(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該吸着材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を吸着するための吸着材である請求項4に記載の吸着材。
該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である請求項6に記載の吸蔵材。
該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である請求項9に記載の分離材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分子金属錯体を備えたガス吸着材、吸蔵材、分離材等の実用化に際しては、圧壊強度と繰り返し耐久性の両立が求められている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、圧壊強度と繰り返し耐久性が同時に優れたガス吸着材、吸蔵材、分離材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討し、周期表の1〜13族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンとアニオン性配位子とを含む金属錯体と、熱可塑性樹脂とを含む組成物であって、金属錯体と熱可塑性樹脂との質量比が70:30〜99:1の範囲内であり、かつ円柱状試験片を一軸加圧にて測定した組成物のヤング率が0.06GPa以上1.6GPa以下の範囲にある組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。本発明は以下の通りである。
【0009】
項1.周期表の1〜13族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンとアニオン性配位子とを含む金属錯体と、熱可塑性樹脂とを含む組成物であって、金属錯体と熱可塑性樹脂との質量比が70:30〜99:1の範囲内であり、かつ円柱状試験片を一軸加圧にて測定した組成物のヤング率が0.06GPa以上1.6GPa以下の範囲にある組成物。
項2.前記アニオン性配位子が、多価カルボン酸化合物であることを特徴とする項1に記載の組成物。
項3.前記金属錯体が該金属イオンに多座配位可能な有機配位子を含むことを特徴とする項1または項2に記載の組成物。
項4.成形体である項1〜項3のいずれか一項に記載の組成物。
項5.項1〜項4のいずれか一項に記載の組成物からなる吸着材。
項6.該吸着材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を吸着するための吸着材である項5に記載の吸着材。
項7.項1〜項4のいずれか一項に記載の組成物からなる吸蔵材。
項8.該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である項7に記載の吸蔵材。
項9.気密保持可能でガスの出入口を備えた耐圧容器を備え、耐圧容器の内部にガス吸蔵空間を設けたガス貯蔵装置であって、前記ガス吸蔵空間に項7または項8に記載の吸蔵材を内装してあるガス貯蔵装置。
項10.項1〜項4のいずれか一項に記載の組成物からなる分離材。
項11.該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である項10に記載の分離材。
項12.項10または項11に記載の分離材を内装したガス分離装置。
項13.分離材と混合ガスとを0.01〜10MPaの圧力範囲で接触させる工程を含むことを特徴とする項10または項11に記載の分離材を用いる混合ガスの分離方法。
項14.該分離方法が圧力スイング吸着法または温度スイング吸着法である項13に記載の分離方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、圧壊強度と繰り返し耐久性が同時に優れた金属錯体組成物、ガス吸着材、吸蔵材、および分離材を提供することができる。
【0011】
本発明の組成物は、各種ガスの吸着性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などを吸着するための吸着材として使用することができる。
【0012】
また、本発明の組成物は、各種ガスの吸蔵性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材としても使用することができる。
【0013】
さらに、本発明の組成物は、各種ガスの分離性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の組成物は、周期表の1〜13族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンとアニオン性配位子とを含む金属錯体と、熱可塑性樹脂とを含み、金属錯体と熱可塑性樹脂との質量比が70:30〜99:1の範囲内であり、かつ圧縮試験で円柱状試験片を一軸加圧にて測定した組成物のヤング率が0.06GPa以上1.6GPa以下の範囲にある。
【0016】
該金属錯体に含まれる金属イオンは、周期表の1〜13族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンである。周期表1族に属する金属のイオンとは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびフランシウムイオンである。周期表2族に属する金属のイオンとはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンおよびラジウムイオンである。周期表3族に属する金属のイオンとは、スカンジウムイオン、イットリウムイオン、ランタノイドのイオンおよびアクチノイドのイオンである。周期表4族に属する金属のイオンとは、チタンイオン、ジルコニウムイオン、ハフニウムイオンおよびラザホージウムイオンである。周期表5族に属する金属のイオンとは、バナジウムイオン、ニオブイオン、タンタルイオンおよびドブニウムイオンである。