特許第6830638号(P6830638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830638
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】舌圧強化トレーニング装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/03 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   A63B23/03
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-74602(P2015-74602)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193088(P2016-193088A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月13日
【審判番号】不服2019-5703(P2019-5703/J1)
【審判請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150707
【氏名又は名称】長野計器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 昇
(72)【発明者】
【氏名】吉池 義弘
(72)【発明者】
【氏名】有賀 大貴
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】津賀 一弘
【合議体】
【審判長】 尾崎 淳史
【審判官】 藤田 年彦
【審判官】 畑井 順一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−155655(JP,A)
【文献】 米国特許第4133306(US,A)
【文献】 特開2004−129817(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0190666(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/026488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/03
A61B 5/00
A61B 5/11
A61B 5/22
A61H 1/02
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に挿入可能な弾性バルーンと、
前記弾性バルーンの内部の圧力を検知する圧力検知部と、
前記圧力検知部で検知された圧力値の大きさに応じて変化する色の舌圧情報に変換する制御部と、
前記制御部からの信号に基づいて前記色の舌圧情報を出力する情報出力部と、
前記圧力検知部、前記制御部及び前記情報出力部が設けられたケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、フロントケースと、前記フロントケースに接続されるリアケースとを有し、
前記フロントケースは、第1背面部と、前記第1背面部の両側辺からそれぞれ立ち上がって形成される第1側面部と、前記第1側面部に接続され前記第1背面部と対向配置される第1正面部と、前記第1背面部、前記第1側面部及び前記第1正面部の一端側開口を閉塞し前記弾性バルーンが着脱自在に取り付けられる第1端面部と、前記第1正面部に設けられる窓部とを有し、
前記リアケースは、前記第1背面部と同一平面に配置される第2背面部と、前記第1側面部と連続する第2側面部と、前記第1正面部と連続する第2正面部と、前記第2背面部、前記第2側面部及び前記第2正面部の開口に設けられ前記第1端面部とは反対側に配置された底面部とを有し
前記底面部の面積は前記第1端面部の面積より大きく、前記第2側面部は前記底面部に向かうに従って幅寸法が大きくなるように形成されることによって、前記第2正面部は、前記底面部と接続される突出部を有するものとされ
前記ケーシングには、前記リアケースのうち前記突出部ではない部分と前記フロントケースの前記窓部より前記リアケース側の部分とが連続する部分に把持部が設けられ、
前記突出部は、前記第2正面部において、前記把持部となる面に対して突出し、
前記ケーシングの前記突出部に対応する位置に前記情報出力部から出力される色を外部に投影させる透光部が設けられている
ことを特徴とする舌圧強化トレーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載された舌圧強化トレーニング装置において、
