(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導出部は、前記充電期間内に前記第1のキャパシタに蓄積される電荷の量の時間変化率と、前記電流センサの変流比とを乗算することによって得られる値を、前記電流センサによってセンシングされた電流の実効値として導出する
請求項1に記載の電流計測装置。
前記導出部は、前記充電期間内に前記第1のキャパシタに蓄積される電荷の量の時間変化率と、前記電流センサの変流比と、所定の係数と、を乗算することによって得られる値を、前記電流センサによってセンシングされた電流の実効値として導出する
請求項1に記載の電流計測装置。
前記導出部は、前記充電期間内に前記第1のキャパシタに蓄積される電荷の量の時間変化率と、所定の補正係数と、を乗算することによって得られる値を、前記電流センサによってセンシングされた電流の実効値として導出する
請求項1に記載の電流計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
[第1の実施形態]
図2は、本発明の実施形態に係る電流計測装置1の概略の構成を示す図である。
図2には、電流計測装置1において計測される電流をセンシングする電流センサ100が、電流計測装置1と共に示されている。初めに、電流センサ100について説明する。
【0016】
図3は、電流センサ100の構成の一例を示す図である。電流センサ100は、カレントトランス(CT)方式の電流センサ(変流器)であり、リング状の磁気コア101と、磁気コア101に巻き付けられた巻き線102を含んで構成されている。電流センサ100によってセンシングされる電流が流れる測定導体150は、磁気コア101の内側に挿通される。
【0017】
測定導体150に流れる交流電流(一次電流)I
1によって磁気コア101内に磁束Φが発生する。この磁束Φを打ち消すように、巻き線102に交流電流(二次電流)I
2が流れる。二次電流I
2の大きさは、測定導体150に流れる一次電流I
1に比例し、巻き線102の巻き数に応じた大きさとなる。換言すれば、電流センサ100の変流比(CT比)は、巻き線102の巻き数によって定まる。
【0018】
図2に示すように、電流計測装置1は、AC/DC変換部10、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2、第3のスイッチSW3、第1のキャパシタC1、第2のキャパシタC2およびマイクロコンピュータ20を含んで構成されている。
【0019】
AC/DC変換部10は、電流センサ100の巻き線102(
図3参照)の両端に接続されており、電流センサ100から出力される交流電力を直流電力に変換して出力端から出力する。AC/DC変換部10の出力端は、第1のラインL1および第2のラインL2に接続されている。
【0020】
第1のキャパシタC1は、電流センサ100によってセンシングされた電流の計測に用いられるキャパシタである。第1のキャパシタC1は、一端が第1のラインL1に接続され、他端がグランドラインに接続されている。第2のスイッチSW2は、一端が第1のラインL1に接続され、他端がグランドラインに接続されている。すなわち、第2のスイッチSW2は、第1のキャパシタC1に対して並列に設けられている。第1のスイッチSW1は、第1のラインL1上において、第1のキャパシタC1および第2のスイッチSW2とからなる並列回路と、AC/DC変換部10と、の間に設けられている。
【0021】
第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2はマイクロコンピュータ20から供給される第1の制御信号A1に応じてオンオフする。第1のスイッチSW1がオン状態となることにより、第1のキャパシタC1とAC/DC変換部10の出力端とが接続される。これにより、AC/DC変換部10の出力端から出力される直流電力によって第1のキャパシタC1が充電される。一方、第2のスイッチSW2がオン状態となることにより、第1のキャパシタC1に蓄積された電荷が放電される。電流計測装置1において、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2は、相補的にオンオフするように構成されている。すなわち、第1のスイッチSW1スイッチがオン状態のとき、第2のスイッチSW2がオフ状態となり、第1のスイッチSW1スイッチがオフ状態のとき、第2のスイッチSW2がオン状態となる。
