(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ノニオン系界面活性剤(B)が、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、及びオレイン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発泡体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)(以下、EVOH(A)と略記することがある。)及びノニオン系界面活性剤(B)を含有し、EVOH(A)の210℃、荷重2160gの条件下におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜10g/10分であり、ノニオン系界面活性剤(B)の含有量が10〜1000ppmであるEVOH組成物からなることを特徴とする。
【0011】
なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
【0012】
[EVOH(A)]
EVOH(A)は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを有する共重合体である。EVOH(A)は、例えば、エチレンとビニルエステルとを含む共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等)も使用できる。
【0013】
EVOH(A)のビニルエステル成分のケン化度は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、96モル%以上であることがさらに好ましく、98モル%以上であることが特に好ましく、99モル%以上であることが最も好ましい。ケン化度を90モル%以上とすることで、発泡体の断熱性の低下を抑制でき、熱安定性を高めることができる。また、ケン化度の上限は99.99モル%であってもよい。ケン化度は
1H−NMR測定等公知の方法により求めることができる。
【0014】
EVOH(A)のエチレン単位含有量は、5モル%以上であることが好ましく、8モル%以上であることがより好ましく、10モル%がさらに好ましい。また、エチレン単位含有量は、60モル%以下であることが好ましく、55モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましい。エチレン単位含有量が5モル%未満であると、柔軟性が高くなりすぎるおそれがある。エチレン単位含有量が60モル%を超えると、断熱性が低下するおそれがある。エチレン単位含有量は
1H−NMR測定等公知の方法により求めることができる。
【0015】
EVOH(A)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g条件下、以下同様)は、0.1〜10g/10分であり、0.5〜8.0g/10分が好ましく、特には0.8〜5.0g/10分がより好ましい。前記MFRが0.1g/10分未満では発泡時に押出機内が高トルク状態となって発泡が困難となり、逆に10g/10分を越えると独立気泡率が低下し、好ましくない。EVOH(A)のMFRの測定方法は、JIS K 7210:1999に従って測定できる。MFRの測定方法の詳細は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0016】
また、EVOH(A)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレンとビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOH(A)が前記他の単量体単位を有する場合、EVOH(A)の全構造単位に対する前記他の単量体単位の含有量は、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。また、EVOH(A)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、その下限値は0.05モル%であってもよいし0.10モル%であってもよい。前記他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又は、炭素数1〜18のモノ若しくはジアルキルエステル等;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル;(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
【0017】
EVOH(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
[ノニオン系界面活性剤(B)]
本発明の発泡体に含まれるノニオン系界面活性剤(B)としては、例えば、含窒素型ノニオン系界面活性剤、エーテル型ノニオン系界面活性剤、エーテルエステル型ノニオン系界面活性剤、エステル型ノニオン系界面活性剤、ブロックポリマー型ノニオン系界面活性剤等が挙げられ、加熱時の安定性が高く、EVOH(A)の劣化を誘発しない点から含窒素型ノニオン系界面活性剤又はエーテル型ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記含窒素型ノニオン系界面活性剤としては、例えば、下記一般式(1)又は(2)
