1を満たす正数である。gは、0〜300の整数である。Xは、下記式(2)で表される2価の有機基である。Yは、下記式(3)で表される2価のシロキサン骨格含有基である。
【化2】
(式中、Eは、単結合、又は下記式
【化3】
から選ばれる2価の有機基である。R
7及びR
8は、炭素数1〜20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。t及びuは、それぞれ独立に、0〜2の整数である。)
【化4】
(式中、sは、0〜300の整数である。)]
【化5】
(式中、nは、1〜12の整数である。)
2.(C)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対し、0.05〜20.0質量部である1の樹脂組成物。
3.nが、2〜10の整数である1又は2の樹脂組成物。
4.更に、(D)無機充填剤を含む1〜3のいずれかの樹脂組成物。
5.前記無機充填剤が、シリカであり、樹脂組成物の固形分中50〜90質量%含まれる4の樹脂組成物。
6.1〜5のいずれかの樹脂組成物から得られる、
引張り強度測定装置((株)島津製作所製オートグラフAGS-5kNG)を用いて測定される引張り弾性率が150〜8,500MPaである樹脂フィルム。
7.6の樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱硬化する工程と、該モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有する半導体装置の製造方法。
8.6の樹脂フィルムを加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハを個片化してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、硬化時にラクトンの開環を伴うので、硬化時の収縮が小さいか、あるいは硬化時に膨張するため、薄化ウエハ上に成形されても反り上がりを小さく抑えることができる。更に、反応後に直鎖アルキル鎖ができるので、硬化物に柔軟性・伸張性を与え、その結果、耐クラック性が向上する。更に、フィルム状に加工することが可能であるため、大口径、薄化ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなる。また、密着性、低反り性、ウエハ保護性に優れ、ウエハを一括してモールドすることが可能となるため、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂フィルムとなる。これら発明を用いることで、歩留まりよく高品質な半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂又はシリコーン変性エポキシ樹脂、(B)所定のラクトンを含む硬化剤、及び(C)硬化促進剤を含み、引張り弾性率が150〜8,500MPaの樹脂を与えるものである。
【0010】
[(A)成分]
本発明の樹脂組成物において、(A)成分は、エポキシ樹脂又はシリコーン変性エポキシ樹脂である。
【0011】
前記シリコーン変性エポキシ樹脂としては、下記式(1)で表され、重量平均分子量が3,000〜500,000であるものが好ましい。このとき、硬化物が、より耐薬品性、耐熱性、耐圧性を示す。
【化6】
【0012】
式(1)中、R
1〜R
6は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。前記1価炭化水素基としては、特に限定されないが、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。R
1〜R
6としては、炭素数1〜12の1価炭化水素基又はアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜10の1価炭化水素基又はアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜6の1価炭化水素基又はアルコキシ基が特に好ましい。R
1〜R
6としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく、中でも、メチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。
【0013】
式(1)中、a、b、c及びdは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0<d<1、かつa+b+c+d=1を満たす正数である。式(1)中、gは、0〜300の整数である。繰り返し単位a及びdに加えて、繰り返し単位b及びcを含む場合には、分子量の制御の点から、0.67≦(b+d)/(a+c)≦1.67であることが好ましい。また、0.1≦a≦0.7、0<b≦0.5、0<c≦0.5、0.1≦d≦0.7であることが望ましい。
【0014】
式(1)中、Xは、下記式(2)で表される2価の有機基である。
【化7】
(式中、Eは、単結合、又は下記式
【化8】
から選ばれる2価の有機基である。)
【0015】
式(2)中、R
7及びR
8は、炭素数1〜20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。R
7又はR
8としては、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
【0016】
式(2)中、t及びuは、それぞれ独立に、0〜2の整数であるが、0が好ましい。
【0017】
式(1)中、Yは、下記式(3)で表される2価のシロキサン骨格含有基である。
【化9】
(式中、sは、0〜300の整数である。)
