【実施例】
【0109】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0110】
[合成例1]
<コバルト錯体MC1の合成>
以下の反応式で示すとおり、化合物1および化合物2を経由して化合物3を合成した後、化合物3と金属付与剤とを用いて、コバルト錯体MC1を合成した。
【0111】
(化合物1の合成)
【化1】
(式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基であり、dbaはジベンジリデンアセトンである。)
【0112】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、3.94g(6.00mmol)の2,9−(3’−ブロモ−5’−tert−ブチル−2’−メトキシフェニル)−1,10−フェナントロリン(Tetrahedron.,1999,55,8377.の記載に従って合成した。)、3.17g(15.0mmol)の1−N−Boc−ピロール−2−ボロン酸、0.14g(0.15mmol)のトリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム、0.25g(0.60mmol)の2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニルおよび、5.53g(26.0mmol)のリン酸カリウムを、200mLのジオキサンと20mLの水との混合溶媒に加えて溶解させ、60℃にて6時間攪拌した。反応終了後、放冷して蒸留水およびクロロホルムを加えて、有機層を抽出した。得られた有機層を濃縮して、黒い残留物を得た。これを、展開溶媒としてクロロホルムを用いたシリカゲルカラムで精製し、化合物1を得た。得られた化合物1の同定データを以下に示す。
【0113】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)=1.34(s,18H),1.37(s,18H),3.30(s,6H),6.21(m,2H),6.27(m,2H),7.37(m,2H),7.41(s,2H),7.82(s,2H),8.00(s,2H),8.19(d,J=8.6Hz,2H),8.27(d,J=8.6Hz,2H).
【0114】
(化合物2の合成)
【化2】
(式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である。)
【0115】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、0.904g(1.08mmol)の化合物1を10mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。得られたジクロロメタン溶液を−78℃に冷却しながら、ここに三臭化ホウ素の1.0Mジクロロメタン溶液8.8mL(8.8mmol)をゆっくり滴下した。滴下後、10分間そのまま攪拌し、室温になるまでさらに攪拌しながら放置した。3時間後、反応液を0℃まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、クロロホルムを加えて抽出し、有機層を濃縮した。得られた褐色の残留物を、展開溶媒としてクロロホルムを用いたシリカゲルカラムで精製し、化合物2を得た。得られた化合物2の同定データを以下に示す。
【0116】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)=1.40(s,18H),6.25(m,2H),6.44(m,2H),6.74(m,2H),7.84(s,2H),7.89(s,2H),7.92(s,2H),8.35(d,J=8.4Hz,2H),8.46(d,J=8.4Hz,2H),10.61(s,2H),15.88(s,2H).
【0117】
(化合物3の合成)
【化3】
【0118】
反応容器内において、0.061g(0.10mmol)の化合物2と0.012g(0.11mmol)のベンズアルデヒドを5mLのプロピオン酸に溶解させ、140℃で7時間加熱した。その後、得られた反応液からプロピオン酸を留去して、得られた黒い残渣を、展開溶媒をクロロホルムとメタノールを10:1の体積比で混合した溶媒を用いたシリカゲルカラムで精製して、化合物3を得た。得られた化合物3の同定データを以下に示す。
【0119】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)=1.49(s,18H),6.69(d,J=4.8Hz,2H),7.01(d,J=4.8Hz,2H),7.57(m,5H),7.90(s,4H),8.02(s,2H),8.31(d,J=8.1Hz,2H),8.47(d,J=8.1Hz,2H).
【0120】
(コバルト錯体MC1の合成)
【化4】
(式中、Acはアセチル基であり、Meはメチル基である。)
【0121】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、0.045g(0.065mmol)の化合物3と、0.040g(0.16mmol)の酢酸コバルト4水和物を含んだ3mLのメタノールおよび3mLのクロロホルムの混合溶液とを混合し、80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を濃縮乾固させて、青色固体を得た。これを水で洗浄することにより、コバルト錯体MC1を得た。なお、前記反応式中のコバルト錯体MC1において、「OAc」は、1当量の酢酸イオンが対イオンとして存在することを示す。得られたコバルト錯体MC1の同定データを以下に示す。
ESI−MS[M・]
+:m/z=866.0
【0122】
[合成例2]
<コバルト錯体MC2の合成>
以下の反応式で示すとおり、化合物(D)および化合物(E)を経由して化合物(F)を合成した後、化合物(F)と金属付与剤とを用いて、コバルト錯体MC2を合成した。
【化5】
0.547gの2,6−ジブロモ−4−tert−ブチルアニソール、0.844gの1−N−Boc−ピロール−2−ボロン酸、0.138gのトリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム、0.247gの2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、5.527gのリン酸カリウムを200mLのジオキサンと20mLの水の混合溶媒に溶解し、60℃にて9時間攪拌した。反応終了後、放冷して蒸留水、クロロホルムを加えて、有機層を抽出した。得られた有機層を濃縮して、黒い残渣を得た。これを、シリカゲルカラムを用いて精製し、化合物(D)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ1.30(s,18H),1.31(s,9H),3.19(s,3H),6.19(m,2H),6.25(m,2H),7.22(s,2H),7.38(m,2H).