R
1CONH−R
2−OH (1)
(式中、R
1は炭素数6〜22のアルキル基又は炭素数6〜22のアルケニル基であり、R
2は、エチレン基、n−プロピレン基、又はn−ブチレン基のいずれかである。)
R
1CON−(R
2−OH)
2 (2)
(式中、R
1とR
2は、上記一般式(1)と同一意味を有する。)
で示される高級脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド;下記一般式(3)
R
1CONH
2 (3)
(式中、R
1は、上記一般式(1)と同一意味を有する。)
で示される高級脂肪酸アミド;下記一般式(4)又は(5)
R
1NH(C
2H
4O)
xHH (4)
(式中、R
1は、上記一般式(1)と同一意味を有し、xは1〜20の整数である。)
H(C
2H
4O)
yN(R
1)(C
2H
4O)
xH (5)
(式中、R
1は、上記一般式(1)と同一意味を有し、x及びyは1〜20の整数である。)
で示されるポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられ、一般式(3)で示される高級脂肪酸アミドが好ましい。前記一般式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)におけるR
1のアルキル基又はアルケニル基の炭素数としては、8〜18が好ましい。
【0020】
高級脂肪酸アルカノールアミドの具体例としては、例えば、カプロン酸モノ又はジエタノールアミド、カプリル酸モノ又はジエタノールアミド、カプリン酸モノ又はジエタノールアミド、ラウリン酸モノ又はジエタノールアミド、パルミチン酸モノ又はジエタノールアミド、ステアリン酸モノ又はジエタノールアミド、オレイン酸モノ又はジエタノールアミド、やし油脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、あるいはこれらのエタノールアミドに変えてプロパノールアミド、ブタノールアミドが挙げられる。この中でもアルキルジエタノールアミドが好ましく、具体的にはラウリン酸ジエタノールアミド、やし油脂肪酸ジエタノールアミドが好適に使用され、特にその製造過程で副生する該ジエタノールアミドとジエタノールアミン〔NH−(C
2H
4OH)
2〕との付加物との混合物(1:2モル型)の使用が水溶性の点で有利である。
【0021】
高級脂肪酸アミドの具体例としては、例えば、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられ、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドが好ましい。
【0022】
ポリオキシエチレンアルキルアミンの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルアミン、ポリオキシエチレンヘプチルアミン、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンノニルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンエイコシルアミン等が挙げられ、ポリオキシエチレンドデシルアミンが有利に使用される。また、ポリオキシエチレン単位の縮合度は1〜30であることが好ましく、1〜20がより好ましい。
【0023】
上記の他に、ポリオキシエチレン高級脂肪酸アミドやアミンオキシドも用いることができ、ポリオキシエチレン高級脂肪酸アミドの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンカプロン酸アミド、ポリオキシエチレンカプリル酸アミド、ポリオキシエチレンカプリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンパルミチン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等が挙げられ、中でもポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミドが有利に使用され、アミンオキシドの具体例としては、例えば、ジメチルラウリルアミンオキシド、ジメチルステアリルオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド等が挙げられ、中でもジメチルラウリルアミンオキシドが有利に使用される。
【0024】
エーテル型ノニオン系界面活性剤としては、例えば、下記一般式(6)又は(7)
R
1−O(C
2H
4O)
nH (6)
(式中、R
1は炭素数6〜22のアルキル基又は炭素数6〜22のアルケニル基であり、nは1〜70の整数を示す。)
で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
R
1−X−O(C
2H
4O)
nH (7)
(式中、R
1は前記一般式(6)のR
1と同一意味を表し、Xはフェニレン基であり、nは1〜70の整数を示す。)