【0018】
式(1)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜500,000であるが、5,000〜200,000が好ましい。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。式(1)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂は、ランダム共重合体でも、ブロック重合体でもよい。
【0019】
式(1)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂は、下記式(5)で表されるシルフェニレン化合物及び下記式(6)〜(8)で表される化合物から選択される化合物を用いて、以下に示す方法により製造することができる。
【0020】
【化10】
(式中、R
1〜R
8、E、g、s、t及びuは、前記と同じ。)
【0021】
式(1)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂は、原料をヒドロシリル化させることで合成できる。その際、反応容器に全部の原料を入れた状態で反応させてもよく、また一部の原料を先に反応させて、その後に残りの原料を反応させてもよく、原料を1種類ずつ反応させてもよく、反応させる順序も任意に選択できる。
【0022】
この重合反応は、触媒存在下で行う。触媒は、ヒドロシリル化が進行することが広く知られているものが使用できる。具体的には、パラジウム錯体、ロジウム錯体、白金錯体等が用いられるが、これらに限定されない。触媒は、Si−H結合に対し、0.01〜10.0モル%程度加えることが好ましい。これより少ないと反応の進行が遅くなったり、反応が十分に進行しなかったりし、これより多いと脱水素反応が進行しやすくなり、付加反応の進行を阻害するおそれがある。
【0023】
重合反応に用いる溶剤としては、ヒドロシリル化を阻害しない有機溶剤が広く使用できる。具体的には、オクタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。溶剤は、溶質が10〜70質量%になるように使用することが好ましい。これより溶剤が多いと反応系が薄くなり、反応の進行が遅くなる。また、これより溶剤が少ないと粘度が高くなり、反応途中で系中を十分に攪拌できなくなるおそれがある。
【0024】
各化合物の配合比は、式(5)及び式(6)で表される化合物が有するヒドロシリル基のモル数の合計と、式(7)及び式(8)で表される化合物が有するアルケニル基のモル数の合計が、アルケニル基の合計モル数に対するヒドロシリル基の合計モル数が、好ましくは0.67〜1.67、より好ましくは0.83〜1.25となるように配合するのがよい。
【0025】
反応は、通常40〜150℃、好ましくは60〜120℃、特に70〜100℃の温度で行われることが好ましい。反応温度が高すぎると分解等の副反応が起こりやすくなり、低すぎると反応の進行は遅くなる。また、反応時間は、通常0.5〜60時間、好ましくは3〜24時間、特に5〜12時間が好ましい。
【0026】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、前記エポキシ樹脂として、式(1)に記載された単位aを含む樹脂が挙げられ、中でも式(1)に記載された単位aと単位bとを含む樹脂が好ましく、特に、0<a≦1.0、0<b<1.0かつa+b=1であるものが好ましく、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7かつa+b=1であるエポキシ樹脂がより好ましい。なお、エポキシ樹脂のMwは、3,000〜500,000が好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂又はシリコーン変性エポキシ樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
[(B)成分]
(B)成分は、下記式(4)で表されるラクトンを含む硬化剤である。
【化11】
【0029】
式中、nは、1〜12の整数であるが、2〜10の整数が好ましく、3〜7の整数がより好ましい。n=0だと膨張効果やアルキル鎖による靱性向上効果が得られず、nが12より大きいと反応性が落ち、未反応のラクトンが大量に残り、硬化後に系中のヒドロキシ基と反応する等の予期せぬ反応を引き起こすため、硬化後の収縮が大きくなる。ラクトンはエポキシ基の開環反応の際に共に反応し、ラクトンの開環によって体積を増やし、かつ、開環後に直鎖アルキル鎖で架橋された構造ができるため、分子レベルで柔軟性に富み、その結果、硬化物に柔軟性や高伸張性を与え、耐クラック性が向上する。これによって、ウエハを容易に一括してモールド(ウエハモールド)でき、かつ、大口径、薄化ウエハに対して更に良好な低反り性に優れ、更に、耐クラック性に優れたものになり、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる。
【0030】
