(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
IABP法において、十分な補助(心臓の負担軽減)効果を得るためには、患者の拍動に対して適切なタイミングで大動脈内に留置したバルーンを拡張及び収縮させる必要がある。そこで、IABP法においてバルーンカテーテルのバルーンを駆動するために用いられる駆動装置では、バルーンの内圧波形を、患者の血圧波形や心電図波形と一緒に表示するものがある。このようなIABP駆動装置の操作者は、表示された波形を比較することにより、バルーンの拡張及び収縮が、患者の心臓の拍動に対して適切なタイミングで行われているかどうかを確認できる(特許文献1参照)。
【0003】
また、IABP駆動装置では、バルーンの内圧を調整する調整機構を備えるものが提案されている。バルーンの内圧の調整機構は、意図的に心臓への補助機能を弱めるボリュームウィーニングと呼ばれる処置を行う場合や、バルーンの内圧が意図せず想定より高い状態となったときに、バルーンの内圧を適切な範囲まで低下させる場合などに、使用することができる。例えば、同じ容積のバルーンに対して、同じ量のシャトルガスを適用しても、バルーンを設置する大動脈の太さ及び形状が患者によって異なること等に起因して、バルーンの内圧が高すぎる状態になる場合があり、このような場合、調整機構によってバルーンの内圧を適切な範囲に調整することができる。
【0004】
ところで、IABP駆動装置においては、バルーン内圧(プラトー圧)の測定値が所定の上限値(閾値)を超えて高くなった場合には、何らかの異常が生じているおそれが高いことを操作者等に報知するため、アラームランプやアラーム音によるアラーム動作が行われるようになっている。アラーム動作が行われた場合には、操作者等は、その原因を特定し、問題がある場合には、適切な対処を行い、問題がない場合には、アラーム動作の解除のための操作を行い、運転を継続する。このアラーム動作を行うための閾値としては、予め適宜に設定された値(例えば、200mmHg(ゲージ圧))が用いられている。
【0005】
しかしながら、バルーン内圧は、その背圧、すなわち患者の血圧に応じて調整する必要があることから、そもそも血圧の高い患者に適用する場合にはバルーン内圧が高い領域でバルーンを駆動させる必要があるため、アラームが本来必要ない場合であっても、アラームが発生してしまう場合がある。そして、アラームの発生は、継続的なIABP駆動装置の駆動に支障を及ぼすことから、本来必要のないアラームの発生は抑制されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、患者の血圧が高いことに起因して発生してしまう本来必要のないアラームの発生を抑制することができるIABP駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るIABP駆動装置は、
バルーンが接続されたバルーンカテーテルを取り付け、前記バルーンを拡張及び収縮させるIABP駆動装置であって、
アラームを発生させるアラーム部と、
前記バルーンの内圧であるバルーン内圧を測定する測定部と、
前記測定部で測定されたバルーン内圧の測定値におけるプラトー圧の上昇に関するアラームを発生するための所定の基準閾値を記憶する基準閾値記憶部と、
患者の血圧に応じて、前記基準閾値に関する補正値を算出する補正値算出部と、
前記プラトー圧が前記補正値で前記基準閾値を補正した補正閾値を超えたか否かを判断する判断部と、
前記判断部により前記プラトー圧が前記補正閾値を超えたと判断された場合に、前記アラーム部に対してアラームの発生を指示するアラーム指示部と、を有する。
【0009】
本発明に係るIABP駆動装置では、プラトー圧の上昇に関するアラームを発生するための閾値(基準閾値)を患者の血圧(例えば、平均血圧)に応じて補正した閾値(補正閾値)を用いて、アラームの発生を判断するようにしたので、患者の血圧が高い場合には、それに応じて閾値が高くなるように補正することができる。したがって、患者の血圧が高いことに起因して発生していた本来必要のないアラームの発生を少なくすることができる。
【0010】
本発明に係るIABP駆動装置において、
前記バルーンの拡張により生じた患者の血圧の上昇分である排除圧を検出する排除圧検出部をさらに有し、
前記アラーム指示部は、前記判断部により前記プラトー圧が前記補正閾値を超えたと判断された場合であっても、前記排除圧検出部により前記排除圧が検出された場合には、前記アラーム部に対してアラームの発生を指示しないようにできる。
