特許第6831672号(P6831672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831672ヒドロキシル基含有シロキサン又はカルボキシ基含有シロキサンのエステル化方法
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  • 特許6831672-ヒドロキシル基含有シロキサン又はカルボキシ基含有シロキサンのエステル化方法 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831672
(24)【登録日】2021年2月2日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ヒドロキシル基含有シロキサン又はカルボキシ基含有シロキサンのエステル化方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/38 20060101AFI20210208BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20210208BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   C08G77/38
   C08G81/00
   C07F7/08 X
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-213209(P2016-213209)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-70790(P2018-70790A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕司
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−225358(JP,A)
【文献】 特開昭63−150288(JP,A)
【文献】 特開平07−017983(JP,A)
【文献】 特開平04−036211(JP,A)
【文献】 特開平01−040677(JP,A)
【文献】 特開平02−115110(JP,A)
【文献】 特開平02−080462(JP,A)
【文献】 国際公開第02/051939(WO,A1)
【文献】 特開2012−036348(JP,A)
【文献】 WAKASUGI,K. et al.,Simple, Mild, and Practical Esterification, Thioesterification, and Amide Formation Utilizing p-Toluenesulfonyl Chloride and N-Methylimidazole,Adv. Synth. Catal.,2003年,345,1209-1214
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00− 77/62
C08G 65/00− 67/04
C07F 7/00− 7/30
C08G 81/00− 85/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物(シロキサンを含む)と分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有する化合物(シロキサンを含む)とをエステル化する方法であって、前記化合物のうち少なくとも一方はシロキサンであり、i)カルボキシ基を有する化合物(シロキサンを含む)とハロゲン化スルホニルを反応させる工程、及び、ii)次いで、前記工程i)の反応生成物とヒドロキシル基を有する化合物(シロキサンを含む)とを反応させる工程を含むことを特徴とし、
ヒドロキシル基を有するシロキサンは、下記一般式(3a)又は(3b)又は(3c)で表される基を少なくとも一つ有し、
−(CHa’CHOH (3a)
(式(3a)中、a’は2〜20の整数である)
−(CHO(CO)(CO)c’H (3b)
(式(3b)中、bは3〜20の整数であり、c及びc’は、互いに独立に0〜100の整数であり、但し同時に0になることはない)
−(CHOCHC(CHOH)3−d (3c)
(式(3c)中、bは3〜20の整数であり、dは1〜3の整数であり、Rは、互いに独立に、水素原子、又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基である)
カルボキシ基を有するシロキサンは、下記一般式(4)で表される基を少なくとも一つ有する、
−(CHCOOH (4)
(式(4)中、aは2〜40の整数である)
前記エステル化方法。
【請求項2】
前記工程i)及びii)がアミン存在下で行われる、請求項1記載のエステル化方法。
【請求項3】
ハロゲン化スルホニルが下記一般式R−SO−Xで表される(Rは、アルキル基、アリール基、またはジアルキルアミノ基であり、Xはハロゲン原子である)、請求項1又は2記載のエステル化方法。
【請求項4】
分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有するシロキサンが、下記一般式(1a)で表される、請求項1に記載のエステル化方法
(式中、Rは、互いに独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、上記一般式(3a)又は(3b)又は(3c)で表される基であり、但し、Rの少なくとも1つは上記一般式(3a)又は(3b)又は(3c)で表される基であり、k1は2以上の整数であり、p1、q1、及びr1は、互いに独立に、0以上の整数であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)。
【請求項5】
シロキサンが下記一般式(1b)で表される、請求項4記載のエステル化方法
(式中、Rは上記の通りであり、p1’は0以上の整数である)。
【請求項6】
分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有するシロキサンが、下記一般式(2a)で表される、請求項1に記載のエステル化方法
