特許第6832921号(P6832921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6832921
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】粒子分析装置、及び、粒子分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20210215BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   G01N15/02 C
   G01N21/47 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-517038(P2018-517038)
(86)(22)【出願日】2017年5月9日
(86)【国際出願番号】JP2017017573
(87)【国際公開番号】WO2017195785
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2019年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-97033(P2016-97033)
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】越川 浩行
(72)【発明者】
【氏名】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上野 楠夫
【審査官】 清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−103052(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/087727(WO,A1)
【文献】 特開2010−244320(JP,A)
【文献】 特開平09−096602(JP,A)
【文献】 特開2009−273594(JP,A)
【文献】 特開2001−245168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
G06T 7/00
G01N 21/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を撮像した生画像を記憶する生画像記憶部と、
少なくとも画像処理アルゴリズムが異なる複数の画像処理レシピを記憶するレシピ記憶部と、
前記レシピ記憶部に記憶されている前記複数の画像処理レシピに基づいて複数の画像処理アルゴリズムを前記生画像の少なくとも一部に対して実行し、それぞれのテスト結果画像を出力するテスト画像処理部と、
前記テスト画像処理部から出力されるそれぞれ実行された画像処理アルゴリズムの異なる各テスト結果画像を一覧表示するテスト結果表示部と、
受け付けられたユーザからの入力に基づいて、前記生画像中において画像処理アルゴリズムが実行されるテスト領域を設定するテスト領域設定部と、を備え、
前記テスト領域設定部が、前記生画像における前記テスト領域の位置を前記ユーザからの入力により指定された位置に設定するように構成されていることを特徴とする粒子分析装置。
【請求項2】
前記テスト領域設定部が、前記生画像における前記テスト領域の大きさ、又は、形状をさらに設定するように構成されている請求項1記載の粒子分析装置。
【請求項3】
前記画像処理レシピが、前記画像処理アルゴリズムと、前記画像処理アルゴリズムの設定パラメータと、からなる請求項1記載の粒子分析装置。
【請求項4】
前記テスト結果表示部によって各テスト結果画像が表示された後に、前記生画像の全体に対して実行する画像処理レシピの選択をユーザから受け付ける実行レシピ受付部と、
前記実行レシピ受付部で受け付けられた画像処理レシピに基づいて前記生画像の全体又は前記粒子が撮像された別の生画像の全体に画像処理を実行し、最終画像を出力する最終画像処理部と、
前記最終画像を表示する最終結果表示部と、をさらに備えた請求項1記載の粒子分析装置。
【請求項5】
前記最終画像に基づいて当該最終画像中の粒子の粒子特性を分析する分析部と、
前記粒子分析装置とは別の測定原理により測定された前記粒子の粒子特性と、前記分析部において前記最終画像に基づいて分析された粒子特性とを比較する比較部と、をさらに備えた請求項4記載の粒子分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の粒子分析装置と、
粒子を撮像する撮像機構を備えた粒子観察装置と、を備え、
