(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0016】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るデータ処理装置(1,1A〜1C)は、鉛蓄電池(7)の回復充電の定電圧充電期間における充電電流の計測値(131)を取得する計測値取得部(12)と、前記定電圧充電期間における充電電流に関する第1パラメータと前記鉛蓄電池の劣化度合いを示す第2パラメータとの対応関係を表す対応関係データ(132,132A,132C)を記憶する記憶部(13)と、前記取得部によって取得した前記計測値と、前記記憶部に記憶された前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定部(14,14A〜14C)と、を有することを特徴とする。
【0017】
〔2〕上記データ処理装置(1)において、前記第1パラメータは、前記定電圧充電期間の末期における充電電流を示す回復充電末期電流であって、前記判定部(14)は、前記定電圧充電期間において充電電流が所定の閾値(Ith)より低下してから所定時間(t1)経過したときの充電電流の計測値を前記回復充電末期電流の計測値とし、当該計測値と前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定してもよい。
【0018】
〔3〕上記データ処理装置(1A)において、前記第1パラメータは、前記定電圧充電期間に充電電流が第1閾値(Ith1)に到達してから前記第1閾値よりも小さい第2閾値(Ith2)に到達するまでの時間を示す充電電流収束時間であって、前記判定部(14A)は、前記定電圧充電期間に充電電流が前記第1閾値に到達してから前記第2閾値に到達するまでの時間(t2)を計測する計時部(140A)と、前記計時部によって計測した前記時間の計測値と前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定処理部(141A)とを含んでもよい。
【0019】
〔4〕上記データ処理装置(1B)において、前記第1パラメータは、前記定電圧充電期間の末期における充電電流を示す回復充電末期電流であって、前記計測値取得部は、前記鉛蓄電池の充電電流と前記鉛蓄電池の放電電流とを取得し、前記判定部(14B)は、前記鉛蓄電池の充電電流の積算値を算出する充電電流積算部(142)と、前記鉛蓄電池の放電電流の積算値を算出する放電電流積算部(143)と、前回実施した回復充電が完了してからの前記充電電流の積算値と前回実施した回復充電が完了してからの前記放電電流の積算値との比率が所定値となったときの前記鉛蓄電池の充電電流の計測値を前記回復充電末期電流の計測値とし、当該計測値と前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定処理部(141B)と、を含んでもよい。
【0020】
〔5〕上記データ処理装置(1C)において、前記判定部は、前記定電圧充電期間における経過時間と充電電流の計測値とに基づいて、前記定電圧充電期間における前記充電電流の時間に対する変化を示す関数(式(1))を推定する関数推定部(144)と、前記関数推定部によって推定した関数に基づいて算出した前記第1パラメータと、前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定処理部(141C)と、を含んでもよい。
【0021】
〔6〕本発明の代表的な実施の形態に係る鉛蓄電池の劣化状態の判定方法は、前記鉛蓄電池の回復充電の定電圧充電期間における充電電流の計測値を取得する計測値取得ステップと、前記計測値取得ステップによって取得した前記計測値と、記憶部に記憶された前記定電圧充電期間における充電電流に関する第1パラメータと前記鉛蓄電池の劣化度合いを示す第2パラメータとの対応関係を表す対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
〔7〕上記診断方法において、前記第1パラメータは、前記定電圧充電期間の末期における充電電流を示す回復充電末期電流であって、前記判定ステップは、前記定電圧充電期間において充電電流が所定の閾値より低下してから所定時間経過したときの充電電流の計測値を前記回復充電末期電流の計測値とし、当該計測値と前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定するステップを含むことを特徴とする。
【0023】
〔8〕上記診断方法において、前記第1パラメータは、前記定電圧充電期間に充電電流が第1閾値に到達してから前記第1閾値よりも小さい第2閾値に到達するまでの時間を示す充電電流収束時間であって、前記判定ステップは、前記定電圧充電期間に充電電流が前記第1閾値に到達してから前記第2閾値に到達するまでの時間を計測する計時ステップと、前記計時ステップによって計測した前記時間の計測値と前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定処理ステップとを含んでもよい。
【0024】