【0011】
プラトー圧が補正閾値を超えた場合には、なんらかの異常の発生により、バルーンが正常に駆動されずに、IABP法による血圧補助効果を得ることができない事態が生じている恐れがあるため、原則的にはアラームを発生させて、操作者等にこれを報知するべきである。しかしながら、プラトー圧が補正閾値を超えた場合であっても、血圧補助効果が得られている蓋然性が高い場合には、アラームを発生させることが必要とまではいえず、アラームの発生がかえってIABP駆動装置の継続的な駆動を妨げる恐れがある。そこで、バルーンの拡張により生じた患者の血圧の上昇分である排除圧を検出し、排除圧が検出された場合には、アラームを発生させないことにより、このような問題を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るIABP駆動装置を、図面に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るIABP駆動装置10の全体外観図であり、
図2はIABP駆動装置10の概略構造を表すブロック図である。IABP駆動装置10は、
図2に示すように、バルーン82が接続されたIABP法用のバルーンカテーテル80を取り付けて、バルーン82を拡張及び収縮させるために用いられる駆動装置である。バルーンカテーテル80は、
図1に示すIABP駆動装置10の装置本体20に取り付けて使用される。バルーンカテーテル80の先端に接続されたバルーン82は、下行大動脈内に留置されて使用される。IABP駆動装置10は、心臓の拍動に合わせてバルーン82を拡張及び収縮させることにより、心臓の血液循環機能を補助することができる。
【0015】
図1に示すように、IABP駆動装置10は、装置本体20とモニタ部50とを有する。装置本体20の内部には、バルーン82を拡張及び収縮させるための圧力発生手段や拡張・収縮手段に電力を供給するための電源手段等が収容されている。装置本体20の下部には、キャスター32が取り付けられており、IABP駆動装置10は、病院内等において、容易に移動させることが可能になっている。
【0016】
モニタ部50は、装置本体20の上面に設けられたモニタ設置部30を介して、装置本体20に取り付けられている。モニタ部50は、装置本体20に対して着脱自在である。モニタ部50は、図示しないケーブル等を介して装置本体20に接続されており、装置本体20から電力の供給を受けたり、装置本体20との間でデータの受け渡しを行ったり、信号の入出力を行ったりすることができる。
【0017】
図2に示すように、装置本体20の内部には、バルーン82を拡張・収縮するための圧力発生手段が収納されている。圧力発生手段は、バルーン82を拡張させるシャトルガスを貯蔵するガスタンク(不図示)や、所定の圧力に保たれる圧力室(不図示)や、圧力を伝達する圧力伝達隔壁装置25(アイソレータ)や、圧力伝達隔壁装置25とバルーンカテーテル80を接続する2次配管21aや、圧力伝達隔壁装置25と電磁弁28及び圧力室とを接続する1次配管21b等を有している。
【0018】
圧力伝達隔壁装置25は、バルーンカテーテル80に接続する2次配管21aと、電磁弁28に接続する1次配管21bとを分離しつつ、1次配管21bの圧力変化を2次配管21aに伝達するダイヤフラム26を有している。1次配管21bは、互いに圧力の異なる2つの圧力室に対して、電磁弁28を介して接続される。圧力発生手段は、電磁弁28の接続を制御し、1次配管21bに対して、2つの圧力室を切り換えて接続することによりダイヤフラム26を移動させ、2次配管21a及びバルーン82に圧力を伝達する。1次配管21bに充填される流体としては特に限定されないが、例えば空気等が用いられる。
【0019】
一方、バルーンカテーテル80に接続する2次配管21aには、バルーンカテーテル80内を流通してバルーン82を拡張・収縮させるシャトルガスが充填されている。バルーンカテーテル80及び2次配管21aに充填されるシャトルガスとしては、バルーン82の応答性を高めるために、質量の小さいヘリウムガスを用いることが好ましいが、特に限定されない。
【0020】
2次配管21aには、バルーン82の内圧であるバルーン内圧を測定する測定部22と、バルーン内圧を調整する調整部24が設けられている。測定部22は、圧力センサ等で構成されており、シャトルガスで満たされるバルーンカテーテル80の内部の圧力を測定する。測定部22によって測定されたバルーン内圧に関する信号である内圧信号は、モニタ部50の制御部52に出力される。