【0022】
第2のキャパシタC2は、マイクロコンピュータ20を駆動するための駆動電力を蓄積しておくためのキャパシタである。第2のキャパシタC2は、一端が第2のラインL2に接続され、他端がグランドラインに接続されている。第3のスイッチSW3は、第2のラインL2上において、第2のキャパシタC2と、AC/DC変換部10と、の間に設けられている。
【0023】
第3のスイッチSW3は、マイクロコンピュータ20から供給される第2の制御信号A2に応じてオンオフする。第3のスイッチSW3がオン状態となることにより、第2のキャパシタC2とAC/DC変換部10の出力端とが接続される。これにより、AC/DC変換部10の出力端から出力される直流電力によって第2のキャパシタC2が充電される。
【0024】
マイクロコンピュータ20は、その機能構成として、導出部21および切替部22を有している。導出部21は、第1のラインL1に接続されている。導出部21は、AC/DC変換部10から出力される直流電力によって第1のキャパシタC1が充電されている充電期間内の互いに異なる2つの時点において、第1のキャパシタC1の充電電圧を計測する。導出部21は、計測した充電電圧に基づいて、充電期間内に第1のキャパシタC1に蓄積される電荷の量の時間変化率Xに応じた値を導出する。
【0025】
例えば、導出部21は、充電期間内に第1のキャパシタC1に蓄積される電荷の量の時間変化率Xと、電流センサ100の変流比Nと、を乗算することによって得られる値(N・X)を電流センサ100によってセンシングされた電流(一次電流I
1)の実効値I
RMSとして導出する。
【0026】
また、例えば、導出部21は、充電期間内に第1のキャパシタC1に蓄積される電荷の量の時間変化率Xと、電流センサ100の変流比Nと、所定の補正係数Mと、を乗算することによって得られる値(M・N・X)を電流センサ100によってセンシングされた電流(一次電流I
1)の実効値I
RMSとして導出してもよい。
【0027】
また、例えば、導出部21は、第1のキャパシタC1に蓄積された電荷の量の時間変化率Xまたはこれに補正係数Mを乗算した値(M・X)を、電流センサ100の二次電流I
2の実効値として導出してもよい。
【0028】
切替部22は、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3のオンオフの切り替えを制御する。
【0029】
マイクロコンピュータ20は、第2のキャパシタC2に充電された電力によって駆動される。すなわち、本実施形態に係る電流計測装置1は、電流センサ100から供給される電力によって動作することが可能であり、外部電源が不要である。
【0030】
以下に、電流計測装置1の動作について説明する。初期状態において、第2のキャパシタC2には電荷が蓄積されておらず、マイクロコンピュータ20に電力は供給されていない。従って、初期状態においてマイクロコンピュータ20は停止しており、第1の制御信号A1および第2の制御信号A2を供給する信号ラインは、ハイインピーダンス状態である。この状態において、第1のスイッチSW1はオフ状態、第2のスイッチSW2はオン状態、第3のスイッチSW3はオン状態となる。
【0031】
測定導体150に交流電流が流れると、電流センサ100から交流電力が出力される。電流センサ100から出力された交流電力は、AC/DC変換部10によって直流電力に変換される。初期状態において第3のスイッチSW3はオン状態となるため、AC/DC変換部10の出力端から出力される直流電力によって、第2のキャパシタC2が充電される。これにより、マイクロコンピュータ20に駆動電力が供給され、マイクロコンピュータ20が起動する。マイクロコンピュータ20が起動するとマイクロコンピュータ20に内蔵されたタイマー回路が動作を開始する。マイクロコンピュータ20の起動後、所定期間が経過するとマイクロコンピュータ20は電流計測処理を開始する。
【0032】
図4は、マイクロコンピュータ20によって実施される電流計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS1において、マイクロコンピュータ20の切替部22は、例えばハイレベルの制御信号A2を出力することにより、第3のスイッチSW3をオフ状態にする。これにより第2のキャパシタC2は、AC/DC変換部10から切り離されるが、マイクロコンピュータ20は、第2のキャパシタC2に蓄積された電力によって動作を継続することが可能である。
