特許第6834127号(P6834127)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6834127非水系二次電池用機能層の形成方法、および非水系二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834127
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】非水系二次電池用機能層の形成方法、および非水系二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/409 20210101AFI20210215BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20210215BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20210215BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M10/0585
   H01M10/0587
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-233856(P2015-233856)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-103034(P2017-103034A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】秋池 純之介
【審査官】 森 透
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/035795(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/145849(WO,A1)
【文献】 特開2015−179610(JP,A)
【文献】 特開2015−041570(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/151144(WO,A1)
【文献】 特開2011−159434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
H01M、 4/139
H01M 10/585、10/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、非導電性粒子および前記非導電性粒子の体積平均粒子径D50よりも小さな体積平均粒子径D50を有する結着材を含む機能層用組成物を付与する工程と、
前記基材上に付与した機能層用組成物に表面活性化処理を施す工程と、を含む、非水系二次電池用機能層の形成方法であって、
前記非導電性粒子が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む有機粒子であ
形成される前記機能層の水に対する接触角が50°以上80°以下である、非水系二次電池用機能層の形成方法。
【請求項2】
前記表面活性化処理が、コロナ放電処理またはプラズマ放電処理である、請求項1に記載の非水系二次電池用機能層の形成方法。
【請求項3】
前記表面活性化処理がコロナ放電処理であり、該コロナ放電処理における放電量が10W・min/m以上200W・min/m以下である、請求項2に記載の非水系二次電池用機能層の形成方法。
【請求項4】
正極、負極、セパレータおよび電解液を備える非水系二次電池の製造方法であって、
セパレータ基材および電極基材から選択される基材に対し、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法により機能層を形成して、前記正極、負極およびセパレータの少なくとも一つを作製する工程を含む、非水系二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記非水系二次電池が捲回型または積層型である、請求項に記載の非水系二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用機能層の形成方法、および非水系二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そして、二次電池は、一般に、正極、負極、および、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐセパレータなどの電池部材を備えている。
【0003】
ここで、近年、二次電池においては、電池部材間の接着性の向上を目的とした接着層などの機能層を備える電池部材が使用されている。具体的には、集電体上に電極合材層を設けてなる電極基材上に更に機能層を形成してなる電極や、セパレータ基材上に機能層を形成してなるセパレータが、電池部材として使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
そしてこの機能層は、通常、結着材成分と、水などの分散媒とを含有するスラリー状の非水系二次電池機能層用組成物(以下、「機能層用組成物」と略記する場合がある)を、電極基材またはセパレータ基材などの適切な基材上に供給し、乾燥することで形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−105681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の機能層には、電池部材間の接着性(ピール強度)を一層高めて非水系二次電池の高温サイクル特性などの電池特性を向上させるという要求があり、この点で、改良の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、優れたピール強度を有する非水系二次電池用機能層を形成することが可能な、非水系二次電池用機能層の形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、高温サイクル特性などの電池特性に優れる非水系二次電池を製造することが可能な、非水系二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、機能層に含まれる成分の適正化を図るとともに、基材上に塗布などして付与した機能層用組成物に所定の処理を施すことにより、得られる非水系二次電池用機能層のピール強度を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法は、基材上に、非導電性粒子および前記非導電性粒子の体積平均粒子径D50よりも小さな体積平均粒子径D50を有する結着材を含む機能層用組成物を付与する工程と、前記基材上に付与した機能層用組成物に表面活性化処理を施す工程と、を含むことを特徴とする。このように、非導電性粒子および結着材を含む機能層用組成物を基材上に付与し、これに表面活性化処理を施せば、優れたピール強度を有する非水系二次電池用機能層を形成することができる。
なお、本発明において、非導電性粒子および結着材の「体積平均粒子径D50」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0010】