周期表6族に属する金属のイオンとは、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオンおよびシーボーギウムイオンである。周期表7族に属する金属のイオンとは、マンガンイオン、テクネチウムイオン、レニウムイオンおよびボーリウムイオンである。周期表8族に属する金属のイオンとは、鉄イオン、ルテニウムイオン、オスミウムイオンおよびハッシウムイオンである。周期表9族に属する金属のイオンとは、コバルトイオン、ロジウムイオン、イリジウムイオンおよびマイトネリウムイオンである。周期表10族に属する金属のイオンとは、ニッケルイオン、パラジウムイオン、白金イオンおよびダームスタチウムイオンである。周期表11族に属する金属のイオンとは、銅イオン、銀イオン、金イオンおよびレントゲニウムイオンである。周期表12族に属する金属のイオンとは、亜鉛イオン、カドミウムイオン、水銀イオンおよびウンウンビウムイオンである。周期表13族に属する金属のイオンとは、ホウ素イオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、タリウムイオンおよびウンウントリウムイオンである。
【0017】
該金属錯体に用いられる周期表の1〜13族に属する金属のイオンから選択される金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、スカンジウムイオン、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、コバルトイオン、ロジウムイオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、銅イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン、アルミニウムイオンなどを使用することができる。金属イオンは、単一の金属イオンを使用することが好ましいが、2種以上の金属イオンを含む混合金属錯体であってもよい。また、本発明に用いる該金属錯体は、単一の金属イオンからなる金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。
【0018】
金属錯体の製造においては、上記金属イオンを含有する金属塩を使用することができる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、スカンジウム塩、ジルコニウム塩、バナジウム塩、クロム塩、マンガン塩、鉄塩、ルテニウム塩、コバルト塩、ロジウム塩、ニッケル塩、パラジウム塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩、アルミニウム塩などを使用することができる。金属塩は、単一の金属塩を使用することが好ましいが、2種以上の金属塩を混合して用いてもよい。また、これらの金属塩としては、酢酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩を使用することができる。
【0019】
該金属錯体に用いられるアニオン性配位子としては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン;テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンなどの無機酸イオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオンなどのスルホン酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、吉草酸イオン、カプロン酸イオン、エナント酸イオン、シクロヘキサンカルボン酸イオン、カプリル酸イオン、オクチル酸イオン、ペラルゴン酸イオン、カプリン酸イオン、ラウリン酸イオン、ミリスチン酸イオン、ペンタデシル酸イオン、パルミチン酸イオン、マルガリン酸イオン、ステアリン酸イオン、ツベルクロステアリン酸イオン、アラキジン酸イオン、ベヘン酸イオン、リグノセリン酸イオン、α−リノレン酸イオン、エイコサペンタエン酸イオン、ドコサヘキサエン酸イオン、リノール酸イオン、オレイン酸イオンなどの脂肪族モノカルボン酸イオン;安息香酸イオン、2,5−ジヒドロキシ安息香酸イオン、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸イオン、2,6−ジヒドロキシ−1−ナフトエ酸イオン、4,4’−ジヒドロキシ−3−ビフェニルカルボン酸イオンなどの芳香族モノカルボン酸イオン;ニコチン酸イオン、イソニコチン酸イオンなどの複素芳香族モノカルボン酸イオン;1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートイオン、フマレートイオンなどの脂肪族ジカルボン酸イオン;1,3−ベンゼンジカルボキシレートイオン、1,4−ベンゼンジカルボキシレートイオン、1,4−ナフタレンジカルボキシレートイオン、2,6−ナフタレンジカルボキシレートイオン、2,7−ナフタレンジカルボキシレートイオン、4,4’−ビフェニルジカルボキシレートイオンなどの芳香族ジカルボン酸イオン;2,5−チオフェンジカルボキシレート、2,2’−ジチオフェンジカルボキシレートイオン、2,3−ピラジンジカルボキシレートイオン、2,5−ピリジンジカルボキシレートイオン、3,5−ピリジンジカルボキシレートイオンなどの複素芳香族ジカルボン酸イオン;1,3,5−ベンゼントリカルボキシレートイオン、1,3,4−ベンゼントリカルボキシレートイオンなどの芳香族トリカルボン酸イオン;1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシレートイオンなどの芳香族テトラカルボン酸イオン;イミダゾレートイオン、2−メチルイミダゾレートイオン、ベンゾイミダゾレートイオンなどの複素環化合物のイオンなどを使用することができる。ここで、アニオン性配位子とは金属イオンに対して配位する部位がアニオン性を有する配位子を意味する。
【0020】