前記色の舌圧情報は反対色の関係にある色であり、前記制御部は、前記圧力検知部で検知された圧力値が基準値以上である場合には、前記情報出力部に反対色の関係にある一方の色を表示させ、前記圧力検知部で検知された圧力値が基準値未満である場合には、前記情報出力部に反対色の関係にある他方の色を表示させる
ことを特徴とする舌圧強化トレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌圧強化トレーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摂食・嚥下機能が低下した患者や高齢者に対し、摂食・嚥下機能を回復させるためのトレーニング機能付き舌圧測定装置がある。この装置は、トレーニング機能を有しているが、トレーニングだけでなく、舌圧測定も可能な装置である。
トレーニング機能付き舌圧測定装置の従来例として、口腔内に挿入される弾性バルーンを有する挿入部がフレーム部材に取り付けられ、このフレーム部材に把持部が設けられ、弾性バルーンに管部材の一端が接続され、管部材の他端に舌圧測定装置が接続されたリハビリ用具(特許文献1)がある。
【0003】
特許文献1のリハビリ用具では、舌圧測定装置が圧力検知部及び制御部を備えており、圧力検知部で検知された圧力値を電気信号として制御部に送る。制御部では、検知された圧力値をディスプレイに表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−110024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のリハビリ用具では、患者や高齢者が弾性バルーンを舌で押圧すると、圧力検知部で検知された圧力値がディスプレイに表示される。
患者や高齢者にとって、リハビリは単調な作業であり、しかも、ディスプレイに表示される圧力値を見ながらのリハビリは退屈なものとなる。そのため、特許文献1のリハビリ用具では、患者や高齢者が楽しみながら舌圧強化のトレーニングを行うには変化が乏しく、必ずしも、トレーニングが長続きするものではないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、楽しみながらトレーニングを行える舌圧強化トレーニング装置を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の舌圧強化トレーニング装置は、口腔内に挿入可能な弾性バルーンと、前記弾性バルーンの内部の圧力を検知する圧力検知部と、前記圧力検知部で検知された圧力値の大きさに応じて変化する色の舌圧情報に変換する制御部と、前記制御部からの信号に基づいて前記色の舌圧情報を出力する情報出力部と、前記圧力検知部、前記制御部及び前記情報出力部が設けられたケーシングと、を備え、前記ケーシングは、フロントケースと、前記フロントケースに接続されるリアケースとを有し、前記フロントケースは、第1背面部と、前記第1背面部の両側辺からそれぞれ立ち上がって形成される第1側面部と、前記第1側面部に接続され前記第1背面部と対向配置される第1正面部と、前記第1背面部、前記第1側面部及び前記第1正面部の一端側開口を閉塞し前記弾性バルーンが着脱自在に取り付けられる第1端面部と、前記第1正面部に設けられる窓部とを有し、前記リアケースは、前記第1背面部と同一平面に配置される第2背面部と、前記第1側面部と連続する第2側面部と、前記第1正面部と連続する第2正面部と、前記第2背面部、前記第2側面部及び前記第2正面部の開口に設けられ前記第1端面部とは反対側に配置された底面部とを有し、前記底面部の面積は前記第1端面部の面積より大きく、前記第2側面部は前記底面部に向かうに従って幅寸法が大きくなるように形成されることによって、前記第2正面部は、前記底面部と接続される突出部を有するものとされ前記ケーシングには、前記リアケースのうち前記突出部ではない部分と前記フロントケースの前記窓部より前記リアケース側の部分とが連続する部分に把持部が設けられ、前記突出部は、前記第2正面部において、前記把持部となる面に対して突出し、前記ケーシングの前記突出部に対応する位置に前記情報出力部から出力される色を外部に投影させる透光部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、視覚の舌圧情報とは、文字、図形、数値、グラフ、色、その他、視覚を通じて認識できる情報をいい、聴覚の舌圧情報とは、音楽、警報音、その他の音等、聴覚を通じて認識できる情報をいう。
