(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分が、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、スチレン又はスチレン誘導体に由来する構造単位とを有し、ベンゼン環の含有量が30質量%以上であるバインダーポリマーを含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
請求項6に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を、エッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を有する、プリント配線板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
さらに本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0020】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、を含み、上記(B)成分がビスフェノールF系アクリレート化合物を含有し、上記(C)成分がヘキサアリールビイミダゾール誘導体又はアクリジン化合物を含有する。本実施形態の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。以下、本実施形態の感光性樹脂組成物で用いられる各成分についてより詳細に説明する。
【0021】
((A)成分:バインダーポリマー)
(A)成分:バインダーポリマーは、アルカリ現像性を有していれば、特に制限はないが、望ましくは、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、スチレン又はスチレン誘導体に由来する構造単位とを含有する。
【0022】
バインダーポリマーは、構造中に、ベンゼン環を30質量%以上含有することが好ましい。また、バインダーポリマーは、構造中に、ベンゼン環を40質量%以上含有することが、解像性の点でさらに好ましい。バインダーポリマーの構造中のベンゼン環の含有量は、例えば、合成時のポリマーの共重合成分の仕込み比から理論値として求めることができる。それぞれの共重合成分中のベンゼン環の含有量は、原子量から算出することができる。
【0023】
バインダーポリマーは、スチレン又はスチレン誘導体に由来する構造単位を30質量%以上含有することが好ましい。
【0024】
バインダーポリマーの酸価は、50〜250mgKOH/gであることが好ましく、現像性と剥離特性の両立の観点から、70〜200mgKOH/g以上であることがより好ましい。
【0025】
バインダーポリマーの酸価は、次のようにして測定することができる。すなわち、まず、酸価の測定対象であるバインダーポリマー1gを精秤する。上記精秤したバインダーポリマーにアセトンを30g添加し、これを均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いて滴定を行う。測定対象であるバインダーポリマーのアセトン溶液を中和するのに必要なKOHのmg数を算出することで、酸価を求める。バインダーポリマーを合成溶媒、希釈溶媒等と混合した溶液を測定対象とする場合には、次式により酸価を算出する。
酸価=0.1×Vf×56.1/(Wp×I/100)
式中、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定したバインダーポリマーを含有する溶液の質量(g)を示し、Iは測定したバインダーポリマーを含有する溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。なお、バインダーポリマーを合成溶媒、希釈溶媒等の揮発分と混合した状態で配合する場合は、精秤前に予め、揮発分の沸点よりも10℃以上高い温度で1〜4時間加熱し、揮発分を除去してから酸価を測定することもできる。
【0026】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、及び/又はスチレン誘導体の構成成分の例としては、具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル誘導体、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フルフリルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アダマンチルエステル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成するアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体等が挙げられる。剥離特性をより向上させる観点から、上記アルキル基は、炭素原子数1〜4のものであることが好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0029】
バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば10000から100000であり、好ましくは20000から100000であり、より好ましくは20000から80000であり、さらに好ましくは25000から60000である。重量平均分子量が100000以下であると解像度、及び現像性が向上する傾向にあり、また、重量平均分子量が10000以上であると、塗膜性が向上する傾向にある。尚、バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)される。
【0030】
上記(A)成分のバインダーポリマーは、構成単位として、さらに、炭素数1〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを有していてもよい。アルキル鎖を導入することによって、可とう性と剥離性とのトレードオフを解消することができる。アルキル鎖の炭素数の数は、1〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
【0031】
本実施形態の感光性樹脂組成物においてバインダーポリマーは、1種類のバインダーポリマーを単独で使用してもよく、2種類以上のバインダーポリマーを任意に組み合わせて使用してもよい。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上の(異なるモノマー単位を共重合成分として含む)バインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーが挙げられる。また、特開平11−327137号公報に記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0032】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(A)バインダーポリマーの含有率は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として20〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、40〜65質量%であることがさらに好ましい。バインダーポリマーの含有率が20質量%以上であると、フィルムの成形性に優れる傾向がある。また、90質量%以下であると、感度及び解像度に優れる傾向がある。