〔9〕上記診断方法において、前記第1パラメータは、前記定電圧充電期間の末期における充電電流を示す回復充電末期電流であって、前記計測値取得ステップは、前記鉛蓄電池の充電電流と放電電流とを取得し、前記判定ステップは、前記鉛蓄電池の充電電流の積算値を算出する充電電流積算ステップと、前記鉛蓄電池の放電電流の積算値を算出する放電電流積算ステップと、前回実施した回復充電が完了してからの前記充電電流の積算値と前回実施した回復充電が完了してからの前記放電電流の積算値との比率が所定値となったときの前記鉛蓄電池の充電電流の計測値を前記回復充電末期電流の計測値とし、当該計測値と前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定処理ステップと、を含んでもよい。
【0025】
〔10〕上記診断方法において、前記判定ステップは、前記定電圧充電期間における経過時間と充電電流の計測値とに基づいて、前記定電圧充電期間における前記充電電流の時間に対する変化を示す関数を推定する関数推定ステップと、前記関数推定ステップによって推定した関数に基づいて算出した前記第1パラメータと、前記対応関係データとに基づいて、前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定処理ステップと、を含んでもよい。
【0026】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0027】
≪本発明に係る鉛蓄電池の劣化診断方法の概要≫
先ず、本発明に係る鉛蓄電池の劣化診断方法の概要について説明する。
本願発明者らは、鉛蓄電池の回復充電の終了間際の充電電流、換言すれば、回復充電における定電圧(CV)充電期間の末期の充電電流(以下、「回復充電末期電流」とも称する。)の値と鉛蓄電池の充放電サイクル数との間に相関があり、回復充電末期電流から鉛蓄電池の充放電サイクルに相当した鉛蓄電池の劣化度合いを判定することが可能であることを見出した。
【0028】
図1は、鉛蓄電池の充放電サイクル数と回復充電末期電流との関係を示す図である。
図1には、回復充電の完了条件を「CV充電への切り替わり後、充電電流が0.5A以下になったとき」、または「CV充電への切り替わり後、12時間経過したとき」とした場合に、回復充電の完了間際の回復充電末期電流を計測して、充放電サイクル数との対応関係をグラフにしたものである。同図において、縦軸は鉛蓄電池の回復充電末期電流を表し、横軸は鉛蓄電池の充放電サイクル数を表している。
同図に示すように、回復充電末期電流は、鉛蓄電池の充放電サイクル数とともに増加する傾向にある。
【0029】
図2は、鉛蓄電池の充放電サイクル数と蓄電池容量との関係を示す図である。
同図において、縦軸は鉛蓄電池の蓄電池容量を表し、横軸は鉛蓄電池の充放電サイクル数を表している。
同図に示すように、蓄電池容量は、鉛蓄電池の充放電サイクル数が増加するほど低下する傾向にある。
【0030】
図1および
図2に基づいて、鉛蓄電池の回復充電末期電流と蓄電池容量の関係をグラフで表すと、
図3に示すようになる。
図3において、縦軸は鉛蓄電池の回復充電末期電流を表し、横軸は鉛蓄電池の蓄電池容量を表している。
図3から理解されるように、回復充電末期電流と鉛蓄電池の蓄電池容量とは相関があり、回復充電末期電流が増加するほど鉛蓄電池の蓄電池容量が低下する傾向がある。
【0031】
したがって、鉛蓄電池の回復充電中に回復充電末期電流を計測し、その計測値に基づいて、予め求めておいた回復充電末期電流と鉛蓄電池の蓄電池容量との対応関係を参照することにより、そのときの鉛蓄電池の蓄電池容量、すなわち鉛蓄電池の劣化状態を判定することが可能となる。
【0032】
また、回復充電末期電流の増加は、回復充電が完了するまでの時間、すなわち、CV充電への切り替わり後、充電電流が所定の電流値まで低下するまでの時間が長くなることを意味する。
【0033】
図4は、鉛蓄電池の充放電サイクル数と充電電流が所定の電流値まで低下するまでの時間との関係を示す図である。
図4において、縦軸は鉛蓄電池の充放電サイクル数を表し、横軸は、回復充電におけるCV充電の期間に、充電電流が第1閾値Ith1から第2閾値Ith2(<Ith1)まで低下するまでの時間(以下、「充電電流収束時間」とも称する。)を表している。
図4に示すように、鉛蓄電池の充放電サイクル数の増加に伴い、充電電流収束時間が増加する傾向にある。
【0034】
したがって、鉛蓄電池の回復充電中に充電電流収束時間を計測し、その計測値に基づいて、予め求めておいた充電電流収束時間と鉛蓄電池の充放電サイクル数(または、充放電サイクル数に対応する蓄電池容量)との対応関係を参照することにより、そのときの鉛蓄電池の劣化状態を判定することが可能となる。
以下、上述した鉛蓄電池の劣化診断方法の具体的な実施の形態について、説明する。
【0035】
≪実施の形態1≫
図5は、本発明の実施の形態1に係る蓄電システムの構成を示す図である。
同図に示される蓄電システム100は、例えばサイクルユースの鉛蓄電池を備えた蓄電システムである。蓄電システム100は、例えば、通常時に電力供給部3(商用電源)から負荷8に給電し、停電の発生時には、電源バックアップ用の鉛蓄電池7から負荷8に給電する。