(式中、Rは、互いに独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、上記一般式(4)で表される基であり、但し、Rの少なくとも1つは上記一般式(4)で表される基であり、k2は2以上の整数であり、p2、q2、及びr2は、互いに独立に、0以上の整数であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない)。
【請求項7】
シロキサンが一般式(2b)で表される、請求項6記載のエステル化方法。
(式中、Rは上記の通りであり、p2’は0以上の整数である)
【請求項8】
上記式(1a)において、k1は2〜42の整数であり、p1は0〜6000の整数であり、q1は0〜20の整数であり、及びr1は0〜10の整数である、請求項4記載のエステル化方法
【請求項9】
上記式(2a)において、k2は2〜42の整数であり、p2は0〜6000の整数であり、q2は0〜20の整数であり、及びr2は0〜10の整数である、請求項6記載のエステル化方法
【請求項10】
下記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シロキサンを製造する方法であって、Sx−(CHCOOHとハロゲン化スルホニルとを反応させる工程、及び、前記工程の反応生成物とHO(CO)−(CO)Hとを反応させて、下記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シロキサンを得る工程を含む、前記製造方法
Sx−(CHCOO−(CO)−(CO)−CO(CH−Sx
(5)
(上記式(5)中、nは50〜10000の整数であり、sは0≦s≦n/50を満たす整数であり、aは2〜40の整数であり、Sxは、互いに独立に、下記式(a)又は式(b)で表されるオルガノ(ポリ)シロキサニル基であり、
【化1】
【化2】
Rは、互いに独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、置換もしくは非置換の、炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、mは0〜350の整数であり、m’は0〜348の整数である)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子中にヒドロキシル基を有するシロキサンと分子中にカルボキシ基を有する化合物とをエステル化させる方法、又は、分子中にカルボキシ基を有するシロキサンと分子中にヒドロキシル基を有する化合物とをエステル化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレングリコールの両末端にオルガノ(ポリ)シロキサンを有する化合物の製造方法として、特許文献1には、ヘキサメチレンジイソシアネートやアジピン酸を使用してポリエチレングリコールとオルガノ(ポリ)シロキサンを繋ぐ方法が記載されている。しかし、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いた場合、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリエチレングリコールが交互に反応した生成物が生成し、得られる生成物の分子量をコントロールできない問題がある。これはアジピン酸を用いた場合も同様である。また、特許文献1には、片末端にエポキシ基を有するシロキサンとポリエチレングリコールを反応させた生成物も記載されており、該反応では得られる生成物の分子量をコントロールできるが、片末端にエポキシ基を有するシロキサンとポリエチレングリコールとの反応性が低く、原料が多く残る問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4825849号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】マクマリー有機化学(中)第6版 P.820−821
【非特許文献2】和光純薬工業株式会社 有機合成用 縮合剤 第2版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者らは、分子中にヒドロキシル基を有するシロキサンと分子中にカルボキシ基を有する化合物とをエステル化させる方法、又は、分子中にカルボキシ基を有するシロキサンと分子中にヒドロキシル基を有する化合物とをエステル化させる方法を検討した。
【0006】
カルボン酸とアルコールのエステル化は、以前からさまざまな方法が知られている。例えば、Fischerのエステル化(非特許文献1:マクマリー有機化学(中)第6版 P.820−821)、脱水縮合剤(非特許文献2:和光純薬工業株式会社 有機合成用 縮合剤 第2版)を利用する方法などがある。Fischerのエステル化は、通常、酸触媒の存在下で、カルボン酸とアルコールを脱水縮合させるものである。酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸などが挙げられる。反応は平衡化反応であるため、水を系外に出す必要がある。そのため、ベンゼンやトルエン溶媒を用い、Dean−Starkを使用して水を共沸留去する方法や、ソックスレーにモレキュラーシーブなどの脱水剤を入れ、溶媒を還流させながら水を取り除く方法なども行われている。また、脱水縮合剤は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1−カルボニルジイミダゾール、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物等が例示される。また、4−(ジメチルアミノ)ピリジンのような添加剤を添加することも可能である。カルボン酸とアルコール、脱水縮合剤、添加剤をジクロロメタン等の溶剤下で混合することで、エステル化が行える。
【0007】