前記生画像記憶部が、前記粒子観察装置において撮像された画像を前記生画像として記憶するように構成された粒子分析システム。
【請求項7】
粒子を撮像した生画像を記憶する生画像記憶部と、
少なくとも画像処理アルゴリズムが異なる複数の画像処理レシピを記憶するレシピ記憶部と、
前記レシピ記憶部に記憶されている前記複数の画像処理レシピに基づいて複数の画像処理アルゴリズムを前記生画像データの少なくとも一部に対して実行し、それぞれのテスト結果画像を出力するテスト画像処理部と、
前記テスト画像処理部から出力されるそれぞれ実行された画像処理アルゴリズムの異なる各テスト結果画像を同時にディスプレイに表示するテスト結果表示部と
受け付けられたユーザからの入力に基づいて、前記生画像中において画像処理アルゴリズムが実行されるテスト領域を設定するテスト領域設定部としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、
前記テスト領域設定部が、前記生画像における前記テスト領域の位置を前記ユーザからの入力により指定された位置に設定するように構成されていることを特徴とする粒子分析装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を撮像した画像に基づいて当該粒子の分析を行うために用いられる粒子分析装置、及び、粒子分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば所定のプロセスにおいて製造されている粒子が所望の粒子特性を実現できているかどうかを確かめるために、分散媒中の粒子を撮像した生画像に基づいて分析が行われることがある。
【0003】
ここで、確かめられる粒子特性としては粒子径分布の分散が小さく均一に揃っているか、粒子の形状が均一であるか、粒子同士が凝集しているか、凝集している場合には各粒子の大きさや形状がどのようなものか等、その目的に応じて様々なものがある。
【0004】
ところで前記生画像は上述した確かめたい粒子特性を見るのに適した画像となっているとは限らない。例えば各粒子の輪郭が不鮮明であるために粒子の形状を判別する事が難しかったり、凝集していることが予測されてもその凝集体の細かな形状や当該凝集体を構成する各粒子を判別する事が難しかったりすることがある。
【0005】
このため、前記生画像に対して所定の画像処理アルゴリズムを実行し、確かめたい粒子特性を際立たせた画像を生成して、このような画像処理後の画像に基づいて各種分析が行われる場合がある。具体的には特許文献1に示されるように各粒子の輪郭を強調することで各粒子の形状や分布を確かめやすくすることが行われている。
【0006】
しかしながら、画像処理アルゴリズムは様々な種類のものがあり、生画像に対してどの画像処理アルゴリズムを適応するかによって最終的に得られる画像は大きく異なってしまう。このため、多数ある各画像処理アルゴリズムの特性を完全には把握できていない非熟練者は、確かめたい粒子特性に応じた適切な画像処理アルゴリズムをすぐに選択することは難しい。
【0007】
したがって、非熟練者はある画像処理アルゴリズムを試しに実行してみて得られた画像を確認し、所望の粒子特性を際立たせられていない場合には別の画像処理アルゴリズムを試してみるといった試行錯誤を繰り返している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−11224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、例えば非熟練者であっても目的に応じた画像処理アルゴリズムをすぐに選択することができ、粒子特性の分析に適した画像を容易に得ることができる粒子分析装置、及び、粒子分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る粒子分析装置は、分散媒中の粒子を撮像した生画像を記憶する生画像記憶部と、少なくとも画像処理アルゴリズムが異なる複数の画像処理レシピを記憶するレシピ記憶部と、前記レシピ記憶部に記憶されている前記複数の画像処理レシピに基づいて複数の画像処理アルゴリズムを前記生画像の少なくとも一部に対して実行し、それぞれのテスト結果画像を出力するテスト画像処理部と、前記テスト画像処理部から出力されるそれぞれ実行された画像処理アルゴリズムの異なる各テスト結果画像を一覧表示するテスト結果表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、それぞれ実行された画像処理アルゴリズムの異なる各テスト結果画像が一覧表示され、ユーザは各テスト結果画像を比較することができるので、どの画像処理レシピを用いれば目的に応じた画像処理後の画像を得られるかをすぐに理解することができる。