【0033】
((B)成分:光重合性化合物)
続いて、(B)光重合性化合物について説明する。本実施形態において、光重合性化合物は、ビスフェノールF系アクリレート化合物を含有する。感光性樹脂組成物が光重合性化合物としてビスフェノールF系アクリレート化合物を含むことにより、優れた密着性及び解像度を維持しつつ、剥離特性を大幅に向上させることができる。このような効果が得られるのは、ビスフェノールF構造の持つ、柔軟性と親水性、及び、ベンゼン環の含有量に基づくと考えられる。ビスフェノールF系アクリレート化合物は、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化2】
【0034】
式(1)中、nは0〜10の整数を示す。式中のエチレンオキサイドの数を示すnが10以下である場合には、化合物中のベンゼン環の比率が高くなり、解像性が向上する傾向にある。そのため、nは0〜10の数字であることが好ましい。解像性、現像性、入手し易さの観点から、エチレンオキサイドの数を示すnは1〜6であることがさらに好ましい。
【0035】
ビスフェノールF系アクリレート化合物として、具体的には、ビスフェノールF(EO)4ジアクリレートは、M290(MIWON社製、製品名)として、ビスフェノールF(EO)6ジアクリレートは、BPF6DA(MIWON社製、サンプル名)として、ビスフェノールF(EO)10ジアクリレートは、BPF10DA(MIWON社製、サンプル名)として、商業的に入手可能である。
【0036】
光重合性化合物は、さらに、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含むことで、様々な特性のバランスを取ることが容易となる。
【0037】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物として具体的には、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。なかでも解像性及び剥離特性をさらに向上させる観点から、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンが好ましい。
【0038】
これらのうち、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパンは、BPE−200(新中村化学工業株式会社製、製品名)として、商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、製品名)又はFA−321M(日立化成株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0039】
これらのビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて使用される。
【0040】
光重合性化合物の中の上記ビスフェノールF系アクリレート化合物の含有率は、(B)光重合性化合物の総質量を基準として5〜100質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、15〜60質量%であることがより好ましい。上記含有率がかかる範囲であることでレジストの解像度が向上し、かつ剥離性が向上する。
【0041】
感光性樹脂組成物中における光重合性化合物の含有率は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として3〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、25〜55質量%であることがさらに好ましい。光重合性化合物の含有率が3質量%以上であると、感度及び解像度が優れる傾向がある。また、70質量%以下であると、フィルムの成形性に優れる傾向がある。
【0042】
ビスフェノールF系アクリレート化合物及びビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物以外のその他の(B)光重合性化合物としては、分子内に(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の少なくとも一方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種をさらに含むこと、また、分子内に(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをさらに含むことが、硬化物(硬化膜)の可とう性が向上するため好ましい。
【0043】
上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、FA−023M(日立化成株式会社製、製品名)、FA−024M(日立化成株式会社製、製品名)、NKエステルHEMA−9P(新中村化学工業株式会社製、サンプル名)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
また、その他の(B)光重合性化合物としては、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸ポリオールエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。中でも、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性をバランスよく向上させる観点から、感光性樹脂組成物は、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート及びフタル酸系化合物から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。但し、これらの化合物の屈折率は比較的低いため、含有量は少ないほうが好ましい。
【0045】
上記ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシトリエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレートが挙げられる。
【0046】