【0036】
電力供給部3は、蓄電システム100および負荷8に電力を供給する機能部である。電力供給部3は、例えば、商用電源である。なお、電力供給部3は、商用電源に加えて、太陽光発電(PV:Photovoltaics)等の再生可能エネルギーに基づいて電力を発生させる発電設備を有していてもよい。
【0037】
蓄電システム100は、蓄電池7、PCS(Power Conditioning System)4、電流センサ5、電圧センサ6、監視装置1、および制御装置2を備えている。
【0038】
蓄電池7は、電力を充放電可能に構成された鉛蓄電池である。蓄電池7は、単一のセル、或いは複数のセルを直列に接続して構成される蓄電モジュールである。以下、蓄電池7を「鉛蓄電池7」とも表記する。
【0039】
PCS4は、後述する制御装置2によって制御され、電力供給部3、鉛蓄電池7、および負荷8の間で相互に電力を変換し、電力供給部3、鉛蓄電池7、および負荷8の間での電力の授受を制御する電力変換部である。例えば、PCS4は、電力供給部3からの交流電力(AC)を直流電力(DC)に変換し、鉛蓄電池7に供給する。PCS4は、例えば、DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ(AC/DC)、およびスイッチ回路等を含んで構成されている。
【0040】
電流センサ5および電圧センサ6は、鉛蓄電池7の状態を示す物理量を計測するための機能部である。電流センサ5は、鉛蓄電池7の充電電流および放電電流を計測する。電圧センサ6は、鉛蓄電池7の出力電圧(蓄電池電圧)を計測する。
【0041】
監視装置1および制御装置2は、蓄電システム100全体の統括的な動作を制御する。
【0042】
監視装置1は、電流センサ5および電圧センサ6によって計測された物理量を逐次取得し、当該物理量に基づいて鉛蓄電池7の状態を監視するデータ処理装置である。監視装置1は、例えば、BMU(Battery Management Unit)である。
【0043】
制御装置2は、蓄電システム100の各構成要素の制御を司る装置である。具体的に、制御装置2は、PCS4を駆動することにより、鉛蓄電池7の充放電制御を行う。例えば、制御装置2は、監視装置1からの指示に応じて、定電流―定電圧充電(CCCV)方式または多段充電方式で鉛蓄電池7の回復充電を実行する。制御装置2は、例えばEMS(Energy Management System)である。
【0044】
監視装置1および制御装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等プロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、I/F回路等の周辺回路とを含んで構成され、上述した監視装置1および制御装置2は、上記記憶装置に記憶されたプログラムに従ってプロセッサが各種演算を実行して周辺回路を制御することにより、実現される。
【0045】
監視装置1は、鉛蓄電池7の監視機能の一つとして、鉛蓄電池7の劣化状態を診断する診断機能を有している。
図6は、実施の形態1に係る監視装置1の構成を示す図である。
同図に示すように、監視装置1は、上記診断機能を実現するための機能部として、通信部11、計測制御部12、記憶部13、および判定部14を有している。
【0046】
通信部11は、制御装置2との間でデータの送受信を行う機能部である。
【0047】
計測制御部12は、電流センサ5および電圧センサ6を制御して、電流センサ5および電圧センサ6によって計測された物理量の計測結果を取得する機能部(計測結果取得部)である。例えば、計測制御部12は、定期的に、電流センサ5および電圧センサ6から電流および電圧の計測値を取得する。また、計測制御部12は、判定部14からの指示に応じて電流センサ5および電圧センサ6から電流および電圧の計測値を取得する。計測制御部12によって取得した電流値および電圧値は、記憶部13に記憶される。例えば、鉛蓄電池7の充電電流および放電電流の計測値、および鉛蓄電池7の蓄電池電圧の計測値が計測結果131として記憶部13に記憶される。
【0048】
記憶部13は、診断機能を実現するために必要な各種データを記憶する機能部である。例えば、記憶部13は、計測制御部12によって取得した計測結果131を記憶する。また、記憶部13には、予め、後述する対応関係データ132が記憶されている。
【0049】
判定部14は、鉛蓄電池7の劣化状態を判定するための機能部である。
判定部14は、鉛蓄電池7の回復充電の定電圧充電期間における充電電流の計測値と、記憶部13に記憶された対応関係データ132とに基づいて、鉛蓄電池7の劣化状態を判定する。
【0050】
対応関係データ132とは、鉛蓄電池7の回復充電の定電圧充電期間における充電電流に関する第1パラメータと鉛蓄電池7の劣化度合いを示す第2パラメータとの対応関係を表すデータである。
【0051】
ここで、第1パラメータは、上述した回復充電末期電流であり、第2パラメータは、鉛蓄電池7の蓄電池容量である。
例えば、上述の