ここで、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法においては、前記表面活性化処理が、コロナ放電処理またはプラズマ放電処理であることが好ましい。表面活性化処理としてコロナ放電処理またはプラズマ放電処理を基材上の機能層用組成物に施せば、基材上に付与した機能層用組成物の表面に対し、非水系二次電池用機能層のピール強度をより効果的に高め得るような活性化を促し、この非水系二次電池用機能層を用いた非水系二次電池の高温サイクル特性などの電池特性を更に向上させることができる。
【0011】
また、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法においては、前記表面活性化処理がコロナ放電処理であり、該コロナ放電処理における放電量が10W・min/m2以上200W・min/m2以下であることが好ましい。コロナ放電処理における放電量を上述の範囲内とすれば、非水系二次電池用機能層のピール強度を効果的に高めることができ、この非水系二次電池用機能層を用いて非水系二次電池の高温サイクル特性を効果的に向上させることができるとともに、ブロッキングの発生や、基材の過熱による短絡や穴開き等の不具合の発生を十分に抑制することができる。
【0012】
また、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法においては、前記機能層の水に対する接触角が50°以上80°以下であることが好ましい。機能層の水に対する接触角が上述の範囲内であれば、機能層を備える電池部材が巻き重ねられた場合でもブロッキングが生じ難い上、ピール強度をより高めることがでる。
なお、本発明において、「機能層の水に対する接触角」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池の製造方法は、正極、負極、セパレータおよび電解液を備える非水系二次電池の製造方法であって、セパレータ基材および電極基材から選択される基材に対し、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により機能層を形成して、前記正極、負極およびセパレータの少なくとも一つを作製する工程を含むことを特徴とする。このように、正極、負極およびセパレータの少なくとも一つを、基材に対して本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法により機能層を形成して作製すれば、機能層に優れたピール強度を発揮させて、高温サイクル特性などの電池特性に優れる非水系二次電池を製造することができる。
【0014】
ここで、本発明の非水系二次電池の製造方法は、捲回型または積層型の非水系二次電池の製造にも好ましく適用することができる。正極、負極およびセパレータの少なくとも一つを、基材に対して本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法により機能層を形成して作製すれば、電極およびセパレータなどの電池部材同士を強固に接着させて、高温サイクル特性などの電池特性に優れる捲回型または積層型の非水系二次電池を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れたピール強度を有する非水系二次電池用機能層を形成することが可能な、非水系二次電池用機能層の形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高温サイクル特性などの電池特性に優れる非水系二次電池を製造することが可能な、非水系二次電池の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法は、例えば本発明の非水系二次電池の製造方法により非水系二次電池を製造する際に実施することができる。
なお、機能層は、例えば、セパレータや電極等の二次電池部材の耐熱性および強度を向上させるための多孔膜層であってもよいし、二次電池部材同士を接着させるための接着層であってもよいし、多孔膜層と接着層との双方の機能を発揮する層であってもよい。
【0017】
(非水系二次電池用機能層の形成方法)
本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法は、少なくとも、基材上に、非導電性粒子および結着材を含む機能層用組成物を付与する工程(組成物付与工程)と、前記基材上に付与した機能層用組成物に表面活性化処理を施す工程(表面活性化工程)と、を含み、任意に、組成物付与工程の後で且つ表面活性化工程の前に、基材上に付与された機能層用組成物を乾燥させる工程(乾燥工程)を含む。また、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法は、上述した工程以外の任意の工程を含んでいてもよい。そして、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法によれば、優れたピール強度を有する機能層を基材上に形成することができる。
【0018】
<組成物付与工程>
組成物付与工程は、具体的には、非導電性粒子および結着材を含む機能層用組成物を、基材上に層状に付与する工程である。ここで、組成物付与工程において用いる機能層用組成物は、非導電性粒子および結着材を含み、任意に、その他の成分を含む。また、機能層用組成物は、水などを分散媒として含むスラリー状の組成物であってもよいし、水などの分散媒を含まない固形状(粉末状)の組成物であってもよい。
なお、本発明において、組成物付与工程で層状に付与された機能層用組成物は、機能層ではない。層状に付与された機能層用組成物に後述する表面活性化処理を施したものが、機能層である。
【0019】
−基材−
機能層用組成物を付与する基材としては、特に限定されず、例えばセパレータの一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としてはセパレータ基材を用いることができ、また、電極の一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としては集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材を用いることができる。また、基材上に形成した機能層の用法に特に制限は無く、例えばセパレータ基材等の上に機能層を形成してそのままセパレータ等の電池部材として使用してもよいし、電極基材上に機能層を形成して電極として使用してもよいし、離型基材上に形成した機能層を基材から一度剥離し、他の基材に貼り付けて電池部材として使用してもよい。
しかし、機能層から離型基材を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材としてセパレータ基材または電極基材を用いることが好ましい。セパレータ基材または電極基材に設けられた機能層は、セパレータまたは電極の耐熱性や強度などを高める保護層としての機能と、セパレータと電極とを強固に接着させる接着剤層としての機能とを同時に発現させる単一の層として、好適に使用することができる。
【0020】