【0123】
化合物(E)を以下の反応式に従って合成した。
【化6】
窒素雰囲気下で0.453gの化合物(D)を15mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。ジクロロメタン溶液をドライアイス/アセトンバスで−78℃に冷却しながら、5.4mLの三臭化ホウ素(1.0Mジクロロメタン溶液)をゆっくり滴下した。滴下後、10分間そのまま攪拌させた後、ドライアイス/アセトンバスを取り除き、室温まで攪拌させながら放置した。1時間後、飽和NaHCO3水溶液を加えて中和し、クロロホルムを加えて3回抽出した。得られた有機層を濃縮して、得られた黒色の残渣を、シリカゲルで精製し、化合物(E)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ1.34(s,9H),6.35(m,2H),6.40(s,1H),6.55(m,2H),6.93(m,2H),7.36(s,2H),9.15(s,2H).
【0124】
大環状化合物(F)を以下の反応式に従って合成した。
【化7】
0.051gの化合物(E)と0.019gのベンズアルデヒドを20mLのプロピオン酸に溶解させ、140℃で7時間加熱した。その後、プロピオン酸を留去して、得られた黒い残渣をシリカゲルで精製して、化合物(F)を得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ1.38(s,18H),6.58(d,J=3.8Hz,4H),6.92(d,J=3.8Hz,4H),7.49(m,10H),7.71(s,4H),12.75(br,4H).
【0125】
コバルト錯体MC2を以下の反応式にしたがって合成した。
【化8】
窒素雰囲気下において、0.057gの大環状化合物(F)と0.047gの酢酸コバルト4水和物を含んだメタノール4ml、クロロホルム6mlの混合溶液を、80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を濃縮乾固させると紫色固体を得た。これを水で洗浄することにより、コバルト錯体MC2を得た。
ESI−MS[M・]+:m/z=846.0
【0126】
[合成例3]
<コバルト錯体MC3の合成>
コバルト錯体MC3を以下の反応式に従って合成した。
【化9】
窒素雰囲気下において0.476gの塩化コバルト6水和物と0.412gの4―tert-ブチル−2,6−ジホルミルフェノールを含んだ10mlエタノール溶液を50mlのナスフラスコに入れ、室温にて攪拌した。この溶液に0.216gのo−フェニレンジアミンを含んだ5mlエタノール溶液を徐々に添加した。上記混合物を2時間還流することにより茶褐色沈殿が生成した。この沈殿を濾取し、乾燥することでコバルト錯体MC3を得た(収量0.465g:収率63%)。
【0127】
[合成例4]
<コバルト錯体MC4の合成>
【化10】
窒素雰囲気下において0.476gの塩化コバルト6水和物と0.469gの3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドを含んだ10mlエタノール溶液を50mlのナスフラスコに入れ、室温にて攪拌した。この溶液に0.216gのo−フェニレンジアミンを含んだ10mlエタノール溶液を徐々に添加した。上記混合物を2時間還流することにより茶褐色沈殿が生成した。この沈殿を濾取し、乾燥することでコバルト錯体MC4を得た(収量0.08g:収率7%)。
【0128】
[合成例5]
<コバルト錯体MC5の合成>
以下の反応式で示すとおり、化合物4〜化合物9を経由し化合物10を合成した後、化合物10と金属付与剤とを用いて、コバルト錯体MC5を合成した。
【0129】
(化合物4の合成)
【化11】
【0130】
遮光アルゴン気流下、3Lフラスコへ4−tert−ブチルフェノール250g(1.664mol)、クロロホルム420ml、四塩化炭素420mlを仕込み、そこへ臭素/クロロホルム溶液[臭素240g(0.9)等量、クロロホルム270ml]を内温8±2℃にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温にて一晩攪拌した。減圧濃縮を行い、化合物4(372g)のオイルを得た。収率97.5%。
【0131】
(化合物5の合成)
【化12】
【0132】
アルゴン気流下、10Lフラスコへ化合物4(371g)、無水炭酸カリウム(335g)、アセトン5Lを仕込み、そこにヨウ化メチル435gを30分かけて滴下した。滴下終了後、内温40℃にて一晩攪拌した。ろ過、減圧蒸留を行い、化合物5(355.8g)を得た。収率90.3%。
【0133】
(化合物6の合成)
【化13】
【0134】
