特許第6833091号(P6833091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キユーピー株式会社の特許一覧 ▶ キユーピー醸造株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6833091
(24)【登録日】2021年2月4日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】酸性液状食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20210215BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20210215BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20210215BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20210215BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L23/00
   A23L29/238
   A23L29/269
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-104713(P2020-104713)
(22)【出願日】2020年6月17日
【審査請求日】2020年6月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591112371
【氏名又は名称】キユーピー醸造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】野口 陽平
(72)【発明者】
【氏名】興村 絢子
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−138661(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/001770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/60
A23L 23/00
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする、
酸性液状食品。
【請求項2】
前記ガム類の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性液状食品。
【請求項3】
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の酸性液状食品。
【請求項4】
糖類をさらに含む、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項5】
20℃での粘度が3,000mPa・s以上70,000mPa・s以下であることを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項6】
20℃でのブリックスが35以上70以下であることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項7】
pHが3.5以上5.0以下であることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸性液状食品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸性液状食品の製造方法であって、
水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を、前記加熱糊化型澱粉が未糊化の状態で混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を加熱して、前記加熱糊化型澱粉を糊化させて、増粘させる工程と、
を含む、酸性液状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性液状食品に関し、詳細には、少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む酸性液状食品に関する。また、本発明は、少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む酸性液状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンビニエンスストアやスーパーマーケットにて販売されているパンや弁当、おにぎり等は調味のため、ソース等の液状食品が使用されている。これらの液状食品は、それ自体の持つ本来の風味が良いことが求められるだけでなく、使用する目的によっては機能性が求められる。この機能性のなかでも特に求められる機能性として、パンや弁当、おにぎり等に調味した後、パンや米飯にすぐに染み込んでしまわないということが挙げられる。
【0003】
例えば、パンや生地などから液だれしにくく、食材等への染み込みがなく、焼成時の耐熱保形性及び色の保持性に優れ、懸濁安定性、容器から取り出す際の流動性に優れた液状食品として、耐酸安定性に優れるセルロース複合体と、果実及び/又は野菜を含有する液状食品が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−074850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、酸性液状食品に多量の澱粉を含有させて粘性を上げ、パンや米飯に染み込み難くすることを試みたが、澱粉として冷水膨潤型澱粉を用いた場合、酸性液状食品の製造工程の初期段階で増粘してしまい、原料の撹拌・混合を容易に行うことができず、製造適性が劣るという課題を知見した。そこで、酸性液状食品に澱粉として冷水膨潤型澱粉の代わりに加熱糊化澱粉を用いたところ、今度は長期保存後で粘性を維持できず、さらには離水し易いという新たな課題を知見した。また、加熱糊化澱粉は冷水膨潤型澱粉のように製造工程の初期段階で増粘しないため、澱粉自体が沈殿してしまい、製造適性が劣るという課題も知見した。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、加熱糊化型澱粉及び特定のガム類を一定の割合で含有させ、かつ、粘度及びブリックスを調節することによって、上記課題が解決できることを知見した。本発明者等は、当該知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一態様によれば、