図3に示したような、鉛蓄電池7の回復充電末期電流と蓄電池容量との相関関係を予め実験等により求めておき、その相関関係を示すデータを対応関係データ132として記憶部13に記憶しておく。
【0052】
また、対応関係データ132は、一つではなく複数であってもよい。例えば、上述の
図1に示したような、鉛蓄電池7の回復充電末期電流と充放電サイクルとの相関関係を予め実験等により求めておき、その相関関係を示すデータを第1対応関係データとし、さらに、上述の
図2に示したような、鉛蓄電池7の充放電サイクルと蓄電池容量との相関関係を予め実験等により求めておき、その相関関係を示すデータを第2対応関係データとして記憶部13に記憶しておいてもよい。
【0053】
上述した対応関係データ132は、第1パラメータと第2パラメータとの関係を示すデータであればよく、そのデータ構造等は、特に制限されない。たとえば、対応関係データ132は、第1パラメータと第2パラメータとの関係を示す関数であってもよいし、ルックアップテーブルのようなテーブル形式のデータであってもよい。
【0054】
具体的に、判定部14は、計時部140と判定処理部141とを含む。
計時部140は、鉛蓄電池7の回復充電の定電圧充電期間において充電電流が所定の閾値より低下してから所定時間t1が経過するまでの計時を行う。例えば、計時部140はタイマカウンタであって、鉛蓄電池7の回復充電の定電圧充電期間において充電電流が所定の閾値より低下したことを検知したらカウントを開始し、カウント値があらかじめ設定された所定時間t1に対応する設定値と一致したとき、通知信号を出力する。
【0055】
判定処理部141は、鉛蓄電池7の回復充電の定電圧充電期間において充電電流が所定の閾値より低下してから所定時間経過したときの充電電流の計測値を回復充電末期電流の計測値とし、当該計測値と対応関係データ132とに基づいて、鉛蓄電池7の劣化状態を判定する。例えば、判定処理部141は、計時部140から通知信号が出力されたときの充電電流の計測値を回復充電末期電流の計測値とする。
【0056】
次に、実施の形態1に係る監視装置1による鉛蓄電池7の劣化状態を診断する診断方法について、具体的に説明する。
図7は、実施の形態1に係る鉛蓄電池の劣化状態を診断する診断方法の流れを示すフローチャートである。
【0057】
図8は、回復充電時の鉛蓄電池7の充電電流および蓄電池電圧を示すタイミングチャートである。
図8において、縦軸は、電流と電圧とを表し、横軸は、時間を表している。また、参照符号300は、鉛蓄電池7の充電電流を表し、参照符号400は、鉛蓄電池7の蓄電池電圧を表している。
図8には、一例として、定電流―定電圧充電(CCCV)方式で回復充電を行った場合の充電電流および蓄電池電圧の時間的な変化が示されている。
【0058】
図8に示すように、CCCV方式の回復充電では、最初に一定の電流値I1でCC充電を開始する。その後、蓄電池電圧が所定の電圧Vcに到達したら、CC充電を停止して、一定の電圧VcでCV充電を行い、鉛蓄電池7を満充電状態まで回復させる。
【0059】
図7に示すように、先ず、監視装置1は、回復充電の定電圧充電が開始されると、定電圧充電期間(CV充電期間)において、充電電流Iが所定の閾値Ithよりも低くなったか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11において、充電電流Iが所定の閾値Ithよりも低くなった場合には、監視装置1は、計時部140によって計時を開始する(ステップS12)。
【0060】
次に、監視装置1は、充電電流Iが所定の閾値Ithより低下してから所定時間t1が経過したか否かを判定する(ステップS13)。
【0061】
ステップS13において、所定時間t1が経過した場合、監視装置1は、その時の充電電流の測定値を、回復充電末期電流の計測値とする(ステップS14)。例えば、
図8において、計時部140が所定時間t1の経過時に信号を出力し、計測制御部12がその信号に応じて電流センサ5から取得した充電電流の計測値Icvを、回復充電末期電流の計測値とする。
【0062】
次に、監視装置1は、ステップS14で取得した充電電流の計測値と対応関係データ132とに基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する(ステップS15)。具体的には、判定処理部141が、記憶部13に記憶されている回復充電末期電流と蓄電池容量との関係を示す対応関係データ132に基づいて、ステップS14で取得した回復充電末期電流の計測値に対応する蓄電池容量を算出する。判定処理部141は、算出した蓄電池容量に基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。
【0063】
以上、実施の形態1に係る監視装置1は、鉛蓄電池の回復充電の定電圧充電期間における充電電流の計測値と、予め求めておいた、定電圧充電期間における充電電流に関する第1パラメータと鉛蓄電池の劣化度合いを示す第2パラメータとの対応関係を表す対応関係データとに基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。
【0064】