アルゴン気流下、2Lフラスコにリチウム10g、脱水ジエチルエーテル102mlを仕込み、そこへ化合物5のジエチルエーテル溶液[化合物5:158g、脱水ジエチルエーテル1L]を30分かけて滴下し、その後1時間、還流を行った。室温まで冷却し、リチオ化液を得た。アルゴン気流下、5Lフラスコへ2,2‘−ビピリジル12.52g(0.08mol)、脱水トルエン1Lを仕込み、そこにリチオ化液を40分かけて滴下し、その後、45時間還流を行った。内温を5℃まで冷却後、水300mlを滴下、分液後、水相をジクロロメタンで抽出、有機相を合わせて、二酸化マンガン50gを添加し、一晩攪拌した。ろ過後、無水硫酸ナトリウムにて脱水した後、減圧濃縮して、粗生成物を得た。カラム精製を行い、化合物6(6.245g)を得た。収率16.2%。
【0135】
(化合物7の合成)
【化14】
【0136】
遮光アルゴン気流下、1Lフラスコへ化合物6(6.145g、12.79mmol)、脱水ジクロロメタン400mlを仕込み、臭素6.2gを添加し、20時間還流を行った。モノブロモ体が残存していたため、臭素を追加し、更に20時間還流した。反応終了後、中和、分析、カラム精製を行い、化合物7(7.334g)を得た。収率89.8%。
【0137】
(化合物8の合成)
【化15】
(式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基であり、dbaはジベンジリデンアセトンである。)
【0138】
反応容器内をアルゴンガス雰囲気とした後、0.50g(0.77mmol)の化合物7、0.41g(1.9mmol)の1−N−Boc−ピロール−2−ボロン酸、0.018g(0.02mmol)のトリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム、0.032g(0.08mmol)の2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニルおよび、0.72g(3.1mmol)のリン酸カリウムを、25mLのジオキサンと2.5mLの水との混合溶媒に加えて溶解させ、60℃にて6時間攪拌した。反応終了後、放冷して蒸留水およびクロロホルムを加えて、有機層を抽出した。得られた有機層を濃縮して、黒い残留物を得た。これを、展開溶媒としてクロロホルムを用いたシリカゲルカラムで精製し、化合物8を得た。得られた化合物8の同定データを以下に示す。
【0139】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)=1.34(s,18H),1.37(s,18H),3.30(s,6H),6.21(m,2H),6.27(m,2H),7.37(m,2H),7.41(s,2H),7.82(s,2H),8.00(s,2H),8.19(d,J=8.6Hz,2H),8.27(d,J=8.6Hz,2H).
【0140】
(化合物9の合成)
【化16】
(式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である。)
【0141】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、0.28g(0.43mmol)の化合物8を10mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。得られたジクロロメタン溶液を−20℃に冷却しながら、ここに三臭化ホウ素の1.0mol/Lジクロロメタン溶液3.46mL(3.46mmol)をゆっくり滴下した。滴下後、10分間そのまま攪拌し、室温になるまでさらに攪拌しながら放置した。3時間後、反応液を0℃まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、クロロホルムを加えて抽出し、有機層を濃縮した。得られた褐色の残留物を、展開溶媒としてクロロホルムを用いたシリカゲルカラムで精製し、化合物9を得た。得られた化合物9の同定データを以下に示す。
【0142】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)=1.40(s,18H),6.25(m,2H),6.44(m,2H),6.74(m,2H),7.84(s,2H),7.89(s,2H),7.92(s,2H),8.35(d,J=8.4Hz,2H),8.46(d,J=8.4Hz,2H),10.61(s,2H),15.88(s,2H).
【0143】
(化合物10の合成)
【化17】
【0144】
反応容器内において、80mg(0.13mmol)を150mLのプロピオン酸に溶解させ、90℃へ加熱した。14mg(0.13mmol)のベンズアルデヒドを溶解した25mLのプロピオン酸を滴下後、140℃まで加熱し、3時間攪拌した。得られた反応液からプロピオン酸を留去して、得られた黒い残渣を、展開溶媒をクロロホルムとメタノールを10:1の体積比で混合した溶媒を用いたシリカゲルカラムで精製して、化合物10を得た。得られた化合物10の同定データを以下に示す。
【0145】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)=1.49(s,18H),6.69(d,J=4.8Hz,2H),7.01(d,J=4.8Hz,2H),7.57(m,5H),7.90(s,4H),8.02(s,2H),8.31(d,J=8.1Hz,2H),8.47(d,J=8.1Hz,2H).
