【0010】
本発明において用いられる固体電解質としては、例えば、上述のLi
1+xAl
yGe
2-y(PO
4)
3(LAGP)のようなNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、同じく上述のLi
7La
3Zr
2O
12(LLZ)等のガーネット型構造を有する化合物、リン酸リチウムに窒素をドープしたLIPON(LiPO
4-xN
x)とその類似化合物、Li
3xLa
2/3-xTiO
3等のペロブスカイト型構造を有する化合物、Li
4SiO
4等の酸化物系固体電解質、及び、硫化リンリチウム等の硫化物系固体電解質などのリチウムイオン伝導体、NASICON型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、Na
2O-11Al
2O
3等のβ-アルミナ、及び、硫化リンナトリウム等の硫化物系固体電解質などのナトリウムイオン伝導体が挙げられ、さらに、リチウムイオンやナトリウムイオンに限らず、Mg等他のカチオンや酸化物イオン等のアニオン伝導体にも、本発明は適用可能である。
【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0015】
実施例1.LAGPへのLi金属の接着
固体電解質として、Li
1+xAl
yGe
2-y(PO
4)
3(LAGP)を用い、通常の熱融着法、および、本発明による超音波援用熱融着法により、当該固体電解質上にLi金属電極を形成した。各融着は、Arガスで満たされたグローブボックス中で、以下の手順で行った。
(1)通常の熱融着法(ホットプレートによる融着)
230℃に加熱したホットプレート上にΦ10mmのLi金属を張り付けたCuメッシュを設置し、その上にAu電極を片側にスパッタリングしたLAGPペレットを、Au電極を上側にして設置した。LAGPペレットをピンセットで押し、3分程度保持してLi金属が溶融したのを確認した後にホットプレート上から取り除き冷却を行った。
(2)超音波援用熱融着法
超音波援用熱融着を行う手段として、超音波はんだごて(
図1)(メーカー名:黒田テクノ株式会社、品番:サンボンダ USM-560、超音波発振周波数:60kHz±5kHz、超音波発振出力:1〜12 W、ヒーター温度設定:200〜500℃)を用いた。
LAGPペレット上にマスキングテープにてΦ10mmのマスキングを行った。ヒーターを240℃に設定し、加熱されたコテ先にLi金属を乗せ、LAGPペレットに接触させた後に60kHz、5Wの超音波を1秒程度印加して接着を行った。
【0016】
実施例2.LLZへのLi金属の接着
固体電解質として、Al doped-Li
7La
3Zr
2O
12(LLZ)を用い、通常の熱融着法、および、本発明による超音波援用熱融着法により、当該固体電解質上にLi金属電極を形成した。各融着は、Arガスで満たされたグローブボックス中で、以下の手順で行った。なお、LLZにおけるAlのドープは、LLZのガーネット型構造を安定化させるために行われたものである。
(1)通常の熱融着法(ホットプレートによる融着)
230℃に加熱したホットプレート上にLLZペレットを設置し、その上にΦ10mmのディスク状Li金属を設置し、Cuメッシュ越しに上からピンセットで押した。3分程度保持してLi金属が溶融したのを確認した後にホットプレート上から取り除き冷却を行った。逆側も同様にしてLi金属を融着させ、Li/LLZ/Liセルを作製した。
(2)超音波援用熱融着法
超音波援用熱融着を行う手段として、超音波はんだごて(
図1)を用いた。
LLZペレット上にマスキングテープにてΦ10mmのマスキングを行った。ヒーターを240℃に設定し、加熱されたコテ先にLi金属を乗せ、LLZペレットに接触させた後に60kHz、5Wの超音波を1秒程度印加して接着を行った。逆側も同様にしてLi金属を融着させ、Li/LLZ/Liセルを作製した。
図2に、ホットプレートにより(a)、または超音波援用熱融着法により(b)、LLZ上にLiを融着させた時の写真を示す。
LLZはLi金属と反応し難い固体電解質として知られており(非特許文献3、非特許文献4)、
図2ではどちらも一見融着しているように見えるが、ホットプレートで融着させた場合は簡単に剥がすことが可能である。一方、超音波援用熱融着法を用いて融着させた場合は簡単には剥がれなくなった。これは超音波により、固体電解質表面が活性化され、Li/固体電解質間での反応が促進されるためと考えられる。
図3に、Li / LLZ破断面の電子顕微鏡写真を示す。ホットプレートで融着させた場合(a)は、Li/LLZ界面に空隙が多くみられる。一方で、超音波援用熱融着法を用いて融着させた場合(b)には、密着性の高い均一な界面が構築できていることが見て取れる。
【0017】
実施例3.インピーダンス測定
実施例1及び2に記載の熱融着法及び超音波援用熱融着法により作製したLi/LAGP/Au及びLi/LLZ/Liセルを、それぞれグローブボックス中でプラスチックフィルムおよび密閉瓶に封入し、グローブボックス中から取り出して、30℃に温めた恒温槽内でインピーダンス測定を行った。交流電圧は10mV,周波数範囲は100mHz〜1MHzとした。
図4に、LAGPの両面にAu電極をスパッタリングしたAu/LAGP/Au、ホットプレートでLiを融着したLi/LAGP/Au、および超音波援用融着法によりLiを融着したLi/LAGP/Auのインピーダンスプロットを示す。インピーダンスプロットにおける円弧の右端の値が、セル全体の抵抗を意味する。
Au/LAGP/Au(a)ではLAGP固体電解質自体の抵抗が観測でき、約930オームの抵抗が観測された。Li/LAGP/AuではこれにLi/LAGP界面の抵抗が加わり、ホットプレートで融着した場合(b)は約4300オームの抵抗となった。一方で、超音波援用熱融着法で融着した場合(c)は、約1250オームの抵抗となり、Li/LAGP界面の抵抗を著しく低減することができたことが分かる。
図5に、ホットプレートにより(a)、または超音波援用熱融着法により(b)融着したLi/LLZ/Liのインピーダンスプロットを示す。
LAGP同様に、超音波援用熱融着法を用いることにより、Li/LLZ界面の抵抗を著しく低減することができたことが分かる。
【0018】
実施例4.定電流分極測定
実施例2に記載の熱融着法及び超音波援用熱融着法により作製したLi/LLZ/Liセルを、それぞれグローブボックス中でプラスチックフィルムおよび密閉瓶に封入し、グローブボックス中から取り出して、30℃に温めた恒温槽内で定電流分極測定を行った。測定は、0.1mA/cm
2の電流を30分毎に方向を逆転して流し、100時間の間電圧の変化を観測することにより、行った。
図6に、各Li/LLZ/Liセルにおいて得られた結果を示す。
ホットプレートを用いて融着した場合(a)は、測定開始後すぐに電圧が急激に降下してしまった。これはLiが一部分に集中して析出してしまい、部分的にショートしてしまったためと考えられる。一方、超音波援用熱融着法を用いて融着した場合(b)では、そのような挙動は観測されず、100時間、100回以上の電流の逆転を繰り返しても、一定の振れ幅の電圧を観測することができた。
【0019】
実施例5.
熱溶融温度と印可する超音波の出力を変えて、スライドガラス上にLi金属を超音波援用熱融着させた。超音波の周波数は、60kHzに固定した。その結果を、
図7に示す。
図7から、温度と超音波出力が低いと、Li金属は融着しにくいこと、220℃、1Wくらいからきれいに接着しだすこと、そして、240℃、5Wくらいで十分に接着できることが見て取れる。
図8に示すように、240℃、5Wの条件では、Li金属をスライドガラス上に塗り広げることで、文字のような複雑な形状を形成することも可能である。