【0034】
ステップS2において、マイクロコンピュータ20の切替部22は、例えばハイレベルの制御信号A1を出力することにより、第1のスイッチSW1をオン状態にするとともに第2のスイッチSW2をオフ状態にする。これにより、AC/DC変換部10の出力端から出力される直流電力によって、第1のキャパシタC1が充電される。
【0035】
ここで、
図5は、AC/DC変換部10から出力される直流電力によって第1のキャパシタC1が充電されている充電期間内における第1のキャパシタC1の充電電圧の時間推移を示すグラフである。
図5に示すように、第1のキャパシタC1の充電電圧は、充電時間に比例して大きくなる。
【0036】
ステップS3において、マイクロコンピュータ20の導出部21は、時刻t1における第1のキャパシタC1の充電電圧を計測し、計測によって得られた計測値Vm1をデジタル値に変換してメモリに記憶する。
【0037】
ステップS4において、マイクロコンピュータ20の導出部21は、計測値Vm1の取得後、所定期間Δtが経過したか否かを判断し、所定期間Δtが経過したものと判断すると、処理をステップS5に移行する。
【0038】
ステップS5において、マイクロコンピュータ20の導出部21は、時刻t2における第1のキャパシタC1の充電電圧を計測し、計測によって得られた計測値Vm2をデジタル値に変換してメモリに記憶する。
【0039】
ステップS6において、マイクロコンピュータ20の導出部21は、時刻t1から時刻t2までに第1のキャパシタC1に蓄積された電荷の量の時間変化率Xと、電流センサ100の変流比(CT比)Nとを乗算した値を、電流センサ100によってセンシングされた電流(一次電流I
1)の実効値I
RMSとして導出する。具体的には、マイクロコンピュータ20の導出部21は、下記の(1)式および(2)式を演算する。なお、(1)式において、Cは、第1のキャパシタC1の静電容量である。
X=C(Vm2−Vm1)/Δt ・・・(1)
I
RMS=N・X ・・・(2)
時刻t1から時刻t2までに第1のキャパシタC1に蓄積された電荷の量の時間変化率Xは、当該期間内における第1のキャパシタC1の充電電流の平均値に相当し(I=Q/Δt)、従って電流センサ100の二次電流I
2の実効値に相当する。従って、当該期間内において第1のキャパシタC1に蓄積された電荷の量の時間変化率Xと、電流センサ100の変流比Nとを乗算することで、電流センサ100によってセンシングされた電流(一次電流I
1)の実効値I
RMSを導出すことができる。なお、回路の影響により、計測値Vm1およびVm2が誤差を含んでいる場合には、補正係数Mを用いて、下記の(3)式に従い実効値I
RMSを導出してもよい。
I
RMS=M・N・X ・・・(3)
また、電流計測装置1は、電流センサ100の二次電流I
2の実効値を導出するものとして構成されていてもよく、この場合、(1)式によって導出される第1のキャパシタC1に蓄積された電荷の量の時間変化率Xまたはこれに補正係数Mを乗算した値(M・X)を、電流センサ100の二次電流I
2の実効値として導出してもよい。
【0040】
ステップS7において、マイクロコンピュータ20の切替部22は、例えばローレベルの制御信号A1を出力することにより、第1のスイッチSW1をオフ状態にするとともに第2のスイッチSW2をオン状態にする。これにより、第1のキャパシタC1は、AC/DC変換部10から切り離されるとともに第1のキャパシタC1に蓄積された電荷が放電される。
【0041】
ステップS8において、マイクロコンピュータ20の切替部22は、例えばローレベルの制御信号A2を出力することにより、第3のスイッチSW3をオン状態にする。これによりAC/DC変換部10の出力端から出力される直流電力によって、第2のキャパシタC2が充電される。なお、第3のスイッチSW3をオン状態にしてから所定期間経過後にステップS1〜S8の処理を繰り返し実施するようにしてもよい。
【0042】
このように、電流計測装置1は、電流計測を行う場合に、AC/DC変換部10の出力端を第1のキャパシタC1に接続して、第1のキャパシタC1の充電電圧の計測値Vm1、Vm2に基づいて、電流センサ100によってセンシングされた電流(一次電流I
1)の実効値I
RMSまたは電流センサ100の二次電流I
2を導出する。一方、電流計測装置1は、電流計測を行わない期間においては、AC/DC変換部10の出力端を第2のキャパシタC2に接続して、マイクロコンピュータ20の駆動するための電力を第2のキャパシタC2に蓄える。