また、フタル酸系化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びβ−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートはFA−MECH(日立化成株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0047】
さらに(メタ)アクリル酸ポリオールエステルとしては、例えば、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
上記その他の光重合性化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0049】
((C)成分:光重合開始剤)
次に本実施形態で用いる(C)光重合開始剤について説明する。(C)成分である光重合開始剤としては、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体、又は、アクリジニル基を1つ以上有するアクリジン化合物を含有する。なお、感光性樹脂組成物は、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体、及び、アクリジン化合物の両方を含んでいてもよい。感光性樹脂組成物が光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール誘導体、又は、アクリジン化合物を含むことにより、感度と解像性のバランスを取ることができる。
【0050】
ヘキサアリールビイミダゾール誘導体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルビイミダゾール、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−ビイミダゾール等が挙げられる。中でも、感度と解像度の観点から2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0051】
アクリジン化合物としては、例えば、9−フェニルアクリジン、9−(p−メチルフェニル)アクリジン、9−(m−メチルフェニル)アクリジン、9−(p−クロロフェニル)アクリジン、9−(m−クロロフェニル)アクリジン、9−アミノアクリジン、9−ジメチルアミノアクリジン、9−ジエチルアミノアクリジン、9−ペンチルアミノアクリジン、1,2−ビス(9−アクリジニル)エタン、1,4−ビス(9−アクリジニル)ブタン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン、1,14−ビス(9−アクリジニル)テトラデカン、1,16−ビス(9−アクリジニル)ヘキサデカン、1,18−ビス(9−アクリジニル)オクタデカン、1,20−ビス(9−アクリジニル)エイコサン等のビス(9−アクリジニル)アルカン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−オキサプロパン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−チアプロパン、1,5−ビス(9−アクリジニル)−3−チアペンタンなどが挙げられる。中でも、感度と解像度の観点から9−フェニルアクリジンが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0052】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体及びアクリジン化合物以外のその他の光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。その他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物などが挙げられる。これらは、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体、又は、アクリジン化合物と混合して用いることができる。その他の光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0053】
(C)光重合開始剤の含有率は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましく、2〜4.5質量%であることがさらに好ましい。この含有率が上記範囲内であると、上記範囲外である場合と比較して、光感度及び解像度の両方を十分なものにすることが容易となる傾向にある。
【0054】
(増感剤)
上記感光性樹脂組成物は、増感剤をさらに含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の光感度がさらに良好となる。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン類、ピラゾリン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、トリアゾール類、スチルベン類、トリアジン類、チオフェン類、ナフタルイミド類、トリアリールアミン類が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。特に、390〜420nmの活性光線を用いて感光層の露光を行う場合には、感度及び密着性の観点から、増感剤は、ピラゾリン類、アントラセン類、クマリン類及びトリアリールアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、中でもピラゾリン類、アントラセン類及びトリアリールアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0055】
感光性樹脂組成物が増感剤を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.01〜10質量%とすることが好ましく、0.05〜5質量%とすることがより好ましく、0.1〜3質量%とすることがさらに好ましい。上記増感剤の含有量が、0.01質量%以上であることで感度及び解像度がより向上する。また10質量%以下であることで、レジスト形状が逆台形になることを抑制し、密着性が向上する。
【0056】
(アミン系化合物)
上記感光性樹脂組成物は、アミン系化合物をさらに含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の感度がさらに良好となる。上記アミン系化合物としては、例えば、ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、ロイコクリスタルバイオレットが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0057】
上記感光性樹脂組成物がアミン系化合物を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.01〜10質量%とすることが好ましく、0.05〜5質量%とすることがより好ましく、0.1〜2質量%とすることがさらに好ましい。上記アミン系化合物の含有量が、0.01質量%以上であることで、感度がより向上する。また10質量%以下であることで、フィルム形成後、過剰なアミン系化合物が異物として析出することが抑制される。