【0021】
調整部24は、バルーン82を拡張させるために2次配管21a及びバルーンカテーテル80内を流通するシャトルガス量を調整し、バルーン内圧を調整する。例えば、調整部24は、2次配管21aにシャトルガスを供給するか、又は2次配管21aからシャトルガスを排出することで、バルーン82が収縮したときのバルーン内圧である基準圧76b(
図3参照)を上昇又は低下させることにより、バルーン内圧を調整する。
【0022】
図2に示すように、モニタ部50は、画面表示部54と、第2表示部56と、操作信号入力部58と、アラーム部60と、外部信号入力部60cと、基準閾値記憶部62とを有する。
図3に示すように、画面表示部54は、モニタ部50の前面上半分程度の領域に配置されており、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような表示ディスプレイで構成される。
【0023】
図2に示すように、画面表示部54は、第1表示部54aと、波形表示部54bと、血圧・心拍数表示部54cとを有している。
図3に示すように、第1表示部54aは、画面表示部54における中央上部に配置されており、測定部22で測定されたバルーン内圧の測定値におけるプラトー圧を、バルーン82の駆動中において常時数値表示することができる。プラトー圧は、バルーン82が拡張したときのバルーン内圧である。プラトー圧は、内圧波形76に見られるプラトー76aの圧力であり、測定部22から出力される内圧信号に基づき、制御部52で算出される。
【0024】
図3に示すように、第1表示部54aは、プラトー圧の他に、バルーン82を拡張・収縮するタイミングを検出するための波形やピーク等に関する情報や、駆動時間に関する情報や、アシスト比等に関する表示を行うことができる。ただし、第1表示部54aの表示項目は、駆動条件等に応じて変更されてもよく、例えば、操作者が第1表示部54aに表示する表示項目を選択可能であってもよい。
【0025】
図3に示すように、波形表示部54bは、画面表示部54の中央に配置されており、その波形表示部54bには、上から心電図波形72、血圧波形74、内圧波形76の順に、3つの波形が並んで表示される。心電図波形72は、患者の心臓の電気的な活動を表す心電図信号の経時変化を波形表示したものである。心電図信号は、患者に取り付けられた電極パッドを介して心電計により取得され、
図2に示す外部信号入力部60cを介してモニタ部50に入力される。モニタ部50の制御部52は、外部信号入力部60cを介して入力された心電図信号を、心電図波形72として波形表示部54bに表示する。なお、心電図信号は、IABP駆動装置10に心電計を内蔵させてIABP駆動装置10自体に直接取得されてもよく、IABP駆動装置10外の心電計(ポリグラフやベッドサイドモニタ等)を介して間接的に取得されてもよい。
【0026】
血圧波形74は、患者の血圧を表す血圧信号の経時変化を波形表示したものである。血圧信号は、バルーンカテーテル80又は動脈に接続された他のカテーテルに対して取り付けられた圧力トランスデューサ等の血圧計測器を用いて測定され、
図2に示す外部信号入力部60cを介してモニタ部50に入力される。モニタ部50の制御部52は、外部信号入力部60cを介して入力された血圧信号を、血圧波形74として波形表示部54bに表示する。また、血圧信号は、血圧計測器の出力信号がポリグラフに入力された後、ポリグラフからの出力信号をIABP駆動装置10が取得することにより、間接的に取得されてもよい。
【0027】
内圧波形76は、バルーン82の内圧であるバルーン内圧の測定値を表す内圧信号の経時変化を波形表示したものである。内圧信号は、
図2に示すように、装置本体20における2次配管21aに設けられた測定部22が出力し、モニタ部50に入力される。
【0028】
図3に示すように、画面表示部54の右側には、血圧及び心拍数を数値表示する血圧・心拍数表示部54cが配置されている。
図3に示す例では、血圧・心拍数表示部54cの上方から、心拍数、収縮期圧、拡張期圧、平均圧、オーグメンテーション圧の順に表示されている。心拍数は心電図信号に基づき、収縮期圧、拡張期圧、平均圧及びオーグメンテーション圧については血圧信号に基づき、それぞれ制御部52で算出される。
【0029】
図3に示すように、操作信号入力部58は、モニタ部50の前面下方に配置されている。IABP駆動装置10の操作者は、操作信号入力部58を介して、バルーン82の駆動条件や、モニタ部50の表示条件など、IABP駆動装置10の駆動に関する様々な信号を入力することができる。