本発明では、患者や高齢者等の使用者が口蓋と舌との間に弾性バルーンを挿入し、舌で口蓋に向けて押圧し、その後、舌での押圧を止める。このような舌の動きを繰り返すことで、舌圧強化トレーニングが行われる。弾性バルーンを舌で押圧する力が強いと、弾性バルーンの内部の圧力が高くなり、この圧力値は圧力検知部で検知されて制御部に送られる。制御部では、舌圧情報を情報出力部に出力させる。舌での押圧を止めると、弾性バルーンの内部の圧力が低くなる。あるいは、弾性バルーンを舌で押圧する力が弱いと、弾性バルーンの内部の圧力が低いものとなる。圧力検知部では小さな圧力値として検知され、これが制御部に送られる。制御部では、大きな圧力値に応じた舌圧情報とは異なる舌圧情報を情報出力部に出力させる。
従って、舌で弾性バルーンを押圧する力に応じて情報出力部で出力される舌圧情報が相違するので、患者や高齢者等の使用者は、飽くことなくトレーニングを継続することができる。
ここで、舌圧情報を色とすれば、舌で弾性バルーンを押圧する力に応じて情報出力部で出力される色が変化するので、舌圧が視覚を通じて認識されることになる。色が変わることで、患者や高齢者、特に、耳が不自由な者が楽しみながらトレーニングをすることができる。
舌圧情報を音とすれば、舌で弾性バルーンを押圧する力に応じて情報出力部で出力される音が変化するので、舌圧が聴覚を通じて認識されることになる。音が変わることで、患者や高齢者、特に、目が不自由な者が楽しみながらトレーニングをすることができる。
しかも、制御部を、圧力検知部で検知された圧力値に比例して音程の高くなる音を情報出力部に出力させる構成にすれば、舌で弾性バルーンを押圧する力に応じて、音階を奏でることができるので、患者や高齢者は、飽くことなく舌圧強化トレーニングを進めることになる。
【0010】
本発明では、前記舌圧情報は反対色の関係にある色であり、前記制御部は、前記圧力検知部で検知された圧力値が基準値以上である場合には、前記情報出力部に反対色の関係にある一方の色を表示させ、前記圧力検知部で検知された圧力値が基準値未満である場合には、前記情報出力部に反対色の関係にある他方の色を表示させることが好ましい。
本発明において、反対色にある色とは、色相環の互いに反対側に位置する二色(補色)に限定されるものではなく、少しずれた位置にある色を含む。例えば、赤と緑とは補色の関係にあるが、赤と青とは反対色の関係に含まれる。
この構成では、舌で弾性バルーンを押圧する力が基準値以上であると、情報出力部に反対色の関係にある一方の色、例えば、「安全」をイメージさせる青が表示されるが、基準値未満であると、情報出力部に反対色の関係にある他方の色、例えば、「危険」をイメージさせる赤が表示される。そのため、患者や高齢者は、例えば青が表示されるように、強い力で弾性バルーンを押圧することになり、効果的に舌圧を強化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる舌圧強化トレーニング装置の斜視図。
図2】装置本体の分解斜視図。
図3】装置本体の断面図。
図4】装置本体の側面図。
図5】装置本体の要部断面図。
図6】(A)は逆止弁の正面図、(B)は逆止弁の側面図。
図7】装置本体の内部構造を示す正面図。
図8】装置本体の内部構造を示す斜視図。
図9】装置本体の内部構造を示す斜視図。
図10】電子部品のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態の舌圧強化トレーニング装置の全体構成が示されている。本実施形態の舌圧強化トレーニング装置はトレーニング用舌圧測定装置としても利用される。
図1において、舌圧強化トレーニング装置は、装置本体1と、装置本体1に設けられた弾性バルーン2とを備えて構成されている。
弾性バルーン2は、復元力を有するものであり、口腔内に挿入可能なバルーン本体21と、バルーン本体21に先端が接続されたチューブ22とを備えている。チューブ22の基端開口から弾性バルーン2の内部へ空気が導入可能とされている。
【0016】
図2から図4には装置本体1の全体構成が示されている。
図2から図4において、装置本体1は、ケーシング3を備えている。
ケーシング3は、チューブ22と接続される合成樹脂製のフロントケース31と、フロントケース31に接続される合成樹脂製のリアケース32とを有する。フロントケース31とリアケース32とは互いに着脱自在に取り付けられている。
フロントケース31及びリアケース32の内部には、それぞれ合成樹脂製のインナーケース33及びリング状ケース34が収納されている。
【0017】