上記の中でも、アニオン性配位子としては、カルボキシレート基を有するものが好ましい。すなわち、脂肪族モノカルボン酸イオン、芳香族モノカルボン酸イオン、複素芳香族モノカルボン酸イオン、脂肪族ジカルボン酸イオン、芳香族ジカルボン酸イオン、複素芳香族ジカルボン酸イオン、芳香族トリカルボン酸イオンおよび芳香族テトラカルボン酸イオンから選ばれるいずれかであることが好ましく、さらに好ましくは、多価カルボン酸化合物であることが好ましい。
【0021】
上記のアニオン性配位子がカルボキシレート基、スルホネート基などを有する有機配位子の場合、該有機配位子はカルボキシル基、スルホ基などのアニオンになり得る置換基以外にイオン化しない置換基をさらに有していてもよい。例えば1,4−ベンゼンジカルボキシレートイオンは、2−ニトロ−1,4−ベンゼンジカルボキシレートイオンであってもよい。置換基の数は1,2または3個が好ましい。置換基としては、特に限定されないが、例えばアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有する炭素数1〜5のアルキル基)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、モノアルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アセチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0022】
該金属錯体に用いられるアニオン性配位子は、1種のみのアニオン性配位子を含んでいてもよく、2種以上のアニオン性配位子を含んでいてもよい。金属錯体(A)は、単一のアニオン性配位子を含む金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。
【0023】
該金属錯体の製造においては、上記アニオン性配位子を含有する塩を使用することができる。塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを使用することができる。塩は、単一の塩を使用することが好ましいが、2種以上の塩を混合して用いてもよい。
【0024】
また、該金属錯体に用いられるアニオン性配位子は、金属イオン源として使用される金属塩のカウンターアニオンをそのまま使用してもよい。
【0025】
さらに、金属錯体の製造においては、上記アニオン性配位子を含有する共役酸またはその酸無水物を使用することができる。酸は、単一の酸を使用することが好ましいが、2種以上の酸を混合して用いてもよい。
【0026】
本発明に用いられる金属錯体は、物質を吸着可能である。細孔内に吸着される物質としては、例えば、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、アンモニアなどのガス状物質、或いは水、常温常圧で液体である有機化合物などの液体状物質が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる金属錯体は、上記の金属イオンに多座配位可能な有機配位子を含んでいてもよい。多座配位可能な有機配位子としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5−ジメチルピラジン、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、4,4’−ジピリジルスルフィド、1,3−ビス(4−ピリジル)プロパン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、4,4’−ビピリジン−N,N’−ジオキシドなどの二座有機配位子、2,4,6−トリ(4−ピリジル)−1,3,5−トリアジンなどの三座有機配位子、テトラキス(3−ピリジルオキシメチレン)メタンおよびテトラキス(4−ピリジルオキシメチレン)メタンなどの四座有機配位子を使用することができる。ここで、多座配位可能な中性有機配位子とは非共有電子対で金属イオンに対して配位する部位を少なくとも2箇所以上有する中性配位子を意味する。二座有機配位子は、非共有電子対で金属イオンに対して配位する部位を2箇所有する多座配位可能な中性有機配位子;三座有機配位子は、非共有電子対で金属イオンに対して配位する部位を3箇所有する多座配位可能な中性有機配位子;四座有機配位子は、非共有電子対で金属イオンに対して配位する部位を4箇所有する多座配位可能な中性有機配位子である。
【0028】
多座配位可能な有機配位子は置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えばアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有する炭素数1〜5のアルキル基)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、モノアルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アセチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0029】
金属錯体は、1種のみの多座配位可能な有機配位子を含んでいてもよく、2種以上の多座配位可能な有機配位子を含んでいてもよい。金属錯体は、単一の多座配位可能な有機配位子を含む金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。
【0030】
金属錯体は、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、単座有機配位子を含んでいてもよい。単座有機配位子とは、非共有電子対で金属イオンに対して配位する部位を1箇所持つ中性配位子を意味する。単座有機配位子としては、例えば、フラン、チオフェン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、メチルイソシアニドなどを使用することができ、中でもピリジンが好ましい。単座有機配位子は炭素数1〜23の炭化水素基を置換基として有してもよい。
【0031】
