特許第6834265号(P6834265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6834265封止構造体の製造方法、封止材及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834265
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】封止構造体の製造方法、封止材及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20210215BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20210215BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210215BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210215BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
   H01L23/28 F
   H01L23/30 R
   H01L23/28 H
   H01L23/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-172931(P2016-172931)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-41768(P2018-41768A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】野村 豊
(72)【発明者】
【氏名】荻原 弘邦
(72)【発明者】
【氏名】金子 知世
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−035568(JP,A)
【文献】 特開平11−156565(JP,A)
【文献】 特開2013−004823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28−31
H01L 23/544
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層及び樹脂層を備える封止材の前記樹脂層により第1の電子部品を封止する封止工程を備え、
前記金属層が、表面粗さ(Ra)が1μm未満である表面を有し、
前記樹脂層が、前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置されている、封止構造体の製造方法。
【請求項2】
金属層及び樹脂層を備える封止材の前記樹脂層により第1の電子部品を封止する封止工程を備え、
前記金属層が、表面粗さ(Ra)が1μm未満である表面を有し、
前記樹脂層が、前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置されていると共に、シリカ類を含む無機充填材を含有し、
前記樹脂層における前記無機充填材の含有量が80質量%以下である、封止構造体の製造方法。
【請求項3】
金属層及び樹脂層を備える封止材の前記樹脂層により第1の電子部品を封止する封止工程を備え、
前記金属層が、表面粗さ(Ra)が1μm未満である表面を有し、
前記樹脂層が、前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置されていると共に、酸化アルミニウムを含む無機充填材を含有し、
前記樹脂層における前記無機充填材の含有量が85質量%以下である、封止構造体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層における無機充填材の含有量が55質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の電子部品が複数である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の封止構造体の製造方法。
【請求項6】
前記封止工程の後に、前記金属層をレーザーマーキングする工程を更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の封止構造体の製造方法。
【請求項7】
前記封止工程の後に、前記金属層の前記樹脂層とは反対側に第2の電子部品を配置する工程を更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の封止構造体の製造方法。
【請求項8】
前記封止工程の後に、前記第1の電子部品、前記樹脂層及び前記金属層を備える構造体をダイシングする工程を更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の封止構造体の製造方法。
【請求項9】
表面粗さ(Ra)が1μm未満である表面を有する金属層と、
前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層により電子部品を封止するために用いられる、封止材。
【請求項10】
表面粗さ(Ra)が1μm未満である表面を有する金属層と、
前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層により電子部品を封止するために用いられ、
前記樹脂層が、シリカ類を含む無機充填材を含有し、
前記樹脂層における前記無機充填材の含有量が80質量%以下である、封止材。
【請求項11】
表面粗さ(Ra)が1μm未満である表面を有する金属層と、
前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層により電子部品を封止するために用いられ、
前記樹脂層が、酸化アルミニウムを含む無機充填材を含有し、
前記樹脂層における前記無機充填材の含有量が85質量%以下である、封止材。
【請求項12】
前記樹脂層における無機充填材の含有量が55質量%以上である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の封止材。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の封止材の前記樹脂層の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止構造体の製造方法、封止材及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の軽薄短小化に伴って、半導体装置の小型化及び薄型化が進んでいる。半導体素子とほぼ同じ大きさの半導体装置を用いる形態、又は、半導体装置の上に半導体装置を積む実装形態(パッケージ・オン・パッケージ)が盛んに行われており、今後、半導体装置の小型化及び薄型化が一段と進むと予想される。
【0003】
半導体素子の微細化が進展し、端子数が増加してくると、半導体素子上にすべての外部接続端子(外部接続用の端子)を設けることが難しくなる。例えば、無理に外部接続端子を設けた場合、端子間のピッチが狭くなると共に端子高さが低くなり、半導体装置を実装した後の接続信頼性の確保が難しくなる。そこで、半導体装置の小型化及び薄型化を実現するために、新たな実装方法が多々提案されている。
【0004】
例えば、半導体ウェハを個片化して作製された半導体素子を、適度な間隔を有するように再配置した後、固形又は液状の封止樹脂を用いて半導体素子を封止し、半導体素子を封止する樹脂上に外部接続端子を更に設けることができる実装方法、及び、これを用いて作製される半導体装置が提案されている(例えば下記特許文献1〜3参照)。
【0005】