【0058】
(その他の成分)
上記感光性樹脂組成物は、上記成分に加えて必要に応じて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては例えば、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、感光性樹脂組成物がこれらその他の成分を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、それぞれ0.01〜20質量%程度とすることが好ましい。
【0059】
上記感光性樹脂組成物は、有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。上記有機溶剤としては通常用いられる有機溶剤を特に制限はなく用いることができる。具体的には例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。感光性樹脂組成物は、例えば、上記(A)バインダーポリマーと、(B)光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを上記有機溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液(以下、「塗布液」という)として用いることができる。なお、固形分とは、上記溶液(感光性樹脂組成物)から揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。すなわち、固形分とは、乾燥工程で揮発せずに残る溶媒以外の成分を指し、25℃付近の室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。
【0060】
<感光性エレメント>
本実施形態の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光層と、を備える。本実施形態の感光性エレメントを用いる際には、一般に、感光層を基板上にラミネートした後、支持体(支持フィルム)を剥離することなく露光を行ってもよい。また、感光性エレメントは、感光層の支持体とは反対側の面上に、保護フィルムをさらに備えていてもよい。
【0061】
(支持体)
上記支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができるが、汎用性の点でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることが望ましい。
【0062】
本実施形態において、支持体は、支持体中に含まれる直径5μm以上の粒子等を5個/mm
2以下に調整し、ヘーズを0.01〜1.0%とすると同時に、微粒子を含有する樹脂層を備えた多層支持フィルムであってもよい。これにより、支持体表面の滑り性が良くなると共に、露光時の光散乱の抑制をバランスよく、より高いレベルで成し遂げることができる。ここで、直径5μm以上の粒子等は、偏光顕微鏡を用いて観察した場合に、5μm以上の直径(ただし、観察された粒子の形状が円形でない場合には、その形状の外接円の直径を意味する)を有する粒子等であり、支持体の表面に存在する粒子等を意味する。また、樹脂層に含まれる微粒子の平均粒子径は、5μm以下であり、1μm以下が好ましく、特に、0.1μm以下が好ましく、下限は、特に制限はないが、0.001μm以上が好ましい。微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0063】
このような多層支持フィルムとして使用可能な市販の一般工業用フィルムとしては、例えば、最外層が微粒子を含有する3層構造の二軸配向PETフィルムである、「QS−48」(東レ株式会社製、製品名)、「HTF−01」(帝人デュポンフィルム株式会社製、製品名)、微粒子を含有する層を一方の面に有する2層構造の二軸配向PETフィルム「A−1517」(東洋紡株式会社製、製品名)等が挙げられる。
【0064】
上記支持体の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましい。支持体の厚みが1μm以上であることで、支持体を剥離する際に支持体が破れることを抑制できる。また100μm以下であることで、支持体を通して露光する場合に解像度が低下することを抑制することができる。
【0065】
(保護フィルム)
上記感光性エレメントは、必要に応じて保護フィルムをさらに備えてもよい。保護フィルムとしては、感光層と支持体との間の接着力よりも、感光層と保護フィルムとの間の接着力が小さくなるようなフィルムを用いることが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の不活性なポリオレフィンフィルムが挙げられる。感光層からの剥離性の見地から、ポリエチレンフィルムが好ましい。保護フィルムの厚さは、用途により異なるが、1〜100μm程度であることが好ましい。
【0066】
<感光性エレメント製造方法>
感光性エレメントは、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、感光性エレメントは、(A)バインダーポリマーと、(B)光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを有機溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の塗布液を調製することと、上記塗布液を支持体上に塗布して塗布層を形成することと、上記塗布層を乾燥して感光層を形成することと、を含む製造方法で製造することができる。
【0067】
上記塗布液の支持体上への塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータの公知の方法により行うことができる。
【0068】
また、上記塗布層の乾燥は、塗布層から有機溶剤の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。乾燥は、例えば、70〜150℃にて、5〜30分間程度行うことが好ましい。乾燥後、感光層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0069】
上記感光性エレメントにおける感光層の厚みは、用途により適宜選択することができるが、乾燥後の厚みで1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、5〜40μmであることがさらに好ましい。感光層の厚みが1μm以上であることで、工業的な塗工が容易になり、生産性が向上する。また100μm以下であることで、密着性及び解像度が向上する。
【0070】