金属錯体が該単座有機配位子を含む場合、その割合は本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではないが、多座配位可能な有機配位子と単座有機配位子との組成比は、1:5〜1:1,000のモル比の範囲内が好ましく、1:10〜1:100の範囲内であることがより好ましい。当該組成比は、例えば、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーまたはNMRなどを用いて分析することで決定することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明に用いられる金属錯体は、周期表の1〜13族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンを含む金属塩と、アニオン性配位子を含む化合物と、必要に応じて該金属イオンに多座配位可能な有機配位子とを、気相、液相または固相のいずれかで反応させることで製造することができる。中でも、常圧下、溶媒中で数時間から数日間反応させ、析出させて製造することが好ましい。例えば、金属塩の水溶液または有機溶媒溶液と、アニオン性配位子および多座配位可能な有機配位子を含有する有機溶媒溶液とを、常圧下で混合して反応させることにより本発明に用いられる金属錯体を得ることができる。
【0033】
金属錯体を製造するときの金属塩とアニオン性配位子との混合比率は、金属塩:アニオン性配位子=1:10〜10:1のモル比の範囲内が好ましく、1:5〜5:1のモル比の範囲内がより好ましい。この範囲で反応を行うと、目的とする金属錯体が高い収率で得られ、副反応が抑制される。
【0034】
金属錯体を製造するための混合溶液におけるアニオン性配位子のモル濃度は、0.005〜5.0mol/Lが好ましく、0.01〜2.0mol/Lがより好ましい。この濃度範囲で反応を行うと、目的とする金属錯体が高い収率で得られ、溶解性が良好で、反応が円滑に進行する。
【0035】
金属錯体を製造するための混合溶液における金属塩のモル濃度は、0.005〜5.0mol/Lが好ましく、0.01〜2.0mol/Lがより好ましい。この濃度範囲で反応を行うと、目的とする金属錯体が高い収率で得られ、未反応の金属塩の残留が少なく、得られた金属錯体の精製が容易である。
【0036】
金属錯体が多座配位可能な有機配位子を含有する場合には、金属錯体を製造するときのその混合比率は、アニオン性配位子:多座配位可能な有機配位子=1:5〜8:1のモル比の範囲内が好ましく、1:3〜6:1のモル比の範囲内がより好ましい。また、金属塩:多座配位可能な有機配位子=3:1〜1:3のモル比の範囲内が好ましく、2:1〜1:2のモル比の範囲内がより好ましい。
【0037】
金属錯体の製造に用いる溶媒としては、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、水またはこれらの混合溶媒を使用することができる。反応温度としては、253〜423Kが好ましい。
【0038】
反応が終了したことは、例えば、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどにより原料の残存量を定量することにより確認することができるが、これらに限定されるものではない。反応終了後、得られた混合液を吸引濾過に付して沈殿物を集め、有機溶媒による洗浄後、373K程度で数時間真空乾燥することにより、本発明に用いられる金属錯体を得ることができる。
【0039】
本発明に用いられる金属錯体は、製造時に使用した溶媒が吸着した状態ではガスを吸着しない。そのため、本発明の金属錯体を吸着材、吸蔵材、あるいは分離材として用いる際には、予め得られた金属錯体について真空乾燥を行い、細孔内の溶媒を取り除くことが必要である。通常は金属錯体が分解しない程度の温度(例えば298K〜523K以下)で真空乾燥を行えばよいが、その温度はより低温(例えば298K〜393K以下)であることが好ましい。この操作は、超臨界二酸化炭素による洗浄によっても代えることができる。
【0040】
本発明に用いられる金属錯体は、用いるアニオン性配位子の種類、また多座配位可能な有機配位子の種類により、一次元、二次元、或いは三次元の集積構造をとる。例えば、一次元鎖骨格が集積した三次元構造を有する多孔性金属錯体、二次元格子状骨格が積層した三次元構造を有する多孔性金属錯体、二次元シート骨格が相互嵌合した三次元構造を有する多孔性金属錯体、単一の三次元格子状骨格を有する多孔性金属錯体、複数の三次元格子状骨格が相互に貫入した三次元構造を有する多孔性金属錯体、などが用いられる。
【0041】
金属錯体の三次元集積構造は、例えば、単結晶X線構造解析、粉末X線結晶構造解析などにより確認できるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明に用いられる金属錯体は、吸着に伴い体積変化が可能な金属錯体であってもよい。この場合、吸着に伴う体積変化率が0.5%〜50%であることが好ましい。ここで、体積変化率とは、吸着前後における金属錯体の構造単位の体積比と定義する。金属錯体の構造単位の体積は、単結晶X線構造解析、粉末X線結晶構造解析などにより求めることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
体積変化率は、例えば、金属錯体を真空乾燥後に常温常圧下で放置したときの体積を基準体積とし、該金属錯体を錯体形成反応時に用いる溶媒に浸漬させたときに、基準体積から増加した体積と比較することで求めることができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、水またはこれらの混合溶媒を使用することができる。浸漬温度としては、253〜423Kが好ましい。