【0012】
したがって、ユーザは各テスト結果画像に基づいて記憶されている画像処理レシピの中から最も分析目的にあったテスト結果画像を得られたものを前記生画像に対して実行することができ、試行錯誤を繰り返さなくても例えば前記生画像から確かめたい粒子特性が強調された画像処理後の画像を得ることができる。
【0013】
前記生画像において確かめたい粒子特性の良く表れていそうな部分に対してのみ画像処理アルゴリズムを実行できるようにして各テスト結果画像に処理結果の差が表れやすくなるようにして、より適切な画像処理レシピを選択できるようにするには、受け付けられたユーザからの入力に基づいて、前記生画像中において画像処理アルゴリズムが実行されるテスト領域を設定するテスト領域設定部をさらに備えたものであればよい。また、このようなものであれば、前記生画像中において一部についてのみ画像処理アルゴリズムが実行されるようにできるので、計算負荷を低減し、各テスト結果画像が表示されるまでの時間を短縮できる。
【0014】
前記生画像データにおいて例えば粒子の凝集が発生している部分に対してその大きさや形に応じて適切なテスト領域を設定できるようにする、あるいは、前記生画像中において大きなコントラスト差が発生している場合でも両方の部分をテスト領域に含められるようにして、目的とする画像処理結果を得やすくするには、前記テスト領域設定部が、前記生画像における前記テスト領域の位置、大きさ、又は、形状を設定するように構成されていればよい。
【0015】
非熟練者であっても複雑な設定を必要とせず、前記生画像に各種画像処理アルゴリズムが実行された各テスト結果画像を簡単に得られるようにするには、前記画像処理レシピが、前記画像処理アルゴリズムと、前記画像処理アルゴリズムの設定パラメータと、からなるものであればよい。
【0016】
ユーザが各テスト結果画像に基づいて最も分析に適した画像処理レシピを選択し、画像処理後の画像によって所望の分析を行えるようにするには、前記テスト結果表示部によって各テスト結果画像が表示された後に、前記生画像の全体に対して実行する画像処理レシピの選択をユーザから受け付ける実行レシピ受付部と、前記実行レシピ受付部で受け付けられた画像処理レシピに基づいて前記生画像の全体に画像処理を実行し、最終画像を出力する最終画像処理部と、前記最終画像を表示する最終結果表示部と、をさらに備えたものであればよい。
【0017】
例えば、前記粒子分析装置以外で得られた粒子特性の数値データやグラフ等の結果と、適切な画像処理が施された前記最終画像から得られる粒子特性を比較して粒子特性の測定に不具合が無いか等を確かめられるようにするには、前記最終画像に基づいて当該最終画像中の粒子の粒子特性を分析する分析部と、前記粒子分析装置とは別の測定原理により測定された前記粒子の粒子特性と、前記分析部において前記最終画像に基づいて分析された粒子特性とを比較する比較部と、をさらに備えたものであればよい。
【0018】
本発明に係る粒子分析装置と、粒子を撮像する撮像機構を備えた粒子観察装置と、を備え、前記生画像記憶部が、前記粒子観察装置において撮像された画像を前記生画像として記憶するように構成された粒子分析システムであれば、例えば粒子の状態を画像処理後の状態で確認しながら各粒子特性について測定したり、その測定結果が妥当なものであるかどうか等を測定とほぼ同時に検討したりすることができる。
【0019】
既存の粒子分析装置において前記生画像を複数の画像処理アルゴリズムにより画像処理した結果をユーザが見比べられるようにし、分析目的にあった画像処理アルゴリズムを簡単に選択できるようにするには、粒子を撮像した生画像を記憶する生画像記憶部と、少なくとも画像処理アルゴリズムが異なる複数の画像処理レシピを記憶するレシピ記憶部と、前記レシピ記憶部に記憶されている前記複数の画像処理レシピに基づいて複数の画像処理アルゴリズムを前記生画像データの少なくとも一部に対して実行し、それぞれのテスト結果画像を出力するテスト画像処理部と、前記テスト画像処理部から出力されるそれぞれ実行された画像処理アルゴリズムの異なる各テスト結果画像を同時にディスプレイに表示するテスト結果表示部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする粒子分析装置用プログラムを用いればよい。また、前記粒子分析装置用プログラムは、CD、DVD、フラッシュメモリ、ハードディスク等の記憶媒体に記憶されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明に係る粒子分析装置によれば、前記生画像の少なくとも一部について複数の画像処理アルゴリズムで画像処理し、それぞれのテスト結果画像を一覧表示するので、ユーザは各テスト結果画像を見比べて最も分析目的に適した画像処理アルゴリズムを含む画像処理レシピがいずれであるかを簡単に判断できる。したがって、非熟練者であっても前記生画像から分析に適した画像処理後の画像を短時間で簡単に作成する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る粒子分析装置、及び、粒子分析システムを示す概略図。