[セパレータ基材]
機能層用組成物を付与するセパレータ基材としては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
なお、セパレータ基材は、付与される機能層用組成物の層以外の、所期の機能を発揮し得る任意の層をその一部に含んでいてもよい。
【0021】
[電極基材]
機能層用組成物を付与する電極基材(正極基材および負極基材)としては、特に限定されないが、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。この場合には、電極基材の電極合材層の面に機能層用組成物を付与することが好ましい。
ここで、集電体、電極合材層中の成分(例えば、電極活物質(正極活物質、負極活物質)および電極合材層用結着材(正極合材層用結着材、負極合材層用結着材)など)、並びに、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものを用いることができる。
なお、電極基材は、付与される機能層用組成物の層以外の、所期の機能を有する任意の層をその一部に含んでいてもよい。
【0022】
[離型基材]
機能層用組成物を付与する離型基材としては、特に限定されず、既知の離型基材を用いることができる。
【0023】
−非導電性粒子−
機能層用組成物に含まれる非導電性粒子は、通常、二次電池部材同士、例えばセパレータと電極とを強固に接着させる接着剤としての機能を担う。なお、「非導電性粒子」には、後述する結着材は含まれない。
非導電性粒子としては、特に限定されることなく、非水系二次電池に用いられる既知の非導電性の粒子を挙げることができる。具体的には、非導電性粒子としては、無機粒子および有機粒子の双方を用いることができる。無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、水和アルミニウム酸化物(ベーマイト)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO3、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。また、これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。一方、有機粒子としては、非導電性であれば特に限定されることなく、非水系二次電池の機能層に用いられる既知の非導電性の有機粒子を用いることができる。なお、上述した非導電性粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、非導電性粒子として、有機粒子と無機粒子とを併用してもよい。
これらの中でも、非導電性粒子としては、有機粒子が好ましい。非導電性粒子として有機粒子を用いることで、機能層が二次電池部材同士をより強固に接着させることができる。
【0024】
ここで、有機粒子は、任意の単量体を重合または共重合することにより調製することができる。そして、有機粒子を調製するために用いる単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体等の酸基含有単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロ」は、アクリロおよび/またはメタクリロを意味する。
【0025】
前記の単量体の中でも、有機粒子の調製に用いられる単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることがより好ましい。即ち、有機粒子としての重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位または(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことがより好ましく、メタクリル酸メチル由来の単量体単位を含むことが特に好ましい。これにより、有機粒子を用いた機能層のイオン拡散性を一層高めることができる。
なお、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
【0026】
また、有機粒子としての重合体は、酸基含有単量体単位を含み得る。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0027】
カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、有機粒子としての重合体は、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。
【0030】
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート(エチレンジメタクリレート)、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートがより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、有機粒子をはじめとする非導電性粒子は、体積平均粒子径D50が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上、一層好ましくは0.4μm以上、特に好ましくは0.45μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。非導電性粒子の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の内部抵抗の上昇を抑制し、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。また、非導電性粒子の体積平均粒子径D50を前記範囲の上限値以下にすることにより、非導電性粒子の接着性を高め、高温サイクル特性などの電池特性を更に向上させることができる。
【0032】
ここで、非導電性粒子として用い得る有機粒子は、特に制限されず、例えば、コア部と、コア部の外表面を(好ましくは部分的に)覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しているものであってもよい。コアシェル構造を有する有機粒子は、電解液中においてより優れた接着性を発揮し、機能層を備える非水系二次電池の電気的特性を良好に向上させることができる。更に、電極基材やセパレータ基材上に機能層を形成してなる二次電池部材(電極、セパレータ)は、巻き重ねられた状態で保存および運搬されることがあるが、上記機能層が形成された二次電池用基材は、巻き重ねられた場合でもブロッキング(機能層を介した二次電池部材同士の膠着)を生じ難く、ハンドリング性に優れている。
なお、上述のコアシェル構造において、コア部とは、重合体からなり、有機粒子においてシェル部よりも内側にある部分である。また、シェル部とは、重合体からなり、コア部の外表面を覆う部分であり、通常は有機粒子において最も外側にある部分である。そして、シェル部は、コア部の外表面の全体または一部分を覆っているものである。
【0033】