フロントケース31は、板状の背面部311と、背面部311の両側辺からそれぞれ立ち上がって形成される側面部312と、これらの側面部312に接続され背面部311と対向配置される正面部313と、背面部311、側面部312及び正面部313の一端側開口を閉塞する端面部314とを有する。端面部314には、チューブ22と連通する連通用開口部314Aが形成されている。連通用開口部314Aに対して弾性バルーン2が着脱自在に取り付けられている。
正面部313は、端面部314が設けられた一端から反対側の開口側他端に向けて傾斜して形成されており、その中央部には背面部311と平行とされた表示領域部313Aが設けられている。表示領域部313Aの中心部には平面矩形状の窓部313Bが設けられている。
側面部312は、その途中位置から端面部314に向けて先細り状に形成されている。
【0018】
リアケース32は、背面部311と同一平面に配置される背面部321と、側面部312と連続する側面部322と、正面部313と連続する正面部323と、背面部321、側面部322及び正面部323の開口に設けられた底面部324とを有する。
ケーシング3は、底面部324を図示しない被載置面に載置することで自立できるようにするため、底面部324の面積は端面部314の面積より大きい。そのため、側面部322は底面部324に向かうに従って幅寸法が大きくなるように形成されており、正面部323は、フロントケース31と連続する面から突出する突出部323Aを有する。
突出部323Aには、後述するカラー表示用LED37から発光した光を外部から認識させるための透光部325が設けられている。透光部325は合成樹脂から形成されている。
リアケース32のうち突出部323Aではない部分とフロントケース31の窓部313Bよりリアケース32側の部分とは連続しており、この部分は、使用者が手で持つ把持部30とされる。使用者が把持部を手で持った際には、透光部325から透過する光が見えやすくなっている。
【0019】
図5には、装置本体1の要部を拡大した断面が示されている。
図5において、インナーケース33の内部には、一端開口が連通用開口部314Aに連通する小径孔部33Aと、小径孔部33Aの他端側と連通する大径孔部33Bとが連続して形成されている。
小径孔部33Aは、連通用開口部314Aと連通する第一孔部33A1と、第一孔部33A1の端部から折れ曲がって形成された第二孔部33A2と、第一孔部33A1の端部に接続され第一孔部33A1と直線上に配置された第三孔部33A3とを有する。
【0020】
第二孔部33A2には圧力検知部5が設けられている。第三孔部33A3の途中には逆止弁6が設けられている。
第三孔部33A3の端部は大径孔部33Bと連通する。大径孔部33Bの第三孔部33A3とは反対側に位置する開口端にはOリング3L1を介してフロントケース31の内部と密閉される埋栓35が設けられている。つまり、大径孔部33Bは、連通流路部4の内部圧力を調整するタンク部として機能する。
埋栓35は、栓本体35Aに取付片部35Bが設けられたものであり、取付片部35Bはビス35Cでインナーケース33に取り付けられている。
なお、本実施形態では、一端が閉塞された円筒部材をインナーケース33に装着してタンク部を構成してもよい。
フロントケース31には連通用開口部314Aと連通する内部空間31Sが形成されており、内部空間31Sは、インナーケース33の端部に設けられたOリング3L2により密閉されている。
【0021】
本実施形態では、フロントケース31の内部空間31S及び小径孔部33Aから弾性バルーン2と連通する連通流路部4が構成されている。さらに、内部空間31S、第一孔部33A1及び第二孔部33A2から圧力検知部5に端部が開口する第一流路41が構成され、第三孔部33A3から第二流路42が構成されている。
圧力検知部5は、インナーケース33に設けられた圧力センサ素子であり、筒状部51と、ダイアフラム部52とを有する。
筒状部51はOリング3L3を介して第二孔部33A2に嵌合されている。ダイアフラム部52はインナーケース33から突出して配置されている。
ダイアフラム部52は、連通流路部4の内部圧力に応じて検知された信号を電子部品ユニット7に送る。
【0022】
本実施形態の逆止弁6の要部の構成が図6に示されている。
図6(A)と図6(B)とは逆止弁6を異なる方向から見た図である。
図6(A)(B)において、逆止弁6は、インナーケース33の孔部に嵌合する円筒状部材60と、円筒状部材60に一体形成された一対の傾斜リップ部61とを有するダックビルバルブである。
円筒状部材60は、その端部に逆止弁6のインナーケース33に対する位置決めをするための大径部60Aを備える。