【0043】
図6は、電流計測装置1の具体的な回路構成の一例を示す図である。AC/DC変換部10は、ダイオードD1〜D5からなるブリッジ回路によって構成されている。
【0044】
第1のスイッチSW1は、抵抗素子R1、R2およびトランジスタQ1、Q2を含んで構成されている。pチャネル型のMOSFETで構成されるトランジスタQ2は、メインスイッチとして機能する。nチャネル型のMOSFETで構成されるトランジスタQ1は、トランジスタQ2のオンオフを制御する制御用スイッチとして機能する。トランジスタQ2は、ゲートが抵抗素子R1を介してAC/DC変換部10の出力端に接続され、ソースが第1のラインL1の高電位側に接続され、ドレインが第1のラインL1の低電位側に接続されている。トランジスタQ1は、ドレインがトランジスタQ2のゲートに接続され、ソースがグランドラインに接続されている。トランジスタQ1のゲートには、マイクロコンピュータ20から供給される第1の制御信号A1が入力される。抵抗素子R2は、一端がトランジスタQ1のゲートに接続され、他端がトランジスタQ2のソース(グランドライン)に接続されている。
【0045】
マイクロコンピュータ20の起動前においては、制御信号A1を供給する信号ラインがハイインピーダンス状態となり、トランジスタQ1およびQ2はオフ状態となる。トランジスタQ2がオフ状態となることで、第1のキャパシタC1はAC/DC変換部10から切り離される。マイクロコンピュータ20の起動後に、マイクロコンピュータ20からハイレベルの制御信号A1が供給されることで、トランジスタQ1およびQ2はオン状態となる。トランジスタQ2がオン状態となることで、第1のキャパシタC1は、AC/DC変換部10から出力される直流電力によって充電される。電流計測後に、マイクロコンピュータ20からローレベルの制御信号A1が供給されることで、トランジスタQ1およびQ2はオフ状態となる。トランジスタQ2がオフ状態となることで、第1のキャパシタC1はAC/DC変換部10から切り離される。
【0046】
第2のスイッチSW1は、抵抗素子R3、R4、R5およびトランジスタQ3、Q4を含んで構成されている。nチャネル型のMOSFETで構成されるトランジスタQ4は、メインスイッチとして機能する。nチャネル型のMOSFETで構成されるトランジスタQ3は、トランジスタQ4のオンオフを制御する制御用スイッチとして機能する。トランジスタQ4は、ゲートが抵抗素子R3を介してAC/DC変換部10の出力端に接続され、ドレインが抵抗素子R4を介して第1のラインL1に接続され、ソースがグランドラインに接続されている。トランジスタQ3は、ドレインがトランジスタQ4のゲートに接続され、ソースがグランドラインに接続されている。トランジスタQ3のゲートには、マイクロコンピュータ20から供給される第1の制御信号A1が入力される。抵抗素子R5は、一端がトランジスタQ3のゲートに接続され、他端がトランジスタQ3のソース(グランドライン)に接続されている。
【0047】
マイクロコンピュータ20の起動前においては、制御信号A1を供給する信号ラインがハイインピーダンス状態となり、トランジスタQ3はオフ状態、トランジスタQ4はオン状態となる。トランジスタQ4がオン状態となることで、第1のキャパシタC1に残留する電荷が放電される。マイクロコンピュータ20の起動後に、マイクロコンピュータ20からハイレベルの制御信号A1が供給されることで、トランジスタQ3はオン状態、トランジスタQ4はオフ状態となる。トランジスタQ4がオフ状態となることで、第1のキャパシタC1が充電可能な状態となる。電流計測後に、マイクロコンピュータ20からローレベルの制御信号A1が供給されることで、トランジスタQ3はオフ状態、トランジスタQ4はオン状態となる。トランジスタQ4がオン状態となることで、第1のキャパシタC1に蓄積された電荷が放電される。
【0048】
