(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る運転者状態検知装置の内容について、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
[運転者状態検知装置の概要構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る運転者状態検知装置の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態の運転者状態検知装置100の概略構成を示すブロック図である。運転者状態検知装置100は、
図1に示すように、加速度センサ1、姿勢センサ2(重心移動量検出部の一例)、重心移動量算出部3(重心移動量検出部の一例)、誤差信号生成部4及びドライバ状態判定部5(運転者状態判定部の一例)を備える。
【0013】
加速度センサ1は、車両V(
図2参照)に取り付けられ、測定して得た車両Vの加速度Gx及びGyを誤差信号生成部4に出力する。加速度Gxは、車両Vの車幅方向であるX方向にかかる加速度であり、加速度Gyは、車両Vの長さ方向であるY方向にかかる加速度である。加速度センサ1は、例えば6軸加速度センサで構成することができるが、3軸加速度センサで構成してもよい。なお、以下の説明において、X方向の加速度GxとY方向の加速度Gyとを個別に区別する必要がない場合には、単に加速度Gと称する。
【0014】
姿勢センサ2は、車両Vを運転するドライバ(運転者の一例)が着席するシートSt1(運転席の一例、
図2参照)の上面に配置されるセンサであり、内部にフィルム型の圧電センサ(
図3参照)を有する。姿勢センサ2は、ドライバがシートSt1に着座することにより加えられる圧力の強さに応じた出力信号を生成して、重心移動量算出部3に出力する。姿勢センサ2については、後述の
図3を参照して詳述する。
【0015】
重心移動量算出部3は、姿勢センサ2からの出力信号に基づいて、ドライバの重心移動に伴い発生する体の動き量(以下、重心移動量と称する)を算出する。重心移動量算出部3は、重心移動量として、X方向における重心移動量gx及びY方向における重心移動量gyを算出する。重心移動量算出部3については、姿勢センサ2の構成例を示した
図3を参照して詳述する。なお、以下の説明において、X方向の重心移動量gxとY方向の重心移動量gyとを個別に区別する必要が無い場合には、単に重心移動量gと称する。
【0016】
誤差信号生成部4は、X方向誤差信号生成部40x及びY方向誤差信号生成部40yを備える。X方向誤差信号生成部40xは、加速度センサ1から入力される加速度Gxと、重心移動量算出部3から入力されるドライバの重心移動量gxとに基づいて、X方向誤差信号Oxを生成する。Y方向誤差信号生成部40yは、加速度センサ1から入力される加速度Gyと、重心移動量算出部3から入力されるドライバの重心移動量gyとに基づいて、Y方向誤差信号Oyを生成する。誤差信号生成部4については、後述の
図4を参照して詳述する。
【0017】
ドライバ状態判定部5は、X方向誤差信号Ox及びY方向誤差信号Oyを加算して誤差信号Oを生成し、生成した誤差信号Oと予め設定された閾値とを比較した結果に基づいて、ドライバの状態を判定する。ドライバ状態判定部5については、後述の
図5を参照して詳述する。
【0018】
[加速度センサ及び姿勢センサの実装例]
次に、
図2を参照して、加速度センサ1及び姿勢センサ2の車両Vへの実装例について説明する。
図2は、加速度センサ1及び姿勢センサ2の車両Vへの実装例を示す車両内部の上面図である。
図2に示すように、車両Vには、ハンドルSwを操作するドライバDが着席するシートSt1、助手席のシートSt2及び後部座席のシートSt3が設けられる。
【0019】
シートSt1及びシートSt2の、車両Vの長さ方向(Y方向)における前方の位置には、車両Vの加速度Gを検出するための加速度センサ1が設置される。なお、
図2に示した加速度センサ1の設置位置は一例であり、加速度センサ1は、車両V内部の他の位置に設置されてもよい。
【0020】