【0146】
(コバルト錯体MC5の合成)
【化18】
【0147】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、8.7mg(1.3μmol)の化合物10と、1.3mg(5.2μmol)の酢酸コバルト4水和物を含んだ2mLのメタノールおよび2mLのクロロホルムの混合溶液とを混合し、60℃に加熱しながら2時間攪拌した。得られた溶液を濃縮乾固させて、青色固体を得た。これを水で洗浄することにより、コバルト錯体MC5を得た。なお、前記反応式中のコバルト錯体MC5において、「OAc」は、1当量の酢酸イオンが対イオンとして存在することを示す。
【0148】
[合成例6]
<コバルト錯体MC6の合成>
【化19】
アルゴン雰囲気下、200mLの3つ口ナス形フラスコに、4-tert-Butylanisole 10.1g(61.2mmol)と、脱水ジクロロメタン85mLとを加え、臭素7.48mL(153mmol)を10分かけて滴下した。室温で11時間撹拌した。
反応液にNa
2SO
3水溶液を加え、クロロホルム抽出にて水と飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮して無色液体の1,3-dibromo-5-tert-butyl-2-methoxybenzeneを19.8g(収率100%)得た。
【0149】
【化20】
(以下式中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基である)
アルゴン雰囲気下、200mLの3つ口ナス形フラスコに、1-tert-butoxycarbonyl-2-pyrrolilboronic acid 1.88g(8.72mmol)、炭酸ナトリウム2.77g(26.2mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 504mg (0.436mmol)を入れた。別のフラスコに、アルゴン雰囲気下で、1,3-dibromo-5-tert-butyl-2-methoxybenzene3.01g(8.72mmol)1,4-dioxane 80mLおよび水5mLを混合し、混合液を得た。該混合液を、先の3つ口ナス形フラスコに、室温で加え、内温60℃で4時間撹拌後、100℃で1時間撹拌し、反応液を得た。
反応液をろ過、濃縮し、展開溶媒ヘキサン:クロロホルム=4:1でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、無色液体の化合物14を1.80g(収率49.6%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ7.48 (d, J = 2.8, 1H), 7.41-7.40 (m, 1H), 7.23 (d, J = 2.8, 1H), 6.25-6.20 (m, 2H), 3.40 (s, 3H), 1.30 (s, 9H), 1.26 (s, 9H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ152.5, 149.6, 148.2, 129.9, 129.7, 129.4, 126.8, 122.5, 116.6, 114.3, 110.3, 83.6, 59.9, 34.6, 31.4, 27.4.
【0150】
【化21】
アルゴン雰囲気下、50mLの 2つ口ナス形フラスコに、化合物14を1.00g(2.46mmol)およびプロピオン酸9gを加え、100℃で4時間撹拌し、その後、室温に戻し、反応溶液を得た。反応溶液を開放系にし、ベンズアルデヒド129.5mg(1.23mmol)を、プロピオン酸1gに溶解した溶液を加え、5時間還流した。
室温に冷ました反応溶液を濃縮し、展開溶媒ヘキサン:クロロホルム=3:1 (v/v) でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、橙色固体の化合物15を790mg(収率91.8%) 得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ9.41 (s, 2H), 7.51 (d, J = 2.0, 2H), 7.38-7.28 (m, 7H), 6.53 (t, J = 3.2, 2H), 6.07 (t, J = 3.2, 2H), 5.56 (s, 1H), 3.50 (s, 6H), 1.31 (s, 18H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ149.5, 149.2, 142.0, 133.8, 129.0, 128.44, 128.37, 127.9, 127.4, 126.3, 117.8, 108.3, 107.5, 60.3, 44.6, 34.6, 31.3.