有機粒子がコアシェル構造を有する場合、コア部の重合体の調製に用いる単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることがより好ましい。即ち、コア部の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位または(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことがより好ましく、メタクリル酸メチル由来の単量体単位を含むことが特に好ましい。これにより、有機粒子を用いた機能層のイオン拡散性を一層高めることができる。
一方、シェル部の重合体の調製に用いられる単量体としては、芳香族ビニル単量体が好ましい。即ち、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。また、芳香族ビニル単量体の中でも、スチレンおよびスチレンスルホン酸等のスチレン誘導体がより好ましい。これにより、有機粒子の接着性を一層高めることができる。
【0034】
また、有機粒子がコアシェル構造を有する場合、コア部の重合体および/またはシェル部の重合体は、酸基含有単量体単位を含み得る。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられ、その具体例および好ましい酸基含有単量体単位としては、上述したものと同様である。
【0035】
上述したコアシェル構造を有する有機粒子は、例えば、コア部の重合体の単量体と、シェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、調製することができる。具体的には、有機粒子は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって調製することができる。
【0036】
そして、有機粒子としての重合体(有機粒子がコアシェル構造を有する場合における、コア部の重合体およびシェル部の重合体を含む)の重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0037】
−結着材−
機能層用組成物に含まれる結着材は、機能層に含まれる成分が機能層から脱落するのを抑制する観点から用いられるものである。そして、結着材は、基材および非導電性粒子、或いは非導電性粒子同士の結着を維持し、基材からの機能層の剥離を抑制するため、その体積平均粒子径D50が、上述した非導電性粒子の体積平均粒子径D50よりも小さいことを要する。ここで、結着材としては、電解液に膨潤していない温度25℃の環境下において非導電性粒子よりも高い接着性を発揮し得る、粒子状重合体を機能層組成物に含ませることが好ましい。粒子状重合体などの結着材を用いることにより、機能層を構成する成分が機能層から脱落するのを抑制することができる。
【0038】
そして、上記非導電性粒子と併用する粒子状重合体としては、非水溶性で、水中に分散可能な既知の粒子状重合体、例えば、熱可塑性エラストマーが挙げられる。そして、熱可塑性エラストマーとしては、共役ジエン系重合体およびアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。
ここで、共役ジエン系重合体とは、共役ジエン単量体単位を含む重合体を指し、共役ジエン系重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル単量体単位および脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体が挙げられる。また、アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体を指す。
なお、これらの粒子状重合体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
更に、粒子状重合体としてのアクリル系重合体は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが更に好ましい。これにより、機能層の強度を高めることができる。
【0040】
ここで、粒子状重合体としてのアクリル系重合体において、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する(メタ)アクリロニトリル単量体単位の量の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。前記割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、粒子状重合体としてのアクリル系重合体の強度を高め、当該アクリル系重合体を用いた機能層の強度をより高くすることができる。また、前記割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、粒子状重合体としてのアクリル系重合体が電解液に対して適度に膨潤するため、機能層のイオン伝導性の低下および二次電池の低温出力特性の低下を抑制することができる。
【0041】
更に、結着材の体積平均粒子径D50は、非導電性粒子の体積平均粒子D50よりも小さければ特に制限されないが、好ましくは0.01μm以上であり、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.45μm未満、更に好ましくは0.4μm未満である。結着材の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、結着材の分散性を高めることができる。また、体積平均粒子径D50を前記範囲の上限値以下または未満にすることにより、結着材の接着性を高めることができる。
【0042】
そして、機能層における結着材の含有量は、非導電性粒子100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、また、30質量部以下であることが好ましく、28質量部以下であることがより好ましく、26質量部以下であることが更に好ましい。結着材としての粒子状重合体の含有量を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着性をより高めることができる。一方、結着材としての粒子状重合体の含有量を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層のイオン拡散性が低下するのを抑制し、二次電池の低温出力特性などの電池特性を確保することができる。
【0043】
結着材、とりわけ粒子状重合体の製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。中でも、水中で重合をすることができ、粒子状重合体を含む水分散液をそのまま機能層用組成物の材料として好適に使用できるので、乳化重合法および懸濁重合法が好ましい。また、粒子状重合体としての重合体を製造する際、その反応系は分散剤を含むことが好ましい。粒子状重合体は、通常、実質的にそれを構成する重合体により形成されるが、重合に際して用いた添加剤等の任意の成分を同伴していてもよい。
【0044】
−その他の成分−