【0044】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されず、任意のものを使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのオレフィン樹脂;ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンなどのスチレン樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n−ブチルなどのアクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどの酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6などのポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ウレタン樹脂;及びこれらの共重合樹脂などを使用することができる。
【0045】
熱可塑性樹脂は好ましくは熱可塑性エラストマーであってもよい。例えば熱可塑性エラストマーとして、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、アミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、アクリル系エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーなどを使用することができる。中でも、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーおよびアクリル系エラストマーを特に好適に使用することができる。
【0046】
本発明に用いられる金属錯体と熱可塑性樹脂との混合比率は、金属錯体と熱可塑性樹脂との質量比が70:30〜99:1の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではガスの吸着性能が低下する、および/または、組成物として形態を維持できなくなる場合がある。また、本発明の組成物に占める金属錯体および熱可塑性樹脂の合計割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0047】
本発明に用いられる金属錯体と熱可塑性樹脂とを混合する方法は特に限定されないが、混合の具体的な方法としては、工程の簡便さおよびコストの観点から溶融混練法が好ましい。このとき、高い混練度を達成し得る装置を使用し、各成分を細かく均一に分散させることが、ガス吸着性能、ガス吸蔵性能およびガス分離性能を良好にすると共に、ゲルおよびブツの発生や混入を防止できる点で好ましい。
【0048】
高い混練度を達成し得る装置としては、例えば、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機、ミキシングロール、コニーダーなどの連続型混練機;高速ミキサー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機;石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置;一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTMなど)を設けた装置;リボンブレンダー、ブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
混練温度は、通常300〜600Kの範囲である。金属錯体および熱可塑性樹脂の酸化劣化防止のためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。混練時間は、金属錯体およびエラストマーの酸化劣化防止および生産効率の観点から、通常10〜1,800秒であり、中でも15〜1,000秒が好ましい。
【0050】
本発明の組成物の形状は特に限定されず、金属錯体と熱可塑性樹脂とを含む組成物から製造できる任意の成形体に成形されてもよい。そのような成形体としては、例えば、ペレット、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体、粉末、各種異形成形体、繊維、中空糸、織布、編布、不織布などを挙げることができる。
【0051】
ペレットの作製方法としては、特に限定はなく、従来から知られているペレット化方法のいずれもが採用できるが、よりペレットの高密度化が行える打錠成型法が好ましい。
【0052】
本発明の組成物をペレットとして用いる場合は、直径が0.1mm〜10.0mmの範囲内であり、かつ長さが0.1mm〜10.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0053】
また、本発明の組成物を分離膜として用いる場合には、ガス分子の透過性、選択性、処理効率の観点からフィルムまたは中空糸であることが好ましく、処理効率の観点から中空糸であることがより好ましい。
【0054】
フィルムの作製方法としては、本発明に用いられる金属錯体と熱可塑性樹脂とを適当な溶媒に分散または溶解させて液状の組成物を調製し、当該液状の組成物を、剥離性の基材または支持体上に塗工した後、乾燥して溶媒を除去する方法などを採用することができる。金属錯体と熱可塑性樹脂とを分散または溶解させる溶媒としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフランなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
組成物の離型性の基材または支持体への塗工方法は、特に限定はなく、従来から知られている液状の塗工材料を用いる塗工方法のいずれもが採用でき、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、コンマコーター法などを使用することができる。
【0056】
本発明の組成物は単独のままで使用できる。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン誘導体または紙などの天然もしくは合成繊維、或いはガラスもしくはアルミナなどの無機繊維と組み合わせて複合化してもよい。これらの組成物も、例えば、ペレット、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体、各種異形成形体、繊維、中空糸、織布、編布、不織布などの成形体に成形することができる。