前記ラクトンの含有量は、(A)成分中に含まれるエポキシ基1モルに対し、0.7〜1.8モルが好ましく、0.8〜1.6モルがより好ましい。(B)成分の含有量が下限値以上であれば膨張効果や高伸張化への効果が十分に得られ、上限値以下であれば耐薬品性、弾性率、強度、線膨張係数に悪影響を与えるおそれがないため好ましい。前記ラクトンは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(B)成分は、硬化物の物性を改善するために、前記ラクトン以外の硬化剤を含んでもよい。この場合、前記ラクトン以外の硬化剤としては、(A)成分中に含まれるエポキシ基と反応しうる官能基を2つ以上持つ化合物が挙げられる。このような官能基としては、フェノール性ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。官能基数は、1分子中2〜10程度が好ましい。官能基数が1だと架橋できずに硬化せず、10より多いと硬化収縮が大きく、実用に向かない。前記ラクトン以外の硬化剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その含有量は、特に限定されないが、(A)成分中に含まれるエポキシ基の当量に対し、反応性官能基が20〜150モル%であるのが好ましく、40〜80モル%がより好ましい。配合量が前記範囲内であれば、樹脂組成物の密着性、保護性が更に向上する。前記ラクトン以外の硬化剤の構造としては、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。
【0033】
[(C)成分]
(C)成分の硬化促進剤は、エポキシ基の開環に用いられるものであれば、広く使用可能である。前記硬化促進剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン類、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられる。
【0034】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05〜20.0質量部が好ましく、0.5〜3.0質量部がより好ましい。前記範囲であれば、硬化反応が過不足なく進行する。
【0035】
[(D)成分]
本発明の樹脂組成物は、ウエハ保護性を与え、更に、耐熱性、耐湿性、強度等を向上させ、硬化物の信頼性を上げるために、(D)成分として無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカ粉末等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩又は亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等が挙げられる。これらの無機充填剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末が好ましい。前記シリカ粉末としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等の補強性シリカ、石英等の結晶性シリカが挙げられる。具体的には、日本アエロジル(株)製のAerosil(登録商標)R972、R974、R976;(株)アドマテックス製のSE-2050、SC-2050、SE-1050、SO-E1、SO-C1、SO-E2、SO-C2、SO-E3、SO-C3、SO-E5、SO-C5;信越化学工業(株)製のMusil 120A、Musil 130A等が挙げられる。
【0036】
無機充填剤の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましく、0.01〜10μmがより好ましい。無機充填剤の平均粒径が下限値以上であれば、無機充填剤が凝集しにくくなり、強度が高くなるため好ましい。また、上限値以下であれば、チップ間への樹脂の流動性が高くなり、充填性が良好になるため好ましい。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置によって求めることができ、質量平均値D
50(すなわち、累積質量が50%となるときの粒子径又はメジアン径)として測定することができる。
【0037】
(D)成分の含有量は、本発明の樹脂組成物の固形分中、50〜90質量%が好ましく、60〜85質量%がより好ましい。無機充填剤の含有量が上限値以下であれば、フィルム系性能が高くなり、樹脂の流動性が高くなり、充填性が良好となるため好ましい。また、下限値以上であれば、十分に効果を奏する。なお、固形分とは、有機溶剤以外の成分のことを言う。
【0038】
[(E)有機溶剤]
本発明の樹脂組成物は、(E)成分として有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等が挙げられ、特にメチルエチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましいが、これらに限定されない。これらの有機溶剤は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤の使用量は、樹脂組成物中の固形分濃度が50〜80質量%になる量が好ましい。
【0039】
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物は、難燃性の向上を目的として、難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、リン系難燃剤が挙げられ、ハロゲン原子を含有せずに難燃性を付与するものであるが、その例としてはホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物、リン酸エステルアミド化合物等が挙げられる。ホスファゼン化合物やリン酸エステルアミド化合物は、分子内にリン原子と窒素原子を含有しているため、特に高い難燃性が得られる。難燃剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、5〜30質量部が好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、樹脂組成物の被接着体への密着性を更に高めることができる。シランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物の中、0.01〜5質量%が好ましい。