機能層用組成物は、上述した成分以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。これらのその他の成分としては、例えば、濡れ剤、粘度調整剤、電解液添加剤などの既知の添加剤が挙げられる。これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい
【0045】
−機能層用組成物の調製−
ここで、機能層用組成物の調製方法としては、特に限定はされないが、通常は、非導電性粒子と、結着材と、分散媒としての水と、必要に応じて用いられる濡れ剤などのその他の成分とを混合して機能層用組成物を調製することができる。混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散させるため、通常は混合装置として分散機を用いて混合を行う。
分散機は、上記成分を均一に分散および混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。また、高い分散シェアを加えることができる観点から、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置も挙げられる。
【0046】
−基材上への機能層用組成物の付与−
組成物付与工程において、基材上に機能層用組成物を付与する方法としては、特に制限されず、以下の方法が挙げられる。:
1)基材上に機能層用組成物を塗布する方法;
2)基材を機能層用組成物に浸漬する方法;
3)機能層用組成物を、離型基材上に塗布、乾燥し、得られた離型基材上の機能層用組成物を基材の表面に転写する方法。
これらの中でも、前記1)の方法が、機能層の膜厚制御をしやすいことから特に好ましい。ここで、基材上に機能層用組成物を塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、スプレーコート法、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。なかでも、薄い機能層を形成する点から、グラビア法、スプレーコート法が好ましい。
なお、少なくとも前記1)および2)の方法は、機能層用組成物が水などを分散媒として含まずに粉末状である場合であっても、実施することができる。
【0047】
<乾燥工程>
乾燥工程は、特に、機能層用組成物が水などを分散媒として含むスラリー状である場合に実施することができる工程である。乾燥工程において、基材上に付与された機能層用組成物を乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件としては、特に制限されず、乾燥温度は好ましくは30〜80℃であり、乾燥時間は好ましくは30秒〜10分である。
【0048】
なお、組成物付与工程後、或いは、乾燥工程を実施する場合の乾燥工程後における、基材上に付与された機能層用組成物の層厚は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは1.5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。基材上に付与された機能層用組成物の層厚が、前記範囲の下限値以上であることで、最終的に得られる機能層の強度を十分に確保することができ、前記範囲の上限値以下であることで、最終的に得られる機能層のイオン拡散性を確保し、二次電池の低温出力特性などの電池特性を向上させることができる。
【0049】
<表面活性化工程>
表面活性化工程は、前工程において基材上に付与した機能層用組成物に表面活性化処理を施す工程である。この工程により、基材上に非水系二次電池用機能層が得られる。
本発明者は、驚くべきことに、この表面活性化処理により、基材上の機能層のピール強度を有利に向上させることができることを見出した。なお、表面活性化処理を、機能層用組成物ではなく、機能層用組成物を付与する前の基材に施したとしても、機能層のピール強度を向上させることはできない。
【0050】
表面活性化処理としては、基材上に付与した機能層用組成物の表面を活性化可能であって、その構造を大きく損なわない方法であれば、特に制限はされない。表面活性化処理として、具体的には、コロナ放電処理、プラズマ処理、溶剤処理、酸処理、紫外線酸化処理等が挙げられ、いずれの処理も、機能層のピール強度を向上させることができる。これらの中でも、表面活性化処理としては、コロナ放電処理およびプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。表面活性化処理としてコロナ放電処理またはプラズマ放電処理を基材上の機能層用組成物に施せば、当該機能層用組成物の表面に対し、非水系二次電池用機能層のピール強度をより効果的に高め得るような活性化を促すことができる。また、コロナ放電処理またはプラズマ処理を施した機能層を用いれば、ピール強度に一層優れているので、得られる非水系二次電池の高温サイクル特性などの電池特性を更に向上させることができる。
【0051】
ここで、表面活性化処理としてコロナ放電処理を採用する場合、その放電量としては、10W・min/m2以上であることが好ましく、20W・min/m2以上であることがより好ましく、30W・min/m2以上であることが更に好ましく、また、200W・min/m2以下であることが好ましく、150W・min/m2以下であることがより好ましく、100W・min/m2以下であることが更に好ましい。コロナ放電処理における放電量を10W・min/m2以上とすれば、基材上の機能層用組成物の表面を十分に活性化させて、非水系二次電池用機能層のピール強度を効果的に高めることができ、また、この非水系二次電池用機能層を用いて非水系二次電池の高温サイクル特性を効果的に向上させることができる。また、コロナ放電処理における放電量を200W・min/m2以下とすれば、ブロッキング(機能層を介した電池部材同士の膠着)の発生や、セパレータ基材や電極基材等の基材の過熱による短絡や穴開き等の不具合の発生を十分に抑制することができる。
【0052】
そして、表面活性化工程では、基材上に付与した機能層用組成物に表面活性化処理を施すことで、機能層を形成することができるが、この機能層の水に対する接触角としては、50°以上であることが好ましく、53°以上であることがより好ましく、55°以上であることが更に好ましく、また、80°以下であることが好ましく、75°以下であることがより好ましく、70°以下であることが更に好ましい。機能層の水に対する接触角が80°以下であれば、表面活性化処理により機能層表面に適度な親水性化がもたらされており、ピール強度をより高めることができる。また、機能層の水に対する接触角が50°以上であれば、表面活性化処理による過剰な親水性化が抑制されており、機能層を備える電池部材が巻き重ねられた場合でもブロッキング(機能層を介した電池部材同士の膠着)を生じ難くすることができる。
なお、機能層の水に対する接触角は、機能層中の非導電性粒子が有機粒子である場合には当該有機粒子を構成する単量体の種類やその量を調節したり、結着材を構成する単量体の種類やその量を調節したり、また、例えば表面活性化処理としてコロナ放電処理またはプラズマ放電処理を採用する場合にはその放電量、放電時間、電圧、および放電電極と処理対象の面との距離の少なくともいずれかを調節したりすることで、調整することができる。