上記感光層の紫外線に対する透過率は、波長365nmの紫外線に対して5〜75%であることが好ましく、10〜65%であることがより好ましく、15〜55%であることがさらに好ましい。この透過率が5%以上であることで、密着性がより向上する。また透過率が75%以下であることで、解像度がより向上する。尚、上記透過率は、UV分光計により測定することができる。UV分光計としては、株式会社日立製作所製228A型Wビーム分光光度計が挙げられる。
【0071】
上記感光性エレメントの形態は特に制限されない。例えば、シート状であってもよく、又は巻芯にロール状に巻き取った状態であってもよい。
【0072】
感光性エレメントをロール状に巻き取る場合、支持体が外側になるように巻き取ることが好ましい。巻芯の材質としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。このようにして得られたロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0073】
上記感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターンの形成方法に好適に用いることができる。中でも、めっき処理によって回路を形成する製造方法への応用に適している。
【0074】
<レジストパターンの形成方法>
本実施形態のレジストパターンの形成方法は、(i)基板上に上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光層を形成する感光層形成工程と、(ii)上記感光層の少なくとも一部に活性光線を照射して、光硬化部を形成する露光工程と、(iii)上記感光層の未硬化部分を基板上から除去して、上記感光層に由来する硬化物からなるレジストパターンを形成する現像工程と、を備え、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
【0075】
(i)感光層形成工程
感光層形成工程においては、基板上に上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光層が形成される。上記基板としては特に制限されないが、通常、絶縁層と絶縁層上に形成された導体層とを備えた回路形成用基板、又は合金基材等のダイパッド(リードフレーム用基材)が用いられる。
【0076】
基板上に感光層を形成する方法としては、例えば、上記感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥することにより行ってもよく、又は、上記感光性エレメントから保護フィルムを除去した後、感光性エレメントの感光層を加熱しながら上記基板に圧着することにより行ってもよい。これにより、基板と感光層と支持体とからなり、これらが順に積層された積層体が得られる。
【0077】
この感光層形成工程は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の感光層又は基板の加熱は、70〜130℃の温度で行うことが好ましい。また圧着は、0.1〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm
2程度)の圧力で行うことが好ましいが、これらの条件は必要に応じて適宜選択される。なお、感光層を70〜130℃に加熱すれば、予め基板を予熱処理することは必要ではないが、密着性及び追従性をさらに向上させるために、基板の予熱処理を行うこともできる。
【0078】
(ii)露光工程
露光工程においては、基板上に形成された感光層の少なくとも一部に活性光線を照射することで、活性光線が照射された部分が光硬化して、潜像が形成される。この際、感光層上に支持体が存在する場合、その支持体が活性光線に対して透過性であれば、支持体を通して活性光線を照射することができるが、支持体が遮光性の場合には、支持体を除去した後に感光層に活性光線を照射する。
【0079】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを介して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法及びDLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0080】
活性光線の光源としては、公知の光源を用いることができ、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光を有効に放射するものが用いられる。
【0081】
(iii)現像工程
現像工程においては、上記感光層の未硬化部分が基板上から除去されることで、上記感光層が光硬化した硬化物からなるレジストパターンが基板上に形成される。
【0082】
感光層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去してから、上記露光部分(光硬化部)以外の未露光部分の除去(現像)を行う。現像方法には、ウェット現像とドライ現像とがあるが、ウェット現像が広く用いられている。
【0083】
ウェット現像による場合、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッビング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像度向上の観点からは、高圧スプレー方式が最も適している。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0084】
現像液の構成は上記感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。現像液としては、アルカリ性水溶液が用いられる。
【0085】
アルカリ性水溶液は、現像液として用いられる場合、安全且つ安定であり、操作性が良好である。アルカリ性水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
【0086】
アルカリ性水溶液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層のアルカリ現像性に合わせて調節される。アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0087】
本実施形態においては、現像工程において未露光部分を除去した後、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10J/cm
2程度の露光を行うことにより、レジストパターンをさらに硬化してもよい。
【0088】
<プリント配線板の製造方法>
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、上記のレジストパターンの形成方法により、レジストパターンの形成された基板(回路形成用基板)をエッチング又はめっきして導体パターンを形成する工程を含み、必要に応じて、レジストパターン除去工程等のその他の工程を含んで構成されてもよい。