【0151】
【化22】
アルゴン雰囲気下、50mLの3つ口丸底フラスコに、化合物15を220 mg(0.312 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 54.1 mg (0.468 mmol)、脱水THF3mLおよび2-pyridylznic bromideの0.5mol/L THF溶液1.87 mL (0.937 mmol)を加え、室温で2時間撹拌後、還流した。13時間後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 27.0mg (0.234 mmol)、脱水THF2mLおよび2-pyridylzinc bromideの0.5mol/L THF溶液0.94 mL (0.47 mmol)を追加して、更に12時間還流して、反応溶液を得た。
反応溶液を冷まし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ろ過し、ろ液を濃縮してクロロホルム抽出により、水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮し、展開溶媒ヘキサン:クロロホルム=3:1(v/v)でアルミナゲルカラムクロマトグラフィーを2回行い、赤色固体を217mg得た。
得られた赤色固体を真空乾燥し、ジクロロメタン2mLに溶解した。これに、2,3-dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone (DDQ) 86.6mg(0.343 mmol)を、ジクロロメタン7mLに溶解した溶液を、開放系室温で撹拌しながら5分かけて滴下して、反応溶液を得た。
反応溶液を、展開溶媒クロロホルム:酢酸エチル=4:1(v/v)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて、青色固体を85.6mg得た。この成分はNMRシグナルがブロードであった。
得られた青色固体を、ジクロロメタン抽出にて、濃塩酸、希塩酸および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮して赤色固体の化合物16を58.0mg (収率26.5%) 得た。また、副生成物としてピリジル基1ヶ所反応物である化合物12を32.2mg(収率14.7%)得た。
【0152】
化合物16のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ8.73-8.71 (m, 2H), 7.89 (d, J = 2.8, 2H), 7.79 (d, J = 8.0, 2H), 7.71 (td, J = 7.6, 2.0, 2H), 7.65 (d, J = 2.8, 2H), 7.59-7.57 (m, 2H), 7.48-7.45 (m, 3H), 7.25-7.22 (m, 2H), 6.93 (d, J = 4.4, 2H), 6.65 (d, J = 4.4, 2H), 3.48 (s, 6H), 1.31 (s, 18H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ156.9, 153.9, 153.3, 149.6, 147.1, 141.5, 139.5, 138.1, 136.2, 134.1, 131.1, 129.2, 129.0, 128.7, 127.6, 127.0, 126.8, 124.9, 122.0, 118.8, 62.1, 34.6, 31.5.
【0153】
化合物12のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ8.74 (d, J = 4.4, 1H), 8.17 (d, J = 2.8, 1H), 7.84 (d, J = 7.6, 1H), 7.76-7.69 (m, 3H), 7.58-7.55 (m, 2H), 7.49-7.46 (m, 4H), 7.27-7.24 (m, 1H), 7.10 (d, J = 4.4, 1H), 6.76 (dd, J = 7.6, 4.4, 2H), 6.52 (d, J = 5.6, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.47 (s, 3H), 1.44 (s, 9H), 1.29 (s, 9H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ159.7, 157.0, 154.6, 151.9, 149.6, 148.7, 147.6, 145.7, 145.1, 139.3, 138.4, 137.9, 136.1, 134.1, 132.2, 131.0, 130.6, 129.8, 128.7, 127.7, 127.5, 127.4, 126.8, 126.0, 125.0, 124.8, 122.7, 122.0, 118.1, 114.8, 62.1, 60.9, 34.9, 34.6, 31.7, 31.3.
【0154】
【化23】
アルゴン雰囲気下、30mLの3つ口丸底フラスコに、化合物16を30.0mg(0.428 mmol)および脱水ジクロロメタン3mLを加え、−20 ℃で撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液1.0mol/Lを0.86mL(0.86 mmol)5分かけて滴下した。内温の変化無し、色は赤から青に変化。30分後、冷浴を外し5時間半撹拌した。反応溶液を0 ℃にして、水1mLを滴下した。
反応溶液にクロロホルムを加え、抽出にて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮後、展開溶媒クロロホルム:酢酸エチル=4:1 (v/v)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、紫色個体の化合物13を17.4 mg (収率60.6%) 得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ8.20 (br, 2H), 8.07 (d, J = 8.0, 2H), 7.93 (d, J = 2.8, 2H), 7.85 (d, J = 2.8, 2H), 7.58-7.44 (m, 7H), 7.03-6.97 (m, 4H), 6.69 (br, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ157.0, 156.0, 147.2, 141.1, 139.4, 138.8, 136.6, 131.8, 129.8 (br), 128.9, 127.6, 126.4, 126.1, 122.3 (br), 122.1, 121.5, 119.0, 115.9 (br), 34.4, 31.7.
【0155】
得られた化合物13のDART−MS測定の結果を下記に示す。DART−MS(M/Z):found;671.4.calcd;671.3(M+H)
+.