また、本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法によって形成される機能層の水に対する接触角は、当然のことながら、表面活性化処理を施すことにより形成された機能層の表面の水に対する接触角である。
【0053】
(非水系二次電池の製造方法)
本発明の非水系二次電池の製造方法は、正極、負極、セパレータおよび電解液を備える非水系二次電池の製造方法である。また、本発明の非水系二次電池の製造方法は、セパレータ基材および電極基材から選択される基材に対し、上述した本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法により非水系二次電池用機能層を形成して、前記正極、負極およびセパレータの少なくとも一つを作製する工程を含み、その他、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせて積層体を得る工程と、得られた積層体を、必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れる工程と、電池容器に電解液を注入して封口する工程とを含む。そして、本発明の非水系二次電池の製造方法によれば、正極、負極およびセパレータの少なくとも一つを、基材に対して本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法により機能層を形成して作製しているので、機能層に優れたピール強度を発揮させて、機能層と電極基材またはセパレータ基材、並びに、電池部材同士を強固に接着することができ、高温サイクル特性などの電池特性に優れる非水系二次電池を製造することができる。
なお、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。また、電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【0054】
ここで、本発明の非水系二次電池の製造方法においては、前記非水系二次電池が捲回型または積層型であってもよい。即ち、本発明の非水系二次電池の製造方法は、捲回型または積層型の非水系二次電池の製造にも好ましく適用することができる。通常、捲回型または積層型の非水系二次電池の製造に際しては、電極およびセパレータなどの電池部材同士の接着が必要となるところ、正極、負極およびセパレータの少なくとも一つを、基材に対して本発明の非水系二次電池用機能層の形成方法により機能層を形成して作製すれば、電極およびセパレータなどの電池部材同士を強固に接着させて、高温サイクル特性などの電池特性に優れる捲回型または積層型の非水系二次電池を製造することができる。
【0055】
なお、非水系二次電池の製造方法において、非水系二次電池用機能層を有さない正極、負極およびセパレータとしては、非水系二次電池において用いられている既知の正極、負極およびセパレータを使用することができる。また、電解液としては、非水系二次電池において用いられている既知の電解液を使用することができる。
具体的には、上述した非水系二次電池用機能層を有さない電極(正極および負極)としては、「非水系二次電池用機能層の形成方法」の項で既述した電極基材を用いることができ、上述した非水系二次電池用機能層を有さないセパレータとしては、「非水系二次電池用機能層の形成方法」の項で既述したセパレータ基材を用いることができる。
【0056】
また、電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C49SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO22NLi、(C25SO2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましく、LiPF6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0057】
更に、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましく、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物を用いることが更に好ましい。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができ、例えば0.5〜15質量%することが好ましく、2〜13質量%とすることがより好ましく、5〜10質量%とすることが更に好ましい。また、電解液には、既知の添加剤、例えばフルオロエチレンカーボネートやエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
また、非導電性粒子、結着材および任意のその他の成分を含む機能層用組成物を用い、適宜表面活性化処理を施して得られる機能層において、少なくとも非導電性粒子と結着材との比は、別に断らない限り、通常は、機能層用組成物の調製に用いられる非導電性粒子および結着材の配合比率(仕込み比)と一致する。
そして、実施例および比較例において、非導電性粒子および結着材の体積平均粒子径D50、機能層の水に対する接触角、電極とセパレータとの接着性(機能層のピール強度)、耐ブロッキング性、高温サイクル特性および機能層付き基材の信頼性は、下記の方法で測定および評価した。
【0059】
<非導電性粒子および結着材の体積平均粒子径D50>
非導電性粒子および結着材の体積平均粒子径D50は、それぞれ固形分濃度15質量%に調整した水分散溶液の、レーザー回折式粒子径分布測定装置(ベックマン・コールター社製、製品名「LS−230」)により測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径とした。
【0060】
<機能層の水に対する接触角>
協和界面科学(株)製Drop Master DM500を使用し、セパレータ(機能層付きセパレータ基材)を機能層が上となるようにテーブルにセットし、この上に、表面張力測定用液としてのイオン交換水(1.0μS・cm)を1μL滴下し、着滴から60秒後に、液滴法による接触角の測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
<電極とセパレータとの接着性(機能層のピール強度)>
各実施例および比較例で調製したセパレータ(機能層付きセパレータ基材)と同様のものと、各実施例または比較例で調製した正極基材および負極基材と同様のものとをそれぞれ準備した。そして、正極基材およびセパレータの積層体、並びに、負極基材およびセパレータの積層体を作製し、それぞれ10mm幅に切り出して、試験片を得た。
この試験片を70℃、1.0MPa、8秒間の条件でプレスし、電極およびセパレータを一体化させた一体化物を得た。その後、この一体化物を、電極(正極または負極)の表面を下にして、電極の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を、正極基材およびセパレータの積層体並びに負極基材およびセパレータの積層体でそれぞれ3回、合計6回行い、測定した応力の平均値を求めて、これをピール強度とした。そして、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:ピール強度が10N/m以上
