特許第6831248号(P6831248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831248
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210208BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20210208BHJP
【FI】
   H01L21/78 B
   H01L21/78 M
   B23K26/364
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-4825(P2017-4825)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-116950(P2018-116950A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−186200(JP,A)
【文献】 特表2005−523583(JP,A)
【文献】 特開2000−277487(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0006765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法であって、
レーザー光線の照射によってガスを発生する粘着テープにウエーハを貼着する粘着テープ貼着工程と、
チャックテーブルに粘着テープ側を保持しウエーハを露出させる保持工程と、
該チャックテーブルとレーザー光線とを相対的に移動しながらウエーハを分割する分割工程と、
該分割工程の際、粘着テープに到達したレーザー光線の照射によって、個々に分割されたチップの側面をエッチするエッチングガスを発生させ、該エッチングガスによって分割されたチップの側面にエッチング加工を施して該チップの側面にデブリが付着するのを防止する品質加工工程と、
から少なくとも構成されるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該粘着テープは、糊層とシートとから構成され、レーザー光線の照射によってエッチングガスが発生する物質が、粘着テープの糊層又はシートに混入されている請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該粘着テープは、糊層とシートとから構成され、レーザー光線の照射によってエッチングガスが発生する物質で構成されている請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該エッチングガスが発生する物質とは、フッ素系樹脂である請求項2、又は3に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してウエーハを個々のチップに分割する際に使用される粘着テープであって、
レーザー光線が照射されることにより分割されたチップの側面にデブリが付着することを防止してエッチするエッチングガスが発生する粘着テープ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハにレーザー光線を照射して個々のチップに分割するウエーハの加工方法、及び粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイス(チップ)に分割され、携帯電話、パソコン、テレビ等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、チャックテーブルに保持されたウエーハの分割予定ラインに対して切削ブレードを位置付けて切込み、個々のチップに分割する構成であることから、切削ブレードの切込み深さを調整することで、ウエーハを支持する粘着テープを僅かに切削して残しウエーハを完全切断することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
また、切削ブレードを用いずに、レーザー光線の集光点をウエーハの分割予定ラインに位置付けて照射してウエーハを相対移動させることでウエーハを個々のチップに分割する構成も知られており、切削ブレードを使用する場合に比して分割予定ラインを狭くすることができ、1枚のウエーハから取り出せるチップの数を増やして生産効率を向上させることを実現している(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−088202号公報
【特許文献2】特開2004−188475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載されたレーザー光線を照射してウエーハを個々のチップに分割する構成では、レーザー光線がウエーハに照射されてウエーハが分割される際に溶融物(デブリ)が飛散してチップの側面に付着し、チップの抗折強度を低下させたり、チップをピックアップする際にデブリが落下して他のチップを汚染したりして、ワイヤーボンディング等の妨げになるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、レーザー光線を照射してウエーハを加工する際に、レーザー光線の照射によって分割された個々のチップの側面にデブリが付着する等して品質を損ねるようなことを抑制するウエーハの加工方法、及び粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法であって、レーザー光線の照射によってガスを発生する粘着テープにウエーハを貼着する粘着テープ貼着工程と、チャックテーブルに粘着テープ側を保持しウエーハを露出させる保持工程と、該チャックテーブルとレーザー光線とを相対的に移動しながらウエーハを分割する分割工程と、該分割工程の際、粘着テープに到達したレーザー光線の照射によって、個々に分割されたチップの側面をエッチするエッチングガスを発生させ、該エッチングガスによって分割されたチップの側面にエッチング加工を施して該チップの側面にデブリが付着するのを防止する品質加工工程と、から少なくとも構成されるウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
