【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0049】
下記において、配合はモル当量で表している。カルボキシ基が分子中に2つ以上ある場合は、カルボキシ基1つ当たりの分子量からモル当量を算出している。同様にヒドロキシル基が分子中に2つ以上ある場合は、ヒドロキシル基1つ当たりの分子量からモル当量を算出している。例えば、HO−(C
2H
4O)
n−Hで示されるPEG20000(分子量20000)は、水酸基価(ヒドロキシル基1つ当たりの分子量)10000g/molであり、これからモル当量を計算している。
【0050】
下記実施例及び比較例において使用した各化合物は以下の通りである。
【0051】
1)カルボキシ基含有化合物
・シロキサンA:Me
3SiOSiMe
2−(CH
2)
10COOH
・シロキサンB:BuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
9−(CH
2)
10COOH
・シロキサンC:BuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
61−(CH
2)
10COOH
・化合物D:酢酸
・化合物E:ラウリン酸
・化合物F:安息香酸
・化合物G:マロン酸
【0052】
2)ヒドロキシル基含有化合物
・化合物A:PEG20000
・化合物B:メタノール
・化合物C:ステアリルアルコール
・化合物D:IPA
・シロキサンE:
BuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
61−(CH
2)
3OC
2H
4OH
・シロキサンF:
BuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
61−(CH
2)
3OCH
2C(CH
2OH)
2C
2H
5
・シロキサンG:
BuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
61−(CH
2)
2CH
2OH
・シロキサンH:
BuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
61−(CH
2)
3O(C
2H
4O)(C
3H
6O)H
【0053】
[実施例1]
カルボキシ基含有シロキサンA 1.75モル当量、p−トルエンスルホニルクロライド 1.75モル当量、1−メチルイミダゾール 5.25モル当量をトルエン溶剤下において、室温で30分混合した後、ヒドロキシル基含有化合物A(PEG20000)1.0モル当量を添加して80℃で20時間反応させた。反応溶剤を80℃/10mmHgで留去した。得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させ、固体状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−(C
2H
4O)
n−CO(CH
2)
10−Sx
nはポリエチレングリコールの平均分子量が20000となる数である。SxはMe
3SiOSiMe
2−である。
【0054】
[実施例2]
実施例1において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンBに替えた他は実施例1を繰り返し、固体状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−(C
2H
4O)
n−CO(CH
2)
10−Sx
nはポリエチレングリコールの平均分子量が20000となる数である。SxはBuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
9−である。
なお、該実施例2について、エステル化前のカルボキシ基含有シロキサンBの
1H−NMRスペクトルを
図1の上段に示し、カルボキシ基含有シロキサンBをエステル化して得られた化合物の
1H−NMRスペクトルを
図1の下段に示す。
図1において、Si−Meのピークを示す0ppmの値がエステル化の前後で変わっていないため、シロキサン結合は切断されていないとわかる。
【0055】
[実施例3]
実施例1において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンCに替えた他は実施例1を繰り返し、固体状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−(C
2H
4O)
n−CO(CH
2)
10−Sx
nはポリエチレングリコールの平均分子量が20000となる数である。SxはBuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
61−である。
【0056】
[実施例4]
カルボキシ基含有シロキサンA 1.75モル当量、p−トルエンスルホニルクロライド 1.75モル当量、1−メチルイミダゾール 5.25モル当量をトルエン溶剤下において、室温で30分混合した後、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)1.0モル当量を添加して80℃で20時間反応させた。塩化アンモニウム 3.75モル当量と水を加えてクエンチを行った。水相を捨て、更に水を加えて水洗を3回行った。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水を行った後に、反応溶剤を80℃/10mmHgで留去し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−CH
3
SxはMe
3SiOSiMe
2−である。
【0057】
[実施例5]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンBに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−CH
3
SxはBuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
9−である。
【0058】
[実施例6]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有シロキサンCに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析より目的化合物であることが確認された。また、GPCにより目的物のシロキサン結合が分断されていないことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−CH
3
SxはBuMe
2Si(SiMe
2O
2/2)
61−である。
【0059】
[実施例7〜9]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有化合物C(ステアリルアルコール)に替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−Q
Qはステアリルアルコール残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0060】
[実施例10〜12]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有化合物D(IPA)に替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−Q
QはIPA残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0061】