B:ピール強度が5N/m以上10N/m未満
C:ピール強度が3N/m以上5N/m未満
D:ピール強度が3N/m未満
【0062】
<耐ブロッキング性>
実施例および比較例で調製したセパレータを、一辺5cmの正方形および一辺4cmの正方形にそれぞれ切って試験片とした。これらを二枚重ね合わせたサンプル「未プレスの状態のサンプル」と、これらを二枚重ね合わせた後に40℃、10g/cm2の加圧下に置いたサンプル「プレスしたサンプル」とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、重ね合わせられたセパレータ同士の接着状態(ブロッキング状態)を目視で確認した。そして、耐ブロッキング性を以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:「未プレスの状態のサンプル」および「プレスしたサンプル」において、セパレータ同士がブロッキングしていない
B:「未プレスの状態のサンプル」においてはセパレータ同士がブロッキングしておらず、「プレスしたサンプル」においてはセパレータ同士がブロッキングしている(ただし、手で剥がすことができる)
C:「未プレスの状態のサンプル」においてはセパレータ同士がブロッキングしておらず、「プレスしたサンプル」においてはセパレータ同士がブロッキングしている(手で剥がすこともできない)
D:「未プレスの状態のサンプル」および「プレスしたサンプル」において、セパレータ同士がブロッキングしている
【0063】
<高温サイクル特性>
実施例および比較例で製造した800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。
更に、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電を1000サイクル繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。容量維持率ΔCを、ΔC=C1/C0×100(%)にて計算した。そして、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。この容量維持率ΔCの値が高いほど、二次電池の高温サイクル特性が優れ、電池が長寿命であることを示す。
A:容量維持率ΔCが84%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上84%未満
C:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
D:容量維持率ΔCが75%未満
【0064】
<機能層付き基材の信頼性>
実施例および比較例で調製したセパレータ(機能層付きセパレータ基材)を直径19mmの円形に打ち抜いた。この円形のセパレータに電解液を含浸させ、一対の円形のSUS板(直径15.5mm)に挟み、(SUS板)/(円形のセパレータ)/(SUS板)という構成で重ね合わせた。ここで、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。これを、2032型コインセルに封入し、コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。そして、振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加しながら、昇温速度1.6℃/分で200℃まで昇温させ、この間のセル抵抗を測定することで短絡の発生状況を確認した。この試験を10回行い、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。短絡の発生が少ないほど、機能層付き基材の信頼性に優れることを示す。
A:短絡の発生が0個
B:短絡の発生が1個〜3個
C:短絡の発生が4個〜7個
D:短絡の発生が8個〜10個
【0065】
(実施例1)
<非導電性粒子の調製>
撹拌機付き5MPa耐圧容器に、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのメタクリル酸メチル60部およびアクリル酸ブチル35部、酸基含有単量体としてのメタクリル酸4部、架橋性単量体としてのエチレンジメタクリレート1部;乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部、並びに、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に撹拌した。その後、80℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し、反応を停止して、非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液を調製した。
なお、得られた非導電性粒子の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.45μmであった。
【0066】
<結着材の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、および過硫酸アンモニウム0.5部をそれぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部および(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのアクリル酸ブチル95部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N−メチロールアクリルアミド1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて上述の反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、更に70℃で3時間撹拌して反応を終了し、結着材としての粒子状重合体を含む水分散液を調製した。
なお、得られた結着材の体積平均粒子径D50を測定したところ、0.36μmであった。
【0067】
<非水系二次電池機能層用組成物の調製>
上述の非導電性粒子としての有機粒子を含む水分散液100部(固形分相当)に対し、上述の結着材としての粒子状重合体を含む水分散液14部(固形分相当)、粘度調整剤としてのエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(固形分濃度:70質量%、重合比:5/5(質量比))2部(固形分相当)および1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(固形分濃度:5.0質量%)0.0005部(固形分相当)を混合し、更にイオン交換水を固形分濃度が15質量%になるように混合し、スラリー状の非水系二次電池機能層用組成物を調製した。
【0068】
<セパレータの調製>
ポリエチレン製の多孔基材(厚み:16μm、ガーレー値:210s/100cc)をセパレータ基材として用意した。このセパレータ基材の両面の上に、上述の機能層用組成物をスプレーコート法により塗布し、50℃で1分間乾燥させた。これにより、1層当たりの厚みが1μmの層をセパレータ基材上に形成して、塗工セパレータを得た。