ドライバDが着座するシートSt1の座面には、姿勢センサ2が配置される。姿勢センサ2は、座布団のような平板状の形状に形成され、その上面には、シートSt1に着座したドライバDの臀部が配置される。
【0021】
[姿勢センサの構成例]
次に、
図3を参照して、姿勢センサ2の構成例について説明する。
図3は、姿勢センサ2の構成例を示す概略図である。姿勢センサ2は、フィルム型の4つの圧電センサ2a〜2dで構成される。4つの圧電センサ2a〜2dは、それぞれ、ドライバDが着座するシートSt1(車両を構成する部品の一例)の座面の座標平面を4つに分割して得られる各領域に配置される。
【0022】
4つの圧電センサ2a〜2dによって囲まれた中心の位置が、座標平面における原点であり、図中の縦方向がX軸(車両Vの車幅方向)に対応し、横方向がY軸(車両Vの長さ方向)に対応する。この座標平面の第1象限に対応する位置に圧電センサ2aが配置され、第2象限に対応する位置に圧電センサ2bが配置され、第3象限に対応する位置に圧電センサ2cが配置され、第4象限に対応する位置に圧電センサ4dが配置される。図中のX軸のプラス方向(圧電センサ2a及び2dが配置された方向)がドライバDにとっての右方向に対応し、マイナス方向(圧電センサ2b及び2cが配置された方向)が左方向に対応する。また、図中のY軸のプラス方向(圧電センサ2a及び2bが配置された方向)がドライバDにとっての前方向(ハンドルSwの位置する方向)に対応し、マイナス方向(圧電センサ2c及び2dが配置された方向)がドライバDにとっての後ろ方向に対応する。
【0023】
重心移動量算出部3は、圧電センサ4a〜4dの座標平面における配置位置の情報と、圧電センサ4a〜4dからの出力信号の値とを用いて、重心移動量gを算出する。具体的には、重心移動量算出部3は、X軸のプラス側の領域に配置された圧電センサ2a及び2dからの出力信号と、X軸のマイナス側の領域に配置された圧電センサ2b及び2cからの出力信号との差分を、ドライバDのX方向の重心移動量gxとして算出する。このように算出される重心移動量gxは、ドライバDの横(左右)方向の体の揺れの大きさ及び揺れの方向を示す波形として、重心移動量算出部3から出力される。
【0024】
また、重心移動量算出部3は、Y軸のプラス側の領域に配置された圧電センサ2a及び2bからの出力信号と、Y軸のマイナス側の領域に配置された圧電センサ2c及び2dからの出力信号との差分を、ドライバDのY方向の重心移動量gyとして算出する。このように算出される重心移動量gyは、ドライバDの縦(前後)方向の体の揺れの大きさ及び揺れの方向を示す波形として、重心移動量算出部3から出力される。
【0025】
図3に示す例では、姿勢センサ2が配置されたシートSt1に着座したドライバDの臀部が、姿勢センサ2の中央近辺の位置Cpに配置されている。この場合、姿勢センサ2を構成する4つの圧電センサ2a〜2dのそれぞれに対して、ドライバDの体による圧力が均一に加わる。この状態で、車両Vに加速度Gがかからなければ、ドライバDの体の揺れは殆ど発生しないため、重心移動量算出部3で算出される重心移動量gx及び重心移動量gyは“0”に近い値となる。
【0026】
これに対して、例えば車両Vに横(X)方向の加速度Gxがかかった状態においては、ドライバDの体は、加速度Gxがかかっている方向に追従するように左右に揺れる。つまり、重心移動量gyの出力値よりも重心移動量gxの出力値の方が大きくなる。このとき、ドライバDが居眠り等を行っていない通常の(覚醒した)状態であれば、人間が有する平衡感覚に基づく位置制御に基づいて、ドライバDは加速度Gxが加わっている方向とは逆の方向に無意識に体を移動させる(体を踏ん張る)。したがって、例えば、重心移動量gx及び車両Vの加速度Gxを、縦軸が車両VのX方向で横軸が時間を示すグラフにプロットした場合、重心移動量gxを示す波形と、車両Vの加速度Gxを示す波形との上記グラフの縦軸方向における差は小さくなる。
【0027】
一方、ドライバDに疲労が蓄積している状態や、居眠りをしている状態等においては、このような位置制御が効かず、車両Vに横方向の加速度Gxがかかった場合には、ドライバDの体は加速度Gxがかかった方向に大きく振れてしまう。したがって、重心移動量gxを示す波形は、車両Vの加速度Gxを示す波形に対して、上記グラフの縦軸方向において大きくずれたものとなる。つまり、ドライバDの重心移動量gと車両Vの加速度Vとのずれ量は、人間の平衡感覚に基づいて行われる位置制御の伝達特性を表したものであると考えることができる。