一対の傾斜リップ部61は、円筒状部材60側の基側から先端に向けて収束するように延出して形成されており、一対の傾斜リップ部61の先端の合せ面にスリット62が設けられている。一対の傾斜リップ部61により、先端側から基方向への空気の流動が規制される。
【0023】
逆止弁6は、円筒状部材60がケーシング3の内部空間に開口されており、ケーシング3の内部空間は大気に開放されている。一対の傾斜リップ部61の先端側が連通流路部4に臨んでいる。
そのため、逆止弁6は、弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が高くなった時にスリット62が閉じて弾性バルーン2及び連通流路部4の空気が外部に流出することを阻止し、弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が低くなった時にスリット62が開いて弾性バルーン2及び連通流路部4に外部から流体が流入することを許容する構成である。
図2図3及び図5で示される通り、逆止弁6の円筒状部材60は、押板63で押さえられている。
押板63には、圧力検知部5の筒状部51を挿通する孔部63Aと、逆止弁6の内部空間と連通する連通孔63Bとがそれぞれ形成されている。
【0024】
電子部品ユニット7の構成が図7から図9に示されている。
図2図3図5図7図8及び図9において、電子部品ユニット7は、インナーケース33に取り付けられた回路基板70と、回路基板70にそれぞれ設けられたスイッチ71、コネクタ72、電子部品(図示せず)、ブザー73及び取付部材74と、取付部材74に設けられた表示部75とを備えている。
回路基板70の平面には圧力検知部5のダイアフラム部52が密着している。ダイアフラム部52で検知された信号は、回路基板70を通じて電子部品に送られる。
スイッチ71は、電子部品ユニット7を稼働させるためのものである。インナーケース33に電子部品ユニット7を装着し、その後にフロントケース31及びリアケース32を装着する。
【0025】
ブザー73は、舌圧情報としての音を出力するものであり、取付部材74に近接配置されている。
取付部材74は、回路基板70の側面部に係止される複数の脚部741と、脚部741に一体形成され板部742とを有する合成樹脂製部品である。板部742の平面には表示部75が載置されている。
表示部75は、圧力検知部5で検知された圧力値をデジタル表示する液晶ディスプレイ(LCD)であり、電子部品に電気的に接続されている。
表示部75で表示される圧力値は、フロントケース31の窓部313Bを通じて使用者に認識される。
インナーケース33の他端側は、乾電池Vが収納される凹部330である。凹部330の壁部と乾電池Vの両端との間には電池用ばね部材V1,V2が設けられている(図3参照)。
凹部330の乾電池Vが収納される部分とは反対側の部分には、LED基板36が設けられている。LED基板36には、情報出力部としてのカラー表示用LED37が設けられている。カラー表示用LED37は、LED基板36に設けられた電子部品(図示せず)と電気的に接続されている。
【0026】
電子部品は、カラー表示用LED37の駆動も制御するものであり、カラー表示用LED37と電気的に接続されている。
図2及び図3に示される通り、リング状ケース34は、リング状部341と、リング状部341に一体に形成された板状部342とを有する。
リング状部341には、大気導入フィルタ34Aが設けられている。
板状部342は、LED基板36を覆うものであり、リング状部341と同じ曲率を有する円弧状に形成されている。
板状部342には、カラー表示用LED37で発光する光を透過するための窓部34Bが形成されている。窓部34Bは、透光部325のうちケーシング3の内側面に対向している。
【0027】
図10には電子部品の回路構成が示されている。
図10において、電子部品はCPU72Aであり、CPU72Aは、圧力検知部5からの圧力値の信号が入力されるデータ入力部721と、データ入力部721で入力した圧力値の信号を制御する制御部722と、制御部722から出力される信号に基づいてカラー表示用LED37とブザー73とに信号を出力する駆動部723と、メモリー724とを備えている。