粘着テープは、糊層とシートとから構成され、レーザー光線の照射によってエッチングガスが発生する物質が、粘着テープの糊層又はシートに混入されているように構成することができる。さらに、粘着テープを構成する糊層、シートはレーザー光線の照射によってエッチングガスが発生する物質で構成することもできる。該エッチングガスが発生する物質とは、フッ素系樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してウエーハを個々のチップに分割する際に使用される粘着テープであって、レーザー光線が照射されることにより分割されたチップの側面にデブリが付着することを防止してエッチするエッチングガスが発生する粘着テープが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に基づき構成されたウエーハの加工方法は、レーザー光線の照射によってガスを発生する粘着テープにウエーハを貼着する粘着テープ貼着工程と、チャックテーブルに粘着テープ側を保持しウエーハを露出させる保持工程と、該チャックテーブルとレーザー光線とを相対的に移動しながらウエーハを分割する分割工程と、該分割工程の際、粘着テープに到達したレーザー光線の照射によって、個々に分割されたチップの側面をエッチするエッチングガスを発生させ、該エッチングガスによって分割されたチップの側面にエッチング加工を施して該チップの側面にデブリが付着するのを防止する品質加工工程と、から少なくとも構成されることから、レーザー光線が粘着テープに至った際にプラズマ化されたエッチングガス等が発生し個々に分割されたチップの側面に品質を損ねない加工を施すことが可能となる。
【0012】
本発明に基づき構成された粘着テープは、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してウエーハを個々のチップに分割する際に使用される粘着テープであって、レーザー光線が照射されることにより分割されたチップの側面にデブリが付着することを防止してエッチするエッチングガスが発生するように構成されていることから、レーザー光線が粘着テープに至った際にプラズマ化されたエッチングガス等が発生し個々に分割されたチップの側面に品質を損ねない加工を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に基づき構成されたウエーハの加工方法を実現すべく構成されたレーザー加工装置、及び粘着テープを介してフレームに保持されたウエーハの斜視図である。
図2図1に記載されたレーザー加工装置のレーザー光線照射手段の概略を説明するためのブロック図である。
図3図2に記載されたレーザー光線照射手段においてAで示す部位の一部拡大断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づき構成されたウエーハの加工方法、及び粘着テープについて添付図面を参照ながら詳細に説明する。図1には、本発明に基づき構成されるウエーハの加工方法を実現するレーザー加工装置2の全体斜視図が示されている。レーザー加工装置2は、被加工物を保持する保持手段22と、静止基台2a上に配設され該保持手段22を移動させる移動手段23と、該保持手段22に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段24と、該静止基台2a上の移動手段23の側方に立設される垂直壁部51、及び該垂直壁部51の上端部から水平方向に延びる水平壁部52からなる枠体50とを備えている。枠体50の水平壁部52内部には、レーザー光線照射手段24の光学系が内蔵されており、その構成についてはおって詳述する。なお、保持手段22は、図中左上方に拡大して示す粘着テープTを介して環状のフレームFに保持された被加工物(ウエーハ10)を保持する。
【0015】
該保持手段22は、図中に矢印Xで示すX方向において移動自在に基台2aに搭載された矩形状のX方向可動板30と、図中に矢印Yで示すY方向において移動自在にX方向可動板30に搭載された矩形状のY方向可動板31と、Y方向可動板31の上面に固定された円筒状の支柱32と、支柱32の上端に固定された矩形状のカバー板33とを含む。カバー板33には該カバー板33上に形成された長穴を通って上方に延びる円形状の被加工物を保持し、図示しない回転駆動手段により周方向に回転可能に構成されたチャックテーブル34が配設されている。チャックテーブル34の上面には、多孔質材料から形成され実質上水平に延在する円形状の吸着チャック35が配置されている。吸着チャック35は、支柱32を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。なお、X方向は図1に矢印Xで示す方向であり、Y方向は矢印Yで示す方向であってX方向に直交する方向である。X方向、Y方向で規定される平面は実質上水平である。
【0016】
移動手段23は、X方向移動手段40と、Y方向移動手段42と、を含む。X方向移動手段40は、モータの回転運動を、ボールねじを介して直線運動に変換してX方向可動板30に伝達し、基台2a上の案内レールに沿ってX方向可動板30をX方向において進退させる。Y方向移動手段42は、モータの回転運動を、ボールねじを介して直線運動に変換し、Y方向可動板31に伝達し、X方向可動板30上の案内レールに沿ってY方向可動板31をY方向において進退させる。なお、図示は省略するが、X方向移動手段40、Y方向移動手段42には、それぞれ位置検出手段が配設されており、チャックテーブル34のX方向の位置、Y方向の位置、周方向の回転位置が正確に検出され、後述する制御手段から指示される信号に基づいてX方向移動手段40、Y方向移動手段42、及び図示しない回転駆動手段が駆動され、任意の位置および角度にチャックテーブル34を正確に位置付けることが可能になっている。