【0057】
本発明の組成物を含むシートの作製方法としては、特に限定はなく、従来から知られているシート化方法のいずれもが採用できるが、よりシートの高密度化が行える湿式抄紙法が好ましい。湿式抄紙法は、水に原材料を分散させて、網で濾過し、乾燥する製造方法である。
【0058】
異形成形体の例として、ハニカム形状を挙げることができる。本発明の組成物を含むシートをハニカム形状とする方法としては、従来から知られている加工方法のいずれもが採用できる。なお、本発明においてハニカム形状とは、断面が六画形状のものの他、四角、正弦波形、ロール形のものなど中空多角柱、円柱などの中空柱体が連続したものをいう。例えば、本発明の組成物を含むシートを正弦波形のハニカム形状とするには、まず本発明の組成物を含むシートを賦形ロールに通して波形に賦形し、波形の当該シートの片面または両面に平らなシートを接合する。これを積層化して正弦波形のハニカム形状のフィルターとする。ここで、波形の頂点に接着剤を付けて固定するのが普通であるが、波形の本発明の組成物を含むシートを積層するとその間にある平らなシートは必然的に固定されるので、必ずしも接着剤を付ける必要はない。なお、接着剤を付ける場合はシートの吸着能を損なわないものを使用する必要がある。接着剤としては、例えば、コーンスターチ、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂などを使用することができる。ガス吸着性能を高めるためには、波形の本発明の組成物を含むシートの接着ピッチを小さくし、山高さを低くするとよい。ピッチは0.5〜8mmが好ましく、山高さは0.4〜5mmが好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤、難燃剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、色調補正剤、染料、酸化防止剤、その他の特殊機能剤を1種または2種以上含有することができる。
【0060】
本発明の組成物は、円柱状試験片を一軸加圧にて測定した組成物のヤング率が0.06GPa以上1.6GPa以下の範囲にあることを特徴とする。ヤング率が0.06GPaよりも小さい場合、圧壊強度が小さく、組成物は外部からの応力により容易に破壊もしくは粉化されるため、吸着材、または分離材として実用に適さない。一方、ヤング率が1.6GPaよりも大きい場合、繰り返し耐久性に優れるペレットを得られない場合がある。一例として、ガスの吸脱着に伴い体積変化が起きる金属錯体を用いて製造された組成物を挙げ説明する。この場合、該金属錯体を備えた組成物もまた、ガスの吸脱着に伴い体積が変化する。ヤング率が大きい場合、この体積変化に伴い成形体に大きな応力が加わるため、結果として、成形体の疲労破壊が起きやすくなる。
【0061】
ヤング率が前記の範囲にある組成物を得るためには、適切な熱可塑性樹脂と成形条件の選択が重要である。熱可塑性樹脂の硬度が低すぎると組成物のヤング率は低下する。一方、弾性率が高すぎると組成物のヤング率は増加する。また、高温もしくは高圧で成形する程、樹脂−樹脂または樹脂−金属錯体の接着が促進されるため、組成物のヤング率は増加する。即ち、ヤング率が前記の範囲にある組成物を得るためには、熱可塑性樹脂の硬度と弾性率、および、成形圧と成形温度のバランスが適切な条件を選択しなければならない。金属錯体の組成や性状によっても変化するため、これらヤング率を左右する因子それぞれについて好適な範囲を一義的に定めることは困難であるが、前記傾向に従ってこれら因子を調整することにより、ヤング率が前記の範囲にある組成物を得ることができる。
【0062】
本発明の組成物は、各種ガスの吸着性能、吸蔵性能及び分離性能に優れている。従って、本発明の組成物は、各種ガスの吸着材、吸蔵材及び分離材として有用であり、これらも本発明の権利範囲に含まれる。なお、本発明の吸着材はその吸着性のため吸蔵材または分離材としても使用できるため、本明細書において「吸着材」には吸蔵材及び分離材も含まれる。
【0063】
本発明の組成物は、各種ガスの吸着性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸着するための吸着材として好適に使用することができる。従って、本発明の吸着材を用いたガスの吸着方法も、本発明の技術的範囲に包含される。
【0064】
有機蒸気とは、常温常圧で液体である有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミン、ピリジンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;ペンタン、イソプレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、オクタン、1−オクテン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、1,5,9−シクロドデカトリエンなどの炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0065】
吸着方法は、ガスが吸着材中の金属錯体に吸着できる条件でガスと本発明の吸着材とを接触させる工程を含む。ガスが吸着材中の金属錯体に吸着できる条件である吸着圧力および吸着温度は、吸着される物質の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、吸着圧力は0.01〜10MPaが好ましく、0.1〜3.5MPaがより好ましい。また、吸着温度は195K〜343Kが好ましく、273〜313Kがより好ましい。
【0066】
また、本発明の組成物は、各種ガスの吸蔵性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材としても好適に使用することができる。有機蒸気は上記に定義した通りである。従って、本発明の吸蔵材を用いたガスの吸蔵方法も、本発明の技術的範囲に包含される。
【0067】