【0156】
【化24】
アルゴン雰囲気下、30mLの3つ口丸底フラスコに、化合物13重量8.9 mg (0.013 mmol)を、クロロホルム3 mLに溶解した溶液を入れ、室温で撹拌しながら酢酸コバルト(II)四水和物9.9 mg(0.040mmol)を、メタノール3mLに溶解した溶液を加えた。赤から青に変化した。室温で15分撹拌後、2時間還流した。
反応溶液を冷まし、濃縮し、水で懸濁ろ過をしてろ過物よりコバルト錯体MC6を得た。
【0157】
[合成例7]
<コバルト錯体MC7の合成>
【化25】
50mLの2つ口ナス形フラスコに、前記化合物15 330mg(0.47mmol)を、ジクロロメタン5mLに溶解した溶液に、2,3-dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone (DDQ) 108 mg (0.47 mmol)を、ジクロロメタン10mLに溶解した溶液を、10分かけて滴下した。その後、室温で1時間撹拌し、反応溶液を得た。
反応溶液にヘキサン30mLを加え、展開溶媒ヘキサン:クロロホルム=1:1 (v/v) でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、赤色固体の化合物17を267mg(収率81%)得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ7.92 (d, J = 2.4, 2H), 7.57-7.54 (m, 4H), 7.49-7.44 (m, 3H), 6.93 (d, J = 4.4, 2H), 6.64 (d, J = 4.4, 2H), 3.76 (s, 6H), 1.37 (s, 18H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ152.5, 152.2, 149.1, 141.7, 139.7, 137.7, 131.2, 131.0, 129.4, 128.8, 127.7, 127.6, 125.4, 118.6, 118.0, 61.2, 34.8, 31.5.
【0158】
【化26】
アルゴン雰囲気下、30mLの3つ口丸底フラスコに、化合物17を30.0mg(0.428 mmol)および脱水ジクロロメタン3mLを加え、−20℃で撹拌しながら三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液1.0Mを0.85mL(0.85 mmol)を5分かけて滴下した。30分後、冷浴を外し4時間撹拌し、反応溶液を得た。さらに、反応溶液を0℃にして、水1mLを滴下した。
反応溶液にクロロホルムを加え、抽出にて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮後、展開溶媒クロロホルムでシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、赤色個体を19.3mg得た。
得られた生成物に対し、3当量の酢酸コバルト4水和物を含んだ3mLのメタノールおよび3mLのクロロホルムの混合溶液を混合し、60℃に加熱しながら2時間攪拌した。得られた溶液を濃縮乾固させて、残渣へ水を加えて懸濁ろ過して、ろ過物よりCo−A7(コバルト錯体MC7)を得た。得られたCo−A7のDART−MS測定の結果を下記に示す。
【0159】
DART−MS(M/Z):found;729.1.calcd;729.0(M+H)
+.
【0160】
[実施例1]
<電極評価>
電極には、ディスク部がグラッシーカーボン(直径6.0mm)、リング部がPt(リング内径7.3mm、リング外径9.3mm)とするリングディスク電極を用いた。コバルト錯体MC1(導電性カーボンに対して3質量%)と、導電性カーボン(ケッチェンブラックEC600JD、ライオン)との混合物1mgが入ったサンプル瓶へ、ナフィオン(登録商標)溶液(アルドリッチ社製、5質量%ナフィオン(登録商標)溶液)100μL、エタノール900μLを加えた後、サンプル瓶に超音波を15分間照射した。得られた分散液7.2μLを前記電極のディスク部に滴下して1時間風乾させた後、測定用電極を得た。
<酸素還元活性の評価>
この測定用電極を用いて、下記測定装置および測定条件において、酸素還元反応の電流値を測定した。電流値の測定は、窒素を飽和させた状態(窒素雰囲気下)、空気を飽和させた状態(空気雰囲気下)でそれぞれ行い、空気雰囲気下での測定で得られた電流値から、窒素雰囲気下での測定で得られた電流値を引いた値を酸素還元反応の電流値とした。この電流値を測定用電極の表面積で除すことにより、電流密度を求めた。
【0161】
(測定装置)
日厚計測社製RRDE−1回転リングディスク電極装置
ALSモデル701Cデュアル電気化学アナライザー
(測定条件)
セル溶液:1.0mol/L塩化ナトリウム、0.01mol/L塩化マグネシウム水溶液
溶液温度:25℃
