(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力シャフトと前記出力シャフトとの間の前記中空部内において、前記第2軸受よりも前記入力シャフトの先端側に、前記中空部内への異物の浸入を抑制するシール材が配置されている、請求項2に記載の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、
図1から
図11を参照しながら、本発明を実施するためのいくつかの形態を説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
(第1実施形態)
1.駆動装置100の構造について
図1は、第1実施形態に係る駆動装置100の全体構成を示す模式的断面図である。
図2は、
図1に示すA−A線矢視断面図であり、
図3は、
図1に示すB部近傍の拡大断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る駆動装置100は、例えば、ロボットなどに用いられ、モータ1からの動力を入力シャフト2からたとえば減速機3などを含む伝達部3Aに入力し、伝達部3Aを介して出力シャフト5を回転駆動させる装置である。駆動装置1Aは、モータ1、入力シャフト2、伝達部3A、および出力シャフト5、を少なくとも備えており、より好ましい態様として、検出部6をさらに備えている。
【0013】
モータ1は、永久磁石が配置されたロータ11と、巻線が配置されたステータ12と、これらを収容するケーシング13と、を少なくとも備えた同期電動機のサーボモータである。本実施形態は、モータ1に電動機を用いたが、エアを動力としたエアモータ、油圧を動力とした油圧モータ等であってもよい。
【0014】
モータ1のロータ11には、第1シャフト24が連結されている。モータ1の一方側に位置する、第1シャフト24の先端部には、アタッチメント26を介して第2シャフト25が一体的に取り付けられている。本実施形態では、第1シャフト24と第2シャフト25とにより、伝達部3Aの減速機3にモータ1の動力を入力する入力シャフト2を構成する。
【0015】
入力シャフト2は、略円筒形状であり、モータ1の回転駆動により、回転軸Lの周りを回転する。入力シャフト2には、軸方向(軸線方向)に沿って貫通した中空部22が形成されており、中空部22には出力シャフト5が挿通されている。なお、軸方向は入力シャフト2が回転する際に回転運動の中心線となる方向であり、回転軸Lと一致する軸線の方向である。出力シャフト5が挿通された入力シャフト2は、モータ1の両側を貫通するように配置されている。
【0016】
モータ1の一方側には、すなわち入力シャフト2の一方側には、入力シャフト2の回転を出力シャフト5に伝達させる伝達部3Aが配置されている。モータ1の一方側は、モータ1の伝達部3A側と言い換えてもよい。伝達部3Aは減速機3を含んでもよい。減速機3には、入力シャフト2からモータ1の動力が入力される。本実施形態では、減速機3に、遊星歯車機構が用いられているが、この他に、例えば、ハーモニックギア機構、または歯車減速機が用いられてもよい。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る遊星歯車機構は、回転軸Lの周りを回転する太陽歯車31と、太陽歯車31に噛合して回転する3つの遊星歯車32と、3つの遊星歯車32に噛合して回転する内歯車33で構成される。太陽歯車31は、入力シャフト2(具体的には第2シャフト25)に形成されており、内歯車33は、減速機3のカバー34に形成されている。3つの遊星歯車32は、各遊星歯車32が回転可能なように遊星キャリア36に連結されている。
【0018】
このように構成することにより、入力シャフト2から伝達されたモータ1の動力が、減速機3に伝達され、伝達された動力により、内歯車33が形成されたカバー34が回転軸Lの周りに回転する。減速機3の内部には、グリースGが充填されており、入力シャフト2は、その先端部27を減速機3の内部に挿入することにより、減速機3に接続される。この接続時に、入力シャフト2は、減速機3の遊星歯車32に支持される。本実施形態では、太陽歯車31は、入力シャフト2に形成されているが、太陽歯車31と、入力シャフト2とが別部材で構成され、これらが連結されていてもよい。
【0019】
減速機3の一部を構成する遊星キャリア36とカバー34とは選択的に固定可能となっている。遊星キャリア36とカバー34とを固定しない場合には、遊星歯車32と内歯車33とを独立して、太陽歯車31の周りに公転させることができる。一方、遊星キャリア36とカバー34を固定した場合には、遊星歯車32と内歯車33とを、太陽歯車31の周りに一体的に公転させることができる。このようにして、減速機3の減速比を変更することができる。
【0020】
