(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834168
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20210215BHJP
H01L 33/52 20100101ALI20210215BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/52
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-88760(P2016-88760)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-199771(P2017-199771A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森住 修
【審査官】
村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/147611(WO,A1)
【文献】
特開2007−235104(JP,A)
【文献】
特開平07−106638(JP,A)
【文献】
特開2012−069832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棚板を備えたマガジンを準備する工程と、
発光素子が載置された凹部を備えたパッケージを複数備えた基板を準備する工程と、
前記凹部内に、蛍光体粒子を含む樹脂部材をポッティングする工程と、
前記樹脂部材をポッティングした後、前記基板を前記マガジンに複数枚収容する前に、前記樹脂部材を含む基板を加熱し、前記樹脂部材を硬化する第1硬化工程と、
前記第1硬化工程により硬化された前記樹脂部材を備える前記基板を、順次前記マガジンに複数枚収容する工程と、
前記マガジンに収容された前記基板を前記第1硬化工程よりも高い温度で加熱して、前記樹脂部材を硬化する第2硬化工程と、
を含む発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1硬化工程の加熱温度は、150℃以下である請求項1記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂部材は、シリコーン樹脂組成物を含む請求項1又は請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記蛍光体は、前記樹脂部材中に1重量部〜200重量部含まれる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子(以下、「発光素子」とも称する)と、粒子状の蛍光体とを用いたLED(Light Emitting Diode)などの発光装置が知られている。
【0003】
このような発光装置の製造方法としては、蛍光体を液状の樹脂に混合させた液状樹脂をポッティングする方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2012/147611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体の種類や、樹脂の種類によっては、蛍光体入り樹脂部材を発光素子上にポッティングしたあと加熱するまでの間に、蛍光体が樹脂部材で沈降する場合がある。そのため、蛍光体の分散状態にばらつきが生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の構成を含む。
複数の棚板を備えたマガジンを準備する工程と、発光素子が載置された凹部を備えたパッケージを複数備えた基板を準備する工程と、凹部内に蛍光体粒子を含む樹脂部材をポッティングする工程と、樹脂部材を含む基板を加熱し、樹脂部材を硬化する第1硬化工程と、第1硬化工程により硬化された樹脂部材を備える基板を、マガジンに複数枚収容する工程と、マガジンに収容された基板を第1硬化工程よりも高い温度で加熱して、樹脂部材を硬化する第2硬化工程と、を含む発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
以上により、蛍光体の分散状態のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るマガジンを示す概略斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本実施形態に係る基板を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置の製造方法を例示するものであって、本発明は、発光装置の製造方法を以下に限定するものではない。
【0010】
また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。また、導電部材及び支持体を含むパッケージ、及びパッケージを含む発光装置は、工程内ではこれらの集合体で用いられている。集合体の個片化前後において、同じ名称を用いて説明することがある。
【0011】
<マガジンを準備する工程>
複数の棚板14を備えたマガジンを準備する。
図1は、マガジン10の一例である。マガジン10は複数の基板を収容可能な部材である。
【0012】
マガジン10は長方形の天板12と、天板12と同様の長方形の底板11と、天板12と底板11とを接続する2つの側板13と、を備える。マガジン10の2つの側面は側板がなく開口されており、この開口から基板を出し入れすることができる。
【0013】