で示されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラノリンアルコール等のポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;単一鎖長ポリオキシエチレンエーテル型のエーテル型ノニオン系界面活性剤;アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が好ましい。前記一般式(6)及び(7)におけるR
1のアルキル基又はアルケニル基の炭素数としては、8〜18が好ましい。前記一般式(6)及び(7)におけるnは好ましくは10〜30の整数を示す。
【0025】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、やし油還元アルコールエチレンオキサイド付加物、牛脂還元アルコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられ、中でも、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、やし油還元アルコールエチレンオキサイド付加物、牛脂還元アルコールエチレンオキサイド付加物等の使用が有利である。
【0026】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルフェニルエーテルポリオキシエチレンオクタデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンエイコシルフェニルエーテル等が挙げられ、中でもポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが好ましい。
【0027】
前記エーテルエステル型ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等のエステル結合を含むポリオキシエチレンエーテル;天然油脂及びロウ類のポリオキシエチレン誘導体等が挙げられる。
【0028】
前記エステル型ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0029】
前記ブロックポリマー型ノニオン系界面活性剤としては、例えば、プルロニック型のノニオン系界面活性剤、テトロニック型のノニオン系界面活性剤、アルキル基を含むブロックポリマー等が挙げられる。
【0030】
本発明で用いられるEVOH組成物において、ノニオン系界面活性剤(B)の含有量の下限としては10ppmであることが必要であり、15ppmが好ましく、20ppmがより好ましい。ノニオン系界面活性剤(B)の含有量の上限としては1000ppmであることが必要であり、900ppmが好ましく、600ppmがより好ましい。含有量が上記範囲にあることで、発泡体の独立気泡率、発泡倍率がより高まる。本明細書において、「ppm」は、「質量ppm」を意味する。
【0031】
ノニオン系界面活性剤(B)の含有量は、通常の場合、添加量が含有量となるが、添加量が不明な場合は、例えば、EVOH組成物を凍結粉砕し、メタノール等を用いてソックスレー抽出を行い、HPLCのピーク強度から算出することができる。
【0032】
[ホウ素化合物(C)]
また、本発明においては、本発明の作用効果のさらなる向上を目指して、EVOH組成物にホウ素化合物(C)を含有させることも好ましい。ホウ素化合物(C)としては、ホウ酸、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)等の他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物等が挙げられ、好適にはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)が用いられる。ホウ素化合物(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明におけるEVOH組成物へのホウ素化合物(C)の含有量は特に限定されないが、EVOH(A)に対するホウ素原子換算の含有量の下限としては、50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましく、70ppm以上がさらに好ましく、80ppm以上が特に好ましい。EVOH(A)に対するホウ素原子換算の含有量の上限としては、500ppmが好ましく、400ppmがより好ましく、300ppmがさらに好ましく、250ppmが特に好ましい。上記範囲であることで、発泡体の独立気泡率、発泡倍率がより優れたものとなる。
【0034】
上記ホウ素化合物を構成するホウ素原子は、EVOH(A)の架橋により消費されるが、EVOH組成物中に残るホウ素原子量から、EVOH(A)に含まれるホウ素化合物量を算出することができる。具体的には、上記ホウ素化合物の含有量の測定に当たっては、EVOH組成物をアルカリ溶融してICP発光分光分析により、ホウ素含有量を定量することで測定される。また、EVOH組成物中に、後述する他の熱可塑性樹脂が含まれる場合には、EVOH組成物中に残るホウ素原子量と、EVOH組成物中のEVOH(A)の存在割合とから、EVOH(A)に含まれるホウ素化合物量を算出することができる。このとき、ICP発光分析用の試料を調製するにあたり、例えば、硝酸下で200℃、30分処理することで、他の熱可塑性樹脂が含まれる状態で、EVOH組成物を溶融してもよい。
【0035】