参照電極:銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
カウンター電極:白金ワイヤー
掃引速度:10mV/秒
リング電位:1.125V vs 銀/塩化銀電極(飽和塩化カリウム)
電極回転速度:1600rpm
【0162】
測定から得られるディスク電流とリング電流の各値を用いて、上記電極触媒による酸素の4電子還元率を求めた。4電子還元率は、次式に基づいて計算した。
【0163】
【数1】
ここで、i
Dは、ディスク電流密度、i
Rはリング電流密度を表し、N
r/dはリング電極におけるディスク反応生成物の補足率を表す。補足率は、[Fe(CN)
6]
3-/4-の酸化還元系を用いて測定し、実施例に用いた電極においては0.38であった。
上記捕捉率を用いることにより、前記電極触媒による酸素の4電子還元率を求めた。酸素の4電子還元率を示す。
【0164】
[実施例2〜4]
コバルト錯体として、コバルト錯体MC1に代えて、コバルト錯体MC2(実施例2)、コバルト錯体MC3(実施例3)、コバルト錯体MC4(実施例4)、コバルト錯体MC5(実施例5)、コバルト錯体MC6(実施例6)、コバルト錯体MC7(実施例7)および鉄錯体MC8(実施例8、鉄フタロシアニン、アルドリッチ社製、製品コード379549、以下の式で示される化合物)をそれぞれ用いて、実施例1と同様に評価を行った。
【化27】
【0165】
[比較例1]
コバルト錯体を用いず、カーボンのみを用いて、実施例1と同様に評価を行った。
【0166】
【表1】
【0167】
本発明の電極は、酸素の4電子還元率が高いことから、過酸化水素の発生が抑制されることがわかる。
【0168】
[参考例1]
コバルト錯体MC1を例に酸素吸着に伴うエネルギー変化量の計算例を述べる。金属錯体合成時にはアセチル基を有するが、水中の電極上では酢酸アニオンとして水和して脱離していると考え、アセチル基は入れない構造で、モノアニオン、ジアニオン状態の各安定構造を、GAUSSIAN09プログラムを用いて密度汎関数法(B3LYP/LANL2DZ)での構造最適化計算を行い、モノアニオン状態が三重項状態で最も安定な構造とそのエネルギー値を得た。その後金属錯体がモノアニオン状態で酸素分子が吸着した構造についても構造最適化計算を行い、五重項状態が最安定な構造を得た。そのエネルギー値から、吸着前の錯体のエネルギー値と酸素分子単独のエネルギー値を引き算して、エネルギー変化量とした。
水分子の吸着におけるエネルギー変化量の計算については上記の方法で酸素分子を水分子に置き換えた。水分子が吸着した金属錯体は三重項状態が最安定であった。
他の金属錯体についても同じ方法で行うが、ハロゲンやアセチル基等配位子を有せず配位不飽和なサイトがある中性の金属錯体については、モノアニオン、ジアニオン状態でエネルギー計算を行い、最安定な状態において、各エネルギー変化量の計算を行った。結果を表2に示す。また、上述の測定用電極を用いて酸素還元活性の評価を行った。酸素還元反応の電流値を表2に示す。なお、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して−0.1Vのときの値である。
【0169】
[参考例2]〜[参考例4]
金属錯体として、コバルト錯体MC1に代えて、コバルト錯体MC5(実施例2)、コバルト錯体MC6(実施例3)、鉄錯体MC8(実施例4)およびコバルト錯体MC9(実施例5)をそれぞれ用いて、参考例1と同様に評価を行った。コバルト錯体MC9は、次の合成例8により合成した。
【0170】
[合成例8]
<コバルト錯体MC9の合成>
【化28】
【0171】
化合物11をJ. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 10720-10723に記載の方法で合成し、続いてコバルト錯体MC9をChem.Eur.J.2012,18,14590-14593に記載の方法で合成した。得られたコバルト錯体MC9のDART−MS測定の結果を下記に示す。
【0172】
DART−MS(M/Z):found;685.4.calcd;685.3(M+H)
+.
【0173】
[比較参考例1]〜[比較参考例4]
金属錯体として、コバルト錯体MC1に代えて、コバルト錯体RE1(比較参考例1)、コバルト錯体RE2(比較参考例2)およびコバルト錯体RE3(比較参考例3)をそれぞれ用いて、参考例1と同様に評価を行った。また、比較参考例4として、金属錯体を用いずに、参考例1と同様に酸素還元活性の評価を行った。コバルト錯体RE1は、アルドリッチ社製、製品コード446645(以下の構造式で示される化合物)を用いた。コバルト錯体RE2およびコバルト錯体RE3は、それぞれ、次の合成例9および合成例10により合成した。
【0174】
【化29】
【0175】
[合成例9]
<コバルト錯体RE2の合成>
コバルト錯体RE2は、以下の反応式に従って配位子と酢酸コバルト4水和物を含んだエタノールを混合、反応させることにより合成した。錯体の原料となる下記配位子はTetrahedron.,1999,55,8377に基づき合成した。