【0041】
また、本発明の樹脂組成物は、更に、前述したもの以外の成分を含んでもよい。例えば、(A)成分と(B)成分との相溶性を向上させるため、あるいは樹脂組成物の貯蔵安定性又は作業性等の各種特性を向上させるために、各種添加剤を適宜添加してもよい。例えば、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、フェノール系、リン系又は硫黄系酸化防止剤等を添加することができる。また、カーボン等の顔料を用いて、組成物を着色することもできる。
【0042】
その他の成分は、無溶剤で本発明の樹脂組成物に添加してもよいが、有機溶剤に溶解又は分散し、溶液又は分散液として調製してから添加してもよい。
【0043】
[樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、前記樹脂組成物を用いて、フィルム上に加工して得られるものである。フィルム状に形成されることで、大口径、薄化ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に、樹脂を流し込む必要がないため、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせることがない。また、前記樹脂組成物を用いて形成された樹脂フィルムであれば、硬化収縮がない又は小さいため、ウエハの反りが小さいウエハモールド材となる。
【0044】
本発明の樹脂フィルムの引張り弾性率は、150〜8,500MPaであるが、1,000〜7,500MPaが好ましく、2,500〜7,000MPaがより好ましい。引張り弾性率がこの範囲にあるとき、低反り性と強靭性が両立しやすくなる。また、本発明の樹脂フィルムの引張り強度は、2〜100MPaが好ましく、5〜50MPaがより好ましい。更に、本発明の樹脂フィルムは、硬化後の膨張率が、−3〜8%であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましい。
【0045】
本発明の樹脂フィルムは、前記樹脂組成物から得られる樹脂フィルムに保護フィルムが積層されたものであってもよい。この場合の本発明の樹脂フィルムの製造方法の一例について説明する。
【0046】
前記(A)〜(C)成分、並びに必要に応じて(D)成分、(E)成分及びその他の成分を混合して樹脂組成物溶液を作製し、該樹脂組成物溶液をリバースロールコータ、コンマコータ等を用いて、所望の厚さになるように保護フィルムに塗布する。前記樹脂組成物溶液が塗布された保護フィルムをインラインドライヤに通し、80〜160℃で2〜20分間かけて有機溶剤を除去することにより乾燥させ、次いでロールラミネーターを用いて別の保護フィルムと圧着し、積層することにより、前記樹脂フィルムを得ることができる。この樹脂フィルムをウエハモールド材として用いた場合、ウエハへの密着性、低反り性、良好なモールド性を与える。
【0047】
本発明の樹脂組成物をフィルム状に形成する場合、厚みに制限はないが、50μm以上1,000μm以下であることが好ましく、更には80〜700μmがより好ましい。このような厚みであれば、半導体封止剤として、保護性に優れるため好ましい。
【0048】
前記保護フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムの形態を損なうことなく剥離できるものであれば特に限定されないが、ウエハ用の保護フィルム及び剥離フィルムとして機能するものであり、通常、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、離型処理を施したポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、剥離力は、50〜300mN/minが好ましい。保護フィルムの厚さは、25〜150μmが好ましく、38〜125μmがより好ましい。
【0049】
[半導体装置の製造方法及び半導体装置]
本発明の半導体装置の製造方法は、前記樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱硬化する工程と、該モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを含むものである。
【0050】
前記半導体ウエハとしては、表面に半導体素子(チップ)が積載されたウエハであっても、表面に半導体素子が作製された半導体ウエハであってもよい。本発明の樹脂フィルムは、モールド前にはこのようなウエハ表面に対する充填性が良好であり、また、モールド後には低反り性を有し、このようなウエハの保護性に優れる。また、本発明の樹脂フィルムは、直径8インチ以上、例えば、直径8インチ(200mm)、12インチ(300mm)又はそれ以上といった大口径のウエハや薄化ウエハをモールドするのに好適に用いることができる。前記薄化ウエハとしては、厚さ5〜400μmに薄型加工されたウエハが好ましい。
【0051】
本発明の樹脂フィルムを用いたウエハのモールド方法については、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルム上に貼られた一方の保護層を剥がし、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM-300)等のラミネーターを用いて、真空チャンバー内を真空度50〜1,000Pa、好ましくは50〜500Pa、例えば100Paに設定し、80〜200℃、好ましくは80〜130℃、例えば100℃で他方の保護層が貼られた樹脂フィルムを前記ウエハに一括して密着させ、常圧に戻した後、前記ウエハを室温まで冷却して前記真空ラミネーターから取り出し、他方の保護層を剥離することで行うことができる。