【0030】
図2に示すように、操作信号入力部58は、後述するアラーム部60によるアラーム動作を解除するための解除信号を入力するためのアラーム解除部58bを有している。
図3に示すように、アラーム解除部58bは、モニタ部50の前面右下に配置された押ボタンを有しており、操作者がアラーム解除部58bの押ボタンを押すと、アラーム動作を解除するための解除信号がモニタ部50に入力される。アラーム動作を解除する解除信号がモニタ部50に入力されると、制御部52は、アラーム部60を制御し、パイロットランプ60aやアラーム音発生部60bによるアラーム動作を停止又は中断する。
【0031】
図2に示すように、操作信号入力部58は、バルーン内圧を調整するための操作信号を入力するための調整入力部58aを有している。
図3に示すように、調整入力部58aは、モニタ部50の前面右下であって、アラーム解除部58bの左隣に配置された2つの押ボタンを有しており、2つの押ボタンのうち上側のボタンはバルーン内圧を上昇させるための押ボタンであり、下側のボタンはバルーン内圧を低下させるための押ボタンである。
【0032】
操作者が調整入力部58aの押ボタンを押すと、バルーン内圧を調整するための操作信号がモニタ部50に入力される。バルーン内圧を上昇させるための操作信号が入力された場合、モニタ部50の制御部52は、装置本体20の調整部24を制御し、2次配管21a及びバルーンカテーテル80内を流通するシャトルガス量を増加させることにより、バルーン内圧の基準圧76bを上昇させる。ただし、後述する調整度が既に上限値である場合は、バルーン内圧を上昇させる調整は実行されない。
【0033】
一方、バルーン内圧を低下させるための操作信号が入力された場合、モニタ部50の制御部52は、装置本体20の調整部24を制御し、2次配管21a及びバルーンカテーテル80内を流通するシャトルガス量を減少させることにより、バルーン内圧の基準圧76bを低下させる。ただし、後述する調整度が既に下限値である場合は、バルーン内圧を低下させる調整は実行されない。
【0034】
第2表示部56は、装置本体20における調整部24が、シャトルガス量によってバルーン内圧を調整する調整度を表示する。
図3に示すように、第2表示部56は、操作信号入力部58と同様に、モニタ部50の前面下部に配置されており、特に、調整入力部58aの直上に配置されている。第2表示部56は、第1発光部56a、第2発光部56b、及び第3〜第10発光部を有している。第1〜第10発光部56a、56bは、水平方向に延びる棒状の発光部分を有し、上から順に、第1発光部56a、第2発光部56b、第3発光部というように、縦に配列されている。第1発光部56aは、点灯、点滅及び消灯を切り換え可能であり、第2〜第10発光部56bは、点灯及び消灯を切り換え可能である。
【0035】
第2表示部56の第1〜第10発光部56a、56bの発光状態は、バルーン内圧の調整度に応じて変化する。
図3に示すモニタ部50では、バルーン内圧の調整度は第1〜第10の10段階であり、例えば、バルーン内圧の調整度が上限値(バルーン82の基準圧が最高値)である第1の状態(第10段階)では、第2〜第10発光部56bが点灯し、第1発光部56aが点灯又は点滅する。また、バルーン内圧の調整度が第1の状態より一段階低い第2の状態(第9段階)であるとき、第2〜第10発光部56bが点灯し、第1発光部56aが消灯する。さらに第8段階、第7段階とバルーン内圧の調整度が下がると、第3発光部、第4発光部の順に上から消灯し、逆にバルーン内圧の調整度が上がると上に向かって発光部が点灯していく。
【0036】
上述したように、バルーン内圧の調整度の変更は、操作者が調整入力部58aを介して操作信号を入力することにより実施される。したがって、モニタ部50の制御部52は、バルーン内圧を調整するための操作信号が入力された場合、調整部24を駆動してシャトルガス量を調整することで、バルーン内圧の調整を実施すると同時に、第2表示部56の表示状態を変更する。
【0037】