通常、半導体素子等の電子部品の封止は、半導体装置等の電子部品装置を製造する際の終盤の工程で行われることが多い。この場合の実装方法では、電子部品を封止して作製された封止成形物に対して、外部接続端子を配置するための配線、及び、外部接続端子を形成する工程が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3616615号公報
【特許文献2】特開2001−244372号公報
【特許文献3】特開2001−127095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜3等の従来の実装方法では、半導体素子等の電子部品を封止した後に硬化した場合、樹脂部分のみが熱硬化収縮を起こし、熱硬化収縮を起こさない無機充填材が表面に露出し、表面に凹凸が発生する場合がある。封止構造体の表面が凹凸を有する場合、レーザーマーキング後の表面外観が悪くなることが予想される。さらに、パッケージをパッケージの上に積み重ねるPOPのようなパッケージ構造を精度良く作製することも困難になる。以上のような不具合を解消するためには、封止後の封止構造体の表面の研磨が必須プロセスとなる。また、封止構造体の表面にレーザーマーキング性を付与する目的で、封止材中に顔料や染料のような、封止には本来不要な材料を含ませる必要がある。例えば、導電性粒子であるカーボンブラックのような顔料を添加した場合、導電性粒子が加わることで、封止材の絶縁性が保たれなくなる可能性があり、信頼性の低下等の不具合の発生が予想される。また、有機化合物からなるような染料を添加した場合、熱による分解が発生し、使用環境によっては、レーザーマーキング性を発現できなくなるといった不具合を引き起こす可能性がある。そのため、新たな封止材の開発が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、平滑性に優れた平滑面を有すると共に、レーザーマーキング材料である添加剤を用いることなくレーザーマーキング性を有する封止構造体を得ることが可能な封止構造体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記封止構造体の製造方法に用いることが可能な封止材、及び、当該封止材の樹脂層の硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る封止構造体の製造方法は、金属層及び樹脂層を備える封止材の前記樹脂層により第1の電子部品を封止する封止工程を備え、前記金属層が、表面粗さ(Ra)が10μm以下である表面を有し、前記樹脂層が、前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置されている。
【0010】
本発明に係る封止構造体の製造方法によれば、封止材の金属層が平滑性を付与すると共にレーザーマーキング材料として適用可能なため、平滑性に優れた平滑面を有すると共に、レーザーマーキング材料である添加剤(顔料、染料等)を用いることなくレーザーマーキング性を有する封止構造体を得ることができる。このような封止構造体の製造方法によれば、平滑性を付与するために封止後の研磨プロセスを行う必要がなく、また、レーザーマーキング材料を樹脂層に添加することなくレーザーマーキング性を付与することができる。
【0011】
ところで、従来の実装方法では、複数の電子部品を封止して得られる封止構造体をダイシングして複数の電子部品装置を得る場合がある。そのため、再配置される電子部品が多いほど、一度の工程で作製可能な電子部品装置を増やすことができる。そこで、封止構造体を大きくする検討が行われている。現状は、例えば、配線形成に半導体製造装置が使用されるため、封止構造体はウェハ形状に成形されており、ウェハ形状の大径化が進む傾向がある。さらに、更なる大判化が可能であり且つ半導体製造装置よりも安価なプリント配線板製造装置等の使用が可能となるように、封止構造体のパネル化も検討されている。
【0012】
電子部品の封止には、液状又は固形の樹脂を金型で成形するモールド成形が行われる場合がある。ペレット状の樹脂を溶融させ、金型内に樹脂を流し込むことで封止するトランスファーモールド成形が使用される場合がある。しかしながら、トランスファーモールド成形では、溶融させた樹脂を流し込んで成形するため、大面積を封止しようとする場合、未充填部が発生する可能性がある。そこで、近年、予め金型又は被封止体(電子部品)に樹脂を供給してから成形を行うコンプレッションモールド成形が使用され始めている。コンプレッションモールド成形では、樹脂を金型又は被封止体に直接供給するため、大面積の封止でも未充填部が発生しにくい利点がある。
【0013】
コンプレッションモールド成形では、トランスファーモールド成形と同様に、液状又は固形の樹脂が用いられる。しかしながら、被封止体が大型化した場合、液状の樹脂では、液流れ等が発生し被封止体上への均一供給が困難となる。また、樹脂を被封止体上に均一に供給する必要があるため、固形の樹脂としては、従来のペレット状の樹脂ではなく、顆粒又は粉体の樹脂が使用される場合がある。しかしながら、顆粒又は粉体の樹脂を金型又は被封止体上に均一に供給することは難しい。また、顆粒又は粉体である樹脂は、発塵源となり、装置又はクリーンルームが汚染されることが懸念される。
【0014】
また、モールド成形では、樹脂を金型内で成形するため、封止構造体を大型化するには、金型の大型化が必須となる。しかしながら、金型の大型化には、高い金型精度が求められることから技術面での難易度が上がると共に、金型の製造コストが大幅に増加するという課題がある。
【0015】
一方、本発明に係る封止構造体の製造方法では、金属層の一方面に配置された樹脂層を備える封止材の前記樹脂層を用いて電子部品を封止することにより、被封止体(電子部品)上への樹脂の均一供給ができると共に発塵を低減することができる。また、本発明に係る封止構造体の製造方法では、モールド成形のみならず、金型を必要としないラミネート及びプレスによる封止成形を行うことができる。
【0016】
前記第1の電子部品は、複数であってもよい。
【0017】
本発明に係る封止構造体の製造方法は、前記封止工程の後に、前記金属層をレーザーマーキングする工程を更に備えていてもよい。
【0018】
本発明に係る封止構造体の製造方法は、前記封止工程の後に、前記金属層の前記樹脂層とは反対側に第2の電子部品を配置する工程を更に備えてもよい。
【0019】
本発明に係る封止構造体の製造方法は、前記封止工程の後に、前記第1の電子部品、前記樹脂層及び前記金属層を備える構造体をダイシングする工程を更に備えてもよい。
【0020】
本発明に係る封止材は、表面粗さ(Ra)が10μm以下である表面を有する金属層と、前記金属層の前記表面とは反対側の面に配置された樹脂層と、を備え、前記樹脂層により電子部品を封止するために用いられる。
【0021】
本発明に係る封止材によれば、封止材の金属層が平滑性を付与すると共にレーザーマーキング材料として適用可能なため、平滑性に優れた平滑面を有すると共に、レーザーマーキング材料である添加剤(顔料、染料等)を用いることなくレーザーマーキング性を有する封止構造体を得ることができる。このような封止材によれば、平滑性を付与するために封止後の研磨プロセスを行う必要がなく、また、レーザーマーキング材料を樹脂層に添加することなくレーザーマーキング性を付与することができる。
【0022】
本発明に係る封止構造体の製造方法及び封止材において、前記樹脂層における無機充填材の含有量は、55質量%以上であることが好ましい。ところで、上述のとおり、従来の実装方法では、半導体素子等の電子部品を封止した後に硬化した場合、樹脂部分のみが熱硬化収縮を起こし、熱硬化収縮を起こさない無機充填材が表面に露出し、表面に凹凸が発生する場合があるが、当該現象は、無機充填材の含有量が55質量%以上である場合に特に顕著になる。一方、本発明に係る封止構造体の製造方法及び封止材によれば、封止材の金属層が平滑性を付与するため、無機充填材の含有量が55質量%以上である場合であっても、平滑性に優れた平滑面を有する封止構造体を得ることができる。