しかし、ヒドロキシル基含有シロキサン又はカルボキシ基含有シロキサンのエステル化においては、Fischerのエステル化は強酸を使用するため、シロキサンの結合が切断されてしまう問題があった。また、脱水縮合剤を用いる方法でも、シロキサンと脱水縮合剤の相溶性が悪いためか、シロキサンの分子量が大きくなると反応が全く進行しなくなるという問題があった。
【0008】
現状、シロキサンを含む化合物の有効なエステル化方法が存在しない。
【0009】
従って本発明は、エステル化の反応中にシロキサンの分解が無く、シロキサンの分子量が大きくなっても反応を良好に進行させることができるエステル化方法、及びポリエチレングリコールの両末端にオルガノ(ポリ)シロキサンを有する化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、カルボキシ基を有する化合物とハロゲン化スルホニルを反応させる工程、次いで、前記工程の反応生成物とヒドロキシル基を有する化合物とを反応させる工程を含むエステル化方法によって、エステル化の反応中にシロキサン結合が切断されず、シロキサンの分子量が大きくなっても反応が良好に進行することを見出し、発明を成すに至った。
【0011】
即ち、本発明は、分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物(シロキサンを含む)と分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有する化合物(シロキサンを含む)とをエステル化する方法であって、前記化合物のうち少なくとも一方はシロキサンであり、i)カルボキシ基を有する化合物(シロキサンを含む)とハロゲン化スルホニルを反応させる工程、及び、ii)次いで、前記工程i)の反応生成物とヒドロキシル基を有する化合物(シロキサンを含む)とを反応させる工程を含むことを特徴とし、
ヒドロキシル基を有するシロキサンは、下記一般式(3a)又は(3b)又は(3c)で表される基を少なくとも一つ有し、
−(CHa’CHOH (3a)
(式(3a)中、a’は2〜20の整数である)
−(CHO(CO)(CO)c’H (3b)
(式(3b)中、bは3〜20の整数であり、c及びc’は、互いに独立に0〜100の整数であり、但し同時に0になることはない)
−(CHOCHC(CHOH)3−d (3c)
(式(3c)中、bは3〜20の整数であり、dは1〜3の整数であり、Rは、互いに独立に、水素原子、又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基である)
カルボキシ基を有するシロキサンは、下記一般式(4)で表される基を少なくとも一つ有する、
−(CHCOOH (4)
(式(4)中、aは2〜40の整数である)
前記エステル化方法を提供する。
【0012】
さらに本発明は、下記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シロキサンを製造する方法であって、Sx−(CHCOOHとハロゲン化スルホニルとを反応させる工程、及び、前記工程の反応生成物とHO(CO)−(CO)Hとを反応させて、下記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シロキサンを得る工程を含む、前記製造方法を提供する。
(上記式(5)中、nは50〜10000の整数であり、sは0≦s≦n/50を満たす整数であり、aは2〜40の整数であり、Sxは、互いに独立に、下記式(a)又は式(b)で表されるオルガノ(ポリ)シロキサニル基であり、
【化1】

【化2】

Rは、互いに独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、mは0〜350の整数であり、m’は0〜348の整数である)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法は、シロキサンを有する化合物のエステル化において、シロキサン結合を切断することなく、良好に反応させることができ、また、所望の分子量を有する化合物を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1における上の図は実施例2にてエステル化前のカルボキシ基含有シロキサンBのH−NMRスペクトルであり、図1における下の図はカルボキシ基含有シロキサンBをエステル化して得られた化合物のH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物と分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有する化合物とをエステル化する方法であって、前記化合物のうち少なくとも一方はシロキサンである、エステル化方法に関する。
より詳細には、分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有するシロキサンと分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有する化合物(シロキサンを含む)とのエステル化、又は、分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有するシロキサンと分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物(シロキサンを含む)とのエステル化に関する。
本発明のエステル化方法は、i)カルボキシ基を有する化合物とハロゲン化スルホニルを反応させる工程、及び、ii)次いで、前記工程i)の反応生成物とヒドロキシル基を有する化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0016】
ハロゲン化スルホニルは一般式:R−SO−Xで表される化合物である。前記式において、Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、例えば、アルキル基、アリール基、及びジアルキルアミノ基であり、好ましくは、メチル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、MeN−基であり、特に好ましくは、p−トリル基、MeN−基である。Xはハロゲン原子であり、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、好ましくは塩素である。