吸蔵方法は、ガスが吸蔵材中の金属錯体に吸着できる条件でガスと本発明の吸蔵材とを接触させる工程を含む。ガスが吸蔵材中の金属錯体に吸着できる条件である吸着圧力および吸着温度は、吸着される物質の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、吸着圧力は0.01〜10MPaが好ましく、0.1〜3.5MPaがより好ましい。また、吸着温度は195K〜343Kが好ましく、273〜313Kがより好ましい。
【0068】
吸蔵方法はさらに、圧力を吸着圧力からガスを吸蔵材中の金属錯体から脱着させることができる圧力まで減圧させる工程を含む。脱着圧力は、吸着される物質の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、脱着圧力は0.005〜2MPaが好ましく、0.01〜0.1MPaがより好ましい。或いは、温度を、吸着温度からガスを吸蔵材中の金属錯体から脱着させることができる温度まで昇温させる工程を含む。脱着温度は、吸着される物質の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、脱着温度は303〜473Kが好ましく、313〜373Kがより好ましい。
【0069】
本発明の吸蔵材はその吸蔵性能を活かしてガス貯蔵装置の製造に用いることもできる。
図1に示すように、ガス貯蔵装置1の例としては、気密保持可能でガスの出入口3を備えた耐圧容器2を備え、耐圧容器2の内部にガス貯蔵空間4を設け、該ガス貯蔵空間4に本発明の組成物からなる吸蔵材5が内装されたガス貯蔵装置1がある。
図1でガス貯蔵装置1は燃料タンクの形態で示されている。当該ガス貯蔵装置1に所望のガスを圧入することにより、内装した吸蔵材5に当該ガスを吸着させ貯蔵することができる。ガス貯蔵装置1からガスを取り出すときは、圧力弁6を開放し、耐圧容器内の内圧を低下させることでガスを脱着させることができる。ガス貯蔵空間1に吸蔵材5を内装するにあたっては、取り扱い性などの観点から、本発明の吸蔵材を成形加工したペレット状のものを用いてもよい。
【0070】
さらに、本発明の組成物は、各種ガスの分離性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロペン、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても好適に使用することができる。有機蒸気は上記に定義した通りである。該分離材は、混合ガス、特に、メタン中の二酸化炭素、水素中の二酸化炭素、窒素中の二酸化炭素、メタン中のエタン、エタン中のエチレンまたは空気中のメタンなどを、例えば、圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により分離するのに適している。従って、本発明の分離材を用いた上記ガスの分離方法も、本発明の技術的範囲に包含される。
【0071】
分離方法は、ガスが分離材に吸着できる条件でガスと本発明の分離材とを接触させる工程を含む。ガスが分離材に吸着できる条件である吸着圧力および吸着温度は、吸着される物質の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、吸着圧力は0.01〜10MPaが好ましく、0.1〜5MPaがより好ましい。また、吸着温度は195K〜473Kが好ましく、273〜423Kがより好ましい。
【0072】
分離方法は、圧力スイング吸着法または温度スイング吸着法とすることができる。分離方法が圧力スイング吸着法である場合は、分離方法はさらに、圧力を、吸着圧力からガスを分離材中の金属錯体から脱着させることができる圧力まで降圧させる工程を含む。脱着圧力は、吸着される物質の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、脱着圧力は0.001〜5MPaが好ましく、0.005〜3MPaがより好ましい。分離方法が温度スイング吸着法である場合は、分離方法はさらに、温度を、吸着温度からガスを金属錯体から脱着させることができる温度まで昇温させる工程を含む。脱着温度は、吸着される物質の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、脱着温度は303〜473Kが好ましく、313〜423Kがより好ましい。
【0073】
分離方法は、圧力スイング吸着法または温度スイング吸着法である場合、ガスと分離材とを接触させる工程と、ガスを分離材から脱着させることができる圧力または温度まで変化させる工程とを、適宜繰り返すことができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
(1)圧壊強度の測定
円柱状ペレットを横向きに一軸加圧機に設置し、ペレットの長手方向軸が一軸加圧機の加圧方向と垂直になるよう298Kで載荷速度9mm/分で一軸加圧した。応力緩和が起こった時点の加圧力(N)を測定し、この値を圧壊強度とした(JIS Z8841に準拠)。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社島津製作所製オートグラフAGS−10kNG
ロードセル 5BL−1kN
測定モード:圧縮・引張モード
【0075】
(2)ヤング率の測定
円柱状ペレットを縦向きに一軸加圧機に設置し、298Kで載荷速度9mm/分で一軸加圧した。ペレットの初期長さを基準とした歪み(Δε)と、Δεの歪が生じる前後の単位断面積あたりの応力変化(ΔF)を圧縮初期に測定し、これらから計算されるΔF/Δεをヤング率(E)とした。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社島津製作所製オートグラフAGS−10kNG
ロードセル 5BL−1kN
測定モード:圧縮・引張モード
【0076】
(3)繰り返しCO
2吸脱着試験
ガス吸着量測定装置を用いて容量法(JIS Z8831−2に準拠)にて実施した。298K、0.5Paでペレット5時間乾燥した後、298Kにて平衡圧力0.9MPaとなるようにCO
2を吸着させた。この操作を5回繰返し、試験前後のペレット形状を観察した。試験に先立って試料を373K、0.5Paで5時間乾燥し、吸着水などを除去した。測定条件の詳細を以下に示す。