図2】第1実施形態における粒子分析装置の機能ブロック図。
図3】第1実施形態におけるテスト結果表示部による各テスト結果画像の表示態様を示す模式図。
図4】第1実施形態における最終結果表示部による最終画像の表示態様を示す模式図。
図5】本発明の第2実施形態に係る粒子分析装置、及び、粒子分析システムを示す概略図。
図6】第2実施形態における粒子分析装置の機能ブロック図。
【符号の説明】
【0022】
200・・・粒子分析システム
100・・・粒子観察装置
101・・・粒子径分布測定装置
HL ・・・光源
C ・・・セル
DC ・・・撮像機構
PA ・・・粒子特性算出器
102・・・粒子分析装置
1 ・・・生画像記憶部
2 ・・・生画像表示部
3 ・・・レシピ記憶部
4 ・・・テスト領域設定部
5 ・・・テスト画像処理部
6 ・・・テスト結果表示部
7 ・・・実行レシピ受付部
8 ・・・最終画像処理部
9 ・・・最終結果表示部
10 ・・・分析部
11 ・・・比較部
RP ・・・生画像
TP ・・・テスト結果画像
FP ・・・最終画像
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1実施形態に係る粒子分析装置102について各図を参照しながら説明する。第1実施形態の粒子分析装置102は、粒子を撮像した生画像RPに対して所定の画像処理アルゴリズムを実行し、その画像処理後の画像をディスプレイに表示するものである。また、この粒子分析装置102は生画像RPに対して画像処理が行われた最終画像FPに基づいて撮像されている粒子又は粒子群の特性を算出し、前記粒子分析装置102を経由せずに測定された値との比較も行えるように構成してある。
【0024】
前記生画像RPは例えば粒子観察装置の一種であるSEM(走査型電子顕微鏡)100によって撮像されたものである。また、粒子自体を撮像せずに粒子の特性を実測する装置としては例えば粒子特性測定装置の一種である粒子径分布測定装置101を用いることができる。すなわち、第1実施形態においては前記粒子観察装置であるSEM100と粒子特性測定装置である前記粒子径分布測定装置101と、前記粒子分析装置102とが粒子分析システム200を構成している。
【0025】
前記粒子分析システム200を構成する各装置について説明する。SEM100は、粒子が載置される試料台STと、粒子に対して電子線を射出する電子源ESと、前記電子源ESから射出された電子線を偏向し、前記試料台ST中に走査するビーム偏向機構BDと、電子線が照射された粒子から発生する二次電子線や反射電子、吸収電流等の信号により粒子を撮像する撮像機構DCと、前記電子源ES、前記ビーム偏向機構BD、前記撮像機構DCを制御するとともに撮像された粒子の生画像RPが記憶されるコンピュータC1と、を備えている。前記撮像機構DCで撮像され、コンピュータC1に記憶されている粒子の生画像RPは前記粒子分析装置102に送信され記憶される。
【0026】
前記粒子径分布測定装置101は、分散媒中に分散する粒子に対してレーザ光を照射し、粒子により散乱されたレーザ光の散乱光に基づいて、粒子の粒子径分布を測定するものである。より具体的には前記粒子径分布測定装置101は、レーザ光が射出されるレーザ光源LSと、分散媒及び粒子が内部に収容されるセルCと、前記セルCの周囲に配置された複数の検出器D1、D2、D3、D4と、各検出器の出力の一部又は全部に基づいて粒子径分布を算出するコンピュータで構成された粒子径分布算出器C2とを備えている。ここで、検出器は例えば光電子倍増管が用いられる。また、分散媒中の粒子は前記粒子観察装置で撮像された粒子と同一のものであってもよい、撮像された粒子が採取された同じサンプルから別途採取されたものであっても構わない。
【0027】
前記粒子径分布算出器C2は、例えば側方散乱光を検出する側方検出器D3、及び、後方散乱光後方検出器D4から得られる散乱光の強度信号に基づいて、動的光散乱法により前記分散媒中の粒子の粒子径分布を算出するように構成してある。この粒子径分布算出器C2で算出された粒子特性である粒子径分布も前記粒子分析装置102へ送信される。