[実施例13〜15]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンEに替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−Q
QはシロキサンEの残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0062】
[実施例16〜18]
実施例4〜6の各々において、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンFに替えた他は実施例4〜6の各々を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−(CH
2)
10COO−Q
QはシロキサンFの残基であり、SxはシロキサンA、B、又はCの残基である。
【0063】
[実施例19〜22]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンEに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例19〜21で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンEの残基である。
実施例22で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH
2−COO−Sx
SxはシロキサンEの残基である。
【0064】
[実施例23〜26]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンFに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例23〜25で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンFの残基である。
実施例26で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH
2−COO−Sx
SxはシロキサンFの残基である。
【0065】
[実施例27〜30]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンGに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例27〜29で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンGの残基である。
実施例30で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH
2−COO−Sx
SxはシロキサンGの残基である。
【0066】
[実施例31〜34]
実施例4において、カルボキシ基含有シロキサンAをカルボキシ基含有化合物D(酢酸)、E(ラウリン酸)、F(安息香酸)、又はG(マロン酸)に替え、ヒドロキシル基含有化合物B(メタノール)をヒドロキシル基含有シロキサンHに替えた他は実施例4を繰り返し、液状生成物を得た。
1H−NMR分析よりシロキサン結合は分断されておらず、目的化合物が得られたことが確認された。
実施例31〜33で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Q−COO−Sx
Qは酢酸、ラウリン酸、又は安息香酸の残基であり、SxはシロキサンHの残基である。
実施例34で得られた生成物の構造は以下の通りである。
Sx−COO−CH
2−COO−Sx
SxはシロキサンHの残基である。
【0067】
[比較例1〜3](脱水縮合剤によるエステル化)
ヒドロキシル基含有化合物A(PEG20000)1.0モル当量、カルボキシ基含有シロキサン(A、B、又はC)1.1モル当量、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 2.2モル当量、アセトニトリル(ヒドロキシル基含有化合物Aとカルボキシ基含有シロキサンの合計重量の50重量%となる量)を80℃で8時間反応させた。反応溶剤を80℃/10mmHgで留去した。得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させた。得られた生成物を
1H−NMRにより分析したところ、エステル化が完全に進行しておらず、目的の生成物を得ることができなかった。
【0068】
[比較例4〜6](脱水縮合剤によるエステル化)
比較例1〜3の各々において、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の代わりにN,N−ジイソプロピルカルボジイミドを用いた他は比較例1〜3の各々を繰り返した。得られた生成物を
1H−NMRにより分析したところ、エステル化が完全に進行しておらず、目的の生成物を得ることができなかった。
【0069】
[比較例7〜9](Fischerのエステル化)
ヒドロキシル基含有化合物A(PEG20000)1.0モル当量、カルボキシ基含有シロキサン(A、B、又はC)1.1モル当量、p−トルエンスルホン酸 0.1モル当量をトルエン溶剤下において、110℃で8時間加熱しながら、Dean−Starkによって生成する水を系外に出した。キョーワード500を添加して、中和を行った後に、キョウワード500をろ過で取り除いた。その後、反応溶剤を80℃/10mmHgで留去した。得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させた。得られた生成物を
1H−NMRにより分析したところ、シロキサン結合が分断されており、目的の生成物を得ることができなかった。
【0070】
実施例1〜34及び比較例1〜9について、カルボキシ基含有化合物とヒドロキシル基含有化合物の組合せ及びエステル化反応の結果を下記表1及び2にまとめる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示す通り、脱水縮合剤によるエステル化ではエステル化が完全に進行せず目的化合物を得られなかった。また、Fischerのエステル化反応では、シロキサン結合が分断された。これに対し表1に示す通り、本発明のエステル化方法によれば、シロキサン結合を分断することなく、シロキサンの分子量が大きくなっても良好にエステル化反応を進行させることができる。
【0074】
[比較例10]
PEG20000(分子量20000) 1.0モル当量、BuMe
2Si(OSiMe
2)
9−C
3H
6OC
2H
4OH 1.0モル当量、ヘキサメチレンジイソシアネート 1.04モル当量、及びジブチルジラウレートスズ 0.012モル当量をトルエン溶媒中で、80℃、8時間加熱した。その後、トルエンを80℃/10mmHgで留去し、得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させ、白色固体の生成物を得た。GPC分析を行ったところ、多峰性のピーク形状となり、所望の分子量の化合物が得られなかった。
【0075】
[比較例11]
PEG20000(分子量20000) 1.0モル当量、下記一般式で表される、エポキシ基を有する化合物
【化7】
1.5モル当量、ラウリンサンカリウム 0.315モル当量をトルエン溶媒中で、110℃、24時間加熱した。その後は、トルエンを80℃/10mmHgで留去し、得られた固体をよく砕き、エタノールを加えて1時間攪拌した。その後、ろ紙でろ過し、さらにエタノールで固体を洗浄することで、未反応の原料を除去した。最後にエタノールを30℃/10mmHgの減圧乾燥機で乾燥させ、白色固体の生成物を得た。
1H−NMRを測定したところ、シロキサンのピークがほとんど観測されず、シロキサンが反応していないことがわかった。