特許第6834231号(P6834231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834231
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】消臭剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20210215BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C02F11/00 F
   A61L9/01 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-155781(P2016-155781)
(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公開番号】特開2018-23455(P2018-23455A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】井上 健
(72)【発明者】
【氏名】小島 英順
(72)【発明者】
【氏名】木幡 賢二
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−49940(JP,A)
【文献】 特開2003−290793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00
A61L 9/00−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硝酸塩10〜37質量%と、硝酸塩10〜45質量%とを含む水溶液よりなる消臭剤であって、
該亜硝酸塩が亜硝酸アルカリ金属塩及び/又は亜硝酸アルカリ土類金属塩であり、該硝酸塩が硝酸アルカリ金属塩及び/又は硝酸アルカリ土類金属塩であり、
亜硝酸ナトリウム濃度40質量%の水溶液中の亜硝酸ナトリウムの重量モル濃度に対して、該消臭剤の水溶液中の亜硝酸塩の亜硝酸イオン換算の重量モル濃度と硝酸塩の硝酸イオン換算の重量モル濃度の合計が1.05〜1.4倍であることを特徴とする消臭剤(ここで、「重量モル濃度」とは、当該水溶液100gに溶けている溶質のモル数で表した濃度(mol/100g)を意味する。)
【請求項2】
請求項1において、排水、汚泥又は汚泥脱水ケーキの消臭剤であることを特徴とする消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水等の消臭剤に関するものであり、詳しくは、亜硝酸塩と硝酸塩とを含む一剤化製剤であって、有効成分濃度が高く消臭効果の持続性に優れると共に、製剤安定性にも優れた消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
亜硝酸系の薬剤は、排水や汚泥、脱水ケーキなどの消臭剤として知られている。
即ち、亜硝酸は、微生物の反応を利用して、排水や汚泥中で既に発生している硫化水素を酸化除去する効果を有する。加えて、排水や汚泥の嫌気化を抑制し、硫酸還元菌などの活動によりさらに硫化水素が発生するのを抑制する。
【0003】
亜硝酸系薬剤としては、40%の亜硝酸ナトリウム溶液が製品として流通している。その配合濃度を高めることができれば、製品重量当たりの消臭効果を高めることができる。しかし、単純に製品中の亜硝酸濃度を高めると、溶解度を超え、常温で溶解していたとしても、低温で有効成分の析出がおこり、効果を発揮することができない。
【0004】
嫌気化抑制の作用において、亜硝酸イオンと硝酸イオンは同等の効果をもつため、硝酸イオンが付加的に配合できれば、製品あたりの有効成分濃度が増加し、持続効果の改善が期待される。しかし、例えば、亜硝酸ナトリウム溶液に硝酸ナトリウムを配合すると、ナトリウムイオン濃度が増加するため、亜硝酸イオンが亜硝酸ナトリウムとして析出してしまう。このため、持続効果に優位差があるレベルでは、有効成分濃度を高めることができないのが実情であった。
【0005】
このようなことから、従来、亜硝酸塩と硝酸塩とを含む水溶液よりなる一剤化製剤は提供されておらず、亜硝酸塩と硝酸塩とを併用する従来技術ではこれらを各々別々の水溶液として添加するか、予め混合して添加する場合であっても、その濃度を低く設定しているのが実状である。
【0006】
例えば、特許文献1には、汚泥中に亜硝酸イオンと硝酸イオンを共存させる、汚泥の硫化水素の除去及び発生防止方法が提案されており、実施例では、亜硝酸ナトリウムと硝酸ナトリウムを混合溶液にして添加しているが、この混合溶液の亜硝酸ナトリウム濃度は40%であるものの、硝酸ナトリウム濃度は1.5%と、硝酸ナトリウム濃度は非常に低い。この混合溶液100g中の亜硝酸ナトリウムと硝酸ナトリウムの合計のモル数(mol/100g)は、40%亜硝酸ナトリウム水溶液100g中の亜硝酸ナトリウムのモル数(mol/100g)に対して約1.03倍であり、有効成分濃度については有意な向上効果はない。
【0007】