【0017】
1)ヒドロキシル基を有するシロキサン及びその他の化合物
分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有するシロキサンは公知のシロキサンであればよく、直鎖状、環状、分岐鎖状のいずれであってもよい。例えば、一般式(1a)で表される化合物である。
【0018】
上記式(1a)中、Rは、互いに独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基である。但し、Rの少なくとも1つは、ヒドロキシル基であり、あるいは1つ以上のヒドロキシル基を有する基である。炭素原子数1〜20の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられる。非置換の一価炭化水素基としてより詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、及びオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル、及びアリル等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、及びナフチル基等のアリール基;ベンジル基、及びフェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。また置換された一価炭化水素基としては、上記炭化水素基が有する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、アミノ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、及びヒドロキシル基等で置換されたものが挙げられる。Rとしては、好ましくは、水素原子、又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及び水素原子の一部がヒドロキシル基で置換された基である。更に好ましくは、水素原子、メチル基、ブチル基、又はフェニル基である。
【0019】
水素原子の一部がヒドロキシル基で置換された基とは、好ましくは、下記(3a)、(3b)、又は(3c)で表される。
−(CHa’CHOH (3a)

−(CHO(CO)(CO)c’H (3b)

−(CHOCHC(CHOH)3−d (3c)

上記式(3a)中、a’は、2〜20の整数であり、好ましくは2〜10の整数であり、特に好ましくは2又は10である。式(3b)中、bは、3〜20の整数であり、好ましくは3〜11の整数であり、特に好ましくは3又は11である。c及びc’は、互いに独立に0〜100の整数であり、好ましくは0〜50の整数であり、特に好ましくは0〜25の整数である。また、c及びc’は同時に0になることはない。一般式(3c)中、bは上記と同様である。dは1〜3の整数である。Rは水素原子、又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基である。非置換の炭素数1〜20のアルキル基は上記と同様である。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、又はフェニル基であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基、又はエチル基である。
【0020】
上記式(3b)において(CO)で表される構造は、分岐を有していても良い。好ましくは下記構造で表される。
(CHCHCHO)
(CMeHCHO)
(CHCMeHO)
【0021】
また上記式(3b)において(CO)と(CO)で表される構造の配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0022】
上記式(1a)において、k1、p1、q1、及びr1は、互いに独立に、0以上の整数であり、但し、k1+p1+q1+r1>0であり、上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されない。k1は好ましくは、2〜42の整数であり、より好ましくは、2〜22の整数であり、特に好ましくは、2〜13の整数である。p1は好ましくは、1〜6000の整数であり、より好ましくは、5〜1500の整数であり、特に好ましくは10〜300の整数である。q1は好ましくは、0〜20の整数であり、より好ましくは、0〜10の整数であり、特に好ましくは、0〜5の整数である。r1は好ましくは、0〜10の整数であり、より好ましくは、0〜5の整数であり、特に好ましくは、0〜3の整数である。
【0023】
1分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有するシロキサンは、好ましくは直鎖状であるのがよい。該直鎖状のシロキサンは、例えば、下記一般式(1b)で表されることができる。
(RSiO1/2)(RSiO2/2p1’(RSiO1/2 (1b)
は上記の通りである。p1’は0以上の整数であり、好ましくは0〜1000であり、特に好ましくは、1〜100である。
【0024】
分子中に少なくとも1つのヒドロキシル基を有する、シロキサン以外の化合物は、公知の化合物であればよく、第一級アルコール、第二級アルコール、及び第三級アルコールのいずれを有する化合物であってもよい。好ましくは、第一級アルコール又は第二級アルコールを有する化合物であり、特に好ましくは第一級アルコールを有する化合物である。ヒドロキシル基の数は1つ以上であればよく、好ましくは1〜6つ、更に好ましくは1〜3つ、特に好ましくは、1つである。
【0025】
該ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、フェノール、エチレングリコール、グリセリン、ポリオキシアルキレングリコール、糖類、及びポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0026】