減速機3のカバー34は、板状の第1動力伝達部材35、筒状の第2動力伝達部材41、および第3動力伝達部材42を介して、カップリング45の一方側に連結されている。これにより、減速機3のカバー34の回転を、出力シャフト5に伝達することができる。なお、例えば、第1、第2、および第3動力伝達部材35,41,42のいずれか1つがロボット本体(図示せず)の一部を構成していてもよく、これらのいずれか1つがロボット本体に接続されていてもよい。この結果、カバー34の回転により、ロボットを動作させることができる。
【0021】
第2動力伝達部材41および第3動力伝達部材42により形成された内部空間には、カップリング45を収容する継手収容室46が形成されている。継手収容室46内に配置されたカップリング45は、第3動力伝達部材42と出力シャフト5とを連結している。このように構成することにより、カップリング45は減速機3から出力された動力を出力シャフト5に伝達する。減速機3から出力された動力で、出力シャフト5を回転軸Lの周りに回転させることができる。また、出力シャフト5の先端部51は、カップリング45に連結されているので、出力シャフト5の回転軸Lに対する偏心を調整することができる。なお、伝達部3Aは、その一例として、減速機3と、第1、第2、および第3動力伝達部材35,41,42と、カップリング45とを含んでいるが、少なくとも減速機3とカップリング45とを含むことが好ましく、入力シャフト2の回転を出力シャフト5に伝達できるものであれば、特にその構成は限定されない。
【0022】
出力シャフト5は、長尺状の円柱形状の部材であり、入力シャフト2に対して非接触な状態で入力シャフト2の中空部22に挿通されており、減速機3から出力された動力で回転する。出力シャフト5の長さは、入力シャフト2の長さよりも長く、出力シャフト5の端部は入力シャフト2の端部から突出している。出力シャフト5の両端部は、入力シャフト2の両端部から突出していてもよい。出力シャフト5がモータ1の一方側において突出している場合、
図3に示すように、出力シャフト5の一方側には、入力シャフト2の中空部22から突出した第1突出部53が形成されており、第1突出部53の先端部51には、カップリング45が連結されている。なお、
図3に示すように、第1突出部53は、さらに減速機3から突出していてもよい。モータ1の他方側である、出力シャフト5の他方側にも、入力シャフト2の中空部22から検出部6側に突出した第2突出部54が形成されており、出力シャフト5は、この部分において、軸受などの第1支持部材(第1軸受)4で支承されている。言い換えると、本実施形態では、第1支持部材(第1軸受)4は、入力シャフト2の他方側に配置され、出力シャフト5を支持している。
【0023】
モータ1の他方側、すなわち入力シャフト2の他方側には、入力シャフトと出力シャフトとの回転情報(回転に関する情報)を検出する検出部6が配置されていることがより好ましい。モータ1の他方側は、モータ1の検出部側と言い換えてもよい。検出部6は、第1検出器61と、第2検出器65とを有している。第1検出器61は、入力シャフト2の回転に関する情報(たとえば回転方向、角度位置、回転数等)を検出する。第1検出器61は、回転ハブ62と、スケール63と、センサ(回転検出部)64とを備えている。回転ハブ62は、入力シャフト2の端部に固定されており、円板状のスケール63は回転ハブ62に固定されている。これにより、入力シャフト2、回転ハブ62、およびスケール63は、一体的に回転可能となっている。
【0024】
回転検出部64は、スケール63に対向する位置で固定されている。回転検出部64は、例えば光検出部や磁気検出部である。例えば、回転検出部64が光検出部である場合、スケール63の表面に検出光を照射し、その表面に形成された指標パターンで反射した検知光を、例えばフォトダイオードなどの受光素子で受光する。回転検出部64は、入力シャフト2の回転に関する情報を検出することができる。
【0025】
第2検出器65は、出力シャフト5の回転に関する情報(例えば回転方向、角度位置、回転数等)を検出する。第2検出器65は、回転ハブ66と、スケール67と、センサ(回転検出部)68とを備えている。第2検出器65は、第1検出器61と同様の原理で、出力シャフト5の回転に関する情報を検出することができる。なお、第1検出器61が入力シャフト2の回転に関する情報を検出する原理と、第2検出器65が出力シャフト5の回転に関する情報を検出する原理とは異なってもよい。
【0026】
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、モータ1の一方側には、入力シャフト2と出力シャフト5との間の中空部22内に、出力シャフト5を支承する軸受などの第2支持部材(第2軸受)8が配置されている。第2軸受8は、減速機3よりもモータ1の一方側に配置されている。言い換えると、本実施形態では、第2支持部材(第2軸受)8は、入力シャフト2の一方側に配置され、出力シャフト5を支持している。第2軸受8は、中空部22内の突出部51の近傍に配置されているが、第1突出部53に配置されていてもよい。
【0027】