これによれば、鉛蓄電池の蓄電池容量と相関のある回復充電末期電流に基づいて、鉛蓄電池の劣化度合いを把握することが可能となるので、鉛蓄電池の内部抵抗を測定するためのセンサ類を新たに設ける必要がない。
【0065】
また、これによれば、定期的に実施する回復充電時に鉛蓄電池の劣化度合いを把握することが可能となるので、容量試験のように劣化を判定するために特別な充放電が不要である。これにより、蓄電システムの運用を停止する必要がない上に、鉛蓄電池の劣化を判定するための時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0066】
また、これによれば、充電電流と時間の組み合わせにより回復充電末期電流を計測するので、据置型蓄電池のように多段充電方式で回復充電を行う蓄電システムにも適用することが可能となる。
【0067】
したがって、実施の形態1に係る監視装置1によれば、回復充電の方式によらず、より簡単に鉛蓄電池の劣化状態を診断することが可能となる。
【0068】
更に、実施の形態1に係る監視装置1は、定電圧充電期間において充電電流が所定の閾値より低下してから所定時間経過したときの充電電流の計測値を回復充電末期電流の計測値とし、当該計測値と対応関係データ132とに基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。これによれば、回復充電末期電流、すなわち回復充電の終了間際の充電電流を適切に計測することができるので、鉛蓄電池の劣化度合いをより高精度に判定することが可能となる。
【0069】
≪実施の形態2≫
実施の形態1に係る診断方法では、回復充電末期電流に基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定したが、実施の形態2に係る診断方法では、充電電流収束時間に基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。なお、実施の形態2に係る蓄電システムは、監視装置の構成の点において、実施の形態1に係る蓄電システムと相違し、その他の点においては実施の形態1に係る蓄電システムと同様である。
【0070】
図9は、実施の形態2に係る監視装置の構成を示す図である。
実施の形態2において、対応関係データ132Aの第1パラメータは、定電圧充電期間に充電電流が第1閾値Ith1に到達してから第2閾値Ith2(<Ith1)に到達するまでの充電電流収束時間(t2)であり、対応関係データ132Aの第2パラメータは、鉛蓄電池7の蓄電池容量である。
【0071】
例えば、上述の
図4に示したような、鉛蓄電池7の充電電流収束時間t2と充放電サイクル数(または、充放電サイクル数に対応する蓄電池容量)との相関関係を予め実験等により求めておき、その相関関係を示すデータを対応関係データ132Aとして記憶部13に記憶しておく。
【0072】
図9に示される監視装置1Aの判定部14Aは、計時部140Aおよび判定処理部141Aを有する。
【0073】
計時部140Aは、定電圧充電期間に充電電流が第1閾値Ith1に到達してから第2閾値Ith2(<Ith1)に到達するまでの充電電流収束時間を計測する。計時部140Aは、例えばカウンタであって、定電圧充電期間に充電電流の計測値が第1閾値Ith1となったときにカウント動作を開始し、充電電流の計測値が第2閾値Ith2となったときにカウント動作を停止して、そのときのカウント値を充電電流収束時間の計測値として記憶する。
【0074】
判定処理部141Aは、計時部140Aによる時間の計測値と対応関係データ132Aとに基づいて、鉛蓄電池7の劣化状態を判定する。例えば、判定処理部141Aは、充電電流収束時間と蓄電池容量との関係を示す対応関係データ132Aに基づいて、計時部140Aによる充電電流収束時間の計測値に対応する蓄電池容量を算出することにより、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。
【0075】
次に、実施の形態2に係る監視装置1Aによる鉛蓄電池7の劣化状態を診断する診断方法について、具体的に説明する。
図10は、実施の形態2に係る鉛蓄電池の劣化状態を診断する診断方法の流れを示すフローチャートである。
【0076】
図11は、回復充電時の鉛蓄電池7の充電電流と蓄電池電圧を示すタイミングチャートである。
図11において、縦軸は、電流と電圧とを表し、横軸は、時間を表している。また、参照符号301は、鉛蓄電池7の充電電流を表し、参照符号401は、鉛蓄電池7の蓄電池電圧を表している。
図11には、一例として、定電流―定電圧充電(CCCV)方式で回復充電を行った場合の充電電流および蓄電池電圧の時間的な変化が示されている。
【0077】
図10に示すように、監視装置1Aは、回復充電の定電圧充電期間(CV充電期間)において、充電電流Iが所定の第1閾値Ith1に到達したか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21において、充電電流Iが第1閾値Ith1に到達した場合には、監視装置1Aは、計時部140Aによって計時を開始する(ステップS22)。
【0078】