制御部722は、圧力検知部5で検知された圧力値を表示部75にデジタル表示させる。制御部722は、圧力値が基準値以上である場合には、カラー表示用LED37で青色表示させるように駆動部723に信号を送り、圧力検知部5で検知された圧力値が基準値未満である場合には、カラー表示用LED37で赤色表示させるように駆動部723に信号を送る。なお、赤と青とは互いに反対色の関係にある。本実施形態では、反対色の関係にあれば、赤や青に限定されるものではなく、例えば、赤や緑、黄色や青紫であってもよい。さらに、圧力検知部5で検知された圧力値の大きさに応じて、色の彩度を変化させるように制御するものでもよい。さらに、制御部722は、圧力検知部5で検知された圧力値の大きさに応じた高さの音程の音をブザー73で発生させるように駆動部723に信号を送る。例えば、検知された圧力値が基準値以上である場合には、圧力値の大きさに応じて音程を高くし、検知された圧力値が基準値未満である場合には、音を出さないか、出しても小さな音で圧力値に応じて音程を低くする。
【0028】
ここで、基準値とは、使用者の年齢や健康状態によって設定される舌圧の値である。基準値以上が正常であり、基準値未満が異常あるいは問題がある。本実施形態では、年齢と基準値、健康状態、例えば、要介護や要支援の状態と、基準値との関係を予めメモリー724に記憶させ、条件設定部720で年齢や健康状態を入力することで、舌圧の基準値を設定する構成が採用されている。
条件設定部720は、ケーシング3に設けられた図示しない操作ボタン等から構成される。操作ボタンは、電源ボタン等、条件設定部720以外にも設けられており、これらのボタンはケーシング3の外周面に設けられた図示しない操作パネルに配置されている。
なお、本実施形態では、条件設定部720及びメモリー724を省略した構成としてもよい。
【0029】
本実施形態の舌圧強化トレーニング装置の組み立て方法を説明する。
まず、装置本体1を組み立てる。そのため、図2に示される通り、インナーケース33に、逆止弁6及びOリング3L3をセットし、押板63をインナーケース33に取り付ける。さらに、インナーケース33に埋栓35をビス35Cで取り付ける。
インナーケース33の凹部330に電池用ばね部材V1,V2をセットする。さらに、インナーケース33に電子部品ユニット7の回路基板70と、LED基板36とを取り付ける。
リング状ケース34のリング状部341に大気導入フィルタ34Aを取り付ける。
そして、インナーケース33をリング状ケース34に挿入した後、フロントケース31を装着する。
インナーケース33の凹部330に乾電池Vを挿入し、リアケース32を組み付ける。
このような工程で組み立てられた装置本体1に弾性バルーン2を取り付ける。
【0030】
以上の構成の舌圧強化トレーニング装置を用いて舌圧を測定するとともに、舌圧強化トレーニングをする方法を説明する。
まず、使用者は、装置本体1のケーシング3の把持部30を手に持ち、口蓋と舌との間に弾性バルーン2のバルーン本体21を挿入し、舌で口蓋に向けて押圧する。
すると、バルーン本体21は、その弾性力に抗して変形し容積が小さくなり、弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が高くなる。これにより、弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の空気が外部へ流出しようとするが、連通流路部4に設けられた逆止弁6は、スリット62が閉じて弾性バルーン2及び連通流路部4の空気が外部に流出することが阻止される。そのため、舌で押圧される力に比例した弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が圧力検知部5で検知される。
【0031】
圧力検知部5で検知された圧力値の信号は、CPU72Aのうちデータ入力部721を経由して制御部722に送られる。すると、制御部722からの信号が駆動部723に伝達され、駆動部723によって、圧力値が表示部75でデジタル表示される。デジタル表示された圧力値は、窓部313Bから使用者に認識される。
そして、圧力値が基準値以上である場合には、カラー表示用LED37が青色表示される。カラー表示用LED37の青色は、リアケース32の透光部325を通じて外部から認識できる。そして、ブザー73から高い音程の音が発せられる。
【0032】
バルーン本体21の舌での押圧を止めると、弾性バルーン2は、弾性力により元の形状に復帰するように変形し、元の形状に復元する。
仮に、温度変化による圧力低下や漏れ等により、弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が低くなって負圧となると、逆止弁6のスリット62が開き、外部から弾性バルーン2及び連通流路部4に空気が流入することになる。
【0033】