入力シャフト2の先端部27には、収容凹部27aが形成されており、収容凹部27aに第2軸受8が収容されている。第2軸受8のインナレース81は、出力シャフト5の外周面52の周りに配置されている。一方、第2軸受8のアウタレース82は、入力シャフト2の収容凹部27aの内周面27cの周りに配置されている。このようにして、出力シャフト5は、第2軸受8を介して、入力シャフト2に回転自在に支持(支承)されることになる。また、後述するように、本実施形態では、出力シャフト5は入力シャフト2と一体に連結された状態でカップリング45に対して挿脱可能となっている。
【0028】
さらに、インナレース81と外周面52の間、アウタレース82と内周面27cとの間のいずれか一方に締め代を設け、その他方では、これらが相対的な軸方向の移動が可能となっている。これにより、第2軸受8が、入力シャフト2または出力シャフト5のいずれかに固定され、出力シャフト5が軸方向に熱膨張で伸びたとしても、これを拘束することなくその伸び代を吸収することができる。
【0029】
2.駆動装置100の動作について
以下に、本実施形態の駆動装置100の動作について説明する。
まず、モータ1を駆動させると入力シャフト2が回転軸Lの周りに回転する。入力シャフト2の回転により、モータ1の動力が入力シャフト2から減速機3に入力される。減速機3に入力された動力で、減速機3のカバー34が減速比に応じた回転数で回転する。カバー34の回転により、第1、第2、および第3動力伝達部材35,41,42と、カップリング45とを介して連結された出力シャフト5が、カバー34と同じ回転数で回転する。
【0030】
第1検出器61では、入力シャフト2の回転により、回転ハブ62およびスケール63が回転し、回転検出部64で入力シャフト2の回転情報が検出される。一方、第2検出器65では、出力シャフト5の回転により、回転ハブ66およびスケール67が回転し、回転検出部68で出力シャフト5の回転情報が検出される。
【0031】
ここで、モータ1の一方側および他方側において、出力シャフト5は、その両側で第1軸受4および第2軸受8で支承されているので、出力シャフト5は、その両側で回転自在に支持されることになる。これにより、駆動装置の動作時に、出力シャフト5の振れ回りを抑制することができ、検出部6における出力シャフト5の回転情報の検出精度を高めることができる。
【0032】
3.駆動装置100のメンテナンス作業について
以下に、本実施形態の駆動装置100のメンテナンス作業について説明する。
図4は、
図1に示す駆動装置100のメンテナンス作業時の状態を説明する図であり、
図5は、
図4に示す状態から駆動装置100を組み立てる作業を説明する要部拡大図である。
図6(A)は、
図5に示す組み立て作業を説明する模式図であり、(B)は、その比較となる例を説明するための模式図である。
【0033】
例えば、メンテナンス作業時に検出部6の部品交換等を行う際には、
図4に示すように、減速機3等の伝達部3Aの部品をロボット本体側に残して、モータ1、入力シャフト2、出力シャフト5、および検出部6を1つのユニットとして一体的に引き抜く。出力シャフト5は、入力シャフト2と一体に連結された状態でカップリング45に対して取り外される。
【0034】
部品交換後、再度、引き抜かれたユニットを元の状態に戻す際には、入力シャフト2を、減速機3に再度接続し、入力シャフト2と一体に連結され中空部22に挿通した状態の出力シャフト5の突出部53の先端部51をカップリング45の連結穴45aに挿入する(
図5参照)。
【0035】
ここで、
図6Bに示すように、比較となる例では、中空部22に挿通された出力シャフト5は、検出部6側の第1軸受4のみで片持状態となるように支承されている場合、その先端部51の位置は安定してない。さらに、出力シャフト5は、入力シャフト2よりも細く長尺であるため自重により撓み易い。
【0036】
このような点を前提に、駆動装置の動作時に出力シャフト5を両側で支承すべく、たとえば、第2動力伝達部材41等の装置本体側に、軸受9を固定した場合、出力シャフト5の先端部51を軸受9に案内し、カップリング45に対して出力シャフト5の芯合わせをして、装置本体に出力シャフト5を組み込むことは容易ではない。
【0037】
しかしながら、本実施形態では、
図6Aに示すように、出力シャフト5は、その両側で第1軸受4および第2軸受8により回転自在に支持されている。これにより、出力シャフト5の第1突出部53の先端部51の位置を安定させて、この先端部51をカップリング45の連結穴45aに簡単に案内することができる。このような結果、出力シャフト5の装置本体への組み込み性を向上することができる。
【0038】
特に、本実施形態では、第2軸受8を、入力シャフト2の先端部27の近傍に配置したので、出力シャフト5のより先端部51側において、第2軸受8で出力シャフト5を回転自在に支持することができる。これにより、出力シャフト5の自重による撓みを低減し、出力シャフト5と、カップリング45の連結穴45aとの芯合わせを容易に行うことができる。