ホウ素化合物(C)を発泡用熱可塑性樹脂組成物に含有させるに方法は特に限定されず、1)ホウ素化合物(C)の水溶液にEVOH(A)及びノニオン系界面活性剤(B)を含有するEVOH組成物を接触させる方法、2)EVOH(A)及びノニオン系界面活性剤(B)を含有する溶液にホウ素化合物を接触させる方法、3)二軸押出機等でEVOH(A)とホウ素化合物(C)を溶融混合する方法、4)発泡成形時に直接EVOH(A)とホウ素化合物を混合する方法等が挙げられるが、ブリード抑制の面から通常は1)のように、該水溶液にペレット状に成形されたEVOH(A)を投入して攪拌しながら、上記のホウ素化合物(C)を含有させることが好ましい。
【0036】
[その他の成分]
前記EVOH組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば他の熱可塑性樹脂をさらに含んでもよいが、本発明の効果を充分に奏する観点から、前記EVOH組成物中に占めるEVOH(A)の割合は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましく、実質的に100%であることが特に好ましい。
【0037】
前記EVOH組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば種々の添加剤をさらに含んでもよいが、本発明の効果を充分に奏する観点から、前記EVOH組成物中に占める添加剤の含有量の下限としては、EVOH(A)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。添加剤の含有量の上限としては、EVOH(A)100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0038】
[発泡体]
上記のようなEVOH(A)及びノニオン系界面活性剤(B)を含有し、必要に応じてホウ素化合物(C)を含有する発泡用熱可塑性樹脂組成物を用いて、発泡体を得る方法は特に限定されないが、超臨界状態の不活性ガスを用いて発泡させることが好ましい。
【0039】
発泡時に発泡剤として用いる不活性ガスとしては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられ、安全性・環境負荷の面から二酸化炭素あるいは窒素が好適に用いられる。
【0040】
得られる発泡体の発泡倍率としては、1.2倍以上65倍未満が好ましく、柔軟性により優れる点から、2.0倍以上50倍未満がより好ましく、5.0倍以上40倍未満がさらに好ましく、8.0倍以上30倍未満が特に好ましい。発泡倍率が1.2倍未満では十分な断熱性能が得られないおそれがあり、65倍を越えると耐衝撃性が低下するおそれがあり好ましくない。前記発泡倍率の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0041】
また、発泡体の気泡(セル)サイズとしては、直径0.1〜500μmが好ましく、1〜300μmがより好ましく、5〜100μmがさらに好ましく、10〜80μmが特に好ましい。かかるサイズが0.1μm未満では十分な断熱性能が得られないおそれがあり、逆に500μmを越えると耐衝撃性が低下するおそれがあり好ましくない。前記気泡サイズ(直径)の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0042】
上記の発泡倍率や気泡サイズは、EVOH(A)のエチレン単位含有量、ケン化度、MFR、ノニオン系界面活性剤(B)の種類及び含有量、ホウ素化合物(C)の種類及び含有量、不活性ガス種、不活性ガス供給量、発泡成形温度及び圧力等によりコントロールすることができる。また、気泡の形態としては、独立気泡と連続気泡のどちらでも構わないが、断熱性能向上の観点から、独立気泡が好ましい。得られる発泡体の独立気泡率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。前記独立気泡率の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0043】
なお、本発明においては、上記の発泡体を得るに際して、従来公知の発泡助剤(亜鉛、カルシウム、鉄、バリウム等の金属化合物、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸等の有機酸、尿素又はその誘導体等)や造核剤(ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ等の無機充填剤)を併用して発泡させることも可能である。さらに、不活性ガス以外の他の発泡剤を加えていてもよい。他の発泡剤を用いることにより、熱可塑性樹脂発泡体製造時の可塑化効果や発泡助剤効果が得られ、押出圧力を低減し、安定的に熱可塑性樹脂発泡体の製造が可能となる。ただし、目的とする発泡倍率(発泡体密度)、難燃性等の発泡体の諸特性によっては、その使用量等が制限されうる。
【0044】
不活性ガス以外の他の発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、c−ペンタン等の炭素数3〜5の低級アルカン類;トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトン等のケトン類;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類;塩化メチル、塩化エチル等のハロゲン化アルキル等の有機発泡剤;例えば、アゾ化合物、テトラゾール等の化学発泡剤等を用いることができる。これら他の発泡剤は1種単独で使用してもよく、又は2種以上混合して使用してもよい。