【0028】
次に前記粒子分析装置102について説明する。前記粒子分析装置102は、例えばCPU、メモリ、A/D、D/Aコンバータ、ディスプレイを含む入出力手段を備えたコンピュータにより構成してある。そしてメモリに格納されている粒子分析装置用プログラムが実行されることにより、図2に示すように生画像記憶部1、生画像表示部2、レシピ記憶部3、テスト領域設定部4、テスト画像処理部5、テスト結果表示部6、実行レシピ受付部7、最終画像処理部8、最終結果表示部9としての機能を少なくとも実現するように構成してある。この粒子分析装置102において所定の画像処理アルゴリズムにより前記生画像RPに対して画像処理が施され、その結果された画像に基づいてユーザは粒子特性に関する分析や考察を行う。
【0029】
以下では各部の機能及び動作について説明する。なお、以下の説明では生画像RP中の粒子の輪郭が不鮮明であるとともに、凝集している部分がある場合を例として説明する。また、本実施形態ではユーザは前記粒子分析装置102を用いて前記生画像RPに対して画像処理アルゴリズムを実行することによって、凝集している部分を構成する各粒子の形状や大きさを確認することを分析目的としている。
【0030】
前記生画像記憶部1は、前記粒子観察装置のコンピュータC1から粒子の撮像された画像である生画像RPを取得し、記憶するものである。ここで前記生画像RPは前記撮像機構DCにおいて所定のデータ形式で保存されているものであり、圧縮又は無圧縮のデジタル写真データである。前記生画像RPのデータ形式については特に限定されないものであり、例えば前記SEM100から出力されたものであって前記粒子分析装置102において画像処理が行われていないものであればよい。
【0031】
前記生画像表示部2は、図3に示すように前記生画像記憶部1に記憶されている前記生画像RPについてそのままディスプレイの上半分の領域上に表示するものである。本実施形態では前記生画像表示部2により表示される生画像RPは各粒子の輪郭が不鮮明であるとともに、粒子が凝集していると予想される箇所はその大まかな外形のみが表れており、その詳細な構造が判別しにくい場合を示している。
【0032】
前記レシピ記憶部3は、少なくとも画像処理アルゴリズムが異なる複数の画像処理レシピを予め記憶するものである。ここで画像処理レシピは前記テスト画像処理部5、又は前記最終画像処理部8に入力される指令であって、この指令に基づいて実行されるプログラムや処理が決定される。前記テスト画像処理部5又は前記最終画像処理部8は入力された画像処理レシピの種類ごとに異なるプロセッシング又は出力をすることになる。
【0033】
前記画像処理レシピのデータ構造について詳述すると、当該画像処理レシピは画像処理アルゴリズムに関するデータと、当該画像処理アルゴリズムを動作させるのに必要な設定パラメータに関するデータとが対になったものである。この画像処理レシピは、様々な粒子の分析に対応できるように複数種類が予め設定してある。前記画像処理アルゴリズムとしては、例えば粒子同士、あるいは、粒子とバックグラウンドとの境界を見つけるためのものとして分水嶺、モルフォロジー演算、ハフ変換、二値化処理等が挙げられる。また、画像のノイズを除去するためのものとしては移動平均フィルタ、フーリエ変換等が挙げられる。前記設定パラメータとしては、モルフォロジー演算の場合は構造化要素、移動平均フィルタの場合はフィルタサイズなどのことである。本実施形態では少なくとも2つの異なる画像処理アルゴリズムを用いて、それぞれ別々の画像処理レシピとしてある。なお、画像処理レシピは、同じ画像処理アルゴリズムを用いながら設定パラメータを異ならせてあるものであってもよい。
【0034】
前記テスト領域設定部4は、受け付けられたユーザからの入力に基づいて、前記生画像RP中において画像処理アルゴリズムが実行されるテスト領域TRを設定する。前記テスト領域設定部4は、ユーザがマウス等のポインティングデバイスにより入力する前記生画像RP上の座標データを受け付け、図3に示されるように前記生画像RP上において点線で区切られた領域をテスト領域TRとして設定する。すなわち、ユーザは前記生画像RP上において任意の場所、及び、任意の大きさに区切られた矩形状のテスト領域TRを設定することができる。本実施形態ではユーザは凝集している部分の詳細な構造を分析したいので、表示されている生画像RP上において大きな塊となり凝集が発生している可能性が高い部分を囲うように前記テスト領域TRを設定している。
【0035】