得られた塗工セパレータの塗工面(機能層用組成物が塗布された面)に対し、50W・min/m2の放電量でコロナ放電処理を施し、セパレータ基材の両面に機能層を形成してなるセパレータ(機能層付きセパレータ基材)を調製した。
得られたセパレータを用いて、機能層の水に対する接触角、耐ブロッキング性および機能層付き基材の信頼性を測定または評価した。結果を表1に示す。
【0069】
<負極基材の調製>
撹拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に撹拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。この粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した後、加熱減圧蒸留によって上述の混合物から未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、およびイオン交換水を加えて固形分濃度が68%となるように調整した後、25℃で60分間混合して、混合液を得た。この混合液に、イオン交換水を加えて固形分濃度が62%となるように調整した後、更に25℃で15分間混合した。次いで、この混合液に、上述の粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部入れ、更にイオン交換水を加えて最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
そして、この負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚み20μmの銅箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚みが80μmのプレス後の負極基材を得た。
【0070】
<正極基材の調製>
正極活物質としてのLiCoO2(体積平均粒子径D50:12μm)100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS−100」)を2部、および、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部混合し、これにN−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度を70%にした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を得た。
そして、この正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚み20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚みが80μmのプレス後の正極基材を得た。
【0071】
<非水系二次電池の製造>
上記で得られた正極基材を49cm×5cmに切り出した。次いで、上記で得られたセパレータを55cm×5.5cmに切り出し、これを、切り出した正極基材の正極合材層上に配置した。更に、上記で得られた負極基材を50cm×5.2cmに切り出し、これを、上記のセパレータの正極基材が配置された側とは反対側の面上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うように配置し、これを捲回機によって捲回し、捲回体を得た。この捲回体を70℃、1.0MPaで8秒間プレスし、扁平体とした。この扁平体を電池の外装としてのアルミニウム包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート(体積混合比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF6)を空気が残らないように注入した。更に、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口した。これにより、放電容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
得られた捲回型リチウムイオン二次電池を用いて、高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例2〜4)
セパレータの調製時に、塗工セパレータの塗工面に対して施すコロナ放電処理における放電量を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、非導電性粒子、結着材、非水系二次電池機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および非水系二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
セパレータの調製時に、コロナ放電処理を、機能層用組成物を塗布する前のセパレータ基材の面に対して施し、その後、このセパレータ基材の両面の上に機能層用組成物をスプレーコート法により塗布し、50℃で1分間乾燥させてセパレータを調製したこと以外は実施例1と同様にして、非導電性粒子、結着材、非水系二次電池機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および非水系二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
セパレータの調製時に、塗工セパレータの塗工面に対してコロナ放電処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、非導電性粒子、結着材、非水系二次電池機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および非水系二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
上述の表1より、非導電性粒子および結着材を含む機能層用組成物を付与し、この基材上に付与した機能層用組成物に表面活性化処理を施して非水系二次電池用機能層を形成した実施例1〜4では、電極とセパレータとが強固に接着され、機能層のピール強度が優れることが分かる。
また、上述の表1の実施例1〜4より、コロナ放電処理における放電量を調整するなどにより、機能層のピール強度、耐ブロッキング性、高温サイクル特性、および機能層付き基材の信頼性を高いレベルで並立させ得ることが分かる。
【0077】
なお、上記実施例では、いずれも、表面活性化処理としてコロナ放電処理を用いたが、本明細書にて列挙したような他の表面活性化処理を用いることでも、機能層のピール強度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、優れたピール強度を有する非水系二次電池用機能層を形成することが可能な、非水系二次電池用機能層の形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高温サイクル特性などの電池特性に優れる非水系二次電池を製造することが可能な、非水系二次電池の製造方法を提供することができる。