【0023】
本発明に係る硬化物は、本発明に係る封止材の前記樹脂層の硬化物である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、平滑性に優れた平滑面を有すると共に、レーザーマーキング材料である添加剤を用いることなくレーザーマーキング性を有する封止構造体を得ることが可能な封止構造体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記封止構造体の製造方法に用いることが可能な封止材、及び、当該封止材の樹脂層の硬化物を提供することができる。さらに、本発明によれば、前記封止構造体の製造方法により得ることが可能な封止構造体を提供することができる。
【0025】
本発明によれば、電子部品の封止への封止材の応用を提供することができる。本発明によれば、封止構造体の製造への封止材の応用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】封止構造体の実施形態を示す模式断面図である。
図2】封止構造体の実施形態を示す模式断面図である。
図3】封止構造体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図4】封止構造体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図5】封止構造体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図6】封止構造体の製造方法の他の実施形態を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中において、「層」及び「膜」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書中において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書中に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書中において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0028】
本明細書において、表面粗さ(Ra、算術平均粗さ)は、例えば、表面粗さ測定装置(ブルカー・エイエックス株式会社製、商品名:wyko NT9100)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズ、測定範囲121μm×92μmの条件で測定を行い、無作為に選んだ10点の平均値として求めることができる。
【0029】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。本発明は必ずしも以下の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【0030】
<封止構造体>
図1及び図2は、本実施形態に係る封止構造体を示す模式断面図である。本実施形態に係る封止構造体(封止成形物、電子部品装置)100a,100b,100c,100d,100eは、電子部品(第1の電子部品。第1層目の電子部品)10と、電子部品10を封止する封止部(樹脂硬化物)20と、封止部20上に配置された金属層30,30aと、を備える。金属層30は、パターニングされていない金属層であり、金属層30aは、所定のパターン形状を有する金属パターンである。
【0031】
封止構造体100aは、複数の電子部品10を備えており、封止部20は、複数の電子部品10を封止している。封止構造体100aの金属層30は、封止部20上の全面に配置されている。封止構造体100bは、封止構造体100aの金属層30がパターニングされて得られる金属パターンを金属層30aとして備える構造を有している。封止構造体100bの金属層30aは、封止部20の一部の上に配置されている。封止構造体100cは、封止構造体100bの金属層30aの封止部20とは反対側に電子部品(第2の電子部品。第2層目の電子部品)40を更に備える構造を有している。封止構造体100dは、封止構造体100cを電子部品10毎にダイシングして得られる構造を有しており、単一の電子部品10及び電子部品40を備えている。封止構造体100eは、電子部品40を備えていない点で封止構造体100dと異なる構造を有している。
【0032】
電子部品10及び電子部品40としては、例えば、半導体素子;半導体ウェハ;集積回路;半導体デバイス;SAWフィルタ等のフィルタ;センサ等の受動部品などが挙げられる。半導体ウェハを個片化することにより得られる半導体素子を用いてもよい。本実施形態に係る封止構造体(電子部品装置)は、電子部品として半導体素子又は半導体ウェハを備える半導体装置;プリント配線板等であってもよい。電子部品の厚さは、例えば、1〜1000μmであってもよく、100〜800μmであってもよい。
【0033】
金属パターンは、配線パターンであってもよい。金属パターンは、接続端子(外部接続端子、電子部品接続用の端子等)であってもよく、前記接続端子を支持するためのパターンであってもよい。金属層の厚さは、封止材の説明において後述する。
【0034】
複数の電子部品10は、互いに同一の種類であってもよく、互いに異なる種類であってもよい。複数の電子部品40は、互いに同一の種類であってもよく、互いに異なる種類であってもよい。電子部品10と電子部品40とは、互いに同一の種類であってもよく、互いに異なる種類であってもよい。
【0035】
封止構造体は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、電子部品を封止する封止部の構成材料は、樹脂硬化物に代えて半硬化又は未硬化の樹脂であってもよい(例えば、後述する図4(a))。
【0036】
本実施形態に係る封止構造体は、封止部と金属層との間に中間層を更に備えていてもよい。本実施形態に係る封止構造体は、電子部品10の封止部20とは反対側に、樹脂層、金属層等を更に備えていてもよい。本実施形態に係る封止構造体は、電子部品40を封止する封止部、当該封止部上に配置された金属層(パターニングされていない金属層、又は、金属パターン)等を更に備えてもよい。電子部品40を備える封止構造体上に電子部品を更に備えていてもよい。
【0037】
<封止構造体の製造方法>
本実施形態に係る封止構造体(封止成形物、電子部品装置)の製造方法は、金属層及び樹脂層を備える封止材の前記樹脂層により電子部品(第1の電子部品)を封止する封止工程を備える。金属層は、表面粗さ(Ra)が10μm以下である表面(平滑面)を有している。樹脂層は、金属層の前記平滑面とは反対側の面に配置されている。前記封止工程は、例えば、樹脂層を加熱して溶融させると共に、圧力を加えて電子部品を樹脂層で封止する工程であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る封止構造体の製造方法は、封止工程の前に、樹脂層が電子部品に対向するように封止材を配置する工程を備えていてもよい。本実施形態に係る封止構造体の製造方法は、封止工程の後に、樹脂層を硬化させる工程を備えていてもよい。本実施形態に係る封止構造体の製造方法は、封止工程の後に、金属層をレーザーマーキングするレーザーマーキング工程を備えていてもよい。本実施形態に係る封止構造体の製造方法は、封止工程の後に、金属層をパターニングして金属パターンを得るパターニング工程を備えていてもよい。レーザーマーキング工程は、パターニング工程の前後のいずれで行ってもよい。本実施形態に係る封止構造体の製造方法は、封止工程の後に、金属層の樹脂層とは反対側に電子部品(第2の電子部品)を配置する工程を備えていてもよい。本実施形態に係る封止構造体の製造方法は、封止工程の後に、電子部品(第1の電子部品)、樹脂層及び金属層を備える封止構造体(構造体)をダイシングする工程を備えていてもよい。複数の電子部品を備える構造体を電子部品毎にダイシングすることにより、複数の封止構造体を得ることができる。