また、特許文献2には、悪臭が発生する水系対象物に、亜硝酸イオンと硝酸イオンと鉄イオンとを使用する水系対象物の脱臭方法が提案されているが、亜硝酸イオンと硝酸イオンの添加には、38%亜硝酸ナトリウム水溶液と34%硝酸ナトリウム水溶液の2剤を用いてこれらを同時に添加しており、これらを一剤化したものは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−49940号公報
【特許文献2】特開2013−166108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の通り、従来において、亜硝酸塩の単独品の水溶液(40質量%濃度、0.58mol/100g)よりも有効成分濃度を高くすることを目的として、更に硝酸塩を配合した上で、その安定性を確保し、製剤としての安定性、消臭効果の持続性に優れた消臭剤は提供されていない。また、従来技術では、硝酸塩の配合で亜硝酸塩が析出し有効成分濃度を高めることができないとの課題の認識もない。
【0010】
本発明は、一剤化製剤としての安定性を損なうことのない範囲で、亜硝酸塩と硝酸塩とを配合して、従来の亜硝酸塩単独の水溶液(40質量%濃度)よりも有効成分濃度を高くすることにより消臭効果の持続性を高めた消臭剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ね、亜硝酸塩と硝酸塩とを特定の濃度範囲で含む水溶液であれば、上記課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0012】
[1] 亜硝酸塩10〜37質量%と、硝酸塩10〜45質量%とを含む水溶液よりなる消臭剤。
【0013】
[2] [1]において、亜硝酸ナトリウム濃度40質量%の水溶液中の亜硝酸ナトリウムの重量モル濃度に対して、該消臭剤の水溶液中の亜硝酸塩の亜硝酸イオン換算の重量モル濃度と硝酸塩の硝酸イオン換算の重量モル濃度の合計が1.05〜1.4倍であることを特徴とする消臭剤(ここで、「重量モル濃度」とは、当該水溶液100gに溶けている溶質のモル数で表した濃度(mol/100g)を意味する。)。
【0014】
[3] [1]又は[2]において、排水、汚泥又は汚泥脱水ケーキの消臭剤であることを特徴とする消臭剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一剤化製剤としての安定性を損なうことのない範囲で、亜硝酸塩と硝酸塩とを配合して、従来の亜硝酸塩単独の水溶液(40質量%濃度、0.58mol/100g)よりも有効成分濃度を高くすることにより消臭効果の持続性を高めた消臭剤を提供することができる。
本発明によれば、従来、亜硝酸系薬剤として市販されている亜硝酸ナトリウム濃度40質量%の水溶液中の亜硝酸ナトリウムの重量モル濃度(0.58mol/100g)に対して、消臭剤の水溶液中の亜硝酸塩の亜硝酸イオン換算の重量モル濃度と硝酸塩の硝酸イオン換算の重量モル濃度の合計が1.05〜1.4倍となるように有効成分濃度を高めることにより、消臭効果の持続性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実験例1における亜硝酸Na及び硝酸Ca水溶液の安定性を示す亜硝酸Naと硝酸Caの配合濃度の分布を示すグラフである。
図2図1(−5℃)において安定な水溶液の亜硝酸Na濃度と有効成分比との関係を示すグラフである。
図3】室温において安定な水溶液の亜硝酸Na濃度と有効成分比との関係を示すグラフである。
図4】実施例2と比較例1の硫化水素濃度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明の消臭剤は、亜硝酸塩10〜37質量%と、硝酸塩10〜45質量%とを含む安定な水溶液よりなる亜硝酸塩と硝酸塩の一剤化製剤である。
【0019】
亜硝酸塩としては、亜硝酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
亜硝酸アルカリ金属塩として、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸セシウム等が挙げられる。
亜硝酸アルカリ土類金属塩として、例えば、亜硝酸カルシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ストロンチウム等が挙げられる。
亜硝酸重金属塩として、例えば、亜硝酸ニッケル、亜硝酸銅、亜硝酸銀、亜硝酸亜鉛、亜硝酸タリウム等が挙げられる。
これらは、1種で又は2種以上を組み合わせて用いることが可能であるが、入手の容易さ、経済性、取り扱い性、環境に対する影響の観点から、亜硝酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0020】
硝酸塩としては、硝酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
硝酸アルカリ金属塩として、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム等が挙げられる。
硝酸アルカリ土類金属塩として、例えば、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム等が挙げられる。