【0028】
本実施形態の運転者状態検知装置100は、ドライバDの重心移動量gと車両Vの加速度Vとのずれ量の大きさに基づいて、疲労度又は居眠り等のドライバDの状態を検知することを行う。具体的には、誤差信号生成部4がドライバDの重心移動量gと車両Vの加速度Vとのずれ量に応じた誤差信号を生成し、ドライバ状態判定部5が、誤差信号の値と、ドライバDの状態と予め対応づけられた閾値とを比較することにより、ドライバDの状態を判定する。
【0029】
[誤差信号生成部の構成例]
次に、誤差信号生成部4の構成例について説明する。誤差信号生成部4は、X方向誤差信号生成部40x及びY方向誤差信号生成部40yを有するが、いずれも構成は同じであるため、ここではX方向誤差信号生成部40xを例に挙げて説明する。
図4は、X方向誤差信号生成部40xの構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、X方向誤差信号生成部40xは、適応フィルタ41x、遅延回路部42x、減算器43x、ピークホールド回路部44x及び平均値算出部45xを備える。
【0030】
適応フィルタ41xの2つの入力端子は、それぞれ加速度センサ1(
図1参照)の出力端子(図示略)及び減算器43xの出力端子に接続される。適応フィルタ41xの出力端子は、減算器43xの「−」入力端子に接続される。遅延回路部42xの入力端子は、重心移動量算出部3(
図1参照)に接続され、遅延回路部42xの出力端子は、減算器43xの「+」入力端子に接続される。減算器43xの出力端子は、適応フィルタ41xの一方の入力端子及びピークホールド回路部44xの入力端子に接続される。ピークホールド回路部44xの出力端子は、平均値算出部45xの入力端子に接続される。
【0031】
適応フィルタ41xは、例えばLMS(最小平均二乗)フィルタで構成される。適応フィルタ41xは、自フィルタからの出力(以下、「フィルタ出力」と称する)と、加速度センサ1から入力される車両Vの加速度Gxとの差分を示す誤差信号gxの値が最小になるように、フィルタ係数を更新する。そして、更新後のフィルタ係数と、重心移動量算出部3から入力される重心移動量gxとの畳み込み演算を行い、演算の結果をフィルタ出力として出力する。適応フィルタ41xからのフィルタ出力は、減算器43xの「−」入力端子に入力される。
【0032】
遅延回路部42xは、加速度センサ1から入力される加速度Gxに対して、適応フィルタ41xでの演算時間に相当する時間分の遅延を加える。遅延が加えられた加速度Gxは、減算器43xの「+」入力端子に入力される。
【0033】
減算器43xは、遅延回路部42xから入力される加速度Gxから、適応フィルタ41xから入力されるフィルタ出力を減算して誤差信号exを生成する。この誤差信号exは、遅延回路部42xから入力される加速度Gxと、適応フィルタ41xでフィルタ係数との畳み込み演算が行われた重心移動量gxとの差分を示す信号である。したがって、誤差信号exの値は、重心移動量gxと加速度Gxとの差分が大きいほど大きな値となる。
【0034】
減算器43xで生成された誤差信号exは、適応フィルタ41xの入力端子及びピークホールド回路部44xの入力端子に入力される。ピークホールド回路部44xは、減算器43xから出力された誤差信号exのピーク値を保持する処理を行い、保持したピーク値を平均値算出部45xに出力する。平均値算出部45xは、ピークホールド回路部44xから出力されたピーク値を、例えば1秒間等の所定の時間分保持してその平均値を算出し、算出した平均値を誤差信号Oxとして出力する。つまり、本実施形態におけるピークホールド回路部44x及び平均値算出部45xは、誤差信号exに含まれる雑音成分を除去するLPF(Low Pass Fileter)としての機能を有する。
【0035】
誤差信号生成部4から出力される誤差信号Ox(又は誤差信号Oy)の値は、ドライバDが覚醒していて位置制御が働いている状態においては小さくなり、ドライバDに疲労が蓄積していたり居眠りしたりしている状態においては大きくなる。