【0045】
本発明では、特に制限するものではないが、建築用断熱材として使用するためには、本発明の発泡体中にハロゲン系難燃剤を添加することが好ましい。用いられるハロゲン系難燃剤は、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はなく、ハロゲン原子を有する化合物であればよい。
【0046】
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、(a)テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、等の臭素化脂肪族化合物あるいはその誘導体、あるいは臭素化脂環式化合物あるいはその誘導体、(b)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル等の臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体、(c)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、等の臭素化ビスフェノール類及びその誘導体、(d)テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー等の臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、(e)臭素化アクリル樹脂、(f)エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素及び窒素原子含有化合物、(g)トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェート等の臭素及びリン原子含有化合物、(h)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物、等の塩素含有化合物、(i)臭化アンモニウム等の臭素化無機化合物、等が挙げられる。これらの化合物は1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。さらには、臭素化ポリスチレン樹脂も難燃剤として用いることができる。
【0047】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤としては、より良好な難燃性を発現させるために、上記のうち、特に、臭素化脂肪族化合物を含むハロゲン化脂肪族基含有化合物が好ましく用いられる。具体的には、例えば、テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0048】
また、良好な難燃性と耐熱性やリサイクル性とを両立させるために、前記ハロゲン系難燃剤のうち、特に、50ml/分の窒素気流下および昇温速度10℃/分の条件にて測定した5%熱重量減少温度が250℃以上である、ハロゲン化脂肪族基含有化合物がさらに好ましく用いられる。5%熱重量減少温度が250℃以上である、ハロゲン化脂肪族基含有化合物として具体的には、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0049】
このうち、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)および/又はトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが、入手が容易であること等から、最も好ましく用いられる。
【0050】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限するものではないが、JIS A 9511に規定される難燃性が得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、他の添加剤の種類あるいは添加量等にあわせて適宜調製されることが好ましく、EVOH(A)100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上10質量部以下である。ハロゲン系難燃剤の含有量が上記範囲内にあることで、発泡体の難燃性がより優れたものとなる。
【0051】
本発明の発泡用熱可塑性樹脂組成物から得られる発泡体は、建材(天井・壁・床等の断熱材);航空機、自動車バンパー用芯材、鉄道車両、車体等の車両用部材;床暖房部材、プレハブパネル、防火断熱ドア等の住宅設;家電品、精密機器の緩衝包装材等;貯湯タンク、鋳造模型、農水産用(例えば、水耕栽培用の培地)、金属サンドイッチパネル、乾燥炉等の産業機器に用いることができ、特に建材(建築)用の断熱材として有用である。
【0052】
[発泡体の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、エチレンとビニルエステルとを共重合してエチレン−ビニルエステル共重合体を得る共重合工程、前記エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化してEVOH(A)を得るけん化工程、及びEVOH(A)とノニオン系界面活性剤(B)とを混合してEVOH組成物を得る混合工程と、EVOH組成物を発泡させて発泡体を得る工程を含む。