【0039】
図3〜5は、本実施形態に係る封止構造体の製造方法を説明するための模式断面図である。以下、図3〜5を用いて、本実施形態に係る封止構造体の製造方法について説明する。
【0040】
本実施形態に係る封止構造体の製造方法では、まず、図3(a)に示すように、本実施形態に係る封止材1を準備する。封止材1は、金属層30と、金属層30上に配置された樹脂層20aと、を備える。封止材1は、樹脂層20aにより電子部品を封止するために用いられる。樹脂層20aは、金属層30上の少なくとも一部に設けられていればよく、金属層30の全面に設けられていてもよい。樹脂層20aは、例えばフィルム状である。樹脂層20aは、例えば、樹脂層20aをフィルム化する際のキャリアとして用いられる金属層30と一体化されている。封止材については更に後述する。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、基板50と、基板50上に配置された仮固定層60とを備える積層体を準備した後、仮固定層60上に複数の電子部品10を配置する。続いて、樹脂層20aが電子部品10に対向するように封止材1を配置する。そして、樹脂層20aを加熱して溶融させると共に、圧力を加えて電子部品10を樹脂層20aで封止する。これにより、図4(a)に示すように、複数の電子部品10を封止する樹脂層20aを備える封止構造体が得られる。電子部品10を樹脂層20aで封止する方法としては、ラミネート、プレス、トランスファーモールド成形、コンプレッションモールド成形等が挙げられる。
【0042】
封止工程における加熱温度は、樹脂層20aが溶融する温度であれば特に限定されず、例えば40〜200℃であってもよい。封止工程における圧力は、特に限定されず、電子部品のサイズ、密集度等に応じて調整することができる。前記圧力は、例えば0.01〜10MPaであってもよい。加圧時間は、特に限定されず、例えば5〜600秒であってもよい。
【0043】
次に、図4(b)に示すように、樹脂層20aを硬化させて封止部(樹脂硬化層。樹脂層20aの硬化物)20を得ることにより封止構造体100aを得る。樹脂層20aは、熱硬化させてもよく、光硬化させてもよい。硬化処理は、例えば大気下又は不活性ガス下で行うことができる。熱硬化の加熱温度は、特に限定されず、例えば60〜300℃であってもよい。硬化時間は、特に限定されず、例えば10〜600分であってもよい。
【0044】
次に、必要に応じて、金属層30をレーザーマーキングすることによりレーザーマーキング性(視認性)を得ることができる。
【0045】
次に、封止構造体100aの金属層30をパターニングして、図4(c)に示すように、金属層(金属パターン)30aを得ることにより封止構造体100bを得る。パターニング方法としては、特に限定されず、ウェットエッチング法、ドライエッチング法等が挙げられる。
【0046】
次に、図5(a)に示すように、金属層30aの封止部20とは反対側に電子部品40を配置することにより封止構造体100cを得る。電子部品40を配置する前に、金属層30aに対してめっき処理等を行ってもよい。
【0047】
次に、図5(b)に示すように、電子部品10、封止部(樹脂硬化層)20、金属層30a及び電子部品40を備える封止構造体(構造体)100cをダイシングする。例えば、封止構造体100cの封止部20にダイシングブレード70によって切り込み部70aを形成することにより電子部品10毎に個片化して封止構造体100dを得ることができる。
【0048】
その後、封止材1の樹脂層20aにより封止構造体100dの電子部品40を封止してもよい。本実施形態では、電子部品の封止、金属層(金属パターン等)の形成、電子部品の積層等を繰り返し行うことができる。
【0049】
封止構造体の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る封止構造体の製造方法は、封止工程の前に、金属層として金属パターンを得る工程を備えていてもよい。具体的には、金属層30をパターニングする工程は、電子部品10を封止する前に行ってもよい。換言すれば、金属層30として金属パターン(配線パターン等)を備える封止材を用いて電子部品10を封止してもよい。
【0050】
封止構造体のダイシングは、電子部品40を配置する工程、又は、金属層30をパターニングする工程の前に行ってもよい。例えば、図6に示すように、電子部品10、封止部(樹脂硬化層)20及び金属層30aを備える封止構造体(構造体)の封止部20にダイシングブレード70によって切り込み部70aを形成することにより電子部品10毎に個片化して封止構造体100eを得ることができる。
【0051】
上記実施形態では、複数の電子部品を樹脂層で封止した後に電子部品毎にダイシングして封止構造体を得ているが、単一の電子部品を樹脂層で封止して封止構造体を得てもよい。電子部品として半導体ウェハを用いる場合、半導体ウェハを樹脂層で封止して封止部を形成した後に、封止部と共に半導体ウェハを個片化することにより、封止部により封止された半導体素子を備える封止構造体を得てもよい。
【0052】
<封止材及び硬化物>
本実施形態に係る封止材及び硬化物について説明する。本実施形態に係る封止材は、表面粗さ(Ra)が10μm以下である表面(平滑面)を有する金属層と、金属層の前記平滑面とは反対側の面に配置された樹脂層と、を備える。本実施形態に係る封止材は、樹脂層により電子部品を封止するために用いられる。本実施形態に係る硬化物は、本実施形態に係る封止材の樹脂層の硬化物であり、封止材の樹脂層を硬化してなる。
【0053】
本実施形態に係る封止材によれば、金属層が平滑性を有することから、電子部品を封止した後の表面研磨プロセスを不要とすることができる。また、金属層をレーザーマーキング層として適用可能であることから、顔料や染料のような、封止には本来必要ない余計な添加剤の樹脂層への添加を不要とすることができる。また、本実施形態に係る封止材によれば、被封止体(電子部品)上への樹脂の均一供給ができると共に発塵を低減することができる。
【0054】
金属層30としては、金属箔を用いることができる。金属箔の金属としては、銅、アルミニウム等を例示することができる。市販の金属箔としては、福田金属箔粉工業株式会社製、商品名:CFT9L−UR−18、CFT9L−UR−35;日本電解株式会社製、商品名:YGP−12、YGP−18、YGP−35R等が挙げられる。
【0055】
金属層30の厚さは、樹脂層形成後の取り扱い性に優れる観点から、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。金属層30の厚さは、ロール状での保管を容易に行える観点から、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。
【0056】
金属層30の平滑面(S面:Shinney面)の表面粗さ(Ra)は、優れた表面平滑性を確保する観点から、10μm以下である。金属層30の表面粗さ(Ra)は、更に優れた表面平滑性を確保する観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、1μm未満が特に好ましい。
【0057】