<発光素子が載置された基板を準備する工程>
発光素子が載置された基板を準備する。
図2A、
図2Bに示す基板100は、支持体103と、導電部材102と、を備えたパッケージ101を複数備えている。1枚の基板には、複数のパッケージを備えており、複数の発光装置を得ることができる。
図2では、複数のパッケージ分が一体成型された支持体103として成形樹脂からなる支持体103を例示している。支持体103は、1枚の基板100に2つ形成されており、さらに各支持体103は複数の凹部104を備えている。しかし、このような形態に限らず、パッケージごとに分離した支持体としてもよい。
【0014】
パッケージ101には凹部104が備えられており、複数の凹部104が複数列及び複数行に配置されている。各凹部104は、その底面に一対の導電部材(リード)102が露出されている。1つの凹部104には、少なくとも1つの発光素子105が載置されている。各発光素子105は接合部材を用いて固定されている。各発光素子105は、ワイヤ106を用いてリード102と電気的に接続されている。尚、ワイヤ106を用いず、導電性の接合部材を用いて発光素子105をリード102上に固定してもよい。また、凹部104内には、発光素子の他に、ツェナーダイオードなどの保護素子を載置してもよい。
【0015】
<蛍光体粒子を含む樹脂部材をポッティングする工程>
ポッティング装置の載置台に基板100を載置する。
図3(a)は、
図2に示した基板100の概略断面図を示す。ポッティング装置は、蛍光体を含む液状の樹脂部材が充填されたシリンジと、シリンジに接続されるディスペンスノズルと、を備える。シリンジ内を加圧することで、
図3(b)に示すように、ディスペンスノズル111の先端から樹脂部材110が吐出される。吐出された樹脂部材110は、基板100の各凹部104内にポッティングされ、凹部104内の発光素子105及びワイヤ106を埋設する。複数の凹部104に樹脂部材110をポッティングすることで、
図3(c)に示すような樹脂部材110を含む基板100Aが得られる。
【0016】
<第1硬化工程>
次に、
図4に示すように、樹脂部材をポッティングした後の基板100Aを、ヒーターを備えた加温装置112内に移動し、加熱する。加温装置への移動は、樹脂部材をポッティング完了後、例えば、30分以内に行う。第1硬化工程における加熱温度は、150℃以下、1分間〜1時間程度加熱する。この第1硬化工程により、樹脂部材110が硬化される。尚、ここで「硬化」は、蛍光体が沈まない程度に硬化又は高粘度化することを含む。尚、蛍光体の比重や粒径に応じて、加熱条件を適宜変更することができる。
【0017】
<マガジンに基板を収容する工程>
次に、
図5に示すように、第1硬化工程により硬化された樹脂部材を備える基板100Aを、前述のマガジン10に順次収容する。マガジン10は複数の棚板を備えているため、次の工程に移るまでの待機時間は、基板によって異なる。例えば、一番上の棚板の上に載置する基板100Aと、一番下の棚板に載置する基板100Aとでは、待機時間が10分〜1時間程度と差がある場合がある。しかしながら、このように異なる待機時間であったとしても、第1硬化工程を経ることで樹脂部材が硬化されているため、蛍光体が時間経過によって沈降しにくい。そのため、蛍光体の分散状態が基板によってばらつきにくい。
【0018】
<第2硬化工程>
マガジン10内に複数枚の基板100Aを収容した後、マガジン10ごと加温装置112内に移動し、マガジンに収容された基板100Aを加熱する。この第2硬化工程では、第1硬化工程よりも高い温度で加熱する。これにより、樹脂部材110が硬化される。
【0019】
上述のように蛍光体を含む樹脂部材を2段階で硬化することで、蛍光体の分散状態が基板ごとにばらつくことを低減することができる。
以下、各部材について詳説する。
【0020】
<マガジン>
マガジンは、天板と底板と、複数の棚板を備えた側板と、を備えた筐体である。天板と底板とは、左右の2つの側板によって接合されており、これらで囲まれた領域に、基板を収容可能な空間を備える。側板のない側面は基板を出し入れ可能なように開口している。また、収容した基板が飛び出さないよう、ストッパーを備えていてもよい。
【0021】
天板と底板と側板とは、一体又は別体とすることができる。また、2つの側板は、その内壁に一体又は別体で形成される複数の棚板を備えており、各棚板は、一方の開口から他方の開口に向けて延伸するように設けられている。基板の大きさ等によっては、棚板が連続する1つ又は2以上に分割されていてもよい。1つの棚板とその上下に設けられる棚板とは、収容する基板の高さ等に応じて一定の間隔を空けて配置される。また、棚板は、基板の底面の一部を載置可能なように、対向する内壁における各棚板が同じ高さとなるように配置されている。
【0022】
マガジンを構成する部材としては、後述の第2硬化工程の加熱温度に対して耐熱性があり、変形しにくい部材が好ましい。例えば、ステンレス、アルミニウムなどの金属部材が挙げられる。マガジンの大きさ、棚板の数等については、収容する基板の大きさ等に応じて適宜選択できる。
【0023】
<基板>
基板は、凹部を備えたパッケージを複数備える。換言すると、基板はパッケージの集合体である。1つのパッケージは、1又は複数の凹部を備えていてもよい。凹部は、その底面に正負一対の電極となる導電部材を少なくとも2つ備える。一対の導電部材は、絶縁性の支持体によって一体的に保持されている。
【0024】