【0052】
また、半導体チップが積層されたウエハに対しては、コンプレッションモールド装置や真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスを備えた装置等を好適に使用することができる。例えば、コンプレッションモールド装置としては、アピックヤマダ(株)製の装置(製品名:MZ-824-01)を使用することができ、半導体チップが積層された300mmシリコンウエハをモールドする際は、100〜180℃、成型圧力100〜300kN、クランプタイム30〜90秒、成型時間5〜20分で成型が可能である。
【0053】
また、真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスを備えた装置としては、ニチゴー・モートン(株)製の装置(製品名:CVP-300)を使用することができ、ラミネーション温度100〜180℃、真空度50〜500Pa、圧力0.1〜0.9PMa、ラミネーション時間30〜300秒でラミネートした後、上下熱板温度100〜180℃、圧力0.1〜3.0MPa、加圧時間30〜300秒で樹脂成型面を平坦化することが可能である。
【0054】
モールド後、120〜220℃、15〜360分間の条件で樹脂フィルムを加熱することにより、樹脂を硬化することができる。
【0055】
更に、モールドされた半導体ウエハを個片化することで、加熱硬化皮膜を有する半導体装置が得られる。モールドされたウエハは、ダイシングテープ等の半導体加工用保護テープにモールド樹脂面あるいはウエハ面が接するように貼られ、ダイサーの吸着テーブル上に設置され、このモールドされたウエハは、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(例えば、(株)DISCO製DFD6361)を使用して切断される。ダイシング時のスピンドル回転数及び切断速度は、適宜選択すればよいが、通常、スピンドル回転数25,000〜45,000rpm、切断速度10〜50mm/secである。また、個片化されるサイズは半導体パッケージの設計によるが、概ね2mm×2mm〜30mm×30mm程度である。
【0056】
このように、前記樹脂組成物でモールドされた半導体ウエハは反りが少なく十分に保護されたものとなるので、これを個片化することで歩留まりよく高品質な半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に限定されない。
【0058】
[1]樹脂の合成
合成例において、重量平均分子量(Mw)は、GPCカラム TSKgel Super HZM-H(東ソー(株)製)を用い、流量0.6mL/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。また、合成例で使用した化合物S−1〜S−7は、以下のとおりである。
【化13】
【0059】
[合成例1]
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、化合物S−1 111g(0.205モル)及び化合物S−2 4.2g(0.023モル)を加えた後、トルエン1,750gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物S−3 8.8g(0.045モル)及び化合物S−4 503.1g(0.182モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表される樹脂1 590gを得た。樹脂1のMwは、38,000であった。なお、樹脂1中に含まれるシロキサン量は、80質量%であった。
【化14】
【0060】
[合成例2]
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、化合物S−1 93.0g(0.171モル)及び化合物S−2 31.9g(0.171モル)を加えた後、トルエン1,750gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物S−3 55.5g(0.286モル)及び化合物S−5 450.1g(0.071モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=0.342/0.357)。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表される樹脂2 610gを得た。樹脂2のMwは、53,200であった。なお、樹脂2中に含まれるシロキサン量は、71質量%であった。
【化15】
【0061】
[合成例3]
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、化合物S−6 131.4g(0.500モル)を加えた後、トルエン1,750gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.5gを投入し、化合物S−7 500.7g(0.490モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=0.490/0.500)。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表される樹脂3 590gを得た。樹脂3のMwは、49,000であった。なお、樹脂3中に含まれるシロキサン量は、79質量%であった。
【化16】