封止材1が備える樹脂層20aの厚さは、金属層30における平滑面とは反対側の面(樹脂層と接する面)の凹凸を埋め込むことで優れた平滑性を得る観点から、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。樹脂層20aの厚さは、厚さ方向の乾燥性を均一にできる観点から、500μm以下であってもよく、250μm以下であってもよい。なお、封止構造体における硬化後の封止部20の厚さは、上記樹脂層20aの厚さと同じであってもよい。
【0058】
樹脂層20aの構成材料は、電子部品の封止に通常用いられる樹脂であれば特に限定されない。樹脂層20aは、硬化性樹脂組成物からなる層であることが好ましい。硬化性樹脂組成物は、熱硬化性及び光硬化性のいずれであってもよい。
【0059】
熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、(A)熱硬化性成分及び(B)無機充填材を含有する樹脂組成物が挙げられる。
【0060】
熱硬化性成分としては、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン等)、硬化剤などが挙げられる。(A)熱硬化性成分は、例えば、(a1)エポキシ樹脂及び(a2)硬化剤を含む。
【0061】
(a1)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のグリシジル基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールG型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールPH型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等)、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂(ビキシレノールジグリシジルエーテル等)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等)、これら樹脂の二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。(a1)エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
市販のエポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の「HP−4710」、「エピクロンHP−4032」、「EXA−4750」等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製の「NC−7000」(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製の「EPPN−502H」(トリスフェノールエポキシ樹脂)等の、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC株式会社製の「エピクロンHP−7200H」(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製の「NC−3000H」(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;DIC株式会社製の「エピクロンN660」及び「エピクロンN690」;日本化薬株式会社製の「EOCN−104S」等のノボラック型エポキシ樹脂;日産化学工業株式会社製の「TEPIC」等のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート;DIC株式会社製の「エピクロン860」、「エピクロン900−IM」、「エピクロンEXA−4816」及び「エピクロンEXA−4822」;旭チバ株式会社製の「アラルダイトAER280」;東都化成株式会社製の「エポトートYD−134」;三菱化学株式会社製の「JER834」及び「JER872」;住友化学株式会社製の「ELA−134」;油化シェルエポキシ株式会社製の「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、「エピコート828」、「エピコート834」、「エピコート1001」、「エピコート1004」、「エピコート1007」及び「エピコート1009」;ダウケミカル社製の「DER−330」、「DER−301」及び「DER−361」;東都化成株式会社製の「YD8125」、「YDF8170」等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学株式会社製の「JER806」等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;DIC株式会社製の「エピクロンN−740」等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス株式会社製の「ナデコールDLC301」等の脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
(a1)エポキシ樹脂の含有量は、電子部品の埋め込み性に優れる観点から、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として、10〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜35質量%であることが更に好ましい。
【0064】
(a2)硬化剤は、グリシジル基と反応する官能基を1分子中に2個以上有するものであれば特に制限なく用いることができる。(a2)硬化剤としては、フェノール樹脂、酸無水物等が挙げられる。(a2)硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
フェノール樹脂は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に制限はなく公知のフェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、ビフェニル骨格型フェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、キシリレン変性ナフトール樹脂等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。ナフトール類としては、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。
【0066】
市販のフェノール樹脂としては、大日本インキ化学工業株式会社製の「フェノライトLF2882」、「フェノライトLF2822」、「フェノライトTD−2090」、「フェノライトTD−2149」、「フェノライトVH−4150」及び「フェノライトVH4170」;三井化学株式会社製の「XLC−LL」及び「XLC−4L」;新日鉄住金化学株式会社製の「SN−100」、「SN−300」、「SN−395」及び「SN−400」;エア・ウォーター株式会社製の「SKレジンHE910」;旭有機材工業株式会社製の「PAPS−PN2」;明和化成株式会社製の「DL−92」等が挙げられる。
【0067】
(a2)硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂の硬化性に優れる観点から、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが更に好ましく、10〜35質量%であることが特に好ましい。
【0068】