少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、
前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、
前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、
前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、
20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、
20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする、
酸性液状食品が提供される。
【0009】
本発明の態様においては、前記ガム類の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の態様においては、前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.05質量部以上0.25質量部以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、酸性液状食品が糖類をさらに含むことが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、20℃での粘度が3,000mPa・s以上70,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、20℃でのブリックスが35以上70以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、pHが3.5以上5.0以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の態様によれば、
上記の酸性液状食品の製造方法であって、
水、加熱糊化型澱粉 、及びガム類を、前記加熱糊化型澱粉が未糊化の状態で混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を加熱して、前記加熱糊化型澱粉を糊化させて、増粘させる工程と、
を含む、酸性液状食品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品を提供することができる。このような酸性液状食品は消費者の食欲を惹起することができ、酸性液状食品のさらなる市場拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<酸性液状食品>
本発明の酸性液状食品は、少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含むものであり、糖類、酸材及び他の原料等をさらに含んでもよい。
【0018】
本発明の酸性液状食品は、特に限定されず、例えば、ソース、たれ、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ及びこれらに類する他の食品が挙げられる。
【0019】
(酸性液状食品のpH)
酸性液状食品のpHは、特に限定されないが、例えば、3.5以上6.0以下であり、好ましくは3.6以上であり、より好ましくは4.0以上であり、さらに好ましくは4.3以上であり、また、好ましくは5.5以下であり、より好ましくは5.0以下であり、さらに好ましくは4.7以下である。酸性液状食品のpHが上記範囲内であれば、酸性液状食品の微生物発生を制御して保存性を高めながら、酸性液状食品の風味のバランスを良好にすることができる。
なお、酸性液状食品のpHの値は、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF−72)を用いて測定した値である。
【0020】
(酸性液状食品の粘度)
酸性液状食品の粘度は、20℃において、2,500mPa・s以上であり、好ましくは3,000mPa・s以上であり、より好ましくは4,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは5,000mPa・s以上であり、さらにより好ましくは10,000mPa・s以上であり、また、好ましくは100,000mPa・s以下であり、より好ましくは70,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは60,000mPa・s以下であり、さらにより好ましくは50,000mPa・s以下である。酸性液状食品の粘度が上記範囲内であれば、パンや米飯に染み込み難いものを得ることができる。
なお、酸性液状食品の粘度は、BL形粘度計を使用し、品温20℃、回転数6rpmの条件で、粘度が1,000mPa・s未満の場合:ローターNo.1、1,000mPa・s以上5,000mPa・s未満の場合:ローターNo.2、5,000mPa・s以上20,000mPa・s未満の場合:ローターNo.3、20,000mPa・s以上100,000mPa・s未満の場合:ローターNo.4を使用し、測定開始後3分後の示度により算出した値である。また、粘度が100,000mPa・s以上の場合はBH形粘度計を使用し、品温20℃、回転数2rpmの条件で、粘度が500,000mPa・s未満の場合:ローターNo.6、500,000mPa・s以上の場合:ローターNo.7を使用し、測定開始後3分後の示度により計算した値である。
【0021】
(酸性液状食品のブリックス)
酸性液状食品のブリックスは、20℃において、30以上であり、好ましくは35以上であり、より好ましくは40以上であり、さらに好ましくは45以上であり、また、好ましくは70以下であり、より好ましくは65以下であり、さらに好ましくは60以下である。酸性液状食品のブリックスが上記範囲内であれば、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難いものを得ることができる。
なお、酸性液状食品のブリックスの値は、1気圧、品温20℃とした時に、屈折計を用いて測定した値である。
【0022】
(酸性液状食品の水分含量)
酸性液状食品の水分含量は、特に限定されず、他の成分の含有量に応じて適宜設定することができる。酸性液状食品の水分含量は、例えば、60質量%未満であり、好ましくは50質量%未満であり、さらに好ましくは40質量%未満であり、さらにより好ましくは35質量%未満である。酸性液状食品の水分含量が上記範囲内であれば、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難いものを得ることができる。
【0023】
(加熱糊化型澱粉)