次に、監視装置1Aは、充電電流Iが第1閾値Ith1よりも低い第2閾値Ith2に到達したか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23において、充電電流Iが第2閾値Ith2に到達していない場合には、計時部140Aによる計時を継続する。
一方、ステップS23において、充電電流Iが第2閾値Ith2に到達した場合には、
図11に示すように、監視装置1Aは計時部140Aによる計時を終了し、そのときの計測時間t2を充電電流収束時間の計測値とする(ステップS24)。
【0079】
次に、監視装置1Aは、ステップS24で取得した充電電流収束時間の計測値と記憶部13に記憶された対応関係データ132Aとに基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する(ステップS25)。例えば、監視装置1Aの判定処理部141Aが、充電電流収束時間t2と蓄電池容量との関係を示す対応関係データ132に基づいて、ステップS24で取得した充電電流収束時間の計測値に対応する蓄電池容量を算出する。判定処理部141Aは、算出した蓄電池容量に基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。
【0080】
以上、実施の形態2に係る監視装置1Aによれば、実施の形態1に係る監視装置1と同様に、回復充電の方式によらず、より簡単に鉛蓄電池の劣化状態を診断することが可能となる。
【0081】
更に、実施の形態2に係る監視装置1Aは、定電圧充電期間において充電電流が第1閾値Ith1に到達してから第2閾値Ith2(<Ith1)に到達するまでの時間の計測値を充電電流収束時間t2の計測値とし、当該計測値と対応関係データ132Aとに基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。これによれば、充電電流収束時間、すなわち回復充電の終了間際の充電電流の時間的な変化を適切に計測することができるので、鉛蓄電池の劣化度合いをより高精度に判定することが可能となる。
【0082】
≪実施の形態3≫
実施の形態3に係る蓄電システムは、回復充電末期電流の決定方法に関して実施の形態1に係る蓄電システムと相違し、その他の点においては実施の形態1に係る蓄電システムと同様である。
【0083】
図12は、実施の形態3に係る監視装置の構成を示す図である。
図12に示される監視装置1Bの判定部14Bは、充電電流積算部142、放電電流積算部143、および判定処理部141Bを有する。
【0084】
充電電流積算部142は、鉛蓄電池7の充電電流の積算値を算出する機能部である。放電電流積算部143は、鉛蓄電池7の放電電流の積算値を算出する機能部である。充電電流積算部142および放電電流積算部143は、回復充電が完了したタイミングで充電電流および放電電流の積算を開始する。
【0085】
判定処理部141Bは、充電電流の積算値と放電電流の積算値との比率が所定値となったときの蓄電池の充電電流の計測値を回復充電末期電流の計測値とし、当該計測値と対応関係データ132とに基づいて、鉛蓄電池7の劣化状態を判定する。
【0086】
具体的に、判定処理部141Bは、前回実施した回復充電が完了してから充電電流積算部142によって算出された充電電流の積算値と、前回実施した回復充電が完了してから放電電流積算部143によって算出された放電電流の積算値との比率を算出する。例えば、判定処理部141Bは、放電電流の積算値に対する充電電流の積算値の比率〔%〕を算出する。次に、判定処理部141Bは、算出した比率と比率基準値134とを比較する。
【0087】
ここで、比率基準値134は、回復充電における定電圧充電期間の末期を判定するための基準となる値である。一般に、回復充電は、放電容量に対して100%以上(例えば、104%)となるように過充電が行われる。そのため、比率基準値134は、100%を超える値、例えば101%〜104%の範囲の値に設定することが好ましい。
比率基準値134は、例えば、予め記憶部13に記憶されている。
【0088】
判定処理部141Bは、算出した比率が比率基準値134に到達したときの鉛蓄電池7の充電電流の計測値を回復充電末期電流の計測値とする。そして、判定処理部141Bは、回復充電末期電流と蓄電池容量との関係を示す対応関係データ132に基づいて、取得した回復充電末期電流の計測値に対応する蓄電池容量を算出することにより、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。
【0089】
次に、実施の形態3に係る監視装置1Bによる鉛蓄電池7の劣化状態を診断する診断方法について、具体的に説明する。
図13は、実施の形態3に係る鉛蓄電池の劣化状態を診断する診断方法の流れを示すフローチャートである。
【0090】
図14は、回復充電時の鉛蓄電池7の充電電流および放電電流を示すタイミングチャートである。
図14において、縦軸は、電流を表し、横軸は、時間を表している。また、参照符号302は、鉛蓄電池7の充電電流を表し、参照符号303は、鉛蓄電池7の放電電流を表している。
【0091】