【0017】
図1に示すように、被加工物となるウエーハ10は複数のデバイス14が分割予定ライン12によって区画され表面に形成されており、粘着テープTを介して環状のフレームFに支持された状態でチャックテーブル34に保持される。そして、レーザー光線照射手段24を作動させて集光器24aからSi(シリコン)からなるウエーハ10に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LBを照射しながら、上記したX方向移動手段40、Y方向移動手段42を作動させることにより、該分割予定ライン12に対して所謂アブレーション加工を実施し、分割溝100を形成する。
【0018】
図2に基づいて、本発明のウエーハの加工方法を実現すべく構成されたレーザー光線照射手段24をより具体的に説明する。レーザー光線照射手段24は、Siからなるウエーハ10に対して吸収性を有する355nm波長のレーザー光線を集光器24aから照射するためのレーザー発振器24bを備えている。レーザー発振器24bから発振されたレーザー光線は、透過率を調整することによりレーザー光線の出力を調整するアッテネータ24cに入射される。アッテネータ24cにて所望の出力に調整されたレーザー光線は、ウエーハ10側に方向を変換する反射ミラー24dにて方向が変換される。反射ミラー24dにて方向が変換されたレーザー光線は、集光器24aの集光レンズLを介してチャックテーブル34上に保持されたウエーハ10の所定の位置に照射される。なお、集光レンズLは、複数のレンズを適宜組み合わせた集合体から構成することができる。
【0019】
図1に記載されたレーザー加工装置2は、図示しない制御手段を備えており、該制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略)。該制御手段は、レーザー加工装置に配設された各種手段を制御するものであり、レーザー光線照射手段24のレーザー発振器24b、アッテネータ24cの制御等も行う。
【0020】
図1〜3に基づいて、上記したウエーハ10を支持する粘着テープTについて、詳細に説明する。図3(a)は、本実施形態の図2の一点鎖線Aで囲む部位の一部拡大断面図を示している。粘着テープTは、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等から形成されたシートtbと、シートtb上に形成されたゴム系やアクリル系の糊層(粘着層)taとから構成され、該糊層ta上にウエーハ10が貼着され支持される。ウエーハ10は、表面側にデバイス14、分割予定ライン12が形成されたデバイス層を備えており、裏面側が粘着テープTに貼着される。該糊層taを形成する材料には、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化エチレン樹脂))の粉末が混入されて糊層ta内に均等に分散されており、該糊層taに対して該355nm波長のレーザー光線が照射されると、PTFEが混入されていることでプラズマ化されたフッ素ガスが発生する。なお、図1では説明の都合上省略しているが、プラズマ化されたフッ素ガスを発生させるため、レーザー加工装置2の少なくともレーザー加工領域は、所謂真空放電雰囲気中に置かれている。
【0021】
上述したレーザー加工装置によるレーザー加工時の加工条件は、例えば以下のように設定される。
ウエーハ :Siウエーハ
レーザー波長 :355nm
平均出力 :3.0W
繰り返し周波数 :20kHz
集光スポット径 :φ10μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0022】
本実施形態のレーザー加工装置2、及び被加工物となるウエーハ10、及び該ウエーハ10が貼着される粘着テープTは、概ね以上のような構成を備えており、該レーザー加工装置2によって実施される本発明のウエーハの加工方法の作用について以下に説明する。
【0023】
本発明に基づき構成されるウエーハの加工方法を実施するに際し、先ずレーザー光線の照射によってプラズマ化されたフッ素ガスを発する粘着テープTに該ウエーハ10を貼着する粘着テープ貼着工程を実施する。なお、以下の各工程は、適宜オペレータの指示によって実施がなされる。
【0024】
粘着テープ貼着工程が実施されたならば、ウエーハ10をチャックテーブル34に保持する保持工程を実施する。より具体的には、図1に示すレーザー加工装置2のチャックテーブル34に粘着テープT側を下にして載置し、図示しない吸引手段を作動させて吸着チャック35を介して吸引保持し、ウエーハ10を上方に露出させてクランプ等により環状フレームFをクランプして固定する。
【0025】
上記した保持工程を実施したならば、ウエーハを個々のデバイスに分割する分割工程を実施する。分割工程を実施するに際し、先ずウエーハ10の加工領域(分割予定ライン12)を撮像する撮像手段26を用いて、ウエーハ10の加工領域と、レーザー光線照射手段24の集光器24aの照射位置との位置合わせを行うアライメントを実施する。アライメントにより検出された位置情報は、該制御手段に適宜記憶される。
【0026】
アライメント実施後、チャックテーブル34を移動して分割予定ライン12の一端にレーザー光線の照射位置を位置付ける。そして、上記したレーザー加工条件、すなわち、レーザー光線照射手段24の集光器24aによりウエーハ10に対して吸収性を有する波長(355nm)のレーザー光線LBをウエーハ10の表面位置に集光して照射しつつ、移動手段23を作動してチャックテーブル34を矢印Xで示す方向に所定の加工送り速度で移動させる。