澱粉には、加熱糊化型澱粉と冷水膨潤型澱粉があり、本発明では加熱糊化型澱粉を用いる。加熱糊化型澱粉は、水を加えて高温で、より具体的には、例えば70℃程度以上で加熱することで糊化し、吸水して膨潤すると同時に粘性を呈する澱粉である。一方、冷水膨潤型澱粉は、糊化した状態の性質がそのまま維持された澱粉であり、加熱を必要とせず常温(20℃)の水で膨潤し粘性を呈する澱粉である。本発明においては、澱粉として加熱糊化型澱粉を用いると、酸性液状食品の製造工程の初期段階では高温がかからずに増粘しないため、原料の撹拌・混合を容易に行うことができる。その後、混合物の加熱処理の際の熱により増粘し、適度な粘性の酸性液状食品を得ることができる。一方、澱粉として冷水膨潤型澱粉を用いると、酸性液状食品の製造工程の初期段階で増粘してしまい、原料の撹拌・混合を容易に行うことができず、製造適性が劣るものとなる。
【0024】
加熱糊化型澱粉としては、天然澱粉及び加工澱粉が挙げられるが、本発明においては加工澱粉を用いる。天然澱粉としては、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉等が挙げられる。加工澱粉としては、例えば、これらの天然澱粉を加工したものが挙げられる。より詳細には、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等、あるいは湿熱処理澱粉等の加工澱粉が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
酸性液状食品中の加熱糊化型澱粉の含有量は、酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以下である。加熱糊化型澱粉の含有量が上記範囲内であれば、製造適性を向上させながら、酸性液状食品の長期保存後の離水や粘度の低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難いものを得ることができる。
【0026】
(ガム類)
本発明の酸性液状食品にガム類を配合することで、酸性液状食品の粘度を上記の好適な範囲内に調節することができる。ガム類の中でも、キサンタンガム及びグアーガムの少なくとも1種を用いることで、酸性液状食品の長期保存後の離水を防止したり、粘度の低下を防止したりすることができる。
【0027】
酸性液状食品中のガム類の含有量は、加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上であり、また、好ましくは0.25質量部以下であり、より好ましくは0.20質量部以下である。また、ガム類の含有量は、酸性液状食品全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。ガム類の含有量が上記範囲内であれば、酸性液状食品の長期保存後の離水を防止したり、粘度の低下を防止し易くなる。なお、ガム類としてキサンタンガム及びグアーガムの両方が含まれる場合には、その合計量が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0028】
(糖類)
本発明の酸性液状食品に糖類を配合することで、酸性液状食品のブリックスを上記の好適な範囲内に調節することができる。本明細書における糖類は、例えば、ぶどう糖及び果糖等の単糖類、蔗糖、麦芽糖、及びトレハロース等の二糖類、オリゴ糖等に加え、還元水あめ等の糖アルコール、食物繊維、セルロース等も含む概念である。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。分子量が小さい方がブリックスを上げる際効に率的なため、単糖類及び二糖類が好適である。酸性液状食品に糖類を配合することで、酸性液状食品の使用時に、パンや米飯に染み込み難くなる。
【0029】
酸性液状食品中の糖類の含有量は、糖類の種類や目的とするブリックスに応じて適宜調節することができる。例えば、糖類の含有量は、酸性液状食品全体に対して、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。糖類の含有量が上記範囲内であれば、酸性液状食品の使用時に、パンや米飯に染み込み難くなる。
【0030】
(酸材)
本発明の酸性液状食品に酸材を配合することで、酸性液状食品のpHを上記の好適な範囲内に調節することができる。酸材としては、例えば、食酢(酢酸)、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸等の有機酸及びそれらの塩、燐酸、塩酸等の無機酸及びそれらの塩、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
酸性液状食品中の酸材の含有量は、酸材の種類や目的とするpHに応じて適宜調節することができる。例えば、酸材として食酢(酸度5%)を用いる場合、食酢の含有量は、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは27質量%以下である。食酢(酸度5%)の含有量が上記範囲内であれば、酸性液状食品の微生物発生を制御して保存性を高めながら、酸性液状食品の風味のバランスを良好にすることができる。
【0032】
(他の原料)
酸性液状食品は、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状食品に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、食塩、胡麻、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、からし粉、胡椒等の香辛料、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0033】
<酸性液状食品の製造方法>
本発明の酸性液状食品の製造方法の一例について説明する。例えば、まず、加熱糊化型澱粉、ガム類(キサンタンガム、グアーガム)、糖類、食酢、食塩、及び水を均一になるように常温下(例えば、10〜30℃)で撹拌・混合し、混合物を得る。各原料を常温下で撹拌・混合することで混合物中の加熱糊化型澱粉を未糊化の状態に保つことが、加熱前に増粘させないために重要である。その際、加熱糊化型澱粉及びガム類の含有量を適切に調節することで、混合物中の加熱型加工澱粉の沈降を防ぎ、製造適性に優れる混合物を得ることができる。
【0034】
続いて、得られた混合物を加熱して、適度な粘性の酸性液状食品を製造することができる。加熱の条件は、混合物中の加熱糊化型澱粉が十分に糊化する程度の加熱時間及び時間で選択すればよく、例えば、90℃以上の温度で5分以上の時間で加熱すればよい。
【0035】