(a1)エポキシ樹脂のグリシジル基の当量(エポキシ当量)と、(a2)硬化剤のグリシジル基と反応する官能基(例えばフェノール性水酸基)の当量(例えば水酸基当量)との比率((a1)エポキシ樹脂のグリシジル基の当量/(a2)硬化剤のグリシジル基と反応する官能基の当量)は、0.7〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.8であることがより好ましく、0.9〜1.7であることが更に好ましい。これらの場合、未反応の(a1)エポキシ樹脂及び/又は未反応の(a2)硬化剤が残存しにくく、所望の硬化膜物性が得られやすい。
【0069】
(A)熱硬化性成分は、(a3)硬化促進剤を含んでいてもよい。(a3)硬化促進剤としては、特に制限はない。(a3)硬化促進剤としては、アミン系の硬化促進剤及びリン系の硬化促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。特に、(a3)硬化促進剤としては、誘導体が豊富である観点、及び、所望の活性温度が得られやすい観点から、アミン系の硬化促進剤が好ましく、イミダゾール化合物、脂肪族アミン及び脂環族アミンからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましく、イミダゾール化合物が更に好ましい。(a3)硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
(a3)硬化促進剤の含有量は、(a1)エポキシ樹脂及び(a2)硬化剤の合計量を基準として、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.3〜1.5質量%が更に好ましい。(a3)硬化促進剤の含有量が0.01質量%以上である場合、充分な硬化促進効果が得られやすい。(a3)硬化促進剤の含有量が5質量%以下である場合、封止材を製造する際の工程(例えば塗工及び乾燥)中、又は、封止材の保管中に硬化が進行しにくく、樹脂層の割れ、及び、溶融粘度の上昇に伴う成形不良を防止しやすい。
【0071】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、25℃で液状の樹脂を含有することが好ましい。前記液状の樹脂の含有量は、塗工時に溶剤を乾燥しやすくなる観点、及び、液状樹脂が溶剤の代わりとなるため、フィルムに柔軟性を付与しやすい観点から、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として、5〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましく、10〜35質量%が特に好ましい。
【0072】
(B)無機充填材としては、従来公知の無機充填材が使用でき、特定のものに限定されない。(B)無機充填材の構成材料としては、例えば、硫酸バリウム;チタン酸バリウム;無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ等のシリカ類;タルク;クレー;炭酸マグネシウム;炭酸カルシウム;酸化アルミニウム;水酸化アルミニウム;窒化ケイ素;窒化アルミニウムなどが挙げられる。(B)無機充填材の構成材料は、表面改質等により、樹脂中の分散性の向上効果、及び、ワニス中での沈降抑制効果が得られやすい観点、並びに、比較的小さい熱膨張率を有することから所望の硬化膜特性が得られやすい観点から、シリカ類が好ましい。(B)無機充填材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
(B)無機充填材は、表面改質されていてもよい。表面改質の手法としては、特に限定されない。処理が簡便であり、官能基の種類が豊富であり、所望の特性を付与しやすい観点から、シランカップリング剤を用いた表面改質が好ましい。
【0074】
シランカップリング剤としては、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が挙げられる。市販の無機充填材のうち、シランカップリング剤を用いて表面改質された無機充填材としては、株式会社アドマテックス製の「SC5500−SXE」及び「SC2500−SXJ」等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン(フェニルアミノシラン等)などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
(B)無機充填材の平均粒径は、特に制限されないが、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜25μmがより好ましく、0.3〜10μmが更に好ましい。(B)無機充填材の平均粒径が0.01μm以上である場合、無機充填材の凝集が容易に抑制されて、無機充填材を容易に充分に分散できる。(B)無機充填材の平均粒径が50μm以下である場合、無機充填材の沈降(例えばワニス中での沈降)を容易に抑制でき、均質な樹脂層を形成しやすい。
【0077】
(B)無機充填材の含有量は、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として、88質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。これらの場合、封止構造体の低反りを実現しつつ、良好な流動性を確保でき、且つ、封止材における金属層と樹脂層との良好な接着強度を得ることができる。また、封止材の製造の際の乾燥工程において樹脂層の割れを容易に抑制可能である効果、樹脂層と金属層との密着性が向上する効果、及び、被封止体を封止しやすくなる効果を好適に得ることができる。(B)無機充填材の含有量は、被封止体と封止部との熱膨張率の差によって封止構造体の反りが大きくなることを容易に防止できる観点から、55質量%以上が好ましく、62質量%以上がより好ましく、68質量%以上が更に好ましい。これらの観点から、(B)無機充填材の含有量は、55〜88質量%が好ましく、62〜85質量%がより好ましく、68〜80質量%が更に好ましい。
【0078】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて(C)エラストマー(可とう剤)を含有してもよい。(C)エラストマーを用いることにより、封止後の反り(例えば封止構造体の反り量)、及び、封止構造体における樹脂の割れを効果的に低減することができる。
【0079】
(C)エラストマーとしては、例えば、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー;NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子;メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子が挙げられる。(C)エラストマーは、分散性及び溶解性に優れる観点から、スチレンブタジエン粒子、シリコーンパウダー、シリコーンオイル及びシリコーンオリゴマからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。(C)エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
(C)エラストマーの平均粒径に特に制限はない。(C)エラストマーの平均粒径は、電子部品間の埋め込み性(例えば、eWLB用途の埋め込み性)に優れる観点から、50μm以下であることが好ましい。(C)エラストマーの平均粒径は、分散性に優れる観点から、0.1μm以上であることが好ましい。
【0081】