2)カルボキシ基を有するシロキサン及びその他の化合物
1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有するシロキサンは公知のシロキサンであればよく、直鎖状、環状、分岐鎖状のいずれであってもよい。カルボキシ基の数は1つ以上であればよく、好ましくは1〜6つ、更に好ましくは1〜3つ、特に好ましくは、1つである。例えば、一般式(2a)で表される化合物である。
【0027】
上記式(2a)において、k2、p2、q2、及びr2は、順に上記(1a)で定義したk1、p1、q1、及びr1と同じ定義である。Rは、互いに独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、又は置換もしくは非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基で表される基であり、但し、Rの少なくとも1つは1つ以上のカルボキシ基を有する基である。炭素原子数1〜20の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられる。非置換の一価炭化水素基としてより詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。また置換された一価炭化水素基としては、上記炭化水素基が有する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、アミノ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、及びヒドロキシル基等で置換されたものが挙げられる。
【0028】
は、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、及びカルボキシ基を有する基であるのがよい。更に好ましくは、水素原子、メチル基、ブチル基、フェニル基である。
【0029】
カルボキシ基を有する基は好ましくは下記式(4)で表される。
−(CHCOOH (4)
式(4)中、aは2〜40の整数であり、好ましくは2〜20の整数であり、特に好ましくは2〜15である。
【0030】
1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有するシロキサンは、好ましくは直鎖状であるのがよい。該直鎖状のシロキサンは、例えば、下記一般式(2b)で表されることができる。
(RSiO1/2)(RSiO2/2p2’(RSiO1/2 (2b)
式(2b)においてRは上記の通りであり、p2’は0以上の整数であり、好ましくは0〜1000であり、特に好ましくは、1〜100である。
【0031】
分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有するシロキサン以外の化合物は、公知の化合物であればよく特に制限されるものでない。化合物が有するカルボキシ基の数は1つ以上であればよく、好ましくは1〜6つ、更に好ましくは1〜3つ、特に好ましくは1つである。
【0032】
該カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸が例示される。
【0033】
3)エステル化方法
本発明のエステル化方法は、上記の通り、i)カルボキシ基を有する化合物とハロゲン化スルホニルを反応させる工程、及び、ii)次いで、前記工程i)の反応生成物とヒドロキシル基を有する化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする。ハロゲン化スルホニルは上記の通り、一般式 R−SO−Xで表すことができる。R及びXは上述した通り。
【0034】
本発明のエステル化方法をより詳細に説明すると、カルボキシ基を有する化合物(仮に、R’COOHとする)とハロゲン化スルホニル(R−SO−X)を反応させることにより、下記式で表される化合物が生成する。
【化3】

次いで、上記反応生成物と、ヒドロキシル基を有する化合物(仮にR’’OHとする)とを反応させることにより、下記式で表されるエステル化合物を得ることができる。
【化4】
【0035】
上記工程i)及びii)はアミンの存在下で行われるのが好ましい。アミンは、例えば、トリメチルアミン、ジメチルブチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族アミン類;ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、4−ジメチルアミノピリジンなどの複素環式アミン類などが挙げられる。好ましくは、トリメチルアミン、ジメチルブチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ピリジン、イミダゾール、及び1−メチルイミダゾールであり、特に好ましくは、トリメチルアミン、ジメチルブチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、及び1−メチルイミダゾールである。
【0036】
工程i)は反応溶剤を用いてもよい。溶剤は特に制限されるものでないが、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、THF、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、DMF、及びアセトニトリル等が挙げられる。好ましくは、トルエン、キシレン、及びアセトニトリルである。
【0037】
工程i)における、カルボキシ基を有する化合物とハロゲン化スルホニルとの反応の温度は、0〜200℃、好ましくは、10〜100℃、特に好ましくは、15〜50℃である。反応時間は、5時間以内、好ましくは3時間以内である。
【0038】
工程ii)で使用するヒドロキシル基を有する化合物は、上記したヒドロキシル基を有するシロキサン及びその他の化合物のいずれであってもよい。但し、上記工程i)で使用した化合物がシロキサンでない場合は、本工程ii)で反応させる化合物はシロキサンである。
【0039】