【0036】
なお、本実施形態では、減算器43から出力される誤差信号exから誤差信号Ox(誤差信号eyから誤差信号Oy)を生成する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。適応フィルタ41x(又は41y(図示略))のフィルタ出力をピークホールド回路部44x(又は44y(図示略))に入力することにより、誤差信号Ox(又はOy)を生成するようにしてもよい。
【0037】
[ドライバ状態判定部の構成例]
次に、
図5を参照して、ドライバ状態判定部5の構成例について説明する。
図5は、ドライバ状態判定部5の構成例を示すブロック図である。ドライバ状態判定部5は、
図5に示すように、X方向ゲイン調整部51x、Y方向ゲイン調整部51y、加算器52及び閾値比較部53を備える。
【0038】
X方向ゲイン調整部51xの入力端子は、X方向誤差信号生成部40x(
図1参照)の平均値算出部45xの出力端子に接続され、X方向ゲイン調整部51xの出力端子は、加算器52の一方の入力端子に接続される。Y方向ゲイン調整部51yの入力端子は、Y方向誤差信号生成部40y(
図1参照)の平均値算出部(図示略)の出力端子に接続され、Y方向ゲイン調整部51yの出力端子は、加算器52の他方の入力端子に接続される。加算器52の出力端子は、閾値比較部53の入力端子に接続される。
【0039】
X方向ゲイン調整部51xは、X方向誤差信号生成部40xの平均値算出部45xから出力される誤差信号Oxに対して、予め定められたゲインを加えて出力する。Y方向ゲイン調整部51yは、Y方向誤差信号生成部40y(の平均値算出部)から出力される誤差信号Oyに対して、予め定められたゲインを加えて出力する。X方向ゲイン調整部51x及びY方向ゲイン調整部51yに設定される各ゲインは、運転者状態検知装置100を使用するユーザーによって任意の値に設定される。ユーザーは、X方向又はY方向のうちの、ドライバDの状態に関する情報をより重点的に判定したい方向対応するゲイン調整部51に対して、より多くのゲインを設定することができる。
【0040】
加算器52は、X方向ゲイン調整部51xでゲインが調整された誤差信号Oxと、X方向ゲイン調整部51xでゲインが調整された誤差信号Oyとを加算し、加算して得た誤差信号Oを閾値比較部53に出力する。
【0041】
閾値比較部53は、加算器52から出力された誤差信号Oと、予めドライバDの状態と対応付けて設定された閾値とを比較し、該比較の結果に基づいてドライバDの状態を判定する。例えば、誤差信号Oの値が、ドライバDの疲労が蓄積していると判定可能な閾値を超えていた場合、閾値比較部53は、ドライバDの疲労が蓄積していると判定する。また、誤差信号Oの値が、ドライバDが居眠り状態にあると判定可能な閾値を超えていた場合、閾値比較部53は、ドライバDが居眠り状態にあると判定する。閾値比較部53に設定する閾値は、実験等によって求まる最適な値を設定できるものとする。
【0042】
[各種効果]
上記実施形態では、加速度センサ1で得られた車両Vの加速度Gと、姿勢センサ2及び重心移動量算出部3で検出されたドライバDの重心移動量gとのずれ量の大きさを、ドライバ状態判定部5が閾値と比較することによって、ドライバDの状態を判定する。車両Vの加速度Gと、ドライバDの体の重心の移動量gとのずれ量を示す誤差信号Oは、上述したように、人間の平衡感覚に基づいて行われる位置制御の伝達特性を表す値であると考えられる。つまり、上記実施形態によれば、人間の位置制御の伝達特性を示す誤差信号Oの値の大きさに基づいて、疲労や居眠り等のドライバDの状態を精度良く検知することができる。
【0043】