<測定条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−HP
平衡待ち時間:500秒
【0077】
<合成例1>
窒素雰囲気下、酢酸銅一水和物21.84g(109.4mmol)、テレフタル酸18.17g(109.4mmol)および酢酸6.57g(109.4mmol)をメタノール200mLに溶解させ、333Kで58時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、1Lのメタノールで5回洗浄し、中間体を単離した。次に、単離した中間体を窒素雰囲気下でメタノール200mL中に分散させ、4,4’−ビピリジル8.54g(54.70mmol)を添加し、313Kで3時間攪拌した。金属錯体を吸引濾過により回収した後、1Lのメタノールで5回洗浄した。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体を得た。
<合成例2>
三井・デュポン ポリケミカル株式会社製エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂<エバフレックス(登録商標)>(銘柄:EV45LX)4.50gをクロロホルム168mLに加え、298Kで攪拌して溶解させた。得られた溶液に合成例1で得た金属錯体25.5gを加え、298Kで5分間攪拌した。続いて、減圧下でクロロホルムを留去した後、423K、50Paで8時間乾燥し、金属錯体と熱可塑性樹脂の組成物29.5g(収率98%)を得た。
【0078】
<比較合成例1>
株式会社クラレ製アクリル系エラストマー<クラリティ(登録商標)>(銘柄:LA2140e)2.80gをクロロホルム160mLに加え、298Kで攪拌して溶解させた。得られた溶液に合成例1で得た金属錯体25.2gを加え、298Kで5分間攪拌した。続いて、減圧下でクロロホルムを留去した後、373K、50Paで8時間乾燥し、金属錯体と熱可塑性樹脂との組成物28.1g(収率94%)を得た。
<比較合成例2>
信越化学工業株式会社製シリコーンゴム<信越シリコーン(登録商標)>(銘柄:KE−109)0.10gとトルエンを0.20g加え、金属錯体0.90gに加え298Kで60分間攪拌し、金属錯体とシリコーンゴムとの組成物を得た。
<比較合成例3>
三井・デュポン ポリケミカル株式会社製エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂<エバフレックス(登録商標)>(銘柄:EV250)6.00gをクロロホルム170mLに加え、298Kで攪拌して溶解させた。得られた溶液に合成例1で得た金属錯体24.0gを加え、298Kで5分間攪拌した。続いて、減圧下でクロロホルムを留去した後、423K、50Paで8時間乾燥し、金属錯体と熱可塑性樹脂の組成物29.1g(収率97%)を得た。
【0079】
<実施例>
合成例2で得た金属錯体と熱可塑性樹脂とからなる組成物480mgを、内径3.0mm、長さ15mmの臼に入れ、市橋精機株式会社製簡易錠剤成型機HANDTAB−100を用い、打錠圧4,900kgf/cm
2、温度298K、保持時間0分で打錠成型を行い、直径3.0mm、長さ8.8mmのペレット6個(454mg)を得た。得られた成形体を
図2に示す。得られた成形体の圧壊強度を測定した結果、161N(n=5平均値)であった。得られた成形体のヤング率を測定した結果、0.48GPa(n=5平均値)であった。また、得られた成形体に対し、平衡圧力0.9MPaの条件にてCO
2を平衡状態に達するまで吸着させた後、平衡圧力1Pa以下の条件にてCO
2を脱着させる操作を5回繰り返した。この操作後における成形体の外観を
図3に示す。
<比較例1>
比較合成例1で得た金属錯体と熱可塑性樹脂の組成物450mgを、内径3.0mm、長さ15mmの臼に入れ、市橋精機株式会社製簡易錠剤成型機HANDTAB−100を用い、打錠圧1,600kgf/cm
2、温度473K、保持時間5分で打錠成型を行い、直径3.0mm、長さ7.8mmのペレット6個(425mg)を得た。得られた成形体を
図4に示す。得られた成形体の圧壊強度を測定した結果、230N(n=5平均値)であった。得られた成形体のヤング率を測定した結果、1.70GPa(n=5平均値)であった。また、得られた成形体に対し、平衡圧力0.9MPaの条件にてCO
2を平衡状態に達するまで吸着させた後、平衡圧力1Pa以下の条件にてCO
2を脱着させる操作を5回繰り返した。この操作後における成形体の外観を
図5に示す。
【0080】
<比較例2>
比較合成例2で得た金属錯体と熱可塑性樹脂の組成物575mgを、内径3.0mm、長さ15mmの臼に入れ、市橋精機株式会社製簡易錠剤成型機HANDTAB−100を用い、打錠圧1,000kgf/cm
2、温度298K、保持時間5分で打錠成型を行い、直径3.0mm、長さ9.0mmのペレット5個(550mg)を得た。得られた成形体の圧壊強度を測定した結果、8.5N(n=5平均値)であった。得られた成形体のヤング率を測定した結果、0.05GPa(n=5平均値)であった。
<比較例3>
比較合成例3で得た金属錯体と熱可塑性樹脂の組成物571mgを、内径3.0mm、長さ15mmの臼に入れ、市橋精機株式会社製簡易錠剤成型機HANDTAB−100を用い、打錠圧1,000kgf/cm
2、温度298K、保持時間5分で打錠成型を行い、直径3.0mm、長さ11.1mmのペレット5個(541mg)を得た。得られた成形体の圧壊強度を測定した結果、30N(n=5平均値)であった。得られた成形体のヤング率を測定した結果、0.05GPa(n=5平均値)であった。
【0081】
実施例と比較例1の比較から、成形された組成物のヤング率が1.6GPa以下の場合のみ、繰り返し耐久性に優れる組成物が得られることは明らかである。また、実施例と比較例2の比較から、成形された組成物のヤング率が0.06GPa以上の場合のみ、高い圧壊強度を示す組成物が得られることは明らかである。以上から、本発明の組成物が、繰り返し耐久性と圧壊強度を両立する優れた組成物であることは明らかである。
【0082】
【表1】