工程ii)も反応溶剤を用いて行って良い。反応溶剤は工程i)で例示したものを使用することができ工程i)と同じ溶剤をそのまま用いても良い。工程ii)における反応温度は0〜200℃、好ましくは、10〜150℃、特に好ましくは、15〜100℃である。反応時間は、24時間以内、好ましくは10時間以内である。該工程ii)において、反応終了後に、アミンを取り除く工程や溶剤を取り除く工程を行っても良い。
【0040】
上記エステル化方法により、例えば、ポリアルキレングリコールの両末端にオルガノ(ポリ)シロキサンを有する化合物を得ることができる。特に好ましくは、下記式(5)で表される化合物を製造することができる。従って、本発明はさらに、下記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シロキサンを製造する方法であって、Sx−(CHCOOHとハロゲン化スルホニルとを反応させる工程、及び、前記工程の反応生成物とHO(CO)−(CO)Hとを反応させて、下記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シロキサンを得る工程を含む、前記製造方法を提供する。
(上記式(5)中、nは50〜10000の整数であり、sは0≦s≦n/50を満たす整数であり、aは2〜40の整数であり、Sxは、互いに独立に、下記式(a)又は式(b)で表されるオルガノ(ポリ)シロキサニル基であり、
【化5】

【化6】

Rは、互いに独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、mは0〜350の整数であり、m’は0〜348の整数である)
【0041】
Rは水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜20の炭化水素基である。炭素原子数1〜20の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基が挙げられる。非置換の一価炭化水素基としてより詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。また置換された一価炭化水素基としては、上記炭化水素基が有する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、アミノ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、又はヒドロキシル基等で置換されたものが挙げられる。
【0042】
Rとしては、好ましくは、炭素原子数1〜6の炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はフェニル基である。更に好ましくは、メチル基、ブチル基、又はフェニル基である。
【0043】
上記式(5)で表される化合物において(CO)で表される構造は分岐を有していてよい。詳細には、以下のいずれかであるのが好ましい。
(CHCHCHO)
(CMeHCHO)
(CHCMeHO)
【0044】
また、式(1)において(CO)と(CO)で表される構造の配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0045】
mは0〜350の整数である。好ましくは1〜150、より好ましくは2〜80である。m’は0〜348の整数である。好ましくは0〜148、より好ましくは0〜78である。nは50〜10000の整数である。好ましくは80〜5000、より好ましくは100〜1000である。sは0≦s≦n/50を満たす整数である。
【0046】
aは2〜40の整数である。好ましくは2〜20、より好ましくは2〜15である。
【0047】
本発明のエステル化方法に従うことにより、カルボキシ基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンと、ポリオキシアルキレングリコールとのエステル化を良好に行うことができる。またシロキサン結合の切断がおこらず、所望の分子量を有するポリエーテル変性シロキサンを与えることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0049】
下記において、配合はモル当量で表している。カルボキシ基が分子中に2つ以上ある場合は、カルボキシ基1つ当たりの分子量からモル当量を算出している。同様にヒドロキシル基が分子中に2つ以上ある場合は、ヒドロキシル基1つ当たりの分子量からモル当量を算出している。例えば、HO−(CO)−Hで示されるPEG20000(分子量20000)は、水酸基価(ヒドロキシル基1つ当たりの分子量)10000g/molであり、これからモル当量を計算している。
【0050】
下記実施例及び比較例において使用した各化合物は以下の通りである。
【0051】
1)カルボキシ基含有化合物
・シロキサンA:MeSiOSiMe−(CH10COOH
・シロキサンB:BuMeSi(SiMe2/2−(CH10COOH
・シロキサンC:BuMeSi(SiMe2/261−(CH10COOH
・化合物D:酢酸
・化合物E:ラウリン酸
・化合物F:安息香酸
・化合物G:マロン酸
【0052】
2)ヒドロキシル基含有化合物
・化合物A:PEG20000
・化合物B:メタノール
・化合物C:ステアリルアルコール
・化合物D:IPA
・シロキサンE:
BuMeSi(SiMe2/261−(CHOCOH
・シロキサンF:
BuMeSi(SiMe2/261−(CHOCHC(CHOH)
・シロキサンG:
BuMeSi(SiMe2/261−(CHCHOH
・シロキサンH:
BuMeSi(SiMe2/261−(CHO(CO)(CO)H
【0053】
[実施例1]
カルボキシ基含有シロキサンA 1.75モル当量、p−トルエンスルホニルクロライド 1.75モル当量、1−メチルイミダゾール 5.25モル当量をトルエン溶剤下において、室温で30分混合した後、ヒドロキシル基含有化合物A(PEG20000)1.0モル当量を添加して80℃で20時間反応させた。反応溶剤を80℃/10mmHgで留去した。得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させ、固体状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−(CO)−CO(CH10−Sx