また、上記実施形態によれば、位置制御の伝達特性から判断できるドライバDの状態であれば、例えば、病気等にかかっている状態等、他の状態も判定することができる。位置制御の効き方は、ドライバDの運転の熟練度によっても変わるものであるため、上記実施形態によれば、ドライバDの運転の熟練度(上手さ)も判定することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、誤差信号生成部4は適応フィルタ41を含んで構成される。適応フィルタ41は、ドライバDの重心移動量gとフィルタ係数との畳み込みにより得られるフィルタ出力と、車両Vの加速度Gとの差分を示す誤差信号eの値を最小とするためにフィルタ係数を更新する。そして、適応フィルタ41のフィルタ出力と、車両Vの加速度Gとの差分を示す誤差信号eから雑音成分を除去した信号である誤差信号Oの値に基づいて、ドライバ状態判定部5によってドライバDの状態が判定される。それゆえ、上記実施形態によれば、疲労や居眠り等のドライバDの状態を、容易な構成で精度良く検知することができる。
【0045】
また、ドライバDが覚醒していて、平衡感覚に基づく位置制御が効いている状態であっても、車両Vに加速度Gがかかってから(脳が加速度を検知してから)実際にドライバDの体の位置が制御されるまでの間には、所定のディレイが生ずる。上記実施形態では、適応フィルタ41がこのディレイを吸収できるため、ドライバDの状態を精度よく検知することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、車両Vの運転席であるシートSt1の座面に設けられた、圧電センサ2a〜2dを有する姿勢センサ2の出力値に基づいて、ドライバDの重心移動量gが算出される。そして、重心移動量gと車両Vの加速度Gとのずれ量の大きさに基づいて、ドライバDの状態が判定される。それゆえ、上記実施形態によれば、ドライバDの体にセンサ等を貼り付けたりすることなく非接触で、かつ、精度良くドライバDの状態を検知することができる。
【0047】
[各種変形例]
上記実施形態では、誤差信号生成部4がX方向誤差信号生成部40X及びY方向誤差信号生成部40Yを備え、それぞれがX方向における誤差信号OxとY方向における誤差信号Oyとを別々に生成する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、重心移動量算出部3において、重心移動量gx及び重心移動量gyを加算して重心移動量g′を生成し、この重心移動量g′に基づいて誤差信号生成部4が誤差信号Oを生成するように構成してもよい。重心移動量g′は、例えば下記の式1により算出することができる。
【0048】
重心移動量g′=A・Sin(θ)…式1
【0049】
上記式1における“A”は、極座標における“r”(動径)を示し、“θ”は偏角を示す。上記式1における“A”は、下記の式2によって求めることができ、“θ”は、下記の式3によって求めることができる。
【0052】
重心移動量算出部が重心移動量g′を算出する手法によれば、適応フィルタ41を重心移動量g′に対応して一つだけ設ければよいため、上記実施形態と比較して演算量を削減することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、加速度センサ1が検知した車両Vの加速度Gと、姿勢センサ2及び重心移動量算出部3が検出したドライバDの重心移動量gとのずれ量の情報に基づいて、ドライバ状態判定部5がドライバDの状態を検知する例を挙げた。しかしながら、本発明はこの例に限定されない。加速度センサ1が検知した車両Vの加速度Gと比較するドライバDの体の重心移動量gを検出するための姿勢センサは、他のセンサで構成してもよい。
【0054】
例えば、姿勢センサを、ドプラーセンサ等の電波センサで構成してもよい。姿勢センサをドプラーセンサで構成した場合の例を、
図6を参照して説明する。
図6は、ドプラーセンサ6を、ドライバDが着用するシートベルトSbに取り付けた状態を示す説明図である。
【0055】
図6に示す例では、ドプラーセンサ6は、ドライバDが着用するシートベルトSbにおけるドライバDの胸部と対応する位置に取り付けられる。ドプラーセンサ6は、ドライバDの体の方向に向けて電波(マイクロ波)を発射し、ドライバDの体に反射して戻ってきた電波の周波数と、発射した電波の周波数とを比較することにより(ドプラーセンシングにより)、ドライバDの体の動きを検出する。
【0056】
例えば、ドライバDの体がハンドルSw(
図2及び