(C)エラストマーとしては市販品を用いてもよい。(C)エラストマーの市販品としては、例えば、株式会社カネカ製のKANE ACE(「KANE ACE」は登録商標)の「Bシリーズ」、「Mシリーズ」及び「FMシリーズ」(いずれも商品名);信越化学工業株式会社製の「KMPシリーズ」等が挙げられる。市販の(C)エラストマーの中には、エラストマー単体ではなく、予め液状樹脂(例えば、液状エポキシ樹脂)中に分散しているものもあるが、問題なく用いることができる。このような市販品としては、株式会社カネカ製の「MX−136」及び「MX−965」等が挙げられる。
【0082】
本実施形態の樹脂組成物は、(D)有機溶剤を含有してもよい。(D)有機溶剤は、封止材の製造(塗工等)の際の乾燥工程で除去されずに残存したワニス由来の有機溶剤であってもよい。
【0083】
(D)有機溶剤としては、従来公知の有機溶剤を使用できる。(D)有機溶剤としては、(B)無機充填材以外の成分を溶解できる溶剤を用いることができる。(D)有機溶剤としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類、ハロゲン類、エステル類、ケトン類、アルコール類、アルデヒド類等が挙げられる。
【0084】
具体的な(D)有機溶剤としては、環境負荷が小さい観点、及び、(a1)エポキシ樹脂及び(a2)硬化剤を溶解しやすい観点から、エステル類、ケトン類及びアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。その中でも、(a1)エポキシ樹脂及び(a2)硬化剤を特に溶解しやすい観点から、ケトン類が好ましい。ケトン類の中では、室温での揮発が少なく、乾燥時に除去しやすい観点から、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0085】
(D)有機溶剤の含有量は、樹脂組成物(有機溶剤等の溶剤を含む)の全質量に対して、0.2〜1.5質量%が好ましく、0.3〜1質量%がより好ましい。(D)有機溶剤の含有量が0.2質量%以上である場合、エポキシ樹脂組成物が脆くなり樹脂の割れ等の不具合が生じること、及び、最低溶融粘度が高くなり被封止体の埋め込み性が低下することを防止できる。(D)有機溶剤の含有量が1.5質量%以下である場合、樹脂組成物の粘着性が強くなりすぎて取扱い性が低下する不具合、及び、樹脂層の熱硬化時における有機溶剤の揮発に伴う発泡等の不具合を容易に防止できる。
【0086】
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤を更に含有してもよい。このような添加剤の具体例としては、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、表面張力調整剤等を挙げることができる。
【0087】
封止材1は、例えば、平板状の形態で貯蔵することができる。封止材1を円筒状等の巻芯に巻きとり、ロール状の形態として貯蔵することもできる。
【0088】
封止材1は、樹脂層20aと金属層30との間に中間層を更に備えていてもよい。封止材1は、樹脂層20aの金属層30とは反対側に、樹脂層20aの保護を目的とした保護層を更に備えていてもよい。これにより、取扱い性が向上する。また、樹脂層20aへの異物の混入を防ぐことができると共に、巻き取りした場合に、金属層30の裏面に樹脂層20aが張り付く不具合を回避することができる。
【0089】
保護層としては、高分子フィルム、金属箔等を用いることができる。高分子フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムなどが挙げられる。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0090】
<封止材の製造方法>
封止材1の製造方法は、例えば、樹脂組成物を金属層30上に塗布して塗膜を形成する工程と、塗膜を加熱乾燥して樹脂層20aを形成する工程を備えていてもよい。塗布方法としては、特に限定されず、ダイコート、コンマコート等が挙げられる。加熱乾燥方法としては、熱風吹き付け等が挙げられる。
【0091】
有機溶剤等の溶剤を含有する樹脂組成物をワニスとして用いて塗膜を形成してもよい。ワニスは、例えば、(A)熱硬化性成分、(B)無機充填材、(D)有機溶剤、及び、必要に応じて用いられる任意成分を混合することで調製できる。各成分の混合方法としては、特に限定されず、ミル、ミキサ、撹拌羽根等が使用できる。(D)有機溶剤は、樹脂組成物に含まれる(A)熱硬化性成分等を溶解してワニスを調製するため、又は、ワニスを調製することを補助するために用いることが可能であり、乾燥工程で大部分を除去することができる。
【0092】
(B)無機充填材は、必要に応じて、予め分散処理が行われてもよい。例えば、(B)無機充填材を溶剤(例えば(D)有機溶剤)中に分散して得られるスラリーを用いてもよい。分散処理の手法としては、高速せん断力により分散を進行させるナノマイザーを用いる方法、ビーズと呼ばれる球体の媒体を用いて(B)無機充填材を粉砕する方法(ビーズミルを用いる方法)等が挙げられる。市販のシリカスラリーとしては、株式会社アドマテックス製の「SC2050−MTK」等が挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
<ワニスの含有成分>
樹脂組成物(ワニス)の成分として下記成分を用いた。
【0095】
(エポキシ樹脂)
a11:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:JER806、エポキシ当量:160)(25℃で液状である成分)
a12:ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EXA−4750、エポキシ当量:182)(25℃で液状ではない成分)
a13:ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:HP−4710、エポキシ当量:170)(25℃で液状ではない成分)
【0096】
(エラストマー含有エポキシ樹脂)
a14:ブタジエンエラストマー粒子含有ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(株式会社カネカ製、商品名:MX−136、液状エポキシ樹脂の含有量:75質量%、エラストマー粒子の含有量:25質量%、エラストマー粒子の平均粒径:0.1μm)(25℃で液状の樹脂を含む成分)
a15:シリコーンエラストマー粒子含有液状エポキシ樹脂(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂及びビスフェノールA型液状エポキシ樹脂の混合物。株式会社カネカ製、商品名:MX−965、液状エポキシ樹脂の含有量:75質量%、エラストマー粒子の含有量:25質量%)(25℃で液状の樹脂を含む成分)
【0097】
(硬化剤)
a21:フェノールノボラック(旭有機材工業株式会社製、商品名:PAPS−PN2、フェノール性水酸基当量:104)(25℃で液状ではない成分)
a22:ナフタレンジオールノボラック(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:SN−395)(25℃で液状ではない成分)
a23:フェノールノボラック(明和化成株式会社製、商品名:DL−92、フェノール性水酸基当量:103)(25℃で液状ではない成分)
【0098】
(硬化促進剤)
a3:イミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2P4MZ)(25℃で液状ではない成分)
【0099】
(無機充填材)
B1:シリカ粒子(株式会社アドマテックス製、商品名:SC2500−SXJ、フェニルアミノシラン処理、平均粒径:0.5μm)
B2:酸化アルミニウム粒子(住友化学株式会社製、商品名:AA−1.5、平均粒径:1.5μm)