第3のスイッチSW3は、抵抗素子R8、R9、R10およびトランジスタQ5、Q6、Q7を含んで構成されている。pチャネル型のMOSFETで構成されるトランジスタQ7は、メインスイッチとして機能する。pチャネル型のMOSFETで構成されるトランジスタQ6およびnチャネル型のMOSFETで構成されるトランジスタQ5は、トランジスタQ7のオンオフを制御する制御用スイッチとして機能する。トランジスタQ7は、ゲートが抵抗素子R10を介してグランドラインに接続され、ソースが第2のラインL2の高電位側に接続され、ドレインが第2のラインL2の低電位側に接続されている。トランジスタQ6は、ドレインがトランジスタQ7のゲートに接続され、ドレインがAC/DC変換部10の出力端に接続されている。トランジスタQ5は、ドレインがトランジスタQ6のゲートに接続され、ソースがグランドラインに接続されている。トランジスタQ5のゲートには、マイクロコンピュータ20から供給される第2の制御信号A2が入力される。抵抗素子R8は、一端がトランジスタQ5のゲートに接続され、他端がトランジスタQ2のソース(グランドライン)に接続されている。抵抗素子R9は、一端がAC/DC変換部10の出力端に接続され、他端がトランジスタQ5のドレインに接続されている。抵抗素子R10は、一端がトランジスタQ7のゲートに接続され、他端がグランドラインに接続されている。
【0049】
マイクロコンピュータ20の起動前においては、制御信号A2を供給する信号ラインがハイインピーダンス状態となり、トランジスタQ5およびQ6はオフ状態、トランジスタQ7はオン状態となる。トランジスタQ7がオン状態となることで、第1のキャパシタC1は、AC/DC変換部10から出力される直流電力によって充電される。マイクロコンピュータ20の起動後に、マイクロコンピュータ20からハイレベルの制御信号A2が供給されることで、トランジスタQ5およびQ6はオン状態となり、これによってトランジスタQ7はオフ状態となる。トランジスタQ7がオフ状態となることで、第2のキャパシタC2はAC/DC変換部10から切り離される。電流計測後にマイクロコンピュータ20からローレベルの制御信号A2が供給されることで、トランジスタQ5およびQ6はオフ状態、トランジスタQ7はオン状態となる。トランジスタQ7がオン状態となることで、第1のキャパシタC1は、AC/DC変換部10から出力される直流電力によって充電される。
【0050】
電流計測装置1は、更に、ダイオードD6、D7を有している。ダイオードD6は、アノードがトランジスタQ7のドレインに接続され、カソードが第2のキャパシタC2の一端に接続されている。ダイオードD6は、第2のキャパシタC2に蓄積された電荷の逆流を防止する機能を有する。ダイオードD7は、カソードが電源入力端子30に接続され、アノードが第2のキャパシタC2の一端に接続されている。すなわち、電流計測装置1は、電源入力端子30に接続された外部電源をマイクロコンピュータ20を駆動するための電源として用いることも可能な構成となっている。ダイオードD7は、ダイオードD6と同様、第2のキャパシタC2に蓄積された電荷の逆流を防止する機能を有する。
【0051】
電流計測装置1は、更に、直列接続された抵抗素子R6およびR7からなる分圧回路を有している。分圧回路は一端が第1のキャパシタC1の一端に接続され、他端がグランドラインに接続されている。抵抗素子R6と抵抗素子R7との接続点は、マイクロコンピュータ20の導出部21に組み込まれているAD変換器(図示せず)に接続されている。分圧回路は、抵抗素子R6およびR7の抵抗値に応じた分圧比で第1のキャパシタC1の充電電圧を分圧する。分圧回路は、分圧によって得られる電圧を抵抗素子R6と抵抗素子R7との接続点から出力し、これをマイクロコンピュータ20に供給する。このように分圧回路は、第1のキャパシタC1の充電電圧のレベルをマイクロコンピュータ20に入力可能な電圧レベルにまで低下させる。なお、第1のキャパシタC1の充電電圧のレベルがマイクロコンピュータ20に入力可能レベルである場合には、分圧回路は不要である。
【0052】
第1のキャパシタC1は、充電期間内において電流計測を行うことができるだけの静電容量を有していればよく、第1のキャパシタC1として例えば、電解コンデンサを好適に用いることができる。
【0053】
第2のキャパシタC2は、少なくともマイクロコンピュータ20が電流計測を行っている間、マイクロコンピュータ20の駆動を維持できるだけの蓄電能力を備えていることが必要である。第2のキャパシタC2として、静電容量が比較的大きい電気二重層キャパシタを好適に用いることができる。
【0054】
抵抗素子R1〜R10、トランジスタQ1〜Q7、ダイオードD1〜D7、第1のキャパシタC1、第2のキャパシタC2は、例えば、ディスクリート部品として構成されていてもよく、これらの回路素子およびマイクロコンピュータ20は、例えば、単一のプリント基板上に搭載されていてもよい。
【0055】