【0053】
共重合工程は、エチレンとビニルエステルとの共重合の工程に加え、必要に応じて重合禁止剤を添加し、それに続いて未反応エチレン、未反応ビニルエステルを除去してエチレン−ビニルエステル共重合体溶液を得る工程を含む。エチレンとビニルエステルとの共重合方法としては、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合等の公知の方法が挙げられる。
【0054】
重合に用いられる代表的なビニルエステルとして酢酸ビニルが挙げられるが、その他の脂肪族ビニルエステル、例えばプロピオン酸ビニルやピバリン酸ビニルも使用できる。他にも、共重合し得る単量体を少量共重合させることができる。
【0055】
重合温度としては、20〜90℃が好ましく、40〜70℃がより好ましい。重合時間としては、2〜15時間が好ましく、3〜11時間がより好ましい。重合率は、仕込みのビニルエステルに対して10〜90%が好ましく、30〜80%がより好ましい。重合後の溶液中の樹脂分は、5〜85質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0056】
けん化工程では、エチレン−ビニルエステル共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、溶液中の共重合体をけん化する。けん化方法は、連続式、回分式のいずれも可能である。このアルカリ触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートが挙げられる。
【0057】
混合工程では、EVOH(A)及びノニオン系界面活性剤(B)、必要に応じてホウ素化合物(C)を添加してから溶融混練することが好ましい。この際、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置または混練装置を使用して行うことができる。溶融混練時の温度は、通常、110〜300℃である。ホウ素化合物(C)は、予めEVOH(A)やノニオン系界面活性剤(B)に含有されていてもよい。
【0058】
発泡体を得る工程では、発泡ガス供給装置を備え付けた公知のガス発泡成形機を用いることができる。公知のガス発泡成形機としては、発泡ガス供給装置を備え付けた単軸押出機、二軸押出機、タンデム型押出機等が挙げられる。前記ガス発泡成形機にEVOH組成物を供給すると共に上記の不活性ガスを発泡剤として超臨界状態にして供給してEVOH組成物と接触(ガス溶解工程)させて、その後温度を下げて冷却(冷却工程)させた後にダイ部分で一気に圧力開放して発泡させればよい。例えば、二酸化炭素を用いる場合は、臨界圧力が75.3kg/cm
2で臨界温度が31.1℃、窒素を用いる場合は、臨界圧力が34.6kg/cm
2で臨界温度が−147.0℃なので、かかる圧力以上で臨界温度以上にした二酸化炭素又は窒素を超臨界状態で供給すればよい。このときのガスの供給量は、不活性ガスの種類によるが、EVOH組成物100質量部に対して不活性ガス0.01〜50質量部とすることが好ましく、0.05〜20質量部とすることがより好ましく、0.1〜10質量部とすることがさらに好ましく、0.5〜7.5質量部とすることが特に好ましい。かかる不活性ガスの供給量が0.01質量部未満では発泡倍率が低下して十分な断熱効果が得られないおそれがあり、逆に50質量部を越えると発泡体の気泡の均一性や表面の外観性が低下して好ましくない。
【0059】
なお、上記のEVOH組成物と不活性ガスの接触(ガス溶解工程)においては、溶融状態のEVPH組成物中に二酸化炭素を溶解させることが必要であるため、この工程での温度は、好ましくは150〜280℃、より好ましくは160〜260℃、さらに好ましくは170〜250℃に調整される。かかる温度が150℃未満ではEVOH組成物の溶融が不十分なために不活性ガスの溶解が十分に進まないおそれがあり、逆に280℃を越えるとEVOH(A)が熱劣化して着色が発生することから好ましくない。
【0060】
EVOH組成物と不活性ガスが接触してEVOH組成物に不活性ガスが溶解した後は、温度を下げて発泡に適したEVOH組成物の粘度に調整する(冷却工程)。このときの温度としては、上記のガス溶解工程よりも50℃程度温度を下げて100〜230℃、好ましくは110〜220℃、より好ましくは130〜210℃で冷却することが好ましい。かかる温度が100℃未満ではEVOH(A)の粘度が高いため押出機内が高トルク状態となって加工が困難となり、逆に230℃を越えるとEVOH(A)の粘度が低いため発泡成形時に発泡セルの壁が潰れやすく発泡体の気泡が不均一となって好ましくない。冷却したEVOH組成物はガス発泡成形機のダイ部分で圧力が開放されることにより発泡を起こさせると共に、所望とする成形物の形状に合わせたダイから押出されて目的とする発泡体が得られる。
【0061】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準を示す。
【0063】
(MFR)
MFRの測定は、温度210℃、荷重2160gの条件下において測定するものとし、株式会社テクノ・セブン製のL244によって測定し、下記式によって算出される。