パッケージは、導電部材としてリードを備え、支持体として樹脂部材を備えた樹脂パッケージを用いることができる。また、パッケージは、支持体としてセラミックを用い、導電部材として配線部材を備えたセラミックパッケージを用いることができる。また、パッケージは、支持体としてガラスエポキシを用い、導電部材として配線部材を備えたガラスエポキシパッケージを用いることができる。このような支持体を備えるパッケージは、支持体と導電部材と、で凹部が構成される。あるいは、パッケージは、金属又はセラミック等の支持体の上面に、導電部材を備えた基板上に、描画、貼り合わせ、成形などによって形成した枠体を備えたCOB(Chip on Board)パッケージを用いることができる。COBパッケージは、支持体と導電部材とを含む基板と、枠体と、で凹部が構成される。
【0025】
また、支持体を備えない基板としてもよい。すなわち、一対の導電部材のうち、一方の導電部材が凹部を備える基板を用いることもできる。
【0026】
以上に挙げた樹脂パッケージ、セラミックパッケージ、ガラスエポキシパッケージ、COBパッケージに用いられる材料は、公知のものを用いることができる。また、凹部の形状、大きさ、深さ等については、目的や用途に応じて種々選択することができる。
【0027】
発光素子は、素子基板上に積層された、発光層を含む半導体層から構成される。半導体層を構成するp層、発光層、n層としては、特に限定されるものではなく、例えば、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系化合物半導体が好適に用いられる。これらの窒化物半導体層は、それぞれ単層構造でもよいが、組成及び膜厚等の異なる層の積層構造、超格子構造等であってもよい。特に、発光層は、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸又は多重量子井戸構造であることが好ましい。
【0028】
発光素子が有する一対の電極は、半導体層の同一面側に配置されている。これらの一対の電極は、上述した第1半導体層及び第2半導体層と、それぞれ、電流−電圧特性が直線又は略直線となるようなオーミック接続されるものであれば、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。このような電極は、当該分野で公知の材料及び構成で、任意の厚みで形成することができる。例えば、十数μm〜300μmが好ましい。
【0029】
<樹脂部材>
樹脂部材は、透光性の樹脂と、蛍光体粒子と、を含む。樹脂部材は、発光素子、保護素子、ワイヤなど、パッケージに実装される電子部品を、塵芥、水分、外力などから保護する部材である。封止部材の材料としては、発光素子からの光を透過可能な透光性を有し、且つ、それらによって劣化しにくい耐光性を有するものが好ましい。
【0030】
透光性の樹脂の具体的な材料としては、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の、発光素子からの光を透過可能な透光性を有する絶縁樹脂組成物を挙げることができる。また、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等も用いることができる。
【0031】
蛍光体は粒子状であり、蛍光体の形状は、特に限定されないが、例えば、球形又はこれに類似する形状であることが好ましい。蛍光体は、例えば、平均粒径が3μm〜30μm程度の粒子である。ここで、平均粒径は、D
50により定義することができる。また、蛍光体の平均粒径は、例えば、レーザ回折散乱法、画像解析法(走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM))などにより測定することができる。レーザ回折散乱法の粒径測定装置は、例えば島津製作所社製のSALDシリーズ(例えばSALD−3100)を用いることができる。画像解析法は、例えばJIS−Z8827−1:2008に準ずる。
【0032】
蛍光体としては、例えば、酸化物系、硫化物系、窒化物系の蛍光体などが挙げられる。例えば、発光素子として青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用いる場合、青色光を吸収して黄色〜緑色系発光するYAG系、LAG系、緑色発光するSiAlON系(βサイアロン)、SGS蛍光体、青色発光するBAM蛍光体、赤色発光するSCASN、CASN系、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウム(KSF系蛍光体;K
2SiF
6:Mn)、硫化物系蛍光体等の蛍光体の単独又は組み合わせが挙げられる。
【0033】
蛍光体は、例えば、樹脂部材中に1重量部〜200重量部含まれる。また、このような材料に加え、所望に応じて着色剤、光拡散剤、光反射材、各種フィラー、などを含有させることもできる。樹脂部材の充填量は、上記電子部品が被覆される量であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示に係る発光装置の製造方法は、照明用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、液晶のバックライト用光源、センサー用光源、信号機等、種々の発光装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…マガジン
11…底板
12…天板
13…側板
14…棚板
100、100A…基板
101…パッケージ
102…導電部材(リード)
103…支持体(成形樹脂)
104…凹部
105…発光素子
106…ワイヤ
110…樹脂部材
111…ディスペンスノズル
112…加温装置