前記テスト画像処理部5は、前記生画像RPにおいて前記テスト領域TRが設定されている部分に対して前記レシピ記憶部3に記憶されている複数の画像処理レシピによる画像処理を順番又は同時並列的に実行する。そして前記テスト画像処理部5は、各画像処理レシピ、すなわち、各画像処理アルゴリズムに対応するテスト結果画像TPのデータを出力する。
【0036】
前記テスト結果表示部6は、前記テスト画像処理部5から出力されるそれぞれ実行された画像処理アルゴリズムの異なる各テスト結果画像TPを同時にディスプレイに表示する。より具体的には図3の下半分のページ領域に対して各テスト結果画像TPを並べて一覧表示するようにしてある。なお、さらに多数のテスト結果画像TPがある場合にはページをスクロールすることでさらに同時に表示させることもできる。さらに複数のテスト結果画像は、複数のディスプレイにまたがって表示されてもよい。
【0037】
この実施形態では、1つ目のテスト結果画像TPに示されるように第1の画像処理レシピではテスト領域TRにあった対象が消失してしまっている。また、2つ目のテスト結果画像TPでは凝集している粒子を一つの大きな粒子として検出しているが、凝集している部分を構成する各粒子を個別に検出できていない。さらに3つ目のテスト結果画像TPでは凝集している部分を構成する各粒子を検出することがでている。これらのように各テスト結果画像TPが同時に一画面に表示されているので、凝集状態の粒子を個々に分析したいユーザは3つ目の画像レシピによる画像処理が凝集部分の分析に最も適したものであることを直感的に理解できる。
【0038】
前記実行レシピ受付部7は、前記テスト結果表示部6によって各テスト結果画像TPが表示された後に、前記生画像RPの全体に対して実行する画像処理レシピの選択をユーザから受け付ける。例えば、画面上に前記レシピ記憶部3に記憶されているいずれの画像処理レシピで前記生画像RPに対して画像処理を行うかの選択をポップアップが表示される。この例では各テスト結果画像TPの表示からユーザは3番目の画像処理レシピによる画像処理をマウス又はキーボードで選択し、その入力が実行レシピとして前記実行レシピ受付部7に受け付けられる。
【0039】
前記最終画像処理部8は、前記実行レシピ受付部7で受け付けられた画像処理レシピに基づいて前記生画像RPの全体に画像処理を実行し、最終画像FPを出力する。
【0040】
前記最終結果表示部9は、例えば図4に示すように前記生画像RPと、前記最終画像FPを同時に表示する。この例の最終画像FPではテスト領域TR内に含まれていた凝集している部分だけでなく、設定されたテスト領域TRの外側にある凝集している部分について、その凝集を構成する各粒子まで検出されている。
【0041】
前記分析部10は、前記最終画像FPに基づいて画像中の粒子の粒子特性を分析するものである。本実施形態では、前記最終画像FPに基づいて粒子径分布を算出するものである。また、前記分析部10は前記粒子径分布測定装置101とは別の演算アルゴリズムにより前記最終画像FPに基づいて粒子径分布を算出するように構成してある。例えば前記分析部10は、前記最終画像FP中の各粒子がそれぞれ占める画素の個数から各粒子の大きさを算出し、粒子径分布を算出する。
【0042】
前記比較部11は、前記粒子径分布測定装置101により得られた粒子特性である粒子径分布と、画像処理アルゴリズムにより処理された前記最終画像FPにより得られた粒子特性である粒子径分布とを比較するものである。例えば、それぞれの粒子径分布のグラフを同時にディスプレイ上に表示する。
【0043】
このように構成された前記粒子分析装置102によれば、分散媒中の粒子が撮像された生画像RPの一部分に対して複数の異なる画像処理アルゴリズムで画像処理を行い、それぞれの画像処理の結果である前記テスト結果画像TPを同時に一覧表示することができる。
【0044】
したがって、ユーザはディスプレイ上に表示される複数のテスト結果画像TPを見比べることができ、ユーザの望む粒子特性の分析に最も適した画像処理アルゴリズムを含む画像処理レシピがどれであるかを簡単に見分けることができる。
【0045】
このため、ユーザが非熟練者であり、画像処理アルゴリズムの特性等にそれほど詳しくなくても分析目的に合った画像処理アルゴリズムで処理された前記最終画像FPを短時間で簡単に得ることができる。
【0046】
さらに、前記テスト領域設定部4はユーザの入力に基づいて画像処理アルゴリズムのテストが行われるテスト領域TRを任意に設定できる。このため、ユーザは例えば前記生画像RP中においてユーザが分析したい対象のみをテスト領域TRに設定できる。この場合は、分析したい対象に最も合った画像処理を実現しやすい。