【0062】
[合成例4]
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、化合物S−6 467.3g(1.111モル)を加えた後、トルエン1,950gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.5gを投入し、S−3 216.0g(1.111モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=0.500/0.500)。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表される樹脂4 620gを得た。樹脂4のMwは、30,000であった。なお、樹脂4中にシロキサンは含まれない。
【化17】
【0063】
[2]樹脂フィルムの作製
[実施例1〜9及び比較例1〜4]
下記表1に記載した組成で、(A)合成例1〜4で合成したシリコーン変性エポキシ樹脂(樹脂1〜3)又はエポキシ樹脂(合成例4)、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を配合した。更に、固形成分濃度が65質量%となる量のシクロペンタノンを添加し、ボールミルを使用して攪拌し、混合及び分散して、樹脂組成物の分散液を調製した。(A)成分中に含まれるエポキシ基1モルに対して、1モルとなるように各々硬化剤を加えた。なお、実施例8は、硬化剤として式(4)で表されるラクトンとTEP−TPAとを併用したものであり、比較例1〜2は、硬化剤として、式(4)で表されるラクトンにおいてn=13であるものを用いたものであり、比較例3〜4は、硬化剤として、TEP−TPAを用いたものである。
フィルムコーターとしてダイコーターを用い、保護フィルムとしてE7304(商品名、東洋紡(株)製ポリエステル、厚さ75μm、剥離力200mN/50mm)を用いて、各樹脂組成物を保護フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定されたオーブンに30分間入れることで溶剤を完全に蒸発させ、膜厚100μmの樹脂フィルムを前記保護フィルム上に形成した。
【0064】
樹脂組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
[エポキシ樹脂]
・EOCN−1020(日本化薬(株)製)
【化18】
【0065】
・NC−2000−L(日本化薬(株)製)
【化19】
【0066】
[硬化剤]
・L−1:γ−ブチロラクトン(n=1、東京化成工業(株)製)
・L−2:ε−カプロラクトン(n=3、東京化成工業(株)製)
・L−3:10−ドデカラクトン(n=8、Sigma-Aldrich社製)
・L−4:14−ヘキサデカノラクトン(n=12、Sigma-Aldrich製)
・L−5:15−ペンタデカノラクトン(n=13、東京化成工業(株)製)
・TEP−TPA(旭有機材工業(株)製、下記式)
【化20】
【0067】
[硬化促進剤]
・キュアゾール2P4MHZ(四国化成工業(株)製、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)
【0068】
[無機充填剤]
・シリカ((株)アドマテックス製、平均粒径5.0μm)
【0069】
[3]樹脂フィルムの評価
得られた樹脂フィルムについて、以下の方法で評価を行った。結果を表1〜3に示す。
<密度の測定方法>
作製したフィルムの一部を採取し、密度測定装置(メトラートレド(株)製XP204S−密度測定キット付き)により、硬化前の樹脂組成物の密度を測定した。更に、フィルムの残りを150℃のオーブンに6時間入れることで完全に硬化させ、硬化後のサンプルも同様に密度を測定した。硬化後サンプルの密度が硬化前のものよりも減少した場合、硬化によって膨張したと判断し、増加した場合、硬化によって収縮したと判断した。
【0070】
<引張り強度の測定方法>
引張り強度測定装置((株)島津製作所製オートグラフAGS-5kNG)を用いて、作製した硬化済みフィルムの引張り弾性率、強度、及び伸び率を測定した。
【0071】
<信頼性試験方法>
作製したフィルムをシリコンウエハにラミネートし、加熱硬化後、20mm角に個片化し、それらに対し、冷熱衝撃試験機を用いて、−55℃〜+125℃の温度範囲で、1回/20分、加熱冷却を1,000回以上繰り返した場合、チップ端面の樹脂とシリコン間の剥離を観察し、剥離等異常が起こっていなければ○、500〜1,000回未満の加熱冷却で剥離等異常が起こったものを△、500回未満の加熱冷却で剥離等異常が起こったものを×とした。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
以上の結果、本発明の樹脂組成物から得られる樹脂フィルムは、比較例の樹脂フィルムと比べて、全体的に収縮量が小さいか、膨張した。この結果は、本発明の樹脂組成物を半導体封止用フィルムに用いた場合、ウエハ反りが低減又は発生しないことを示している。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、硬化時に膨張するか、硬化時の収縮が抑制されるため、従来発生していた硬化時の収縮を根本的に抑えることができる。これにより、例えば、フィルム状モールド用途に本発明の樹脂組成物を使用した場合、大口径、薄化ウエハに対して良好な低反り性を示すことが可能である。
【0077】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されない。前記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。