nはポリエチレングリコールの平均分子量が20000となる数である。SxはMeSiOSiMe−である。
【0054】
[実施例2]
実施例1において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンBに替えた他は実施例1を繰り返し、固体状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−(CO)−CO(CH10−Sx
nはポリエチレングリコールの平均分子量が20000となる数である。SxはBuMeSi(SiMe2/2−である。
なお、該実施例2について、エステル化前のカルボキシ基含有シロキサンBのH−NMRスペクトルを図1の上段に示し、カルボキシ基含有シロキサンBをエステル化して得られた化合物のH−NMRスペクトルを図1の下段に示す。図1において、Si−Meのピークを示す0ppmの値がエステル化の前後で変わっていないため、シロキサン結合は切断されていないとわかる。
【0055】
[実施例3]
実施例1において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンCに替えた他は実施例1を繰り返し、固体状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−(CO)−CO(CH10−Sx
nはポリエチレングリコールの平均分子量が20000となる数である。SxはBuMeSi(SiMe2/261−である。
【0056】
[実施例4]
カルボキシ基含有シロキサンA 1.75モル当量、p−トルエンスルホニルクロライド 1.75モル当量、1−メチルイミダゾール 5.25モル当量をトルエン溶剤下において、室温で30分混合した後、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)1.0モル当量を添加して80℃で20時間反応させた。塩化アンモニウム 3.75モル当量と水を加えてクエンチを行った。水相を捨て、更に水を加えて水洗を3回行った。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水を行った後に、反応溶剤を80℃/10mmHgで留去し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−CH
SxはMeSiOSiMe−である。
【0057】
[実施例5]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンBに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−CH
SxはBuMeSi(SiMe2/2−である。
【0058】
[実施例6]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンCに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析より目的化合物であることが確認された。また、GPCにより目的物のシロキサン結合が分断されていないことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−CH
SxはBuMeSi(SiMe2/261−である。
【0059】
[実施例7〜9]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有化合物C(ステアリルアルコール)に替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−Q
Qはステアリルアルコール残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0060】
[実施例10〜12]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有化合物D(IPA)に替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−Q
QはIPA残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0061】
[実施例13〜15]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンEに替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−Q
QはシロキサンEの残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0062】
[実施例16〜18]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンFに替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH10COO−Q
QはシロキサンFの残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0063】
[実施例19〜22]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンEに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例19〜21で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンEの残基である。
実施例22で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH−COO−Sx
SxはシロキサンEの残基である。
【0064】