図7は、第1のキャパシタC1において充電が行われている様子を示す電流計測装置1の動作波形である。
図7には、充電電流が10mAの場合および100mAときの第1のキャパシタC1の電圧波形が示されている。また、
図7には、第1の制御信号A1および第2の制御信号A2の信号波形および第2のキャパシタC2の電圧波形も示されている。
【0056】
第2の制御信号A2がハイレベルに遷移し、これに続いて第1の制御信号A1がハイレベルに遷移することで、第1のキャパシタC1において充電が開始され、時間経過に伴って、第1のキャパシタC1の電圧(充電電圧)が大きくなることが確認された。また、充電電流の大きさに応じて第1のキャパシタC1の充電電圧の時間変化率(すなわち、蓄積電荷量の時間変化率)が変化することが確認された。
【0057】
第1のキャパシタC1における蓄積電荷量の時間変化率は、第1のキャパシタC1における充電電流に相当し、従って、電流センサ100の二次電流I
2の実効値に相当する。従って、第1のキャパシタC1における蓄積電荷量の時間変化率に基づいて、電流センサ100によってセンシングされた電流(一次電流I
1)の実効値を導出することができる。
【0058】
一方、第1のキャパシタC1において充電が行われている間(すなわち電流計測期間中)第2のキャパシタC2の電圧は、マイクロコンピュータ20を駆動可能な略一定レベルに維持されていることが確認された。
【0059】
図8は、第2のキャパシタC2において充電が行われている様子を示す電流計測装置1の動作波形である。
図8には、充電電流が10mAの場合および100mAのときの第2のキャパシタC2の電圧波形が示されている。また、
図8には、AC/DC変換部10の出力端の電圧波形も示されている。
図8に示すように、充電電流の大きさに応じた傾きで、第2のキャパシタC2の電圧(充電電圧)が増加し、第2のキャパシタC2において、マイクロコンピュータ20を駆動可能な電圧レベルで充電が行われていることが確認された。
【0060】
以上の説明から明らかなように、電流計測装置1は、電流センサ100の二次電流I
2を整流した直流電流によって第1のキャパシタC1を充電し、充電期間内の異なる時点において第1のキャパシタC1における充電電圧を計測する。電流計測装置1は、充電電圧の各計測値Vm1およびVm2から、当該期間Δtにおいて第1のキャパシタC1に蓄積された電荷の量の時間変化率X(=C(Vm2−Vm1)/Δt)を導出し、この時間変化率Xに基づいて、電流センサ100によってセンシングされた電流(一次電流I
1)の実効値I
RMSまたは電流センサ100の二次電流I
2の実効値を導出する。
【0061】
本発明の実施形態に係る電流計測装置1によれば、AD変換器によって交流信号波形をサンプリングすることを要しないので、
図1に示す電流計測装置1Xと比較して、高い計測精度を実現することができる。
【0062】
また、本発明の実施形態に係る電流計測装置1によれば、比較的小さい電流を計測する場合でも、充電期間内において第1のキャパシタC1の電圧を取得する時刻t1と時刻t2との間隔を長くすることで、電流の計測精度を確保することができる。従って、本発明の実施形態に係る電流計測装置1によれば、計測可能な電流の範囲を大きくすること、すなわちワイドダイナミックレンジを実現することができる。
【0063】
また、本発明の実施形態に係る電流計測装置1によれば、電流計測を行わない期間においては、電流センサ100から供給される電力を第2のキャパシタC2に蓄積しておき、第2のキャパシタC2に蓄積した電力によってマイクロコンピュータ20が駆動されるので外部電源が不要である。このように、電流計測装置1においてエナジーハーベスティング技術を適用することで、メンテナンスフリーの電流計測装置を実現することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態に係る電流計測装置1によれば、電力を消費するOPアンプを必要とせず、第1のラインL1および第2のラインL2に電力を消費する要素およびリーク電流を生じさせる要素が接続されていない。従って、本発明の実施形態に係る電流計測装置1は、電流センサ100から供給される電力の利用効率が高く、エナジーハーベスティング技術を適用する電流計測装置の構成として理想的であるといえる。
【0065】
このように、本発明の実施形態に係る電流計測装置1によれば、従来よりも高い計測精度、ワイドダイナミックレンジおよび低消費電力を実現することができる。