本発明の酸性液状食品の製造には、通常の酸性液状食品の製造に使われる装置を用いることができる。このような装置としては、例えば、一般的な撹拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。撹拌機の撹拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0037】
<酸性液状食品の製造例>
[実施例1〜17、比較例1、4、5、7〜12]
表1〜3に記載の配合割合に準じ、酸性液状食品を製造した。具体的には、まず、加熱糊化型澱粉(架橋澱粉)、ガム類(キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム)、糖類(液糖:ぶとう糖と果糖を主成分とするもの)、食酢(酸度5%)、食塩、及び水を均一になるように20℃で撹拌・混合し、混合物を得た。なお、混合物中の加熱糊化型澱粉は未糊化の状態であった。続いて、得られた混合物を90℃で10分間加熱し、加熱糊化型澱粉を糊化させて、増粘した酸性液状食品を製造した。
【0038】
[比較例2、3、6]
表3に記載の配合割合に準じ、酸性液状食品の製造を試みた。しかし、加熱糊化型澱粉(架橋澱粉)、糖類(液糖:ぶとう糖と果糖を主成分とするもの)、食酢(酸度5%)、食塩、及び水を均一になるように撹拌・混合しようとしたところ、この時点で澱粉の分散性が悪く、製造することができなかった。
【0039】
[比較例13、14]
表3に記載の配合割合に準じ、酸性液状食品の製造を試みた。しかし、冷水膨潤型澱粉(グラニュラー インスタント スターチ)、ガム類(キサンタンガム)、糖類(液糖:ぶとう糖と果糖を主成分とするもの)、食酢(酸度5%)、食塩、及び水を均一になるように撹拌・混合しようとしたところ、この時点で澱粉が膨潤、増粘し、撹拌・混合が煩雑であり、製造することができなかった。
【0040】
(pH測定)
上記で得られた実施例1〜17及び比較例1、4、5、7〜12の酸性液状食品について、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF−72)を用いてpHを測定した。実施例1〜17及び比較例1、4、5、7〜12の酸性液状食品のpHは全て3.6以上4.7以下の範囲内であった。
【0041】
(ブリックス測定)
上記で得られた実施例1〜17及び比較例1、4、5、7〜12の酸性液状食品について、品温20℃で、デジタル屈折計(株式会社アタゴ製デジタル屈折計RX−7000i)を使用してブリックスを測定した。測定結果を表1〜3に示した。なお、表3において、酸性液状食品を製造できなかった比較例2、3、6、13、14については、未測定(「−」)と示した。
【0042】
(粘度測定)
上記で得られた実施例1〜17及び比較例1、4、5、7〜12の酸性液状食品について、BL形粘度計を使用し、品温20℃、回転数6rpmの条件で、粘度が1,000mPa・s未満の場合:ローターNo.1、1,000mPa・s以上5,000mPa・s未満の場合:ローターNo.2、5,000mPa・s以上20,000mPa・s未満の場合:ローターNo.3、20,000mPa・s以上100,000mPa・s未満の場合:ローターNo.4を使用し、測定開始後3分後の示度により、粘度(mPa・s)を算出した。各酸性液状食品について、粘度測定を3回行って平均値を採用し、測定結果を表1〜3に示した。なお、表3において、酸性液状食品を製造できなかった比較例2、3、6、13、14については、未測定(「−」)と示した。
【0043】
(物性評価)
上記で得られた実施例1〜17及び比較例1、4、5、7〜12の酸性液状食品について、製造直後のもの、及び袋に充填したうえで温度25℃の恒温器中で210日保存試験を行ったものについて複数の訓練されたパネルにより下記の基準で評価した。評価結果を表1〜3に示した。なお、表3において、酸性液状食品を製造できなかった比較例2、3、6、13、14の未評価の項目は、「−」と示した。
[評価基準](離水)
○:酸性液状食品は、上記期間の保存後であっても、離水が生じていなかった。
×:酸性液状食品は、上記期間の保存後には、離水が生じていた。
[評価基準](粘度低下)
○:酸性液状食品は、上記期間の保存後の粘度が、製造直後の粘度に比べて10%未満の低下率であった。
×:酸性液状食品は、上記期間の保存後の粘度が、製造直後の粘度に比べて10%以上の低下率であった。
[評価基準](製造適性)
◎:加熱前に粘度が高すぎず、酸性液状食品の製造工程における撹拌・混合が非常に行い易く、かつ加熱糊化型澱粉の分散性が非常に良かった。
○:加熱前に粘度が高すぎず、酸性液状食品の製造工程における撹拌・混合が行い易く、加熱糊化型澱粉の分散性が非常に良かった。または、加熱前に粘度が高すぎず、酸性液状食品の製造工程における撹拌・混合が非常に行い易く、加熱糊化型澱粉の分散性が良かった。
×:加熱前に増粘しており、酸性液状食品の製造工程における撹拌・混合が十分に行えず、適切に酸性液状食品を製造できなかった。あるいは、澱粉の分散性が悪く、適切に酸性液状食品を製造できなかった。
[評価基準](染み込み難さ)
形及び高さが同じである長方形の穴が開いた型を用いて、スライスした食パンの断面に酸性液状食品を同量になるように塗布し、20℃で24時間後静置した後、染み込みの有無を確認した。
◎:染み込まずに保形されており、十分留まっていた。
○:わずかに染み込んだが大部分が保形されており、問題無かった。
×:ほとんど保形されず、染み込んでしまった。
【0044】
実施例1〜17の酸性液状食品は、製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難いものであった。
比較例2、3、及び6の酸性液状食品は、澱粉の分散性が悪く、適切に酸性液状食品を製造できなかった。
比較例13及び14の酸性液状食品は、加熱殺菌前に増粘しており、酸性液状食品の製造工程における撹拌・混合が十分に行えず、適切に酸性液状食品を製造できなかった。
比較例1、4、5、7〜12の酸性液状食品は、製造適性に劣ったか、長期保存後の離水及び粘度低下が発生したか、あるいは、パンや米飯に染み込み易いものであった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【要約】
【課題】製造適性に優れ、長期保存後の離水及び粘度低下を防止し、かつパンや米飯に染み込み難い酸性液状食品の提供。
【解決手段】本発明は、少なくとも、水、加熱糊化型澱粉、及びガム類を含む、酸性液状食品であって、前記加熱糊化型澱粉の含有量が、前記酸性液状食品全体の0.5質量%以上4.5質量%以下であり、前記ガム類の含有量が、前記加熱糊化型澱粉1質量部に対して0.03質量部以上であり、前記ガム類が、キサンタンガム及び/又はグアーガムであり、20℃での粘度が2,500mPa・s以上であり、20℃でのブリックスが30以上であることを特徴とする。
【選択図】なし