【0047】
また、ユーザは前記生画像RP中における明暗差が大きい場合にはその両方の領域が含まれるようにテスト領域TRを設定することもできる。この場合には、明暗差を考慮した画像処理を実現できるものを探すことが可能となる。
【0048】
加えて、前記生画像RP中において一部分のみに画像処理アルゴリズムによる画像処理が行われるので計算負荷を低減し、各テスト結果画像TPが出力され、表示されるまでの時間を短くすることができる。このため、ユーザはそれほど時間をかけずに分析に適した画像処理アルゴリズムを含む画像処理レシピを選択する事が可能となる。
【0049】
さらにユーザは前記最終画像FPを見ることで前記粒子径分布測定装置101から出力されている粒子特性の測定結果が妥当なものであるかどうかを確認する事できる。
【0050】
次に本発明の第2実施形態について図5及び図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては第1実施形態において説明した部材と対応する部材については同じ符号を付すこととする。
【0051】
第2実施形態の粒子分析システム200は、粒子の撮像と粒子特性の測定を個別の装置でそれぞれ行うのではなく、粒子観察装置と粒子特性測定装置の機能を1つの装置で兼ねる粒子径分布測定装置100、101で行われるように構成してある。すなわち、粒子分析システム200は、粒子を撮像するとともに、撮像された画像に基づいて粒子径分布の算出する粒子径分布測定装置100、101と、粒子の撮像された生画像RPに対して各種画像処理アルゴリズムを実行する粒子分析装置102とからなる。この第2実施形態では前記粒子径分布測定装置100、101から出力される前記生画像RPを示すデータを前記粒子分析装置102が取得して記憶するようにしてある。
【0052】
まず、第2実施形態の粒子径分布測定装置100、101について説明する。図5に示すように前記粒子径分布測定装置100、101は、粒子を含む分散媒が内部に収容されたセルCを中心として、ハロゲン光源HL、撮像機構DCと、を一直線上に設けてある。すなわち、前記ハロゲン光源HLから射出された光のうち前記セルCを通過する透過光により分散媒中の粒子の画像を撮像するようにしてある。さらに前記粒子観察装置は、前記撮像機構DCから出力される前記生画像RPのデータに基づいて粒子特性を算出する粒子特性算出器PAを備えている。
【0053】
前記粒子特性算出器PAは、例えばCPU、メモリ、AC/DCコンバータ、ディスプレイを含む入出力手段を備えたコンピュータにより構成してある。すなわち、前記粒子特性算出器PAはメモリに格納されている粒子観察装置用プログラムが実行されることにより、前記生画像RPのデータから粒子特性を算出するように構成してある。本実施形態の前記粒子特性算出器PAは、前記生画像RPに基づいて各粒子の大きさを算出し、粒子特性として粒子径分布を算出するようにしてある。より具体的には前記粒子特性算出器PAは、前記生画像RPにおける例えば輝度の差から粒子である領域を抽出し、その領域が何画素で構成されているかに基づいて粒子の大きさを算出するように構成してある。このようにして前記粒子特性算出器PAは、粒子径に対する出現頻度を表すグラフや数値データを生成し、出力する。
【0054】
なお、測定される粒子特性は粒子径分布に限られるものではなく、粒子の形状、粒子の色等であってもよい。
【0055】
次に第2実施形態の粒子分析装置102について説明する。図6に示すように粒子分析装置102を構成する各部については第1実施形態と同様のものであるが、生画像RPを取得する対象と、粒子特性である粒子径分布を取得する対象が異なっている。より具体的には、生画像記憶部1は前記粒子観察装置の撮像機構DCから生画像RPのデータを取得して記憶するように構成してある。また、最終画像FPから算出された粒子径分布と比較される実測された粒子径分布のデータについて、比較部11は前記粒子観察装置の粒子特性算出器PAから取得するように構成してある。
【0056】
このような第2実施形態の粒子分析システム200及び粒子分析装置102であっても第1実施形態と同様の効果を奏し得る。
【0057】
その他の実施形態について説明する。
【0058】
粒子分析装置が取得する生画像はSEMにより撮像されたものに限られず、分散媒中の粒子を例えば顕微鏡等で撮像した画像であってもよい。すなわち、粒子の撮像された画像であればよく、生画像の生成過程については特に限定されない。また、生画像はモノクロだけなく、グレースケール又はカラーであっても構わない。さらに生画像は、第1実施形態のように二次電子線画像に限られるものではなく、光学画像であってもよい。また、生画像はX線顕微鏡やラマン顕微鏡で撮像されるような各画素中にスペクトル情報を有しているような画像であっても構わない。