【0089】
回路形成用基板のエッチング及びめっきは、形成されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の導体層等に対して行われる。エッチングを行う場合のエッチング液としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液が挙げられ、これらの中では、エッチファクタが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが好ましい。
【0090】
また、めっきを行う場合のめっき方法としては、例えば、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケル等のニッケルめっき、ハード金めっき、ソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。
【0091】
エッチング又はめっきの終了後、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。剥離方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられ、浸漬方式、スプレー方式を単独で使用してもよいし、併用してもよい。以上によりプリント配線板が得られる。
【0092】
本発明のプリント配線板の製造方法によって製造されるプリント配線板は、多層プリント配線板であってもよく、また小径スルーホールを有していてもよい。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0094】
<合成例>
(バインダーポリマー(A−1)の合成)
重合性単量体(モノマー)であるメタクリル酸135g、メタクリル酸メチル25g、スチレン225g、及びメタクリル酸ベンジル115g(質量比27/5/45/23)と、アゾビスイソブチロニトリル3.9gとを混合して、溶液aを調製した。また、メチルセロソルブ45g及びトルエン30gの混合液(質量比3:2)にアゾビスイソブチロニトリル2.0gを混合して、溶液b、及び溶液cを調製した。
【0095】
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、メチルセロソルブ300g及びトルエン200gの混合液(質量比3:2)500gを投入し、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、80℃まで加熱昇温させた。
【0096】
フラスコ内の上記混合液に、上記溶液aを4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃にて2時間保温した。次いで、フラスコ内の溶液に、上記溶液bを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて2時間保温した。さらに、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃まで昇温させ、上記溶液cを10分間かけて滴下した後、90℃にて2時間保温した。次いで、撹拌を止めて、室温(25℃)まで冷却してバインダーポリマー(A−1)の溶液を得た。
【0097】
バインダーポリマー(A−1)の不揮発分(固形分)は44.3質量%であり、重量平均分子量は50,000であった。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
【0098】
<GPC条件>
ポンプ:日立L−6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:以下の計3本
Gelpack GL−R420
Gelpack GL−R430
Gelpack GL−R440(以上、日立化成株式会社製、製品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI(株式会社日立製作所製)
【0099】
(バインダーポリマー(A−2)及び(A−3)の合成)
重合性単量体(モノマー)として、下記表1に示す材料を同表に示す質量比(モノマー総量500g)で用いた以外は、バインダーポリマー(A−1)の溶液を得るのと同様にしてバインダーポリマー(A−2)及び(A−3)の溶液を得た。バインダーポリマー(A−2)及び(A−3)の不揮発分(固形分)はいずれも44.3質量%であった。また、バインダーポリマー中のベンゼン環の含有量について、重合性単量体(モノマー)のベンゼン環含有量を原子量から計算して、仕込み比から理論値として求めた。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
<実施例1〜6及び比較例1〜5>
[感光性樹脂組成物の調製]
上記方法で得られた(A)バインダーポリマーと、後述する(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び、その他の成分とを、下記表2に示す配合量(質量部)で混合することにより、実施例1〜6及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。なお、表2に示す(A)バインダーポリマーの配合量は、不揮発分の質量(固形分量)である。
【0102】
(B)光重合性化合物
B−1:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(10molEO変性品)[FA−321M(日立化成株式会社製、製品名)]
B−2:ビスフェノールF系ジアクリレート(4molEO変性品)[M290(MIWON社製、製品名)]
B−3:ビスフェノールF系ジアクリレート(10molEO変性品)[BPF10EO(MIWON社製、サンプル名)
B−4:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(4molEO変性品)[BPE−200(新中村化学工業社製、製品名)]
B−5:ビスフェノールF系ジメタクリレート(4molEO変性品)[BPF4EOM(MIWON社製、サンプル名)]
B−6:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[DPHA(日本化薬株式会社製、製品名)]
【0103】
(C)光重合開始剤
C−1:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール[B−CIM(Hampford社製、製品名)]
C−2:9−フェニルアクリジン[9PA(新日鐵化学株式会社製、製品名)]
【0104】
(その他)
増感剤:9,10ジブトキシアントラセン[DBA(川崎化成工業株式会社製、製品名)]
アミン系化合物:ロイコクリスタルバイオレット[LCV(山田化学工業株式会社製、製品名)]
染料:マラカイトグリーン[MKG(大阪有機化学工業株式会社製、製品名)]