MFR=(600×m)/t
(式中、mはカット片の平均質量(g)を表し、tは試料の切取り時間間隔(s)を表す。)
【0064】
(独立気泡率)
各実施例と比較例で得られた発泡体から、長さ25mm×幅25mm×厚さ2mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出し、ASTM−D2856−70の手順Cに準じて評価した。
【0065】
(発泡倍率)
各実施例と比較例で得られた発泡体から、長さ25mm×幅25mm×厚さ2mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出し、単位体積あたりの重量から計算した。
【0066】
(気泡サイズ)
各実施例と比較例で得られた発泡体を厚さ方向の断面を200倍に拡大した写真において、海島構造の海部分の任意の箇所に、厚さ方向に実寸法で1mm相当の直線を引き、この直線を横切る気泡の数を数え、厚さ方向の気泡径を次の式にしたがって求めた。
厚さ方向の気泡径=直線の長さ1mm/直線を横切る気泡の数
同様に、発泡体の幅方向、長さ方向についてそれぞれ気泡径を求め、3方向の相加平均を気泡径とした。なお、大小の気泡が海島状に混在する場合、すなわち、前記断面における小気泡占有面積率が5%未満の場合は、気泡径0.25mm以上の大気泡の気泡径のみを測定対象とするが、本実施例及び比較例において、気泡径(直径)0.20mmを超える大気泡さえも存在しなかった。
【0067】
(柔軟性)
各実施例と比較例で得られた発泡体から幅2cm×長さ12cm×厚さ2mmの試験片を切り出し、長さ方向の先端に0.1kgの荷重を載せて、先端より5cmの梁長さを支点とした時の先端のたわみ距離を測定し、以下の基準で評価し、柔軟性を評価した。剛性の高いものほどたわみ距離は少なく、柔軟性の高いものほどたわみ距離は大きくなる。
A 20mm以上
B 10mm以上20mm未満
C 5mm以上10mm未満
D 5mm未満
【0068】
(耐衝撃性)
各実施例と比較例で得られた発泡体から幅25cm×長さ25cm×厚さ2mmの試験片を切り出し、高さ30mmを有するクランプ枠に装着し、23±2℃の試験条件下で、500g鉄球を高さ100cmのところから落下させ、試験片に衝撃を与えた。落球衝撃後、重りを取り除いた後の試験片の外観を以下の基準で評価し、耐衝撃性の指標とした。
A 試験片に変形は無かった。
B 試験片の一部が凹んだ。
C 試験片が大きく凹んだ。
D 試験片が砕けた。
【0069】
(熱伝導率)
各実施例と比較例で得られた発泡体から、長さ200mm×幅200mm×厚さ25mmの平板を切り出し、50℃にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置[英弘精機(株)製、HC−072]を用いて、ASTM E1530に準じて、平均温度20℃での熱伝導率を測定した。熱伝導率0.20W/(m・K)以下を発泡体として断熱性が実使用に足るものとして合格とした。
【0070】
[実施例1]
含水率48%の多孔性EVOHペレット[エチレン含有量32モル%、ケン化度99.9モル%、MFR(210℃、荷重2160gで測定)が3.7g/10分]と、EVOH(A)に対してステアリン酸アミド200ppmとなるように、ステアリン酸アミドを、0.1%のホウ酸水溶液に投入して、30℃で4時間撹拌した後、110℃で8時間乾燥を行って、含水率0.3%のEVOH組成物[ホウ素化合物含有量がホウ素原子換算で178ppm、ステアリン酸アミド200ppm]を得た。
【0071】
かかる組成物を用いてタンデム型押出発泡装置にて以下の要領で発泡体を得た。
〔ガス溶解工程の条件〕
発泡用熱可塑性樹脂組成物の供給量
・スクリュー径 30mm
・スクリュー回転数 60rpm
・シリンダー温度 C1/C2/C3/C4/ダイヘッド=190℃/220℃/220℃/220℃/220℃
・不活性ガス 窒素
・不活性ガスの供給位置 第一押出機のC3から超臨界状態で供給
・不活性ガスの供給量 EVOH100部に対して1部
【0072】
〔ガス溶解工程〜冷却工程連結部分(冷却工程)〕
・温度 200℃
〔冷却工程の条件〕
・スクリュー径 40mm
・スクリュー回転数 10rpm
・シリンダー温度 C1/C2/C3/C4/C5=190℃/190℃/190℃/190℃/190℃
上記で得られたEVOH発泡体をサイジング装置に通して、成形表皮が存在しない厚さ2mmのEVOHの発泡シートを得た。
【0073】
[実施例2〜8]
EVOH(A)、ノニオン系界面活性剤(B)及びホウ素化合物(C)の各成分の種類、量、発泡倍率、気泡サイズを表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、発泡体を製造した。得られた発泡体について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例9〜12及び比較例1〜5]
EVOH(A)、ノニオン系界面活性剤(B)及びホウ素化合物(C)の各成分の種類、量、発泡倍率、気泡サイズを表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして、発泡体を製造した。得られた発泡体について、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】