【0100】
(有機溶剤)
D:メチルエチルケトン
【0101】
<ワニスの調製>
表1に示す組成を有するワニス(ワニス状樹脂組成物)を下記のとおり調製した。
【0102】
10Lのポリエチレン製の容器に成分Dを100g入れた。次に、容器に成分B1を750.8g加えた後、撹拌羽根で成分B1を分散して分散液を得た。この分散液に、成分a11を90.1g、成分a13を31g、成分a14を24g、成分a15を9g、成分a21を93.1g加えた後に撹拌した。成分a21が溶解したことを確認した後、成分a3を1.9g加え、更に1時間撹拌した。得られた混合物をナイロン製#200メッシュ(開口径:75μm)でろ過した。ろ液を採取してワニスAを得た。
【0103】
無機充填材として689.6gの成分B2を用い、エポキシ樹脂として130.5gの成分a11、37.1gの成分a12及び17.1gの成分a13を用い、硬化剤として123.5gの成分a22を用い、硬化促進剤として2.3gの成分a3を用い、エラストマー含有エポキシ樹脂を用いなかったこと以外はワニスAと同様にして、表1に示す組成を有するワニスBを調製した。
【0104】
無機充填材として802.2gの成分B2を用い、エポキシ樹脂として96.1gの成分a11及び24gの成分a13を用い、硬化剤として76.1gの成分a23を用い、硬化促進剤として1.5gの成分a3を用い、エラストマー含有エポキシ樹脂を用いなかったこと以外はワニスAと同様にして、表1に示す組成を有するワニスCを調製した。
【0105】
<実施例1〜3>
(封止材Aの作製)
塗工機を使用して銅箔(日本電解株式会社製、商品名:YGP−35R、銅箔厚さ:35μm)上に前記ワニスA〜Cを塗布して塗膜を得た後に塗膜を乾燥させて、銅箔上に樹脂層を形成した。塗布及び乾燥は、下記条件で行った。乾燥後の樹脂層の厚さは200μmであった。樹脂層の銅箔とは反対側に50μm厚の保護層(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を配置することにより封止材Aを得た。なお、下記の各測定においては、保護層を剥離した上で測定を行った。
塗工機:株式会社ヒラノテクシード製のダイコータ
塗布ヘッド方式:ダイ
塗布及び乾燥速度:1m/分
乾燥条件(温度/炉長):60℃/3.3m、90℃/3.3m、110℃/3.3m
【0106】
(封止材Bの作製)
塗布及び乾燥速度を5m/分に変更したこと以外は、封止材Aの作製と同様にして封止材Bを作製した。乾燥後の樹脂層の厚さは20μmであった。
【0107】
(評価)
(1)表面粗さ(Ra)
封止材Aの樹脂層が50mm角サイズのMCL(厚さ:500μm)に接するように下記ラミネート条件で封止材AをMCLにラミネートした。次に、下記硬化条件で樹脂層を熱硬化して樹脂硬化体を得た。続いて、表面粗さ測定装置(ブルカー・エイエックス株式会社製、商品名:wyko NT9100)を用いて、樹脂硬化体の表面(銅箔)の表面粗さ(Ra)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0108】
[ラミネート条件]
ラミネータ装置:株式会社名機製作所製、真空加圧ラミネータMVLP−500
ラミネート温度:90℃
ラミネート圧力:0.5MPa
真空引き時間:30秒
ラミネート時間:40秒
【0109】
[硬化条件]
オーブン:エスペック株式会社製、SAFETY OVEN SPH−201
オーブン温度:140℃
時間:120分
【0110】
(2)レーザーマーキング性
封止材Aの樹脂層が50mm角サイズのMCL(厚さ:500μm)に接するように下記ラミネート条件で封止材AをMCLにラミネートした。次に、下記硬化条件で樹脂層を熱硬化して樹脂硬化体を得た。続いて、レーザーマーキング装置(キーエンス株式会社製、商品名:YAGレーザマーカMD−H)を用いて、前記樹脂硬化体上の銅箔にレーザーマーキングを施した。目視にてマーキング後の文字を識別できる場合を「〇」と評価し、目視にてマーキング後の文字を識別できない場合を「×」と評価した。測定結果を表1に示す。
【0111】
[ラミネート条件]
ラミネータ装置:株式会社名機製作所製、真空加圧ラミネータMVLP−500
ラミネート温度:90℃
ラミネート圧力:0.5MPa
真空引き時間:30秒
ラミネート時間:40秒
【0112】
[硬化条件]
オーブン:エスペック株式会社製、SAFETY OVEN SPH−201
オーブン温度:140℃
時間:120分
【0113】
(3)銅箔と硬化後の樹脂層との密着性
封止材Bの樹脂層がシリコンウェハ(厚さ:775μm)に接するように下記ラミネート条件で封止材Bをシリコンウェハにラミネートした。次に、前記シリコンウェハをSUS板に固定した後、下記硬化条件で樹脂層を熱硬化させた。続いて、銅箔の表面に幅5mmのマイラーテープを5cm以上の長さになるように3本貼り付け、銅箔の一部をエッチング除去した。次いで、下記条件で銅箔と硬化後の樹脂層との間の接着強度を測定した。銅箔と硬化後の樹脂層との接着強度が良好である場合、配線を形成するプロセス中に配線が封止構造体から剥離することを容易に防止できる。測定結果を表1に示す。
【0114】
[ラミネート条件]
ラミネータ装置:株式会社名機製作所製、真空加圧ラミネータMVLP−500
ラミネート温度:110℃
ラミネート圧力:0.5MPa
真空引き時間:30秒
ラミネート時間:40秒
【0115】
[硬化条件]
オーブン:エスペック株式会社製、SAFETY OVEN SPH−201
オーブン温度:140℃
時間:60分
【0116】
[接着強度の測定条件]
接着強度測定装置:株式会社島津製作所製、EZTest/CE
引っ張り速度:5cm/分
【0117】
<比較例1〜3>
(封止材Cの作製)
銅箔をPETフィルム(本州電材株式会社製、商品名:38RL−07NS、PETフィルム厚さ:38μm)に変更したこと以外は、封止材Aの作製と同様にして封止材Cを作製した。乾燥後の樹脂層の厚さは200μmであった。なお、下記の各測定においては、保護層を剥離した上で測定を行った。
【0118】
(封止材Dの作製)
塗布及び乾燥速度を5m/分に変更したこと以外は、封止材Cの作製と同様にして封止材Dを作製した。乾燥後の樹脂層の厚さは20μmであった。
【0119】
(評価)
封止材Aに代えて封止材Cを用いたこと、及び、樹脂層を熱硬化して樹脂硬化体を得ると共にPETフィルムを剥離した後に樹脂硬化体の表面(硬化後の樹脂層)の表面粗さ(Ra)を測定したこと以外は実施例と同様にして表面粗さ(Ra)を測定した。また、封止材Aに代えて封止材Dを用いたこと、及び、樹脂層を熱硬化して樹脂硬化体を得ると共にPETフィルムを剥離した後に樹脂硬化体の表面(硬化後の樹脂層)にレーザーマーキングを施したこと以外は実施例と同様にしてレーザーマーキング性を評価した。測定結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1中、各成分の含有量は、樹脂組成物の全質量(溶剤を除く)を基準とした含有量を示す。成分B4の含有量(質量%)は、シリカスラリー中のシリカ粒子の含有量(質量%)を示す。液状樹脂の割合(質量%)は、樹脂組成物の全質量(溶剤を除く)に占める液状樹脂の割合(質量%)を示す。無機充填材の割合(質量%)は、樹脂組成物の全質量(溶剤を除く)に占める無機充填材の割合(質量%)を示す。
【符号の説明】
【0122】
1…封止材、10,40…電子部品、20…封止部、20a…樹脂層、30,30a…金属層、50…基板、60…仮固定層、70…ダイシングブレード、70a…切り込み部、100a,100b,100c,100d,100e…封止構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6