重合禁止剤(重禁剤):tert−ブチルカテコール[TBC(和光純薬工業株式会社製、製品名)]
添加剤:N−フェニルグリシン[NPG(東京化成工業株式会社製、製品名)]
添加剤:トリブロモメチルフェニルスルホン[TPS(常州強力電子新材料株式会社製、製品名)]
添加剤:p−トルエンスルホンアミド[PTSA(和光純薬工業株式会社製、製品名)]
添加剤:ベンゾトリアゾール誘導体[SF−808H(サンワ化成工業株式会社製、製品名)]
【0105】
【表2】
【0106】
<感光性エレメントの調製>
上記で得られた感光性樹脂組成物を、それぞれ支持体である厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、製品名「FB−40」)上に均一に塗布した。次いで、70℃及び110℃の熱風対流式乾燥器で乾燥して、乾燥後の膜厚が25μmである感光層を形成した。この感光層上に保護フィルム(タマポリ株式会社製、製品名「NF−15」)を貼り合わせ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)と、感光層と、保護フィルムとが順に積層された感光性エレメントをそれぞれ得た。
【0107】
<積層体の作製>
銅箔(厚さ:35μm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(基板、日立化成株式会社製、製品名「MLC−E−679」)を、表面粗化処理液「メックエッチボンドCZ−8100」(メック株式会社製、製品名)を用いて表面処理し、水洗、酸洗及び水洗後、空気流で乾燥した。表面処理された銅張積層板を80℃に加温し、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた感光性エレメントを銅張積層板の銅表面にラミネート(積層)した。ラミネートは、保護フィルムを剥離しながら、各感光性エレメントの感光層が銅張積層板の銅表面に接するようにして、110℃のヒートロールを用いて、0.4MPaの圧着圧力、1.0m/分のロール速度で行った。こうして、銅張積層板、感光層、及び支持体がこの順に積層された積層体をそれぞれ得た。得られた積層体は、以下に示す試験における試験片として用いた。
【0108】
<評価>
(光感度測定試験)
上記で得られた試験片の支持体上に、ネガマスクとして濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、各ステップの大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールを載置した。次いで、波長405nmのレーザーを光源としたDLP露光機(ビアメカニクス株式会社製、製品名「DE−1UH」)を用いて、所定のエネルギー量で感光層を露光した。
【0109】
露光後、支持体を剥離した。次いで、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最短現像時間(未露光部分が除去される最短時間)の2倍の時間でスプレーし、未露光部分を除去した(現像処理)。現像処理後、基板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数が14.0段となるエネルギー量(mJ/cm
2)を求め、感光性樹脂組成物の光感度を評価した。評価は、光感度が30mJ/cm
2未満のものを「A」、光感度が30mJ/cm
2以上100mJ/cm
2以下のものを「B」、光感度が100mJ/cm
2を超えるものを「C」とした。なお、光感度は上記エネルギー量が低いほど良い結果を示す。光感度の評価は「A」が最も良好であり、次に「B」が良好であり、「C」は光感度が劣る。
【0110】
(解像性、及び密着性の測定試験)
上記で得られた試験片の感光層に対し、解像度評価用パターンとして、ライン幅/スペース幅がn/n(n=10〜120(単位:μm))の配線パターンを有する描画データを、波長405nmのレーザーを光源としたDLP露光機(ビアメカニクス株式会社製、製品名「DE−1UH」)を用いて露光した。露光は、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が14.0となる露光量で行った。露光後、上記光感度測定試験と同様の現像処理を行った。
【0111】
現処理像後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、且つライン部分(露光部分)が蛇行及び欠けを生じることなく形成されたレジストパターンのうち、最も小さいライン幅/スペース幅の値により、解像性を評価した。この数値が小さいほど解像性が良好であることを意味する。
【0112】
密着性は、ライン幅:スペース幅の比が1:3のパターンを用いて、解像性評価と同様の手法でパターンを形成し、最も小さいライン幅でパターンが残った箇所のライン幅により評価した。この数値が小さいほど密着性が良好であることを意味する。
【0113】
(剥離特性評価)
上記で得られた試験片の感光層に対し、剥離特性評価用として45mm×65mmの長方形の硬化膜を形成するフォトツールデータを使用して、波長405nmのレーザーを光源としたDLP露光機(ビアメカニクス株式会社製、製品名「DE−1UH」)によりステップタブレットの段数が14.0段となるエネルギー量(mJ/cm
2)で露光した。次いで、上記光感度測定試験と同様の条件で現像処理を行って、未露光部を除去した。
【0114】
その後、容量400mlのビーカーに、50℃、3.0%NaOH水溶液(剥離液)300mlを準備した。剥離液を長さ30mmの攪拌子を用いて200回転/分(rpm)で攪拌しながら、現像後の試験片を剥離液に浸漬し、硬化膜が基板から離れるまでの時間を計測した。さらに剥離後の硬化膜を観察し、剥離片のサイズを確認した。なお、硬化膜が基板から離れるまでの時間が早いほど、剥離時間が短く剥離特性が良好であると言える。また、剥離片のサイズが小さいほど、剥離特性が良好であると言える。結果を表3に示した。表3に示した剥離片サイズは、最も大きな剥離片の長辺の長さを意味し、「シート」は、硬化膜が小片化せずにシート状のまま剥離したことを意味する。剥離特性は、少なくとも剥離時間が60秒以下であれば良好であると言える。その上で、剥離時間がより短く、剥離片サイズがより小さいほど、剥離特性はより良好であると言える。剥離時間が60秒を超える場合は、剥離特性に劣る。
【0115】
【表3】
【0116】
表3から明らかなように、実施例1〜6の感光性樹脂組成物を用いて作製した感光性エレメントは、剥離時間が1分以下と短く、かつ光感度、解像性及び密着性に優れるものであった。一方、比較例1〜5の感光性樹脂組成物を用いて作製した感光性エレメントは、解像性、密着性が優れるものは、剥離特性に劣り、両特性のバランスが劣っていた。
【0117】
なお、実施例6及び比較例5は、他の実施例及び比較例と異なる種類の光重合開始剤を用いた際の結果であり、特性の比較は、この両者で行うことになるが、同様に、本発明の樹脂組成物でバランスの優れる結果が得られた。