先ず、監視装置1Bは、回復充電が完了したタイミングで鉛蓄電池7の充電電流および放電電流の積算を開始する(ステップS31)。例えば、
図14において、回復充電が完了した時刻t31において、監視装置1Bは、充電電流積算部142によって鉛蓄電池7の充電電流の積算を開始するとともに、放電電流積算部143によって鉛蓄電池7の放電電流の積算を開始する。
【0092】
次に、監視装置1Bは、判定処理部141Bによって、充電電流積算部142による充電電流の積算値と放電電流積算部143による放電電流の積算値との比率を算出する(ステップS32)。具体的には、放電電流の積算値に対する充電電流の積算値の比率を算出する。
【0093】
次に、監視装置1Bは、判定処理部141Bによって、ステップS32で算出した比率が比率基準値134に到達したか否かを判定する(ステップS33)。ステップS33において、ステップS32で算出した比率が比率基準値134に到達していない場合には、充電電流および放電電流の積算を継続する。
【0094】
一方、ステップS32で算出した比率が比率基準値134に到達した場合には、監視装置1Bは、その時の充電電流の計測値を回復充電末期電流の計測値として取得する(ステップS34)。例えば、
図14の時刻t32において、放電電流の積算値に対する充電電流の積算値の比率が比率基準値134と一致した場合、監視装置1Bは、計測制御部12によって時刻t32において計測した充電電流の計測値を、回復充電末期電流の計測値とする。
【0095】
次に、監視装置1Bは、ステップS34で取得した回復充電末期電流の計測値と対応関係データ132とに基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する(ステップS35)。具体的には、判定処理部141Bが、記憶部13に記憶されている回復充電末期電流と蓄電池容量との関係を示す対応関係データ132に基づいて、ステップS34で取得した回復充電末期電流の計測値に対応する蓄電池容量を算出する。判定処理部141Bは、算出した蓄電池容量に基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。
【0096】
以上、実施の形態3に係る監視装置1Bによれば、実施の形態1に係る監視装置1と同様に、回復充電の方式によらず、より簡単に鉛蓄電池の劣化状態を診断することが可能となる。
【0097】
また、実施の形態3に係る監視装置1Bは、前回実施した回復充電が完了してから充電電流および放電電流の積算を開始し、充電電流の積算値と放電電流の積算値との比率が所定値となったときの蓄電池の充電電流の計測値を回復充電末期電流の計測値として、鉛蓄電池7の劣化状態を判定する。これによれば、実施の形態1と同様に、回復充電の終了間際の充電電流を適切に計測することができるので、鉛蓄電池の劣化度合いをより高精度に判定することが可能となる。
【0098】
≪実施の形態4≫
実施の形態4に係る蓄電システムは、回復充電の定電圧充電期間における充電電流の対数曲線の近似関数に基づいて鉛蓄電池の劣化度合いを判定する点において、実施の形態1に係る蓄電システムと相違し、その他の点においては実施の形態1に係る蓄電システムと同様である。
【0099】
図15は、回復充電における充電電流の特性を示す図である。
同図において、縦軸は充電電流を表し、横軸は時間を表している。また、参照符号303は、鉛蓄電池7の充電電流を表している。
図15には、一例として、定電流―定電圧充電(CCCV)方式で回復充電を行った場合の充電電流および蓄電池電圧の時間的な変化が示されている。
【0100】
図16は、回復充電の定電圧充電期間における充電電流の時間に対する変化を表す関数を片対数グラフで表示した場合の一例を示す図である。
図16に示すように、式(1)で表される関数は、充電電流を片対数で表示した場合、参照符号501〜503のような特性となる。参照符号501は、充放電サイクル数がC1の鉛蓄電池7の充電電流の時間変化を表し、参照符号502は、充放電サイクル数がC2(>C1)の鉛蓄電池7の充電電流の時間変化を表し、参照符号503は、充放電サイクル数がC3(>C2)の鉛蓄電池7の充電電流の時間変化を表している。
【0101】
このように、回復充電の定電圧充電期間における鉛蓄電池の充電電流の時間変化は、片方対数で表示したときに直線に近似できる。したがって、定電圧充電期間における充電電流の時間に対する変化は、下記式(1)で表すことが可能である。
【0103】
式(1)において、Iは鉛蓄電池7の充電電流であり、tは時間である。また、Aは定数である。また、式(1)において、Bは、鉛蓄電池7の内部抵抗と鉛蓄電池7の容量とに基づく時定数である。ここで、容量は、鉛蓄電池7固有の値であって一定値である。一方、内部抵抗は、充放電サイクル数(鉛蓄電池7の劣化)に応じて増加する。したがって、時定数Bは、鉛蓄電池の劣化度合と相関のあるパラメータである。
さらに、式(1)において、I0は定数であって、回復充電末期電流に対応する。すなわち、定数I0は、鉛蓄電池の劣化度合と相関のあるパラメータである。
【0104】