【化30】
窒素雰囲気下において、0.300gの該配位子と0.149gの酢酸コバルト4水和物を含んだ4mlのエタノールを25mlのナスフラスコに入れ、80℃にて1時間攪拌した。生成した褐色沈殿を濾取してエタノールで洗浄後、乾燥することでコバルト錯体RE2を得た(収量0.197g)。
【0176】
[合成例10]
<コバルト錯体RE3の合成>
コバルト錯体RE3は、下記反応式に従って、AustralianJournal of Chemistry,23,2225(1970)に記載の方法を参考に合成した。
【化31】
まず、窒素雰囲気下において1.9gの塩化コバルト6水和物と1.31gの4―メチル−2,6−ジホルミルフェノールを含んだ50mlメタノール溶液を100mlのナスフラスコに入れ、室温にて攪拌した。この溶液に0.59gの1,3−プロパンジアミンを20mlのメタノールに溶解した溶液を徐々に添加した。上記混合物を3時間還流することにより茶褐色沈殿が生成した。この沈殿を濾取し、乾燥することでコバルト錯体RE3を得た(収量1.75g:収率74%)。
【0177】
【表2】
【0178】
密度汎関数法(B3LYP/LANL2DZ)で、前記金属錯体が、酸素分子を吸着することに伴うエネルギー変化量が−50〜−230kJ/molと計算される金属錯体を含む電極は、酸素還元の電流密度が高い、つまり、酸素の還元能が高く、マグネシウム空気電池に最適な電極である。
【0179】
[参考例6]〜[参考例7]
金属錯体として、コバルト錯体MC7(参考例6)およびコバルト錯体MC10(参考例7)を用いて、上述の測定用電極を作成して、酸素還元活性の評価を行った。酸素還元反応の電流値を表3に示す。なお、電流密度は、銀/塩化銀電極に対して−0.1Vのときの値である。コバルト錯体MC10は、次の合成例11により合成した。
【0180】
[合成例11]
【化32】
<Co−A1の合成>
A1をChem. Commun.,2009,2544−2546に記載の方法で合成した。
A1の重量10mgに対し、3当量の酢酸コバルト4水和物を含んだ3mLのメタノールおよび3mLのクロロホルムの混合溶液を混合し、60℃に加熱しながら2時間攪拌した。得られた溶液を濃縮乾固させて、残渣へ水を加えて懸濁ろ過して、ろ過物よりコバルト錯体MC10を得た。
【0181】
[比較参考例5]〜[比較参考例6]
コバルト錯体MC7に代えて、二酸化マンガン(比較参考例5)およびコバルトフタロシアニン(比較参考例6、アルドリッチ社製、製品コード307696)をそれぞれ用いて、参考例6と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0182】
【化33】
Coフタロシアニン
【0183】
【表3】
【0184】
参考例3および参考例5〜7と、比較参考例4〜6の結果により、式(1)で表される芳香族化合物を配位子とする金属錯体を含む電極は、酸素還元の電流密度が高い、つまり、酸素の還元能が高く、マグネシウム空気電池に最適な電極である。
【0185】
[実施例9]
<マグネシウム空気電池の作製>
(ガス拡散層用粉末の作製)
カーボンブラック(アセチレンブラック)、トライトン(キシダ化学)および水を1 : 1 : 30 (重量比)の割合で混合し、これにPTFE(ダイキン、D−210C)をカーボンブラックに対して67重量%になるように添加し、ミルサーで5分間粉砕後、吸引ろ過し、120℃で12時間乾燥させる。乾燥後これをミルサーで微粉化し、280℃、3時間空気中で熱処理を行う。ここで得られた粉末をミルサーで再度微粉化しガス拡散層用粉末を得る。
【0186】
(触媒層用粉末の作製)
ビーカーに水100mlと1−ブタノール1mlとを入れ、その中にカーボン(ケッチェンブラック600EC)0.18g、合成例1で作製したコバルト金属錯体MC1を0.08g加える。2時間攪拌後、PTFE(ダイキン、D−210C)0.16gを少量ずつ加えてさらに1時間攪拌する。それを吸引ろ過し、120℃で乾燥してミルサーで粉砕し、触媒層粉末を得る。
【0187】
(正極の作製)
ホットプレス用金型にアルミホイルをのせ、その上にニッケルメッシュ(ニコライ社製)をのせ、ガス拡散層電極用粉末を60mg充填し、ガス拡散層用粉末の上に触媒層用粉末を60mg充填する。まず、80kgf/cm
2の圧力で冷間プレス行った後、350℃に保ったホットプレスを用いて10秒間プレスを行い、正極を得る。正極の反応面積は1.767cm
2である。
【0188】
(マグネシウム空気電池)
前記正極、負極となるマグネシウム板(エレキット社製、マグネシウム燃料電池カーJS−7900)、負極の集電体として銅箔(アルドリッチ社製、製品コード34208)を用いてマグネシウム空気電池を組み立てる。電解液として1M塩化ナトリウム水溶液を注入し、充放電試験機(東洋システム社製、製品名:TOSCAT−3000U)に接続し、発電試験を行うことで、マグネシウム空気電池の発電を確認することができる。