【0027】
上述したように、分割工程が開始されると、レーザー光線照射手段24の集光器24aからレーザー光線LBがウエーハ10の表面に形成されたデバイス14の間に位置する分割予定ライン12に照射される(図3(a)を参照。)。レーザー光線照射手段24のレーザー発振器24bから照射されるレーザー光線LBの出力は、アッテネータ24cによって予めウエーハ10を完全分割し且つ該ウエーハ10を支持する粘着テープTを僅かに加工する程度に調整されている。
【0028】
集光器24aから照射されるレーザー光線LBの出力が所定の値に調整されていることにより、ウエーハ10が完全切断されて分割溝100が形成されると、粘着テープTにレーザー光線LBが達する。図3(b)に示すように、レーザー光線LBが粘着テープTのP点に到達すると、粘着テープTのウエーハ10側に位置する糊層taに混入されたPTFEと反応してプラズマ化されたフッ素ガスGが発生し放出される。該フッ素ガスGは、ウエーハ10に形成された分割溝100を構成するデバイス14の側壁101に接しながら上方に噴出される。該フッ素ガスGにはデバイスチップを構成するSiに対して腐食作用を奏する機能を有し、分割溝100が形成されることにより表出したデバイス14の側壁101に対してエッチ作用を奏する所謂ドライエッチングがなされる。これにより、レーザー光線の照射により生じるデブリが側壁101に付着することが抑制され、結果的に個々にチップ化されたデバイス14の品質を損ねない加工が実施される(品質加工工程)。なお、このドライエッチングが施される際のガス発生条件等を調整することにより、エッチング過程で生成される不揮発性反応生成物や、エッチングガスの解離や再結合過程で生成されるプラズマ重合膜(フロロカーボン膜)等により側壁保護膜が形成され、ウエーハ10が個々のチップに分割された際の側壁101にデブリが付着せずデバイス14の品質を低下させることを抑制する効果を奏することもできる。
【0029】
上述したように分割工程、品質加工工程を実施することにより、分割予定ライン12の他端が集光器24aの照射位置に達したならば、レーザー光線の照射を停止すると共にチャックテーブル34の移動を停止する。この結果、ウエーハ10の所定の分割予定ライン12に沿って分割溝100が形成される。
【0030】
上述したレーザー加工により、所定の分割予定ライン12の一端から他端に渡り分割溝100が形成されたならば、保持手段22、移動手段23、及び図示しない回転駆動手段を作動してチャックテーブル34を移動させて、集光器24aに対するウエーハ10の位置を変更しながらその余の分割予定ライン12に対し同様の加工を施す。これによりウエーハ10の全ての分割予定ライン12に沿って分割溝100が形成され、分割溝100を形成する際に生じたデブリがデバイス14の側壁101にデブリが付着することが防止されてウエーハ10が分割予定ライン12に沿って個々のデバイス14に分割されてチップ化され分割工程、品質加工工程が完了する。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲に含まれる限り種々の変形例を想定することができる。上記の実施形態では、ウエーハ10が貼着される粘着テープTを、図3(a)に示したように糊層taと、シートtbから構成し、チップ化されたデバイス14の側面にデブリが付着することを防止するためのPTFEの微粉末を糊層taに混入して形成した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、粘着テープTを構成する糊層taのみならず、シートtbにも該PTFEを混入するように形成してもよい。
【0032】
上記実施形態では、粘着テープTを構成する糊層ta、シートtbに対して、分割されたチップの側面に品質を損ねない加工を施すガスを発生させるべくPTFEの微粉末を混入して形成したが、本発明は、これに限定されず、例えば以下に示すような、他のフッ素系樹脂を選択することもできる。
【0033】
<フッ素系樹脂の例>
PFA:テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
FEP:テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)
ETFE:テツロフルオロエチレン・エチレン共重合体
PVDF:ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)
PCTFE:ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)
ECTFE:クロロトリフル・エチレン共重合体
【0034】
また、本実施形態では、粘着テープTをポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等から形成されたシートtbと、シートtb上に形成されたゴム系やアクリル系の糊層(粘着層)taとから構成し、糊層ta、シートtbに対して、分割されたチップの側面に品質を損ねない加工を施すガスを発生させるべくPTFEの微粉末を混入して形成したが、これに限定されず、糊層ta、シートtb自体を上述したフッ素系樹脂を主成分とする樹脂で形成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
2:レーザー加工装置
2a:静止基台
10:ウエーハ
12:分割予定ライン
14:デバイス
22:保持手段
23:移動手段
24:レーザー光線照射手段
24a:集光器
24b:レーザー発振器
24c:アッテネータ
24d:反射ミラー
30:X方向可動板
31:Y方向可動板
32:支柱
33:カバー板
34:チャックテーブル
35:吸着チャック
42:X方向移動手段
43:Y方向移動手段
50:枠体
100:分割溝
101:側壁
G:フッ素ガス
T:粘着テープ
F:フレーム
図1
図2
図3