このように、定電圧充電期間における充電電流の時間に対する変化は上記式(1)で近似することが可能であり、かつ充放電サイクル数によって回復充電末期電流の値(定数IO)または波形の傾き(時定数B)が異なる。
そこで、実施の形態4に係る監視装置では、定電圧充電を開始してから一定間隔で充電電流を計測し、その計測値から算出した指数関数の近似式(式(1))における定数IOまたは時定数Bから、蓄電池の劣化度合いを判定する。
【0105】
図17は、実施の形態4に係る監視装置1Cの構成を示す図である。
図17に示される監視装置1Cの判定部14Cは、関数推定部144および判定処理部141Cを有する。
【0106】
関数推定部144は、鉛蓄電池7の回復充電の定電圧充電期間における経過時間と充電電流の計測値とに基づいて、定電圧充電期間における充電電流の時間に対する変化を示す関数を推定する機能部である。具体的に、関数推定部144は、定電圧充電の開始後に、計測制御部12によって一定の時間間隔で取得した充電電流の計測値から、上述した指数関数の近似式(式(1))を推定する。近似式(式(1))を求める手法としては、逐次演算アルゴリズムのLevenberg−Marquardt法等を用いればよい。
【0107】
関数推定部144によって推定された近似式(式(1))は、記憶部13に関数データ135として記憶される。
【0108】
判定処理部141Cは、関数推定部144によって推定した関数から算出した第1パラメータと、対応関係データ132Cとに基づいて、鉛蓄電池7の劣化状態を判定する。
【0109】
ここで、実施の形態4に係る対応関係データ132Cの第1パラメータは、近似式(式(1))における定数IOまたは時定数Bであり、対応関係データ132Cの第2パラメータは、鉛蓄電池7の蓄電池容量である。
【0110】
例えば、上述の
図3に示したような、鉛蓄電池7の回復充電末期電流(定数IO)と蓄電池容量との相関関係を予め実験等により求めておき、その相関関係を示すデータを対応関係データ132Cとして記憶部13に記憶しておく。あるいは、
図18に示すような、鉛蓄電池7の近似式(式(1))における時定数Bと蓄電池容量との相関関係を予め実験等により求めておき、その相関関係を示すデータを対応関係データ132Cとして記憶部13に記憶しておく。
【0111】
次に、実施の形態4に係る監視装置1Cによる鉛蓄電池7の劣化状態を診断する診断方法について、具体的に説明する。
図19は、実施の形態4に係る鉛蓄電池の劣化状態を診断する診断方法の流れを示すフローチャートである。
【0112】
先ず、監視装置1Cは、回復充電において定電圧充電が開始されると、充電電流の計測を開始する(ステップS41)。例えば、監視装置1Bは、計測制御部12によって、所定の時間間隔で充電電流の計測値を電流センサ5から取得する。
【0113】
次に、監視装置1Cは、定電圧充電期間に取得した充電電流の計測値に基づいて、充電電流の時間的な変化を表す近似式を算出する(ステップS42)。例えば、監視装置1Cの関数推定部144が、計測制御部12によって取得した複数の充電電流の計測値に基づいて、上記式(1)で表される近似式を算出し、関数データ135として記憶部13に記憶する。
【0114】
次に、監視装置1Cの判定処理部141Cが、ステップS43で算出した近似式(式(1))における第1パラメータを取得する(ステップS43)。例えば、判定処理部141Cが、記憶部13に記憶されている関数データ135から、定数IOまたは時定数Bを取得する。
【0115】
次に、監視装置1Cの判定処理部141Cが、ステップS44で取得した第1パラメータと、対応関係データ132Cとに基づいて、鉛蓄電池7の劣化状態を判定する(ステップS44)。
例えば、判定処理部141Cは、ステップS43で取得した近似式(式(1))の定数IOを回復充電末期電流の計測値とし、回復充電末期電流と蓄電池容量との関係を示す対応関係データ132Cに基づいて、回復充電末期電流の計測値に対応する蓄電池容量を算出する。あるいは、判定処理部141Cは、時定数Bと蓄電池容量との関係を示す対応関係データ132Cに基づいて、ステップS43で取得した近似式(式(1))における時定数Bの値に対応する蓄電池容量を算出する。そして、判定処理部141Bは、算出した蓄電池容量に基づいて、鉛蓄電池の劣化状態を判定する。
【0116】
以上、実施の形態4に係る監視装置1Cによれば、実施の形態1に係る監視装置1と同様に、回復充電の方式によらず、より簡単に鉛蓄電池の劣化状態を診断することが可能となる。
【0117】
また、実施の形態4に係る監視装置1Cは、定電圧充電期間における経過時間と充電電流の計測値とに基づいて関数(式(1))を推定し、その関数の定数IOまたは時定数Bに基づいて鉛蓄電池7の劣化度合を判定する。これによれば、実施の形態1と同様に、回復充電の終了間際の充電電流、または充電電流の時間的な変化を適切に計測することができるので、鉛蓄電池の劣化度合いをより高精度に判定することが可能となる。
【0118】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0119】
例えば、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。