図2に示すアラーム部60は、IABP駆動装置10が検出した異常を、アラーム動作を行うことにより操作者等に認識させる。アラーム部60は、制御部52による制御の下、例えばプラトー圧が上昇した場合に、視覚的及び聴覚的なアラーム動作を行う。プラトー圧が上昇した場合におけるアラーム動作については、後に詳述する。なお、バルーン内圧(プラトー圧)の測定値が上昇する原因としては、測定部22とバルーン82との間にある二次配管21a又はバルーンカテーテル80の管がキンク等によって閉塞している場合、患者の血圧が高い場合、拡張タイミングが早すぎて収縮期圧に被って駆動している場合、大動脈径よりもバルーン径が大きい場合、シャトルガス量が規定量を超えている場合、バルーンカテーテル80とIABP駆動装置10とを接続する駆動チューブ(二次配管21aの一部)が規定のものより短い場合等がある。これらのなかでも、測定部22とバルーン82との間にある二次配管21a又はバルーンカテーテル80の管がキンク等によって閉塞している場合には、測定部22の周りの圧力が高くなるためバルーン内圧の測定値が高くなるものの、バルーン82は正常に駆動されないこととなるので特に問題となる。
【0038】
アラーム部60は、モニタ部50中央上部に配置されるパイロットランプ60aと、アラーム音発生部60bとを有する。アラーム部60は、プラトー圧が上昇した場合等、異常が発生した場合に、パイロットランプ60aを赤色点滅させるとともに、アラーム音発生部60bから高い断続音を発生させ、アラーム動作後も異常が解消せず、又はアラーム動作を解除する解除信号が入力されない場合は、圧力発生手段によるバルーン82の駆動を停止する。
【0039】
図2に示す制御部52は、マイクロプロセッサ等で構成され、各種の演算処理を実施することにより、IABP駆動装置10に含まれる圧力発生手段や画面表示部54その他の構成の制御処理、後述するバルーン内圧の測定値の上昇に関するアラームを発生するための処理を含む各種の処理を実行する。また、
図2に示す外部信号入力部60cは、心電計、血圧計測器、ポリグラフやベッドサイドモニタなど、IABP駆動装置10以外の他の装置からの信号を受け取る。外部信号入力部60cに入力される信号は、制御部52で処理可能なデジタル信号であってもよく、A/D変換されていないアナログ信号であっても良い。信号がアナログ信号である場合、信号入力部51は、制御部52で処理可能なデジタル信号に変換したのち、各信号を制御部52に伝える。
【0040】
図2に示す基準閾値記憶部62には、測定部22で測定されたバルーン内圧の測定値におけるプラトー圧の上昇に関するアラーム(バルーン内圧高いアラーム)を発生するための所定の基準閾値が予め記憶されている。本実施形態では、この基準閾値としては、200mmHg(ゲージ圧)が記憶されているものとする。
【0041】
図4は、制御部52におけるバルーン内圧の測定値が高い場合にアラームを発生するための処理に関する機能構成を示すブロック図であり、
図5は、同じくバルーン内圧の測定値が高い場合にアラームを発生するための処理を示すフローチャートである。制御部52は、該アラーム処理に関する機能構成として、平均血圧算出部52a、補正値算出部52b、判断部52c、プラトー圧検出部52d、アラーム指示部52e、および排除圧検出部52fを有している。
【0042】
処理が開始されると、外部信号入力部60cを介して血圧信号が平均血圧算出部52aに入力され、平均血圧算出部52aは、下記の算術式にしたがって平均血圧を算出する(ステップS001)。
平均血圧=(収縮期血圧−拡張期血圧)/3+拡張期血圧
【0043】
平均血圧算出部52aで算出された平均血圧は、補正値算出部52bに送られる。なお、ここでは、患者の平均血圧を算出するために、外部信号入力部60cを介して入力される外部機器からの血圧信号を用いるものとして説明しているが、このバルーンカテーテル80を用いて、患者の血圧を測定するようにしてもよい。すなわち、バルーン82を通常駆動(ポンピング駆動)する前に、あるいは通常駆動を中断して、バルーン82を半拡張状態にすると、バルーン内圧がその外部の圧力(背圧)に等しくなることを利用して(例えば、特開2011−500204号公報参照)、患者の血圧を測定するようにしてもよい。
【0044】
補正値算出部52bは、下記の算術式にしたがって補正値を算出する(ステップS002)。
補正値=平均血圧−70mmHg
【0045】
補正値算出部52bで算出された補正値は、判断部52cに送られる。また、測定部22により測定されたバルーン内圧の測定値は、プラトー圧検出部52dに入力される。プラトー圧検出部52dは、バルーン内圧におけるプラトー76a(
図3参照)の圧力であるプラトー圧を算出する。プラトー圧算出部52dで算出されたプラトー圧は、判断部52cに送られる。
【0046】