【0039】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る駆動装置100の全体構成を示す模式的断面図である。
図8は、
図7に示すC部近傍の拡大図であり、
図9は、
図7に示す駆動装置のメンテナンス作業時の状態を説明する要部拡大図である。
である。
【0040】
第2実施形態の駆動装置100が、第1実施形態のものと相違する点は、入力シャフト2の先端部27にオイルシール(シール材)7をさらに設けた点である。したがって、本実施形態では、第1実施形態と同一又は同等の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0041】
図7に示すように、第2実施形態に係る駆動装置100では、オイルシール7が、入力シャフト2の先端部27の第2軸受8に隣接して取付けられている。具体的には、
図8に示すように、オイルシール7は、入力シャフト2と出力シャフト5との間の中空部22内において、第2軸受8よりも入力シャフト2の先端27b側に配置されている。
【0042】
オイルシール7は、中空部22内へのグリースG等の異物の浸入(移動)を抑制するような向きに取付けられている。オイルシール7の環状のリップ部71が、中空部22とその外部を仕切る位置で、出力シャフト5の外周面52に密着している。
【0043】
オイルシール7を設けることにより、駆動装置100の駆動時に、入力シャフト2の中空部22にグリースGが侵入することを抑えることができる。特に、オイルシール7が、第2軸受8に隣接して取り付けられているので、オイルシール7が過剰に変形するがない。これにより、オイルシール7によるシール性を確保することができる。
【0044】
さらに、駆動装置100のメンテナンス作業時には、上述したように、出力シャフト5を中空部22に挿通した状態の入力シャフト2を減速機3から取り外し、これを再度減速機3に取付ける。
【0045】
ここで、
図8に示す状態から、さらに入力シャフト2と出力シャフト5とを一体的に引き抜き、オイルシール7の劣化・摩耗が起因となって、オイルシール7を交換することがある。この際には、
図9からも明らかなように、第2軸受8を取り外すことなく、入力シャフト2の先端27b側からオイルシール7のみを交換することができる。
【0046】
これにより、第2軸受8の取り外し・再取り付けにより、入力シャフト2および出力シャフト5に対する第2軸受8の組み付け精度(公差)が変わることがない。この結果、出力シャフト5とカップリング45との位置関係は維持されるので、カップリング45から引き抜いた出力シャフト5を、簡単にカップリング45に再度連結することができる。
【0047】
さらに、入力シャフト2を減速機3に装置本体に再度取り付ける際には、中空部22にはオイルシール7が常時配置されているので、中空部22へのグリースGの浸入が起因した入力シャフト2と出力シャフト5の回転精度の低下を抑えることができる。
【0048】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る駆動装置100の全体構成を示す模式的断面図であり、
図11は、
図10に示すD部近傍の拡大図である。
【0049】
第3実施形態の駆動装置100が、第2実施形態のものと相違する点は、オイルシール7と第2軸受8の配置された位置である。したがって、本実施形態では、第2実施形態と同一又は同等の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0050】
図10および
図11に示すように、第3実施形態に係る駆動装置100では、モータ1の一方側に(すなわちモータ1よりも減速機3側)おいて、入力シャフト2の第1シャフト24の先端部27に、オイルシール7と第2軸受8が隣接して配置されている。第2軸受8は、オイルシール7よりも第1シャフト24の先端27b側に配置されている。これにより、第2軸受8は、出力シャフト5の中央よりもやや減速機3寄りに配置されることになる。
【0051】
この場合であっても、出力シャフト5は、第1軸受4および第2軸受8により、離間した2カ所で支承されるので、出力シャフト5の振れ回りを抑え、メンテナンス作業時に、出力シャフト5の先端部51をカップリング45に案内できる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0053】
第2および3実施形態では、入力シャフトと出力シャフトとの間の中空部内にオイルシールを設け、中空部内に異物としてグリースが浸入することをより効果的に制限した。しかしながら、グリースの浸入を制限することができるのであれば、オイルシールの代わりに、メカニカルシール、ラビリンスシール等を用いてもよい。さらに、異物がグリースではなく、水、汚れ等その他の物質である場合は、これらの浸入を抑制すべく、オイルシールの代わりにパッキン等を用いてもよい。