図3参照)の方向に傾く等によって、ドプラーセンサ6とドライバDの体との間の距離が短くなると、ドプラーセンサ6によって検出されるドライバDの体の移動速度の極性はプラスになる。そして、ドプラーセンサ6によって検出される、ドライバDの体に反射して戻ってきた電波の周波数は高くなる。一方、ドライバDの体がハンドルSwから離れる方向に移動して、ドプラーセンサ6とドライバDの体との距離が遠くなると、ドプラーセンサ6によって検出されるドライバDの体の移動速度の極性はマイナスになる。そして、ドプラーセンサ6によって検出される、ドライバDの体に反射して戻ってきた電波の周波数は低くなる。
【0057】
つまり、
図6に示すドプラーセンサ6の出力値には、ドプラーセンサ6が取り付けられたシートベルトSbとドライバDの体との距離、及びドライバDの体の前後方向(Y方向)における移動方向及び移動速度の情報が含まれる。
【0058】
ドプラーセンサ6の出力値は、Y方向誤差信号生成部40y(
図1参照)に入力することができる。これにより、Y方向誤差信号生成部40yによって、ドプラーセンサ6の出力値と、加速度センサ1で得られた車両VのY方向の加速度Gyとが比較される。そして、Y方向誤差信号生成部40yからドライバ状態判定部5(
図1参照)に対して、両値の誤差の大きさを示す誤差信号ey(図示略)が出力される。ドライバ状態判定部5では、誤差信号eyから雑音成分が取り除かれた誤差信号Oyと閾値とが比較されることにより、ドライバDの状態が判定される。
【0059】
また、姿勢センサを、高分子厚膜センサ等の圧力センサや、微小振動検出マイク等で構成してもよい。姿勢センサを、高分子厚膜センサ又は微小振動検出マイクで構成した場合の例を、
図7を参照して説明する。
図7は、高分子厚膜センサ7又は微小振動検出マイク8を、ドライバDが着用するシートベルトSbに取り付けた状態を示す説明図である。
【0060】
図7に示す例では、高分子厚膜センサ7又は微小振動検出マイク8が、ドライバDが着用するシートベルトSbにおけるドライバDの腹部と対応する位置に取り付けられる。まず、シートベルトSbに高分子厚膜センサ7を取り付けた場合の例について説明する。高分子厚膜センサ7は、自センサに加わる圧力の増加に伴って、電気的抵抗値が減少する特性を有するセンサである。したがって、例えば、ドライバDの体がハンドルSwの方向に傾く等によって、シートベルトSb上の高分子厚膜センサ7にドライバDの体による圧力が加わると、高分子厚膜センサ7の抵抗値は減少する。一方、ドライバDの体がハンドルSwから離れる方向に移動して、シートベルトSbに加わるドライバDの体による圧力が減少すると、高分子厚膜センサ7の抵抗値もその分高くなる。つまり、
図7に示す高分子厚膜センサ7の出力値には、ドライバDの体の前後方向(Y方向)における移動方向及び移動量の情報が含まれる。
【0061】
次に、シートベルトSbに微小振動検出マイク8を取り付けた場合の例について説明する。微小振動検出マイク8は、集音した音の音圧の大きさを振動の大きさとして検出するセンサである。例えば、ドライバDの体がハンドルSwの方向に傾く等によって、シートベルトSbにドライバDの体が押しつけられると、微小振動検出マイク8により検出される振動のレベルは大きくなる。一方、ドライバDの体がハンドルSwから離れる方向に移動して、ドライバDの体がシートベルトSbから離れると、微小振動検出マイク8により検出される振動のレベルは小さくなる。つまり、
図7に示す微小振動検出マイク8の出力値にも、ドライバDの体の前後方向(Y方向)における移動方向及び移動量の情報が含まれる。
【0062】
また、上述した実施形態及び変形例では、ドライバDの体の動きに関する情報を取得するセンサを、車両VのシートSt1又はシートベルトSb等の車両Vの部品に取り付けた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドライバDの体に直接加速度センサを装着し、該加速度センサからの出力値と、車両Vに取り付けられた加速度センサ1からの出力値とを比較するように運転者状態検知装置を構成してもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために装置(運転者状態検知装置)の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。