硝酸重金属塩として、例えば、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸タリウム、硝酸鉄(硝酸第一鉄/硝酸第二鉄等)等が挙げられる。
これらは、1種で又は2種以上を組み合わせて用いることが可能であるが、入手の容易さ、経済性、取り扱い性、環境に対する影響の観点から、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウムおよびこれらの複合塩を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の消臭剤は亜硝酸塩を10〜37質量%、硝酸塩を10〜45質量%含む。亜硝酸塩濃度が10質量%未満であると、添加初期の消臭効果を十分に得ることができず、37質量%を超えると、硝酸塩の配合で相対的に水の濃度が下がるため、析出のおそれがある。従って、亜硝酸塩濃度の下限は10質量%、好ましくは16質量%、より好ましくは20質量%とし、上限は37質量%、好ましくは30質量%、より好ましくは26質量%とする。
一方、硝酸塩濃度が10質量%未満では、硝酸塩を配合することによる有効成分濃度の向上効果を十分に得ることができず、45質量%を超えると、安定な水溶液を調製し得なくなる。従って、硝酸塩濃度の下限は10質量%、好ましくは14質量%、より好ましくは20質量%とし、上限は45質量%、好ましくは42質量%、より好ましくは40質量%とする。
【0022】
本発明の消臭剤は、従来亜硝酸系薬剤として市販されている亜硝酸ナトリウム濃度40質量%の水溶液(以下「40%亜硝酸Na」と記載する場合がある。)中の亜硝酸ナトリウムの重量モル濃度に対する、消臭剤の水溶液中の亜硝酸塩の亜硝酸イオン換算の重量モル濃度と硝酸塩の硝酸イオン換算の重量モル濃度の合計の割合(以下、この割合を「有効成分比」と称す場合がある。)が1.05〜1.4倍となるように、亜硝酸塩と硝酸塩を含むことが好ましく、この有効成分比はより好ましくは1.05〜1.3倍であり、更に好ましくは1.1〜1.3倍である。この有効成分比が上記下限未満であると、硝酸塩の配合で有効成分濃度を高めて消臭剤の消臭効果の持続性を高める本発明の効果を十分に得ることができない。有効成分比が1.4を超えると、製品安定性が得られる温度が室温よりも高くなるので好ましくない。
【0023】
本発明の消臭剤は、上記亜硝酸塩濃度、硝酸塩濃度、及び好適な有効成分比において、各塩の溶解度から計算される溶解度積との関係において、0℃においても析出が起こらないような濃度で調製することが好ましい。なお、この温度を−5℃程度に低く設定すれば、より安定性が増し、寒冷地などへの適用範囲を広げることができる。ただし、有効成分比はやや低めに設定する必要がある。
【0024】
本発明の消臭剤を調製する際の各成分の混合手順には特に制限はないが、例えば、水に亜硝酸塩を添加して混合し、pH調整のために水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))等のアルカリを添加して更に混合し、ここへ、硝酸塩が硝酸カルシウムの場合は、CaCOの析出物を分散させるための分散剤として、ホスホノブタントリカルボン酸(製品「バイヒビットAM」、PBTC)、ヘキサエチリデンジホスホン酸(製品「ディクエスト2010」、HEDP)、低分子ポリマーを添加混合した後、硝酸塩を添加混合する方法が挙げられる。なお、調整pH値は7〜8.5、特に約8.0が望ましい。pHが7よりも低いと亜硝酸が分解するおそれがあり、8.5を超えるとアンモニアを含む硝酸塩を用いた場合、製品の臭気が問題となる。
【0025】
ここで、NaOH等のアルカリの添加量は、上記の通り、調製される消臭剤のpHが7〜8.5、特に7.5〜8.5となるような範囲で48%NaOHとして0.05〜0.15質量%程度の濃度に配合することが好ましい。
【0026】
また、分散剤は、長期にわたりCaCOスケールによる問題(例えばポンプの閉塞)を防止する観点から0.005〜0.02質量%程度の濃度に配合することが好ましい。
【0027】
本発明の消臭剤は、排水、汚泥や汚泥の脱水ケーキの消臭剤として有効に用いることができる。その添加量は、消臭対象物の性状や臭気物質量等によっても異なるが、通常、排水の流入、流出工程から汚泥発生工程、汚泥脱水工程における排水や汚泥に対して、通常の薬注ポンプを用いて10〜1000mg/Lの添加量で添加することが好ましい。また、脱水ケーキに対しては、ケーキ重量に対する添加量として0.1〜1質量%添加することが好ましい。
【0028】
本発明の消臭剤は、亜硝酸塩に更に硝酸塩を配合したことで、消臭剤中の有効成分濃度が高くなり、従来品と同じ添加量において、消臭効果の持続期間を延長し、長期に亘り良好な消臭効果を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下に実験例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。以下において、「%」は「質量%」を示す。
【0030】
[実験例1]