【0059】
生画像、テスト結果画像、及び、最終画像は、静止画像であってもよいし、複数の静止画像が時系列的に配列された動画像であっても構わない。例えば、テスト画像処理部が生画像として複数の静止画像からなる動画像を受け付け、この動画像に対して複数の画像処理アルゴリズムを実行するようにし、テスト結果表示部が、複数のテスト結果画像として複数の動画像を一覧表示するようにしてもよい。さらに、最終画像処理部は生画像の全領域に対してユーザが選択した画像処理アルゴリズムを実行し、最終画像として動画像が最終結果表示部により表示されるようにしてもよい。
【0060】
また、テスト画像処理部が生画像データして静止画像を受け付けて複数の画像処理アルゴリズムを実行し、最終画像処理部においては別の動画像に対してユーザが選択した画像処理アルゴリズムが実行されるようにしてもよい。
【0061】
前記実施形態では凝集している部分をより詳細に表示するための画像処理レシピを選択する場合を例として説明したが、その他の目的で本発明に係る粒子分析装置を用いても構わない。例えば、凝集している部分について各粒子の詳細よりも凝集部の外形を正確に分析したい場合には、凝集している部分の輪郭のみを検出する画像処理レシピを選択すればよい。また、粒子や粒子が凝集している状態の概略だけを観察したい場合には、生画像を鮮明化するのではなく、逆に不鮮明化するような処理に適した画像処理アルゴリズムを粒子分析装置によるテスト画像の一覧表示で見つけられるようにしてもよい。
【0062】
前記実施形態では1つの生画像について複数の画像処理レシピによる画像処理を実行し、最終的に1つの最終画像を得ていたが、例えば1つの生画像について最も分析に適した画像処理レシピがユーザにより選択された後に、別の複数の生画像に対してバッチ処理するようにしてもよい。また、テスト領域設定部により設定されるテスト領域の形状は矩形状に限られない。円形、楕円形、三角形等の多角形、ユーザにより入力される自由曲線により規定される閉領域であっても構わない。
【0063】
画像処理レシピについては、画像処理アルゴリズムだけを含むものであってもよいし、画像処理アルゴリズム、画像処理アルゴリズムの設定パラメータ以外の情報を含むものであってもよい。例えば、画像処理レシピが、画像処理アルゴリズム、設定パラメータ、画像処理アルゴリズムで生成された画像に対して実行される粒子特性算出アルゴリズムまで含み、テスト画像処理部において生画像からテスト結果画像が生成されるとともに、そのテスト結果画像に基づいて粒子特性の算出テストも併せて行われるようにしてもよい。例えばディスプレイにおいて、各画像処理レシピを実行したテスト結果画像の比較とともに、粒子特性の比較も行えるようにすれば、より目的に応じた処理が実行できているものを簡単に選択する事が可能となる。
【0064】
粒子径分布測定装置による粒子径分布の測定は画素の大きさに基づくものに限られず、例えば粒子の動きから拡散係数を求め、その拡散係数から粒子径分布を算出するようにしてもよい。また、分析部による粒子特性の分析は粒子特性測定装置とは別の演算アルゴリズムに基づくものであってもよい。加えて、分析部及び比較部については粒子分析装置から省略し、最終画像を表示するまでの機能を有するように構成してもよい。また、テスト領域設定部を粒子分析装置から省略し、常に生画像全体に対して画像処理アルゴリズムを実施してテスト結果画像を得るように構成してもよい。また、第2実施形態のように粒子の撮像と粒子特性の測定を1つの装置と行えるように各機能を一体化できるようにするには、例えば光学顕微鏡と静的散乱法に基づく粒子径分布測定装置を一体化すればよい。
【0065】
粒子分析装置が表示する生画像、テスト結果画像、最終画像を表示するためのディスプレイは例えデュアルディスプレイを用いても構わない。このようなものであれば、例えば一方のディスプレイに生画像を表示し、他方のディスプレイにテスト結果画像を表示するようにして画像処理の効果を捉えやすくし、ユーザがより適切な画像処理レシピを選択できるようになる。
【0066】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明であれば、非熟練者であっても前記生画像から分析に適した画像処理後の画像を短時間で簡単に作成する事が可能な粒子分析装置を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6