弾性バルーン2のバルーン本体21の舌での押圧を止めた後、再度、バルーン本体21を舌で押圧すると、前述と同様に、バルーン本体21の容積が小さくなり、弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が高くなる。舌で押圧される力に比例した弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が圧力検知部5で検知されるが、圧力検知部5で検知された圧力値が基準値未満である場合には、カラー表示用LED37が赤色表示され、ブザー73から発生される音が低かったり、ブザー73からの音の発生がなかったりする。
使用者は、カラー表示用LED37で青色表示されるとともにブザー73から発せられる高い音程の音を聴きながら、バルーン本体21を舌で押圧する力を強くする。
これを繰り返すことで、舌圧強化トレーニングが行われることになる。
【0034】
本実施形態では次の効果を奏することができる。
(1)圧力検知部5で検知された圧力値の大きさに応じて変化する視覚や聴覚からなる舌圧情報に変換する制御部722と、制御部722からの信号に基づいて舌圧情報を出力する情報出力部としてのブザー73及びカラー表示用LED37を備えたから、舌で弾性バルーン2を押圧する力に応じて情報出力部で出力される舌圧情報が相違するので、患者や高齢者等の使用者は、飽くことなくトレーニングを継続することができる。
【0035】
(2)舌圧情報の1つが色であるため、舌で弾性バルーン2を押圧する力に応じて情報出力部で出力される色が変化するので、舌圧が視覚を通じて認識されることになる。色が変わることで、使用者、特に、耳が不自由な使用者が楽しみながらトレーニングをすることができる。
【0036】
(3)舌圧情報は反対色の関係にある赤と青であり、制御部722は、圧力検知部5で検知された圧力値が基準値以上である場合には、情報出力部であるカラー表示用LED37に「安全」をイメージさせる青色を表示させ、圧力検知部5で検知された圧力値が基準値未満である場合には、カラー表示用LED37に「危険」をイメージさせる赤色を表示させる。そのため、使用者は、青が表示されるように、強い力で弾性バルーン2を押圧することになり、効果的に舌圧を強化することが可能となる。
【0037】
(4)舌圧情報の1つが音であるため、舌で弾性バルーン2を押圧する力に応じてブザー73で出力される音が変化するので、舌圧が聴覚を通じて認識されることになる。音が変わることで、使用者、特に、目が不自由な使用者が楽しみながらトレーニングをすることができる。
【0038】
(5)制御部722は、圧力検知部5で検知された圧力値に比例して音程の高くなる音をブザー73に出力させるため、舌で弾性バルーン2を押圧する力に応じて、音階を奏でることができるので、患者や高齢者は、飽くことなく舌圧強化トレーニングを進めることができる。
【0039】
(6)ケーシング3の突出部323Aに対応する位置にカラー表示用LED37から発光させる光を外部に投影させるための透光部325が設けられているので、使用者がケーシング3を手で持った際に、透光部325から透過する光が容易に見ることができる。
【0040】
(7)弾性バルーン2に連通された連通流路部4に圧力検知部5及び逆止弁6を設け、逆止弁6を、弾性バルーン2が変形して弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が高くなった時に弾性バルーン2及び連通流路部4の空気が外部に流出することを阻止し、弾性バルーン2が復元して弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が低くなった時に弾性バルーン2及び連通流路部4に外部から空気が流入することを許容する構成とした。そのため、舌で押圧される力に比例した弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が圧力検知部5で検知される。弾性バルーン2の舌での押圧を止めると、弾性バルーン2は、弾性力により元の形状に復帰する。仮に、弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が低くなって負圧となっても、逆止弁6により、外部から弾性バルーン2及び連通流路部4に空気が流入することになるため、弾性バルーン2が当初の状態に復帰する。従って、本実施形態では、従来利用されていた電磁弁やポンプが不要とされるので、舌圧測定装置の重量の軽量化が可能となるだけでなく、製造コストを従来に比べて低いものにできる。
【0041】
(8)逆止弁6は、基側から先端に向けて収束するように延出した一対の傾斜リップ部61と、傾斜リップ部61の先端の合せ面に設けられたスリット62とを備えたダックビルバルブであるため、ダックビルバルブの自体の構造が簡易であることから、装置全体の製造コストをより低いものにできる。