亜硝酸ナトリウム(亜硝酸Na)と硝酸カルシウム(硝酸Ca)とを各々の濃度を変えて水に溶解させた水溶液を調製した。水溶液の調製は、スターラー撹拌しながら、水に亜硝酸Naを添加した後、NaOHを添加し、次いで、分散剤(バイエル社製「バイヒビットAM」)を添加し、その後硝酸Ca塩を添加することで行った。
NaOHは亜硝酸の分解抑制のために、pHが7.5〜8.5となるように添加した。分散剤は0.01質量%添加した。
【0031】
このようにして水溶液を調製する際に、不溶化して均一な水溶液を調製できない場合、或いは、−5℃で1日放置すると析出が起こるものの亜硝酸Naと硝酸Caの配合濃度の分布を図1に×で示した。また、均一な水溶液を調製することができ、−5℃で1日放置して析出が起こらない亜硝酸Naと硝酸Caの配合濃度の分布を図1に○で示した。
【0032】
図1より、亜硝酸Na10〜37%、硝酸Ca10〜45%の範囲に、析出の起こらない安定な領域が存在することが分かる。各条件のイオン積が、亜硝酸Naと硝酸Na、硝酸Caの溶解度から計算される3つの溶解度積(0℃)を超えたケースのほとんどで、1日後に析出がみられた。
【0033】
図1に示された析出の起こらない配合において、有効成分比(40%亜硝酸Naの亜硝酸Naの重量モル濃度(0.58mol/100g)に対する、調製した水溶液中の亜硝酸Naの亜硝酸イオン換算の重量モル濃度と硝酸Caの硝酸イオン換算の重量モル濃度の合計の割合)を算出し、亜硝酸Na濃度との関係を図2に示した。
【0034】
図2より、亜硝酸Na濃度10%でも有効成分比を1.2倍に高めることができ、亜硝酸Na濃度約20〜30%において、有効成分比を約1.3倍に高めることができることが分かる。
【0035】
放置温度を室温にした場合に、析出の起こらない配合において、有効成分比(40%亜硝酸Naの亜硝酸Naの重量モル濃度(0.58mol/100g)に対する、調製した水溶液中の亜硝酸Naの亜硝酸イオン換算の重量モル濃度と硝酸Caの硝酸イオン換算の重量モル濃度の合計の割合)を算出し、亜硝酸Na濃度との関係を図3に示した。
図3より、室温においては、亜硝酸Na濃度10%でも有効成分比を1.2倍に高めることができ、亜硝酸Na濃度約16〜26%において、有効成分比を約1.4倍に高めることができることが分かる。
【0036】
[実施例1,2、比較例1]
下記性状の重力濃縮汚泥とベルト濃縮汚泥の4:1の混合汚泥(pH6.5)を試験汚泥として、消臭試験を行った。
【0037】
【表1】
【0038】
<消臭剤>
消臭剤としては、以下のものを用いた。
消臭剤I:亜硝酸Na40%、残部水の水溶液(比較例1)
消臭剤II:亜硝酸Na18%、硝酸Ca42%、残部水の水溶液(有効成分比1.33対40%亜硝酸Na)(実施例1)
消臭剤III:亜硝酸Na30%、硝酸Ca26%、残部水の水溶液(有効成分比1.30対40%亜硝酸Na)(実施例2)
消臭剤IIIIIは、実験例1と同様の手順で調製した。
【0039】
<試験方法>
試験は以下の手順で行った。
(1) 30℃に調節した試験汚泥500mLを500mLポリビンに採取した。
(2) 各消臭剤を150mg/L、200mg/L、250mg/L、350mg/L又は450mg/L添加し、薬さじで攪拌した。
(3) ポリビンを密封し、30℃の恒温槽に保管した。
(4) 汚泥から発生する硫化水素濃度を、以下の方法で定期的に測定した。
<硫化水素濃度の測定>
(1)500mLポリビンに汚泥50mLを採取し、開閉式の細孔を設けた蓋で密閉した。
(2) 振とう機にて2分間、200rpmで強く振とうした。
(3) 細孔に検知管を差込み、ポリビン空隙に充満した臭気物質濃度を検知管法で測定した。
【0040】
ブランクとして、消臭剤を添加せずに上記と同様の試験を行った。
【0041】
試験結果を下記表2(表2A,表2B),表3に示す。表2,3中の略号は以下の通りである。
S:硫化水素
MM:メチルメルカプタン
ND:検知されない
TR:検知限界程度(検知限界:1ppm)
また、実施例2と比較例1の硫化水素濃度の経時変化を図4に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
実施例1,2及び比較例1の結果から、本発明の消臭剤は、有効成分濃度が高く、消臭効果及びその持続性に優れることが分かる。
なお、表2は低濃度(150〜250mg/L)、短時間のテスト結果であり、NO濃度及びNO濃度の合計は150mg/Lの添加において1時間後で比較例1が1mg/Lであったのに対し、実施例1では、11mg/L、実施例2で6mg/Lと、高い残留性を示した。その結果、3時間後のHS濃度は比較例1の14ppmに対して、実施例1,2ではいずれもNDと低い値になっている。すなわち、比較例1の持続効果1時間を実施例1,2では3時間まで高めることができた。
表3は高濃度(250〜450mg/L)、長時間のテスト結果であり、実施例1は比較例1との差はなかったが、実施例2は450mg/Lの添加において、20時間後までNO濃度及びNO濃度の合計は18mg/Lの残留がみられ、比較例1の持続効果が20時間なのに対し、24時間以上を達成した。
図1
図2
図3
図4