[実施例23〜26]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンFに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例23〜25で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンFの残基である。
実施例26で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH−COO−Sx
SxはシロキサンFの残基である。
【0065】
[実施例27〜30]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンGに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例27〜29で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンGの残基である。
実施例30で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH−COO−Sx
SxはシロキサンGの残基である。
【0066】
[実施例31〜34]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンHに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例31〜33で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンHの残基である。
実施例34で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH−COO−Sx
SxはシロキサンHの残基である。
【0067】
[比較例1〜3](脱水縮合剤によるエステル化)
ヒドロキシル基含有化合物A(PEG20000)1.0モル当量、カルボキシ基含有シロキサン(A、B、又はC)1.1モル当量、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 2.2モル当量、アセトニトリル(ヒドロキシル基含有化合物Aとカルボキシ基含有シロキサンの合計重量の50重量%となる量)を80℃で8時間反応させた。反応溶剤を80℃/10mmHgで留去した。得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させた。得られた生成物をH−NMRにより分析したところ、エステル化が完全に進行しておらず、目的の生成物を得ることができなかった。
【0068】
[比較例4〜6](脱水縮合剤によるエステル化)
比較例1〜3の各々において、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の代わりにN,N−ジイソプロピルカルボジイミドを用いた他は比較例1〜3の各々を繰り返した。得られた生成物をH−NMRにより分析したところ、エステル化が完全に進行しておらず、目的の生成物を得ることができなかった。
【0069】
[比較例7〜9](Fischerのエステル化)
ヒドロキシル基含有化合物A(PEG20000)1.0モル当量、カルボキシ基含有シロキサン(A、B、又はC)1.1モル当量、p−トルエンスルホン酸 0.1モル当量をトルエン溶剤下において、110℃で8時間加熱しながら、Dean−Starkによって生成する水を系外に出した。キョーワード500を添加して、中和を行った後に、キョウワード500をろ過で取り除いた。その後、反応溶剤を80℃/10mmHgで留去した。得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させた。得られた生成物をH−NMRにより分析したところ、シロキサン結合が分断されており、目的の生成物を得ることができなかった。
【0070】
実施例1〜34及び比較例1〜9について、カルボキシ基含有化合物とヒドロキシル基含有化合物の組合せ及びエステル化反応の結果を下記表1及び2にまとめる。









【0071】
【表1】








【0072】
【表2】
【0073】
表2に示す通り、脱水縮合剤によるエステル化ではエステル化が完全に進行せず目的化合物を得られなかった。また、Fischerのエステル化反応では、シロキサン結合が分断された。これに対し表1に示す通り、本発明のエステル化方法によれば、シロキサン結合を分断することなく、シロキサンの分子量が大きくなっても良好にエステル化反応を進行させることができる。
【0074】
[比較例10]
PEG20000(分子量20000) 1.0モル当量、BuMeSi(OSiMe−COCOH 1.0モル当量、ヘキサメチレンジイソシアネート 1.04モル当量、及びジブチルジラウレートスズ 0.012モル当量をトルエン溶媒中で、80℃、8時間加熱した。その後、トルエンを80℃/10mmHgで留去し、得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させ、白色固体の生成物を得た。GPC分析を行ったところ、多峰性のピーク形状となり、所望の分子量の化合物が得られなかった。
【0075】
[比較例11]
PEG20000(分子量20000) 1.0モル当量、下記一般式で表される、エポキシ基を有する化合物
【化7】

1.5モル当量、ラウリンサンカリウム 0.315モル当量をトルエン溶媒中で、110℃、24時間加熱した。その後は、トルエンを80℃/10mmHgで留去し、得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させ、白色固体の生成物を得た。H−NMRを測定したところ、シロキサンのピークがほとんど観測されず、シロキサンが反応していないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の方法は、シロキサンを有する化合物のエステル化において、シロキサン結合を切断することなく、所望の分子量を有する化合物、特にはポリエーテル変性シロキサンを効率よく製造することができる。該方法は、シロキサンが利用されるあらゆる分野、例えば、化粧品、樹脂改質、塗料、離型剤、粘着剤、及び剥離紙等において有用である。
図1