【0042】
(9)回路基板70と圧力検知部5とが密着しているので、これらの間に無駄なスペースがなくなり、装置全体の省スペース化を図ることができる。
【0043】
(10)連通流路部4は、圧力検知部5に端部が開口する第一流路41と、第一流路に一端が接続され逆止弁が設けられた第二流路42とを備えているから、圧力検知部5を取り付ける流路と逆止弁6を取り付ける流路とが分けられることになり、これらの部材の流路への取付作業が容易となる。
【0044】
(11)フロントケース31及びリアケース32の内部空間に第二流路42の他端が逆止弁6を通じて開口されているので、フロントケース31及びリアケース32の内部の空気が逆止弁6により連通流路部4に流入される。そのため、フロントケース31及びリアケース32を防水構造とすることで、連通流路部4に水が誤って入り込むことを防止できる。
【0045】
(12)装置本体1と弾性バルーン2とを着脱自在としたので、装置の保管が容易となるだけでなく、弾性バルーン2のみの交換が可能となる。そのため、使用者毎に弾性バルーン2のみを交換することで、衛生的であるだけでなく、装置本体毎交換する場合に比べてコストを抑えることができる。
(13)タンク部として機能する大径孔部33Bを連通流路部4に連通させたので、連通流路部4の他に大径孔部33Bに弾性バルーン2の内部から送られる空気が蓄えられることになり、連通流路部4の内部圧力を容易に調整することができる。
【0046】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、弾性バルーン2に連通された連通流路部4に逆止弁6を設け、この逆止弁6を、弾性バルーン2が変形して弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が高くなった時に弾性バルーン2及び連通流路部4の空気が外部に流出することを阻止し、弾性バルーン2が復元して弾性バルーン2及び連通流路部4の内部の圧力が低くなった時に弾性バルーン2及び連通流路部4に外部から空気が流入することを許容する構成としたが、本発明では、逆止弁に代えて電磁弁や電動モータを用いてもよい。仮に、逆止弁を用いる場合でも、ダックビルバルブとすることを要せず、他の構成、例えば、傘状の部材を有するアンブレラバルブやコンビネーションバルブとしてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、圧力検知部5で検知された圧力値の大きさに応じて変化する舌圧情報に変換する制御部722と、制御部722からの信号に基づいて舌圧情報を出力する情報出力部としてのブザー73及びカラー表示用LED37を備えた構成としたが、舌圧情報は色や音に限定されるものではなく、数字、文字あるいは記号であってもよい。例えば、表示部75に表示される圧力値の数字の大きさを圧力値の大きさに応じて変化させたり、あるいは、表示部75に記号を表示させ、記号の大きさを圧力値の大きさに応じて変化させたりするものでもよい。表示部75に代えてカラー表示用LED37に文字、記号、図形を表示させるものでもよい。
さらに、カラー表示用LED37を用いる場合であっても、カラー表示用LED37で表示される色は赤又は青に限定されるものではなく、黄色、緑、その他の色であってもよい。また、赤のみ、青のみのような単色として表示してもよく、この場合、輝度を圧力値に応じて変化させるものでもよい。さらに、音を用いる場合では、音の大小を圧力値に応じて変化させるものでもよい。
【0048】
さらに、タンク部として大径孔部33Bを連通流路部4に連通させたが、本発明では、大径孔部33Bを省略する構成としてもよい。
また、回路基板70と圧力検知部5との間にスペーサを設け、これらをケーブルで接続する構成としてもよい。
さらに、前記実施形態では、ケーシング3に突出部323Aを設けたが、本発明では、ケーシング3の外周を筒状としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…装置本体、2…弾性バルーン、3…ケーシング、31…フロントケース、314A…連通用開口部、32…リアケース、33…インナーケース、37…カラー表示用LED(情報出力部)、4…連通流路部、41…第一流路、42…第二流路、5…圧力検知部、6…逆止弁、61…傾斜リップ部、62…スリット、70…回路基板、73…ブザー(情報出力部)、75…表示部
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