判断部52cは、基準閾値記憶部62に記憶された基準閾値を読み込み、該基準閾値を補正値算出部52bから送られた補正値で補正(加算)して、補正閾値を算出する。次いで、判断部52cは、プラトー圧検出部52dから送られたプラトー圧と補正閾値とを比較して、プラトー圧が補正閾値を超えているか否かを判断する(ステップS003)。判断部52cによる判断結果は、アラーム指示部52eに送られる。
【0047】
また、外部信号入力部60c等により測定された血圧信号は、排除圧検出部52fにも入力される。排除圧検出部52fは、血圧信号に基づいてバルーン82の拡張によって生じた患者の血圧の上昇分である排除圧の有無を判断する(ステップS004)。なお、排除圧は、バルーン82を拡張させない場合の患者の血圧とバルーン82を拡張させた場合の患者の血圧(オーグメンテーション圧)の差として検出することができる。排除圧が検出される場合には、バルーン82の拡張による血圧補助効果が生じているといえ、排除圧が検出されない場合には、バルーン82による血圧補助効果が生じていないと判断することができる。そして、排除圧検出部52fによる判断結果(排除圧の有無)は、アラーム指示部52eに送られる。
【0048】
アラーム指示部52eは、判断部52cによる判断結果が、プラトー圧が補正閾値を超えているとの判断(ステップS003でYes)であり、かつ排除圧検出部52fによる判断結果が排除圧無し(ステップS004でNo)である場合には、アラーム部60に対してアラームの発生を指示する(ステップS005)。アラーム指示部52eは、それ以外の場合には、すなわち、判断部52cによる判断結果が、プラトー圧が補正閾値以下である場合(ステップS003でNoの場合)、又は排除圧検出部52fによる判断結果が排除圧有りである場合(ステップS004でYesの場合)には、アラーム発生部60に対してアラームの発生を指示しない。
【0049】
なお、排除圧検出部52fは設けた方が好ましいが、省略してもよく、省略した場合には、アラーム指示部52eは、判断部52cによる判断結果のみに基づいて、アラーム部60に対する指示を行う。すなわち、アラーム指示部52eは、判断部52cによる判断結果が、プラトー圧が補正閾値を超えているとの判断ある場合(ステップS003でYesの場合)には、アラーム部60に対してアラームの発生を指示し、プラトー圧が補正閾値を超えていない(以下である)との判断である場合(ステップS003でNoの場合)には、アラーム発生部60に対してアラームの発生を指示しない。
【0050】
アラーム指示部52eからアラーム発生の指示を受けたアラーム部60は、所定のアラーム動作を実施する。アラーム部60のアラーム動作は、パイロットランプ60aを赤色点滅させたり(
図3参照)、アラーム音発生部60b(
図2参照)に断続的なアラーム音を生じさせたりするなどの視覚的及び聴覚的な方法により行われる。アラーム動作に気づいた操作者等は、操作信号入力部58におけるアラーム解除部58bから解除信号を入力することにより、アラーム部60によるアラーム動作を解除することができる。
【0051】
上述した実施形態では、プラトー圧の上昇に関するアラームを発生するための閾値(基準閾値)を患者の平均血圧に応じて補正した閾値(補正閾値)を用いて、アラームの発生を判断するようにしたので、患者の平均血圧が高い場合(本実施形態では、70mmHgを超える場合)には、それに応じて補正閾値は、基準閾値(本実施形態では、200mmHg)よりも高くなる方向に補正された値となる。したがって、患者の血圧が高いことに起因して発生していた本来必要のないアラームの発生を少なくすることができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、患者の平均血圧が低い場合(本実施形態では、70mmHg未満)である場合には、補正閾値は低くなる方向に補正された値となるが、かかる低くなる方向への補正の必要がない場合には、補正はせずに、基準閾値を用いるようにしてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、プラトー圧が補正閾値を超えたことのみならず、これに加えて、排除圧が検出されていない場合にのみ、アラームを発生するようにしているので、プラトー圧が補正閾値を超えたとしても、血圧補助効果がない場合に限って、アラームが発生する。したがって、IABP駆動装置10の継続的な駆動の支障となりうる本来必要のないアラームの発生をさらに効果的に抑制することができる。
【0054】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。